特許第6474246号(P6474246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474246オーディオ信号処理回路、車載用オーディオ装置、オーディオコンポーネント装置、電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474246
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】オーディオ信号処理回路、車載用オーディオ装置、オーディオコンポーネント装置、電子機器
(51)【国際特許分類】
   H03H 17/06 20060101AFI20190218BHJP
   H03H 17/02 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   H03H17/06 615K
   H03H17/02 601G
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-248809(P2014-248809)
(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公開番号】特開2016-111593(P2016-111593A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−261014(JP,A)
【文献】 特開平07−176989(JP,A)
【文献】 特開平01−126819(JP,A)
【文献】 特開2005−020554(JP,A)
【文献】 米国特許第5157395(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 17/00−17/08
H04R 3/00− 3/14
G11B 20/10−20/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数N個(Nは2以上の整数)のFIR(Finite Impulse Response)フィルタと、
前記複数N個のFIRフィルタと対応するN個の第1入力ポートと、
前記複数N個のFIRフィルタと対応するN個の第2入力ポートと、
前記複数N個のFIRフィルタと対応するN個の第1出力ポートと、
前記複数N個のFIRフィルタと対応するN個の第2出力ポートと、
を備え、ひとつの半導体基板に集積化され、
各FIRフィルタは、
第1入力端子と、
第2入力端子と、
第1出力端子と、
第2出力端子と、
前記第1入力端子と前記第1出力端子の間に直列接続された複数m個(mは2以上の整数)の遅延素子と、
前記m個の遅延素子に設けられた複数のタップのデータに所定の係数を乗算する複数の乗算器と、
前記第2入力端子に入力されたデータおよび前記複数の乗算器の出力データの加算結果である積和データを前記第2出力端子から出力する加算回路と、
を含み、
i番目(2≦i≦N)のFIRフィルタに関して、
(i)その前記第1入力端子に、(i−1)番目のFIRフィルタの前記第1出力端子のデータが入力され、かつその前記第2入力端子に、(i−1)番目のFIRフィルタの前記第2出力端子のデータが入力される状態と、
(ii)その前記第1入力端子に、i番目の前記第1入力ポートのデータが入力され、かつその前記第2入力端子に、i番目の前記第2入力ポートのデータが入力された状態と、
(iii)その前記第1入力端子に、i番目の前記第1入力ポートのデータが入力され、かつその前記第2入力端子にゼロが入力される状態と、
が切りかえ可能に構成されることを特徴とするオーディオ信号処理回路。
【請求項2】
2〜N番目のFIRフィルタに対応する(N−1)個の第1入力マルチプレクサと、
2〜N番目のFIRフィルタに対応する(N−1)個の第2入力マルチプレクサと、
をさらに備え、
i(2≦i≦N)番目の第1入力マルチプレクサは、(i−1)番目のFIRフィルタの前記第1出力端子のデータとi番目の第1入力ポートのデータを受け、一方を選択して、i番目のFIRフィルタの第1入力端子に出力し、
i(2≦i≦N)番目の第2入力マルチプレクサは、(i−1)番目のFIRフィルタの前記第2出力端子のデータとi番目の第2入力ポートのデータを受け、それらの一方またはゼロを、i番目のFIRフィルタの第2入力端子に出力することを特徴とする請求項1に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項3】
前記(N−1)個の第1入力マルチプレクサおよび前記(N−1)個の第2入力マルチプレクサを制御するコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項4】
1番目のFIRフィルタに対応する1番目の第1入力マルチプレクサをさらに備え、
