(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の構成では、内蔵されているICチップが有しているコイル状のループ面A1(
図5A参照)が、周囲の金属面に直交するように配置されている。このため、ICタグを薄型化しようとする場合、ループ面A1の一辺の寸法が、ICタグ全体の厚みの限界となってしまう。また、特許文献1に開示のICタグは、ICタグ全体の厚みが大きく、この厚みの大きな部分が取り付けた後の邪魔な突起部となりやすく、さらに柔軟性も備えておらず、たとえば湾曲した湾曲面に貼付する等が困難である。
【0006】
その一方で、金属対応していないUHF帯域のICタグの中には、小型のものもあるが、リーダ装置との間で通信を行える距離(飛距離)が、たとえば5mm程度のように非常に小さくなっている。そのため、飛距離をより増大させたいという要望もある。また、5mm程度の飛距離でも良いとしたとしてもあまりに小型化し過ぎると、そのICタグを実装する際に指等でつまむことが困難となり、設置部位に取り付ける際の作業性が悪化してしまう、という問題もある。
【0007】
そのため、薄型化を達成し、飛距離を伸ばすことができ、さらには取り付けの際の作業性を悪化させない、例えば摘める程度に小型化されたICタグを実現することが望まれている。さらに、ICタグが柔軟性を備えることが望ましい。
【0008】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、薄型化を達成すること、邪魔になりやすい突起部を軽減しながらも飛距離を伸ばすこと、取り付けの際の作業性を悪化させない程度に小型化すること、のうちの少なくとも一つを達成することのできるUHF帯域のICタグを提供しよう、とするものである。また、これらの目的に加えて、柔軟性を備えるICタグを提供することが一層好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、外部の通信装置からUHF帯域の電磁波を照射した場合に
、表面に定在波の高周波電流を生じさせると共に、金属箔を材質として形成される金属箔部と、金属箔部が表面側および裏面側の両面側に積層されると共に、柔軟に変形可能な材質から形成され、かつ高周波電流に応じた磁束を通過させる磁気回路を形成する媒質としての誘電体層と、誘電体層に取り付けられ、ICチップとこのICチップに接続されたコイルアンテナとを備え、金属箔部に高周波電流が流れた場合にコイルアンテナとの間で電磁結合を生じさせることで外部の通信装置との間で通信を行うためのICタグ本体と、を備え、ICタグ本体のうちコイルアンテナが存在する表面の傾斜方向を、金属箔部と誘電体層とが積層される厚み方向成分と金属箔部の表面方向成分とに分けた場合、表面方向成分が厚み方向成分よりも大きくなるように、ICタグ本
体が誘電体層に取り付けられている、ことを特徴とするICタグが提供される。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、誘電体層は、柔軟に変形可能な材質から形成されると共に、ICタグ本体は、誘電体層の内部に配置され、かつ表面側および裏面側の金属箔部にそれぞれ厚みが最小となるように近接もしくは接触する状態で配置されている、ことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、誘電体層は、柔軟に変形可能な材質から形成されると共に、ICタグ本体は、誘電体層の表面側に取り付けられていて、その取り付け部位には金属箔部の一部を切り欠くと共に磁束を通過させる切欠部が設けられている、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、切欠部は、ICタグ本体の全体を露出させる大きさに設けられている、ことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、切欠部に隣接して、高周波電流を流す導電路が設けられていると共に、導電路を挟んで切欠部とは反対側には、金属箔部の一部を切り欠いた第2切欠部が設けられている、