特許第6474194号(P6474194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474194セラミックス材料およびセラミックス射出成形法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474194
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】セラミックス材料およびセラミックス射出成形法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/00 20060101AFI20190218BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20190218BHJP
   C04B 35/18 20060101ALI20190218BHJP
   B28B 1/24 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C04B35/00
   C04B35/111
   C04B35/18
   B28B1/24
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-4325(P2014-4325)
(22)【出願日】2014年1月14日
(65)【公開番号】特開2014-133694(P2014-133694A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2017年1月11日
(31)【優先権主張番号】10 2013 200 285.8
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シューベアト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ モク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロイブル
(72)【発明者】
【氏名】イムケ ヘーレン
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−064965(JP,A)
【文献】 特開平10−138215(JP,A)
【文献】 特開平08−208319(JP,A)
【文献】 特開平08−253361(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0077141(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0193878(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/044497(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
B28B 1/00− 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室圧力センサ(10)の製造のための射出成形法のための、セラミックス成分を50質量%以上の含量で有し、かつガラス成分を50質量%以下の含量で有するセラミックス材料であって、前記セラミックス成分が酸化アルミニウムを有し、かつ前記ガラス成分が二酸化ケイ素または二酸化ケイ素前駆体を有し、かつ更にアルカリ土類金属酸化物前駆体、並びにポリビニルブチラール、少なくとも1種のポリアクリレート、少なくとも1種のポリエチレングリコールおよび少なくとも1種のトリエタノールアミンカルボン酸エステルを含む混合物を有するバインダー系が備えられており、前記アルカリ土類金属酸化物前駆体は、炭酸カルシウム(石灰)及び炭酸ストロンチウムからなる群から選択される、前記セラミックス材料。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックス材料であって、前記アルカリ土類金属酸化物前駆体および二酸化ケイ素または二酸化ケイ素前駆体は、アルカリ土類金属酸化物対二酸化ケイ素の比率を30質量%対70質量%ないし70質量%対30質量%に調整する量で存在する前記セラミックス材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセラミックス材料であって、二酸化ケイ素前駆体は、タルクである前記セラミックス材料。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のセラミックス材料であって、前記バインダー系は、
− 10%以上で25%以下のポリビニルブチラールと、
− 15%以上で35%以下のポリアクリレートと、
− 35%以上で60%以下のポリエチレングリコールと、
− 5%以上で20%以下のトリエタノールアミンカルボン酸エステルと、
を含み、上述の成分は、合計で100%以下である前記セラミックス材料。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のセラミックス材料を、燃焼室圧力センサ(10)の製造のために用いる使用。
【請求項6】
燃焼室圧力センサ(10)の製造のためのセラミックス射出成形法であって、
a)請求項1からまでのいずれか1項に記載のセラミックス材料を準備する方法工程と、
b)前記のセラミックス材料を射出成形装置中で成形する方法工程と、
c)成形された材料を脱脂する方法工程と、
d)成形され、脱脂された材料を焼結する方法工程と、
を含む前記方法。
【請求項7】
請求項に記載の方法において、セラミックス材料が成形の前に均質化される前記方法。
【請求項8】
請求項またはに記載の方法において、セラミックス材料は、射出成形型への1点ゲートインジェクションによって導入される前記方法。
【請求項9】
請求項からまでのいずれか1項に記載の方法において、射出成形型は、その内側に10μm未満の範囲の表面粗さを有する前記方法。
【請求項10】
