特許第6474251号(P6474251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474251
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/10 20060101AFI20190218BHJP
   C08L 77/04 20060101ALI20190218BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20190218BHJP
   C12P 13/00 20060101ALN20190218BHJP
【FI】
   C08G69/10
   C08L77/04
   C08L71/00 Y
   !C12P13/00
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-262493(P2014-262493)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-121287(P2016-121287A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596137678
【氏名又は名称】竹田 弘
(73)【特許権者】
【識別番号】591027927
【氏名又は名称】福岡県醤油醸造協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】太田 義久
(72)【発明者】
【氏名】西田 素子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝之
(72)【発明者】
【氏名】竹田 弘
(72)【発明者】
【氏名】野田 義治
(72)【発明者】
【氏名】植木 達朗
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−179534(JP,A)
【文献】 特開平11−343339(JP,A)
【文献】 特表2005−532462(JP,A)
【文献】 特開2001−131283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00−69/50
C08L 71/00−71/14
C08L 77/00−77/12
C12P 13/00−13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−ポリグルタミン酸の部分中和物を多価グリシジル化合物で架橋した架橋体からなり、
前記γ−ポリグルタミン酸の部分中和物を構成するγ−ポリグルタミン酸が、納豆菌の培養により作製されたγ−ポリグルタミン酸であり、
前記γ−ポリグルタミン酸の重量平均分子量が100万〜3000万、分子量100万以上の分子の割合が80質量%以上であり、
前記γ−ポリグルタミン酸の部分中和物のpHが3.5〜6.8であり、
前記多価グリシジル化合物が2価のグリシジル化合物であり、
前記架橋体が粒子状であり、表面架橋剤により表面架橋処理が施されていることを特長とする吸水性樹脂。
【請求項2】
前記γ−ポリグルタミン酸の部分中和物のカチオン成分が、ナトリウムおよび/またはカリウムである請求項1に記載の吸水性樹脂。
【請求項3】
前記γ−ポリグルタミン酸の部分中和物のカチオン成分が、ナトリウムである請求項1に記載の吸水性樹脂。
【請求項4】
前記表面架橋剤が、グリシジルエーテル化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂。
【請求項5】
前記表面架橋剤が、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルまたはポリグリセリンジグリシジルエーテルである請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂。
【請求項6】
荷重下吸収量が7g/g以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸水性樹脂。
【請求項7】
飽和吸収量が30g/g〜100g/gである請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸水性樹脂。
【請求項8】
カチオン源を配合した培地での納豆菌の培養により、重量平均分子量が100万〜3000万、分子量100万以上の分子の割合が80質量%以上のγ−ポリグルタミン酸から構成され、pHが3.5〜6.8のγ−ポリグルタミン酸の部分中和物を得る工程
記γ−ポリグルタミン酸の部分中和物を、2価のグリシジル化合物により架橋し架橋体を製造する工程;および、
前記架橋体を粒子状とした後、架橋体と表面架橋剤とを反応させることにより表面架橋処理を施す工程;を含むことを特長とする吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記γ−ポリグルタミン酸の部分中和物を得る工程と架橋体を製造する工程との間に、
前記γ−ポリグルタミン酸の部分中和物とアニオン源とを混合し、γ−ポリグルタミン酸の部分中和物のpHを3.5〜6.7に調整する工程を有する請求項8に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記表面架橋処理を施す工程において、前記架橋体を粒子状とした後、水および水溶性レベリング剤の存在下で、架橋体と表面架橋剤とを反応させることにより表面架橋処理を施す請求項8または9に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ−ポリグルタミン酸(以下「γ−PGA」という)を用いた吸水性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、その自重の数百倍の水分を吸収することができ、また、吸収した水分を保持することができるため、このような特性を活かして種々の用途に使用されている。このような吸水性樹脂として、特許文献1〜5には原料としてポリアミノ酸を用いたものが提案されている。