前記1番目の第1入力マルチプレクサは、前記オーディオ信号処理回路内の別の第1回路ブロックからの入力データと、1番目の第1入力ポートのデータと、を受け、一方を選択して1番目のFIRフィルタの前記第1入力端子に出力することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項5】
少なくともひとつのFIRフィルタの第2出力端子のデータは、前記オーディオ信号処理回路内の別の第2回路ブロックに出力可能に構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項6】
前記N個の第1入力ポートに対応し、それぞれが対応する第1入力ポートのデータを受けるN個の第1レシーバと、
前記N個の第2入力ポートに対応し、それぞれが対応する第2入力ポートのデータを受けるN個の第2レシーバと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項7】
前記第1レシーバおよび前記第2レシーバはそれぞれ、シリアルパラレル変換器を含むことを特徴とする請求項6に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項8】
前記第1レシーバおよび前記第2レシーバはそれぞれ、パラレルデータを出力するバッファを含むことを特徴とする請求項6に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項9】
前記N個のFIRフィルタに対応し、それぞれが対応するFIRフィルタの第1出力端子のデータを受け、対応する第1出力ポートに出力する、N個の第1トランスミッタと、
前記N個のFIRフィルタに対応し、それぞれが対応するFIRフィルタの第2出力端子のデータを受け、対応する第2出力ポートに出力する、N個の第2トランスミッタと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項10】
前記第1トランスミッタおよび前記第2トランスミッタはそれぞれ、パラレルシリアル変換器を含むことを特徴とする請求項9に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項11】
前記第1トランスミッタおよび前記第2トランスミッタはそれぞれ、パラレルデータを受けるバッファを含むことを特徴とする請求項9に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のオーディオ信号処理回路を備えることを特徴とする車載用オーディオ装置。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載のオーディオ信号処理回路を備えることを特徴とするオーディオコンポーネント装置。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載のオーディオ信号処理回路を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号処理回路に関し、特にデジタルフィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
CDプレイヤ、オーディオアンプ、カーステレオ、ポータブルオーディオプレイヤ、ポータブルラジオなどのオーディオ機器、あるいは、スマートホン、タブレットPCなどオーディオ再生機能を備える電子機器には、デジタルのオーディオ信号に、さまざまな信号処理を施すサウンドプロセッサを備える。
【0003】
図1は、オーディオシステムの構成例を示すブロック図である。オーディオシステム1rは、デジタル音源2d、アナログ音源2a、DSP(Digital Signal ProcessorまたはDigital Sound Processor)4、パワーアンプ8、電気音響変換素子9を備える。
【0004】
デジタル音源2dは、デジタルオーディオ信号S1dを生成し、IS(Inter IC Sound)規格に準拠したシリアルバスを介して、DSP4に出力する。デジタル音源2dは、CD(Compact Disc)プレイヤやDVD(Digital Versatile Disc)プレイヤ、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)プレイヤであってもよい。あるいは音源2dは、アナログオーディオ信号をデジタルオーディオ信号に変換するA/Dコンバータを含んでもよい。またアナログ音源2aは、アナログオーディオ信号S1aを出力する。
【0005】
DSP4は、デジタルオーディオ信号S1dあるいはアナログオーディオ信号S1aを受ける。A/Dコンバータ10は、アナログオーディオ信号S1aをデジタルオーディオ信号S2dに変換する。マルチプレクサ(セレクタ)12は、デジタルオーディオ信号S1d、S2dを受け、一方を選択する。デジタル信号処理部20は、マルチプレクサ12が選択したオーディオ信号S3に対して、さまざまなデジタル信号処理を施す。
【0006】