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、切欠部は、金属箔部の長手方向に沿って長尺状に設けられていて、ICタグ本体は、長尺状の切欠部に沿ってコイルアンテナが長尺状に設けられている、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、金属箔部のうち前記切欠部の周辺の一部は、ICタグ本体を押さえて固定するように設けられている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、薄型化を達成すること、柔軟性を備えながらも飛距離を伸ばすこと、取り付けの際の作業性を悪化させない程度に小型化すること、のうち少なくとも一つを達成することのできるUHF帯域のICタグを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係るICタグ10Aについて、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明する場合があるものとし、X方向をICタグ10Aの長手方向とし、X1側は
図1において奥側、X2側は
図1において手前側とする。またY方向をICタグ10Aの幅方向とし、Y1側は
図1において右側とし、Y2側は
図1において左側とする。また、Z方向をICタグ10Aの厚み方向とし、Z1側は
図2において奥側、Z2側は
図2において手前側とする。
【0019】
<ICタグ10Aの構成について>
図1は、ICタグ10Aの構成を示す平面図である。
図2は、
図1に示すICタグ10AをA−A線で切断した状態を示す側面断面図である。
図1および
図2に示すように、ICタグ10Aは、金属箔部20と、誘電体層30と、ICタグ本体40Aとを有している。
【0020】
金属箔部20は、たとえばアルミニウム箔のような金属箔と接着材層とが積層された構成となっている。たとえばアルミニウム箔を用いた金属箔部20の厚みが80μのものがあるが、その中でアルミニウム箔は5μ〜10μ程度の厚みとなっていて、アルミニウム箔は接着材層に比べて非常に薄く設けられている。なお、金属箔部20の厚みは種々変更可能であるが、ICタグ10A全体での薄型化を図るためには、より薄い方が好ましい。また、誘電体層30が接着性を有する場合には、金属箔部20から接着材層を除去するように構成しても良い。
【0021】
かかる金属箔部20は、
図3および
図4に示すように、折り返し部分21を有する構成となっている。そのため、金属箔部20は、一方の側面を閉塞しているが、他方の側面は閉塞せずに開放させた構成となっている。なお、
図3は、
図1に示すICタグ10AをB−B線に沿って切断した状態を示す側面断面図である。また、
図4は、
図1に示すICタグ10Aの斜視図であり、ICタグ本体40Aを磁力線φが通過する様子を示す図である。
【0022】
この金属箔部20の寸法は、放射されたUHF帯域の電磁波を受信した場合に、金属箔部20の表面には
図4に示すような高周波電流iが流れるが、金属箔部20はその高周波電流iが共振するような長さ(共振長)に設けられている。具体的には、金属箔部20で挟まれた誘電体30で短縮された波長をλ1とすると、
図3に示すように折り返し部分21を有して表裏を有するように折り返される構造で、これは、よく知られる基本的な共振長である半波長共振の構造に相当する。この折り返し構造が共振するためには、真空中または空気中の波長の概ね1/4程度の長さ(4分の1波長サイズ)となることが好ましい。なお、空気中の電磁波の波長をλ0 とし、誘電体中の電磁波の波長をλ1 とすると、λ1 =λ0 /√(ε・μ)によって誘電体中の電磁波の波長が求められる。
【0023】
しかしながら、金属箔部20の表面においては、誘電体層30の他に、金属箔部20の接着材層の影響や、その接着材層に混入した気泡他、様々な影響を受けるので、実際の表面における波長は、誘電体30の中の電磁波の波長λ1を近似的に求めておいて、これを基準に、種々な寸法で試作を行い、その試作品に対する実際の測定に基づいて決定される。実際の試作では、ICタグ10Aの金属箔部20のY方向の、すなわち幅に相当する寸法が比較的大きく影響する。幅を狭くすると共振寸法は長い方にずれ、狭くすると短いほうにずれるという短縮効果があるなど、最良の金属箔部の長さ(L)を決める実験で確かめられている。