【0003】
特許文献1および特許文献3では、特許文献6に記載のγ−PGAが使用されている(特許文献1(段落[0010])参照)。なお、特許文献6に係るγ−PGAは、分子量が50〜100万である(特許文献6(第3頁左下欄第14、15行)参照)。特許文献2の吸水性樹脂は、分子量20万のポリアスパラギン酸が使用されている(特許文献2(段落[0053])参照。)。特許文献4では、ポリアミノ酸の数平均分子量は3000〜200万、重量平均分子量は6000〜400万が好ましいと記載されているが、実施例で使用されているものの分子量は記載されていない(特許文献4(段落[0025]、[0030])参照)。特許文献5には、ポリアミノ酸の分子量については記載されていない。
【0004】
また、特許文献6の他に、γ−PGAに関する技術が提案されている。例えば、特許文献7には、耐塩性菌株バチルス・サブチルスチョンクチャン(Bacillus subtilis var. chungkookjang, KCTC0697BP)によって製造された、平均分子量が5000kDa以上であるγ−PGAが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2005−179534号公報
【特許文献2】特開平10−298282号公報
【特許文献3】特開平11−343339号公報
【特許文献4】特開平10−330478号公報
【特許文献5】特開2001−131283号公報
【特許文献6】特開平1−174397号公報
【特許文献7】特開2008−202043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、原料としてポリアミノ酸を用いた吸水性樹脂が提案されているが、いずれも原料として分子量の小さいγ−PGAが使用されている。このように分子量が小さいγ−PGAを用いた場合、得られる吸水性樹脂の荷重下吸収量および飽和吸収量が劣る傾向がある。分子量が小さいγ−PGAを用いる場合でも、架橋密度を高めることにより荷重下吸収量を高めることができる。しかしながら、架橋密度を高めると飽和吸収量が低下する傾向がある。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、γ−PGAの部分中和物の架橋体からなり、荷重下吸収量および飽和吸収量に優れた吸水性樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明の吸水性樹脂は、γ−PGAの部分中和物を多価グリシジル化合物で架橋した架橋体からなり、前記γ−PGAの部分中和物を構成するγ−PGAが、納豆菌の培養により作製された、重量平均分子量が100万〜3000万のγ−PGAであり、前記γ−PGAの部分中和物のpHが3.5〜6.8であることを特長とする。
【0008】
納豆菌の培養により作製された、重量平均分子量が100万〜3000万のγ−PGAを使用し、γ−PGAの部分中和物のpHを3.5〜6.8とすることにより、合成した吸水性樹脂は十分な荷重下吸収量および飽和吸収量が得られる。
【0009】
前記γ−PGAの部分中和物のカチオン成分は、ナトリウムおよび/またはカリウムが好ましく、より好ましくはナトリウムである。前記多価グリシジル化合物は2価のグリシジル化合物が好ましい。本発明の吸水性樹脂を構成する架橋体は、表面架橋剤により表面架橋処理が施されていることが好ましい。前記表面架橋剤としては、グリシジルエーテル化合物が好ましく、より好ましくはポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルである。本発明の吸水性樹脂は、飽和吸収量が30g/g〜100g/g、荷重下吸収量が7g/g〜30g/gであることが好ましい。
【0010】
本発明には、納豆菌の培養により、重量平均分子量が100万〜3000万のγ−PGAを製造する工程;前記γ−PGAとカチオン源とを混合して、pHが3.5〜6.8のγ−PGAの部分中和物を得る工程;および、前記γ−PGAの部分中和物を、多価グリシジル化合物により架橋し架橋体を製造する工程;を含む吸水性樹脂の製造方法も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、γ−PGAの部分中和物の架橋体からなり、飽和吸収量および荷重下吸収量に優れた吸水性樹脂が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[吸水性樹脂]
本発明の吸水性樹脂は、γ−PGAの部分中和物を多価グリシジル化合物で架橋した架橋体からなる。そして、前記γ−PGAの部分中和物を構成するγ−PGAが、納豆菌の培養により作製された、重量平均分子量が100万〜3000万のγ−PGAであり、前記γ−PGAの部分中和物のpHが3.5〜6.8であることを特長とする。
【0013】
(γ−PGA)
前記γ−PGAの部分中和物について説明する。前記γ−PGAは、納豆菌の培養により得られるものが好ましい。
【0014】
γ−PGAを生産する微生物としては、重量平均分子量100万以上のγ−PGAを生産する微生物であれば特に制限しない。例えば、Bacillus subtilis、Bacillus anthracis、Bacillus licheniformis、Bacillus megaterium、Bacillus subtilis var. chungkookjang、Bacillus halodurans、Bacillus subtilis var. natto、Natrialba aegyptiacaなどを挙げることが出来る。また、好ましくは、Bacillus subtilis var. natto、市販納豆の製造に用いられている納豆菌であり、これらの納豆菌メーカーにて入手できる。
【0015】