デジタル信号処理としては、イコライジング(EQ)、ゲイン補正(GAIN COMP)、フィルタ(FILTER)、ダイナミックレンジコントロール(DRC)、コンプレッション(COMP)、スケーリング処理(SCALER)、クリップ処理(CLIPPER)、デジタルボリウム制御(VOL)、ステレオ−モノラル変換などのその他の処理(etc.)が例示される。
【0007】
デジタル信号処理部20から出力されるデジタルオーディオ信号S4は、図示しないD/Aコンバータによってアナログオーディオ信号S5に変換される。パワーアンプ8は、アナログオーディオ信号S5を増幅し、電気音響変換素子9であるスピーカやヘッドホンを駆動する。パワーアンプ8は、アナログアンプであってもデジタルアンプであってもよい。
【0008】
近年、音源のハイレゾ化すなわち高サンプリングレート化、多ビット化が進められており、DSP4においても、ハイレゾ音源への対応が求められている。ハイレゾ音源に対応したDSP4では、高音質化のために、IIR(無限インパルス応答)フィルタではなく、回路面積が大きなFIR(有限インパルス応答)フィルタを実装する場合が多く、これがDSP4の回路面積の増大の一因となっている。また、音源のハイレゾ化、音源の多チャンネル化にともないDSP4の回路規模が膨大となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−37212号公報
【特許文献2】特開2004−128650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来では、DSP4のベンダーは、音源のチャンネル数や要求される音質に応じて、個別にDSP4を設計する必要があり、開発コストが増加、開発期間の長期化という問題が生じていた。
【0011】
反対にDSP4のユーザ、すなわちオーディオシステム1rの設計者の立場からすれば、音源のチャンネル数、要求する音質に応じて、ベンダーから提供される複数品番のDSPの中から、適切なひとつを選択する必要があった。
【0012】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、さまざまなチャンネル数、要求される音質レベルに対応可能なオーディオ信号処理回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、オーディオ信号処理回路に関する。オーディオ信号処理回路は、複数N個(Nは2以上の整数)のFIR(Finite Impulse Response)フィルタと、複数N個のFIRフィルタと対応するN個の第1入力ポートと、複数N個のFIRフィルタと対応するN個の第2入力ポートと、複数N個のFIRフィルタと対応するN個の第1出力ポートと、複数N個のFIRフィルタと対応するN個の第2出力ポートと、を備え、ひとつの半導体基板に集積化される。各FIRフィルタは、第1入力端子と、第2入力端子と、第1出力端子と、第2出力端子と、第1入力端子と第1出力端子の間に直列接続された複数m個(mは2以上の整数)の遅延素子と、m個の遅延素子に設けられた複数のタップのデータに所定の係数を乗算する複数の乗算器と、第2入力端子に入力されたデータおよび複数の乗算器の出力データの加算結果である積和データを第2出力端子から出力する加算回路と、を含む。オーディオ信号処理回路は、i番目(2≦i≦N)のFIRフィルタに関して、(i)その第1入力端子に、(i−1)番目のFIRフィルタの第1出力端子のデータが入力され、かつその第2入力端子に、(i−1)番目のFIRフィルタの第2出力端子のデータが入力される状態と、(ii)その第1入力端子に、i番目の第1入力ポートのデータが入力され、かつその第2入力端子に、i番目の第2入力ポートのデータが入力された状態と、(iii)その第1入力端子に、i番目の第1入力ポートのデータが入力され、かつその第2入力端子にゼロが入力される状態と、が切りかえ可能に構成される。
【0014】
オーディオ信号処理回路を複数個組み合わせることにより、チャンネル数や音質要求に応じて、最適なオーディオシステムを構築できる。
【0015】
オーディオ信号処理回路は、2〜N番目のFIRフィルタに対応する(N−1)個の第1入力マルチプレクサと、2〜N番目のFIRフィルタに対応する(N−1)個の第2入力マルチプレクサと、をさらに備えてもよい。i(2≦i≦N)番目の第1入力マルチプレクサは、(i−1)番目のFIRフィルタの第1出力端子のデータとi番目の第1入力ポートのデータを受け、一方を選択して、i番目のFIRフィルタの第1入力端子に出力し、i(2≦i≦N)番目の第2入力マルチプレクサは、(i−1)番目のFIRフィルタの第2出力端子のデータとi番目の第2入力ポートのデータを受け、それらの一方またはゼロを、i番目のFIRフィルタの第2入力端子に出力してもよい。
第1、第2入力マルチプレクサを用いることで、FIRフィルタごとに、信号経路を個別に選択できる。
【0016】
オーディオ信号処理回路は、(N−1)個の第1入力マルチプレクサおよび(N−1)個の第2入力マルチプレクサを制御するコントローラをさらに備えてもよい。
