特許第6474229号(P6474229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474229
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   A63B37/00 522
   A63B37/00 520
   A63B37/00 618
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-216002(P2014-216002)
(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-83008(P2016-83008A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】593171570
【氏名又は名称】羽立工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 周作
(72)【発明者】
【氏名】森 知哉
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−029325(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0112254(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状に凹んだ内周面を有した2つの半球体を互いに接合して中心部に空洞部を形成した球体からなる接合球体を備えて構成されるゴルフボールであって、
前記2つの半球体は、
それぞれ透明または半透明の樹脂材で構成されており、かつ
前記各内周面に前記2つの半球体が互いに接合される接合部分に沿って縁部分が平行に延びる帯状の環状反射面が形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
請求項1に記載したゴルフボールにおいて、
前記環状反射面は、
前記2つの半球体における前記接合部分から奥側に向かって内径を段階的に小さくして複数形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したゴルフボールにおいて、さらに、
前記接合球体の外側に透明または半透明の樹脂材で構成されたカバー層を有することを特徴とするゴルフボール。
【請求項4】
請求項3に記載したゴルフボールにおいて、
前記カバー層は、
同カバー層の半球形状に対応する凹状の成形部を有して互いに合わせられる2つの金型によって成形されたものであり、
前記接合球体は、
前記カバー層の外表面に形成される前記2つの金型の境界痕と同一平面内に前記接合部分が位置した状態で前記カバー層内に配置されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したゴルフボールにおいて、
前記環状反射面は、
内側に向かって凸状に張り出す曲面からなる第1曲面部を周方向に沿って複数有して構成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項6】
請求項5に記載したゴルフボールにおいて、
前記環状反射面は、
互いに隣接する前記第1曲面部間に外側に向かって凸状に張り出す曲面からなる第2曲面部を有して構成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載したゴルフボールにおいて、
前記2つの半球体は、
前記各内周面の最奥部が曲面で構成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載したゴルフボールにおいて、
前記環状反射面は、
前記接合球体内のすべての前記環状反射面が前記接合球体と同芯であって同接合球体よりも小さな1つの仮想球体に内接して形成されることを特徴とするゴルフボール。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載したゴルフボールにおいて、
前記環状反射面は、
表面が多数の凹凸形状で形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンドゴルフやパークゴルフに用いるゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、グラウンドゴルフやパークゴルフに用いるゴルフボールが各種提案されている。