(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474277
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】3極式配電機器の分岐バーセット
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20190218BHJP
H02B 1/20 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
H02B1/40 D
H02B1/20 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-36195(P2015-36195)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-158442(P2016-158442A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮山 将
【審査官】
内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−236380(JP,A)
【文献】
特開平8−88912(JP,A)
【文献】
特開平3−254036(JP,A)
【文献】
特開2004−88899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 〜 7/08
H01H 73/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3極式配電機器を3本の母線バーに接続するための分岐バーセットであって、
3極式配電機器の左右の外側極を3極式配電機器から遠い側の母線バー及び3極式配電機器に近い側の母線バーに接続する2本の外側極用分岐バーと、3極式配電機器の中央極を中央の母線バーに接続する中央極用分岐バーとからなり、
何れか一方の外側極用分岐バーと中央極用分岐バーは、母線接続部が、母線バーに対して垂直に引いた共通の第1の仮想線上に位置する形状としたことを特徴とする3極式配電機器の分岐バーセット。
【請求項2】
他方の外側極用分岐バーは、母線接続部が、3極式配電機器の中央極を挟んで第1の仮想線と対称位置に引かれた第2の仮想線上に位置する形状としたことを特徴とする請求項1記載の3極式配電機器の分岐バーセット。
【請求項3】
双方の外側極用分岐バーは、3極式配電機器の端子取付部が、第1の仮想線及び第2の仮想線の外側寄りに配置されたものであることを特徴とする請求項2記載の3極式配電機器の分岐バーセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーカ等の3極式配電機器を、母線バーに接続するために用いられる3極式配電機器の分岐バーセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーカを分岐バーを介して母線バーに接続する分電盤においては、ブレーカの電源側の端子間距離に合わせた間隔で母線バーに接続孔が形成されており、これらの接続孔に分岐バーの先端の母線接続部をねじ止めし、分岐バーの基端の端子取付部をブレーカの端子にねじ止めしている。
このため特許文献1に示されるように、接続されるブレーカは端子間距離が接続孔のピッチに等しい1種類のみであるのが一般的である。従ってブレーカの横幅も、標準サイズと呼ばれる一定幅であるのが普通である。
【0003】
しかし接続先の負荷の用途によってブレーカの定格電流が大きく変わるような場合には、横幅の異なる3極式ブレーカを同一の母線バーに接続させることが望まれる。ブレーカの横幅が異なると端子間距離も異なるため、同一の母線バーに接続できない。そこで特許文献2には、母線バー上を移動可能な分岐バー接続部材を設け、端子間距離が標準とは異なる3極式ブレーカであっても分岐バーを介して母線バーに接続できるようにした技術が開示されている。
【0004】
しかしこのような分岐バー接続部材を用いた場合には、分電盤の部品点数が増加するうえ、分岐バー接続部材を母線バーにねじ止めしなければならないためにねじの締め付け工数が増えてしまい、分電盤の製造作業性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−88120号公報
【特許文献2】実開平6−80307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、部品点数を増加させることなく、端子間距離の異なる3極式ブレーカを同一の母線バーに接続することができる3極式ブレーカの分岐バーセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、3極式配電機器を3本の母線バーに接続するための分岐バーセットであって、3極式配電機器の左右の外側極を3極式配電機器から遠い側の母線バー及び3極式配電機器に近い側の母線バーに接続する2本の外側極用分岐バーと、3極式配電機器の中央極を中央の母線バーに接続する中央極用分岐バーとからなり、何れか一方の外側極用分岐バーと中央極用分岐バーは、母線接続部が、母線バーに対して垂直に引いた共通の第1の仮想線上に位置する形状としたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は請求項1の発明において、他方の外側極用分岐バーは、母線接続部が、3極式配電機器の中央極を挟んで第1の仮想線と対称位置に引かれた第2の仮想線上に位置する形状としたことを特徴とする。また請求項3の発明は請求項2の発明において、双方の外側極用分岐バーは、3極式配電機器の端子取付部が、第1の仮想線及び第2の仮想線の外側寄りに配置されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分岐バーセットを用いれば、端子間距離がピッチPよりも小さい小型の3極式配電機器を、標準型の配電機器の端子間距離に合せたピッチPで接続孔が形成された3本の母線バーに接続することができ、小型の3極式配電機器を標準型の配電機器とを同一の母線バーに接続することが可能となる。しかも部品点数を増加させる必要がない。