【0017】
オーディオ信号処理回路は、1番目のFIRフィルタに対応する1番目の第1入力マルチプレクサをさらに備えてもよい。1番目の第1入力マルチプレクサは、オーディオ信号処理回路内の別の第1回路ブロックからの入力データと、1番目の第1入力ポートのデータと、を受け、一方を選択して1番目のFIRフィルタの第1入力端子に出力してもよい。
この態様によれば、オーディオ信号処理回路内の別の回路ブロックにおいて、FIRフィルタ以外のデジタル処理が行なわれる場合には、その回路ブロックからの信号を、フィルタリングの対象とすることもできる。
【0018】
少なくともひとつのFIRフィルタの第2出力端子のデータは、オーディオ信号処理回路内の別の第2回路ブロックに出力可能であってもよい。
この態様によれば、オーディオ信号処理回路内の別の回路ブロックにおいて、FIRフィルタ以外のデジタル処理が行なわれる場合に、フィルタリング処理後のデータを、その回路ブロックに供給できる。
【0019】
オーディオ信号処理回路は、N個の第1入力ポートに対応し、それぞれが対応する第1入力ポートのデータを受けるN個の第1レシーバと、N個の第2入力ポートに対応し、それぞれが対応する第2入力ポートのデータを受けるN個の第2レシーバと、をさらに備えてもよい。
【0020】
オーディオ信号処理回路は、N個のFIRフィルタに対応し、それぞれが対応するFIRフィルタの第1出力端子のデータを受け、対応する第1出力ポートに出力する、N個の第1トランスミッタと、N個のFIRフィルタに対応し、それぞれが対応するFIRフィルタの第2出力端子のデータを受け、対応する第2出力ポートに出力する、N個の第2トランスミッタと、をさらに備えてもよい。
【0021】
本発明の別の態様は、車載用オーディオ装置に関する。車載用オーディオ装置は、上述のいずれかのオーディオ信号処理回路を備える。
【0022】
本発明の別の態様は、オーディオコンポーネント装置に関する。オーディオコンポーネント装置は、上述のいずれかのオーディオ信号処理回路を備える。
【0023】
本発明の別の態様は、電子機器に関する。電子機器は、上述のいずれかのオーディオ信号処理回路を備える。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、さまざまなチャンネル数、要求される音質レベルに対応可能なオーディオ信号処理回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】オーディオシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係るオーディオ信号処理回路のブロック図である。
図3図3(a)〜(c)は、第1状態〜第3状態を示す等価回路図である。
図4図4(a)〜(c)は、オーディオ信号処理回路の使用形態を示す図である。
図5】FIRチップと、それと併用されるメインのオーディオ信号処理回路を示すブロック図である。
図6】オーディオ信号処理回路を示すブロック図である。
図7】FIRブロックの一部の構成例を示す図である。
図8】車載用オーディオ装置の構成を示すブロック図である。
図9図9(a)〜(c)は、電子機器あるいはオーディオコンポーネント装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0028】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
図2は、実施の形態に係るオーディオ信号処理回路100のブロック図である。オーディオ信号処理回路100は、複数N個(Nは2以上の整数)のFIRフィルタ106、N個の第1入力ポートINA、N個の第2入力ポートINB、N個の第1レシーバ102A、N個の第2レシーバ102B、(N−1)個の第1入力マルチプレクサ104A、(N−1)個の第2入力マルチプレクサ104B、N個の第1トランスミッタ108A、N個の第2トランスミッタ108B、N個の第1出力ポートOUTA、N個の第2出力ポートOUTBを備え、ひとつの半導体基板に集積化される。本実施の形態では、N=4の場合を説明するが、Nは2以上の任意の整数でありえる。
【0030】
「集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのICとして集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0031】
FIRフィルタ106は、第1入力端子IAと、第2入力端子IBと、第1出力端子OAと、第2出力端子OBと、複数m個(mは2以上の整数)の遅延素子d1〜dmと、複数の乗算器K1〜Kmと、加算回路107と、を含む。m個の遅延素子d1〜dmは第1入力端子IAと第1出力端子OAの間に直列接続される。複数の乗算器K1〜Kmは、m個の遅延素子d1〜dmに設けられた対応する複数のタップのデータに所定の係数を乗算する。加算回路107は、第2入力端子IBに入力されたデータおよび複数の乗算器K1〜Kmの出力データの加算結果である積和データを生成し、第2出力端子OBから出力する。