請求項からまでのいずれか1項に記載の方法において、方法工程d)において、焼結は、1200℃以上から1900℃以下までの範囲の温度で実施される前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス材料およびセラミックス射出成形法に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に様々なセラミックスは、それらの特定の材料特異的な特性に基づいて、ますます大きく、機械工学へと、ならびに自動車分野、化学分野、エレクトロニクス分野、消費者分野へと、ならびに一般にマイクロシステム工学およびプロセス工学へと取り込まれている。前記の材料クラスの最高の耐久性と信頼性のためには欠陥のない微細組織が好ましい。特に自動車分野では、構成部材をできる限り後加工なく小さい公差で僅かな費用で製造できることが特に好ましいと考えられる。
【0003】
そのうえ、機能が組み込まれた構成部材の供給が次第に増えている。つまり、例えばヒータ、電極もしくは条導体などの特殊な機能層が、例えば射出成形構成部材において実装される。前記機能層の適用は、その場合により好ましくは形状付与に際して直に行うことができる。射出成形、例えば特にセラミックス射出成形のための材料混合物もしくは材料系は、目下、ポリマーとワックス系成分とを含む混合物からなる。かかる系は、状況によっては確かに良好なレオロジー特性を射出成形の間に示しうるが、場合によりストランドが分かれたときにウェルドラインが生ずることがある。ウェルドラインは、その際、組織中の弱点となりうるため、これらは好ましくは最高の耐久性のためには避けられる。
【0004】
例えばセンサの接続技術においては、更にしばしば絶縁構成部材が必要となり、前記部材は、だいたいセンサエレメントとハウジング形成部品との間に配置されうる。この構成部材の役割は、特に、本来のセンサエレメントと導電性のハウジングとの切り離しであり、それによりシグナルの安定性がその寿命にわたって保証される。従って、高い絶縁性が望まれる。
【0005】
特許文献1からは、ジルコニウム相とコーディエライト相を含む多結晶体の作製方法が知られている。
【0006】
特許文献2は、特に、ガス測定センサ、例えばラムダセンサ、窒素酸化物センサおよび温度測定センサなどのセンサにおいて使用するための測定エレメントの製造方法を記載している。
【0007】
特許文献3は、排ガス中の、特に内燃機関の排ガス中の酸素含量を測定するための電気化学的測定センサを記載している。
【0008】
特許文献4からは、更に、平坦なセラミックスエレメントの作製のための、特にセンサエレメントの作製のためのスクリーン印刷ペーストが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP 0 180 230 A1
【特許文献2】DE 10 2008 054 631 A1
【特許文献3】DE 2 326 086 A1
【特許文献4】DE 199 37 163 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、先行技術の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象は、燃焼室圧力センサの製造のための、特に燃焼室圧力センサの絶縁体の製造のための射出成形法のための、セラミックス成分を50質量%以上の含量で有し、かつガラス成分を50質量%以下の含量で有するセラミックス材料であって、前記セラミックス成分が酸化アルミニウムを有し、かつ前記ガラス成分が二酸化ケイ素または二酸化ケイ素前駆体を有し、かつ更にアルカリ土類金属酸化物もしくはアルカリ土類金属酸化物前駆体が備えられている前記セラミックス材料である。
【0012】
本発明のセラミックス材料は、特に、射出成形材料であり、前記材料は、特に好ましくは、燃焼室圧力センサもしくはかかるセンサの絶縁体を製造するのに好適でありうる。従って、セラミックス材料と呼ばれる成分は、特に射出成形用原材料もしくはプレセラミックス材料である。
【0013】
前記セラミックス材料が、セラミックス成分を50質量%以上の含量で有し、かつガラス成分を50質量%以下の含量で有し、前記セラミックス成分が酸化アルミニウム(Al23)を有し、かつ前記ガラス成分が二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化ケイ素前駆体を有することによって、特に高い絶縁性を有する絶縁体、例えば絶縁ポンチ(Isolationsstempel)などの絶縁体を製造することができる。なぜならば、なによりも、セラミックス基礎成分と見なすことができる酸化アルミニウムは、それが50質量%以上の割合を有するので、既に非常に高い絶縁抵抗を有しているからである。更に、該セラミックス材料中に二酸化ケイ素を備えることによって、ケイ酸塩ガラス含有のもしくは二酸化ケイ素含有の酸化アルミニウムを有するセラミックス体が形成されうる。それによって、特に完成した生成物において、絶縁抵抗が、例えば湿った雰囲気下に置いたときに、許容できる許容限界より低く下がりうることを防ぐことができる。絶縁抵抗のかかる低下の原因は、特に、成形された構成部材の表面上に空気中でヒドロキシル基(OH基)が形成しうることに導く表面化学にあると考えられる。これらのヒドロキシル基は、湿った雰囲気下で水膜の水和を可能にしうるかもしくは促しうる。そのような広がったもしくは付着した水膜は、例えば表面不純物と相まって、弱導電性となることがあり、それに伴い構成部材全体の絶縁抵抗の低下がもたらされることがある。構成部材表面上でのかかる導電性被膜の形成は、二酸化ケイ素を備えることによって防ぐことができる。それというのも、この成分はヒドロキシル基およびそれと水膜との水和を、低い水和傾向に基づき困難にするかまたは完全に防ぐからである。
【0014】
従って、前記のセラミックス材料によって製造されたセラミックス絶縁体の要求される絶縁抵抗は、湿った雰囲気下でも問題なく許容できる範囲で保持できる。そのことは、特に、燃焼室圧力センサの部品にとって利点であると考えられる。それというのも、ここでは、湿分が完全に排除できないが、燃焼室内部の、例えば内燃機関のシリンダ内部の正確でより確実な圧力測定を保証しうるためには高い絶縁等級が重要だからである。それによって、きちんとした効果的な燃焼が特に可能となる。
【0015】
