特許第6474204号(P6474204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474204
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】マイクロメカニカルセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20190218BHJP
   G01N 27/406 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G01N27/416 371G
   G01N27/406
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-101151(P2014-101151)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-224819(P2014-224819A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】10 2013 208 939.2
(32)【優先日】2013年5月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トアステン オクス
(72)【発明者】
【氏名】デニス クンツ
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−327592(JP,A)
【文献】 特開2002−195976(JP,A)
【文献】 特表2008−505452(JP,A)
【文献】 特表2003−518619(JP,A)
【文献】 特開平09−087510(JP,A)
【文献】 特開平04−232454(JP,A)
【文献】 特開平06−249822(JP,A)
【文献】 特開平02−311751(JP,A)
【文献】 特開2013−156259(JP,A)
【文献】 米国特許第04025412(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の測定及び/又は検出を行うセンサ装置であって、
第1のマイクロメカニカル電極(E1)と、
第2のマイクロメカニカル電極(E2)と、
薄膜イオン伝導性材料(5)と
を含み、
前記薄膜イオン伝導性材料(5)は、負帯電イオンの伝導率に比べて高い正帯電イオンの伝導率を有しており、前記第1のマイクロメカニカル電極(E1)と前記第2のマイクロメカニカル電極(E2)との間に埋め込まれており、
前記第1のマイクロメカニカル電極及び前記第2のマイクロメカニカル電極(E1,E2)の一方もしくは双方は多孔性を有するように構成されており、
前記第1のマイクロメカニカル電極及び前記第2のマイクロメカニカル電極(E1,E2)の一方もしくは双方は、Pd,Au,Niもしくはこれらの混合物を含む群から選択された材料を含み、
前記薄膜イオン伝導性材料(5)は、少なくとも部分的に一方側もしくは両側がイオン伝導性薄膜層(50)でコーティングされており、前記イオン伝導性薄膜層(50)は、負帯電イオンの伝導率に比べて高い正帯電イオンの伝導率を有する、
ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記薄膜イオン伝導性材料(5)は50nm以上1500nm以下の厚さを有する、請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記薄膜イオン伝導性材料(5)は、10−8S/cm以上の正帯電イオンの伝導率を有する、請求項1又は2記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記薄膜イオン伝導性材料(5)は、プロトン伝導率を有する、請求項3記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記薄膜イオン伝導性材料(5)は、
ポリマー群もしくはセラミック群もしくはペロブスカイトもしくはアクセプタドープされた酸化物/ペロブスカイトから選択された材料、
又は、
ポリマー群と、セラミック群もしくはペロブスカイトもしくはアクセプタドープされた酸化物/ペロブスカイトとを含む材料
を含む、
請求項1から4までのいずれか1項記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記薄膜イオン伝導性材料(5)は、
ナフィオンもしくはイットリウム酸化物(Y)もしくはバリウムジルコニウム酸化物、又は、Nd:BaCeOもしくはY:SrZrOもしくはY:SrCeOもしくはこれらの材料の混合物、から選択された材料、
又は、
ナフィオンと、イットリウム酸化物(Y)もしくはバリウムジルコニウム酸化物、又は、Nd:BaCeOもしくはY:SrZrOもしくはY:SrCeOもしくはこれらの材料の混合物とを含む材料
を含む、
