(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の突起部を、前記係止部に係止した状態で、前記透過性反射板における長さ方向の一方の端部が、前記透過性反射板の帯状部に重なる位置に、前記突起部と前記係止部を、それぞれ、前記透過性反射板と前記見返しリング又は前記太陽電池保持部材とに設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池付き電子時計。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1(a)は本発明にかかる太陽電池付き電子時計の実施形態を示す平面図で、(b)はそのV−V線断面図である。
【0022】
20は太陽電池付き電子時計であり、1は風防ガラス、2は光入射側を時計中心に向けたリング状太陽電池、3は透光性の見返しリング、4は時刻を表示する指針、5は文字板、6は指針4を駆動するムーブメント、7は時計ケース、8は透過性反射板、9は太陽電池保持部材である。
【0023】
図2は本実施形態の見返しリング3、透過性反射板8、リング状太陽電池2の付近を拡大して示した太陽電池付き電子時計20の断面図である。太陽電池保持部材9は、ムーブメント6を保持する中枠の一部であり、これに、文字板5の外縁部に沿って見返しリング3が配置され、見返しリング3の外側に、見返しリング3の外周面に沿って透過性反射板8がリング状に配置されている。さらに、透過性反射板8の外側に、透過性反射板8の外周面に沿ってリング状太陽電池2が配置されている。太陽電池保持部材9は、中枠とは別体で、リング状太陽電池2だけを保持する部材でも良い。
【0024】
図1及び
図2に示した構成により、太陽電池付き電子時計20は、風防ガラス1及び見返しリング3を通して入射した光をリング状太陽電池2が受光し、リング状太陽電池2が発電した電力でムーブメント6を駆動して、時計としての動作をすることができる。
【0025】
見返しリング3の材質は、加工性と透光性とが要求されるため、加工性に優れ、透明な
樹脂として、例えば、アクリル樹脂、またはポリカーボネイト樹脂のいずれかであることが望ましい。見返しリング3は、これらの樹脂によって、射出成形にてリング状で透明に形成している。但し、見返しリング3の材質は、加工性よりもデザインや装飾性等を優先し、ガラス等の樹脂以外の透明な材質も適用が可能である。
【0026】
また、見返しリング3の内側面を風防ガラス1側に傾けた斜面で構成し、風防ガラス1を介して入射する光をより採光しやすくしている。但し、リング状太陽電池2が、ムーブメント6を駆動できる程度に発電できれば、見返しリング3の内側面は、他の形状でも構わない。
【0027】
また、太陽電池付き電子時計20は、
図1(a)に示したように、平面図の外形形状が略円形形状に限らず、角形形状や樽形形状のものを用いた場合に、これに応じて、見返しリング3も、角形、樽形形状のものが適用可能である。
【0028】
図3は、本実施形態に係る太陽電池付き電子時計に用いられる透過性反射板8の図であり、(a)は平面図、(b)は端部を拡大して示した平面図である。
【0029】
透過性反射板8は、
図3(a)に示すように可撓性を有する細長い帯状の形状であり、見返しリング3とリング状太陽電池2の間に見返しリング3を囲むように湾曲させて配置している。
【0030】
透過性反射板8は、光の透過と反射の両方の光学特性を有し、反射光により外観が鏡面のように見える。透過性反射板8として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の薄層を多層に積層することにより、薄層同士の境界で干渉反射を生じさせるフィルムで構成され、光の透過率は80%で、厚みは150μm〜100μmのものを用いることができる。
図3(a)に示すような帯状の形状の透過性反射板8を得るために、シート状の大きな透過性反射板から所要の幅、長さに切断加工や抜き加工をしている。
【0031】
