特許第6474290号(P6474290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474290
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/205 20170101AFI20190218BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190218BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   B29C64/205
   B33Y30/00
   B28B1/30
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-57999(P2015-57999)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-175317(P2016-175317A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 文良
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−531714(JP,A)
【文献】 特表2012−532995(JP,A)
【文献】 特表2003−508246(JP,A)
【文献】 特開平10−211658(JP,A)
【文献】 特開2007−106070(JP,A)
【文献】 特開2001−038274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B22F 3/105
B22F 3/16
B28B 1/30
B05C 19/04
B05C 19/06
B05D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料を結合させて立体造形物を成形する三次元造形装置において、
上方が開口するとともに底部を構成する供給ステージが昇降する容器内に前記粉末材料を貯留する材料貯留槽と、
前記材料貯留槽に隣接配置されて上方が開口するとともに底部を構成する造形ステージが昇降する容器内に前記材料貯留槽から前記粉末材料を受け入れるとともに前記立体造形物を収容する造形槽と、
前記材料貯留槽上から前記造形槽上に移動して前記材料貯留槽に貯留された前記粉末材料の表層部分を前記造形槽側に押し出して同造形槽内における前記粉末材料の上面に敷いて平らに均す伸展体と、
前記伸展体に対して前記造形槽側に配置されて前記材料貯留槽に貯留された前記粉末材料の表層部分に挿し込まれて同表層部分を解す解し部を有した材料解し体とを備えることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載した三次元造形装置において、
前記材料解し体は、
回転自在な棒体で構成された回転ロッドを有し、
前記解し部は、
前記回転ロッドの外周面上にて径方向外側に突出して形成されていることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載した三次元造形装置において、
前記回転ロッドは、
電動機によって強制的に回転駆動されることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項3に記載した三次元造形装置において、
前記伸展体は、
前記電動機によって前記回転ロッドとともに回転駆動する丸棒体で構成されていることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項4に記載した三次元造形装置において、
前記伸展体は、
前記造形槽側に対して下方から上方側に回転駆動し、
前記材料解し体は、
前記伸展体側に対して下方から上方側に回転駆動することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した三次元造形装置において、
前記解し部は、
前記回転ロッドの外周面における周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した三次元造形装置において、
前記材料解し体は、
前記解し部の下端部が前記伸展体の下端部以上の高さに形成されていることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載した三次元造形装置において、
前記材料解し体は、
前記解し部が弾性変形可能な弾性体で構成されていることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載した三次元造形装置において、さらに、
前記材料解し体に対して前記造形槽側に配置されて前記材料解し体に導かれる前記粉末材料の高さを規制する高さ規制体を備えることを特徴とする三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料を結合させて立体造形物を成形する三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石膏や澱粉などの粉末材料を貯留する材料貯留槽および粉末材料を結合させて立体造形物を成形する造形槽を備えた三次元造形装置がある。例えば、下記特許文献1には、材料貯留槽に貯留されている粉末材料を回転駆動する伸展ローラによって造形槽に供給して造形槽内で立体造形物を成形する三次元造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−231183号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された三次元造形装置においては、伸展体(伸展ローラ)が粉末材料を造形槽側に押し出して敷き均す際に粉末材料が流動せず単に押されて平行移動すると伸展体が通過した材料貯留槽側では粉末材料の表層が固められていくとともに造形槽側では粉末材料の表面が伸展体の前方で塊のまま単に押されている粉末材料の所謂ダマによって表面が荒れる。