特許第6474389号(P6474389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474389超硬合金の新規製造方法及びそれにより得られる製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474389
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】超硬合金の新規製造方法及びそれにより得られる製品
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/05 20060101AFI20190218BHJP
   C22C 29/08 20060101ALI20190218BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20190218BHJP
   B23C 5/16 20060101ALI20190218BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C22C1/05 H
   C22C29/08
   B23B27/14 B
   B23C5/16
   B23B51/00 M
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-516163(P2016-516163)
(86)(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公表番号】特表2016-526101(P2016-526101A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】EP2014061151
(87)【国際公開番号】WO2014191505
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年3月28日
(31)【優先権主張番号】13170068.4
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア, ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ノルグレン, スサン
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−526102(JP,A)
【文献】 特開2004−142993(JP,A)
【文献】 特開2004−238660(JP,A)
【文献】 特開2012−162753(JP,A)
【文献】 特開昭54−084812(JP,A)
【文献】 特開昭54−087616(JP,A)
【文献】 特開2006−328529(JP,A)
【文献】 特開2005−068479(JP,A)
【文献】 特開2004−292865(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0273637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 29/00−29/18
B22F 1/00−8/00
C22C 1/04−1/05,33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金の製造方法であって、
a)ミリング液、結合金属、及び硬質成分を含むスラリーを形成する工程であって、前記硬質成分が六方晶系ドープWCを含む工程;
b)前記スラリーを粉砕し乾燥させる工程;
c)b)から得られた粉末混合物を加圧成形し焼結する工程;
を含み、六方晶系ドープWCが、工程b)の前に、前記スラリーに遷移金属窒化物又は遷移金属炭窒化物を加えることにより窒素に曝され、六方晶系ドープWCが焼結中に窒素ガスに曝される、方法。
【請求項2】
前記遷移金属窒化物又は遷移金属炭窒化物が、第4、第5及び第6族の元素、並びにこれらの混合物から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属又は遷移金属炭窒化物が、TiN、Ti(C、N)、V(C、N)、Zr(C、N)、TaN、NbN、Ta(C、N)及びこれらの混合物から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