例えば、下記特許文献1には、ゴルフボールを構成する2つの透明な半球体の各内周面を複数の多角形平面を組み合わせた多面体で構成することによって奥行き感や深み感のある模様を形成したゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4718907号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたゴルフボールにおいては、2つの透明な半球体を互いに接合して形成しているため、2つの半球体の接合部分が不可避的に出現してゴルフボールの美観を損ねるという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、2つの半球体を互いに接合した部分に出現する接合線を目立ち難くして美観を向上させることができるゴルフボールを提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、凹状に凹んだ内周面を有した2つの半球体を互いに接合して中心部に空洞部を形成した球体からなる接合球体を備えて構成されるゴルフボールであって、2つの半球体は、それぞれ透明または半透明の樹脂材で構成されており、かつ各内周面に前記2つの半球体が互いに接合される接合部分に沿って縁部分が平行に延びる帯状の環状反射面が形成されていることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、ゴルフボールは、ゴルフボールを構成する2つの半球体の各内周面に2つの半球体が互いに接合される接合部分に沿って帯状に延びる環状反射面が形成されているため、2つの半球体の接合部分が環状反射面によって目立ち難くなり美観を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフボールにおいて、環状反射面は、前記2つの半球体における接合部分から奥側に向かって内径を段階的に小さくして複数形成されていることにある。
【0009】
このように構成した本発明の特徴によれば、ゴルフボールは、環状反射面が前記2つの半球体における接合部分から奥側に向かって内径を段階的に小さくして複数形成されているため、2つの半球体の接合部分が複数の環状反射面によってより目立ち難くなり美観を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフボールにおいて、さらに、接合球体の外側に透明または半透明の樹脂材で構成されたカバー層を有することにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフボールは、接合球体の外側に透明または半透明の樹脂材で構成されたカバー層を有するため、接合球体とは異なる特性の樹脂材、例えば、耐候性、耐摩耗性、弾力性または比重の異なる樹脂材をカバー層として用いることにより仕様の異なるゴルフボールを形成することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフボールにおいて、カバー層は、同カバー層の半球形状に対応する凹状の成形部を有して互いに合わせられる2つの金型によって成形されたものであり、接合球体は、カバー層の外表面に形成される前記2つの金型の境界痕と同一平面内に前期接合部分が位置した状態でカバー層内に配置されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフボールは、カバー層の外表面に形成された2つの金型の境界痕と接合球体の接合部分とが同一平面内に位置するように形成されているため、前記境界痕が目立ち難くなり美観を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフボールにおいて、環状反射面は、内側に向かって凸状に張り出す曲面からなる第1曲面部を周方向に沿って複数有して構成されていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフボールは、環状反射面が半球体の内側に向かって凸状に張り出す曲面からなる第1曲面部を周方向に沿って複数有して構成されているため、外部から第1曲面部に入射した光を入射角に応じて分散して反射させることができ、ゴルフボールの使用時おける光輝感を増すことできる。これにより、ゴルフボールは、接合球体における2つの半球体の境界部分の接合線を目立ち難くすることができるとともに、使用時におけるゴルフボールの視認性や美観を高めることができる。特に、グラウンドゴルフやパークゴルフが土の地面上(バンカーを含む)で行われる場合には、ゴルフボールの外表面に付着した土埃やゴルフボールの周囲に舞い上がる土埃などでゴルフボールの視認性が低下するとともに、プレーヤが高齢者の場合にはゴルフボールの視認性は更に低下するため、ゴルフボールの光輝性が増すことの効果は大きいものである。