前記γ−PGAの重量平均分子量(Mw)は、100万以上が好ましく、より好ましくは200万以上、さらに好ましくは230万以上であり、特に好ましくは250万以上であり、3000万以下が好ましく、より好ましくは2000万以下、さらに好ましくは1300万以下である。重量平均分子量が100万以上であれば合成した吸水性樹脂が十分な荷重下吸収量および飽和吸収量を有するようになり、3000万以下であれば水溶液粘度が高くなりすぎず吸水性樹脂の合成が容易に行える。
【0016】
前記γ−PGAは、分子量100万以上の分子の割合が、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、前記γ−PGAは、分子量60万未満の分子の割合が、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0017】
前記γ−PGAの部分中和物を構成するカチオン成分は特に限定されない。前記カチオン成分としては、アンモニウムイオン、金属イオン、および、有機陽イオンのいずれであってもよい。金属イオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、銀などの1価の金属イオン;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの2価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。前記金属イオンは、単独または2種以上の混合物であってもよい。
【0018】
前記有機陽イオンとは、炭素鎖を有する陽イオンである。前記有機陽イオンとしては、特に限定されず、例えば、有機アンモニウムイオンが挙げられる。前記有機アンモニウムイオンとしては、例えば、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオンなどの1級アンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンなどの2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンなどの3級アンモニウムイオン;ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの有機陽イオンは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記γ−PGAの部分中和物のpHは、3.5以上、好ましくは3.6以上、さらに好ましくは3.7以上であり、6.8以下、好ましくは6.7以下、さらに好ましくは6.6以下である。前記γ−PGAの部分中和物のpHが3.5未満、あるいは、6.8を超えると合成した吸水性樹脂に十分な荷重下吸収量および飽和吸収量が得られない。γ−PGAのpHは、カチオン成分の使用量や、透析によって調整できる。なお、未中和のγ−PGAのpHは3.3である。
【0020】
(多価グリシジル化合物)
本発明の吸水性樹脂を構成する前記架橋体は、γ−PGAの部分中和物を多価グリシジル化合物で架橋したものである。前記多価グリシジル化合物としては、分子内にグリシジル基を2個以上有するものであれば、特に限定されない。前記多価グリシジル化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどの2価のグリシジル化合物;グリセリントリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどの3価以上のグリシジル化合物;などが挙げられる。前記多価グリシジル化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、多価グリシジル化合物としては、2価または3価のグリシジル化合物が好ましく、より好ましくは2価のグリシジル化合物である。
【0021】
(添加剤)
前記吸水性樹脂は、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末、有機質繊維状物などの添加剤を含んでもよい。前記添加剤を含有させる場合、架橋体中の添加剤の含有率は、0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0022】
(表面架橋剤)
前記架橋体は表面架橋剤により表面架橋処理が施されていることが好ましい。表面架橋処理を施すことにより、さらに吸水性能を向上させることができる。前記表面架橋処理に使用される表面架橋剤としては、カルボキシ基、カルボキシレート基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられ、例えば、グリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、アルデヒド化合物などが挙げられる。これらの中で、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルなどのジグリシジルエーテル系化合物が適しており、特にジエチレングリコールジグリシジルエーテルが吸水性樹脂中のカルボキシレート基との反応性から最も適している。
【0023】
表面架橋剤の添加量は前記架橋体に対して、通常10ppm〜100000ppm、好ましくは50ppm〜5000ppmである。
【0024】
(表面改質剤)
前記架橋体は、さらに表面改質剤で処理されていてもよい。表面改質剤としては、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物などの多価金属化合物;ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのポリカチオン化合物;無機微粒子;炭化水素基を含有する表面改質剤;フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する表面改質剤;及び、ポリシロキサン構造をもつ表面改質剤などが挙げられる。
【0025】
前記架橋体の形状は特に限定されないが、粒子状であることが好ましい。前記架橋体の重量平均粒子径は、吸水性樹脂の用途に応じて適宜調整すればよい。