透過性反射板8は、帯状部8aと、帯状部8aから文字板5とは反対側に突出する複数の突起部10とを有し、複数の突起部10は帯状部8aの長さ方向の両端部近傍に設けている。尚、透過性反射板8は、見返しリング3を囲むように配置する際に、突起部10を見返しリング3側又は、その反対側に90度に折り曲げる。また、突起部10をあらかじめ折り曲げ加工により見返しリング3側又は、その反対側に90度折り曲げた状態に形成しておいても良い。
【0032】
図3(b)に示すように、突起部10は略T字形状に形成され、略T字形状を構成する縦線の部分10aと横線の部分10bとを有している。
【0033】
そして、透過性反射板8が見返しリング3の外周面とリング状太陽電池2との間に配置された状態では、後述するように、透過性反射板8の90度折り曲げられた突起部10が、見返しリング3又は太陽電池保持部材9に係止される。
【0034】
図4は、本実施形態にかかる太陽電池付き電子時計に用いられるリング状太陽電池2を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は要部を拡大した平面図である。
【0035】
ここで使用するリング状太陽電池2は、帯状の基板に太陽電池を形成し、それを短冊状にして、丸めてリング状に形成している。
図4(b)に示すように、リング状太陽電池2は、厚さの薄い帯状の基板141上に発電領域142が形成されていて、このリング状太陽電池2が
図4(a)に示したように環状に丸められた状態で見返しリング3の外周面を取り囲み、かつ発電領域142が見返しリング3側を臨むように配置されている。
【0036】
なお、リング太陽電池2の、帯状の一方の端部近傍には、ムーブメント6と電気的に接続するための端子143が接続されている。また、このリング状太陽電池2は、
図4(a)に示す丸められた状態で、一方の端部の非発電領域144が他方の端部近傍の発電領域142に重なる。そのため、リング状太陽電池2の周方向Rの全周に亘って途切れなく発電領域142が臨んでいるのではなく、両方の端部が重なる部分で、他方の端部の発電領域142が途切れている。
【0037】
図5は本実施形態に係る太陽電池付き電子時計におけるリング状太陽電池2への光の入射経路を示した図である。
【0038】
リング状太陽電池2に光が入射する経路は、
図5に図示したA〜Cの3つである。Aの経路は、風防ガラス1を通過した光が直接見返しリング3へ入射し透過性反射板8を通過してリング状太陽電池2に届く。Bの経路は、風防ガラス1を通過して文字板5の表面で反射した光が見返しリング3に入射し透過性反射板8を通過してリング状太陽電池2に届く。Cの経路は、風防ガラス1を通過して文字板5の表面と風防ガラス1との間で反射を繰り返した光が見返しリング3に入射し透過性反射板8を通過してリング状太陽電池2に届く。
【0039】
A〜Cの経路によって光をリング状太陽電池2に導くことができ、文字板5の表面で反射するBやCの経路もリング状太陽電池2に導かれるため、発電効率を高めることができる。文字板5の色を明るい色にすると、B及びCの経路における文字板5の表面での反射光量が多くなり、リング状太陽電池2による発電効率をさらに高めることができる。
【0040】
また、透過性反射板8は、光を反射する光学特性を有するため、鏡面となってリング状太陽電池2の視認を妨げる。さらに、この鏡面に、経路B及びCのような文字板5の表面で反射して文字板5の色を反映した光が入射することによって、透過性反射板8に文字板5の色が映り込むので、見返しリング3が文字板5と同じ色に視認され、見栄えが良好になる。
【0041】
従って、文字板5として、リング状太陽電池2とは異なる色のものを用いることによって、見返しリング3を文字板5の色に着色したのと同様な装飾効果を得ることができる。
【0042】
特に、リング状太陽電池2よりも明るい色の文字板5を用いると、見返しリング3を明るい色に装飾できるとともに、リング状太陽電池2の発電効率も向上することができる。このように、本実施形態の構成にすることで、リング状太陽電池2の発電効率と見返しリング3の見栄えの両方を良好にすることができる。
【0043】
図6は
図2に示した実施形態に係る太陽電池付き電子時計における見返しリングの上面斜視図である。