【0024】
誘電体30は、高周波電流に応じた磁束を通過させる磁気回路を形成する媒質として機能するものである。なお、この媒質の補足説明は、概略次の通りである。ここで言う媒質とは、電磁気学で知られるとおり、真空や空気も含み電磁界に対する作用は後でも説明するが、電磁波成分のうち、電界の波長短縮作用をする成分としての誘電体、磁界の波長短縮作用をする成分としての磁性体に分類でき、媒質はこれら2つの作用を同時に兼ね備える。媒質を物質で見た場合、誘電体の性質と磁性体の性質の比率の大小はあるにせよこれらの性質を同時に兼ね備える。媒質定数で、同時に兼ね備えるとは誘電率と透磁率の積で表される。UHF帯域においては、電界を低損失で通過させる誘電体に対応した物質は一般的な樹脂に多く存在するが、磁界に対応する低損失の磁性体が入手困難になる。そこで、磁気回路は磁性体を用いることを避け、誘電体を代用することがある。たとえゴムに永久磁石になる磁性体粉を混ぜたゴムまたは樹脂を用いたとしても、UHF帯域では磁性体としての磁界の波長短縮作用はなく単に磁界をそのまま通過させ、電界のみに作用しその波長を短縮させることになる。
【0025】
電磁気学では、誘電率や透磁率は真空中の誘電率(ε0)と真空中の透磁率(μ0)をそれぞれ1と置いたときの倍数としてそれぞれ比誘電率(ε)、比透磁率(μ)を定義し、誘電率とはε・ε0なる積に、透磁率とはμ・μ0なる積としている。ただし、本実施の形態では、波長の短縮率、すなわち倍数に着目し、真空中の誘電率(ε0)と真空中の透磁率(μ0)を省略し、比誘電率(ε)とすべきところこれを誘電率(ε)、比透磁率(μ)とすべきところこれを透磁率(μ)として説明している。
【0026】
上述のように、誘電体層30は、誘電性を備える材質から形成されていて、低損失であり、誘電率(ε)および透磁率(μ)のいずれも高い値の材質であることが好ましい。また、UHF帯域においても、媒質定数(ε・μ)を低下させずに、高い値の材質であることも望まれている。
【0027】
詳述すると、HF帯域の周波数では、電磁波の波長短縮に寄与する媒質定数ε(誘電率)、μ(透磁率)のいずれにおいても、低損失で高い値となる物質が存在している。また、HF帯域の周波数のICタグにおいて、手のひらサイズに小型化されたものは、誘導電磁波で通信を行うものが一般的であり、その誘導電磁波の性質上、トランスの一次コイル、二次コイルの間のように、一次コイル側に相当するリーダ装置のアンテナコイルと、二次コイル側に相当するICタグのアンテナコイルとの相互誘導が通信を行うための原理となっている。
【0028】
そのため、ICタグのコア材としては、磁界(磁力線)をどれだけ引き寄せて透過させるかという、透磁率(μ)が低損失で値の高い、たとえばフェライト系の物質が用いられることが多い。
【0029】
しかしながら、HF帯域の周波数で有効な高い値の透磁率(μ)となるコア材は、UHF帯域(例えば920MHz)の周波数では、空気等とほとんど変わらないような低い透磁率(μ)の値となってしまうことが知られている。したがって、UHF帯域において小型のICタグを実現しようとする場合、UHF帯域においても媒質定数(ε・μ)を低下させずに、高い値になることも望まれている。つまり、透磁率(μ)が1でも誘電率(ε)が1以上なら波長短縮することになる。
【0030】
このような材質としては、たとえばフッ素樹脂、PPS、PET等のような高分子材料があり、またセラミック粉末を高分子材料に混合した複合材料も挙げられる。かかる複合材料としては、磁性を帯びることが可能な磁性粉を、天然ゴムや合成ゴムあるいはエラストマーや、軟質塩化ビニルに混合させた磁性ゴムが挙げられる。そして、磁性を帯びることが可能な磁性粉の中でも、たとえば硬磁性のフェライトのような永久磁石として機能する磁性粉を用いる場合には、たとえば鉄のような磁性材の表面に磁力によって取り付けることが可能となる。つまり、透磁率(μ)による波長短縮効果が無くても、ICタグ10Aの接着が完全になされていない時でも、ICタグ10Aを一時的に固定することができ、取り付けの作業性を向上させることができる。
