特許第6474331号(P6474331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474331
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】モータ制御方法及びモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/06 20060101AFI20190218BHJP
   H02P 6/10 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   H02P6/06
   H02P6/10
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-147711(P2015-147711)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-28935(P2017-28935A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】塩田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 友康
(72)【発明者】
【氏名】早田 聖基
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−259606(JP,A)
【文献】 特開2012−065495(JP,A)
【文献】 特開昭61−277394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/06
H02P 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向内側に向かって突設された複数の突極と該突極のそれぞれに巻装されたコイルとを備えたステータと、該ステータの内側に配置され径方向に沿って複数個のマグネットが配置されたロータと、前記マグネットの磁束変化を検知して前記ロータの回転位置を検出する複数個のホール素子と、を有し、磁束変化に伴って前記ホール素子から出力されるセンサ信号の検出結果に基づいて前記コイルに対して3相の電流を供給して前記ロータを回転させるブラシレスモータの制御方法であって、
該制御方法は、疑似正弦波電圧を前記コイルに供給して前記ロータを回転させる正弦波電圧駆動処理と、目標回転数を基準とした速度制御処理と、前記コイルに供給する印加電圧を前記ロータの回転位置に対して所定角度だけ進角させる進角処理と、を有し、
前記正弦波電圧駆動処理は、
前記ロータが所定の電気角を回転する間の経過時間として、前記各ホール素子からの出力が切り替わる前記センサ信号のエッジ切り替わり時間を取得し、
取得した前記経過時間を所定数にて除算し、前記ロータが、前記所定の電気角を前記所定数にて分割した角度だけ回転するのに要する分割角度回転時間を算出し、
現在取得した前記経過時間の次の経過時間における前記各分割角度回転時間に対応する前記ロータの回転位置をそれぞれ推定し、
該推定回転位置に基づいて、前記各分割角度回転時間ごとに前記コイルに供給する印加電圧を設定し、前記各分割角度回転時間経過時を駆動電圧切り替えタイミングとして、該駆動電圧切り替えタイミングごとに前記印加電圧を前記コイルに供給
該印加電圧は、次の前記経過時間が経過するまでの間、前記駆動電圧切り替えタイミングごとに切り替えられ、
前記速度制御処理は、
前記経過時間に基づいて前記ロータの実回転速度を算出し、該実回転速度と前記ロータの回転位置に応じて予め設定された目標回転速度とを比較し、前記センサ信号のエッジ切り替わりの際に前記ロータが前記目標回転速度となるように、前記正弦波電圧駆動処理が次の前記経過時間に基づく前記推定回転位置を用いた制御処理となる前に前記印加電圧を補正
前記進角処理は、
前記コイルの相電流の位相が前記ロータの回転に伴って生じる誘起電圧に対して進んだ状態となるように前記印加電圧を進角させることを特徴とするブラシレスモータ制御方法。
【請求項2】
請求項1記載のブラシレスモータ制御方法において、
前記速度制御処理は、前記経過時間の2倍以下の周期にて実施されることを特徴とするブラシレスモータ制御方法。
【請求項3】
請求項2記載のブラシレスモータ制御方法において、
前記速度制御処理は、前記分割角度回転時間以上の周期にて実施されることを特徴とするブラシレスモータ制御方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載のブラシレスモータ制御方法において、
前記速度制御処理は、前記センサ信号のエッジ切り替わり角度(電気角)をセンサエッジ角とすると、
(1/モータ回転数[rps])÷(360°×極対数/センサエッジ角×2)
以下の周期にて実施されることを特徴とするブラシレスモータ制御方法。
【請求項5】