このため、従来の三次元造形装置においては、粉末材料の円滑かつ十分な供給ができないとともに、立体造形物における各層間の接合強度や表面粗さが粗くなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、造形槽内に凹凸なく平らに粉末材料を敷くことによって強度および表面精度をそれぞれ向上させた立体造形物を成形することができる三次元造形装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、粉末材料を結合させて立体造形物を成形する三次元造形装置において、上方が開口するとともに底部を構成する供給ステージが昇降する容器内に粉末材料を貯留する材料貯留槽と、材料貯留槽に隣接配置されて上方が開口するとともに底部を構成する造形ステージが昇降する容器内に材料貯留槽から粉末材料を受け入れるとともに立体造形物を収容する造形槽と、材料貯留槽上から造形槽上に移動して材料貯留槽に貯留された粉末材料の表層部分を造形槽側に押し出して同造形槽内における粉末材料の上面に敷いて平らに均す伸展体と、伸展体に対して造形槽側に配置されて材料貯留槽に貯留された粉末材料の表層部分に挿し込まれて同表層部分を解す解し部を有した材料解し体とを備えたことにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、三次元造形装置は、伸展体によって押し出される伸展体の移動方向前方側の粉末材料が材料解し体によって予め解されるため、材料貯留槽内においては固められた粉末材料が解されるとともに、造形槽内においては解された粉末材料が伸展体で押されて伸展体の前方で全体が連続的に流動(湧水のように湧き上がってくるような状態)しながら敷かれていく。これにより、本発明に係る三次元造形装置においては、粉末材料を円滑かつ十分な供給量で造形槽内に凹凸なく平らに粉末材料を敷くことができ、強度および表面精度をそれぞれ向上させた立体造形物を成形することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記三次元造形装置において、材料解し体は、回転自在な棒体で構成された回転ロッドを有し、解し部は、回転ロッドの外周面上にて径方向外側に突出して形成されていることにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、三次元造形装置は、材料解し体が回転自在な棒体で構成された回転ロッドの外周面上に解し部が径方向外側に突出して形成されているため、回転ロッドが回転することにより伸展体の前方の粉末材料を連続的または断続的に解すことができる。この場合、材料解し体は、材料解し体が伸展体とともに造形槽側に変位する際に粉末材料の表層に引っ掛かることによって引き摺り回転する場合と、後述する電動機によって強制的に回転駆動される場合とがある。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記三次元造形装置において、回転ロッドは、電動機によって強制的に回転駆動されることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、三次元造形装置は、回転ロッドが電動機によって強制的に回転駆動されるため、粉末材料が固まっている場合であってもより確実かつ精度良く解すことができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記三次元造形装置において、伸展体は、電動機によって回転ロッドとともに回転駆動する丸棒体で構成されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、三次元造形装置は、伸展体が電動機によって回転ロッドとともに回転駆動する丸棒体で構成されているため、回転駆動する伸展体によって材料貯留槽内の粉末材料の表層部分を平らに成形しながら造形槽に導くことができるとともに造形槽内にて粉末材料を平らに敷くことできる。また、三次元造形装置は、伸展体と材料解し体とを回転駆動させる電動機を共通化して構成を簡単化することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記三次元造形装置において、伸展体は、造形槽側に対して下方から上方側に回転駆動し、材料解し体は、伸展体側に対して下方から上方側に回転駆動することにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、三次元造形装置は、伸展体が造形槽側に対して下方から上方側に回転駆動するとともに、材料解し体が伸展体側に対して下方から上方側に回転駆動するため、伸展体の前方で粉末材料全体が連続的に流動して精度良く粉体材料を移動させて敷くことができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、三次元造形装置において、解し部は、回転ロッドの外周面における周方向に沿って複数設けられていることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、三次元造形装置は、解し部が回転ロッドの外周面における周方向に沿って複数設けられているため、早期かつきめ細かに粉末材料を解すことができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記三次元造形装置において、材料解し体は、解し部の下端部が伸展体の下端部以上の高さに形成されていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、三次元造形装置は、材料解し体における解し部の下端部が伸展体の下端部以上の高さに形成されているため、伸展体の下端部より下方の粉末材料を解すことがなく精度良く粉末材料を敷くことができるとともに、材料解し体が材料貯留槽や造形槽の各上端部に接触することによる各部、具体的には、材料貯留槽、造形槽、材料解し体、伸展体、平らに成形した粉末材料および立体造形物をそれぞれ損傷することを防止することができる。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、前記三次元造形装置において、材料解し体は、解し部が弾性変形可能な弾性体で構成されていることにある。この場合、解し部を構成する弾性体としては、樹脂材やゴム材を板状、球状や半球状、またはブラシ状に形成して構成することができる。
【0021】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、三次元造形装置は、材料解し体における解し部が弾性変形可能な弾性体で構成されているため、解し部の弾性力によって粉末材料を掻き上げることで効果的に解すことができるとともに、解し部が材料貯留槽や造形槽に接触した場合における上記各部の損傷を防止することができる。