【0026】
例えば、吸水性樹脂を吸収性物品に使用する場合、前記架橋体の重量平均粒子径(μm)は、100μm以上が好ましく、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは250μm以上、特に好ましくは300μm以上であり、800μm以下が好ましく、より好ましくは700μm以下、さらに好ましくは600μm以下、特に好ましくは500μm以下である。吸水性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が、前記範囲内であれば、吸収性能がさらに良好となる。なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。医療分野、農業分野、化粧品分野、電気・電子分野、土木分野などにおいては、100μm未満が好ましい場合もある。
【0027】
前記吸水性樹脂の飽和吸収量は、30g/g以上が好ましく、より好ましくは33g/g以上、さらに好ましくは35g/g以上であり、100g/g以下が好ましく、より好ましくは95g/g以下、さらに好ましくは90g/g以下である。前記飽和吸収量は、吸水性樹脂がどの程度の量を吸水できるかを示す尺度である。
【0028】
前記吸水性樹脂の荷重下吸収量は7g/g以上が好ましく、より好ましくは8g/g以上、さらに好ましくは9g/g以上である。荷重下吸収量は吸水性樹脂に所定の荷重をかけた状態で吸水させる。荷重がかかった状態で、どの程度の量を吸水できるかを示す尺度である。
【0029】
前記吸水性樹脂の保水量は、20g/g以上が好ましく、より好ましくは22g/g以上、さらに好ましくは25g/g以上であり、90g/g以下が好ましく、より好ましくは85g/g以下、さらに好ましくは80g/g以下である。保水量は、吸水性樹脂が吸収した液をどの程度保持できるかを示す尺度である。前記保水量が20g/g以上であると、少量の吸水性樹脂によって体液の保持容量を所定のレベルに保つことができる。
【0030】
[吸水性樹脂の製造方法]
以下、吸水性樹脂の製造方法について説明する。本発明の吸水性樹脂の製造方法は、γ−PGAの部分中和物を製造する工程(生成工程);前記γ−PGAとカチオン源および/またはアニオン源とを混合して、γ−PGAの部分中和物のpHを調整する工程(pH調整工程);および、前記γ−PGAの部分中和物を、多価グリシジル化合物により架橋し架橋体を製造する工程(架橋工程);を含む。
【0031】
(生成工程)
前記γ−PGAを製造する工程では、納豆菌の培養により、重量平均分子量が100万〜3000万のγ−PGAを製造する。
【0032】
納豆菌の培養方法は、納豆菌がγ−PGAの生産し得る培養方法であれば特に制限は無いが、γ−PGAを容易に回収するためには液体培養が好ましい。
【0033】
納豆菌の培養に用いる培地には、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要な栄養源を含有するものを使用する。炭素源としては、例えば、糖類(グルコースなど)が挙げられる。窒素源としては、例えば、アミノ酸やその塩類(グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウムなど)、ペプチド類やその塩類(大豆ペプチドなど)などが挙げられる。無機塩類としては、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム・7水和物などが挙げられる。栄養源としては、リン酸塩(リン酸水素2ナトリウム・12水和物、リン酸2水素カリウムなど)、ビタミン類(ビオチンなど)が挙げられる。前記培地にカチオン源を配合させることにより、pHが3.5〜6.8のγ−PGAの部分中和物を得ることもできる。この場合、後述するpH調整工程を省略することもできる。
【0034】
培養温度は30℃以上が好ましく、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは40℃以上であり、50℃以下が好ましく、より好ましくは45℃以下である。また、培養温度40℃〜50℃で培養を行い、培養途中で培養温度を40℃未満に変更することも好ましい。培養途中で培養温度を40℃未満に変更することで、γ−PGA分解酵素の生産を抑制することができる。培養温度を40℃未満に変更する時期としては、対数増殖期の中期から後期が挙げられる。
【0035】
(pH調整工程)
前記pH調整工程では、γ−PGAまたはその部分中和物とカチオン源および/またはアニオン源とを混合するか、あるいはγ−PGAの部分中和物を透析して、pHが3.5〜6.8のγ−ポリグルタミン酸の部分中和物を得る。なお、γ−PGAの部分中和物を透析後、カチオン源および/またはアニオン源と混合してもよい。具体的には、γ−PGAとカチオン源とを混合する方法;γ−PGAの部分中和物とアニオン源とを混合する方法;γ−PGAの部分中和物を透析した後、アニオン源と混合する方法;γ−PGAを酸性透析した後、カチオン源と混合する方法;などが挙げられる。
【0036】
前記γ−PGAとカチオン源および/またはアニオン源とを混合する方法としては、溶媒の存在下でγ−PGAとカチオン源および/またはアニオン源とを混合する方法が挙げられる。溶媒としては、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルモルホリン及びそれらの混合物などが挙げられる。前記カチオン源の使用量は、γ−PGAが有するカルボン酸1当量に対して、0.1当量以上10当量未満が好ましい。
【0037】
前記カチオン源としては、前記カチオン成分を含む化合物が挙げられる。このようなカチオン源としては、前記金属イオンを含む金属水酸化物、金属炭酸化物、有機酸塩が挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。金属炭酸化物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。有機酸塩としては、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、フマル酸ナトリウムなどが挙げられる。前記アニオン源としては、無機酸、有機酸などが挙げられる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。有機酸としてはクエン酸などが挙げられる。