焼結工程が減圧下で実行される、請求項1からのいずれか一項に記載の超硬合金の製造方法。
【請求項5】
ドープWCが、Ta、Ti、Nb、V、Cr及びこれらの混合物から選択される遷移金属でドープされる、請求項1からのいずれか一項に記載の超硬合金の製造方法。
【請求項6】
前記遷移金属がTa及び/又はTiである、請求項に記載の超硬合金の製造方法。
【請求項7】
結合金属が、Cr、Mo、Fe、Co及びNiからなる群より選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の超硬合金の製造方法。
【請求項8】
前記結合金属がCoである、請求項1からのいずれか一項に記載の超硬合金の製造方法。
【請求項9】
前記超硬合金が、65から90wt%までの範囲のWC及び六方晶系ドープWC、3から15wt%までの範囲のCo、1から5wt%までの範囲のTa、及び0.5から5wt%までの範囲のTiを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
切削工具を作製するための、請求項1からのいずれか一項に記載の超硬合金の製造方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超硬合金の新規製造方法及びそれにより得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
超硬合金は、例えば切削工具、摩耗部品、削岩機ビットなどのための焼結体を製造するために使用される。超硬合金産業は、高速条件において使用される、硬質で耐摩耗性を有する材料の生産にも関心がある。これは、例えば、TiN、Ti(C、N)、(Ti、Al)N及び/又はAlの層で超硬合金をコーティングすることにより達成される。
【0003】
米国特許第4277283号においては、グラジエントが形成されるように超硬合金が焼結されることにより、コバルトに富み且つガンマ相を有さない表面ゾーンが形成される。これは、通常、炭窒化物を原材料として取り込むことにより実行される。
【0004】
国際公開第2012/145773は、少なくとも一つの第4族及び/又は第5族及び/又は第7族の遷移金属(Tcを除く)でドープされた六方晶系のタングステンカーバイドから形成されるタングステン一炭化物の粉末に関連している。この特許文献は、(W、Me)Cから(W、Me)Cにより、新規のドープ六方晶系のタングステンカーバイドを生産するための二段階式の方法も開示している。
【0005】
Reichel, B et al (International Journal of Refractory Metals and Hard Materials 28 (2010) 638-645)には、個々のカーバイドを用いたドープ硬質金属の製造方法が開示されている。この方法によれば、MexCoyCz型(Me=W、V、Cr、Ta、Tiなどの金属)の二重又は三重合金亜炭化物が、Co結合相に埋設されたWC又はWC/立方晶炭化物相を含有する硬質金属を生産するための出発物質として使用される。しかしながら、この方法は、最終的に所望の微細構造を生産するために出発MexCoyCz亜炭化物に余分な炭素を加える必要があるため、無欠陥構造(例えばイータ相又は遊離グラファイト)を生産するために炭素含有量を調節することに問題を有する。更に、記載の方法を使用することによりいずれかの立方晶炭化物でドープされた六方晶系WCを含有する焼結硬質金属が生産可能であることは、証明されていない。
【0006】
六方晶系ドープWCを使用するとき、処理の観点からの主な課題は、焼結工程の間に六方晶系ドープWC相からカーバイド又は炭窒化物の形態のドーピング遷移金属が沈殿することを回避することであり、上記に開示された方法のいずれもがこの問題を解決していない。加えて、超硬合金の特定の応用分野に関して、得られる焼結製品の強靭性を低下させるであろう立方晶炭化物の沈殿を避けるという課題も存在する。
【0007】
したがって、本明細書に開示される方法とそれにより得られる製品は、上記問題を軽減する及び/又は上記問題の解法を提供する。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、超硬合金の製造方法を提供し、前記方法は:
a)ミリング液、結合金属、及び硬質成分を含むスラリーを形成する工程であって、硬質成分が六方晶系ドープWCを含む工程;
b)前記スラリーを粉砕し乾燥させる工程;
c)b)から得られた前記粉末混合物を加圧成形し焼結する工程;
を含み、六方晶系ドープWCは焼結前及び/又は焼結中に窒素に曝される。驚いたことに、六方晶系ドープWCを焼結工程の前及び/又は焼結工程の間に窒素に曝すことにより、上記問題が解決又は軽減することが発見された。いずれの理論にも拘束されるものではないが、窒素は、六方晶系WC中のドーピング元素の可溶性に影響を与えると考えられる。つまり、上記又は後述に定義される方法を適用することにより、六方晶系ドープWCからのドーピング沈殿物は制御される。更に、前記方法を適用することにより、六方晶系ドープWCの粒子を含有するグラジエント超硬合金が得られる。
【0009】
したがって、上記又は後述に定義される本方法は、本方法を六方晶系WCのドーピングレベルと組み合わせることにより、グラジエントの厚さを調整する可能性及び機会を提供する。加えて、上記又は後述に定義される本方法は、ガンマ相を形成する遷移金属元素の特定の割合が六方晶系ドープWC中に固溶体として残るため、焼結製品におけるガンマ相の体積分率を低下させる。
【0010】
本発明は、切削工具を作製するための上記又は後述に定義される超硬合金の製造方法の使用にも関する。
【0011】
加えて、本開示内容は、上記又は後述に定義される方法に従って得られる超硬合金を提供する。更に、本開示内容は、上記又は後述に定義される方法に従って得られる切削工具を提供する。超硬合金及びそれによる切削工具は、六方晶系ドープWCの硬度が低下することにより、従来の超硬合金と比較して高められた硬度対強靭性の比率を包含し、かつ、得られる超硬合金及びそれによる切削工具は、このような硬度対強靭性の向上に起因して、Cr、Mo、Fe、Co及び/又はNiといった結合金属を少なく含みながら、依然として所望の特性を有することができることを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】従来技術の方法により得られる超硬合金を示している。
図1B】上記又は後述に定義される方法により得られる超硬合金を示している。
図2】上記又は後述に定義される方法の概略図である。
図3】焼結後の六方晶系(W、Ta)C粒子の原子プローブ測定を示しており、WC結晶中の固溶体としてのTa残留物が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
別途指定のない限り、互換可能に使用される用語「ドープWC」、「六方晶系(hex)ドープWC」及び「六方晶系(hexagonal)ドープWC」は、タングステンカーバイドの六方晶系結晶構造内部のタングステン原子が、Tcを除く、第4族の元素及び/又は第5族の元素及び/又は第7族の元素(遷移金属)から選択される遷移金属の原子によって部分的に置換されることを意味することを意図している。遷移金属の例は、限定しないが、Ta、Ti、V、Cr及びNbである。六方晶系ドープWCは、hex(Me、W)(C)又はhex(Me、W)(C、N)とも表記され、ここでMeは上記に開示される遷移金属のいずれかである。
【0014】
本明細書において互換可能に使用される用語「hex WC」及び「六方晶系WC」は、六方晶系構造を有するタングステンカーバイドを意味することを意図している。
【0015】
本明細書において使用される用語「グラジエント」は、表面領域にガンマ相がなく、したがって表面領域が結合金属に富むであろうことを意味することを意図している。しかしながら、グラジエントにはガンマ相がないと言われていても、方法パラメータによっては、グラジエント内部に独立したガンマ相沈殿物が存在しうる(したがってこのような場合には、ガンマ相は、実質的にガンマ相がないと言われる)。グラジエントの厚さは、2から50μmまでの範囲、例えば15から25μmまでの範囲である。
【0016】
別途指定のない限り、本明細書において使用される用語「硬質成分」は、WC、六方晶系ドープWC、及び更にはカーバイド、窒化物、炭窒化物、ホウ化物、炭酸化物、炭窒酸化物及びこれらの混合物(周期表の第4、第5及び第6族の元素に対応する元素の)を含むことを意図している。カーバイド、窒化物、炭窒化物、ホウ化物、炭酸化物、炭窒酸化物及びこれらの混合物(周期表の第4、第5及び第6族の元素に対応する元素の)の例は、限定しないが、TiC、TaC、TiN、Cr、NbC及びTiBである。硬質成分は、乾燥時、粉末の形態である。