【0022】
また、本発明の他の特徴は、前記三次元造形装置において、さらに、材料解し体に対して造形槽側に配置されて材料解し体に導かれる粉末材料の高さを規制する高さ規制体を備えることにある。この場合、高さ規制体は、例えば、金属製や樹脂製の棒体、板状体または刷毛状に形成して粉末材料の上面から所定の隙間を介した上方に配置して構成することができる。
【0023】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、三次元造形装置は、高さ規制体によって材料解し体に過度な厚さや量の粉末材料が導かれることが防止されて常に所定量以下の厚さの粉末材料が材料解し体に供給されるため、精度良く粉末材料を造形槽に導いて平らに敷くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る三次元造形装置の主要部の構成を模式的に示す断面図である。
図2図1に示す三次元造形装置の作動を制御する制御システムのブロック図である。
図3図1に示す三次元造形装置における材料解し体の外観構成の概略を示す斜視図である。
図4図1に示す三次元造形装置における造形槽を材料貯留槽に隣接配置した状態を示す断面図である。
図5図4に示す三次元造形装置において造形槽の造形ステージを下降させるとともに材料貯留槽の供給ステージを上昇させた状態を示す断面図である。
図6図5に示す三次元造形装置において材料伸展ユニットを材料貯留槽から造形槽側に移動させた場合における材料貯留槽上での作動状態を示す断面図である。
図7図5に示す三次元造形装置において材料伸展ユニットを材料貯留槽から造形槽側に移動させた場合における材料貯留槽と造形槽との境界部分上での作動状態を示す断面図である。
図8図5に示す三次元造形装置において材料伸展ユニットを材料貯留槽から造形槽側に移動させた場合における造形槽上での作動状態を示す断面図である。
図9図5に示す三次元造形装置において材料伸展ユニットを材料貯留槽から造形槽側に移動させた場合における不要材料受け体上での作動状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る三次元造形装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る三次元造形装置100の主要部の構成を模式的に示す断面図である。また、図2は、図1に示す三次元造形装置100の作動を制御するための制御システムのブロック図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この三次元造形装置100は、石膏や澱粉などからなる粉末材料を結合剤によって結合させることにより所望する立体造形物WKを下方から上方に向かって積層して成形する機械装置である。
【0026】
(三次元造形装置100の構成)
三次元造形装置100は、造形槽110を備えている。造形槽110は、立体造形物WKの材料となる粉末材料PMを後述する材料貯留槽140から受け入れて立体造形物WKを成形するための収容容器であり、金属板を平面視で方形の有底筒状に形成して構成されている。より具体的には、造形槽110は、主として、造形ステージ111および側壁112をそれぞれ備えて構成されている。
【0027】
造形ステージ111は、造形槽110の底部を構成する板状の部品であり、平面視で方形の金属板で構成されている。この造形ステージ111は、造形ステージ昇降機構113によって側壁112に対して摺動しながらZ軸方向となる図示上下方向に昇降可能に支持されている。側壁112は、造形槽110の側壁を構成する板状の部品であり、造形ステージ111の周囲を囲むように造形ステージ111の4つの辺上に起立した状態でそれぞれ設けられている。これにより、造形槽110は、造形ステージ111の対向する上方が開口する箱状に形成されている。なお、造形槽110の側壁112の上端部の高さは後述する材料貯留槽140の側壁142の上端部と同じ高さの面一に形成されている。
【0028】
造形ステージ昇降機構113は、後述する制御装置170の作動制御によって造形ステージ111を上下方向に昇降させるための機械装置であり、主として、昇降台座113a、支持軸113b、駆動モータ113cおよび駆動ベルト113dをそれぞれ備えて構成されている。昇降台座113aは、造形ステージ111を下方から支持する金属板製の部品であり、造形ステージ111を支持する方形の水平板状部分の各周囲がそれぞれ下方に屈曲したした後、下端部が再び水平方向外側にそれぞれ屈曲してフランジ状に張り出す縦断面が矩形波形状に形成されている。
【0029】
支持軸113bは、昇降台座113aにおける下端部の張り出した部分に対してネジ嵌合した状態で貫通して起立する棒体である。この支持軸113bは、昇降台座113aを水平状態に保った状態で上下方向に案内できるように昇降台座113aの周囲に複数配置(本実施形態においては4つ)されている。これらの各支持軸113bは、両端部がそれぞれ後述する支持筐体114に対して回転自在な状態で支持されている。
【0030】
駆動モータ113cは、造形ステージ111を昇降させる駆動源であり、制御装置170によって作動制御される電動機で構成されている。この駆動モータ113cの駆動軸は、駆動ベルト113dを介して前記支持軸113bに連結されている。駆動ベルト113dは、駆動モータ113cおよび各支持軸113bを互いに連結して駆動モータ113cの駆動力を各支持軸113bに伝達するためのゴム製の無端ベルトである。したがって、造形ステージ昇降機構113は、駆動モータ113cが回転駆動することによって駆動ベルト113dを介して各支持軸113bが回転駆動することによって昇降台座113aが昇降して造形ステージ111が昇降する。
【0031】
支持筐体114は、造形槽110を支持するとともに造形ステージ昇降機構113を覆う部品であり、金属板を箱状に形成して構成されている。この支持筐体114の下面は、材料貯留槽140に対して接近または離隔するY軸方向(図示左右方向)に沿って貫通した状態で凹状に凹んで形成されるとともに、この凹状に凹んだ部分に配置された造形槽移動機構115に連結されて支持されている。なお、Y軸方向は、前記Z軸方向に対して直交している。
【0032】