大きく改善された絶縁等級に加えて、前記のセラミックス材料によって製造できる絶縁体は非常に安定である。それというのも、既に酸化アルミニウムは非常に高い安定性を有するからである。更に、二酸化ケイ素を備えることによって、機械的強度は、例えば製造すべき構成部材の取り付けられた状態で、純粋な二酸化アルミニウムと比して明らかに高めることができる。内在亀裂および縁部の欠けは、荷重を与えた場合にも確実に回避できる。それというのも、ガラスマトリックスは、プロセスに応じた細孔または組織欠陥を焼結の間に消すことができるか、もしくはこれらを閉じることができるからである。
【0016】
従って、前記のセラミックス材料を使用して作製された構成部材は、例えば圧力センサ用に、過酷な環境条件下でも、特に圧力、温度および雰囲気の点で過酷な条件下でも特に好ましく使用できる。
【0017】
ケイ酸塩ガラス含有の酸化アルミニウムもしくは二酸化ケイ素を含む酸化アルミニウムセラミックスの製造は、上記説明のように、特に2つの好ましい様式で行うことができる。第一の例示的な一手法は、本発明によるセラミックス材料中ではじめて、特に焼結でガラスを製造することを含む。このためには、ガラス形成性の原材料もしくは二酸化ケイ素前駆体を該セラミックス材料中に備えていてよく、それらは、特に焼結過程で二酸化ケイ素もしくはガラスへと変換される。更に、既にガラス、例えばガラスフリットなどのガラスが、粉砕された形態で前記セラミックス材料中に存在してよい。前記ガラスは、後に粉砕して、酸化アルミニウムと混合してよく、そこで、得られた混合物を引き続いての粉砕プロセスで均質化することができる。他の一手法は、全てのガラス形成性の原材料を酸化アルミニウムと共通の粉砕プロセスで微細化すると同時に均質化することにある。両方の場合において、湿式粉砕は、例えばドラムミルにおいて24時間までの範囲にわたるものが好適である。粉砕の後に、乾燥は、引き続き、好ましくはかつ制限されるものではないが、噴霧塔内で行うことができる。
【0018】
更に、前記セラミックス材料は、アルカリ土類金属酸化物、例えば酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)もしくは酸化バリウム(BaO)またはアルカリ土類金属酸化物前駆体を有する。これらの成分は、好ましくは焼結助剤として用いることができ、かつ焼結プロセスを好適に制御できもしくは好適な影響を及ぼすことができる。その際、またしてもアルカリ土類金属酸化物が1種または複数種、直接的に存在してよいが、またはその前駆体が存在してもよい。該前駆体は、また特に焼結過程においてアルカリ土類金属酸化物へと変換しうる。詳細には、該アルカリ土類金属は、二酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウムと反応して、純粋な二酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウムに比して低い溶融温度を有する更なる相を形成しうる。従って、例えば液相焼結が可能であり、それによって、焼結温度を下げることができ、かつプロセス費用を削減することができる。使用されるアルカリ土類金属の選択は、その際、液相焼結のパラメータを、例えば焼結温度、粘度などを決定しうる。
【0019】
更に、前記セラミックス材料は、自体公知のようにバインダー系を有してよく、それは、基本的にセラミックス射出成形にとって公知の構成であってよい。前記バインダー系は、セラミックス粒子の密着をもたらし、その際には射出成形挙動に良い影響を及ぼしうる。
【0020】
一実施形態の範囲においては、前記のアルカリ土類金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物前駆体および二酸化ケイ素または二酸化ケイ素前駆体は、アルカリ土類金属酸化物の、二酸化ケイ素に対する比率を30質量%対70質量%ないし70質量%対30質量%に調整する量で存在しうる。例えば、前記のアルカリ土類金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物前駆体および二酸化ケイ素または二酸化ケイ素前駆体は、アルカリ土類金属酸化物の、二酸化ケイ素に対する比率を40質量%対60質量%ないし60質量%対40質量%に調整する量で存在しうる。また、1/1質量%の比率で存在してもよい。ここで、特に前記組成では焼結挙動には特に良い影響が及ぼされることを見出すことができた。詳細には、前記組成は、相図で2つの異なる相間の境界にあり、それによりガラス状態は非常に安定となりうる。
【0021】
更なる一実施形態の範囲においては、アルカリ土類金属酸化物前駆体は、炭酸塩、特に炭酸カルシウム(石灰)、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムおよびタルクからなる群から選択することができる。特に、上述の前駆体は、廉価に得ることができ、その際に射出成形法にとって非常に好適である。その際、石灰(炭酸カルシウム、CaCO3)は、特に焼結条件下で酸化カルシウム(CaO)を形成でき、それに対してタルク(ケイ酸マグネシウム水和物、Mg3Si410(OH)2)は、特に分解してマグネシウム含有のケイ酸塩を形成し、それは特に反応性であり、他のアルカリ土類金属と一緒に所望のガラスを形成するために適していると思われる。
【0022】
更なる一実施形態の範囲においては、二酸化ケイ素前駆体は、タルクおよびカオリン(Al4[(OH)8|Si410])からなる群から選択することができる。この実施形態においても、相応の前駆体が、1000℃まで複数の段階で昇温すると分解して反応性のアルミニウム含有のケイ酸塩相を形成し、それがアルカリ土類金属と容易に反応することができ、最終的に所望のガラスを形成するという利点が考えられる。カオリンおよびタルクは、更に天然に存在する原材料であり、それは非常に価格的に好ましい。
【0023】
更なる一実施形態の範囲においては、ポリビニルブチラール、少なくとも1種のポリアクリレート、少なくとも1種のポリエチレングリコールおよび少なくとも1種のトリエタノールアミンカルボン酸エステルを含む混合物を有するバインダー系が想定されうる。従って、上記のバインダー系は、高い熱接着特性を有する熱可塑性のポリマーであるポリビニルブチラール(PVB)の使用を基礎としている。ポリビニルブチラールを基礎とするバインダー系の使用によって、機能エレメント、例えばラベルなどのエレメントとセラミックス射出成形体との極めて付着強度の高い安定した接合を実現できる。従って、更に特に安定な長寿命な構成部材をセラミックス押出成形法の範囲で製造することができる。上記のバインダー系用の具体的であるが制限されるものではない用途は、例えば燃料電池(SOFC)、スパークプラグ、ラムダセンサまたは燃焼室圧力センサの製造を含む。その場合に、特にしかし排他的でなく、記載したセラミックス系を使用でき、もしくは前記バインダー系は、基本的に他のセラミックス成分と一緒に使用することもできる。