請求項5記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記センサ装置はさらに多孔性領域を含むマイクロメカニカル支持体基板(1)を含み、前記多孔性領域の上方に前記第1のマイクロメカニカル電極及び前記第2のマイクロメカニカル電極(E1,E2)及び前記薄膜イオン伝導性材料(5)が配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記イオン伝導性薄膜層(50)は1nm以上100nm以下の厚さを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記センサ装置はさらにメンブレイン領域(B)を定める開放口(K)を有し、前記第1のマイクロメカニカル電極及び前記第2のマイクロメカニカル電極(E1,E2)の一方(E2)は前記開放口(K)を通って延在している、請求項1からまでのいずれか1項記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメカニカルセンサ装置、特に、気体を測定及び検出するためのマイクロメカニカルセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気体を測定及び検出するマイクロメカニカルセンサ装置は、例えば、DE19941051から公知である。この文献では、酸素濃度を検出するセンサエレメントが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE19941051
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Electrochem.Soc., Vol.143, No.4, 1996, 1254頁−1259頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、改善された新規なセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明の請求項1に記載のセンサ装置により、解決される。本発明では、測定及び/又は検出を行うセンサ装置は、第1のマイクロメカニカル電極と、第2のマイクロメカニカル電極と、第1のマイクロメカニカル電極と第2のマイクロメカニカル電極との間に埋め込まれた薄膜イオン伝導性材料とを含む。本発明によれば、薄膜イオン伝導性材料は、負帯電イオンの伝導率に比べて高い正帯電イオン(特にプロトン)の伝導率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施例のセンサ装置の断面図を示す図である。
図2】本発明の第2の実施例のセンサ装置の断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
負帯電イオンの伝導率に比べて正帯電イオンの伝導率のほうが高いという特性は、本明細書においては「プロトン伝導性」なる概念として理解される。言い換えると、本発明における「プロトン伝導性」とは、他のイオン(例えば酸素イオン)の伝導性が強く阻止されるのに対して、プロトンHを伝導できる状態にある、及び/又は、こうした材料を含む、ことを意味する。
【0009】
驚くべきことに、こうした構成により簡単に、複数の気体を識別できること及び/又は気体濃度を測定できることが判明している。特に、本発明の方法によれば、広汎な適用分野において、
・装置が微細化されるので、多くの目的に適合する;
・具体的な実施形態に応じて、多くの気体に対応可能な装置が得られる;
・装置の構造が単純であり、低コストに製造できる;
という利点のうち少なくとも1つが得られる。
【0010】
ここで、測定もしくは検出は、センサ装置において、基準気体室が分析すべき気体雰囲気から分離された状態で行われる。基準気体室の測定気体と気体雰囲気の測定気体との間に濃度差があれば、電極によって、高いほうの濃度を有する気体室から低いほうの濃度を有する気体室へ向かってプロトン電流が発生し、当該電位が測定される。これに代えて、2つの気体室の一方に水素もしくは水素を含む気体種が存在する場合、電極に電圧を外部印加することにより、薄膜プロトン伝導性材料を介してプロトンをポンピングして、これらの気体の存在を検出してもよい。
【0011】
有利には、検出すべき気体もしくは測定すべき気体は、水素を含むか、又は、炭化水素もしくはアンモニアなどの水素を含む化合物を含む。
【0012】
本発明における「マイクロメカニカル」なる概念は、特に、確立されている微細装置技術による製造プロセスを用いてセンサ装置を処理可能であることを意味する。この場合、キャビティ、メンブレイン及びその他のセンサ装置に必要なジオメトリを形成するために、エッチングプロセス及びパターニングプロセス(KOHエッチングプロセス、トレンチ形成プロセス、リソグラフィプロセスなど)を利用可能である。
【0013】
本発明における「薄膜」なる概念は、特に、およそ3桁のナノメートル領域の厚さを有する薄い層を意味する。このことについては後述する。
【0014】
本発明の有利な実施形態によれば、薄膜イオン伝導性材料は、50nm以上1500nm以下の厚さ、有利には100nm以上1000nm以下の厚さ、特に有利には200nm以上800nm以下の厚さを有する。こうした厚さは実用に適する。
【0015】
本発明の有利な実施形態によれば、イオン伝導率、特に薄膜プロトン伝導性材料のプロトン伝導率は、10−8S/cm以上、有利には10−5S/cm以上、特に有利には10−3S/cm以上である。実際にプロトン伝導率のこれらの値からセンサ装置の利用効率及び品質が大幅に増大するので、実用に適することが判明している。
【0016】
ここで、プロトン伝導率は、例えばインピーダンス分析装置(J.Electrochem.Soc., Vol.143, No.4, 1996の1254頁−1259頁を参照)によって測定される。
【0017】
本発明の有利な実施形態によれば、薄膜プロトン伝導性材料は、主として、
・ポリマー群、有利にはナフィオン、及び/又は、
・セラミック群、有利にはイットリウム酸化物Y、又は、