造形槽移動機構115は、造形槽110を材料貯留槽140に対して接近させて密着または離隔させるY軸方向に往復移動させるための装置であり、主として、Y方向第1案内ガイド115aおよび駆動モータ115bをそれぞれ備えて構成されている。Y方向第1案内ガイド115aは、支持筐体114を支持した状態で材料貯留槽140に接近させて密着または離隔させるY軸方向に案内するためにY軸方向に延びる金属製のレールや送りネジ機構(いずれも図示せず)を備えた部品である。このY方向第1案内ガイド115aは、三次元造形装置100において固定的に設けられた基台120上に固定的に取り付けられている。
【0033】
駆動モータ115bは、造形槽110および支持筐体114を材料貯留槽140に対して接近または離隔させる方向に往復移動させる駆動源であり、制御装置170によって作動制御される電動機で構成されている。この駆動モータ115bは、Y方向第1案内ガイド115a内の送りネジ機構を回転駆動させることによって造形槽110および支持筐体114をそれぞれ往復移動させる。
【0034】
造形槽110に対して材料貯留槽140側とは反対側における支持筐体114上には、不要材料受け体116が設けられている。不要材料受け体116は、造形槽110に供給した粉末材料PMのうちの使用仕切れなかった余剰分を回収するための金属製の容器である。この不要材料受け体116は、造形槽110と同様に上方が開口する箱状に形成されて造形槽110に隣接配置されている。また、造形槽110の上方には、造形ヘッド130が設けられている。
【0035】
造形ヘッド130は、造形槽110内の粉末材料PMをユーザが所望する立体形状となるように結合させるための機械装置であり、主として、吐出ヘッド131およびUVランプ132をそれぞれ備えて構成されている。吐出ヘッド131は、造形槽110内の粉末材料PMに対して紫外線硬化樹脂の液滴を噴射する装置であり、インクジェット方式(圧電素子の撓み変形による体積変化で吐出力を得る方式)の液滴吐出ヘッドで構成されている。ここで、紫外線硬化樹脂は、紫外線を照射されることによってラジカル重合反応やカチオン重合反応により硬化する液体のアクリレート系やエポキシ系の樹脂材である。
【0036】
UVランプ132は、造形槽110内の粉末材料PMに対して吐出された紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線を照射する光源であり、紫外線を発光するLEDによって構成されている。このUVランプ132は、前記Z軸方向および前記Y軸方向にそれぞれ直交するX軸方向上において吐出ヘッド131の両側にそれぞれ設けられている。これらの吐出ヘッド131およびUVランプ132は、制御装置170によってそれぞれ作動が制御される。この造形ヘッド130は、造形ヘッド走査機構133によって支持されている。
【0037】
造形ヘッド走査機構133は、造形ヘッド130を前記X軸方向に沿って往復変位させるための機械装置であり、主として、X方向案内ガイド133aおよび駆動モータ133bをそれぞれ備えて構成されている。X方向案内ガイド133aは、造形ヘッド130を支持した状態で図示X軸方向に案内するためにX軸方向に延びる金属製のレールや2つのプーリ間に無端ベルトを架設した無端ベルト送り機構(いずれも図示せず)を備えた部品である。
【0038】
駆動モータ133bは、造形ヘッド130を造形槽110に対してX軸方向に往復移動させる駆動源であり、制御装置170によって作動制御される電動機で構成されている。この駆動モータ133bは、X方向案内ガイド133a内の無端ベルト送り機構を回転駆動させることによって造形ヘッド130をX軸方向に往復移動させる。
【0039】
材料貯留槽140は、造形槽110に供給する粉末材料PMを貯留するための収容容器であり、金属板を平面視で方形の有底筒状に形成して構成されている。より具体的には、材料貯留槽130は、主として、供給ステージ141および側壁142をそれぞれ備えて構成されている。供給ステージ141は、材料貯留槽140の底部および側壁の一部をそれぞれ構成して図示上下方向に昇降する部品であり、金属板を側面視でL字状に形成して構成されている。この供給ステージ141は、供給ステージ昇降機構143によって側壁142に対して摺動しながら図示上下方向に昇降可能に支持されている。
【0040】
側壁142は、供給ステージ141における材料貯留槽140の底部を構成する平面視で方形の部分の周囲(3辺)を囲んで起立する金属板製の部品である。これにより、材料貯留槽140は、供給ステージ141における材料貯留槽140の底部を構成する部分に対向する上方が開口する箱状に形成されている。この側壁142は、基台120の上面に起立した状態で設けられている。すなわち、材料貯留槽140は、供給ステージ141が昇降可能な状態で基台120上に固定的に設けられている。
【0041】
供給ステージ昇降機構143は、制御装置170の作動制御によって供給ステージ141を上下方向に昇降させる装置であり、主として、Z方向案内ガイド143aおよび駆動モータ143bをそれぞれ備えて構成されている。Z方向案内ガイド143aは、供給ステージ141を図示Z軸方向に案内するためにZ軸方向に延びる金属製のレールや送りネジ機構(いずれも図示せず)を備えた部品である。このZ方向案内ガイド143aは、基台120上に起立した状態で固定的に設けられている。
【0042】
駆動モータ143bは、供給ステージ141をZ軸方向に昇降させる駆動源であり、制御装置170によって作動制御される電動機で構成されている。この駆動モータ143bは、Z方向案内ガイド143の一方の端部側における基台120上に固定的に設けられており、Z軸方向案内ガイド143a内の送りネジ機構を回転駆動させることによって供給ステージ141を昇降させる。
【0043】
材料貯留槽140の上方には、材料伸展ユニット150が設けられている。材料伸展ユニット150は、材料貯留槽140上から造形槽110上に移動して材料貯留槽130内の粉末材料PMを造形槽110上に供給して平らに敷き広げるための装置であり、主として、伸展体151、駆動ベルト152、材料解し体153、駆動モータ154、高さ規制体155およびユニット支持体156をそれぞれ備えて構成されている。
【0044】
伸展体151は、材料貯留槽140内の粉末材料PMの表層を造形槽110上に押し出して造形槽110上に敷き広げる部品であり、X軸方向に沿って延びる金属製のローラで構成されている。この伸展体151は、両端部がユニット支持体156に回転自在に保持された状態でプーリ(図示せず)、2つの歯車(図示せず)、および駆動ベルト152をそれぞれ介して駆動モータ154に連結されている。
【0045】