【0024】
更に、前記の有機バインダー系もしくはコンパウンド系の組成物は優れたレオロジー特性を示すので、複雑さの高い形状を有する構成部材も製造することができる。例えば、構成部材は、それが、例えば機能を組み込むために貫通箇所または穿孔構造を有する場合であっても、なおも非常に安定的に製造することができる。幾何学的な貫通箇所は、射出成形技術において、しばしば、射出成形型にセラミックス材料を挿入する際に材料の流動先端部を分割する必要がある。その分割された材料の流動先端部は、材料部分が迂回流れした後に再び合流する。かかる物質流が合わさったときに、前記のバインダー系は、ウェルドラインまたは別の欠陥部を残すことなく材料ストランドの特に欠陥のない接合をもたらしうる。焼結後でさえも、前記の有機バインダー系を使用すると、ウェルドラインまたは場合により起こりうる別の欠陥部の存在を回避できる。それによって、製造された構成部材は、特に長時間安定でありうる。
【0025】
更に、ポリビニルブチラールを基礎とするバインダー系の使用によって、極めて均質かつ細孔を含まないセラミックス組織を作製でき、該組織は、際だって高い強度を有する。その強度は、その場合、二酸化ジルコニウムでの測定によって従来の材料と匹敵しうる。
【0026】
上記のような有機バインダー系は、更に、該バインダー系が、例えば先行技術から公知のポリエチレンワックスなどのワックスベースの系に対して、形状付与に引き続く熱的プロセスにおいて明らかにより迅速に脱脂可能であるという更なる利点を有する。それによって、通常のプロセス時間の約30%を削減でき、これはコストを削減でき、かつ特に少なくとも部分的に自動化された方法において特に好ましいと見なすことができる。
【0027】
前記の有機バインダー系は、更に、先行技術から公知のバインダー系に対して、大きく低減された冷却収縮しか生じないという利点を有する。それによって、射出成形された構成部材の形状忠実性はより高く、かつ構成部材の平坦な箇所は低減された冷却収縮によって凹型の窪んだ箇所とならずに平坦を維持する。それによって、前記の有機バインダー系の使用によって、特に、寸法安定性の点でのもしくは寸法および形状の公差の点での厳格な要求をもって構成部材を作製できる。
【0028】
射出成形された構成部材は、更に好ましくは、射出成形工具から取り出した後に高い硬度を有し、そのうえ、形状安定性は、場合により全自動の操作装置による成形体のプロセスに際しても存在し続けうる。有機バインダー系もしくはそこからの個々の成分の組成は、その場合、前記の要求を同様に保てることができるように調整される。
【0029】
ポリビニルブチラールは、前記バインダー系においては、特に固有のバインダーの機能を担う。従って、前記成分は、加えられるセラミックス粉末と相互作用でき、それゆえ例えば溶融された状態で形状付与の間に、該系の結合を引き起こす。ポリビニルブチラールは、更に、高温状態において、他の有機系への、例えば特に他のポリビニルブチラールを基礎とする系への極めて高い接着傾向を構成しうる。それは、例として、スクリーン印刷によって製造されたポリビニルブチラールを基礎とする印刷ペーストから形成されている機能層パッケージについて実現されうる。
【0030】
他の成分としては、上記のバインダー系において、少なくとも1種のポリアクリレート、例えばポリメタクリル酸エステルもしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)もしくはポリブチルメタクリレート(PBMA)が存在する。この物質クラスは、特に、レオロジー特性、例えば好ましい流動挙動などの特性の調整のために用いることができる。特に、ポリアクリレートを備えることによって、該混合物は高温状態で液状であるが、冷却された状態でガラスの堅さとなることに至りうる。そのことは、成形部材のより良好な方法のために、形状安定性の他に欠陥のない印刷のためにも用いることができる。その際、ポリアクリレートは、特に、先行技術から公知のバインダー系のワックス様成分と置き換えることができ、その際、例えば脱脂挙動を改善することができる。
【0031】
更に、バインダー系に備えられたポリエチレングリコール(PEG)は、特に、製造プロセスの間とその後の特に良好な安定性が存在するように用いることができる。詳細には、グリーンな状態からセラミックス状態もしくはセラミックス構成部材へと変換するために、前記バインダーを、例えば分解により該構成部材から追い出しうる熱的プロセスが必要である。それは、特にゆっくりとした温度制御で可能になりうる。例えば4mm超の範囲でありうる大きな厚さを有する構成部材は、その際、非常に長いプロセス時間を必要とし、これは、一方で費用集中的であり、他方でセラミックス構成部材内部に亀裂を促しうる。それに関しては、水溶性の添加物質であるポリエチレングリコール、特に1モル当たり4000gまでの鎖長を有するものがバインダー系において支援する。該構成部材は、熱的プロセスの前に、つまり焼結下での脱脂の前に、水浴中に入れることができ、その際、ポリエチレングリコールを溶出させることができる。その際、内在多孔率をもたらすことができ、それにより開放され促進された熱的脱脂が可能となりうる。
【0032】
トリエタノールアミンカルボン酸エステルに関しては、特に、好ましい例として、トリエタノールアミンでエステル化されたカルボン酸の鎖長が8個以上の炭素原子から30個以下の炭素原子までの範囲にあるエステルを挙げることができる。これらの成分は、その際、分散剤として用いることができるため、特に均質な材料を、特に均質な特性を有する構成部材の形成のために用いることができる。
【0033】
セラミックス材料を、特に記載のバインダー系と一緒に製造することは、好ましくは混練装置中で、特に二軸スクリュー混練機(ZSK)中で行うことができる。このために、全配合成分からなる混合物を混練装置中で、全有機成分の溶融温度より高い温度で分散させて均質化させることができる。こうして作製された溶融物が混練装置のギャップ、例えばダイギャップから出るときに、生成する材料のストランドは、小片へと造粒され、射出成形機または押出機において可塑化されて射出成形もしくは押出されうる。