径方向内側に向かって突設された複数の突極と該突極のそれぞれに巻装されたコイルとを備えたステータと、該ステータの内側に配置され径方向に沿って複数個のマグネットが配置されたロータと、前記マグネットの磁束変化を検知して前記ロータの回転位置を検出する複数個のホール素子と、を有し、磁束変化に伴って前記ホール素子から出力されるセンサ信号の検出結果に基づいて前記コイルに対して3相の電流を供給して前記ロータを回転させるブラシレスモータの駆動制御を行うブラシレスモータ制御装置であって、
前記ロータが所定の電気角を回転する間の経過時間として、前記各ホール素子からの出力が切り替わる前記センサ信号のエッジ切り替わり時間を取得するためのタイマと、
取得した前記経過時間を所定数にて除算し、前記ロータが、前記所定の電気角を前記所定数にて分割した角度だけ回転するのに要する分割角度回転時間を算出し、現在取得した前記経過時間の次の経過時間における前記各分割角度回転時間に対応する前記ロータの回転位置をそれぞれ推定するロータ位置推定処理部と、
前記経過時間に基づいて前記ロータの実回転速度を算出する速度推定処理部と、
前記実回転速度と前記ロータの回転位置に応じて予め設定された目標回転速度とを比較し、前記ロータが前記目標回転速度となるような前記コイルの印加電圧値を算出する速度指令部と、
疑似正弦波電圧を前記コイルに供給して前記ロータを回転させる正弦波電圧駆動処理と、目標回転数を基準とした速度制御処理と、前記コイルに供給する印加電圧を前記ロータの回転位置に対して所定角度だけ進角させる進角処理と、を行う駆動電圧設定部と、を有し、
該駆動電圧設定部は、
前記正弦波電圧駆動処理として、前記ロータの推定回転位置に基づいて、前記各分割角度回転時間ごとに前記コイルに供給する印加電圧を設定し、前記各分割角度回転時間経過時を駆動電圧切り替えタイミングとして、該駆動電圧切り替えタイミングごとの印加電圧を算出し、次の前記経過時間が経過するまでの間、前記印加電圧を前記駆動電圧切り替えタイミングごとに切り替え、
前記速度制御処理として、前記センサ信号のエッジ切り替わりの際に前記ロータが前記目標回転速度となるように、前記正弦波電圧駆動処理が次の前記経過時間に基づく前記推定回転位置を用いた制御処理となる前に前記速度指令部にて算出された前記印加電圧を補正し、
前記進角処理として、前記コイルの相電流の位相が前記ロータの回転に伴って生じる誘起電圧に対して進んだ状態となるように、前記印加電圧を前記ロータの回転位置に対して所定角度だけ進角させることを特徴とするブラシレスモータ制御装置。
【請求項6】
請求項5記載のブラシレスモータ制御装置において、
前記速度制御処理は、前記経過時間の2倍以下の周期にて実施されることを特徴とするブラシレスモータ制御装置。
【請求項7】
請求項6記載のブラシレスモータ制御装置において、
前記速度制御処理は、前記分割角度回転時間以上の周期にて実施されることを特徴とするブラシレスモータ制御装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のブラシレスモータ制御装置において、
前記速度制御処理は、前記センサ信号のエッジ切り替わり角度(電気角)をセンサエッジ角とすると、
(1/モータ回転数[rps])÷(360°×極対数/センサエッジ角×2)
以下の周期にて実施されることを特徴とするブラシレスモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータの制御技術に関し、特に、モータ駆動時における作動音低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータの駆動形態としては、ステータコイル電圧を正弦波状に変化させる正弦波駆動と、矩形波状に変化させる矩形波駆動が知られている。このうち、正弦波駆動は、矩形波駆動に比してブラシレスモータを低騒音・低振動にて駆動できるため、自動車の車載モータなどのように静音化が求められるモータでは、近年、矩形波駆動に代えて正弦波駆動も多く採用されている。
【0003】
例えば特許文献1のようなブラシレスモータでは、ブリッジ回路のON/OFFモードを適宜切り替えることにより疑似正弦波の電流波形を形成し、低コストにてモータの低騒音化を図っている。また、ホールセンサを用いたブラシレスモータにて、現在の回転速度情報に基づき、次のセンサパルス切り替わりタイミングまでの回転速度を予測し、この予測に沿って、細分した角度ごとに電圧を印加して疑似正弦波の電圧を供給する制御形態なども存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−121583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、正弦波駆動のブラシレスモータにおいては、その磁気音を低減させるには、歪の少ない正弦波形の相電流をモータに印加する必要がある。