この場合、プーリは、駆動ベルト152が掛けられて回転駆動する円筒状の部品であり、ユニット支持体156に回転自在に支持されている。また、2つの歯車は、前記プーリの回転方向を逆転させて伸展体151に伝達するための部品であり、一方の歯車が前記プーリと一体的に同方向に回転するとともに他方の歯車が伸展体151に取り付けられた状態で前記一方の歯車と噛合って同一方の歯車と逆は方向に回転する。また、伸展体151は、ローラの下端部が材料貯留槽140の側壁142の上端部よりも若干(例えば、0.1mm〜1.0mm)上方に位置する高さに支持されている。本実施形態においては、伸展体151は、ローラの下端部が材料貯留槽140の側壁142の上端部よりも0.5mmだけ上方に位置する高さに支持されている。
【0046】
駆動ベルト152は、駆動モータ154の回転駆動力を伸展体151および材料解し体153に伝達する部品であり、ゴム製の平ベルトからなる無端ベルトで構成されている。なお、駆動ベルト152は、駆動モータ154の回転駆動力を伸展体151および材料解し体153に伝達することができる部品であればよく、断面が円形や台形状のベルトであってもよいし、歯付きベルトであってもよい。
【0047】
材料解し体153は、図3に示すように、材料貯留槽140内に貯留されている粉末材料PMの表層部分を前記伸展体151の通過に先立って解すための部品であり、主として、回転ロッド153a、解し部153およびプーリ153cをそれぞれ備えて構成されている。回転ロッド152aは、図3に示すように、解し部153bを支持して回転駆動する部品であり、X軸方向の延びる金属製の丸棒で構成されている。
【0048】
解し部153bは、材料貯留槽140内に貯留されている粉末材料PMの表層部分に挿し込まれてこの表層部分を解す部分であり、回転ロッド153aの外周面から張り出して形成されている。より具体的には、解し部153bは、回転ロッド153aの長手方向に延びる金属製の板状体が回転ロッド153aの周方向に等間隔に複数枚取り付けられて構成されている。すなわち、材料解し体153は、水車のような形状に形成されている。本実施形態においては、解し部153bは、X軸方向に延びる長方形状(帯状)の板状体が回転ロッド153aの周方向に等間隔に8つ設けられている。この場合、解し部153bのX軸方向の長さは、材料貯留槽140のX軸方向の内寸以下の長さに設定されている。
【0049】
また、解し部153bの回転ロッド153aからの張り出し量は、解し部153bが粉末材料PM内に挿し込まれた際に、回転ロッド153aの外周面が粉末材料PMの上面に接触する張り出し量または同粉末材料PMの上面に回転ロッド153aの外周面が接触しない張り出し量にそれぞれ設定することができる。この場合、解し部153bは、解し部153bが粉末材料PM内に挿し込まれた際に回転ロッド153aの外周面が粉末材料PMの上面に接触する張り出し量に設定することによって粉末材料PMの飛散を抑えることができる。
【0050】
また、解し部153bは、解し部153bが粉末材料PM内に挿し込まれた際に粉末材料PMの上面に接触しない張り出し量に設定することによって粉末材料PMを跳ね上げてより粉末状に解すことができる。本実施形態においては、解し部153bは、解し部153bが粉末材料PM内に挿し込まれた際に回転ロッド153aの外周面が粉末材料PMの上面に接触する張り出し量で、各解し部153bが同じ張り出し量で形成されている。
【0051】
プーリ153cは、駆動ベルト152によって伝達される駆動モータ154の回転駆動力を回転ロッド153aに伝達する部品であり、樹脂材を円筒状に形成して構成されている。すなわち、プーリ153cは、駆動ベルト152に対して平面同士が面接触することにより滑りを許容した状態で駆動モータ154の回転駆動力を受けている。
【0052】
この材料解し体153は、回転ロッド153aの両端部がユニット支持体156に回転自在に保持された状態でプーリ153cおよびこのプーリ153cに掛けられる駆動ベルト152を介して駆動モータ154に連結されている。この場合、材料解し体153は、解し部153bの下端部が回転ロッド153aの下端部以上、好ましくは回転ロッド153aの下端部よりも若干(例えば、0.1mm〜1.0mm)上方に位置する高さに支持されている。本実施形態においては、材料解し体153は、解し部153bの下端部が回転ロッド153aの下端部よりも0.2mmだけ上方に位置する位置に支持されている。
【0053】
駆動モータ154は、伸展体151および材料解し体153をそれぞれ回転駆動させる駆動源であり、制御装置170によって作動制御される電動機で構成されている。この駆動モータ154は、ユニット支持体156に取り付けられており、前記した図示しないプーリおよびプーリ153cに駆動ベルト152を介してそれぞれ連結されている。これにより、駆動モータ154は、伸展体151を前記プーリ、前記2つの歯車および駆動ベルト152をそれぞれ介して造形槽110側に対して下方から上方に向かって回転駆動させるとともに、材料解し体153を駆動ベルト152およびプーリ153cをそれぞれ介して伸展体151側に対して下方孔から上方に向かって回転駆動させる。
【0054】
高さ規制体155は、材料解し体153に対して材料貯留槽140内に貯留されている粉末材料PMの表層部分の高さを規定するための部品であり、金属製の板状体で構成されている。より具体的には、高さ規制体155は、X軸方向に延びる長方形(帯状)の板状体で構成されており、その両端部がユニット支持体156にそれぞれ固定的に支持されている。この場合、高さ規制体155は、材料解し体153に対して供給が許容できる粉末材料PMの上面位置に板状体の下端部が位置するように設けられている。
【0055】
ユニット支持体156は、材料貯留槽140および造形槽110の各上方で伸展体151、材料解し体153および高さ規制体155をそれぞれ支持する部品であり、伸展体151、材料解し体153および高さ規制体155の各両端部側にそれぞれ起立する金属製の板状体で構成されている。このユニット支持体156は、下端部が伸展ユニット移動機構160に支持された状態で、材料貯留槽140および造形槽110の各上方で伸展体151、材料解し体153および高さ規制体155の各両端部を支持している。
【0056】