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフボールにおいて、環状反射面は、互いに隣接する第1曲面部間に外側に向かって凸状に張り出す曲面からなる第2曲面部を有して構成されていることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフボールは、環状反射面が互いに隣接する第1曲面部間に外側に向かって凸状に張り出す曲面からなる第2曲面部を有して構成されているため、外部から2つの第1曲面部間に入射した光を第2曲面部への入射角に応じて分散して反射させることができ、ゴルフボールの使用時おける光輝感を更に増して視認性および美観を増すことできる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、ゴルフボールにおいて、2つの半球体は、各内周面の最奥部が曲面で構成されていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフボールは、接合球体を構成する2つの半球体の各内周面の最奥部が曲面で構成されているため、外部から各半球体の最奥部に入射した光を入射角に応じて分散して反射させることができ、ゴルフボールの使用時おける光輝感を更に増して視認性および美観を増すことできる。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、ゴルフボールにおいて、環状反射面は、接合球体内のすべての環状反射面が前記接合球体と同芯であって同接合球体よりも小さな1つの仮想球体に内接して形成されることにある。
【0021】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフボールは、接合球体内のすべての環状反射面が接合球体と同芯であって同接合球体よりも小さな1つの仮想球体に内接して形成されるため、接合球体における外表面と空洞部との間の肉厚を略均一にしてゴルフボールの打撃箇所に対する挙動の不均一性を抑えて挙動を安定させることができる。
【0022】
また、本発明の他の特徴は、ゴルフボールにおいて、環状反射面は、表面が多数の凹凸形状で形成されていることにある。
【0023】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフボールは、環状反射面の表面に多数の凹凸形状で形成されているため、接合球体内に入射した光を乱反射(拡散反射)することにより2つの半球体の接合部分をより目立ち難くするとともに、使用によってゴルフボールの外表面に形成される細かなキズも目立ち難くなり美観を向上させることができる。なお、環状反射面の表面に形成する凹凸形状は、環状反射面の表面に多数の細かな突起を形成したものであり、各突起の形状は粒状(例えば、球状、錘状、石状)、線状(例えば、ヘアライン)またはシワ状(例えば、シボ状)で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの外観構成の概略を示す斜視図である。
図2図1に示したゴルフボールの構成の概略を示す正面図である。
図3図2に示したゴルフボールの構成の概略を示す正面断面図である。
図4図1に示したゴルフボールにおける接合球体を構成する半球体の構成の概略を示す正面断面図である。
図5図4に示した半球体の構成の概略を示す平面図である。
図6図4に示した半球体の成形する半球体成形金型の構成および成形過程を模式的に示す断面図である。
図7図1に示したゴルフボールにおける接合球体の外側にカバー層を成形するカバー層成形金型の構成を模式的に示す断面図である。
図8図7に示したカバー層成形金型による成形過程を模式的に示す断面図である。
図9】本発明の変形例に係るゴルフボールの外観構成の概略を示す斜視図である。
図10図9に示したゴルフボールの構成の概略を示す正面断面図である。
図11図9に示したゴルフボールにおける接合球体を構成する半球体の構成の概略を示す平面図である。
図12】(a)〜(c)は、本発明の変形例に係るゴルフボールの環状反射面に形成される凹凸部の一部断面であり、(a)は半球状に突出する凹凸部を示しており、(b)は錘状に突出する凹凸部を示しており、(c)は溝状に形成された凹凸部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るゴルフボールの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るゴルフボール100の外観構成の概略を示した斜視図である。また、図2は、図1に示したゴルフボール100の構成の概略を示した正面図である。また、図3は、図2に示したゴルフボール100の構成の概略を示した正面断面図である。なお、図1および図2においては、ゴルフボール100の内部構造を破線で示している。このゴルフボール100は、グラウンドゴルフやパークゴルフにおいてクラブで打たれる直径が60mmの競技用ボールである。
【0026】
(ゴルフボール100の構成)
ゴルフボール100は、主として、接合球体110とカバー層120とで構成されている。接合球体110は、ゴルフボール100の内部を構成する透明または半透明な部品であり、同一形状の2つの半球体111を互いに接合して構成されている。各半球体111は、接合球体110のそれぞれ片側半分を構成する部品であり、主として、外面部112、接合部113および内面部114によって構成されている。
【0027】