この点、引用文献1のモータでは、擬似的な正弦波駆動が行われているが、モードにより電流経路のインダクタンスや抵抗値が変化する。このため、モードの切り替わり時に電流値が変化し、これが電流波形の歪みとなって現れ、モータの振動や音につながるおそれがある。また、回転速度を予測する制御形態においても、回転速度に急激な変化があった場合、予測した回転速度と実回転速度との間に差が生じ、センサパルス切り替わり時においてその差が大きいと、モータに印加される相電流に歪が発生してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、歪の少ない正弦波駆動を行うには、レゾルバや電流センサ等を用いたベクトル制御を行うのが最も効果的であるが、ベクトル制御を行うには高性能なマイコンやレゾルバ等の高価な素子が必要であり、モータのコストが高くなってしまうという問題がある。
【0007】
また、自動車のパワーウインドやサンルーフなどの利便系製品では、回転数が高く、定格電流が低いモータが使用される場合が多く、このようなモータでは、印加される相電流が低く、制御周波数も高くなるため、歪の少ない正弦波形で駆動するのが困難となる。すなわち、振幅や周期が小さい電流波形の場合、それを理想的な正弦波とするのは幾何学的に見ても難しく、波形調整による静音化には限界があった。
【0008】
本発明の目的は、高価な素子を使用することなく、モータに印加される相電流波形の歪率を下げ、低騒音なブラシレスモータを低コストにて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のブラシレスモータ制御方法は、径方向内側に向かって突設された複数の突極と該突極のそれぞれに巻装されたコイルとを備えたステータと、該ステータの内側に配置され径方向に沿って複数個のマグネットが配置されたロータと、前記マグネットの磁束変化を検知して前記ロータの回転位置を検出する複数個のホール素子と、を有し、磁束変化に伴って前記ホール素子から出力されるセンサ信号の検出結果に基づいて前記コイルに対して3相の電流を供給して前記ロータを回転させるブラシレスモータの制御方法であって、該制御方法は、疑似正弦波電圧を前記コイルに供給して前記ロータを回転させる正弦波電圧駆動処理と、目標回転数を基準とした速度制御処理と、前記コイルに供給する印加電圧を前記ロータの回転位置に対して所定角度だけ進角させる進角処理と、を有し、前記正弦波電圧駆動処理は、前記ロータが所定の電気角を回転する間の経過時間として、前記各ホール素子からの出力が切り替わる前記センサ信号のエッジ切り替わり時間を取得し、取得した前記経過時間を所定数にて除算し、前記ロータが、前記所定の電気角を前記所定数にて分割した角度だけ回転するのに要する分割角度回転時間を算出し、現在取得した前記経過時間の次の経過時間における前記各分割角度回転時間に対応する前記ロータの回転位置をそれぞれ推定し、該推定回転位置に基づいて、前記各分割角度回転時間ごとに前記コイルに供給する印加電圧を設定し、前記各分割角度回転時間経過時を駆動電圧切り替えタイミングとして、該駆動電圧切り替えタイミングごとに前記印加電圧を前記コイルに供給該印加電圧は、次の前記経過時間が経過するまでの間、前記駆動電圧切り替えタイミングごとに切り替えられ、前記速度制御処理は、前記経過時間に基づいて前記ロータの実回転速度を算出し、該実回転速度と前記ロータの回転位置に応じて予め設定された目標回転速度とを比較し、前記センサ信号のエッジ切り替わりの際に前記ロータが前記目標回転速度となるように、前記正弦波電圧駆動処理が次の前記経過時間に基づく前記推定回転位置を用いた制御処理となる前に前記印加電圧を補正前記進角処理は、前記コイルの相電流の位相が前記ロータの回転に伴って生じる誘起電圧に対して進んだ状態となるように前記印加電圧を進角させることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、所定電気角だけ回転する経過時間にて次の経過時間の間のロータ位置を予測して電圧駆動を行う一方、速度制御処理を実行して目標回転速度と実回転速度との間に差を更正する。これにより、当該ブラシレスモータは、センサ信号の切り替わり時もスムーズな形で制御が継続され、相電流の歪率が低く抑えられる。また、進角処理により、相電流のピーク値が上がりモータの起電力が大きくなるため、供給電圧の変化に対する電流の急激な変化が和らげられ、相電流波形の歪が抑えられる。
【0012】
また、前記速度制御処理を、前記経過時間の2倍以下の周期にて実施しても良く、前記分割角度回転時間以上の周期にて実施しても良い。さらに、前記速度制御処理を、前記センサ信号のエッジ切り替わり角度(電気角)をセンサエッジ角としたとき、(1/モータ回転数[rps])÷(360°×極対数/センサエッジ角×2)以下の周期にて実施するようにしても良い。
【0013】
