特許第6474313号(P6474313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474313覆工エレメントの地山への貫入管理方法及び管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474313
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】覆工エレメントの地山への貫入管理方法及び管理装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20190218BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   E21D9/06 311B
   E21D11/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-101974(P2015-101974)
(22)【出願日】2015年5月19日
(65)【公開番号】特開2016-216984(P2016-216984A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592145268
【氏名又は名称】JR東日本コンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399101337
【氏名又は名称】株式会社ジェイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100104363
【弁理士】
【氏名又は名称】端山 博孝
(72)【発明者】
【氏名】森山 智明
(72)【発明者】
【氏名】清水 満
(72)【発明者】
【氏名】桑原 清
(72)【発明者】
【氏名】石橋 忠良
(72)【発明者】
【氏名】八代 浩二
(72)【発明者】
【氏名】長尾 達児
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 基彰
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 隆
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雅春
(72)【発明者】
【氏名】千葉 敬介
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−137894(JP,A)
【文献】 特開平05−141185(JP,A)
【文献】 特開平07−197777(JP,A)
【文献】 実開平02−125096(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削のための刃口が連結された覆工エレメントを、発進側から到達側に向けて前記発進側と前記到達側との間を複数に分割した貫入区間ごとに地山に貫入する方法において、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入前に、前記覆工エレメントの前記発進側からの貫入距離に対する貫入力の予測関係式を設定する工程と、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入施工中、前記覆工エレメントの前記発進側からの貫入距離を計測するとともに、その貫入距離位置での実貫入力を多数位置において算出する工程と、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入施工中、計測した前記貫入距離を前記予測関係式に代入して予測貫入力を算出する工程と、
前記実貫入力と前記予測貫入力とを比較する工程とを備え、
前記実貫入力の前記予測貫入力からの乖離に応じて、前記覆工エレメントの貫入速度を変化させることを特徴とする覆工エレメントの地山への貫入管理方法。
【請求項2】
前記刃口には掘削機が装備され、前記貫入速度の変化に同調させるように、前記掘削機による地山の掘削速度を変化させることを特徴とする請求項1記載の覆工エレメントの地山への貫入管理方法。
【請求項3】
前記覆工エレメントの貫入距離が各貫入区間の終点に到達した後、多数位置で計測した前記貫入距離及びそれらの貫入距離位置での前記実貫入力から両者の実関係式を算出する工程と、
1つの貫入区間のために設定した前記予測関係式と当該貫入区間での前記覆工エレメントの貫入の結果得られた前記実関係式とを比較する工程とを備え、
前記実関係式の前記予測関係式からの乖離が所定範囲内にあるとき、次の貫入区間の予測関係式として当該貫入区間の予測関係式を適用し、前記乖離が所定範囲内にないとき、次の貫入区間の予測関係式として前記実関係式を適用することを特徴とする請求項1又は2記載の覆工エレメントの地山への貫入管理方法。
