(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)を用いる物品の管理システムは、在庫管理などの分野で広く用いられている。
すなわち、管理対象物品に、これを特定するIDが記載されたRFタグを取り付けて、通過地点で読み込んだID情報から、その後における入荷管理、在庫管理及び出荷管理を行うことができる。多くの場合、搬送機に載置され順次移動している状態で、タグIDを識別している。
【0003】
しかし、電波方式のタグID識別システムでは、近くに保管中の物品に取り付けられたタグIDを読み取ることがある。また、たまたま近くを通過した物品のタグIDを読み取ることがある。さらに、物品が相互に近接して搬送されている場合には、搬送順序を間違えることがある。
【0004】
特許文献1には、搬送システムにおけるタグID読み取りシステムが記載されている。そして、所定の通信位置にある荷物のみと通信可能な第一アンテナと、複数の荷物に対して通信可能な第二アンテナを用いることによって正確な読み取りが可能となることが記載されている。また、搬送中の荷物の間隔を所定の間隔以上に保持することによって、第一アンテナが複数の荷物と通信しないようにしている。
【0005】
しかしながら、このようなタグID識別システムにおいては、出力するIDの正確さとともに、出力スピードが重要となっている。特に、タグIDで特定した物品を仕分け装置で処理するような場合には、正確さとスピードが要求されることになる。
特許文献2には、仕分け装置の一例が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一例であるタグID識別システム10が、仕分け装置20に用いられた具体例を模式的に示している。
仕分け装置20は、直線状の搬送路により物品50が搬入される受入部21と、複数の搬送路に分岐して複数の排出口23に物品50を振り分ける仕分け部22を備えている。
また、受入部21及び仕分け部22に操作指令を出す制御部25及び全体の管理を行う統括処理部26を備えている。
【0016】
搬入される物品50にはRFタグ51が取り付けられている。
タグID識別システム10は、物品50が受入部21を通過している間にそのタグIDを読み取り、データとして制御部25に送る。
制御部25は、そのタグIDを統括処理部26に送って、物品50の排出口23を問い合わせる。
統括処理部26では、そのタグIDを出荷予定データ等と照合して物品50の行き先を判断し、排出口23を特定して制御部25に指示する。
制御部25は、物品50が受入部21を通過した時点からタイミングを計って仕分け部22を操作し、仕分け部22は、指定された排出口23から物品50を排出する。
【0017】
タグID識別システム10の役割は、受入部21を通過する物品50に取り付けられたRFタグ51のタグIDを読み取って、データを制御部25に送ることである。そして、高速かつ正確に読み取ることが重要である。
【0018】
タグID識別システム10は、一定周期で探索電波を発信するとともに応答電波を受信してタグID及び電波強度を読み取るRFIDリーダ11と、電波強度の時間的変化から通過した物品50のタグIDを特定する解析処理部12を備えている。
また、物品50が受入部21を通過していることを検知する通過検知部15と、各タグIDについて電波強度の時間的変化を画面表示する表示部13を備えている。
【0019】
RFタグ51は、アンテナとICチップを備えて形成されている。アンテナによって、探索電波の受信と応答電波の発信を行うことができる。
ICチップは、一般に、受信した探索電波により電力を発生する電源回路、タグIDを書き込むための記憶回路、応答電波を発信するための無線処理回路、タグIDをデータとして取り扱う制御回路等を備えている。
【0020】
RFIDリーダ11が探索電波を発信すると、これを受信したRFタグ51は、直ちにタグIDを載せた応答電波を発信する。RFIDリーダ11は、この応答電波を受信してタグIDを読み取ることができる。
しかしながら、探索電波に対して、通過している物品50のRFタグ51以外からも、応答電波が発信されることになる。例えば、近くに保管中の物品50があったり、たまたま近くを通過した物品50があったりした場合である。
【0021】
タグID識別システム10では、これら複数の応答電波の中から受入部21を通過した物品50のタグIDを特定するために、解析処理部12において電波強度の時間的変化を解析する。
また、この解析処理を確実にするために、通過検知部15によって受入部21における物品50の通過を検知している。
【0022】
本発明の一例であるタグID識別システム10は、RFIDリーダ11が、一定周期で連続的に探索電波の発信と応答電波の受信を行うことを特徴としている。
探索電波を発信する周期は、通過する物品50の速度によって違ってくるが、例えば、速度が毎秒1m以上である場合には、その周期が、少なくとも0.2秒以下が好ましく、0.1秒以下であることがより好ましい。
【0023】
また、タグID識別システム10は、受信した応答電波からタグIDを読み取るとともに電波強度を読み取ることを特徴としている。
そして、全てのタグIDについて電波強度の時間的変化を解析することによって、通過した物品50のタグIDを特定している。
すなわち、受入部21を通過する物品50の電波強度は、RFIDリーダ11に接近しているときに次第に大きくなり、RFIDリーダ11から遠ざかるときに次第に小さくなるために、典型的なパターンを形成するのである。
【0024】
例えば、近くに保管されている物品50から発信された応答電波の電波強度は、時間的な変化が少ないので、除外することができる。
また、強度の低い応答電波や検知時間の短い応答電波は、除外することができる。
さらに、電波強度の最大値が、通過検知部15の検知区間内にない場合には、除外することができる。
【0025】
図2は、タグID識別システム10が受信した、複数の応答電波を例示している。
図2において、縦軸は電波強度を示し、横軸は時間の経過をシフト方向として示している。
記載されたグラフは、時間とともに全体が右方向に移動して、左端が最新情報を示している。これは、記録紙が右方向に移動し、左端でペンが記入している場合と同じである。そして、4つのID(ID01〜ID04)について、その時間的変化を表している。