本発明のブラシレスモータ制御装置は、径方向内側に向かって突設された複数の突極と該突極のそれぞれに巻装されたコイルとを備えたステータと、該ステータの内側に配置され径方向に沿って複数個のマグネットが配置されたロータと、前記マグネットの磁束変化を検知して前記ロータの回転位置を検出する複数個のホール素子と、を有し、磁束変化に伴って前記ホール素子から出力されるセンサ信号の検出結果に基づいて前記コイルに対して3相の電流を供給して前記ロータを回転させるブラシレスモータの駆動制御を行うブラシレスモータ制御装置であって、前記ロータが所定の電気角を回転する間の経過時間として、前記各ホール素子からの出力が切り替わる前記センサ信号のエッジ切り替わり時間を取得するためのタイマと、取得した前記経過時間を所定数にて除算し、前記ロータが、前記所定の電気角を前記所定数にて分割した角度だけ回転するのに要する分割角度回転時間を算出し、現在取得した前記経過時間の次の経過時間における前記各分割角度回転時間に対応する前記ロータの回転位置をそれぞれ推定するロータ位置推定処理部と、前記経過時間に基づいて前記ロータの実回転速度を算出する速度推定処理部と、前記実回転速度と前記ロータの回転位置に応じて予め設定された目標回転速度とを比較し、前記ロータが前記目標回転速度となるような前記コイルの印加電圧値を算出する速度指令部と、疑似正弦波電圧を前記コイルに供給して前記ロータを回転させる正弦波電圧駆動処理と、目標回転数を基準とした速度制御処理と、前記コイルに供給する印加電圧を前記ロータの回転位置に対して所定角度だけ進角させる進角処理と、を行う駆動電圧設定部と、を有し、該駆動電圧設定部は、前記正弦波電圧駆動処理として、前記ロータの推定回転位置に基づいて、前記各分割角度回転時間ごとに前記コイルに供給する印加電圧を設定し、前記各分割角度回転時間経過時を駆動電圧切り替えタイミングとして、該駆動電圧切り替えタイミングごとの印加電圧を算出し、次の前記経過時間が経過するまでの間、前記印加電圧を前記駆動電圧切り替えタイミングごとに切り替え、前記速度制御処理として、前記センサ信号のエッジ切り替わりの際に前記ロータが前記目標回転速度となるように、前記正弦波電圧駆動処理が次の前記経過時間に基づく前記推定回転位置を用いた制御処理となる前に前記速度指令部にて算出された前記印加電圧を補正し、前記進角処理として、前記コイルの相電流の位相が前記ロータの回転に伴って生じる誘起電圧に対して進んだ状態となるように、前記印加電圧を前記ロータの回転位置に対して所定角度だけ進角させることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、所定電気角だけ回転する経過時間にて次の経過時間の間のロータ位置を予測して電圧駆動を行う一方、速度指令部と駆動電圧設定部とにより速度制御処理を実行して目標回転速度と実回転速度との間に差を更正する。これにより、当該ブラシレスモータは、センサ信号の切り替わり時もスムーズな形で制御が継続され、相電流の歪率が低く抑えられる。また、駆動電圧設定部によって進角処理を行うことにより、相電流のピーク値が上がりモータの起電力が大きくなるため、供給電圧の変化に対する電流の急激な変化が和らげられ、相電流波形の歪が抑えられる。
【0016】
また、前記速度制御処理を、前記経過時間の2倍以下の周期にて実施しても良く、前記分割角度回転時間以上の周期にて実施しても良い。さらに、前記速度制御処理を、前記センサ信号のエッジ切り替わり角度(電気角)をセンサエッジ角としたとき、(1/モータ回転数[rps])÷(360°×極対数/センサエッジ角×2)以下の周期にて実施するようにしても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明のブラシレスモータ制御方法によれば、所定電気角だけ回転する経過時間にて次の経過時間の間のロータ位置を予測して電圧駆動を行う一方、速度制御処理を実行して目標回転速度と実回転速度との間に差を更正する。また、進角処理により、相電流のピーク値を上げモータの起電力を大きくし、供給電圧の変化に対する電流の急激な変化を緩和する。これにより、相電流波形の歪が抑えられ、モータ作動音の低減を図ることが可能となる。
【0018】
本発明のブラシレスモータ制御装置によれば、所定電気角だけ回転する経過時間にて次の経過時間の間のロータ位置を予測して電圧駆動を行う一方、速度指令部と駆動電圧設定部とにより速度制御処理を実行して目標回転速度と実回転速度との間に差を更正すると共に、駆動電圧設定部によって進角処理を行うことにより、相電流のピーク値を上げモータの起電力を大きくし、供給電圧の変化に対する電流の急激な変化を緩和する。これにより、相電流波形の歪が抑えられ、モータ作動音の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態であるブラシレスモータの構成を示す説明図である。
図2図1のブラシレスモータにおける制御系の構成を示すブロック図である。