【0017】
本発明によれば、用語「切削工具」は、加工中の製品から、せん断変形により材料を除去するために使用される任意のツールについて使用され、切削工具の例は、限定しないが、インサート、エンドミル、採掘ツール、ビット及びドリルである。
【0018】
加えて、用語「焼結体」は、別途指定のない限り、切削工具を含むことを意図している。
【0019】
本明細書においては、用語「ガンマ相」により、焼結中に形成される立方相が意味される。超硬合金の全体の組成に応じて、ガンマ相は通常、(W、Me、Me...)(C、N、O、B)と記載され、ここでMeはTi、Zr、Hf、V、Ta、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Ru、Fe、Co、Ni及びAlであり、相は立方構造を有する。ガンマ相を形成するためには、一定量の立方晶炭化物が存在する必要がある。ガンマ相の生成に使用される最も一般的な立方晶炭化物は、TiC、TaC及びNbCであるが、他の元素の立方晶炭化物も使用可能である。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、超硬合金の製造方法に関し、前記方法は:
a)ミリング液、結合金属、及び硬質成分を含むスラリーを形成する工程であって、前記硬質成分が六方晶系ドープWCを含む工程;
b)工程a)から得られたスラリーを粉砕し、乾燥させる工程;
c)b)から得られた前記粉末混合物を加圧成形、焼結する工程;
を含み、六方晶系ドープWCは焼結前及び/又は焼結中に窒素に曝される。焼結は、500から1500℃までの温度範囲で、1mbarから200barまでの範囲の窒素圧で実行される。焼結方法には、減圧雰囲気下での焼結工程も含まれる。焼結は液相焼結でもよい。このように、本発明は、六方晶系ドープWCを含むグラジエント超硬合金を生産する方法に関する。六方晶系WCは、第4、第5及び/又は第7族の元素(Tcを除く)から選択されるドーピング元素でドープされている。このような元素の例は、Ta、Nb、Ti、V、Cr及びこれらの混合物である。真空焼結工程の間に、ガンマ相のない表面ゾーン(グラジエント)が、結合金属中の、主に遷移金属窒化物又は遷移金属炭窒化物、例えばTiN、TaN、NbN、ZrN、VN、HfN、Ti(C、N)、Ta(C、N)及びこれらの混合物からなる群より選択されるもの、好ましくはTiN及び/又はTaNの分解に起因して形成される。このような分解は、窒素の外方拡散を促進し、Nに対して高い親和性を有する前記遷移金属の熱力学結合に起因して、前記遷移金属の内側への拡散が起こる。窒素に対して親和性を有する遷移金属、例えばTi、Nb及びTaは、同じ過程を経る。この拡散が制御された過程は、固相又は液相焼結条件において一定の時間の後にガンマ相グラジエントの形成をもたらす。しかしながら、使用される遷移金属が焼結中にグラジエントを形成しない場合、次いで窒素に対して親和性を有する遷移金属が付加される。これら遷移金属(窒素に対して親和性を有する)は、好ましくはTi、V、Zr及び/又はTaから選択され、これら金属は窒化物、例えばTiN及びTaNの形態で又は炭窒化物、例えばTi(C、N)として、付加することができる。最も好ましくは、遷移金属を有する炭窒化物及び窒化物(窒素に対して親和性を有する)は、Ti、V及びTaとこれらの混合物の炭窒化物及び窒化物から選択される。
【0021】
ドープWCの六方晶系構造を形成するためには、ドープ元素の量を制限する必要がある。ドープした元素の量が六方晶系WC中における最大固体溶融度を超過する場合、WCは(W、Me)C型の立方晶炭化物相を形成し、ここでMeは望ましくないドーピング元素、例えば(W0.5、Ti0.5)Cである。付加されるドープ元素の正確な量は、ある程度は選択される特定のドーピング元素に依存するが、ドープ元素の量は六方晶系ドープWCの総重量の3wt%を超えるべきではない。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、上記又は後述に定義される方法に使用される硬質成分は、六方晶系ドープWC、WC、TiC、TaC、NbC、Cr及びこれらの混合物から選択される。