【0044】
見返しリング3は、風防ガラス1側の上端部に上面平坦部3aを有し、さらに、上面平坦部3aには、透過性反射板8の突起部10を係止するための係止部として3つの凸部11を設けている。この凸部11は、後述するように、透過性反射板8の突起部10を係止して透過性反射板8を固定するための手段であり、突起部10を係止することができれば、円柱以外の形状のものを適用することができる。
【0045】
図7は、透過性反射板8を見返しリング3の外周面に配置する方法について説明するための図であり、(a)は、見返しリング3の外周面に透過性反射板8を配置する前の状態を示し、(b)〜(d)は、透過性反射板8を見返しリング3に巻き付ける作業を始めて
から終えるまでの状態を示した図である。
【0046】
透過性反射板8を見返しリング3の外周に配置するにあたっては、透過性反射板8を、見返しリング3の外周面に沿ったリング状に湾曲させながら組み込む必要がある。そして、真っ直ぐに延びた透過性反射板8を、このような形状に湾曲させる場合には、透過性反射板8自体の剛性により、透過性反射板8に元の真っ直ぐに延びた状態に戻ろうとして広がる力が強く働くような状態となる。従って、透過性反射板8の表面をピンセット等の冶具を用いて掴んで作業を行うと透過性反射板8の表面に傷や折り目がついてしまう。さらに、透過性反射板8を手で直接持って組み込み作業を行った場合には、透過性反射板8の表面に汚れ等が付着して、見返しリング3を介して視認されてしまう。
【0047】
このように、透過性反射板8における帯状部8aを冶具で掴んだり、手で持って作業するのは容易ではない場合もある。そこで、本実施例に於いては、
図3に示すように、透過性反射板8に突起部10を設け、以下に説明するように、突起部10を持って透過性反射板8の組み込み作業ができるようにするとともに、見返しリング3に透過性反射板8を係止するための凸部11を設け、突起部10を見返しリング3への係止部も兼ねるようにした。
【0048】
図7(a)に示すように、見返しリング3の上面平坦部3aに設けた3つの凸部11は、透過性反射板8の長手方向の両端部に設けた突起部10が係止できる程度の間隔で互いに離間している。具体的には、各凸部11の間隔は突起部10における略T字形状の縦線の部分10aを挿入することができ、突起部10における略T字形状の横線の部分10bよりも狭い幅に設定している。
【0049】
透過性反射板8を見返しリング3の外周面を囲むように配置する場合、
図7(b)に示すように、最初に、透過性反射板8に設けた略T字形状の突起部10の一方を、見返しリング3側に90度折り曲げて、見返しリング3の上面平坦部3aに設けた2つの凸部11間へ係合させて係止する。なお、このときに突起部10を係合させる凸部11は、
図7(b)における上部と中央部に設けた2つの凸部11である。
【0050】
次に、
図7(c)に示すように、透過性反射板8のもう一方の突起部10を掴みながら、見返しリング3の外周面を囲むように透過性反射板8を見返しリング3の外周面に巻きつけていく、この際、一方の突起部10が係止されているため、巻きつけやすく作業がやりやすい利点がある。
【0051】
そして、
図7(d)に示すように、もう一方の突起部10を、見返しリング3側に90度折り曲げて見返しリング3の上面平坦部3aに設けた凸部11間へ係合させて係止することで、透過性反射板8を固定できる。なお、このときに突起部10を係合させる凸部11は
図7(d)における中央部と下部に設けた2つの凸部である。
【0052】
このように、見返しリング3の外周面に対向して配置される帯状部8aから突出するように透過性反射板8に設けた突起部10を掴んで透過性反射板8の組み込み作業を行うため、透過性反射板8における見返しリング3の外周面に対向して配置される部分が汚れないし、突起部10に傷や折り目がついても完成状態の太陽電池付き電子時計20では視認されることがない。従って、本実施形態に示した構成によって、透過性反射板8における視認される部分を傷つけたり汚したりすることなく、組み立て作業をしやすくすることができた。
【0053】