【0038】
γ−PGAの部分中和物を透析する方法は特に限定されないが、例えば、γ−PGAの部分中和物の水溶液を透析膜チューブに入れた後、この透析膜チューブを脱イオン水または酸性溶液に浸漬する方法が挙げられる。前記透析膜は、γ−PGA分子を通さず、カチオン成分を通すことができるものが使用できる。前記酸性溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。
【0039】
(架橋工程)
架橋体を製造する工程では、前記γ−PGAの部分中和物を、多価グリシジル化合物により架橋する。架橋反応を行う方法は特に限定されないが、溶媒の存在下でγ−PGAと多価グリシジル化合物を混合し、加熱する方法が挙げられる。溶媒としてはグリシジル化合物を溶解もしくは分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、水、アルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等)、ケトン系溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル系溶剤(例えば、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、アミド系溶剤(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルモルホリン等)、スルホキシド系溶剤(例えば、ジメチルスルホキシド等)及びそれらの混合物が挙げられる。また、溶媒として緩衝液を用いることも好ましい。緩衝液としては、クエン酸緩衝液(クエン酸とクエン酸ナトリウムとの混合溶液)、酢酸緩衝液(酢酸と酢酸ナトリウムとの混合溶液)、リン酸緩衝液(リン酸とリン酸ナトリウムとの混合溶液)などが挙げられる。
【0040】
混合方法としては、溶媒にγ−PGAを溶解させた後、このγ−PGA溶液に多価グリシジル化合物を添加する方法;別々の溶媒にγ−PGA、多価グリシジル化合物をそれぞれ溶解させた後、これらの溶液を混合する方法;などが挙げられる。特に、緩衝液にγ−PGAを溶解させ、このγ−PGA溶液と多価グリシジル化合物の水溶液とを混合する方法が好ましい。
【0041】
前記多価グリシジル化合物の配合量は、γ−PGA100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1.5質量部以上、さらに好ましくは2.0質量部以上であり、115質量部以下が好ましく、より好ましくは55質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。多価グリシジル化合物の配合量が0.5質量部以上であれば合成した吸水性樹脂の荷重下吸収量および飽和吸収量が向上し、115質量部以下であれば合成した吸水性樹脂に過度な内部架橋が生じることが抑制される。
【0042】
架橋反応を行う際の反応液のpHは、3.5以上が好ましく、より好ましくは4.0以上、さらに好ましくは5.0以上であり、6.8以下が好ましく、より好ましくは6.7以下、さらに好ましくは6.6以下である。反応液のpHが3.5未満、あるいは、6.8超であれば合成した吸水性樹脂の荷重下吸収量および飽和吸収量が劣る。反応液のpHは、pHメーター(HANNA社製 型式「HI−98109」)により測定できる。
【0043】
架橋反応を行う際の反応液の温度は、60℃以上が好ましく、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、120℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。反応時間は0.5時間以上が好ましく、より好ましくは0.75時間以上、さらに好ましくは1時間以上であり、80時間以下が好ましく、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは6時間以下である。
【0044】
架橋反応後、反応液から余分な溶媒を除去することで架橋体の含水ゲルを得る。含水ゲルは、架橋体と水とからなるものである。含水ゲルの水分含有率は特に限定されないが、通常30質量%〜99.9質量%である。含水ゲルは、必要に応じて細断することができる。細断後のゲルの大きさ(最長径)は、50μm〜10cmが好ましく、100μm〜2cmがより好ましく、1mm〜1cmがさらに好ましい。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性がさらに良好となる。細断は、公知の方法で行うことができ、例えば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機などの従来の細断装置を使用して細断できる。
【0045】
架橋反応に溶媒(有機溶媒、水など)を使用する場合、反応後に溶媒を留去し、架橋体の乾燥物を得る。溶媒(水を含む。)を留去する方法としては、80℃〜230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100℃〜230℃に加熱されたドラムドライヤーなどによる薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過などが適用できる。さらに、メタノール、エタノールなどの親水性溶媒を用いて脱水した後に上記手法で乾燥しても良い。
【0046】
架橋体の乾燥物は、粉砕することができる。粉砕方法については、特に限定されず、例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機などの通常の粉砕装置が使用できる。粉砕された架橋体は、必要によりふるい分けなどにより粒度調整できる。