【請求項4】
前記到達側に設置されたけん引ジャッキにより前記覆工エレメントに前記貫入力を付与することを特徴とする請求項1,2又は3記載の覆工エレメントの地山への貫入管理方法。
【請求項5】
先端に掘削のための刃口が接続された覆工エレメントを、発進側から到達側に向けて前記発進側と前記到達側との間を複数に分割した貫入区間ごとに地山に貫入するための貫入管理装置であって、
前記覆工エレメントに地山への貫入力を付与する油圧ジャッキと、
前記油圧ジャッキに作動油を送給するとともに、油圧データを出力する油圧ユニットと、
前記覆工エレメントの前記発進側からの貫入距離を計測して、貫入距離データを出力する貫入距離計測部材と、
演算制御装置とを備え、
前記演算制御装置は、各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入前に、前記覆工エレメントの前記発進側からの貫入距離に対する貫入力の予測関係式を設定する予測関係式設定部と、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入施工中、前記貫入距離データを前記予測関係式に代入して予測貫入力を算出する予測貫入力算出部と、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入施工中、前記油圧データから実貫入力を算出する実貫入力算出部と、
前記予測貫入力と前記実貫入力とを比較する貫入力比較部とを備え、
前記実貫入力の前記予測貫入力からの乖離に応じて前記覆工エレメントの貫入速度を変化させるように、前記油圧ユニットに貫入速度調整指令を出力することを特徴とする覆工エレメントの地山への貫入管理装置。
【請求項6】
前記刃口には前記油圧ユニットから送給される作動油によって作動する掘削機が装備され、
前記演算制御装置は、前記貫入速度に同調させるように、前記油圧ユニットに掘削速度調整指令を出力することを特徴とする請求項5記載の覆工エレメントの地山への貫入管理装置。
【請求項7】
前記演算制御装置は、前記覆工エレメントの貫入距離が各貫入区間の終点に到達した後、前記貫入距離データ及び前記実貫入力データのデータ群から両者の実関係式を算出する実関係式算出部と、
1つの貫入区間のために設定した前記予測関係式と当該貫入区間での前記覆工エレメントの貫入の結果得られた前記実関係式とを比較する関係式比較部とを備え、
前記予測関係式設定部は、前記実関係式の前記予測関係式からの乖離が所定範囲内にあるとき、次の貫入区間の予測関係式として当該貫入区間の予測関係式を適用し、前記乖離が所定範囲内にないとき、次の貫入区間の予測関係式として前記実関係式を適用することを特徴とする請求項5又は6記載の覆工エレメントの地山への貫入管理装置。
【請求項8】
前記油圧ジャッキは、前記到達側に設置されたけん引ジャッキであることを特徴とする請求項5,6又は7記載の覆工エレメントの地山への貫入管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、覆工エレメントの地山への貫入管理方法及び管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路や道路など車両走行路の下方の地盤に立体交差する地下構造物を構築するアンダーパス工法の1つとして、長尺の多数の鋼製覆工エレメントを地山に貫入して覆工を行うHEP&JES(High Speed Element Pull & Jointed Element Structure) 工法が知られている。
【0003】
この工法は、例えば車両走行路下の地盤に構造物の断面を区画するように、長手方向に沿って特殊継手が設けられた長尺の鋼製覆工エレメントを継手どうしを嵌合させながら、けん引により並列させて地山に順次挿入し、覆工エレメント内部にコンクリートを打設して箱形ラーメン形式又は円形等の覆工壁を構築した後、その内方の地山を掘削して覆工壁を構造物躯体とする工法である(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
覆工エレメントは先端に掘削のための刃口が連結され、機械掘削方式の場合は刃口に装備された掘削機により、刃口前方の地山を掘削しながら覆工エレメントが地山に貫入される。また人力掘削方式の場合には刃口での人力による掘削と覆工エレメント貫入とを交互に繰り返して、覆工エレメントが地山に貫入される。
【0005】
覆工エレメントのけん引力は、けん引時の刃口前方の地山からの抵抗、刃口及び覆工エレメントの周面に生じる地山からの摩擦抵抗、既設覆工エレメントの継手と嵌合している継手どうしの摩擦抵抗(嵌合抵抗)の総和としての抵抗力である。したがって、けん引力は刃口前方の抵抗を初期値として、その後はけん引施工が進行するにつれて覆工エレメントの地山への貫入長さが長くなることから、貫入距離(けん引距離)と比例関係にあることが知られている。