また、透過性反射板8の両端部は、透過性反射板8を見返しリング3の外周に配置した際、極わずかに重なるような長さに設定するのがよい。
【0054】
具体的には、見返しリング3の凸部11に突起部10が係止した状態において、
図7(d)に示す2つの突出部10の離間距離をLとし、
図3(a)に示す透過性反射板8の一方の端部側に設けた突出部10から他方の端部が突出する突出長さをLa、透過性反射板8の他方の端部側に設けた突出部10から他方の端部が突出する突出長さをLbとしたときに、これらの長さの関係をLa+Lb>Lとなるように設定している。
【0055】
これにより、透過性反射板8を見返しリング3の外周に配置すると、必ず、透過性反射板8の両端部が重なることとなる。この状態では、透過性反射板8の一方の端部は、透過性反射板8における帯状部8aの内側の面と重なり、透過性反射板8の他方の端部は、透過性反射板8における帯状部8aの外側の面と重なっている。
【0056】
仮に、透過性反射板8の両端部が互いに対向する場合、この対向した部分に生じる微妙な隙間や、2つの端部が同じ位置にあって強調されることにより、透過性反射板8の両端部が境界線となって見返しリング3を介して視認され、目立ってしまうため外観上好ましくはない。
【0057】
これに対し、透過性反射板8の両端部が重なると、一方の端部は帯状部8aの背面側に隠れ、他方の端部だけが視認される位置にあり、両端部に微妙な隙間が生じたり、端部が強調されることがなく、透過性反射板8の端部が目立ち難くなる。
【0058】
透過性反射板8の両端部を重ねる位置は、6時側における3時位置〜9時位置になるように組み込むことが好ましい。この範囲は、腕時計を腕につけた際に、通常、時刻を視認する姿勢では、ベゼル等によって死角となり、透過性反射板8の両端部を重ねた部分の視認が妨げられる。
【0059】
特に、透過性反射板8の両端部を重ねる位置が6時位置になるように組み込むことにより、通常、時刻を視認する姿勢では、最も視認されにくくなる。
【0060】
従って、見返しリング3の凸部11は、3時位置〜9時位置に設けるのが好ましく、6時位置に設けるのが最も好ましい。
【0061】
また、見返しリング3を介して視認可能な位置に配置される透過性反射板8の一方の端部または両端部は、文字板5上に設けた植字等の搭載物の位置に合わせても視認されにくくすることができる。
【0062】
これは、文字板5の搭載物が、鏡として作用する光透過性反射板8に見返しリング3を介して写り、これが、透過性反射板8の端部又は両端部と重なって視認されることにより、透過性反射板8の端部又は両端部が見立たなくなるからである。
【0063】
このように、本実施形態によれば、見返しリング8の外周に光透過性反射板8を配置した簡単な構造で、見返しリング3に容易に装飾効果を付与することができる。しかも、シート状の大きな透過性反射板から所要の幅、長さに切断加工や抜き加工をした透過性反射板8などの、透過率や色味にばらつきの少ない透過性反射板を用いることができ、見返しリング3の外観のばらつきを少なくすることができる。
【0064】
図8は、本発明における太陽電池付き電子時計の第1の変形例を示す図であり、(a)は透過性反射板8の平面図、(b)は見返しリング3の凸部11付近を示した図、(c)は透過性反射板8を配置した状態で見返しリング3の凸部11付近を示した図である。
【0065】
第1の変形例は、見返しリング3の外周に配置する透過性反射板8を、前途の実施形態とは別の形態で固定している。
【0066】
この変形例が
図1〜
図7に示した実施形態と異なるのは、透過性反射板8の突起部10及び見返しリング3の凸部11の構成だけであり、これ以外の構成は同一であるため説明を省略する。
【0067】
本変形例では、
図8(b)に示すように、見返しリング3の上面平坦部3aには、係止部である凸部11を1箇所に1つだけ設けている。凸部11の形状は丸形であるが矩形でも良い。
図8(a)に示すように、透過性反射板8の両端部近傍に形成された突起部10は、外形が矩形形状であり、その中心に丸形形状の孔が開いている。
【0068】