外面部112は、接合球体110の外表面を構成する部分であり、半球状に形成されている。接合部113は、2つの半球体111を互いに接合する部分であり、平面部が円形の環状に延びて形成されている。この接合部113上の中央部には、2つの半球体111を互いに接合する際に融かされる溶融部113aが接合部113に沿って凸状に形成されている。内面部114は、ゴルフボール100の内部に空洞部115を形成しつつゴルフボール100の外部から入射する光を反射させる部分であり、接合部113側から凹状に凹んで形成されている。この内面部114には、接合部113側から奥側に向かって複数の環状反射面116が形成されている。
【0028】
環状反射面116は、図4に示すように、ゴルフボール100の外部から入射する光を反射させる部分であり、半球体111の中心線L(接合球体110の中心を通り接合部113に対して直交する直線)を中心として帯状の面が環状に延びて形成されている。この場合、環状反射面116は、図5に示すように、複数の第1曲面部116aと複数の第2曲面部116bとを互いに組み合わせて構成されている。
【0029】
第1曲面部116aは、中心線L側に凸状に張り出す曲面で構成されている。また、第2曲面部116bは、互いに隣接する2つの第1曲面部116aを繋ぐ曲面であり、第1曲面部116aよりも大きな曲率でかつ接合球体110の外側に凸状に張り出す曲面で構成されている。すなわち、第1曲面部116aと第2曲面部116bとは、互いに交互に形成されている。本実施形態においては、第1曲面部116aおよび第2曲面部116bは、それぞれ8ずつ周方向に均等配置されている。また、第1曲面部116aおよび第2曲面部116bは、本実施形態においては、平滑な滑らかな曲面に形成されている。なお、図1図4においては、第1曲面部116aと第2曲面部116bとの境界部分を破線または実線の細線で示している。
【0030】
この環状反射面116は、内面部114内において接合部113側から奥側に向かって複数の環状反射面116が中心線Lを中心として段階的に内径を小さくして(すなわち、相似形で)形成されている。本実施形態においては、環状反射面116は、1つの半球体111の内面部114内に5つ形成されている。この場合、各環状反射面116は、半球体111内のすべての環状反射面116が接合球体110と同芯であって同接合球体110よりも小さな1つの仮想球体Cに内接するように形成される。また、内面部114の最奥部114aは、接合球体110の外側に凸状に張り出す曲面で構成されている。本実施形態においては、内面部114の最奥部114aは、接合球体110の外側に凸状に張り出す球面で構成されている。
【0031】
この半球体111は、透明または半透明な樹脂材、例えば、アイオノマー樹脂材やオレフィン系樹脂材で形成されている。そして、接合球体110は、互いに同一形状に形成された2つの半球体111が熱溶着によって一体化されて構成されている。
【0032】
カバー層120は、接合球体110の全面を覆う部分であり、透明または半透明な樹脂材によって構成されている。この場合、カバー層120は、ゴルフボール100の仕様を満たす樹脂材で構成される。したがって、カバー層120は、接合球体110と同じ樹脂材で構成されることがあるととともに、接合球体110とは異なる樹脂材で構成されることもある。このカバー層120は、ゴルフボール100がグラウンドゴルフやパークゴルフで規定されている外径となる厚さで接合球体110の外表面上に成形される。
【0033】
(ゴルフボール100の製造)
次に、上記のように構成したゴルフボール100の製造方法について説明する。まず、作業者は、接合球体110を成形するための半球体成形金型200を用意する。半球体成形金型200は、図6に示すように、対を構成して半球体111の片面ずつを成形する第1金型210と第2金型220とで構成されている。第1金型210は、半球体111における一方の面である接合部113および内面部114をそれぞれ成形する金型であり、接合部113および内面部114の各形状を反転した形状の第1成形部211が形成されている。本実施形態においては、第1金型210は、2つの半球体111を同時に成形するために2つの第1成形部211がランナー部212を介して形成されている。また、第1金型210には、樹脂材料を2つの第1成形部211にランナー部212を介して導くためのスプルー部213が形成されている。
【0034】
一方、第2金型220は、半球体111における他方の面である外面部112を成形する金型であり、外面部112の形状を反転した形状の第2成形部221が形成されている。本実施形態においては、第2金型220は、2つの半球体111を同時に成形するために2つの第2成形部221がランナー部222を介して形成されている。なお、第1金型210および第2金型220に形成する第1成形部211および第2成形部221の数は、適宜決定されるものであり、それぞれ1つずつ形成されていてもよいし、それぞれ3つ以上ずつ形成されていてもよい。
【0035】