【0006】
一方、覆工エレメントのけん引施工において、覆工エレメントの貫入方向前方に支障物等が存在することがあり、これが刃口や覆工エレメントに干渉した場合には、支障物を地山に押し込むこととなるため、けん引力が急激に上昇する。
【0007】
以上のような背景のもと、覆工エレメントのけん引施工に際しては、従来、けん引ジャッキの油圧からけん引力を算出するとともに、また発進側に設けた距離計により発進側からの貫入距離及びけん引速度をそれぞれ計測し、これらを施工データとして中央管理室にてオペレータが確認しながら、施工を行っている。
【0008】
具体的には、貫入距離とけん引力を見比べながら、急激なけん引力の上昇時にはけん引をストップして、切羽において支障物の有無を確認し、支障物があった場合にはこれを除去した後、再けん引することとしている。しかしながら、従来の手法はオペレーターの感覚に頼ることとなり、けん引力上昇の傾向を見落とした場合には、支障物を無理矢理地山に押し込むこととなり、地表面に悪影響を及ぼすこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−120372号公報
【特許文献2】特開2000−179282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、支障物等の影響を確実に回避することができ、施工を安全に効率良く行うことができる覆工エレメントの地山への貫入管理方法及び管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、先端に掘削のための刃口が連結された覆工エレメントを、発進側から到達側に向けて前記発進側と前記到達側との間を複数に分割した貫入区間ごとに地山に貫入する方法において、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入前に、前記覆工エレメントの前記発進側からの貫入距離に対する貫入力の予測関係式を設定する工程と、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入施工中、前記覆工エレメントの前記発進側からの貫入距離を計測するとともに、その貫入距離位置での実貫入力を多数位置において算出する工程と、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入施工中、計測した前記貫入距離を前記予測関係式に代入して予測貫入力を算出する工程と、
前記実貫入力と前記予測貫入力とを比較する工程とを備え、
前記実貫入力の前記予測貫入力からの乖離に応じて、前記覆工エレメントの貫入速度を変化させることを特徴とする覆工エレメントの地山への貫入管理方法にある。
【0012】
機械掘削方式の場合、前記刃口には掘削機が装備され、前記貫入速度の変化に同調させるように、前記掘削機による地山の掘削速度を変化させることを特徴とする。
【0013】
上記管理方法は、さらに、前記覆工エレメントの貫入距離が各貫入区間の終点に到達した後、多数位置で計測した前記貫入距離及びそれらの貫入距離位置での前記実貫入力から両者の実関係式を算出する工程と、
1つの貫入区間のために設定した前記予測関係式と当該貫入区間での前記覆工エレメントの貫入の結果得られた前記実関係式とを比較する工程とを備え、
前記実関係式の前記予測関係式からの乖離が所定範囲内にあるとき、次の貫入区間の予測関係式として当該貫入区間の予測関係式を適用し、前記乖離が所定範囲内にないとき、次の貫入区間の予測関係式として前記実関係式を適用することを特徴とする。
【0014】
けん引方式の場合、前記到達側に設置されたけん引ジャッキにより前記覆工エレメントに前記貫入力を付与することを特徴とする。
【0015】
また、この発明は、先端に掘削のための刃口が接続された覆工エレメントを、発進側から到達側に向けて前記発進側と前記到達側との間を複数に分割した貫入区間ごとに地山に貫入するための貫入管理装置であって、
前記覆工エレメントに地山への貫入力を付与する油圧ジャッキと、
前記油圧ジャッキに作動油を送給するとともに、油圧データを出力する油圧ユニットと、
前記覆工エレメントの前記発進側からの貫入距離を計測して、貫入距離データを出力する貫入距離計測部材と、
演算制御装置とを備え、
前記演算制御装置は、各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入前に、前記覆工エレメントの前記発進側からの貫入距離に対する貫入力の予測関係式を設定する予測関係式設定部と、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入施工中、前記貫入距離データを前記予測関係式に代入して予測貫入力を算出する予測貫入力算出部と、