【0010】
請求項2の発明によれば、小型の3極式配電機器を対向させて母線バーに接続する場合にも、共通の分岐バーを使用することができる。請求項3の発明によれば、分岐バー相互間の絶縁距離を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態の分岐バーセットを示す説明図である。
【
図2】分岐バーセットの使用状態を示す正面図である。
【
図3】分岐バーセットの使用状態を示す斜視図である。
【
図5】母線バーの左側に小型3極式ブレーカ、右側に標準3極式ブレーカを配置した場合の断面図である。
【
図6】母線バーの左側に小型3極式ブレーカ、右側に小型2極式ブレーカを配置した場合の断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態を示す正面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態を示す正面図である。
【
図11】第2の実施形態の分岐バーセットを示す説明図である。
【
図12】第3の実施形態の分岐バーセットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1に示すように、本発明の分岐バーセットは3本の分岐バーから成る。左右に示されるのが2本の外側極用分岐バー10、12であり、中央に示されるのが中央極用分岐バー11である。これらの外側極用分岐バー10、12及び中央極用分岐バー11は、配電機器である3極式ブレーカの各極の電源側端子と分電盤の3本の母線バーとを接続するために用いられるものである。これらの分岐バーの形状は分電盤への取付態様に応じて決定されるものであるから、まず分電盤について説明する。
【0013】
図2と
図3は本発明の分岐バーセットを用いた分電盤の説明図である。これらの図において、1は3本の母線バーであり、この実施形態では
図4に示すように、R、S、Tの3極が三角形状に配置されている。R極とT極は下段に配置され、S極は上段に配置されている。各母線バー1には標準型のブレーカの端子間距離に合せたピッチPで接続孔2が形成されている。これらの接続孔2はめねじが切られたねじ孔とし、各分岐バーをねじ固定できるようにしてある。
【0014】
母線バー1の両側に配電機器が接続されている。この実施形態では配電機器は何れもブレーカであるが、開閉器や端子台であってもよい。3は標準2極式ブレーカ、4は標準3極式ブレーカである。これらは何れも標準サイズであって、端子間距離が母線バー1の接続孔2のピッチPに等しくなっている。5は小型2極式ブレーカであり、その筐体の横幅は標準2極式ブレーカ3の半分であり、母線バー1の同一仮想直線上に接続される。
【0015】
図4に示すように、小型3極式ブレーカ6は外側極7、中央極8、外側極9の3つの端子を持ち、各端子を3本の母線バー1(R、S、T)に、本発明の分岐バーセットを構成する外側極用分岐バー10、12及び中央極用分岐バー11によって接続されている。
【0016】
先ず、小型3極式ブレーカ6の一方の外側極7は、一方の外側極用分岐バー10によって小型3極式ブレーカ6から最も遠い母線バー1(T)に接続される。その先端の母線接続部を13とする。また小型3極式ブレーカ6の他方の外側極9は、他方の外側極用分岐バー12によって、小型3極式ブレーカ6から最も近い母線バー1(R)に接続される。その先端の母線接続部を14とする。
図4に示すように、母線接続部13から母線バー1に対して垂直に延びる直線を第1の仮想線15とし、母線接続部14から母線バー1に対して垂直に延びる直線を第2の仮想線16とする。これらの仮想線15、16の間に、小型3極式ブレーカ6の中央極8を位置させ、中央極8を前記したいずれかの仮想線上に形成された中央の母線バー1(S)に設けた母線接続部17に中央極用分岐バー11によって接続してある。なお、中央極8から第1の仮想線15までの距離と、中央極8から第2の仮想線16までの距離は等しく、第2の仮想線16は、3極式ブレーカ6の中央極8を挟んで第1の仮想線15と対称位置にあることで、小型3極式ブレーカ6を対向させて母線バー1に接続する場合にも、共通の分岐バーセットを使用することができる。
【0017】
本発明では、何れか一方の外側極用分岐バー10、12と中央極用分岐バー11は、その先端の母線接続部が母線バー1に対して垂直に引いた共通の第1の仮想線上15に位置する。この実施形態では
図4に示すように、一方の外側極用分岐バー10と中央極用分岐バー11とは、その先端の母線接続部13と母線接続部17とが、共通の第1の仮想線15上に位置する形状となっている。このため
図1に示したように、中央極用分岐バー11は途中で幅方向に屈曲され、その基部の端子接続部20と先端の母線接続部17とがP/2の距離分ずれた位置にある。
【0018】
また