図3】(a)は当該ブラシレスモータに供給される電圧(疑似正弦波電圧)の波形を示す説明図、(b)はロータ回転位置(回転角度)と位置センサからの出力信号との関係を示す説明図である。
図4】速度推定処理部における処理手順を示すフローチャートである。
図5】モータ制御装置における制御動作を示すフローチャートである。
図6】進角量と相電流の歪率との関係を示した説明図である。
図7】進角とモータ磁気音の関係を示す説明図である。
図8】速度指令部におけるモータ速度制御処理の手順を示すフローチャートである。
図9】速度制御なし・速度制御ありの場合の電流波形を示した説明図である。
図10】速度制御なし・速度制御ありの場合の電流の歪率を示した説明図である
図11】相電流の歪率とモータ磁気音の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態であるブラシレスモータの構成を示す説明図である。図1のブラシレスモータ1(以下、モータ1と略記する)は、車載の利便系製品に使用されるインナーロータ型のモータであり、ステータ2と、ステータ2内に回転自在に配置されたロータ3とを備えている。ステータ2は、薄板の電磁鋼板を多数積層したステータコア4を有しており、ステータコア4は、外形が六角形のヨーク部5と、ヨーク部5から径方向内側(中心方向)に向かって放射状に突設された突極6とから構成されている。モータ1では、突極6は周方向に沿って6個設けられている。
【0021】
隣接する突極6の間はスロット7となっている。突極6の外周にはコイル8が巻装されており、コイル8はスロット7内に収容されている。コイル8は、集中巻きにて巻装されており、3相のコイル8U,8V,8WがΔ結線にて接続されている(図2参照)。モータ1では、ステータ2外形が六角形となっているため、円形のステータに比して、同じ幅Xに対しより広い巻線スペース(スロット断面積)を確保できる。このため、幅Xの内接円形状のステータを用いたモータよりも、高出力化、あるいは同出力ならば小型化を図ることが可能となる。
【0022】
ステータ2の内側にはロータ3が挿入されている。ロータ3は、シャフト11と、シャフト11に固定されたロータコア12とから構成されている。ロータコア12もまた、薄板の電磁鋼板を多数積層して形成されている。ロータコア12の外周には、希土類磁石を用いたマグネット13が取り付けられており、モータ1は、SPMモータ(Surface Permanent Magnet Motor)となっている。マグネット13はリング状に形成されており、周方向に沿ってN・S極が交互に4極配置されるよう着磁されている。つまり、モータ1は4極6スロット構成となっている。マグネット13は、軸方向に沿ってスキュー着磁が施されており、コギングトルクやトルクリップルの低減が図られている。
【0023】
図2は、モータ1の制御系の構成を示すブロック図である。図2に示すように、モータ1は、モータ制御装置21にて駆動され、そのマイコンを用いた制御部22には、ロータ位置推定処理部23と、速度推定処理部24、速度指令部25、駆動電圧設定部26、タイマ27が設けられている。モータ制御装置21は、インバータ回路28を介してモータ1側に電力を供給し、モータ1は、速度指令部25の指示に基づきPWMduty制御される。モータ1側には、ホール素子(ホールIC)を用いた位置センサ29が設けられている。位置センサ29は、U相,V相,W相の3個設けられており、モータ動作時におけるマグネット13の磁束変化を検出し、マグネット13の磁極の切り替わりを検出する。検出結果は、ハイ(H)又はロー(L)の2値の信号にてモータ制御装置21側に送出される。
【0024】
図3(b)は、ロータ3の回転位置(回転角度)と位置センサ29からの出力信号との関係を示す説明図である。図3(b)に示すように、ロータ3が回転すると、電気角60°ごとに各相の位置センサ29からの出力信号の組み合わせが変化する。例えば、電気角0°〜60°の範囲(「磁極位置=0」と称する)では、U相,V相,W相の各位置センサ29の出力信号は「H,L,H」の組み合わせとなる。同様に、電気角60°〜120°(磁極位置=60)では「U,V,W:H,L,L」、電気角120°〜180°(磁極位置=120)では「U,V,W:H,H,L」、電気角180°〜240°(磁極位置=180)では「U,V,W:L,H,L」、電気角240°〜300°(磁極位置=240)では「U,V,W:L,H,H」、電気角300°〜360°(磁極位置=300)では「U,V,W:L,L,H」となる。
【0025】
位置センサ29の信号を受け、モータ制御装置21のロータ位置推定処理部23は、各相位置センサ29のセンサ信号の組み合わせにより、ロータ3の回転位置を検出する。前述のように、U,V,Wのセンサ信号(H又はL)の組み合わせとロータ3の回転位置との間には相関関係がある。ロータ位置推定処理部23は、例えば、センサ信号の組み合わせが「U,V,W:H,H,L」の場合は磁極位置=120、と言うように、信号の組み合わせに基づいて現在のロータ回転位置を推定する。