本発明の一実施態様によれば、上記又は後述に定義される方法に使用される硬質成分は、六方晶系ドープWC、WC、Ti(C、N)Ta(C、N)、NbC、Cr及びこれらの混合物から選択される。本発明の別の実施態様によれば、前記硬質成分は、六方晶系ドープWC、WC、TiC、TaC、Cr及びこれらの混合物から選択される。本発明のまた別の実施態様によれば、硬質成分を含むWCの量は、六方晶系ドープWCのみからなる。本発明の更なる実施態様によれば、前記硬質成分は六方晶系ドープWCと、TaC及びTiCの一又は複数である。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、粉末割合、即ち硬質成分及び結合金属並びにいずれかの他の付加されてもよい粉末の量は以下の通りである:WC及び六方晶系ドープWCは、65から90wt%までの範囲、例えば70から90wt%までの範囲;結合金属、例えばCoは、3から15wt%までの範囲、例えば5から9wt%までの範囲;Ta(Taは、六方晶系ドープWC中においてTaC又はTaN又はTa(C、N)又はこれらの混合物の形態でよい)は、1から5wt%までの範囲、例えば1から3wt%までの範囲;Ti(Tiは六方晶系ドープWC中においてTiC又はTiN又はTi(C、N)又はこれらの混合物の形態でよい)は、0.5から5wt%までの範囲、例えば0.5から3wt%までの範囲。
【0024】
他の本発明によれば、上記又は後述に定義される超硬合金の製造方法において、六方晶系ドープWCは、工程b)の実行前に、遷移金属窒化物又は遷移金属炭窒化物を工程a)から得られるスラリーに付加することにより、窒素に曝される。前記遷移金属は、NbN、ZrN、HfN、VN、TiN、TaN及びこれらの混合物から選択され、例えばTiN及び/又はTaNである。窒化物は粉末としてスラリーに付加される。また、遷移金属炭窒化物は、窒素を付加するために使用することができ、そのような元素の例はTi(C、N)及びTa(C、N)である。また、前記遷移金属窒化物又は遷移金属炭窒化物は、TiN、Ti(C、N)、V(C、N)、Zr(C、N)、TaN、NbN、Ta(C、N)及びこれらの混合物から選択されうる。
【0025】
他の本発明によれば、上記及び後述に定義される超硬合金の製造方法において、六方晶系ドープWCは焼結前に窒素ガスに曝される。このような曝露を、工程a)で得られたスラリーへの遷移金属窒化物の付加と組み合わせることができる。
【0026】
他のまた、上記又は後述に定義される超硬合金の製造方法によれば、ドープWCは焼結中に窒素ガスに曝してもよい。これは、焼結前の窒素への曝露又は工程a)から得られたスラリーへの遷移金属窒化物の付加と組み合わせることができる。また、上記又は後述に定義される方法が、これら曝露のすべて、即ち遷移金属窒化物又は遷移金属炭窒化物のスラリーへの付加、焼結前及び焼結中におけるドープWCの窒素ガスへの曝露を含むことも可能である。
【0027】
他の加えて、上記又は後述に定義される超硬合金の製造方法によれば、焼結方法の一工程は減圧下で実行することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、焼結方法の一工程は減圧下で実行され、焼結方法は液相焼結である。
【0028】
他の更に、本発明によれば、窒素曝露に関する上記の記載に関連して、六方晶系ドープWCを製造する間に六方晶系ドープWCを窒素に曝すことも可能である。前記六方晶系ドープWC、(W、Me...)(C、N)又は(W、Me...)Cは、その後上記又は後述に記載される方法において使用されうる。
【0029】
他の本発明の一実施態様によれば、六方晶系ドープWCは、Ta、Ti、Nb、V、Cr及びこれらの混合物から選択される遷移金属でドープされ、好ましくは遷移金属はTa及び/又はTiである。WCのドーピングに使用される方法は国際公開第2012/145773号に記載されている。
【0030】
スラリーに付加されるとき、六方晶系ドープWCの平均粒子サイズは0.4から12μmまでの範囲、例えば2から8μmまでの範囲である。立方晶炭化物、例えばTiCの粒子サイズは、通常は0.8から2.5μmまでの範囲である。
【0031】