伸展ユニット移動機構160は、材料伸展ユニット150を材料貯留槽140と造形槽110との間で往復移動させるための装置であり、主として、Y方向第2案内ガイド161および駆動モータ162をそれぞれ備えて構成されている。Y方向第2案内ガイド161は、ユニット支持体156を支持して材料貯留槽140と造形槽110との間のY軸方向に案内するためにY軸方向に延びる金属製のレールや送りネジ機構(いずれも図示せず)を備えた部品である。このY方向第2案内ガイド161は、前記基台120上に固定的に取り付けられている。
【0057】
駆動モータ162は、材料伸展ユニット150を材料貯留槽140と造形槽110との間で往復移動させる駆動源であり、制御装置170によって作動制御される電動機で構成されている。この駆動モータ162は、Y方向第2案内ガイド161内の送りネジ機構を回転駆動させることによって材料伸展ユニット150を往復移動させる。
【0058】
制御装置170は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、インターフェース171を介して接続される外部コンピュータ装置200からの指示および三次元造形装置100における図示しない筐体に設けられる操作パネル172からの入力操作に従って三次元造形装置100の全体の作動を総合的に制御する。本実施形態においては、制御装置170は、少なくとも、造形ステージ昇降機構113の駆動モータ113c、造形槽移動機構115の駆動モータ115b、造形ヘッド130、造形ヘッド走査機構133の駆動モータ133b、供給ステージ昇降機構143の駆動モータ143b、材料伸展ユニット150の駆動モータ155および伸展ユニット移動機構160の駆動モータ162の作動をそれぞれ制御する。
【0059】
外部コンピュータ装置200は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、キーボードおよびマウスからなる入力装置201および液晶ディスプレイからなる表示装置202を備えるパーソナルコンピュータ(所謂パソコン)であり、図示しない造形プログラムを実行することにより三次元造形装置100の作動を制御する。この場合、造形プログラムは、ユーザにより予め前記ハードディスクに記憶されている。なお、外部コンピュータ装置200は、三次元造形装置100の作動を制御することができれば、どのような形式のコンピュータ装置であってもよい。
【0060】
(三次元造形装置100の作動)
次に、このように構成した三次元造形装置100の作動について説明する。まず、ユーザは、外部コンピュータ装置200と三次元造形装置100とをインターフェース131を介して接続し、外部コンピュータ装置200および三次元造形装置100の電源をそれぞれONにする。これにより、外部コンピュータ装置200は、図示しない所定の制御プログラムを実行することによりユーザからの指令の入力を待つ待機状態となる。
【0061】
また、三次元造形装置100は、制御装置170内のROMに予め記憶されている図示しない所定の制御プログラムを実行することにより、造形槽110、造形ステージ111、造形ヘッド130、供給ステージ141および材料伸展ユニット150をそれぞれ原点復帰させた後(図1参照)、外部コンピュータ装置200からの指示を待つ待機状態となる。
【0062】
なお、この場合、造形槽110の原点位置とは、材料貯留槽140からY軸方向上における最も離隔した立体造形物WKを造形する位置である。また、造形ステージ111の原点位置とは、Z軸方向上で最も上昇した位置であって造形ステージ111が側壁112の上端部と面一となる位置である。また、造形ヘッド130の原点位置とは、X軸方向における一方の端部側の移動可能限界位置である。また、供給ステージ141の原点位置とは、Z軸方向に最も下降した位置であって材料貯留槽140のZ方向における最奥部である。また、材料伸展ユニット150の原点位置とは、造形槽110からY軸方向上においても最も離隔した三次元造形装置100の前面側の位置である。
【0063】
次に、ユーザは、三次元造形装置100における材料貯留槽140内に粉末材料PMを充填した後、外部コンピュータ装置200の入力装置201を操作して、外部コンピュータ装置200に図示しない造形プログラムの実行を指示する。この場合、この造形プログラムは、ユーザが所望する三次元形状を立体造形物WKとして成形するために、立体造形物WKを複数の横断面で分割した断面加工データを生成して三次元造形装置100に出力するプログラムである。
【0064】
この指示に応答して、外部コンピュータ装置200は、造形プログラムの実行を開始して断面加工データを生成する。この場合、外部コンピュータ装置200は、ユーザによって入力された三次元形状を表わす3次元形状データに基づいて断面加工データを生成する。そして、外部コンピュータ装置200は、生成した断面加工データを三次元造形装置100の制御装置170に出力する。断面加工データを入力した三次元造形装置100の制御装置170は、造形ステージ昇降機構113、造形槽移動機構115、造形ヘッド130、造形ヘッド走査機構133、供給ステージ昇降機構143、材料伸展ユニット150および伸展ユニット移動機構160の作動をそれぞれ制御して造形槽110内で粉末材料PMを結合させて立体造形物WKを下方から上方に向かって層を積み重ねて成形する。
【0065】
この立体造形物WKの造形過程において、制御装置170は、材料貯留槽140内の粉末材料PMを造形槽110に供給しながら立体造形物WKの造形を行う。具体的には、制御装置170は、次のサブステップ1〜サブステップ4の各処理を実行することによって粉末材料PMの供給処理を実行する。
【0066】
サブステップ1;まず、制御装置170は、造形槽110の位置決めを行う。具体的には、制御装置170は、図4に示すように、造形槽移動機構115の駆動モータ115bの作動を制御することにより造形槽110を材料貯留槽140側に移動させて材料貯留槽140に密着させる。
【0067】
サブステップ2:次に、制御装置170は、造形ステージ111および供給ステージ141のZ軸方向における位置である高さの位置決めを行う。具体的には、制御装置170は、図5に示すように、供給ステージ昇降機構143の駆動モータ143bの作動を制御して供給ステージ141を上昇させるとともに造形ステージ昇降機構113の駆動モータ113cの作動を制御して造形ステージ111を下降させる。
【0068】