【0047】
架橋体は、必要に応じて表面架橋処理を施してもよい。架橋体について、表面架橋処理を施す場合、表面架橋処理は表面架橋剤を含む水溶液を架橋体に噴霧又は含浸させた後、加熱処理する方法等により達成できる。
【0048】
前記表面架橋処理は、水および水溶性レベリング剤の存在下で、架橋体と表面架橋剤とを反応させることにより行うことが好ましい。水溶性レベリング剤を用いることにより、架橋体の表面に対して、表面架橋剤をより均一に分散させることができる。よって、架橋体の表面をより均一に表面架橋することができる。このような方法としては、例えば、表面架橋剤、水溶性レベリング剤および水を含む溶液を架橋体に噴霧または含侵させた後、加熱処理する方法;表面架橋剤および水溶性レベリング剤を含む液を、水を含有する架橋体に噴霧した後、加熱処理する方法;などが挙げられる。
【0049】
前記表面架橋剤の使用量は、架橋体100質量部に対して、0.005質量部以上が好ましく、より好ましくは0.008質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上であり、1.5質量部以下が好ましく、より好ましくは1.2質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下である。多価グリシジル化合物の配合量が0.005質量部〜1.5質量部の範囲内であれば、ゲルブロッキングが防止でき、十分な吸収量が得られる。
【0050】
前記水溶性レベリング剤は、表面架橋剤を溶解することができ、かつ、架橋体に実質的に吸収されないものであれば特に限定されない。前記水溶性レベリング剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が挙げられる。水溶性レベリング剤の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.08質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、15質量部以下が好ましく、より好ましくは13質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0051】
表面架橋処理における加熱温度は、30℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上であり、150℃以下が好ましく、より好ましくは130℃以下である。また、加熱時間は、10分間以上が好ましく、より好ましくは20分間以上であり、60分間以下が好ましく、より好ましくは40分間以下である。
【0052】
架橋体は、必要に応じてその表面を表面改質材で処理してもよい。表面改質剤で処理する方法としては、表面改質剤が架橋体の表面に存在するように処理する方法であれば、特に限定されない。しかし、表面改質剤は、架橋重合体の含水ゲル又は架橋重合体を重合する前の重合液ではなく、架橋体の乾燥体と混合されることが表面の表面改質剤の量をコントロールする観点から好ましい。なお、混合は、均一に行うことが好ましい。表面処理を行う場合、架橋体の水分量を15質量%〜25重量%に調整しておくことが好ましい。
【0053】
本発明の吸水性樹脂は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッドなどの衛生分野、医療分野、農業分野、化粧品分野、電気・電子分野、土木分野などに利用できる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0055】
1.評価方法
1−1.重量平均分子量
γ−ポリグルタミン酸の重量平均分子量は、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件にて測定した。
測定装置;
ポンプ:PU−2089 Plus(日本分光社製)
デガッサ:PU−2089 Plus(日本分光社製)
ミキサ:PU−2089 Plus(日本分光社製)
オートサンプラ:AS−2057 Plus(日本分光社製)
カラムオーブン:CO−2065 Plus(日本分光社製)
検出器:RI−2031 Plus(日本分光社製)
解析ソフト:ChromNAV(日本分光社製)
測定条件;
使用カラム;TSKgel GMPWXL(7.8mmI.D.×30cm)(東ソー製)
カラム温度;40℃
検出方法;示差屈折計(RI検出器),多角度光散乱検出器(MALS)
移動相;50mMリン酸緩衝液(pH=8.0)
試料濃度;0.5mg/mL
サンプル量;100μL
検量線;プルラン
【0056】
1−2.γ−PGAの部分中和物のpH
γ−PGAの部分中和物のpHは、γ−PGAを水に溶解させ、このγ−PGA溶液(濃度1.0質量%)のpHをpHメーター(HANNA社製 型式「HI-98109」)にて測定した。
【0057】
1−3.飽和吸収量
飽和吸収量の測定は、JIS K7223(1996)に準拠して行った。目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801−1(2000))を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製した。測定試料1.00gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れた。試料の入ったナイロン袋を、生理食塩水に浸漬させた。浸漬開始から60分後にナイロン袋を生理食塩水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後の質量R1(g)を測定した。また、試料を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量R0(g)を測定した。そして、これら質量R1、R0および試料の質量から、次式に従って、目的とする飽和吸収量を算出した。