【0032】
i番目(2≦i≦N)のFIRフィルタ106_iに着目する。オーディオ信号処理回路100は、各FIRフィルタ106_iの入力に関して、3つの状態が切りかえ可能に構成される。
【0033】
(i)第1状態φ1
FIRフィルタ106_iの第1入力端子IAに、(i−1)番目のFIRフィルタ106_(i−1)の第1出力端子OAのデータが入力され、かつその第2入力端子IBに、(i−1)番目のFIRフィルタ106_(i−1)の第2出力端子OBのデータが入力される状態
【0034】
(ii)第2状態φ2
FIRフィルタ106_iの第1入力端子IAに、i番目の第1入力ポートINAのデータが入力され、かつその第2入力端子IBに、i番目の第2入力ポートINBのデータが入力される状態
【0035】
(iii)第3状態φ3
FIRフィルタ106_iの第1入力端子IAに、i番目の第1入力ポートINAのデータが入力され、かつその第2入力端子IBにゼロが入力される状態
【0036】
1番目のFIRフィルタ106_1の入力側は、第2状態φ2または第3状態φ3のいずれかが選択可能であり、第1状態φ1は選択できない。
【0037】
第1状態φ1〜第3状態φ3を切りかえるために、入力マルチプレクサ104A、104Bが設けられる。
【0038】
i(2≦i≦N)番目の第1入力マルチプレクサ104Aは、(i−1)番目のFIRフィルタ106_iの第1出力端子OAのデータとi番目の第1入力ポートINAのデータを受け、一方を選択して、i番目のFIRフィルタ106_iの第1入力端子IAに出力する。
【0039】
i(2≦i≦N)番目の第2入力マルチプレクサ104Bは、(i−1)番目のFIRフィルタ106_(i−1)の第2出力端子OBのデータとi番目の第2入力ポートIBのデータを受け、それらの一方またはゼロを、i番目のFIRフィルタ106_iの第2入力端子IBに出力する。
【0040】
コントローラ120は、複数の第1入力マルチプレクサ104A、複数の入力マルチプレクサ104B、複数の第1レシーバ102A、複数の第2レシーバ102Bを制御する。たとえばコントローラ120は、マルチプレクサやレシーバそれぞれの状態を指示する制御データを格納するメモリもしくはレジスタと、制御データに応じて第1入力マルチプレクサ104A、第2入力マルチプレクサ104B、第1レシーバ102A、第2レシーバ102Bの状態を制御するデコーダと、を含む。
【0041】
第1レシーバ102Aは、対応する第1入力ポートINAのデータを受け、対応する入力マルチプレクサ104Aに出力する。第2レシーバ102Bは、対応する第2入力ポートINBのデータを受け、対応するFIRフィルタ106_iの第2入力端子IBに出力する。
【0042】
また第1トランスミッタ108Aは、対応するFIRフィルタ106_iの第1出力端子OAのデータを受け、対応する第1出力ポートOUTAに出力する。また第2トランスミッタ108Bは、対応するFIRフィルタ106_iの第2出力端子OBのデータを受け、対応する第2出力ポートOUTBに出力する。
【0043】
レシーバ102、トランスミッタ108の形式は特に限定されない。後述するように使用において、オーディオ信号処理回路100は複数の個が連結されうるが、チップ間のデータ伝送をパラレル形式で行なう場合、レシーバ102、トランスミッタ108はそれぞれ、ビット毎のバッファを含んでもよい。チップ間のデータ伝送をシリアル形式で行なう場合、レシーバ102はシリアルパラレル変換器で構成でき、トランスミッタ108はパラレルシリアル変換器で構成できる。
【0044】
図3(a)〜(c)は、第1状態φ1〜第3状態φ3を示す等価回路図である。
第1レシーバ102A、第2レシーバ102Bは、イネーブル、ディセーブルが切りかえ可能に構成されてもよい。図3(a)の第1状態φ1では、第1レシーバ102A、第2レシーバ102Bはともにディセーブルとされる。図3(b)の第2状態φ2では、第1レシーバ102A、第2レシーバ102Bはともにイネーブルとされる。図3(c)の第3状態φ3では第1レシーバ102Aはイネーブル、第2レシーバ102Bはディセーブルとされる。不要なレシーバ102をディセーブルとすることで、消費電力を低減できる。
【0045】
図2に戻る。FIRフィルタ106の出力側に関しては、3つの状態が切りかえ可能となっている。
(i) 第1状態φx
FIRフィルタ106_iの出力端子OA,OBのデータを、出力ポートOUTA,OUBに出力する状態である。
(ii) 第2状態φy
FIRフィルタ106_iの出力端子OA,OBのデータを、隣接するFIRフィルタ106_(i+1)に供給する状態である。
(iii) 第3状態φz
FIRフィルタ106_iの出力端子OBのデータをフィルタ処理後の最終データとして出力ポートOUTBからチップの外部に出力する状態である。
【0046】