【0031】
また、
図3に示すように、ICタグ本体40Aは、ICタグ基板41と、ICチップ42と、コイルアンテナ43とを備えている。ICタグ基板41は、略矩形状をなす平板形状に形成されている。ICタグ基板41としては、たとえばPETを始めとした樹脂製のフィルムを用いることができる。かかるICタグ基板41には、ICチップ42と、コイルアンテナ43とが設けられているが、そのうちICチップ42は、各種のデータを記憶する。また、コイルアンテナ43は、電磁誘導方式の場合には、近くを流れる高周波電流iに対してフレミング右手などに代表される電磁気の法則により決まる方向のコイルアンテナ43の電流を生じさせるが、電波方式の場合には、コイルアンテナ43が直接受信した電波の成分の中の磁界に基づいて、やはりフレミングの右手などの法則により決まる向きに高周波電流を生じさせる。いずれであっても金属箔部20には高周波電流iが流れて共振状態となることで、この金属箔部20に囲まれた内部で強い電磁結合状態となる。この電磁結合でコイルアンテナ43に電流が流れ、ICチップ42も動作することになる。
【0032】
ここで、本実施の形態では、平板状のICタグ本体40Aは、ICタグ10Aの幅方向(Y方向)に対して、傾斜して設けられている。このとき、ICタグ本体40Aのうちコイルアンテナ43が存在する表面の傾斜方向を、金属箔部20と誘電体層30とが積層される厚み方向成分(Z方向の成分)と金属箔部20の表面方向成分とに分けた場合、厚み方向成分よりも表面方向成分の方が大きくなるような傾斜角度となっており、具体的には、45度よりも小さな傾斜角度となっている。
【0033】
なお、ICタグ本体40Aの寸法例としては、たとえば縦横の長さが共に2.5mm、厚みが0.4mmとするものがある。しかしながら、ICタグ本体40Aの寸法はこれに限られず、種々の寸法のものを用いることが可能である。
【0034】
図5は、共振長の金属箔部20を備えるICタグ10Aにおいて、ICタグ本体40Aの傾斜角度を種々変更した場合に磁力線φが通過するイメージを示す図である。この
図5において、ICタグ本体40Aは、位置P1から位置P4の各位置に位置している。位置P1は、従来のように、設置面に対してICタグ本体40Aが直交する状態で配置されている場合を示している。位置P2は、
図2に示すように、ICタグ本体40Aが誘電体層30の内部で傾斜した状態を示している。位置P3は、ICタグ本体40Aの傾斜角度θがほぼゼロであるが、磁力線φはICタグ本体40Aを通過する状態を示している。位置P4は、ICタグ本体40Aが誘電体層30の外部に位置し、かつICタグ本体40Aが設置面に対して傾斜している状態を示している。
【0035】
図5から明らかなように、位置P1の場合が最大の電磁結合となる。しかしながら、位置P1から位置P4のいずれの場合であっても、磁力線φのループは、ICタグ本体40Aを通過する。このように、磁力線φのループがICタグ本体40Aを貫通する状態では、その磁力線φのループのいずれの位置にICタグ本体40Aが存在していても、電磁結合の強弱の差は生じてもコイルアンテナ43に電流が流れてICチップ42が動作する。
【0036】
なお、
図2から
図4に示すように、ICタグ本体40Aが設置面に対して傾斜角度θで傾斜している場合には、ICタグ本体40Aを通過する磁力線φの本数が減じられ、電磁結合が弱まるので、高周波電流iも減少する。しかしながら、この場合には、従来構成と比較してICタグの厚みを、ICチップ42が動作する限界まで傾けて低減することができる。
【0037】
以上のような構成によると、ICタグ本体40Aは、誘電体層30の内部で傾斜した状態で配置されている。このため、ICタグ本体40Aが傾斜した分だけICタグ10Aを薄型化することが可能となる。たとえば、全体の厚みが1mmといった程度まで薄型化することが可能となる。
【0038】
また、誘電体層30は磁性ゴムのような柔軟性を備える材質から形成することができる。この場合には、ICタグ10Aを容易に曲げることができる。このため、たとえば各種のパイプ等のような湾曲している部分に対しても、ICタグ10Aを容易に取り付けることが可能となる。