結合金属は、単一結合金属の粉末又は二つ以上の金属の粉末混合物又は二つ以上の金属からなる合金の粉末とすることができる。結合金属は、Cr、Mo、Fe、Co、Ni及びこれらの混合物からなる群より、好ましくはCo、Fe又はNiおよびこれらの混合物より選択され、最も好ましくはCoである。付加結合金属の粒子サイズは0.5から3μmまでの範囲、好ましくは0.5から1.5μmまでの範囲である。別個に付加される結合金属の量は、上記又は後述に定義される硬質成分の含有量に依存する。したがって、付加される結合金属の量は、最終生産物中の目的結合金属の含有量を達成するために必要な量である。最終生産物中の結合金属の総含有量は、2から15wt%までの範囲である。
【0032】
上記又は後述に定義される硬質成分、結合金属及び有機結合剤は、ボールミル、アトライターミル、又はパールミルにおいて、粉砕工程により混合される。粉砕は、結合金属、前記硬質成分及び有機結合剤を含むスラリーを最初に形成することにより実行される。粉砕時間は、使用される粉砕機の種類及び粉末の質及び所望の粒子サイズのすべてに依存して、異なる。適切な粉砕時間は、ボールミルの場合10から120時間、又はアトライターミルの場合10から35時間である。次いでスラリーは、均一なスラリー混合物を得るために粉砕される。粉砕は、脱塊化のため及び粉末粒子サイズを減少させるために実行される。粉砕体を使用してもよい。また、素地の強度を向上させるために、潤滑剤を加えてもよい。従来の超硬合金製造方法においてミリング液として一般に使用される任意の液体、例えば水、アルコール、有機溶媒又はこれらの混合物を使用することができる。
【0033】
有機結合剤は、続く乾燥工程、例えば噴霧乾燥又は汎乾燥の間の粒状化を容易にするためにスラリーに加えられるが、続く加圧成形工程及び/又は焼結工程のいずれかのための加圧成形剤としても機能する。有機結合剤は、当技術分野において一般に使用される任意の結合剤、例えばパラフィン、ポリエチレングリコール(PEG)、長鎖脂肪酸及びこれらの混合物でよい。使用される有機結合剤の量は、全乾燥粉末体積に基づいて15から25vol%までの範囲である(有機結合剤の量は全乾燥粉末体積には含まれない)。
本発明によれば、PRZとも呼ばれる再生WC又は再生超硬合金スクラップが、工程b)の前に、50wt%以下の量でスラリーに付加される。付加量は、当業者には既知であるように、スクラップの組成及び最終的な超硬合金の所望の組成に応じて決まる。PRZは、元素W、C、Co、並びにTa、Ti、Nb、Cr、Zr、Hf及びMoのうちの少なくとも一つ又は複数を含む。再生方法は通常、冶金学的手段又は化学的手段、例えば亜鉛回収方法、電解回収及び抽出又は酸化(すべて当業者には既知)によって実行される。
【0034】
次に、素地は、所望の粉末/顆粒から、加圧成形工程、例えば一軸加圧成形、多軸加圧成形などにより形成される。乾燥粉末/顆粒から形成された素地は、次に既知の焼結方法、例えば液相焼結により焼結される。液相焼結は、焼結HIPと組み合わせて実行されてもよい。焼結方法は、減圧下、アルゴン雰囲気中、又は窒素雰囲気中、又はこれらの組合せで実行することができる(図2参照)。図2は、焼結サイクルの主な工程をまとめたものである。これら工程は、様々な要因に応じて変化し、本明細書に示されるその特定の例として、セグメントA−Bは、脱ろう期間が終了した後に開始される工程であり、焼結合金の溶融の形成まで温度を上昇させる(共融温度);セグメントB−Cは、液相焼結における共融温度から最高焼結温度(Tmax)までの焼結工程に対応し;セグメントC−Dは、最高焼結温度(Tmax)における等温焼結であり;セグメントD−Eは最高焼結温度から焼結超硬合金の共融点を大きく下回る温度までの冷却工程である。方法が終了するまで材料が冷却する工程を「炉冷」という。
【0035】
本発明によれば、上記又は後述に定義される過程を含む方法を用いて製造される超硬合金及び/又は切削工具は、CVD又はPVD技術を用いて耐摩耗性コーティングでコーティングされる。CVD技術が用いられる場合、CVDコーティングは、前記カーバイド及び/又は工具上に堆積され、このコーティングは少なくとも一つの窒化物又は炭窒化物層、例えばTiCN層又はZrCN層又はTiAlN層を含むが、当業者に既知の他の窒化物及び/又は炭窒化物層が層として使用されてもよい。加えて、少なくとも一つのα−Al又はκ− Al層が超硬合金及び/又は工具に適用されてよい。摩耗検出のための最も外側の色層、例えばTiN層を堆積させることもできる。