第1状態φx〜第3状態φzを切りかえるために、第1トランスミッタ108A、第2トランスミッタ108Bそれぞれも、イネーブル、ディセーブルが切りかえ可能に構成される。i番目のトランスミッタ108Aに関して、対応するFIRフィルタ106_iの第1出力端子OAのデータをOUTAからチップ外部に出力する場合には、イネーブル、対応するFIRフィルタ106_iの第1出力端子OAのデータを隣のFIRフィルタ106_(i+1)に供給する場合には、ディセーブルとする。i番目のトランスミッタ108Bに関して、対応するFIRフィルタ106_iの第2出力端子OBのデータをOUTBからチップ外部に出力する場合には、イネーブル、対応するFIRフィルタ106_iの第2出力端子OBのデータを隣のFIRフィルタ106_(i+1)に供給する場合には、ディセーブルとする。
【0047】
したがって第1状態φxでは、第1トランスミッタ108A、第2トランスミッタ108Bの両方がイネーブルとされる。第2状態φyでは、第1トランスミッタ108A、第2トランスミッタ108Bが両方、ディセーブルされる。第3状態φzでは、第1トランスミッタ108Aがディセーブル、第2トランスミッタ108Bがイネーブルされる。不要なトランスミッタをディセーブルとすることで、消費電力を低減できる。
【0048】
オーディオデータのビット数について説明する。フィルタリング処理の演算途中におけるオーバーフローやアンダーフローを防止するために、FIRフィルタ106の内部のビット幅は、オーディオデータのビット幅よりも多く設計される。FIRフィルタ106_iの第2出力端子OBのデータに関しては、FIRフィルタの最終出力データとする場合には、オーディオデータのビット幅に丸めて出力され、別のFIRフィルタに入力される中間データとして利用される場合には、多いビット幅のまま出力される。
【0049】
以上がオーディオ信号処理回路100の構成である。続いてその使用形態を説明する。
図4(a)〜(c)は、オーディオ信号処理回路100の使用形態を示す図である。図4(a)〜(c)では、レシーバ102、入力マルチプレクサ104、トランスミッタ108は省略される。FIRフィルタ106に示される数字は、FIRフィルタ106のタップ数mである。また第1入力ポートINA、第2入力ポートINBのペアは、まとめてINとして示され、第1出力ポートOUTA、第2出力ポートOUTBのペアは、まとめてOUTBとして示す。
【0050】
図4(a)〜(c)では、3個のオーディオ信号処理回路100が同時に使用される。
【0051】
図4(a)を参照する。この利用形態では、4チャンネルCH1〜CH4のオーディオ信号それぞれが、3個のFIRフィルタが直列接続されてなる1536タップのFIRフィルタにより処理される。具体的には、オーディオ信号処理回路100_1〜100_3それぞれの1番目のFIRフィルタ106_1が3個直列に接続され、第1チャンネルCH1のオーディオ信号が処理される。同様に、2番目のFIRフィルタ106_2が3個直列に接続され、第2チャンネルCH2のオーディオ信号が処理される。第3チャンネルCH3、第4チャンネルCH4も同様である。
【0052】
図4(b)を参照する。この利用形態では、2チャンネルCH1,CH2のオーディオ信号それぞれが、6個のFIRフィルタが直列に接続されてなる3072タップのFIRフィルタにより処理される。具体的には、オーディオ信号処理回路100_1〜100_3それぞれの2個のFIRフィルタ106_1、106_2の6個直列に接続され、第1チャンネルCH1のオーディオ信号が処理される。同様に、オーディオ信号処理回路100_1〜100_3それぞれの2個のFIRフィルタ106_3、106_4の6個直列に接続され、第2チャンネルCH2のオーディオ信号が処理される。
【0053】
図4(c)を参照する。この利用形態では、1チャンネルCH1のオーディオ信号が、12個のFIRフィルタが直列に接続されてなる6144タップのFIRフィルタにより処理される。
【0054】
このように、FIRフィルタ106それぞれの入力側、出力側の状態を切りかえることで、さまざまなチャンネル数や要求される音質レベルに対応することができる。
【0055】
図5は、FIRチップ302と、それと併用されるメインのオーディオ信号処理回路300を示すブロック図である。FIRチップ302は、上述のオーディオ信号処理回路100を含む。オーディオ信号処理回路300は、図1のDSP4のデジタル信号処理部20に相当するブロックを含んでいる。
【0056】
オーディオ信号処理回路300は、M(Mは自然数)チャンネルのセンドポートSEND1〜SENDMと、MチャンネルのリターンポートRTN1〜RTNMを備える。
オーディオ信号処理回路300は、デジタル信号処理部20において処理対象としているMチャンネルのオーディオ信号を、センドポートSEND1〜SENDMから出力可能である。またオーディオ信号処理回路300は、外部で処理されたMチャンネルのオーディオ信号を、リターンポートRTN1〜RTNMにおいて受信可能である。
【0057】
