【実施例】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る音響装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施例の音響装置10は、スピーカー信号発生部20と、駆動部30、スピーカー40、温度検出部50、位置/速度検出部60、および制御部70を含んで構成される。
【0014】
スピーカー信号発生部20は、スピーカー40のボイスコイルに供給されるアナログ音声信号を駆動部30へ提供する。駆動部30は、音声信号のリミッタ制御を行うリミッター回路や音声信号の増幅/減衰を行うアンプ等を含み、リミッタ制御ないし増幅/減衰された音声信号をスピーカー40へ提供する。温度検出部50は、スピーカー40の温度、好ましくはボイスコイルの温度を検出し、検出結果を制御部70へ提供する。位置/速度検出部60は、スピーカーの振動板またはボビンの位置/速度を検出し、検出結果を制御部70へ提供する。制御部70は、温度検出部50の検出結果および位置/速度検出部60の検出結果に基づき駆動部30から供給される音声信号のフィードバック制御を行う。例えば、制御部70は、温度検出部50により検出された温度が閾値以上であるとき、リミッタ回路に音声信号が一定レベル以下に制限をさせ、ボイスコイルへ大きな電流が供給されないようにする。また、制御部70は、位置/速度検出部60により検出された位置/速度を監視し、予定された位置/速度と閾値を越えて相違する場合にリミッタ回路に音声信号を一定レベル以下に制限させる。
【0015】
図2は、本実施例のスピーカーの概略構成を示す断面図、
図3は、
図2の領域Aの拡大図である。本実施例に係るスピーカー40は、ケース100の凹部に取付けられた円筒状の部分を含むセンターポール110と、センターポール110の外周に配置されたリング状の磁場発生部材120と、センターポール110の円筒状の部分と磁場発生部材120との間に配置された円筒状のボビン130と、ボビン130の外周に巻回されたボイスコイル140と、一方の端部がボビン130の上端部に固定され、他方の端部がフレーム160に固定された振動板150とを含んで構成される。
【0016】
センターポール110は、例えば、磁器回路のギャップを生成する鉄製の軸であり、接地される。磁場発生部材120は、ボイスコイル140の周辺に一定の磁場を形成する磁気材料から構成される。ボイスコイル140は、例えば、銅等のコイルから構成される。振動板150は、例えば、コーン紙等から構成される。
【0017】
図3を参照すると、ボビン130の一部が詳細が示されている。ボビン130は、後述するように導体パターンが形成されたフレキシブルプリント基板から構成され、ボビン130は、センターポール110と磁場発生部材120との間の両側に一定のギャップが生成されるように配置される。ボイスコイル140は、ボビン130の外周に巻回されるが、ボビン130とは電気的に絶縁された状態であり、かつ磁場発生部材120との間に非常に狭い間隙が形成されている。駆動部30からボイスコイル140に音声信号が供給されると、ボイスコル140に流れる電流により発生された磁力によりボビン130がセンターポール110の軸方向に振動し、これにより、ボビン130の上端部に接着剤等により固定された振動板150が振動し、音が出力される。
【0018】
ボビン130を構成するフレキシブル基板に形成された導体パターンとセンターポール110との間に静電容量が形成され、当該静電容量またはその変化量は、ボビン130の位置または速度を検出するために利用される。また、ボビン130の外周面には、温度検出素子200として、例えば、サーミスタが取付けられる。温度検出素子200は、ボイスコイル140の温度をできるだけ正確に検出することを可能にするため、できるだけボイスコイル140の近接に配置されることが望ましい。但し、ボビン130と磁場発生部材120との間隔(ギャップ)、およびボビン130とセンターポール110との間隔(ギャップ)は、非常に小さいため、それらの間隔に温度検出素子を配置する空間的余裕がない。そこで、温度検出素子200は、ボビン130が振動する際に、磁場発生部材120やセンターポール110と干渉しないような位置、すなわち、ボイスコイル140の上端部近傍に取付けられる。温度検出素子200には、外部リード210を介して電力が供給される。
【0019】
次に、本発明の第1の実施例に係るボビンについて説明する。
図4(A)は、円筒状のボビンに成形される前のフレキシブル基板の平面図、
図4(B)は、A−A線断面図、
図4(C)は、B−B線断面図、
図4(D)は、フレキシブル基板の円筒状に成形した状態を示す斜視図である。フレキシブルプリント基板220は、ポリイミド等の電気的絶縁材料から構成された絶縁層と、銅やアルミニウム等の導電性材料から構成された導電体層とを積層した多層基板から構成される。基板220は、