飽和吸収量(g/g)=(R1−R0−試料の質量)/試料の質量
【0058】
1−4.荷重下吸収量
目開き63μm(JIS Z8801−1(2006)に準拠)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径30mm、高さ60mm)内に測定試料0.1gを秤量し、プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定試料がほぼ均一厚さになるように整え、この測定試料の上に60g/cmの荷重となるように外径29.5mm×22mmの分銅を乗せた。生理食塩水(食塩濃度0.9%)60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に測定試料及び分銅の入ったプラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、放置し、10分後に試料及び分銅の入ったプラスチックチューブを計量し、測定試料が生理食塩水を吸収して増加した重量を算出し、この増加重量の10倍値を生理食塩水に対する荷重下吸収量(g/g)とした。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
【0059】
1−5.保水量
保水量の測定は、JIS K 7223(1996)に準拠して行った。目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801−1(2000))を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製した。測定試料1.00gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れた。試料の入ったナイロン袋を、生理食塩水に浸漬させた。浸漬開始から60分後にナイロン袋を生理食塩水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後、遠心脱水器(コクサン(株)製、型式H−130C特型)を用いて脱水した。脱水条件は、143G(800rpm)で2分間とした。脱水後試料の質量F1(g)を測定した。また、試料を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量F0(g)を測定した。そして、これら質量F1、F0および試料の質量から、次式に従って、目的とする吸収倍率を算出した。
保水量(g/g)=(F1−F0)/試料の質量
【0060】
1−6.無荷重下吸収速度、逆戻り量
円筒管(内径60mm、高さ50mm)を、吸収性物品の表面シート上の吸収体中央に相当する部分に設置した。この円筒管内に生理食塩水(食塩濃度0.9%)80mLを10秒かけて注入した。生理食塩水の注入を開始してから、生理食塩水が吸収性物品に吸収されて円筒管内から消えるまでの時間を計測した。この計測した時間を無荷重下吸収速度(秒)とした。
【0061】
次に、生理食塩水の注入を開始してから5分後に、吸収性物品から円筒管を取り除き、予め質量を測定したろ紙(寸法100mm×100mm)を吸収性物品上に置いた。このろ紙の上におもり(寸法100mm×100mm、重さ3.5kg)を置いた。おもりを置いてから3分後におもりを取り除き、ろ紙の質量を測定した。そして、吸収性物品上に置く前後の質量から、吸収性物品の逆戻り量を算出した。
【0062】
上記生理食塩水の注入および吸収、生理食塩水吸収後のろ紙への逆戻り量の測定を3回行い、3回目の測定における吸収速度(秒)、逆戻り量(g)を記録した。各測定は、生理食塩水の注入開始した時から、次回の生理食塩水の注入開始までの間隔を10分間とした。
【0063】
1−7.荷重下吸収速度、逆戻り量
円筒管(内径60mm、高さ50mm)を、吸収性物品の表面シート上の吸収体中央に相当する部分に設置した。また、吸収体の前記円筒管が設置されていない部分に60g/cmの荷重がかかるようおもりを設置した。前記円筒管内に生理食塩水(食塩濃度0.9%)80mLを10秒かけて注入した。生理食塩水の注入を開始してから、生理食塩水が吸収性物品に吸収されて円筒管内から消えるまでの時間を計測した。この計測した時間が荷重下吸収速度(秒)とした。
【0064】
次に、生理食塩水の注入を開始してから5分後に、吸収性物品から円筒管とおもりを取り除き、予め質量を測定したろ紙(寸法100mm×100mm)を吸収性物品上に置いた。このろ紙の上におもり(寸法100mm×100mm、重さ3.5kg)を置いた。おもりを置いてから3分後におもりを取り除き、ろ紙の質量を測定した。そして、吸収性物品上に置く前後の質量から、吸収性物品の逆戻り量を算出した。
【0065】
上記生理食塩水の注入および吸収、生理食塩水吸収後のろ紙への逆戻り量の測定を3回行い、3回目の測定における荷重下吸収速度(秒)、逆戻り量(g)を記録した。各測定は、生理食塩水の注入開始した時から、次回の生理食塩水の注入開始までの間隔を10分間とした。
【0066】
2.γ−PGA(1)の作製
蒸留水に、グルコース;2.0質量%、グルタミン酸ナトリウム;5.0質量%、大豆ペプチド;0.2質量%、リン酸水素2ナトリウム・12水和物;0.42質量%、リン酸2水素カリウム;0.27質量%、塩化ナトリウム;0.05質量%、硫酸マグネシウム・7水和物;0.05質量%、ビオチン;0.0001質量%を添加して液体培地(pH6.4)を調製した。この液体培地に、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)を接種した。培地を37℃で4日間保管し、液体培養して納豆菌培養液を得た。納豆菌培養液100mLにエタノールを添加し、沈殿を生じさせ、この沈殿物をろ取し真空乾燥することで1gのγ−PGA(1)の部分中和物を得た。さらに、このγ−PGA(1)の部分中和物を透析チューブ(和光純薬工業社製、Dialysis Membranes サイズ36)に入れ、脱イオン水に対して10日間透析した。得られたγ−PGA(1)の部分中和物のpHは6.8、γ−PGA(1)の重量平均分子量は120万(分子量100万以上の分子の含有率92質量%、分子量100万未満の分子の含有率8質量%)であった。