・ペロブスカイト、有利にはバリウムジルコニウム酸化物、乃至、アクセプタがドープされた酸化物/ペロブスカイト、例えばNd:BaCeOもしくはY:SrZrOもしくはY:SrCeOもしくはこれらの材料の混合物
から選択された材料から形成される。
【0018】
この場合、「主として」なる語は、その割合が90重量%以上、有利には95重量%以上、特に有利には98重量%以上、最も有利には99重量%以上であることを意味する。
【0019】
本発明の有利な実施形態によれば、2つの電極のうち一方、有利には双方が、多孔性を有するように構成される。これは、センサ装置、特に薄膜プロトン伝導性材料への気体の通流が改善されるので、本発明にとって特に有利である。
【0020】
ポーラスの断面積は数ナノメートルから数十もしくは数百マイクロメートルの範囲にある。電極材料として、有利には、触媒作用を有する金属、例えばPt,Pd,Au,Niが用いられる。つまり、有利な実施形態によれば、電極のうち一方もしくは双方は、主として、Pt,Pd,Au,Niもしくはこれらの混合物を含む群から選択された材料から形成される。
【0021】
本発明の有利な実施形態では、センサ装置はさらに、多孔性領域を含むマイクロメカニカル支持体基板を含み、当該多孔性領域の上方に電極及び薄膜プロトン伝導性材料が配置される。これは、支持体基板の一方側で安定性が得られ、他方側に充分に検出可能な気体乃至充分に測定可能な気体が達するため、実用上有利である。
【0022】
本発明の有利な実施形態では、薄膜プロトン伝導性材料は、少なくとも部分的に一方側もしくは両側がプロトン伝導性薄膜層でコーティングされる。これにより、薄膜プロトン伝導性材料を腐食に対して保護することができる。
【0023】
この場合、1nm以上100nm以下、有利には10nm以下の厚さの薄膜が用いられる。
【0024】
有利には、薄膜プロトン伝導性材料は、主として、イットリウムドープされたジルコニウム酸化物、アルミニウム酸化物、ハフニウム酸化物、セリウム酸化物、タンタル酸化物もしくはこれらの混合物を含む群から選択された材料から形成される。
【0025】
本発明の有利な実施形態によれば、センサ装置はさらにメンブレイン領域を定める開放口を有し、2つの電極のうち一方は開放口を通って延在する。
【0026】
センサ装置(又は、装置が複雑である場合はその一部)の製造方法として、スパッタリングやレーザーアプレーションなどの物理的蒸着法、又は、CVDや原子層堆積などの化学的蒸着法が用いられる。
【0027】
この種のセンサ装置は、例えば、火災報知器、又は、自動車分野における排気ガスセンサ、又は、安全技術上の燃料電池もしくは自動排気システムの監視装置において使用される。
【0028】
本発明の上述した各実施形態で使用される要素の寸法、形状、材料及びその他の技術的コンセプトは特別な除外条件を有さず、適用分野に応じて、既知の選択基準で任意に利用可能である。
【0029】
本発明の詳細すなわち他の特徴及び利点は、従属請求項及び以下に説明する図示の実施例から得られる。
【実施例】
【0030】
図1には、本発明の実施例のセンサ装置の概略的な断面図が示されている。図1に見られるように、センサ装置は、前面VS及び後面RSを有する支持体基板1を備えている。ここでは、支持体基板1は、有利には、半導体プロセスで加工/パターニング可能な材料から形成されている。この材料として、ケイ素、ガリウムヒ化物、ケイ素炭化物、ガリウム窒化物などの"古典的な"半導体を用いてもよいし、Foturan(R)などの技術ガラスを用いてもよい。支持体基板1には、後面RSから前面VSへ延在しかつ測定領域Bを定義する開放口Kが設けられている。ここで、開放口Kおよびその周辺領域を覆うように、薄膜プロトン伝導性材料5が塗布されている。支持体基板1はさらに、2つの電極E1,E2によって包囲されている。全体として、センサ装置の領域は単純なネルンストセルを形成している。
【0031】
以下に、測定方法を、測定気体が水素であるケースに則して説明する。
【0032】
センサ装置は、図1には示されていないが、前面VSが分析気体室に面し、後面RSが基準気体室の一部を形成するように構成されている。センサ装置は有利にはもちろん周囲に対して密閉される。電極E1,E2は例えば白金を含む。ここで白金は、周知のように、水素を大量に蓄積でき、かつ、水素との反応に対する触媒として作用する。電極E1,E2により、プロトンが、特に水素濃度に依存して、薄膜プロトン伝導性材料5へ導入される。分析気体室と基準気体室(ただし基準気体室はもちろん水素濃度が正確に既知となっている必要がある)との間に濃度勾配が存在する場合、電位が生じ、これが電極E1,E2で測定される。類似の方法は、例えば、炭化水素もしくはNHなどの水素を含む気体を測定する場合にも行われる。この場合にも、プロトンが薄膜イオン伝導性材料5へ導入される。
【0033】
図2には、図1のセルの変形例が示されており、ここでは、薄膜プロトン伝導性材料5の一方側にプロトン伝導性の薄膜層50が塗布されている。こうした薄膜層50は付加的に薄膜プロトン伝導性材料5を腐食から保護する。図示されていないが、こうした薄膜層50を、本発明の有利な実施例として、測定領域及び装置の両側に塗布することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 支持体基板、 5 薄膜プロトン伝導性材料、 VS 前面、 RS 後面、 E1,E2 電極、 B 測定領域、 K 開放口、 50 プロトン伝導性の薄膜層
図1
図2