【0026】
また、速度推定処理部24は、信号のH,Lの切り替わり時間からロータ3の回転速度(回転数)を算出する。図3(b)に示したように、モータ1では、センサ信号のエッジには電気角60°ごとに何れかの相にて変化が生じる。そこで、速度推定処理部24では、センサ信号のエッジ切り替わり時間(センサエッジ間隔時間=電気角60°回転時間)を位置センサ29の信号から取得し、ロータ3の回転速度を算出する。図4は、速度推定処理部24における処理手順を示すフローチャートである。図4に示すように、速度推定処理部24では、センサ信号のエッジを検知しており(ステップS21)、エッジ検出による割り込みごとに、センサエッジ間隔時間が算出される(ステップS22)。なお、データのバラツキを抑えるため、過去の検出値を加えた移動平均値を求めても良い。
【0027】
そして、センサエッジ間隔時間を算出した後、ステップS23に進み、モータ回転数を算出する。この場合、センサエッジ間隔時間は、前述のようにロータ3の電気角60°回転時間である。本実施形態のモータ1は、4極(極対数2)であることから、電気角60°の回転時間は機械角30°の回転時間に相当する。そこで、速度推定処理部24は、その関係に基づき、センサエッジ間隔時間からロータ3の回転数(モータ回転数:rpm,rps)を算出する。
【0028】
速度指令部25は、速度推定処理部24にて算出したロータ3の現在速度と、当該モータ1に対して予め設定されている目標速度とを比較し、モータ1を目標速度にて駆動するためのduty値を決定する。速度指令部25にて算出された駆動duty値は、駆動電圧設定部26に送られる。駆動電圧設定部26では、ロータ位置推定処理部23にて検出されたロータ回転位置に応じた駆動duty値と、速度指令部25にて算出された駆動duty値とに基づいて、モータ1に印加するPWMduty値を算出し、それを座標変換処理(dq三相変換)して出力する。モータ1ではVdは0に設定されており、このときdq三相変換されたVqが実際にモータ1に印加されるduty値となる。そして、駆動電圧設定部26にてdq三相変換されたPWMduty値に基づき、インバータ回路28を介して正弦波状の電圧がモータ1に供給される。これにより、モータ1は、目標速度に基づいて正弦波電圧にてPWMduty制御され、所定回転数にて駆動される。
【0029】
このようなモータ1は、モータ制御装置21により、オープンループ式(電流フィードバックなし)にて、正弦波電圧によって駆動される。この場合、正弦波電圧は、センサエッジ間隔時間(電気角60°回転経過時間)から推定したモータ回転数に基づき、その後のロータ磁極位置を、センサエッジ間隔時間を等分割(例えば10等分)した時間間隔にて推定して設定される。モータ回転数は、無負荷回転数からDuty値を下げる形で調整され、ロータ3の推定回転位置に応じてPWMduty値が設定される。図3(a)に示すように、各分割時間におけるduty値(供給電圧)により、供給電圧は段階的な疑似正弦波電圧となり、電気角60°回転時間を算出処理切り替え周期としてモータ1に印加される。この場合、各分割時間のduty値は、ロータ(推定)回転位置に対応した所定値である。従って、前述のように、センサエッジ間隔時間に基づいて予測した回転速度と実回転速度との間に差が生じると、センサパルス切り替わり時に相電流に歪が発生してしまうおそれがある。
【0030】
そこで、本発明による制御処理では、少なくとも「センサエッジ間隔時間×2」よりも小さい処理周期にて、モータ回転数(duty値)を、目標回転数を基準として速度制御(PI制御)する。その際、速度制御の処理周期は、細かければ細かいほど制御精度は向上するが、その分、制御処理の負担が大きくなるため、最低でもセンサパルス切り替わり時に実回転速度との差がなくなるよう、センサエッジ間隔時間×2(エッジ間隔測定時間+測定結果による推定駆動時間=次のエッジ間隔測定時間)以下とする。一方、速度制御周期は、疑似正弦波駆動を行うためのセンサエッジ間隔時間の分割数(前述では10)を超えて細分化しても、速度制御処理の結果が駆動duty値に効果的に反映されない。このため、処理負担とのバランスからも、速度制御周期は、「(センサエッジ間隔時間×2)/エッジ間隔時間分割数」以上であることが好ましい。
【0031】
図5は、モータ制御装置21における制御動作を示すフローチャートである。図5に示すように、モータ1では、正弦波電圧による駆動(ステップS1〜S7)と共に、目標回転数を基準とした速度制御(ステップS10)が実行される。ここではまず、正弦波電圧による駆動処理について説明する。正弦波電圧駆動では、まず、各相位置センサ29の信号レベル(H・L)が検出される(ステップS1)。次に、センサ信号レベルの組み合わせから、ロータ位置推定処理部23により、ロータ3の回転位置(磁極位置)を確定する(ステップS2)。前述のように、ロータ位置推定処理部23は、U相,V相,W相の各位置センサ29の出力信号「H or L」の組み合わせから、例えば「U,V,W:H,L,L」なら「磁極位置=60」のように、ロータ3の回転位置を特定する。