各貫入区間での前記覆工エレメントの貫入施工中、前記油圧データから実貫入力を算出する実貫入力算出部と、
前記予測貫入力と前記実貫入力とを比較する貫入力比較部とを備え、
前記実貫入力の前記予測貫入力からの乖離に応じて前記覆工エレメントの貫入速度を変化させるように、前記油圧ユニットに貫入速度調整指令を出力することを特徴とする覆工エレメントの地山への貫入管理装置にある。
【0016】
機械掘削方式の場合、前記刃口には前記油圧ユニットから送給される作動油によって作動する掘削機が装備され、
前記演算制御装置は、前記貫入速度に同調させるように、前記油圧ユニットに掘削速度調整指令を出力することを特徴とする。
【0017】
前記演算制御装置は、前記覆工エレメントの貫入距離が各貫入区間の終点に到達した後、前記貫入距離データ及び前記実貫入力データのデータ群から両者の実関係式を算出する実関係式算出部と、
1つの貫入区間のために設定した前記予測関係式と当該貫入区間での前記覆工エレメントの貫入の結果得られた前記実関係式とを比較する関係式比較部とを備え、
前記予測関係式設定部は、前記実関係式の前記予測関係式からの乖離が所定範囲内にあるとき、次の貫入区間の予測関係式として当該貫入区間の予測関係式を適用し、前記乖離が所定範囲内にないとき、次の貫入区間の予測関係式として前記実関係式を適用することを特徴とする。
【0018】
けん引方式の場合、前記油圧ジャッキは、前記到達側に設置されたけん引ジャッキであることを特徴とする。
【0019】
覆工エレメントの地山への貫入方式には、到達側からけん引ジャッキで覆工エレメントをけん引する方式と、発進側から推進ジャッキで覆工エレメントを推進(押し込む)させる方式とがあり、上記貫入力とはこれらの方式の力すなわちけん引力と推進力との双方を含む概念である。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、覆工エレメントの発進側からの貫入距離に対する貫入力を予測し、予測貫入力と実貫入力との乖離に応じて貫入速度を変化させるので、支障物等の影響を確実に回避することができ、施工を安全に効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の実施形態を示し、覆工エレメントの地山への貫入施工状態を示す断面図である。
図2】演算制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】管理方法の手順を示すフローチャートである。
図4図3に引き続く手順を示すフローチャートである。
図5】貫入区間Sjにおける予測関係式と、次の貫入区間Sj+1における予測関係式を設定するための判定領域を示すグラフである。
図6】貫入区間Sj+1における予測関係式を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。以下に示す実施形態は、覆工エレメントを到達側からのけん引によって地山に貫入させる例である(けん引方式)。図1は、覆工エレメントの地山への貫入施工状態を示す断面図である。覆工エレメント1は、断面四角形又はこれに順次並列して継手を介して接続しながら地山に貫入される断面コ字形の鋼製部材である(詳細は特許文献1,2参照)。覆工エレメント1は長手方向に沿って複数に分割され、各分割エレメント1aは地山への貫入に伴い発進側(発進立坑)10において最後尾のものに接続される。
【0023】
覆工エレメント1の先端には刃口2が連結されている。機械掘削方式の場合は、刃口2に油圧モータ4によって作動するオーガー掘削機などの掘削機3が装備されている。到達側(到達立坑)11の土留め壁5には油圧によるけん引ジャッキ6が設けられている。刃口2には引張り材(PC鋼撚り線)7の一端が接続され、引張り材7は地山12の内部を通ってその他端がけん引ジャッキ6に把持されている。このけん引ジャッキ6の作動により、覆工エレメント1が地山12に貫入される。けん引ジャッキ6及び油圧モータ4の作動油は、油圧ポンプや油タンク等を備えた油圧ユニット13から送給される。
【0024】
覆工エレメント1の地山12への貫入は、発進側10と到達側11との間を複数に分割した貫入区間S1,S2,・・・,Sj,・・・Send ごとに行われる。各貫入区間の長さは分割エレメント1aの長さ(例えば6m)を複数に分割した長さである(例えば2m)。また、機械掘削方式の場合は、掘削機3により刃口2の前方の地山を掘削しながら覆工エレメント1が地山に貫入される。他方、刃口2の内部に作業者が入って掘削する人力掘削式の場合は、人力による数10cmの掘削及び覆工エレメント1の地山への貫入を交互に繰り返して覆工エレメントが地山に貫入される。
【0025】
以上のような、覆工エレメント1の貫入を管理するための装置は、前述のけん引ジャッキ6及び油圧ユニット13のほか、貫入距離計測部材14と演算制御装置15とを備えている。油圧ユニット13は、けん引ジャッキ6や油圧モータ4に作動油を送給する油圧ポンプの油圧データを出力し、この油圧データは演算制御装置15に入力される。