【0039】
さらに、本実施の形態では、金属箔部20にUHF帯域の電磁波、特に遠方からの放射電波が照射されると、この表面に定在波の高周波電流iを生じさせる。そのため、金属箔部20は遠方と通信を行うための放射電波用のアンテナとしての機能を果たすことが可能となり、リーダ/ライタといった外部の通信装置との間で通信を行う際の飛距離を伸ばすことが可能となる。
【0040】
また、金属箔部20の長さは、高周波電流iが共振するような共振長に設けられている。具体的には、UHF帯域の920MHzであって、誘電体30の誘電率(ε)が1の場合、約80mmであり、仮にフェライト粉が混入した磁性ゴムの誘電率を約4とすると、金属箔部20の長さLは、おおむね40mmとなるが、Y方向の幅が短縮効果を持つことがありこの効果と、折り返し部21の半波長(80mmに相当)を半分にする効果等を加味して、約30mm程度とすることが可能となる。このようなサイズは、指で摘める程度の大きさである。そのため、指で摘むことが困難なほどには小型化はされておらず、そのためICタグ10Aを設置部位等に取り付ける際の作業性が悪化するのを防止可能となる。
【0041】
なお、誘電体層30の材質やあるいはICタグ10AのY方向の幅を種々調整することによって、金属箔部20の長さLを調整することも可能となる。
【0042】
また、本実施の形態では、ICタグ本体40Aは、誘電体層30の内部に配置されているが、その配置の態様は、ICタグ10Aの表側および裏側に位置する金属箔部20に接触する状態で配置されている。このため、ICタグ10Aのより一層の薄型化が可能となる。
【0043】
さらに、本実施の形態では、ICタグ10Aは、表側と裏側の形状が同様の形状に設けられている。そのため、ICタグ10Aに接着剤や粘着剤を塗布等する場合には、表裏の区別をする必要がないので、塗布等における作業性を向上させることができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るICタグ10Bについて、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係るICタグ10Bでは、上述したICタグ10Aと同様の構成については、その説明を省略することがある。例えばICタグ10Bの長さや幅を決める手法は、ICタグ10Aと同じなので省略する。
【0045】
<ICタグ10Bの構成について>
図6は、ICタグ10Bの構成を示す平面図である。
図7は、
図6に示すICタグ10BをC−C線で切断した状態を示す側面断面図である。
図6および
図7に示すように、ICタグ10Bは、金属箔部20Bと、誘電体層30と、ICタグ本体40Bとを有している。
【0046】
本実施の形態では、金属箔部20Bには切欠部22が設けられている。切欠部22は、
図6に示す構成では幅方向(Y方向)の中心を挟んで両方側(Y1側とY2側)に設けられている。そのうちの一方側(
図6ではY1側)の切欠部22には、ICタグ本体40Bが配置されている。なお、一対の切欠部22の間には、高周波電流iを流すことが可能な部分として、導電路23が設けられている。
【0047】
なお、ICタグ本体40Bを切欠部22に配置する場合、たとえばICタグ本体40Bの裏面等に接着剤を塗布したり、接着性を有するテープ部材を貼付する等により、誘電体層30の表面に取り付けられる。
【0048】
以上のような構成によっても、上述の第1の実施の形態と同様の作用効果を発揮させることができる。
【0049】
加えて、第2の実施の形態における構成では、設置面に対するICタグ本体40Bの傾斜角度θは、ほぼゼロとなる。すなわち、上述の厚み方向成分は、ほぼゼロとなっている。しかも、ICタグ本体40Bは、金属箔部20の一部を切り欠いた切欠部22に取り付けられていて、誘電体層30の表面側に取り付けらているので、誘電体層30には内蔵されていない。すなわち、ICタグ本体40Bは、金属箔部20の表面と同等の位置に配置される。それにより、ICタグ10Bの厚みを薄くするための制約条件が減り、ICタグ10Bの厚みを一層薄くすることが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態では、切欠部22は、ICタグ本体40Bの全体を露出させる大きさに設けられている。