【0032】
ロータ回転位置を確定した後、ステップS3に進み、センサエッジ間隔時間を取得する。当該実施の形態のモータ1は3相駆動のモータであるため、センサエッジ間隔時間=電気角60°回転時間となり、これが正弦波電圧の算出処理切り替え周期となる。なお、センサエッジ間隔時間は、データのバラツキを抑えるため、前回の検出値を加えた移動平均値を求めても良い。センサエッジ間隔時間を取得した後、ステップS4に進み、電気角60°を所定数にて等分割した電気角θ(ここでは、10分割:θ=6°)の回転に要する時間Tθ(分割角度回転時間)を算出する。
【0033】
分割角度回転時間Tθを算出したのち、ステップS5にてタイマ27を始動させ、分割角度回転時間Tθを計時する。タイマ始動後、分割角度回転時間Tθ後のロータ推定位置に基づいて、時間Tθ経過後のduty値を設定する。すなわち、分割角度回転時間経過ごとに割り込み処理を行い(ステップS6)、時間Tθを駆動電圧切り替えタイミングとし、その都度、当該ロータ回転位置に応じたPWMduty値(分割角度回転時間Tθに対するPWM指定信号がHである割合)をdq三相変換して算出し(ステップS7)、出力する(ステップS8)。
【0034】
ここで、モータ1では、相電流のピーク値を上げるべく進角処理が実施される。すなわち、相電流の位相がモータ誘起電圧に対して進んだ形となるように、ロータ回転位置に対して所定角度(固定値、例えば5°)だけ進角したPWMduty値が設定され、dq三相変換される。前述のように、回転数が高く、定格電流が低いモータでは、印加される相電流が低く、制御周波数も高くなるため、歪の少ない正弦波形で駆動するのが困難となる。その一方、回転数が十分なモータでは、進角を付与すると、トルクに寄与しない無効電流が上昇してしまうため、通常は進角の必要はない。特に、SPMモータでは、進角0の状態が効率最大の電流位相となるため、進角制御を行わないのが一般的である。
【0035】
これに対し、本発明による制御処理では、高回転仕様のモータに敢えて進角を付与し、進角によって増加する回転数を、PWMDuty値を下げることにより抑制する。この場合、PWMDuty値を下げ供給電圧値を下げると、同出力(仕事量)のモータでは、電流値が増加する(W=I・VにてWが一定の場合、Vを下げればIが大きくなる)。これにより、モータに印加される相電流が大きくなり、同じ回転数で相電流が大きくなると、モータの自己誘導による(逆)起電力が大きくなる。
【0036】
すなわち、起電力V=−L・(ΔI/Δt)において、ΔIが大きくなると、Δtは制御周期から一定であり、インダクタンスLもモータ固有の一定値であることから、起電力Vも大きくなる。起電力Vが大きくなると、供給電圧の変化に対する電流の急激な変化が和らげられ、言わば、電圧変化に対する反応が鈍くなった状態となり、相電流波形の歪も抑えられる。図6は、進角量と相電流の歪率との関係を示した説明図である。図6に示すように、進角を付与した方が電流の歪率が下がっており、モータ1では、ステップS6にて誘起電圧よりも電流位相の方が常に進んでいるようにPWMduty値が設定される。また、図7は、進角とモータ磁気音の関係を示す説明図であり、これより、進角値が大きくなるにつれてモータ磁気音のピークが低下しているのが分かる。なお、モータ1は正逆転可能となっており、進角は正逆両方向に付与される。
【0037】
一方、速度指令部25では、モータ1が所定速度を維持するよう速度制御処理(ステップS10)が実施される。図8は、速度指令部25におけるモータ回転数の制御処理手順(PI制御処理)を示すフローチャートである。図8に示すように、速度指令部25では、まず、速度推定処理部24にて算出した現在のモータ回転数を用いて、モータ1の目標回転数と現在のモータ回転数との差(回転数偏差)を求める(ステップS11)。次に、回転数偏差とPゲインからPI制御のP項(ステップS12)を、また、I項の前回算出値と回転数偏差及びIゲインからPI制御のI項(ステップS13)をそれぞれ求める。そして、求めたP項とI項から、モータ1を所定速度に制御駆動するための駆動duty値を算出する(ステップS14)。速度制御処理(ステップS10)が実施されると、そこで算出されたduty値により、ステップS6にて設定されたduty値が補正され、ステップS7にてdq三相変換される。
【0038】
当該モータ1では、この速度制御処理は、「正弦波電圧の算出処理切り替え周期×2(=センサエッジ間隔時間×2)」をαとしたとき、それ以下の短い周期にて実行される(速度制御周期β≦α)。この場合、αは、
(1/モータ回転数[rps])÷(360°×極対数/センサエッジ角×2)=α
にて表され、モータの仕様ごとに固有の値となる。なお、前述のように、速度制御の処理周期は細かければ細かいほど好ましいが、制御処理負担を考慮して、ここでは、分割角度回転時間Tθ以上としている。