【0026】
貫入距離計測部材14としては、例えば発進側10の土留壁5に取り付けられるロータリーエンコーダが用いられる。このロータリーエンコーダ14は覆工エレメント1の周面に接してその貫入に伴って回転し、発進側10からの貫入距離データ(けん引距離データ)を出力する。この貫入距離データは演算制御装置15に入力される。
【0027】
演算制御装置15としては、入出力部、演算制御部(CPU)、記憶部を有する例えばパーソナルコンピュータが用いられる。図2は演算制御装置15の機能ブロック図を示している。演算制御装置15は、けん引速度設定部16、予測関係式設定部17、予測けん引力算出部18、実けん引力算出部19、けん引力比較部20、実関係式算出部21及び関係式比較部22を備えて構成されている。
【0028】
けん引速度設定部16は、各貫入区間Sjでの貫入開始前に、その前の貫入区間Sj-1の終了直前のけん引速度を当該貫入区間Sjのけん引速度として予め設定する。予測関係式設定部17は、各貫入区間Sjでの貫入開始前に、当該貫入区間Sjで予測される関係式すなわち発進側からの貫入距離Lに対するけん引力Pの関係式P=aj・L+bjを設定する。
【0029】
予測けん引力算出部18は、各貫入区間Sjでの貫入施工中、入力された貫入距離データLkを予測関係式P=aj・L+bjに代入して予測けん引力Pculkを算出する。実けん引力算出部19は、各貫入区間Sjでの貫入施工中、入力されたけん引ジャッキ6の油圧データから実けん引力Pkを算出する。
【0030】
けん引力比較部20は、それぞれ算出した予測けん引力Pculkと実けん引力Pkとを比較し、その乖離度dk=Pk/Pculkを算出する。この乖離度dkに応じて、演算制御装置15はけん引速度を変化させるように、油圧ユニット13にけん引速度調整指令を出力する。すなわち、けん引ジャッキ6のための油圧ポンプから送給される作動油の流量を変化させる。
【0031】
また、機械掘削方式の場合は、演算制御装置15はけん引速度に同調して掘削機3の掘削速度を変化させるように、油圧ユニット13に掘削速度調整指令を出力する。すなわち、掘削機3の油圧モータ4のための油圧ポンプから送給される作動油の流量を変化させる。
【0032】
実関係式算出部21は、覆工エレメント1が各貫入区間Sjの終点に到達した後、当該貫入区間Sjで得られた貫入距離データLk及び実けん引力データPkのデータ群から、最小自乗法により貫入距離Lに対するけん引力Pの実関係式P=ao・L+boを算出する。関係式比較部22は、当該貫入区間Sjに対して設定された予測関係式P=aj・L+bjと算出した実関係式P=ao・L+boとを比較し、予測関係式設定部17はそれらの乖離に応じて次の貫入区間Sj+1の予測関係式を設定する。
【0033】
すなわち、予測関係式設定部17は、実関係式P=ao・L+boの予測関係式P=aj・L+bjからの乖離が所定範囲内にあるときは、次の貫入区間Sj+1の予測関係式P=aj+1・L+bj+1として当該貫入区間Sjの予測関係式P=aj・L+bjを適用する(aj+1=aj、bj+1=bj)。また、乖離が所定範囲内にないときは、次の貫入区間Sj+1の予測関係式P=aj+1・L+bj+1として実関係式P=ao・L+boを適用する(aj+1=ao、bj+1=bo)。
【0034】
次に、図3図4に示すフローチャート及び図5図6に示すグラフを参照して、管理方法を具体的に説明する。貫入区間Sjの貫入に際しては、まず、けん引速度設定部16がけん引速度を、予測関係式設定部17が当該貫入区間Sjのための予測関係式P=aj・L+bjを設定する(ステップS1)。設定するけん引速度は、前の貫入区間Sj-1における貫入終了直前のけん引速度である。設定する予測関係式P=aj・L+bjは、後述するように、前の貫入区間Sj-1の貫入終了後に決定される。なお、初期貫入区間S1に関しては、土質等を加味した従来の施工実績に基づく、けん引速度及び予測関係式P=a1・L+b1が適用される。
【0035】
貫入を開始したら(ステップS2)、貫入距離計測部材14は発進側からの貫入距離Lkを計測し、また実けん引力算出部19は入力された油圧データからその貫入距離での実けん引力Pkを算出する(ステップS2)。これらの貫入距離データLk及び実けん引力データPkは、貫入区間Sjにおいて発進側からの多数の距離位置で取得する(図5参照)。
【0036】
そして、貫入距離データLkを取得するごとに、予測けん引力算出部18がその貫入距離データLkを予測関係式P=aj・L+bjに代入して予測けん引力Pculkを算出し(ステップS4)、さらに、けん引力比較部20がその貫入距離Lkでの実けん引力Pkと予測けん引力Pculkとを比較して乖離度dk=Pk/Pculkを算出する(ステップS5)。