この場合、制御装置170は、供給ステージ141を供給ステージ141上の粉末材料PMの上面が材料貯留槽140の側壁142の上端部に対して僅か(0.5mm〜数mm)に上方に突出する高さ位置に位置決めする。本実施形態においては、制御装置170は、供給ステージ141を供給ステージ141上の粉末材料PMの上面が材料貯留槽140の側壁142の上端部に対して1.0mmだけ上方に突出する高さ位置に位置決めする。これにより、材料伸展ユニット150における伸展ローラ151および材料解し体153の解し部153bの各下端部が押上げられた粉末材料PMの表層部分にそれぞれ挿入される。
【0069】
また、制御装置170は、造形ステージ111を造形ステージ111上の粉末材料PMの上面が造形槽110の側壁112の上端部に対して僅か(0.05mm〜数mm)に下方に突出する高さ位置に位置決めする。本実施形態においては、制御装置170は、造形ステージ111を造形ステージ111上の粉末材料PMの上面が造形槽110の側壁112の上端部に対して0.1mmだけ下方に突出する高さ位置に位置決めする。
【0070】
サブステップ3:次に、制御装置170は、材料伸展ユニット150を用いて材料貯留槽140内の粉末材料PMを造形槽110内に供給する。具体的には、制御装置170は、図6に示すように、材料伸展ユニット150における駆動モータ154を作動させて材料解し体153および伸展ローラ151をそれぞれ回転駆動させた後、伸展ユニット移動機構160の駆動モータ162の作動を制御して材料伸展ユニット150を材料貯留槽140から造形槽110に向けて移動させる。この場合、図6における破線矢印に示すように、材料解し体153は伸展体151側に対して下方から上方に向かって回転駆動するとともに、伸展体151は材料解し体153側に対して下方から上方に向かって回転駆動する。すなわち、材料解し体153と伸展体151とは互いに向かい合う側で互いに下方から上方に向かう互いに逆方向に回転駆動する。
【0071】
これにより、材料貯留槽140内の粉末材料PMの表層部分は、高さ規制体155によって所定の高さ以下の高さに調整された後、回転駆動する材料解し体143の解し部153bによって掘り起こされて解される。そして、材料解し体143によって解された粉末材料PMの表層部分は、材料解し体143の回転駆動によって伸展体151側に押し出された後、伸展体151の回転駆動によって上方に押し出されながら造形槽110側に向かって搬送される。この場合、伸展体151に達した粉末材料PMは、材料解し体153によって予め解されているため全体が伸展体151の前方で連続的に湧水のように流動しながら造形槽110側に搬送される。
【0072】
伸展体151によって造形槽110側に押された粉末材料PMは、図7に示すように、互いに密着する材料貯留槽140の側壁142および造形槽110の側壁112の各上端部上を通って造形槽110内に運ばれる。この場合、材料解し体153の解し部153bおよび伸展体151の各下端部は、貯留槽140の側壁142および造形槽110の側壁112の各上端部よりも上方に位置しているため、各側壁142,112に接触することはない。
【0073】
また、仮に、材料解し体153の解し部153bおよび伸展体151が何らかの不具合によって各側壁142,112に接触した場合であっても、材料解し体153および伸展体151が駆動ベルト152に対してプーリ153cや図示しない前記プーリが滑ることにより材料解し体153、伸展体151、造形槽110および材料貯留槽140を損傷することが防止される。
【0074】
次いで、造形槽110内に導かれた粉末材料PMは、図8に示すように、伸展体151の回転駆動によって一部が上方に押し出されながら他の一部が伸展体151に押圧されて後方に敷かれていく。これにより、伸展体151は、伸展体151の後方側に平らで凹凸のない緻密な表面で粉末材料PMを敷くことができる。なお、この場合、回転駆動する材料解し体153は、解し部153b下端部が伸展体151の下端部より上方に位置しているため、造形槽110内の粉末材料PMや立体造形物WKに接触することはない。そして、図9に示すように、伸展体153が不要材料受け体116上まで移動することによって造形槽111内で敷き切れなかった余剰の粉末材料PMが不要材料受け体116内に導かれる。
【0075】
次いで、制御装置170は、伸展ユニット移動機構160の駆動モータ162の作動を制御して材料伸展ユニット150を造形槽110から材料貯留槽140に向けて移動させる。この場合、制御装置170は、材料伸展ユニット150における駆動モータ154の作動を制御して材料解し体153および伸展ローラ151の各回転駆動を停止させてもよいが、これらの各回転駆動を維持した状態で伸展ユニット移動機構160を移動させることにより整地した粉末材料PMの表面の損傷を防止することができる。そして、制御装置170は、材料伸展ユニット150を材料貯留槽140の原点位置に位置決めした後に、材料伸展ユニット150における駆動モータ154の作動を制御して材料解し体153および伸展ローラ151の各回転駆動を停止させる。
【0076】
サブステップ4;次に、制御装置170は、造形槽110を造形ヘッド130に対して位置決めする。具体的には、制御装置170は、造形槽移動機構115の駆動モータ115bの作動を制御することにより造形槽110を材料貯留槽140から離隔させる側に移動させて造形ヘッド130の下方に位置決めする。
【0077】
これにより、制御装置170は、造形槽110への粉末材料PMの供給処理を終了することができる。したがって、制御装置170は、この後、造形槽移動機構115の駆動モータ115bおよび造形ヘッド130の駆動モータ133bの作動を制御することによって造形槽110と造形ヘッド130とをX−Y軸方向に相対変位させながら吐出ヘッド131およびUVランプ132の各作動を制御して表層部の粉末材料PMの一部を結合させる造形処理を実行することにより一層分の立体造形物WKを成形する。そして、制御装置170は、前記した造形槽110への粉末材料PMの供給処理と一層分の造形処理とを繰り返し実行することにより立体造形物WKを下方から上方に向かって一層ずつ成形することができる。
【0078】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、三次元造形装置100は、伸展体151によって押し出される伸展体151の移動方向前方側の粉末材料PMが材料解し体153によって予め解されるため、材料貯留槽140内においては固められた粉末材料PMが解されるとともに、造形槽110内においては解された粉末材料PMが伸展体151で押されて伸展体151の前方で全体が連続的に流動(湧水のように湧き上がってくるような状態)しながら敷かれていく。これにより、本発明に係る三次元造形装置100においては、粉末材料PMを円滑かつ十分な供給量で造形槽110内に凹凸なく平らに粉末材料を敷くことができ、強度および表面精度をそれぞれ向上させた立体造形物WKを成形することができる。