【0034】
上述のバインダー系の特性によって、セラミックス構成部材、例えば内在する機能層、例えば条導体などの機能層を有する構成部材の製造は、好ましくは、例えばいわゆるハーフシェル技術によって実現できる。このようにして、極めて安定で耐震性の構造単位であって、その機能層が腐食的かつ機械的な作用に対して特に良好に保護されている構造単位を可能とする。
【0035】
使用される成分は、その際、互いに化学的に相容性であるので、意に反した反応生成物は射出成形過程の間には生じず、規定された生成物を作製することができる。更に、インモールドラベリングに際して、例えば機能層の欠陥のない付着性の高い適用のために、導入されたラベルもしくは導入された機能層とセラミックス材料との高い適合性が利点である。それは、特に、上記のバインダー系によって実現できる。それというのも、前記の機能層とセラミックス材料が種類の似た有機基礎成分を含有することが可能となるからである。これは、目下の先行技術によれば示されていない。
【0036】
一実施形態の範囲においては、バインダー系は、
− 10%以上で25%以下のポリビニルブチラールと、
− 15%以上で35%以下のポリアクリレートと、
− 35%以上で60%以下のポリエチレングリコールと、
− 5%以上で20%以下のトリエタノールアミンカルボン酸エステルと、
を含み、上述の成分は、一緒になって100%以下であってよい。
【0037】
驚くべきことに、特にこの組成において、バインダー系の特性もしくは該バインダー系を備えたセラミックス材料の特性の特に好ましい組み合わせが可能であることが見出された。特にこの組成において、特に良好なレオロジー挙動もしくは流動挙動と同時に、優れた成形性、寸法安定性および形状安定性を達成することができる。前記特性は、廉価に特に長期安定性で寸法安定な構成部材の作製を可能にする。詳細には、バインダー系に関して詳細に記載された系をセラミックス成分と一緒に使用することによって、特に好ましいレオロジー挙動が可能となりうる。それは、射出成形法においても押出成形法においても利点を与えうる。詳細には、高められた温度で良好な流動性を可能とすることができ、それに対して室温では、例えば特に高い強度が達成可能である。更に、かかるバインダー系の脱脂は、大きく短縮された時間で可能となり、これはプロセス費用を更に削減しうる。
【0038】
本発明による射出成形材料の更なる技術的特徴および利点に関して、それとともに明示的に、本発明による使用、本発明による方法、図面ならびに図面の説明に対する解説が参照される。
【0039】
本発明の対象は、更に、前記の構成のセラミックス材料を、燃焼室圧力センサの製造のために、特に燃焼室圧力センサの絶縁体の製造のために用いる使用である。かかる構成のセラミックス材料は、特に上記のような構成のバインダー系と一緒で、その際、絶縁性構成部材、例えば特に燃焼室圧力センサであって絶縁ポンチの間に配置された圧電センサエレメントを有するセンサのための絶縁性の圧力ポンチ(Druckstempel)の形成のために特に好ましいと考えられる。かかる絶縁性の絶縁ポンチは、寸法安定性を保持することに関して高い要求を有する。それというのも、さもなくば、例えば圧力ポンチ、接点板、センサエレメントおよび配線を含む非対称構造のセンサモジュールが得られるからである。正確な寸法安定性を看過した結果、センサエレメントの不均一な圧力負荷が生じうる。これは、シグナル損失またはそれどころかセンサの分解も引き起こしうる。かかる欠点は、前記のセラミックス材料および/または前記のバインダー系の使用のもと、これにより維持されるべき高い寸法安定性に基づき回避することができる。
【0040】
更に、例えば従来の乾式圧縮法では、構成部材外縁の周辺の高い位置にあるバリを、センサモジュールの平行平面的な構築技術を可能にするために費用をかけて除去せねばならないということを回避できる。むしろ、機械的強度を保証するためには、規定のR形状の軽く丸められた縁部を可能にできるが、その縁部は、乾式圧縮法では、非常に高い費用を伴ってのみ実現できるにすぎない。
【0041】
従って、非常に高い形状精度と同時に、まったく均質な構成部材密度を達成できる。更に、構成部材の焼結の間に、純粋に等方性で高い精度の収縮が得られる。従って、極めて均質かつ細孔を含まないセラミックス組織が達成される。
【0042】
上記のセラミックス材料を使用することによって、これは特に燃焼室圧力センサもしくは該センサ用の絶縁体で高精度の測定をもたらすために重要であるが、絶縁抵抗が、例えば湿った雰囲気下に置いた場合に許容される許容限界を下回って下がりうることを防ぐことができる。構成部材表面上でのかかる導電性被膜の形成は、二酸化ケイ素を備えることによって防ぐことができる。それというのも、セラミックスの二酸化ケイ素を含む相はヒドロキシル基およびそれと水膜との水和を、低い水和傾向に基づき困難にするかまたは完全に防ぐからである。従って、上記のセラミックス材料の使用下で、必要とされる絶縁等級もしくは必要とされる電気的絶縁抵抗の保証は、例えばテラオーム範囲で実現できると考えられる。しかしながら、二酸化ケイ素を備えることによって、その際、水膜の堆積を減らすかまたは完全に抑えることができ、それにより絶縁抵抗は、特に安定に保つことができる。更に、かかる絶縁ポンチは特に安定であり、これは、使用に関連した条件で利点がある。従って、高精度の形状安定性の、非常に良好かつ安定な絶縁等級を有する構成部材が可能である。
【0043】
本発明による使用の更なる技術的特徴および利点に関して、それとともに明示的に、本発明によるセラミックス材料、本発明による方法、図面ならびに図面の説明に対する解説が参照される。
【0044】
本発明の対象は、更に、燃焼室圧力センサの製造のための、特に燃焼室圧力センサの絶縁体の製造のためのセラミックス射出成形法であって:
a)上記の構成のセラミックス材料を準備する方法工程と、
b)前記のセラミックス材料を射出成形装置中で成形する方法工程と、
c)成形されたセラミックス材料を脱脂する方法工程と、
d)成形された、任意に脱脂された射出成形材料を焼結する方法工程と、
を含む前記方法である。
【0045】