このため、切欠部22に対して、ICタグ本体40Bを容易に取り付けることができる。それにより、ICタグ本体40Bの取り付けの際の作業性を向上させることができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、切欠部22に隣接して、高周波電流を流れる導電路23が設けられていると共に、導電路23を挟んで切欠部22とは反対側には、金属箔部20の一部を切り欠いた、さらなる切欠部22(第2切欠部に対応)が設けられている。そのため、導電路23を流れる高周波電流iの密度は大きくなり、それに応じて導電路23の周囲の磁界が集中して強くなる。したがって、その導電路23に近接するICタグ本体40Bのコイルアンテナ43に流れる電流を大きくすることができる。そのため、外部の通信装置との間で通信を行う際の飛距離を伸ばすことが可能となる。
【0052】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係るICタグ10Cについて、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係るICタグ10Cでは、上述したICタグ10AおよびICタグ10Bと同様の構成については、その説明を省略することがある。例えばICタグ10Cの長さや幅を決める手法は、ICタグ10Aと同じなので省略する。
【0053】
<ICタグ10Cの構成について>
図8は、ICタグ10Cの構成を示す平面図である。
図9は、
図8に示すICタグ10CをD−D線で切断した状態を示す側面断面図である。
図8および
図9に示すように、ICタグ10Cは、金属箔部20Cと、誘電体層30と、ICタグ本体40Cとを有している。
【0054】
本実施の形態においても、上述した第2の実施の形態におけるICタグ10Bと同様に、金属箔部20Cには切欠部22Cが設けられているが、この切欠部22Cは、ICタグ10Cの長手方向(X方向)に沿って長尺状に設けられている。そして、この長尺状の切欠部22CにICタグ本体40Cが配置される。ここで、本実施の形態のICタグ本体40Cも、長尺状に設けられている。特に、ICタグ本体40Cにおけるコイルアンテナ43Cが長尺状となるように設けられている。つまり、長尺状のICタグにあわせた切欠形状である。
【0055】
以上のようなICタグ10Cによっても、上述の第1の実施の形態と同様の作用効果を発揮させることができる。加えて、本実施の形態では、切欠部22Cは、金属箔部20Cの長手方向に沿って長尺状に設けられている。また、ICタグ本体40Cは、長尺状のコイルアンテナ43Cを備えている。このため、金属箔部20Cの表面を流れる高周波電流iによる磁束線φを、長尺状のコイルアンテナ43Cにより多く通過させることができ、それによってコイルアンテナ43Cを流れる電流を大きくすることが可能となり、外部の通信装置との間で通信を行う際の飛距離を伸ばすことが可能となる。
【0056】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係るICタグ10Dについて、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係るICタグ10Dでは、上述したICタグ10AおよびICタグ10BおよびICタグ10Cと同様の構成については、その説明を省略することがある。例えばICタグ10Dの長さや幅を決める手法は、ICタグ10Aと同じなので省略する。
【0057】
<ICタグ10Cの構成について>
図10は、ICタグ10Dの構成を示す平面図である。
図11は、
図10に示すICタグ10DをE−E線で切断した状態を示す側面断面図である。
図10および
図11に示すように、ICタグ10Dは、金属箔部20Dと、誘電体層30と、ICタグ本体40Dとを有している。
【0058】
本実施の形態では、金属箔部20Dは、
図8に示す切欠部22Cと類似する、ICタグ10Dの長手方向(X方向)に沿って長尺状に設けられている切欠部22Dを有している。ここで、本実施の形態のICタグ10Dでは、