【0036】
コーティングには、ブラッシング、ブラスチングなどの付加的な処理を行うこともできる。
【0037】
したがって、一実施態様によれば、上記又は後述に定義される方法は、数時間にわたるボールミル、アトライターミル、又はパールミルにおいて、カーバイド、窒化物及び/又は炭窒化物が付加された六方晶系ドープWCを含む、TiC及び/又はTaC及び/又はTiN及び/又はTi(C、N)といった硬質成分を、Co、Ni、Feから選択される結合金属、最も好ましくはCo、ミリング液(例えばアルコール及び/又は水)及びPEGから選択される有機結合剤と共に粉砕することによって、最初にスラリーを形成することにより実行することができる。スラリーに噴霧乾燥工程を施すことにより、顆粒化超硬合金が形成され、これは次いで焼結される素地パーツを加圧成形するために使用される。
【0038】
超硬合金は、制御された雰囲気内で焼結され、これには、六方晶系ドープWC構造を窒素に曝して六方晶系WCに更にドーピング元素を捕捉する工程と、脱窒化条件、即ち減圧下で、得られた超硬合金の外表面近傍にグラジエントを生成する工程とが含まれる。
【0039】
上記又は後述に定義される方法により得られる超硬合金は、摩耗部品のような任意の種類の切削工具、又は他の種類の超硬合金の一般的用途に使用することができる。したがって、上記又は後述に定義される方法により得られる超硬合金は、焼結微細構造中に六方晶系ドープWC相を含み、この場合、ドーピング元素は第4、第5及び/又は第7族の元素から選択される(Tcを除く)。ドーピング元素の例は、Ta、Nb、Ti、V、Cr及びこれらの混合物である。
【0040】
上記又は後述に定義される方法により得られる超硬合金は、超硬合金が、例えば摩耗部品のために使用される他の用途のための製品を製造するために使用されてもよい。
【0041】
図1Bは、超硬合金がグラジエント(Grad)を有する写真に見ることができるように、上記又は後述に定義される方法により製造される超硬合金を示している。加えて、図3は、上記又は後述に定義される方法により製造される超硬合金内部の六方晶系(W、Ta)C粒子の原子プローブ測定を示している。測定は、焼結後に行われ、これによりWC結晶中の固溶体としてのTa残留物が示される。
【0042】
上記又は後述に定義される方法と、それにより得られる製品について、以下の非限定的実施例により更に説明する。
【実施例】
【0043】
【0044】
実施例1 比較実施例
7.5wt%のCo、0.4wt%のTiN、2.7wt%のTaC及び残部WCを含む組成物と2%のPEGを混合し、顆粒化し、加圧成形して、焼結するための素地を生成した。
素地を、脱ろう工程及び固相及び液相における1450℃での焼結での減圧工程を含む、米国特許第4277283号に記載の従来技術による方法を用いて焼結することにより、焼結超硬合金にガンマ相減少表面を生成した。
【0045】
焼結片の最終的微細構造は、バルクと、ガンマ相(グラジエント)の減少した厚さ19μmの表面近傍ゾーンとに、WC及び(Ti、W、Ta)(C、N)ガンマ相を呈した。焼結部品に対する画像分析により決定された、超硬合金のバルク中のガンマ相の体積分率は、3.6vol%であった。付加されたTaCは、ガンマ相の形成に寄与した。体積分率は、焼結部品の断面の電子顕微鏡SEM画像をスキャンして測定した。20KVのエネルギーにより、倍率3000Xの後方散乱電子SEM画像が取得された。体積分率を決定するために、各画像について平均10個の長方形(6.2μm×125.86μm)を取得した。画像ソフトウェア分析、LEICA QWINを使用した。SEM FEI装置を使用した。
【0046】
平均微小硬度(HV0.01)は、グラジエント中では1860HVであり、超硬合金のバルク中では1910HVであった。硬度はVickers圧痕法により測定した。結果は10回の圧入の平均とした。
【0047】
実施例2 TiN粉末の付加により窒素に曝露した六方晶系ドープWC
7.5wt%のCo、0.4wt%のTiN、及び2.7wt%のTaCでドープした残部六方晶系WCを含み;更には2%のPEGを含む組成物を混合し、18時間粉砕し、噴霧乾燥器内で顆粒化し、加圧成形して、焼結するための素地を生成した。
【0048】