透過性反射板8を見返しリング3の外周に配置する場合、最初に透過性反射板8に設けた一方の突起部10の孔を、見返しリング3の上面平坦部3aに設けた凸部11へ係合させて突起部10を係止する。
【0069】
そして、透過性反射板8のもう一方の突起部10を持ちながら、見返しリング3の外周面を囲むように透過性反射板8を巻きつけていく、この際、一方の突起部10が係止されているため、透過性反射板8の巻きつけ作業がやりやすい利点がある。そして、もう一方の突起部10は、最初に見返しリング3へ係止した丸型凸部11に、一方の突起部10の孔を係合させて係止する。この状態を
図8(c)に示す。
【0070】
これにより、1つの凸部11だけで透過性反射板8の両方の突起部10を係止して、透過性反射板8を固定することができ、見返しリング3の形状が簡素化できる。しかも、この構成によって、透過性反射板8の両端部は、互いに対向することがなく、必ず重ね合わせられることとなり、透過性反射板8の端部が視認されにくくなり、外観が良好となる。
【0071】
図9は、本発明における太陽電池付き電子時計の第2の変形例を示す図であり、(a)は、透過性反射板8の平面図、(b)は、透過性反射板8の側面図、(c)は、太陽電池保持部材9の段差部9a付近を示した図、(d)は、透過性反射板8を配置した状態で太陽電池保持部材9の段差部9a付近を示した図、(e)は、透過性反射板8を配置した状態で透過性反射板8付近を拡大して示した太陽電池付き電子時計の断面図である。
【0072】
第2の変形例は、見返しリング3の外周に配置する透過性反射板8を、前途の実施形態及び第1の変形例とは別の形態で固定している。
【0073】
この変形例が
図1〜
図7に示した実施形態と異なるのは、透過性反射板8を太陽電池保持部材9に固定する構成だけであり、それ以外の構成は同一であるため説明を省略する。
【0074】
図9(c)と
図9(e)に示すように、本変形例では、太陽電池保持部材9の上面の一部に段差部9aを設け、さらに、太陽電池保持部材9の外周部には、凹部9bを設けている。段差部9aは太陽電池保持部材9の上面に対し、透過性反射板8の厚さ以上低い凹状に形成され、この段差部9aに凹部9bが繋がっている。
【0075】
帯状に形成された透過性反射板8の両端部近傍に設けた突起部10は、
図9(a)と
図9(b)に示すように、太陽電池保持部材9の段差部9aと凹部9bとに引っ掛けることができる鍵状に形成されている。
【0076】
具体的には、この突起部10は、2箇所で折り曲げられ、1箇所は、透過性反射板8の帯状部8aに近い位置で太陽電池保持部材9側に90度折り曲げられ、もう1箇所は、透
過性反射板8の帯状部8aから離れた位置で文字板5側に90度折り曲げられている。これにより、突起部10は、段差部9aに配置される水平部10jと凹部9bに配置される垂直部10kとを有する略L字形状に形成される。そして、透過性反射板8を太陽電池保持部材9の内周部に沿うように配置した際、突起部10は、太陽電池保持部材9の段差部9aと凹部9bとに引っ掛けられる。
【0077】
透過性反射板8を太陽電池保持部材9の内周部に沿うように配置する場合、最初に透過性反射板8に設けた突起部10の一方を、太陽電池保持部材9の段差部9aと凹部9bとに引っ掛けて固定する。
そして、透過性反射板8のもう一方の突起部10を持ちながら、太陽電池保持部材9の内周部に沿って巻きつけていく、この際、一方の突起部10が係止されているため、太陽電池保持部材9の内周部に沿って配置するときに透過性反射板8が回転方向に動かず、作業がやりやすい利点がある。
【0078】
最後にもう一方の突起部10を、最初に係止した段差部9a及び凹部9cと同じ場所に係合させて係止する。透過性反射板8を太陽電池保持部材9の内周部に配置した状態を
図9(d)に示す。
【0079】
このように、2つの突起部10を、同じ段差部9a及び凹部9bに係止することで、太陽電池保持部材9の形状が簡素化できるほか、透過性反射板8の両端面が重ね合わさることで、前途のように、透過性反射板8の端部に生じる境界線を目立たなくすることができる。
【0080】