【0037】
乖離度dkの算出の結果、演算制御装置15は乖離度dkに応じて、油圧ユニット13にけん引速度調整指令を出力し、また、機械掘削方式の場合は、けん引速度に同調した掘削速度とするべく油圧ユニット13に掘削速度調整指令を出力する。すなわち、レベル1:dk<0.8のとき、けん引速度を20%上昇させる(ステップS6-1)。さらに機械掘削方式の場合は、けん引速度に同調するように掘削速度を上昇させる(ステップS7-1)。また、レベル2:0.8≦dk<1.0のとき、けん引速度は変化させずに設定速度のままけん引を続行する(ステップS6-2)。このときは、掘削速度も変化させない。
【0038】
レベル3:1.0≦dk<1.2のとき、けん引速度を50%低減させる(ステップS6-3)。機械掘削方式の場合は、さらに、けん引速度に同調させるように掘削速度を低下させる(ステップS7-3)。レベル4:1.2≦dkのときは、演算制御装置15は緊急停止措置のための警告を発する。そして、切羽及びけん引機器等の異常の有無を確認した後、停止措置を解除してけん引を再開する(ステップS7-4)。
【0039】
以上のようなステップを繰り返し、貫入距離Lkが貫入区間Sjの終点に到達したら(ステップS8)、貫入を終了し(ステップS9)、さらに次の貫入区間Sj+1のための予測関係式P=aj+1・L+bj+1を設定する。
【0040】
そのために、まず、実関係式算出部21が貫入区間Sjでの貫入の結果得られた貫入距離データLk及び実けん引データPkのデータ群から最小自乗法により両者の実関係式P=ao・L+boを算出する(ステップS10)。そして、関係式比較部22は算出した実関係式P=ao・L+boと貫入区間Sjで設定された予測関係式P=aj・L+bjとを比較し、実関係式が所定範囲内にあるかどうかを判定する。
【0041】
ここで、所定範囲はこの実施形態では図5に示すように、予測関係式P=aj・L+bjの傾きaj及び切片bjにそれぞれ±1/2arng及び±1/2brngの幅を持たせた上限式P=(aj+1/2arng)・L+(bj+1/2brng)と下限式P=(aj−1/2arng)・L+(bj−1/2brng)との間の範囲としてある。
【0042】
すなわち、関係式比較部22は、傾きaoの傾きajからの乖離が所定範囲内(|ao−aj|<arng)にあるかどうか(ステップS11)、また切片boの切片bjからの乖離が所定範囲内(|bo−bj|<brng)にあるかどうか(ステップS12)を判断する。
【0043】
その結果、傾きao及び切片boのいずれもが所定範囲内にあるときは、予測関係式設定部17は次の貫入区間Sj+1の予測関係式として当該貫入区間Sjの予測関係式をそのまま適用する。すなわち、次の貫入区間Sj+1の関係式P=aj+1・L+bj+1において、aj+1=aj、bj+1=bjとする(ステップS13-1)。
【0044】
他方、傾きao及び切片boのいずれかが所定範囲内にないときは、次の貫入区間Sj+1の予測関係式として実関係式を適用する。すなわち、次の貫入区間Sj+1の関係式P=aj+1・L+bj+1において、aj+1=ao、bj+1=boとする(ステップS13-2)。図6は、次の貫入区間Sj+1の予測関係式として実関係式を適用した場合を示している。
【0045】
上記実施形態によれば、発進側からの貫入距離に対するけん引力を予測し、予測けん引力と実けん引力との乖離に応じてけん引速度を変化させるので、支障物等の影響を確実に回避することができ、施工を安全に効率良く行うことができる。また、貫入距離データ及び実けん引力データのデータ群から算出した実関係式と、その貫入区間で設定された予測関係式とを比較し、その乖離に応じて次の貫入区間の予測関係式を設定するので、土質条件の変化等施工条件の変化に応じた合理的な予測関係式を設定することができる。
【0046】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。例えば、予測けん引力と実けん引力との乖離に応じて変化させるけん引速度の変化率は、例示であり施工条件によって異なるものである。同様に、次の貫入区間の予測関係式を決定するために用いられる上下限式も一例を示したにすぎない。
【0047】
また、上記したように、この発明は、覆工エレメントを到達側からのけん引により地山に貫入させるけん引方式に限らず、覆工エレメントを発進側から推進させる推進方式にも適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1:覆工エレメント
2:刃口
3:掘削機
4:油圧モータ
6:油圧ジャッキ
7:引張り材
10:発進側
11:到達側
12:地山
13:油圧ユニット
14:貫入距離計測部材
15:演算制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6