図8に示すICタグ10Cとは異なり、ICタグ本体40Dの幅方向(Y方向)の概ね半分(
図10ではY2側の概ね半分)を金属箔部20Dで覆うことで、金属箔部20Dを押さえて固定するように構成されている。そのため、ICタグ本体40Dの全面露出の場合に生じる防御性能の低下という課題について、これを軽減することができる、という特徴を持たせることが可能となっている。
【0059】
上述のように、本実施の形態のICタグ本体40Dも、上述した第3の実施の形態で述べたような長尺状のコイルアンテナ43Dを備えている。なお、ICタグ本体40Dの構成は、上述したICタグ本体40Cと同様であるので、その説明は省略する。
【0060】
ICタグ本体40Dは、そのコイルアンテナ43Dの概ね半分が切欠部22Dに位置する。そのため、そのコイルアンテナ43Dの概ね半分は、外部に露出するように配置され、その露出しているコイルアンテナ43Dを介して、磁力線φのループを形成することが可能となっている。加えて、本実施の形態において、ICタグ10Dの長さをL、切欠部22Dの長さをL1とすると、上記の長さLは、高周波電流iが共振するような長さ(共振長)に設けられていて、切欠部22Dの長さL1は、その共振がさらに最良となるように長さで調整する整合部とすることができる。
【0061】
以上のようなICタグ10Dによっても、上述の第1の実施の形態と同様の作用効果を発揮させることができる。加えて、本実施の形態では、金属箔20DがICタグ10Dの一部を覆うような構成でコイルアンテナ43Dと重複されるように切欠部22Dが狭く設けられている。そのため、高周波電流iによる磁束線φは、コイルアンテナ43D以外の部分を通過するのを防止でき、長尺状のコイルアンテナ43Dにより多く通過させることができ、それによってコイルアンテナ43Dを流れる電流を大きくすることが可能となる。
【0062】
<実験結果について>
以上のような第1、第3、および第4の実施の形態のICタグ10A,10C,10Dにおける実験結果について述べる。なお、この実験では、UHF帯域の周波数を920MHzとし、外部の通信装置として、Atid社製のAT880ハンディリーダを用いた。また、誘電体層30としては、上述したような永久磁石で鉄板などに吸着させる目的で選んだ磁性ゴムを用いている。また、金属箔部20,20C,20Dの誘電体層30と接着するための接着層を含んだ全厚みが80μmであり、そのうち金属箔をアルミニウム箔とした金属部分の厚みを5μmとしている。
【0063】
このようなICタグ10A,10C,10Dを30cm四方の金属板上に設置し、その上空での応答限界を以下の飛距離とする。
【0064】
先ず、第1の実施の形態のICタグ10Aとして、全長が31mm、幅が10mm、厚みを1.0mmとした場合には、電磁波の飛距離が約33cmとなっている。また、第3の実施の形態のICタグ10Cとして、全長が32.5mm、幅が10mm、切欠部22Dの長さL1が17mm、厚みを0.5mmとした場合には、電磁波の飛距離が15cmとなっている。また、第4の実施の形態のICタグ10Dとして、全長が29.5mm、幅が10mm、切欠部22Dの長さL1が17mm、厚みを1.0mmとした場合には、電磁波の飛距離が33cmとなっている。
【0065】
<変形例>
以上、本発明の第1から第4の実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0066】
上述の実施の形態においては、金属箔部として、アルミニウム箔を用いる場合について述べている。しかしながら、薄い金属であれば、金属箔部の材質はどのようなものであっても良い。たとえば銀箔、銅箔その他の薄い金属を用いることが可能である。また、樹脂製のフィルムの表面に金属材料を蒸着させた薄膜を用いるようにしても良い。
【0067】
なお、フィルムの表面に金属材料を蒸着させる場合には、高周波電流の共振に最適な長さとなる回路パターンを印刷するようにしても良い。
【0068】
また、上述の実施の形態では、ICタグ本体は、1つのみ取り付ける場合について述べている。しかしながら、ICタグに取り付けるICタグ本体は、複数個であっても良い。