尚、本変形例において、透過性反射板8の突起部10の垂直部10kと、太陽電池保持部材9の凹部9bが無くても、突起部10の水平部10jと段差部9aだけで透過性反射板8の突起部10を係止できれば、垂直部10kと凹部9bを設けない構成にしても良い。本変形例は、段差部9a、又は、段差部9aと凹部9bとが、突起部10を係止する係止部である。
【0081】
尚、透過性反射板8の突起部10を太陽電池保持部材9側に折り曲げた方が、見返しリング3側に折り曲げた場合と比較して、透過性反射板8を太陽電池付き電子時計20内に組込む作業が容易になる利点がある。これは、透過性反射板8の突起部10を太陽電池保持部材9側に折り曲げると、突起部10が外側を向くため、突起部10を持った手が、透過性反射板8が配置される円形の配置部よりも、大きな円を描くようにして透過性反射板8を組込む作業ができるからである。これに対し、透過性反射板8の突起部10を見返しリング3側に折り曲げた場合には、突起部10を持った手が、透過性反射板8が配置される円形の配置部よりも、小さな円を描くようにして透過性反射板8を組込むこととなる。
【0082】
図10は本発明における太陽電池付き電子時計の第3の変形例を示す図であり、(a)は、透過性反射板12の平面図、(b)は透過性反射板12の上面図、(c)は、透過性反射板12を見返しリング3の外周に配置した状態の図である。
【0083】
この変形例が
図1〜
図7に示した実施形態と異なるのは、透過性反射板12の構成だけであり、これ以外の構成は同一であるため説明を省略する。
【0084】
この変形例の透過性反射板12は、光を反射する光学特性を付与するために、PET樹脂等の薄層を多層に積層するのではなく、
図10に示すように、片面にプリズム13が形成されている。
【0085】
透過性反射板12は、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエ
チレンナフタレート(PEN)などから構成されている。透過性反射板12のプリズム13はそれぞれが三角柱の形状である。三角柱の底面が透過性反射板12の面方向と平行であり、三角柱の稜線が、透過性反射板12の幅方向Hに一致し、隣合う三角柱どうしが離間せずに、透過性反射板12の長手方向に並べて配置されている。プリズム13のピッチは50μm〜150μmであり、プリズム13の2つの側面が成す山及び谷の部分の角度がいずれも90度である。透過性反射板12のプリズム13が形成されている面が、リング状太陽電池2に対向する以外は、透過性反射板12の太陽電池付き電子時計20内への配置は、前述の実施形態の透過性反射板8と同様である。
【0086】
見返しリング3を透過して透過性反射板12に入射した光は、透過性反射板12に形成されたプリズム13よって、リング状太陽電池2に進む光と、見返しリング3側に反射する光に分離される。なお、プリズム13の側面が成す角度を90度よりも小さくすると、見返しリング3側に反射する光の一部が、プリズム13で拡散されて白濁したように視認される。このように、プリズム13を形成した透過性反射板12を用いても、時計が駆動できる程度に発電可能な透過率が得られ、プリズム13で反射される光により、文字板5の色が透過性反射板12に映り、リング状太陽電池2が視認されることがなく、見栄えを良好にすることができる。
【0087】
尚、プリズム13は、三角柱の稜線が、透過性反射板12の長さ方向に向くように形成したり、プリズム13を見返しリング3側に向けて太陽電池付き電子時計20内に組込むことが可能である。
【0088】
但し、三角柱の稜線が、透過性反射板12の長さ方向に向くようにプリズム13を形成した場合には、プリズム13に変形や亀裂を生じさせる応力が作用しやすくなる。これは、プリズム13の底面から突出する山の頂部が、透過性反射板12の長さ方向に沿って連続して形成されるとともに、山の高さに応じた寸法だけ、プリズム13の底面よりも大きな円を描いて外周側に突出して配置されることで、透過性反射板12をリング状に曲げた状態では、プリズム13の山の頂部が、透過性反射板12の長さ方向に引っ張られるためである。
【0089】
これに対し、