図4(B)に示すように、第1の絶縁層222と、第1の絶縁層222上にパターニングされた導体パターン(導電体層)224と、導体パターン224上に形成された第2の絶縁層226とを含む。第1の絶縁層222は、例えば、図示しない絶縁基材上に形成されるようにしてもよい。導体パターン224は、例えば、第1の絶縁層222上に導電体層をスクリーン印刷することによりパターニングされたり、あるいは導電体層を形成後にエッチングすることでパターニングされる。
【0020】
基板220は、上端E1と、上端E1に平行な下端E2とを有する概ね矩形状を有する。上端E1近傍には、振動板150の一方の端部が接続される。導体パターン224は、
図4(A)に示すように、上端E1と平行な部分224Aと、平行な部分224Aから幾分傾斜する部分224Bと、傾斜する部分224Bから上端E1に向けてほぼ垂直方向に延在する延在する部分224Cと、下端E2と平行な部分224Dとを含む。さらに基板220には、傾斜する部分224Bに近接して水平方向に延在する電源パターン230が形成される。電源パターン230は、例えば、導電パターン224と同時にパターン形成される。電源パターン230は、外部リード210と温度検出素子200との間を電気的に接続する導電経路として機能する。
【0021】
基板220の上端E1の近傍には、温度検出素子200が取付けられる。温度検出素子200は、例えば、温度によって抵抗が変化するサーミスタであり、サーミスタの一方の端子は、
図4(C)に示すように、第2の絶縁層226内に形成されたビアコンタクト232Aを介して電源パターン230に電気的に接続され、他方の端子は、第2の絶縁層226内に形成されたビアコンタクト232Bを介して導体パターン224に電気的に接続される。また、電源パターン230は、第2の絶縁層226内に形成されたコンタクトホールC1(図中省略)を介して外部リード210に接続され、同様に、延在する部分224は、コンタクトホールC2を介して外部リードに電気的に接続される。
【0022】
なお、上記例では、電源パターン230を導体パターン224と同時に形成する例を示したが、これに限らず、電源パターン230は、第2の絶縁層226上に形成してもよい。さらに上記例では、温度検出素子としてのサーミスタを第2の絶縁層226上に形成する例を示したが、これに限らず、サーミスタを第1の絶縁層222上に形成してもよい。この場合に、サーミスタ、電源パターン230を、導体パターン224と同時にパターニングしてもよい。
【0023】
図4(D)に示すように基板220を円筒状に成形することによりボビン130が構成される。基板220またはボビン130の内周には、
図2、3に示すセンターポール110が配置され、導体パターン224が可動電極、センターポール110が固定電極として機能し、両電極間に静電容量が形成される。この静電容量は、ボビン130の移動に応じて変化する。また、ボビン130の外周には、ボイスコイル140(ここには図示されない)が巻回されるが、温度検出素子200は、ボビン130の上端E1近傍に配置されるため、センターポール110や磁場発生部材120と干渉しない。
【0024】
次に、本実施例の音響装置の具体的な回路構成について説明する。
図5(A)は、本実施例のスピーカーの等価回路である。同図に示すように、温度検出素子200には直流電源が供給される。直流電源は、
図3に示す外部リード210から、
図4に示すコンタクトC1および電源パターン230を介して温度検出素子200に供給される。また、温度検出素子200は、
図4(C)に示すビアコンタクト232Bを介して導体パターン224に直列に接続され、導体パターン224とセンターポール110との間に静電容量Csが形成される。また、導体パターン240の延在する部分224のコンタクトC2が
図5(A)のノードNを形成し、ノードNから静電容量の検出信号が取り出される。
【0025】
図5(B)は、温度検出部および位置/速度検出部の好ましい回路の構成例である。駆動部30は、スピーカー信号発生部20からアナログ音声信号を受け取り、受け取った音声信号のリミッタ制御を行うリミッタ回路32と、リミッタ回路32から出力される音声信号の電力の増幅または減衰を行うアンプ34とを含む。アンプ34から出力された音声信号は、ボイスコイル140へ供給され、ボビン130および振動板150を振動させる。
【0026】
温度検出部50は、オペアンプOP1を含み、温度検出素子200のノードNに表れる検出信号Tを入力し、検出された温度信号を制御部70の温度判定部74へ提供する。あるいは、温度検出部50は、コンパレータを含み、ノードNに表れる検出信号Tと閾値となる基準電圧とを比較し、基準電圧よりも大きいとき、Hレベルの温度信号、基準電圧以下であるとき、Lレベルの温度信号を温度判定部74へ提供するようにしてもよい。
【0027】
速度検出部60は、オペアンプOP2とバイポーラトランジスタQとを含み、オペアンプOP2は、ノードNに表れる検出信号Tと基準電圧とを比較し、トランジスタQは、ベースに印加された比較結果に応じてコレクタ電流を流す。トランジスタQのコレクタは、制御部70の速度判定部72に結合され、速度判定部72に速度信号が提供される。