燃焼室圧力センサもしくはかかるセンサ用のセラミックス絶縁体の製造のための上記方法によって、特に好ましくは、寸法安定性、安定性、長寿命および絶縁等級の点での非常に高い要求を満たすことができる。従って、長時間にわたって極めて正確かつ安定な測定を可能にするセンサを作製できる。
【0046】
第一の方法工程a)においては、セラミックス材料の準備が行われ、前記セラミックス材料は、セラミックス成分を50質量%以上の含量で有し、かつガラス成分を50質量%以下の含量で有し、前記セラミックス成分は酸化アルミニウムを有し、かつ前記ガラス成分は二酸化ケイ素または二酸化ケイ素前駆体を有し、かつ更にアルカリ土類金属酸化物もしくはアルカリ土類金属酸化物前駆体が備えられている。それによって、酸化アルミニウムセラミックスの好ましい特性と、二酸化ケイ素の好ましい特性とを組み合わせることができる。詳細には、特に安定なセラミックスであって、更に特に絶縁構成部材のために非常に適したセラミックスを作製できる。特に、二酸化ケイ素を備えると、セラミック物体上での水膜の堆積を防ぐことができ、それによって更に前記絶縁体上での導電性層の形成を防ぐことができる。それによって、製造されたセラミックスの絶縁等級は明らかに改善させることができる。場合により、上記のバインダー系が、準備されたセラミックス材料の成分であってよい。
【0047】
かかるセラミックス材料は、方法工程b)により、先行技術から自体公知のようにして、射出成形装置もしくは射出成形型において成形される。かかる成形方法は、特に好ましくは、特に上記のセラミックス材料と組み合わせて、特に高い寸法安定性を有するのに加えて特に規定の通り再現的に作製できる成形部材の作製を可能にする。
【0048】
前記の成形の後に、更なる方法工程c)において、有機バインダー系の成分の完全な追い出しのために、前記成形された材料の特にゆっくりとした脱脂が行われる。前記構成部材は、例えば制限されるものではないが、水浴中で10〜100時間にわたり貯蔵される。この場合に、水溶性の有機成分は、前記構成部材から溶出される。引き続き、乾燥とともに、後続の熱的な部分脱脂は、240℃までで行われる。その際、該構成部材において、1〜3%の有機成分の残留含量が残り、それは、該構成部材を損傷無く焼結オーブン内で変換するために該構成部材になおも十分な強度を付与する。焼結オーブンにおいて、次いで完全な脱脂と焼結が行われる。
【0049】
最後に、脱脂された材料は、セラミックス構成部材の完成のために方法工程d)において焼結される。焼結に際して、その場合、フィラーとしてガラスもしくは二酸化ケイ素を有する酸化アルミニウムからなる特徴的な組織を形成できる。焼結温度に応じて、特に高く選択された温度によって、構成部材表面上に、更に、ガラス製の焼結被膜を形成でき、これは、更に、絶縁強度に対して好ましい作用をもたらしうる。
【0050】
その場合に、上述の方法工程、例えば特に工程c)およびd)は、好適な順序で、かつ場合により一緒に実施できることは当業者には明らかである。
【0051】
上記の方法によって、2つの相を有しうるセラミック体、すなわち特に酸化アルミニウムを有するセラミックス相とガラス相、とりわけ二酸化ケイ素を有するガラス相とを有しうるセラミック体が生ずる。その場合に、相の比率はセラミックス材料に相応して形成されていてよく、または製造方法の間に変化してもよい。
【0052】
その際、特に、10μm未満の範囲の粒度および孔径を有する組織が存在する場合に、特に好ましい絶縁等級もしくは絶縁強度を達成できる。更に、二酸化ケイ素の前駆体またはアルカリ土類金属酸化物の前駆体が使用される場合にも、所望のセラミックス生成物の作製を保証することができる。
【0053】
特に、しかしながら何ら制限されるものではないが、酸化アルミニウムまたはセラミックス相は、50%以上の範囲で存在してよく、その際、二酸化ケイ素またはガラス相は、50%以下の含量で存在してよい。例えば、酸化アルミニウムまたはセラミックス相は、90%以上から95%以下までの範囲で存在してよく、その際、二酸化ケイ素またはガラス相は、5%以上から10%以下までの含量で存在してよい。この実施形態においては、本質的には、酸化アルミニウムもしくは純粋な酸化アルミニウムセラミックスの好ましい特性は特に好ましくは保持できるが、その際、酸化アルミニウムとケイ酸塩ガラスとの共存の好ましい特性が特に好ましくは達成できる。特に、この実施形態においては、特に高い強度と同時に、優れた絶縁等級を達成でき、更に製造方法での、特に射出成形法での流動挙動に特に優れた影響を及ぼしうる。
【0054】
その場合、前記セラミックスは、従って基本的には2相から構成されていてよい。一方の第一の相Aは、特に本質的には、酸化アルミニウムを含み、それは、特に結晶質でコランダムの形態で存在してよい。一方の第二の相Bは、ケイ酸塩ガラス含有相であり、従って二酸化ケイ素を含む。従って、この相は、少なくとも部分的にガラス様に構成されており、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルカリ土類金属酸化物と、任意に炭酸塩、特に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムおよびタルクとから構成されていてよい。その場合に、純粋に例としてであって制限されるものではないが、アルカリ土類金属酸化物の、二酸化ケイ素に対する比率が、30質量%対70質量%ないし70質量%対30質量%で存在してよい。それは、例えば、セラミックス材料の基本組成によって調整可能であってよい。その際、相Bの酸化アルミニウムの割合は、特に焼結温度に応じて、かつ相応の溶解挙動に基づいて調整される。例えば、酸化ケイ素対酸化カルシウムの比率が50対50でありかつ1600℃の焼結温度の場合に、約50%の相B中の酸化アルミニウム含量が調整される。冷却に際してガラス様の相Bは、部分的に結晶化しうる。その際、晶出する相は、特に二酸化ケイ素を含み、従って、セラミックス構成部材の表面上のヒドロキシル基の水和を低減するという機能も満たしている。
【0055】