【0079】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態においては、材料解し体153は、回転ロッド153aの外周面に板状の解し部153bを設けて構成した。しかし、材料解し体153は、伸展体151に対して造形槽110側への進行方向前側に設けられて粉末材料PMを解すことができれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。したがって、材料解し体153は、解し部153bが、例えば、粉末材料PMに挿し込まれる櫛状やブラシ状に形成することができる。この場合、材料解し体153は、上記実施形態のように回転駆動するようにしてもよいし、解し部153bが所定の挿し込み位置に固定的に位置決めされていてもよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、材料解し体153は、駆動モータ154によって回転駆動するように構成した。しかし、材料解し体153は、駆動モータ154を用いなくても回転駆動させることができる。例えば、材料解し体153は、回転ロッド153aをユニット支持体156に回転自在な状態で取り付けておく。そして、材料解し体153は、材料伸展ユニット150が造形槽110側に移動することによって解し部153bが粉末材料PM上を転がることによって粉末材料PMを解すことができる。
【0082】
また、上記実施形態においては、材料解し体153は、伸展体151に対して下方から上方に向かって回転駆動するように構成した。しかし、材料解し体153は、造形槽110に対して下方から上方に向かって回転駆動するように構成することもできる。
【0083】
また、上記実施形態においては、材料解し体153は、解し部153bを金属板製の剛体で構成した。しかし、材料解し体153は、解し部153bを金属板以外の材料、例えば、樹脂材、ゴム材、セラミック材、木材などで構成することができる。また、材料解し体153は、解し部153bを樹脂材やゴム材などの弾性体で構成することができる。また、材料解し体153は、解し部153bを板状以外の形状、例えば、球状や半球状、またはブラシ状に形成して構成することもできる。また、材料解し体153は、回転ロッド153aの滑らかな外表面を解し部153bとして粉末材料PMに押し付けて用いることができる。また、材料解し体153は、回転ロッド153aの外表面にローレットなどの細かな凹凸を解し部153bとして形成することもできる。また、材料解し体153は、粉末材料PMを解す少なくとも1つの解し部153bを備えていればよい。
【0084】
また、上記実施形態においては、伸展体151は、駆動モータ154によって回転駆動するように構成した。しかし、伸展体151は、粉末材料PMを材料貯留槽140から造形槽110に導いて敷くことができればよく、必ずしも回転駆動する構成でなくてもよい。したがって、伸展体151は、ユニット支持板156に固定的に支持されたローラや板状体で構成することができる。また、伸展体151は、回転駆動させる場合であっても、材料解し体153とは独立した駆動モータで回転駆動させることもできる。
【0085】
また、上記実施形態においては、材料解し体153が造形層110に向かって移動する前側に高さ規制体155を設けた。これにより、材料伸展ユニット150は、高さ規制体155によって材料解し体153に過度な厚さや量の粉末材料PMが導かれることが防止されて常に所定量以下の厚さの粉末材料PMが材料解し体153に供給されるため、精度良く粉末材料PMを造形槽110に導いて平らに敷くことができる。しかし、材料伸展ユニット150は、材料解し体153に供給される粉末材料PMの厚さや量が問題とならない場合には、高さ規制体155を省略して構成することもできる。
【0086】
また、上記実施形態においては、三次元造形装置100は、粉末材料PMに紫外線硬化樹脂を付着させた後に紫外線を照射して粉末材料PMを結合させて立体造形物WKを成形するように構成した。しかし、三次元造形装置100は、粉末材料PMを結合させて立体造形物WKを成形するように構成されていればよく、必ずしも紫外線を用いて粉末材料PMを結合させる構成に限定されるものではない。したがって、三次元造形装置100は、光以外で固化する接着剤などからなるバインダ、例えば、熱によって固化するバインダのほか、嫌気性や好気性のバインダを吐出ヘッド131から吐出させて粉末材料PMを結合させることもできる。また、三次元造形装置100は、石膏からなる粉末材料PMを水を含むバインダで硬化させるように構成することもできる。また、三次元造形装置100は、バインダを噴射する吐出ヘッド131に加えて着色インクを噴射する吐出へヘッド131を設けることにより粉末材料PMを着色して立体造形物WKを成形することもできる。
【符号の説明】
【0087】
WK…立体造形物、PM…粉末材料、
100…三次元造形装置、
110…造形装置、111…造形ステージ、112…側壁、113…造形ステージ昇降機構、113a…昇降台座、113b…支持軸、113c…駆動モータ、113d…駆動ベルト、114…支持筐体、115…造形槽移動機構、115a…Y方向第1案内ガイド、115b…駆動モータ、116…不要材料受け体、
120…基台、
130…造形ヘッド、131…吐出ヘッド、132…UVランプ、133…造形ヘッド走査機構、133a…X方向案内ガイド、133b…駆動モータ、
140…材料貯留槽、141…供給ステージ、142…側壁、143…供給ステージ昇降機構、143a…Z方向案内ガイド、143b…駆動モータ、
150…材料伸展ユニット、151…伸展体、152…駆動ベルト、153…材料解し体、153a…回転ロッド、153b…解し部、153c…プーリ、154…駆動モータ、155…高さ規制体、156…ユニット支持板、
160…伸展ユニット移動機構、161…Y方向第2案内ガイド、162…駆動モータ、
170…制御装置、171…インターフェース、172…操作パネル、
200…外部コンピュータ装置、201…入力装置、202…表示装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9