図10の向きにプリズム13を形成すると、プリズム13どうしの谷の部分の厚さが薄く変形しやすいため、プリズム13を変形したり亀裂を生じさせる応力が生じにくくなる。
【0090】
図11は、本発明における太陽電池付き電子時計の第4の変形例を示す図であり、(a)は、透過性反射板8の平面図、(b)は、透過性反射板8の両端部を係合した状態で拡大した平面図、(c)は、透過性反射板8の両端部が係合しない状態で拡大した平面図である。
【0091】
この変形例が
図1〜
図7に示した実施形態と異なるのは、透過性反射板8の突起部10を見返しリング3や太陽電池保持部材9に係止せず、あらかじめリング状に形成した透過性反射板8を、太陽電池付き電子時計20内へ配置すること、及び、突起部10の形状であり、それ以外の構成は同一であるため説明を省略する。
【0092】
本変形例の透過性反射板8に形成した突起部10c、10dは、突起部10cを突起部10dに係止することで、透過性反射板8をリング状に固定できるように構成している。
【0093】
図11(c)に示すように、突起部10cは、中間部10c1と狭幅部10c2と広幅部10c3とを有している。中間部10c1は、透過性反射板8の帯状部8aの一方の端部に、帯状部8aの幅方向に突出するように形成され、狭幅部10c2は、中間部10c
1に、帯状部8aの他方の端部近傍から一方の端部に向かう帯状部8aの長さ方向に、中間部10c1から突出するように形成され、広幅部10c3は、狭幅部10c2の幅よりも広い幅で、狭幅部10c2の端部に形成されている。
【0094】
突出部10dは、透過性反射板8の帯状部8aの他方の端部に、中間部10c1と同じ方向に突出するように形成され、突出方向に切り込み部10d1が形成されている。切り込み部10d1の切り込み長さは、狭幅部10c2の幅よりも長く、且つ、広幅部10c3の幅よりも短い長さに設定されている。
【0095】
突起部10cと10dは、見返しリング3側か、又は、太陽電池保持部材9側に90度折り曲げられる。
【0096】
図11(b)は、突起部10cの広幅部10c3が、切り込み部10d1に挿入されて通り抜け、狭幅部10c2が切り込み部10d1内に位置する状態である。この状態では、広幅部10c3が切り込み部10d1の両端に引っ掛かり、突起部10dに突起部10cが係合することで、透過性反射板8は、
図11(a)に示すようにリング状に保たれている。
図11(a)に示したリング状の透過性反射板8は、太陽電池付き電子時計20内に容易に配置することができる。
図11(a)は、突起部10c及び10dを、見返しリング3側に90度折り曲げた例であるが、これらを、太陽電池保持部材9側に90度折り曲げても良い。
【0097】
図12は、本発明における太陽電池付き電子時計の第5の変形例を示す図であり、(a)は、透過性反射板8の両端部が係合しない状態で拡大した斜視図、(b)は、透過性反射板8の両端部を係合した状態で拡大した斜視図である。
【0098】
この変形例が
図11に示した第4の変形例と異なるのは、透過性反射板8の突起部10の形状であり、それ以外の構成は同一であるため説明を省略する。
【0099】
本変形例の透過性反射板8に形成した突起部10c、10dは、透過性反射板8の帯状部8aのそれぞれの端部の近傍に、帯状部8aの幅方向で互いに同じ方向に突出するようにL字形状に形成されている。
【0100】
突起部10c、10dは、それぞれ、第1突起部10c11、10d11と、第2突起部10c12、10d12とを有している。
【0101】
第1突起部10c11、10d11は、
図12(a)に示すように、帯状部8aの長辺部から、帯状部8aの幅方向を向く細長形状に形成されている。第2突起部10c12、10d12は、
図12(a)に示すように、第1突起部10c11、10d11の端部から帯状部8aの中心側を向く細長形状に形成されている。
【0102】
図12(b)に示すように、突起部10c、10dを互いに引っ掛けて係合することができ、この状態にすることで、透過性反射板8がリング状に保たれ、透過性反射板8を、太陽電池付き電子時計20内に容易に配置することができる。