一実施形態の範囲においては、前記のセラミックス材料は、方法工程b)による成形の前に均質化されていてよい。この実施形態においては、従って、例えば酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素が特に均質に分布して存在することで特に均質な材料を作製することができる。それによって、ほぼあらゆる箇所で水膜の水和は回避でき、これは、製造される構成部材の特に良好な絶縁等級を可能にする。更に、該バインダーは、セラミックス成分と一緒に微細に分布して存在してよく、こうして構成部材にわたり一定な特性を有する特に均質な構成部材が可能である。均質化は、その際、混練プロセスによって、例えば二軸スクリュー混練機(ZSK)、剪断ローラ(Scherwalzen)、コニーダーなどによって、60℃〜220℃の温度で行うことができる。詳細には、セラミックス材料の全成分からなる混合物を混練装置中で、全有機成分の溶融温度より高い温度で分散させて均質化させることができる。こうして作製された溶融物が混練装置のギャップ、例えばダイギャップから出るときに、生成するセラミックス材料のストランドは、小片へと造粒されうる。かかる小片は、引き続き、セラミックス成分のためのセラミックス粉末を加えた後で、射出成形装置または押出機において、前記に説明したようにして、可塑化されて射出成形または押し出すことができる。その際、この実施形態においては、特に均質なバインダー系を作製でき、これは、製造される構成部材でも特に均質な特性を可能にする。
【0056】
更なる一実施形態の範囲においては、セラミックス材料は、射出成形型への1点ゲートインジェクション(1-Punkt-Einspritzung)によって導入できる。この実施形態においては、特に1点サイドゲートインジェクションもしくは1点側方ゲートインジェクションは、好ましくは工具分割部の高さで実現できる。かかる1点ゲートインジェクションによって、特に、サイドゲートインジェクションによって、特に高い精度のバリのない高い平坦性の表面が可能となりうる。それによって、寸法安定性の点で特に公差の小さい構成部材が、費用のかかる後加工方法を必要とすることなく可能となる。更に、かかるインジェクションは、特に二点ゲートまたは多点ゲートインジェクションに対して、工具キャビティがウェルドラインを生じさせることなく充填されるという利点を提供する。それによって、セラミックス体の潜在的な弱点を防ぐことができる。
【0057】
更なる一実施形態の範囲においては、射出成形型は、その内側で10μm未満の範囲の表面粗さを有しうる。かかる射出成形型の内側の粗さは、かかる射出成形型の粗さが、特に、射出成形材料として用いるセラミックス材料が射出成形型と接触に至りうるところに存在することを意味する。この実施形態においては、特に平坦なもしくは寸法安定な表面を作製することができる。それによって、特に、圧力センサでは高精度の確実な測定が可能となりうる。例えば、かかる平坦な表面は、射出成形型の、例えば工具ポンチの研磨によって実現できる。
【0058】
更なる一実施形態の範囲においては、方法工程d)において、焼結は、1200℃以上から1900℃以下までの範囲の温度で実施できる。例えば、焼結は、1580℃の温度で1時間の時間にわたって実施することができる。かかる温度を使用することによって、アルカリ土類金属は二酸化ケイ素および酸化アルミニウムと反応し、溶融物を形成することを促すことができる。その際、その温度は、酸化アルミニウムの強すぎる結晶粒成長を抑制し、組織の微細さを保証するために十分に低く選択される。
【0059】
本発明による対象の更なる利点および好ましい実施形態を、図面によって具体的に示し、以下の記載において説明する。その際、図面は、記載している特質のみを有するものと考慮すべきであり、本発明をいかように限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、本発明による方法で製造された2つの絶縁体を含む燃焼室圧力センサの一部の一実施形態の概略図を示している。
図2図2は、本発明による方法により製造したセラミックス組織の概略図を示している。
図3図3は、本発明による方法によって製造した絶縁体の一実施形態の概略図を示している。
図4図4は、本発明により製造されたセラミックスの効果を示すグラフを示している。
【実施例】
【0061】
図1には、燃焼室圧力センサ(10)の部分領域が示されている。かかる燃焼室圧力センサ(10)は、圧力ポンチとしてはたらく2つの絶縁体(12)を含む。その際、該圧力ポンチは、圧電素子(14)、例えば石英結晶などの素子に作用する。前記圧力ポンチもしくは絶縁体(12)に対して力が加わると(例えばそれは矢印(18)によって示されている)、圧電素子(14)は、信号を送出でき、それは例えば導体構造(16)を介して評価ユニットに伝達できる。その際、一方の力は、圧力によって燃焼室内で可動のスライドピン(Gleitstift)を通じて形成可能であり、それに対してもう一方の力は、固定ストッパーを通じて形成できる。
【0062】
かかる絶縁体(12)は、特に、セラミックス相を、純粋に例としてであって何ら制限されるものではない50質量%以上の含量で有し、かつガラス相を、純粋に例としてであって何ら制限されるものではない50質量%以下の含量で有し、前記のセラミックス相が酸化アルミニウムを有し、かつ前記のガラス相が二酸化ケイ素を有するセラミックス体である。
【0063】
かかるセラミックス材料の組織は、図2に示されている。図2においては、セラミックス相はAで示され、ガラス相はBで示されている。基礎構造がセラミックス材料から、特に酸化アルミニウムから形成されているのに対して、ガラス様相Bは、特に二酸化ケイ素を含むことが確認できる。その際、基本的に、純粋に例としてであって何ら制限されるものではないが、セラミックス成分もしくは相Aは、50質量%以上の含量で存在し、かつガラス成分もしくは相Bは、50質量%未満の含量で存在する。相Bにおいて、更に、アルカリ土類金属および二酸化ケイ素および酸化アルミニウムが存在してよい。
【0064】
絶縁体(12)の例示的な一例は、更に図3に示されている。図3によれば、絶縁体(12)は丸められており、かつ例えば圧電素子(14)から評価ユニットへの導体構造(16)を収容できるようにするために溝部(20)を有する。
【0065】