【0028】
制御部70は、上記したように速度判定部72および温度判定部74を含み、これらの判定部の判定結果に基づきリミッタ回路32を制御する。速度判定部72および温度判定部74の判定のアルゴリズムは特に限定されないが、例えば、速度判定部72は、ボビン130または振動板150の速度が一定以上であると判定したとき、リミッタ回路32に対して音声信号のレベルを一定以下に抑制するリミッタ制御信号S1を出力する。また、温度判定部74は、ボイスコイル140の温度が一定上であると判定したとき、リミッタ回路32に対して音声信号のレベルを一定以下に抑制するリミッタ制御信号S2を出力する。
【0029】
本実施例によれば、ボビンを構成するフレキシブルプリント基板に、静電容量を形成するための導体パターンと温度検出素子とを設けることで、スピーカーの振動板の速度検出とボイスコイルの温度検出を同時に行うことが可能になる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施例に係るボビンについて説明する。
図6(A)は、第2の実施例のボビンを構成するフレキシブル基板の平面図である。第2の実施例では、第1の実施例と異なり、温度検出素子200は、導体パターン224に電気的に接続されないが、基板等の熱導電性を利用してボイスコイル140と熱的に結合されるように配置される。
図6(A)に示すように、基板220Aは、第1の実施例のときと同様に、第1の絶縁層、第1の絶縁層上に形成された導電体層、導電体層上に形成された第2の絶縁層を含む。第2の実施例では、導電体層は、静電容量の一方の可動電極を構成する導体パターン224と、一対の電源パターン250、252にパターニングされる。導体パターン224は、基板220Aの上端E1近傍において略矩形状の窪んだ領域224Gを有する。窪んだ領域224G内に、導体パターン224と近接して一対の電源パターン250、252が形成される。温度検出素子200は、第1の実施例のときと同様に、第2の絶縁層上に形成され、温度検出素子の各電極は、第2の絶縁層に形成されたビアコンタクトを介して電源パターン250、252にそれぞれ電気的に接続される。
【0031】
図6(B)は、導体パターン224、電源パターン250、252に接続される外部リードの例を示している。外部リード270、272、274は、第2の絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して、電源パターン250、252、導体パターン224にそれぞれ電気的に接続される。温度検出素子200は、電源パターン250、252を介して導体パターン224に熱的に結合され、導体パターン224は、基板を介してボイスコイル140に熱的に結合され、その結果、温度検出素子200は、ボイスコイル140の温度を効果的に検出することができる。
【0032】
上記実施例では、電源パターン250、252が導体パターン224と同様に第1の絶縁層上に形成される例を示したが、これに限らず、電源パターン250、252を、温度検出素子200と同様に第2の絶縁層上に形成するようにしてもよい。あるいは、温度検出素子200を、電源パターン250、252と同様に、第1の絶縁層上に形成し、導体パターン224を形成するときに同時に形成されるようにしてもよい。
【0033】
次に、第2の実施例に係る音響装置の回路構成例について説明する。
図7(A)は、第2の実施例のスピーカーの等価回路である。第2の実施例では、温度検出素子200の一方の電極(例えば、外部リード270)が抵抗R1を介して直流電源に接続され、他方の電極(例えば、外部リード272)が接地される。また、導体パターン224は、外部リード274、抵抗R2を介して交流電源に接続される。ボビンまたは振動板の位置を検出する場合には、導体パターン224に交流信号を印加することが望ましく、静電容量が一定の周波数で充放電される。
【0034】
図7(B)に示すように、温度検出素子(サーミスタ)200と抵抗R1との分圧ノードN1からの検出信号Tが制御部70の温度判定部74へ提供される。第2の実施例では、温度検出部50は、温度検出素子200と抵抗R1とを含む回路から構成される。一方、位置/速度検出部60は、外部リード274から取り出された検出信号T2を入力するオペアンプOP1と、オペアンプOP1から出力される位置信号を微分し速度信号を出力する微分回路62とを含む。微分回路62から出力される速度信号は、制御部270の速度判定部72へ提供される。
【0035】
このように本実施例では、温度検出素子200を導体パターン224に近接させて配置させることで、スピーカーの軽量化、小型化を図りつつ、温度と速度の2つのセンシングを可能としている。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。