次に、作業者は、半球体成形金型200を公知の射出成形機機(図示せず)に取り付けて射出成形機を操作することにより半球体111の射出成形を行う。ここで、射出成形機は、主として、第1金型210および第2金型220の開閉を行う図示しない型締めユニットと、第1金型210におけるスプルー部213に溶融した樹脂材料を射出する射出ユニット230を備えて構成されている。したがって、射出成形機は、第1金型210と第2金型220とを閉じた半球体成形金型200内に射出ユニット230から溶融した樹脂材を射出することにより半球体111の成形を行う。
【0036】
次に、作業者は、半球体成形金型200内から成形した半球体111を取り出した後、2つの半球体111を互いに接合して接合球体110を成形する。具体的には、作業者は、前記成形した半球体111からランナー部212,222およびスプルー部213にそれぞれ対応する不要部分を取り除いた後、熱風式や超音波式の公知の溶着装置(図示せず)を用いて2つの半球体111を互いに溶着により接合する。この場合、作業者は、2つの半球体111における各接合部113にそれぞれ形成した溶融部113aを溶融させた状態で2つの半球体111の各接合部113を互いに貼り合わせることにより2つの半球体111を接合する。また、この場合、作業者は、2の半球体111における各第1曲面部116a同士および各第2曲面部116b同士を互いに対向させて貼り合わせるが、各第1曲面部116a同士および各第2曲面部116b同士を敢えてずらして貼り合わせることもできる。
【0037】
次に、作業者は、接合球体110の外面部112上にカバー層120を成形する。具体的には、作業者は、カバー層120を成形するためのカバー層成形金型300を用意する。カバー層成形金型300は、図7に示すように、対を構成してカバー層120の片面ずつを成形する第1金型310と第2金型320とで構成されている。
【0038】
第1金型310は、カバー層120における外表面の半分を成形する金型であり、この半分の球面の各形状を反転した形状の第1成形部311が形成されている。本実施形態においては、第1金型310は、1つの第1成形部311が形成されている。この場合、第1金型310には、第1成形部311に溶融した樹脂材料を導くためのスプルー部312が形成されている。また、第1金型310には、支持ピン313が設けられている。支持ピン313は、カバー層成形金型300内で接合球体110を浮かせた状態で支持するとともに、第1金型310内からゴルフボール100を離脱させる際のエジェクトピンとして機能する。
【0039】
一方、第2金型320は、カバー層120における外表面の残余の半分を成形する金型であり、この残余の半分の球面の各形状を反転した形状の第1成形部321が形成されている。本実施形態においては、第2金型320は、1つの第2成形部321が形成されている。この場合、第2金型320には、第1成形部321に溶融した樹脂材料を導くためのスプルー部322が形成されている。また、第2金型320には、支持ピン323が設けられている。支持ピン323は、前記支持ピン313と同様に、カバー層成形金型300内で接合球体110を浮かせた状態で支持するとともに、第2金型320内からゴルフボール100を離脱させる際のエジェクトピンとして機能する。なお、第1金型310および第2金型320に形成する第1成形部311および第2成形部321の数は、適宜決定されるものであり、それぞれ2つ以上ずつ形成されていてもよい。
【0040】
作業者は、カバー層成形金型300を公知の射出成形機機(図示せず)に取り付けて射出成形機を操作することによりカバー層120の射出成形を行う。ここで、射出成形機は、前記と同様に、主として、第1金型310および第2金型320の開閉を行う図示しない型締めユニットと、第1金型310におけるスプルー部312に溶融した樹脂材料を射出する射出ユニット330を備えて構成されている。
【0041】
作業者は、射出成形機を操作することにより第1金型310内および第2金型320内で支持ピン313,323をそれぞれ突出させるとともに、これらの支持ピン313,323によって接合球体110を第1金型310内および第2金型320内で宙に浮いた状態で支持させる。この場合、作業者は、接合球体110を構成する2つの半球体111の接合部分Jと、第1金型310と第2金型320とが互いに密着する合わせ部Tとが同一平面に位置する向きで接合球体110をカバー層成形金型300内に配置する。そして、作業者は、図8に示すように、射出成形機を操作することにより第1金型310と第2金型320とを閉じたカバー層成形金型300内に射出ユニット330から溶融した樹脂材を射出させる。
【0042】
この場合、射出成形機は、カバー層成形金型300内に溶融した樹脂材料を注入後、所定のタイミングで支持ピン313,323をそれぞれ第1金型310内および第2金型320内から退避させることにより、接合球体110の外側に球面状のカバー層120を成形することができる。したがって、作業者は、カバー層120の成形後、射出成形機を操作することにより第1金型310と第2金型320とを開くことによりカバー層成形金型300内からカバー層120が成形された接合球体110を取り出すことができる。