かかる絶縁体(12)は、以下のように製造できる。出発物質はセラミックス材料であり、該セラミックス材料は、セラミックス成分を50質量%以上の含量で有し、かつガラス成分を50質量%以下の含量で有し、前記セラミックス成分は酸化アルミニウムを有し、かつ前記ガラス成分は二酸化ケイ素または二酸化ケイ素前駆体を有し、かつ更にアルカリ土類金属酸化物もしくはアルカリ土類金属酸化物前駆体が備えられている。その際、アルカリ土類金属酸化物前駆体は、炭酸塩、特に炭酸カルシウム(石灰)、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムおよびタルクからなる群から選択することができ、かつ/または二酸化ケイ素前駆体は、石灰およびタルクからなる群から選択することができる。
【0066】
射出成形材料中に備えられるバインダー系に関して、該バインダー系は、ポリビニルブチラール、少なくとも1種のポリアクリレート、少なくとも1種のポリエチレングリコールおよび少なくとも1種のトリエタノールアミンカルボン酸エステルを含む混合物を有してよい。
【0067】
前記セラミックス材料から出発して、前記絶縁体(12)は、
a)上記のセラミックス材料を準備し、任意に該セラミックス材料を均質化する方法工程と、
b)前記セラミックス材料を射出成形装置中で成形する方法工程、例えばその際、前記セラミックス材料は、1点ゲートインジェクションによって、および/または例えば12℃以上から200℃以下までの温度で射出成形型に導入でき、
c)前記の成形された材料を脱脂する方法工程と、
d)前記の成形されて任意に脱脂された材料を、例えば1200℃以上から1900℃以下までの範囲の温度で焼結する方法工程と、
を含む方法によって製造することができる。
【0068】
図3による絶縁体(12)では、1点ゲートインジェクションの起点(22)が図示されており、かつ射出成形工具の工具分割部(24)、つまり構成部材を取り出すために該工具が開く構成部材の平面が図示されている。これは、例えば乾式圧縮法の場合には、上方または下方の平坦面には存在せずに、構成部材の上から三分の一のところに下がって存在する。これらの措置は、上面もしくは下面に存在する欠陥のない形状の正確な機能表面(26,28)を保証する。射出成形過程の後に、ゲート(Anguss)は、工具を開く間に切り取ることができるので、残部は残らない。ゲートの潜在的な目に見える残部(22)は、グリーンの状態、つまり未焼結の状態でも焼結された構成部材においてもここでは邪魔にならない。
【0069】
射出成形型からもしくはキャビティーから取り出した後に、前記の構成部材は、プレート上に置かれた塊状物(Schuettgut)として脱脂でき、かつ約1580℃で焼結できるが、その際変形は生じない。
【0070】
そのように製造された絶縁体の改善された絶縁等級の利点は、図4に示されており、そこではX軸上に種々の材料が割り当てられている。その際、a)は、酸化アルミニウム(Al23)に相当し、b)は、二酸化チタン(TiO2)に相当し、かつc)は、二酸化ケイ素(SiO2)に相当し、それに対して、Y軸には1nm2当たりの水和されたOH基の数が示されている。同じ条件下では、水和は二酸化ケイ素の場合に明らかに下がることが確認できる。それによって、上記詳細に説明されるように、絶縁等級は明らかに高めることができる。
[本発明の態様]
1. 燃焼室圧力センサ(10)の製造のための、特に燃焼室圧力センサ(10)の絶縁ポンチ(12)の製造のための射出成形法のための、セラミックス成分を50質量%以上の含量で有し、かつガラス成分を50質量%以下の含量で有するセラミックス材料であって、前記セラミックス成分が酸化アルミニウムを有し、かつ前記ガラス成分が二酸化ケイ素または二酸化ケイ素前駆体を有し、かつ更にアルカリ土類金属酸化物もしくはアルカリ土類金属酸化物前駆体が備えられている前記セラミックス材料。
2. 1に記載のセラミックス材料であって、前記のアルカリ土類金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物前駆体および二酸化ケイ素または二酸化ケイ素前駆体は、アルカリ土類金属酸化物対二酸化ケイ素の比率を30質量%対70質量%ないし70質量%対30質量%に調整する量で存在する前記セラミックス材料。
3. 1または2に記載のセラミックス材料であって、アルカリ土類金属酸化物前駆体は、炭酸塩、特に炭酸カルシウム(石灰)、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムおよびタルクからなる群から選択される前記セラミックス材料。
4. 1から3までのいずれかに記載のセラミックス材料であって、二酸化ケイ素前駆体は、タルクおよび石灰からなる群から選択される前記セラミックス材料。
5. 1から4までのいずれかに記載のセラミックス材料であって、ポリビニルブチラール、少なくとも1種のポリアクリレート、少なくとも1種のポリエチレングリコールおよび少なくとも1種のトリエタノールアミンカルボン酸エステルを含む混合物を有するバインダー系が備えられている前記セラミックス材料。
6. 5に記載のセラミックス材料であって、前記バインダー系は、
− 10%以上で25%以下のポリビニルブチラールと、
− 15%以上で35%以下のポリアクリレートと、
− 35%以上で60%以下のポリエチレングリコールと、
− 5%以上で20%以下のトリエタノールアミンカルボン酸エステルと、
を含み、上述の成分は、一緒になって100%以下である前記セラミックス材料。
7. 1から6までのいずれかに記載のセラミックス材料を、燃焼室圧力センサ(10)の製造のために、特に燃焼室圧力センサの絶縁体(12)の製造のために用いる使用。
8. 燃焼室圧力センサ(10)の製造のための、特に燃焼室圧力センサ(10)の絶縁体(12)の製造のためのセラミックス射出成形法であって、
a)1から6までのいずれかに記載のセラミックス材料を準備する方法工程と、
b)前記のセラミックス材料を射出成形装置中で成形する方法工程と、
c)成形された材料を脱脂する方法工程と、
d)成形された、任意に脱脂された材料を焼結する方法工程と、
を含む前記方法。
9. 8に記載の方法において、セラミックス材料が成形の前に均質化される前記方法。
10. 8または9に記載の方法において、セラミックス材料は、射出成形型への1点ゲートインジェクションによって導入される前記方法。
11. 8から10までのいずれかに記載の方法において、射出成形型は、その内側に10μm未満の範囲の表面粗さを有する前記方法。
12. 8から11までのいずれかに記載の方法において、方法工程d)において、焼結は、1200℃以上から1900℃以下までの範囲の温度で実施される前記方法。
図1
図2
図3
図4