【0026】
また、
図2には、受入部21において通過検知部15が物品50の通過を検知した区間を、検知区間Tとして記載している。
通過検知部15としては、投光器と受光器を備えて、通過物品50により光が遮られることを検知する非接触の光電センサや、ヒンジレバーによって、通過物品50に接触して検知するリミットスイッチ等を用いることができる。
【0027】
タグID識別システム10は、検知区間Tが現れる度に、その区間に受信された電波について、電波強度の時間的変化を解析して、最大値の有無を判定する。
ID01は、検知区間T内で、電波強度が時間とともに増加する状態で終わっているので、区間内に最大値はないと判定する。
ID02は、検知区間T内で、電波強度が時間とともに増加して最大値となり、その後減少しているので、最大値を備えていると判定する。
【0028】
ID03は、検知区間T内に最大値を備えるが、直前の検知区間Tで既に最大値を備えていると判定済みであり、この区間内に最大値はないと判定する。
ID04は、検知区間T内に最大値を備えるが、最大値の直前における増加量、直後における減少量が少ないので、最大値を備えているとは認められない。そして、以前の検知区間Tにおいて、既に判定済みである。
【0029】
ID04のように、受入部21を通過した物品50ではないとする判定に、電波強度の時間的変化における、最大値の直前の増加量、又は直後の減少量を用いている。同様に、最大値の直前の増加速度、又は直後の減少速度を用いることもできる。または、これらを併用することもできる。
このような判定によって、受入部21を通過した物品50かどうかを、正確に判定することができる。
【0030】
その他、最大値における電波強度が所定の値よりも低いときは、通過した物品50ではないと判定することができる。たまたま、近くを物品50が通過した場合等である。
また、電波を検知した時間が、検知区間Tよりも短い場合には、通過した物品50ではないと判定することができる。電波の反射などによる外乱等である。
なお、検知区間Tにおいて、最大値を備えるタグIDが全く存在しなかった場合には、タグの付け忘れと考えることができる。
【0031】
図3は、解析処理部12における処理の一例であって、検知区間TについてタグIDを判定するフローを示している。
検知区間Tは、通過した一つの物品50に対して一つの検知区間Tが存在するが、ここでは、最新の検知区間Tについて考える。
【0032】
RFIDリーダ11で読み込まれたタグID及び電波強度は、解析処理部12にデータとして一定期間蓄積されている。そして、検知区間Tに対応するタグID及び電波強度を選び出すことができる。
また、既に処理が終わったタグIDは、一定期間保存されている。
【0033】
ステップS01では、検知区間Tで受信したタグIDの数を調べて、数Nとする。この数Nに対してn=1からn=NまでのタグID(n)について解析を行う。
【0034】
ステップS02で、n=1とする。
ステップS03で、既に処理済みのタグIDかどうかを判定する。
YES:すでに処理済みであれば、ステップS08でタグなしとしてステップS09に進む。
NO:まだ処理されていないならば、ステップS04に進む。
【0035】
ステップS04では、最大値があるかどうかを判定する。
すなわち、検知区間Tにおいて電波強度が増加した後減少する点があるかどうかを判定する。
NO:最大値を備えていないならば、ステップS08でタグなしとしてステップS09に進む。
YES:最大値を備えていれば、ステップS05に進む。
【0036】
ステップS05では、最大値直後の減少量を調べ、規定値以上の減少量であるかどうかを判定する。
NO:減少量が規定値よりも少ない場合は、ステップS08でタグなしとしてステップS09に進む。
YES:規定値以上であれば、ステップS06に進む。
【0037】
ステップS06では、最大値直前の増加量を調べ、規定値以上の増加量であるかどうかを判定する。
NO:増加量が規定値よりも少ない場合は、ステップS08でタグなしとしてステップS09に進む。
YES:規定値以上であれば、ステップS07に進む。
【0038】
ステップS07では、このタグID(n)が、検知区間Tに、受入部21を通過した物品50に取り付けられたRFタグ51に記載されたタグIDであると判定する。
そして、これを制御部25に報告して、ステップS09に進む。
【0039】
ステップS07及びステップS08から、ステップS09に進むと、n=Nかどうかを判定する。
NO:nがNでなければ、次のタグIDに移るために、ステップS10でn=n+1としてステップS03に戻る。
YES:nがNであれば、この検知区間Tにおける解析を終了する。
【0040】
解析処理部12においてタグIDが確定すると、これを制御部25に送る。
制御部25は、タグIDを統括処理部26に送って、物品50の排出口23を問い合わせる。そして、物品50が指示された排出口23から排出されるように、仕分け部22を操作する。
【0041】
また、解析処理部12は、電波強度の時間的変化を表示部13に送って、グラフとして画面表示することができる。
図4は、表示画面の一例であって、受入部21を通過した物品50を特定するID表示31と、その電波強度のグラフ表示33を示している。時間の経過とともにグラフ全体が右方向に移動することになる。
通過検知部15による検知区間Tの区間表示35を併せて表示することにより、検知区間Tに電波強度の最大値が、ピークとなって表示される。
【0042】
画面の右側に識別したタグIDの履歴表示32を示している。
このような表示によって、作業員は、受入部21を通過する物品50の移動と、表示部13におけるグラフ表示33の移動を併せて目視することが可能であり、作業が正常に行われていることを確認することができる。
【0043】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は本発明に含まれる。
【0044】
例えば、本発明のタグID識別システムは、機械装置の制御に限らず様々な物品の管理に利用することができる。
例えば、空港における手荷物の管理に使用して、出発空港で検知された手荷物と、到着空港で検知された手荷物が一致していることを、機械的に確認することができる。