【0043】
この場合、接合球体110の外側に形成されたカバー層120の外表面には、接合部分Jの径方向外側の対応する位置に第1金型310と第2金型320との境界痕PLが筋状に表れる。そして、作業者は、カバー層120が成形された接合球体110に対してスプルー部312,322に対応する不要部分の除去工程、磨き工程、装飾工程および洗浄工程などの所定の後工程を経てゴルフボール100を完成させることができる。なお、図7および図8においては、ゴルフボール100の主要部の符号のみ付すとともに、接合球体110の内部構造は破線で示している。また、図7および図8においては、スプルー部312の大きさを誇張して示している。
【0044】
(ゴルフボール100の作動)
次に、上記のように構成したゴルフボール100の作動について説明する。ゴルフボール100の使用者は、グラウンドゴルフやパークゴルフの競技においてクラブとともにゴルフボール100を用意する。そして、使用者は、ゴルフボール100をプレーグランド上に配置した後、クラブで打つことにより競技を行うことができる。
【0045】
このようなグラウンドゴルフやパークゴルフの競技において、ゴルフボール100は、2つの半球体111の接合部分Jに対して平行に帯状に延びる環状反射面116が中心線Lに沿って複数形成されているため、環状反射面116を形作る稜線や第1曲面部116aおよび第2曲面部116bからの透過光および反射光によってゴルフボール100の向きに関わらず接合部分Jを目立ち難くすることができる。また、ゴルフボール100は、境界痕PLが2つの半球体111の接合部分Jと同一平面上に形成されているため、接合部分Jおよび環状反射面116によって境界痕PLも目立ち難くすることができる。
【0046】
また、ゴルフボール100は、ゴルフボール100内に入射した光のうちの一部を透過させるとともに他の一部を環状反射面116によって入射角に応じて様々な方向に反射するため、ゴルフボール100の外表面に砂埃やキズが付着した場合、ゴルフボール100の周囲に砂埃が立っている場合、ゴルフボール100が使用者から離れた場合およびゴルフボール100が密集している場合において視認性を高めることができる。
【0047】
また、ゴルフボール100は、接合球体110内のすべての環状反射面116が接合球体110と同芯であって同接合球体110よりも小さな1つの仮想球体Cに内接して形成されるため、接合球体110における外表面と空洞部115との間の肉厚を略均一にしてゴルフボール100の打撃箇所に対する挙動の不均一性を抑えて挙動を安定させることができる。
【0048】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ゴルフボール100は、ゴルフボール100を構成する2つの半球体111の各内面部114に2つの半球体111が互いに接合される接合部分Jに沿って帯状に延びる環状反射面116が同接合部分Jから奥側に向かって内径が段階的に小さくなって複数形成されているため、2つの半球体111の接合部分Jが環状反射面116によって目立ち難くなり美観を向上させることができる。
【0049】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、接合球体110を構成する2つの半球体111の内面部114にそれぞれ5つずつの環状反射面116を形成した。しかし、各半球体111の各内面部114内に形成する環状反射面116は、必ずしも上記実施形態に限定されるものではなく、少なくとも1つ以上形成されていれば接合部分Jを目立ち難くすることができる。しかし、この場合、環状反射面116は、半球体111の内面部114における接合部113側から最奥部114a側に向かって複数形成することによって接合部分Jをより効果的に目立ち難くすることができる。また、環状反射面116は、接合球体110を構成する2つの半球体111間で互いに異なる数で形成することができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、環状反射面116は、2つの曲面、すなわち、第1曲面部116aと第2曲面部116bとで構成した。しかし、環状反射面116は、帯状の反射面が接合部分に沿って環状に延びて形成されていればよい。したがって、環状反射面116は、第1曲面部116aのみまたは第2曲面部116bのみで構成することができるとともに、全周に亘って単一の曲率(換言すれば、全周に亘って単一の内径)からなる筒状に形成されていてもよい。なお、環状反射面116は、例えば、第1曲面部116aのみで構成する場合、互いに隣接する第1曲面部116a同士を直接繋げて構成する。また、環状反射面116は、複数の第1曲面部116aおよび/または複数の第2曲面部116bで構成する場合、それぞれ複数の第1曲面部116a間や第2曲面部116b間で曲率を異ならせることもできる。
【0052】