【0067】
3.吸水性樹脂粉末の合成
3−1.吸水性樹脂粉末No.1
上記で得たγ−PGA(1)の部分中和物1gをクエン酸緩衝液(pH5.3)に溶解後、同緩衝液で100mLに定容しγ−PGA溶液を調製した。調製後のγ−PGA溶液中のγ−PGA(1)の部分中和物のpHは5.3となった。グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、「デナコール(登録商標) EX−313」)0.25gを脱イオン水に溶解し、100mLに定容し架橋剤溶液を調製した。γ−PGA溶液9質量部と架橋剤溶液1質量部とを混和し、混合液を80℃で1時間恒温した。その後、この混合液にエタノールを添加し、沈殿を生じさせた。この沈殿物を回収し、真空乾燥して架橋体の乾燥物を得た。
【0068】
前記架橋体の乾燥物をジューサーミキサー(Oster社製、OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き150μmおよび710μmのふるいを用いて150μm〜710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粉末を得た。
【0069】
この乾燥体粉末100質量部を高速撹拌(細川ミクロン社製、高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、エチレングリコールジグリシジルエーテル溶液(エチレングリコールジグリシジルエーテル濃度;2質量%、溶媒;水/メタノールの重量比=70/30)5質量部をスプレー噴霧により加えた。その後、150℃で30分間静置し、表面架橋した。得られた粉末の重量平均粒子径を400μmに調整して、吸水性樹脂粉末No.1を得た。
【0070】
3−2.吸水性樹脂粉末No.2
上記で得たγ−PGA(1)の部分中和物1gを水に溶解後、水で100mLに定容しγ−PGA溶液を調製した。グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、「デナコール(登録商標) EX-313」)0.5gを脱イオン水に溶解し、100mLに定容し架橋剤溶液を調製した。γ−PGA溶液9質量部と架橋剤溶液1質量部とを混和し、混合液を80℃で1時間恒温した。その後、この混合液にエタノールを添加し、沈殿を生じさせた。この沈殿物を回収し、真空乾燥して架橋体の乾燥物を得た。
【0071】
前記架橋体の乾燥物をジューサーミキサー(Oster社製、OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き150μmおよび710μmのふるいを用いて150μm〜710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粉末を得た。
【0072】
この乾燥体粉末100質量部を高速撹拌(細川ミクロン社製、高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、エチレングリコールジグリシジルエーテル溶液(エチレングリコールジグリシジルエーテル濃度;2質量%、溶媒;水/メタノールの重量比=70/30)5質量部をスプレー噴霧により加えた。その後、150℃で30分間静置し、表面架橋した。得られた粉末の重量平均粒子径を400μmに調整して、吸水性樹脂粉末No.2を得た。
【0073】
3−3.吸水性樹脂粉末No.3
市販の吸水性樹脂粉末(日本触媒社製、「アクアリック(登録商標)CA101」、ポリアクリル酸ベース)を用いた。
【0074】
3−4.吸水性樹脂粉末No.4
市販の吸水性樹脂粉末(SDPグローバル社製、「サンウェット(登録商標) IM720」、ポリアクリル酸ベース)を用いた。
【0075】
吸収性樹脂粉末No.1〜4の評価結果を表1に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
4.吸収性物品の作製
吸収性物品No.1
非透液性シートの上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にティッシュペーパーを積層した。前記ティッシュペーパー上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末No.1を混合した状態で散布(パルプの目付200g/m、吸水性樹脂粉末の目付け200g/m)し、この上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、さらにティッシュペーパーを積層し400mm×200mmの大きさの吸収体を形成した。ティッシュペーパー上にさらに合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、透液性不織布(トップシート)を積層して吸収性物品を形成した。
【0078】
吸収性物品No.2
吸水性樹脂粉末を、吸水性樹脂粉末No.2に変更したこと以外は、吸収性物品No.1の作製方法と同様にして吸収性物品No.2を形成した。
【0079】
吸収性物品No.3
吸水性樹脂粉末を、吸水性樹脂粉末No.3に変更したこと以外は、吸収性物品No.1の作製方法と同様にして吸収性物品No.3を形成した。
【0080】
吸収性物品No.4
吸水性樹脂粉末を、吸水性樹脂粉末No.4に変更したこと以外は、吸収性物品No.1の作製方法と同様にして吸収性物品No.4を形成した。
【0081】
各吸収性物品についての評価結果を表2に示した。
【0082】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の吸水性樹脂は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッドなどの衛生分野、医療分野、農業分野、化粧品分野、電気・電子分野、土木分野などに利用できる。