このオーディオ信号処理回路300は、少なくともひとつのFIRチップ302と組み合わせて使用可能である。すなわち、要求される音質にもとづいて、FIRフィルタに必要なタップ数が定まり、必要なタップ数とチャンネル数から必要なFIRチップ302の個数が決定される。セットの設計者は、必要な個数のFIRチップ302を購入し、図4(a)〜(c)に示したように、さまざまな態様のFIRフィルタを構成できる。そして、FIRフィルタの入力に、オーディオ信号処理回路300のセンドポートSENDからのデータを入力し、FIRフィルタの出力を、オーディオ信号処理回路300のリターンポートRTNに戻すように結線すればよい。
【0058】
図6は、オーディオ信号処理回路200を示すブロック図である。このオーディオ信号処理回路200は、図1のDSP4のデジタル信号処理部20に相当するブロックと、FIRブロック202を備える。FIRブロック202は、上述のオーディオ信号処理回路100を備える。
【0059】
図6に示すように、単一のモジュール200の内部に、デジタル信号処理部20とFIRブロック202を混載する場合に、FIRブロック202には、デジタル信号処理部20からのオーディオ信号を受ける機能と、フィルタ処理後のオーディオ信号をデジタル信号処理部20に戻す機能と、が必要となる。
【0060】
図7は、FIRブロック202の一部の構成例を示す図である。第1入力マルチプレクサ104Aには、デジタル信号処理部20からのオーディオ信号S11が入力される。FIRフィルタ106_iがデジタル信号処理部20からのオーディオ信号を処理対象とする場合、入力マルチプレクサ104は、信号S11を選択する。このとき、第2入力マルチプレクサ104Bはゼロを選択する。また第1レシーバ102A、第2レシーバ102Bはいずれもディセーブルである。これを第4状態φ4という。
【0061】
またFIRフィルタ106_iの出力に関して、FIRフィルタ106_iが最終段であり、フィルタ処理後のオーディオ信号S12をデジタル信号処理部20に戻す際には、第1トランスミッタ108A、第2トランスミッタ108Bはいずれもディセーブルとなる。これを第4状態φwという。
【0062】
図6のオーディオ信号処理回路200を複数の個、組み合わせることにより、チャンネル数や要求される音質に応じて、FIRフィルタの規模を自由に設計することができる。
【0063】
続いてオーディオ信号処理回路100を利用したオーディオシステム1の用途を説明する。図8は、車載用オーディオ装置500の構成を示すブロック図である。車載用オーディオ装置500は、5.1チャンネル(フロント右FR、リア右RR、フロント左FL、リア左RL、センターC、サブウーファSW)で構成される。
【0064】
デジタル音源2dは、CDプレイヤやDVDプレイヤなどであり、アナログ音源3は、チューナやモバイルオーディオプレイヤなどである。
【0065】
デジタル音源2dからのデジタルオーディオ信号は、DSP4のデジタル入力端子に入力される。またチューナからのステレオ(Lch、Rch)のアナログオーディオ信号は、TUNERチャンネルに入力され、その他のモバイルオーディオプレイヤなどからのステレオアナログオーディオ信号はAUXチャンネルに入力される。
【0066】
入力セレクタ502およびアンプ504は、RチャンネルとLチャンネルそれぞれに設けられる。入力セレクタ502は、入力チャンネル(Tuner/AUX)を選択し、選択されたチャンネルのシングルエンド形式のアナログオーディオ信号を差動信号に変換する。選択されたチャンネルに差動形式のオーディオ信号が入力される場合、差動変換処理はスキップされる。
【0067】
アナログ/デジタル変換器505Rは、Rチャンネルの差動形式の入力オーディオ信号をデジタルオーディオ信号D1Rに変換し、アナログ/デジタル変換器505Lは、Lチャンネルの差動形式の入力オーディオ信号をデジタルオーディオ信号D1Lに変換する。図7において、アナログ/デジタル変換器505L、505Rの出力信号D1R、D1Lのペア、あるいはデジタル音源2dの出力が、図2におけるデジタルオーディオ信号S1に相当する。
【0068】
DSP4は、デジタルボリウム回路、5バンドイコライザ、ラウドネス回路、クロスオーバフィルタ、バスブースト回路を備え、デジタル音源2dの出力信号あるいはアナログ/デジタル変換器505L、505Rの出力信号D1R、D1Lのペアに対して、所定の信号処理を施す。このDSP4は、図5のオーディオ信号処理回路300、あるいは図6のオーディオ信号処理回路200に相当する。
【0069】
DPS4は、LチャンネルおよびRチャンネルのオーディオ信号を、センドポートSENDから出力する。DSP4には、複数のFIRチップ5_1〜5_3が接続される。FIRチップ5は、図2のオーディオ信号処理回路100、図5のFIRチップ302、あるいは図6のオーディオ信号処理回路200のいずれかである。FIRチップ5の個数は、要求される音質に応じて変更可能である。たとえば3個のFIRチップ5は、図4(b)の態様で接続されてもよい。
【0070】