また、環状反射面116は、平面で構成することもできる。例えば、環状反射面116は、図9ないし図11にそれぞれ示すように、それぞれ平面で構成された8つの平面部116cを互いに隣接配置することによって平面視で八角形に構成されている。そして、この環状反射面116は、半球体111の内面部114における接合部113側から最奥部114a側に向かって大きさを段階的に小さくして(すなわち、相似形で)複数形成されている。この平面部116cからなる環状反射面116を備えたゴルフボール100においては、ゴルフボール100に入射した光のうちの一部を透過するとともに他の一部を平面部116cによって入射角に応じた方向に反射させて接合部分Jを目立ち難くすることができる。
【0053】
なお、環状反射面116は、第1曲面部116a、第2曲面部116bおよび平面部116cを適宜組み合わせて構成することもできる。また、環状反射面116は、1つの半球体111において接合部113側から最奥部114a側に向かって複数形成される各環状反射面116を互いに異なる形状で構成することもできる。例えば、環状反射面116は、接合部113に隣接する環状反射面116を平面部116cで構成するとともに、この平面部116cで構成した環状反射面116に隣接する最奥部114a側の環状反射面116を第1曲面部116aと第2曲面部116bとで構成することができる。また、図9においては、ゴルフボール100の内部構造を破線で示している。
【0054】
また、上記実施形態においては、各環状反射面116は、半球体111内のすべての環状反射面116が接合球体110と同芯であって同接合球体110よりも小さな1つの仮想球体Cに内接するように形成した。しかし、各環状反射面116は、必ずしも1つの仮想球体Cに内接するように形成する必要はなく、接合球体110内で自由に形成することができる。
【0055】
また、上記実施形態においては、ゴルフボール100は、接合球体110の外表面にカバー層120を形成した。しかし、ゴルフボール100は、接合球体110のみで構成することもできる。この場合、接合球体110の外径は、グラウンドゴルフやパークゴルフの競技用ボールとして認められる外径に形成される。
【0056】
また、上記実施形態においては、ゴルフボール100は、境界痕PLが2つの半球体111の接合部分Jと同一平面上に形成されるように構成した。しかし、ゴルフボール100は、境界痕PLが2つの半球体111の接合部分Jと必ずしも同一平面上に形成される必要はなく、境界痕PLが軽微な場合には境界痕PLが接合部分Jに対して交わるように形成することもできる。
【0057】
また、上記実施形態においては、接合球体110を構成する2つの半球体111の各最奥部114aは球面状に形成した。しかし、半球体111の最奥部114aは、必ずしも球面状に形成する必要はなく、球面状以外の形状、例えば、曲面状や平面状に形成することができるとともに、これらを組み合わせて形成することもできる。
【0058】
また、上記実施形態においては、各環状反射面116は、表面を平滑に形成した。しかし、各環状反射面116は、表面に多数の凹凸形状を形成して構成してもよい。具体的には、各環状反射面116は、表面から突出または凹む凹凸部117を多数形成して、表面をエンボス状やシボ状の凹凸面(でこぼこした、またはザラザラした凹凸面)に形成することができる。この場合、凹凸部117は、例えば、図12(a)に示すように半球状に形成したり、図12(b)に示すように錘状(例えば、三角錐、四角錐、五角錐または六角錐など)に形成したり、図12(c)に示すように線状の溝状に凹んで形成することができる。これによれば、ゴルフボール100は、接合球体110内に入射した光を乱反射(拡散反射)することにより2つの半球体111の接合部分Jをより目立ち難くするとともに、使用によってゴルフボール100のカバー層120の外表面に形成される細かなキズも目立ち難くなり美観を向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
L…ゴルフボールおよび半球体の中心線、C…仮想球体、J…接合部分、T…合わせ部、PL…境界痕、
100…ゴルフボール、
110…接合球体、111…半球体、112…外面部、113…接合部、113a…溶融部、114…内面部、114a…最奥部、115…空洞部、116…環状反射面、116a…第1曲面部、116b…第2曲面部、116c…平面部、117…凹凸部、
120…カバー層、
200…半球体成形金型、210…第1金型、211…第1成形部、212…ランナー部、213…スプルー部、220…第2金型、221…第2成形部、222…ランナー部、230…射出ユニット、
300…カバー層成形金型、310…第1金型、311…第1成形部、312…スプルー部、313…支持ピン、320…第2金型、321…第2成形部、322…スプルー部、323…支持ピン、330…射出ユニット。
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