【0103】
図12(a)、(b)は、突起部10c及び10dを見返しリング3側に90度折り曲げた例であるが、これらを、太陽電池保持部材9側に90度折り曲げても良い。
尚、透過性反射板8がリング状に保持できれば、変形例4や変形例5以外の手段で、透過性反射板8の両端部を係合させても良い。透過性反射板8は、リング状に形成してから、太陽電池付き電子時計20内へ組み込むことで、透過性反射板8の組込み作業がやりやすくなる。
【0104】
尚、本実施形態及び各変形例では、透過性反射板8に突起部10を設けているが、突起部10を設けなくても透過性反射板8を太陽電池付き電子時計20に組込むことが可能である。例えば、透過性反射板8を太陽電池付き電子時計20に組込んだ状態で、透過性反射板8における風防ガラス1側が、その上に位置する時計ケース7に遮られて視認されなければ、この視認されない部分を持って、透過性反射板8を太陽電池付き電子時計20内に組込むことができる。また、透過性反射板8の両端部を傷つけないように、柔軟な素材で把持部を形成した専用の治具を用いて、透過性反射板8を太陽電池付き電子時計20内に組込むことも可能である。
【0105】
さらに、透過性反射板8に突起部10を設けない場合における、透過性反射板8の別の組込み方として、リング状太陽電池2を環状に丸める前の真っ直ぐに延びた状態で、リング状太陽電池2の発電領域142が形成された面に、透過性反射板8を接着等で貼り付け、透過性反射板8を一体化したリング状太陽電池2を環状に丸めて、太陽電池保持部材9に組込むことも可能である。
【0106】
また、本実施形態及び各変形例では、透過性反射板8の突起部10を、帯状部8aの両端部近傍だけに設けているが、帯状部8aの中央部などの両端部近傍以外に追加しても良い。その場合は、追加した突起部10に係合する係止部を、見返しリング3又は太陽電池保持部材9に形成すると良い。
【0107】
また、本実施形態及び第1の変形例から第3の変形例では、透過性反射板8,12の帯状部8aの両端部近傍に設けた突起部10を、文字板5とは反対側に突出させているが、突起部10を、文字板5側に突出させても良い。この場合は、突起部10を係止する係止部を、見返しリング3の下面又は太陽電池保持部材9の下面に設け、突起部10を、見返しリング3又は太陽電池保持部材9側に折り曲げて、いずれかの係止部に係止すれば良い。
【0108】
同様に、第4の変形例及び第5の変形例において、透過性反射板8の突起部10c,10dを、文字板5とは反対側に突出するように帯状部8aに設け、これらの突起部10c,10dを互いに係合した状態で、見返しリング3の下面又は太陽電池保持部材9の下面側に折り曲げても良い。
【0109】
また、第1の変形例から第3の変形例の透過性反射板8,12は、突起部10を、各変形例で例示した向きと逆向きに折り曲げても良い。例えば、第1及び第3の変形例では、突起部10を太陽電池保持部材9側に折り曲げて、これを係止する係止部を太陽電池保持部材9に形成しても良いし、第2の変形例では、突起部10を見返しリング3側に折り曲げて、これを係止する係止部を見返しリング3に形成しても良い。
【0110】
また、本実施形態及び第1の変形例から第3の変形例において、突起部10を太陽電池保持部材9側に折り曲げるように構成した場合には、突起部10を係止する専用の係止部材を太陽電池付き電子時計20内に設けることも可能である。
【0111】
また、本実施形態及び各変形例では、透過性反射板8の両端部を重ねて太陽電池付き電子時計20内に組込む例を示したが、例えば、一方の端部が10時位置、他方の端部が2時位置にあり、10時位置〜2時位置の間は透過性反射板8の両端部を離間させる構成とし、離間した部分を太陽電池付き電子時計20のデザインとして利用することも可能である。
【0112】
また、本実施形態、第1の変形例、及び、第3の変形例では、見返しリング3に形成し
た凸部11が上面平坦面3aから突出しているが、例えば、見返しリング3に、上面平坦部3aに対して凹ませた段差部を形成し、段差部内に凸部11を形成して、凸部11の上端部が、上面平坦面3aから突出しないようにしても良い。