フィルタ処理後のオーディオ信号は、DSP4のリターンポートRTNに戻される。DSP4は、残りの信号処理を施し、Lチャンネル、RチャンネルおよびMチャンネルのオーディオ信号を出力する。D/Aコンバータ507、アンプ506、ポストフィルタ508はL,R,Mチャンネルごとに設けられる。
【0071】
D/Aコンバータ507はチャンネルごとに設けられ、対応するチャンネルのオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換する。アンプ506は対応するチャンネルのオーディオ信号を増幅する。
【0072】
3チャンネルのオーディオ信号は、ポストフィルタ508、フェーダボリウム510を経て、オーディオ信号は、スピーカごとの5チャンネルに分割される。パワーアンプ8は、オーディオ信号を増幅し、スピーカ9を駆動する。
【0073】
実施の形態に係るオーディオ信号処理回路100は、このような車載用オーディオ装置500に好適に利用できる。
【0074】
オーディオ信号処理回路100は車載用オーディオ装置のみでなく、家庭用のホームオーディオシステムのオーディオコンポーネント装置に利用することもできる。あるいは、オーディオ信号処理回路100は、テレビ、デスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、携帯電話端末、デジタルカメラ、ポータブルオーディオプレイヤなどの電子機器に搭載することもできる。
【0075】
図9(a)〜(c)は、電子機器あるいはオーディオコンポーネント装置の外観図である。図9(a)は電子機器の一例であるディスプレイ装置600である。ディスプレイ装置600は、筐体602、スピーカ9を備える。オーディオ信号処理回路100は、図示しないDSP4、パワーアンプ8等とともに筐体に内蔵される。
【0076】
図9(b)はオーディオコンポ700である。オーディオコンポ700は、筐体702、スピーカ9を備える。オーディオ信号処理回路100は図示しないDSP4、パワーアンプ8等とともに筐体に内蔵される。
【0077】
図9(c)は電子機器の一例である小型情報端末800である。小型情報端末800は、スマートホン、携帯電話、PHS(Personal Handy-phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレットPC(Personal Computer)、オーディオプレイヤなどである。小型情報端末800は、筐体802、スピーカ9、ディスプレイ804を備える。オーディオ信号処理回路100は、図示しないDSP4、パワーアンプ8などとともに筐体に内蔵される。
【0078】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0079】
(第1変形例)
実施の形態では、第2入力マルチプレクサ104Bが3入力の場合を説明したが、その他の構成としてもよい。たとえば第2レシーバ102Bをそのディセーブル状態においてゼロを出力するよう構成し、第3状態φ3において第2入力マルチプレクサ104Bが第2レシーバ102Bの出力を選択するよう構成してもよい。
【0080】
(第2変形例)
また、複数の状態φ1〜φ3を切りかえる手段としては、第1入力マルチプレクサ104A、第2入力マルチプレクサ104Bを用いることに変えて、あるいはそれに加えて、FIRフィルタ106の出力側にデマルチプレクサを配置して実現してもよい。あるいは、マルチプレクサは、加算器で代用してもよい。すなわち信号Aと信号Bの一方を選択するマルチプレクサを信号AとBを加算する加算器で構成し、選択しない一方がゼロとなるように制御してもよい。
【0081】
(第3変形例)
実施の形態では、コントローラ120によってオーディオ信号処理回路100の内部の状態を制御したが本発明はそれには限定されない。マルチプレクサやレシーバの状態は、ヒューズを用いたメモリや、レーザトリミングを利用して不可逆的に設定してもよい。
【0082】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0083】
1…オーディオシステム、2d…デジタル音源、2a…アナログ音源、4…DSP、5…FIRチップ、8…パワーアンプ、9…電気音響変換素子、10…A/Dコンバータ、12…マルチプレクサ、20…デジタル信号処理部、100…オーディオ信号処理回路、IN…入力ポート、OUT…出力ポート、102…レシーバ、102A…第1レシーバ、102B…第2レシーバ、104…入力マルチプレクサ、104A…第1入力マルチプレクサ、104B…第2入力マルチプレクサ、106…FIRフィルタ、108…トランスミッタ、108A…第1トランスミッタ、108B…第2トランスミッタ、120…コントローラ、200…オーディオ信号処理回路、202…FIRブロック、300…オーディオ信号処理回路、302…FIRチップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9