図1に示したように、一方の外側極用分岐バー10もその基部の端子接続部19と先端の母線接続部13とが僅かにずれた位置にあり、他方の一方の外側極用分岐バー12もその基部の端子接続部21と先端の母線接続部14とが僅かにずれた位置にある。これらの外側極用分岐バー10の母線接続部13と、外側極用分岐バー12の母線接続部14とは、ともに内側(中央極8側)にずらせてある。
【0019】
前記したように、一方の外側極用分岐バー10の先端の母線接続部13は第1の仮想線15上に位置するのであるから、その基部の端子接続部19は、この第1の仮想線15よりもやや外側に位置することとなる。同様に、他方の外側極用分岐バー11の基部の端子接続部21も、第2の仮想線16よりもやや外側に位置することとなる。このような構造とすることにより、分岐バー相互間の絶縁距離を十分に確保することができる。
【0020】
当然のことながら、中央極用分岐バー11は、第1の仮想線15と第2の仮想線16との間に配置される。
【0021】
図3、
図5に示すように、本実施形態では、小型3極式ブレーカ6の端子は、外側極7、外側極9は下段に設け、中央極8は上段に設けてある。このように各極の端子と対応する母線バー1の高さを近付けることによって、外側極用分岐バー10、12と中央極用分岐バー11を短く形成することができる。また隣接する端子間に段差を設けることにより、小型であっても相互間の絶縁距離を十分に確保することができる。
図5に示すように、上段の中央極用分岐バー11は略平坦であるが、下段の外側極用分岐バー10、12は途中から下方に屈曲した形状となっている。なお
図6は、母線バー1の左側に小型3極式ブレーカ6、右側に小型2極式ブレーカ5を配置した場合の断面図である。
【0022】
本発明の分岐バーセットを用いれば、中央極用分岐バー11を仮想線15上で母線バー1(S)に接続するので、中央極用分岐バー11は外側極用分岐バー12の母線接続部14に螺合される接続ねじの位置から外れる。このため外側極用分岐バー12のねじ止め作業に支障を生じない。なお外側極用分岐バー10は小型3極式ブレーカ6から最も遠い母線バー1(T)に仮想線15の外側から接続されるので、中央極用分岐バー11が邪魔になることもない。
【0023】
このように本発明の分岐バーセットを用いれば、標準型のブレーカ3、4と、端子間距離がPよりも小さい小型3極式ブレーカ6とを、標準型のブレーカの端子間距離に合せたピッチPで接続孔が形成された3本の母線バー1に、外側極用分岐バー10、12と中央極用分岐バー11を介して接続することができ、小型3極式ブレーカ6と標準型のブレーカ3、4とを同一の母線バー1に接続可能となる。また、小型3極式ブレーカ6の筐体の横幅を標準3極式ブレーカ4の横幅の2/3とすれば、互いに隣接して配置することが可能であり、搭載数を多くすることができる。なお、接続孔2は本実施形態のように、各極の母線バー1にピッチP間隔で一連に形成される必要はなく、いずれかの母線バー1にピッチP間隔で接続孔2が形成されている箇所があればよい。また上記の実施形態では、外側極用分岐バー10の先端の母線接続部13と中央極用分岐バー11の母線接続部17とを共通の第1の仮想線15上に位置させたが、他方の外側極用分岐バー12の先端の母線接続部14と中央極用分岐バー11の母線接続部17とを共通の第1の仮想線15上に位置させることも可能である。
【0024】
以上に説明した第1の実施形態では、3本の母線バー1を三角形に配置した。しかし
図7以下に示す第2の実施形態のように、3本の母線バー1を同一平面上に配置することもできる。この第2の実施形態においては、
図7、
図11のように中央極用分岐バー11の母線接続部17を、外側極用分岐バー12の母線接続部14から母線バー1に対して垂直に延びる第2の仮想線16上に位置する形状とした。外側極用分岐バー10は、中央極用分岐バー11の母線接続部17上を通らないようにクランク状に形成されている。また、中央極用分岐バー11の母線接続部17は、外側極用分岐バー10の母線接続部13から母線バー1に対して垂直に延びる第1の仮想線15上に位置する形状としてもよい。
【0025】
図10、
図12に示す第3の実施形態では、母線バー1の両側の小型3極式ブレーカ6を対向して配置し、双方を共通の外側極用分岐バー22、23と中央極用分岐バー24によって母線バー1に接続している。外側極用分岐バー22の母線接続部25は、外側極用分岐バー22の両端に形成された端子接続部27間に形成されている。同様に中央極用分岐バー24の母線接続部26は、中央極用分岐バー24の両端に形成された端子接続部28間の略中央に形成されている。なお、外側極用分岐バー23は外側極用分岐バー22と同一形状で、外側極用分岐バー22を180度反転させることで使用可能となるので、低コストで製作可能である。
【0026】
以上に説明したように、本発明の分岐バーセットを用いれば、部品点数を増加させることなく、標準型のブレーカと、端子間距離がPよりも小さい小型3極式ブレーカとを同一の母線バー1に接続することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 母線バー
2 接続孔
3 標準2極式ブレーカ
4 標準3極式ブレーカ
5 小型2極式ブレーカ
6 小型3極式ブレーカ
7 外側極
8 中央極
9 外側極
10 外側極用分岐バー
11 中央極用分岐バー
12 外側極用分岐バー
13 母線接続部
14 母線接続部
15 第1の仮想線
16 第2の仮想線
17 母線接続部
19 端子接続部
20 端子接続部
21 端子接続部
22 外側極用分岐バー
23 外側極用分岐バー
24 中央極用分岐バー
25 母線接続部
26 母線接続部
27 端子接続部
28 端子接続部