【0039】
前式にて、(1/モータ回転数[rps])は、モータ1回転に要する時間(秒)である。また、(360°×極対数)は、モータ1回転あたりの電気角である。従って、(1/モータ回転数[rps])÷(360°×極対数)は、電気角1°当たりのモータ回転時間となる。ここでは、これに「センサエッジ角×2」を乗する形でαを設定する。本実施例ではセンサエッジ角は電気角60°であることから、速度制御処理の周期βは、電気角120°当たりのモータ回転時間以下に設定される。例えば、3500rpm・4極・センサエッジ角60°(電気角)のモータでは、3500rpm=58.33rps、極対数=2であることから、α=2.9msとなり、速度制御周期βがこの値よりも小さくなるように(例えば2ms)モータ1の仕様を設定する。
【0040】
このように、当該モータ1では、センサエッジ間(電気角60°)の経過時間にて次のセンサエッジ間(電気角60°)のロータ位置を予測して正弦波電圧駆動を行う一方、少なくとも予測駆動が次のデータに切り替えられる前、すなわち、データ収集の60°とそれに基づく制御の60°が終了する前に、速度制御を実行し、目標回転速度と実回転速度との間に差を更正する。これにより、モータ1は、センサパルス切り替わり時もスムーズな形で制御が継続され、図3(a)に示したような疑似正弦波電圧によって駆動される。
【0041】
速度制御処理が実施されると、ステップS6にて設定されたduty値が補正される。このため、外乱により回転速度に急激な変化があった場合でも、予測した回転速度が補正され、duty値が実回転速度に合った値に修正される。従って、センサパルス切り替わり時において、予測値と実際値との間に差が生じにくくなり、モータに印加される相電流に発生する歪を抑えることができ、モータ作動音の低減を図ることが可能となる。図9は、速度制御なし、ありの場合の電流波形を示した説明図であり、発明者らの実験では、図9に示すように、速度制御を行った場合の方が明らかに歪のない正弦波相電流が得られた。
【0042】
また、図10は、図9の速度制御なし、ありの場合の電流の歪率を示した説明図である。なお、歪率は、測定波形中に含まれる基本波(正弦波)以外の高調波成分の含有率を示す。図10に示すように、モータ1では、速度制御ありの方が相電流の歪率が低くなっているのが分かる。これは、速度制御を加えたことにより負荷変動に対し、より正確に一定の回転数を維持できるため、磁極の位置認識誤差を小さくすることができ、センサパルス切り替わり時における出力電圧の切り替わりを小さくできたためと考えられる。
【0043】
また、歪率が下がることにより、モータ磁気音も低下する。図11は、相電流の歪率とモータ磁気音の関係を示す説明図であり、これより、両者は相関関係が強いことが分かる。従って、速度制御の導入により、相電流の歪率が低くなると、モータ磁気音もまた低減される。以上のことから、本発明のように、「電圧正弦波+速度制御+進角」の組合せにより、モータに印加される相電流波形の歪率を下げることができ、高性能なマイコンや、レゾルバ、電流センサ等の高価な素子を使用することなく、低コストで低騒音ブラシレスモータを提供することが可能となる。
【0044】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、3相のSPMモータに本発明の制御処理を適用した例を示したが、5相など、3相以外のモータにも本発明は適用可能であり、その際は、センサエッジ間隔時間が前記の例とは異なる数値となる。また、IPMモータにも本発明を適用することは可能である。さらに、進角値も固定値の付加ではなく、回転数等に応じたマップを用いて設定することも可能である。加えて、本発明は、4極6スロット(4P6S)構成のブラシレスモータのみならず、2P3S×n(nは整数)のブラシレスモータにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によるブラシレスモータ制御方法・制御装置は、パワーウインドやサンルーフなどの利便系製品のみならず、掃除機や洗濯機ななどの家電製品や、空調機器などの産業機器など、モータを駆動源とする電気機器に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ブラシレスモータ
2 ステータ
3 ロータ
4 ステータコア
5 ヨーク部
6 突極
7 スロット
8 コイル
8U,8V,8W コイル
11 シャフト
12 ロータコア
13 マグネット
21 モータ制御装置
22 制御部
23 ロータ位置推定処理部
24 速度推定処理部
25 速度指令部
26 駆動電圧設定部
27 タイマ
28 インバータ回路
29 位置センサ
Tθ 分割角度回転時間
β 速度制御周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11