素地は、450℃を下回る温度でのPEGを除去する脱ろう工程を含む方法により焼結され、脱ろう工程の後に、合金の共融温度に到達するまで、窒素ガスを含む50mbarの分圧による制御雰囲気条件下において、1〜10℃/分の加熱率での加熱工程が、続いて「液相焼結」のための最大焼結温度に到達するまで(1300〜1600℃)、減圧下において、1〜10℃/分の加熱率での加熱工程が、続いて数mbar(1〜100mbar)のガス(Ar/CO混合物(50:50))を含む雰囲気下において、1時間にわたる液相焼結条件での焼結工程が、及びアルゴンの保護雰囲気下において、最大焼結温度から温度900℃まで1〜10℃/分の冷却率での冷却工程と、それに続く40℃への炉冷が実行された。
【0049】
焼結片の最終的微細構造は、バルクと、ガンマ相(グラジエントゾーン)の減少した厚さ29μmの表面近傍ゾーンとに、六方晶系ドープWC及び(Ti、W、Ta)(C、N)ガンマ相を呈した。これは、SEMを使用することにより(しかしながら、軽量光学顕微鏡を使用してもよかった)、焼結サンプルの研磨断面上で測定された。SEM FEI装置を使用した。
【0050】
超硬合金のバルク中の焼結部品について実施例1に記載したような画像分析により決定したガンマ相の体積分率は、2.7vol%であった。従来の原料粉末を用いる従来の方法によりグラジエントが生成された実施例1と比較して、ガンマ相の体積分率は約1vol%(3.6vol%対2.7vol%)異なっていた。コバルト結合相のTaの溶解度は極めて低く(系W−Ta−Co−Cについて固体で0.04atom%未満)[K. Frisk, Study of the Effect of Alloying Elements in Co-WC based Hardmetals by Phase Equilibrium Calculation, 17th Plansee Seminar 2009, Vol.2 HM1/1]、これは、六方晶系ドープWC中のTaドーピングが焼結後に六方晶系WCの固溶体中に残り、焼結片のバルク中におけるグラジエント及びガンマ相の形成に寄与しなかったことを示している。
【0051】
平均微小硬度(HV0.01)は、グラジエント中では1760HVであり、超硬合金のバルク中では1830HVであった。硬度はVickers圧痕法により測定した。結果は10回の圧入の平均とした。
【0052】
実施例3 Nガスとして窒化物六方晶系ドープWCに付加された窒素+制御N雰囲気によるガンマ相の脱窒化及びグラジエント形成の制御
7.5wt%のCo、0.9wt%のTiC、0.4wt%のTiN、及び2.7wt%のTaCでドープした残部六方晶系WCを含む組成物と2%のPEGを混合し、顆粒化し、加圧成形して、焼結するための素地を生成した。
【0053】
素地は、450℃を下回る温度でのPEGを除去する脱ろう工程を含む方法を用いることにより焼結され、脱ろう工程の後に、合金の共融温度に到達するまで、900mbarの窒素焼結分圧を含む制御雰囲気条件下において、1〜10℃/分の加熱率での加熱工程が、続いて「液相焼結」のための最大焼結温度に到達するまで(1300〜1600℃)、減圧下において1〜10℃/分の加熱率での加熱工程が、続いて窒素を含む10mbarの制御雰囲気下において、1時間にわたる液相焼結条件での焼結工程が、及び10mbarの窒素を含む制御雰囲気下において、最大焼結温度から温度900℃まで1〜10℃/分の冷却率での冷却工程と、それに続く40℃への炉冷が実行される。
【0054】
窒素雰囲気下で実行される焼結工程は、TiCの窒化と、それによりTiNの分解を遅らせ、更には六方晶系ドープWC粒子を窒化させることを目的としたものであった。減圧工程は、焼結超硬合金にガンマ相減少表面を生成するために、超硬合金を脱窒化することを目的としていた。高温における窒素雰囲気は、脱窒化工程の制御、ひいてはガンマ相のないグラジエント層の厚さを制御することを目的としていた。
【0055】
焼結片の最終的微細構造は、バルクと、ガンマ相(グラジエントゾーン)の減少した厚さ46μmの表面近傍ゾーンとに、六方晶系TaドープWC及び(Ti、W、Ta)(C、N)ガンマ相を提供した。これは、実施例2に記載のように計算される。
【0056】
実施例1に記載のように画像分析を用いることにより測定された、超硬合金のバルク中のガンマ相の体積分率は、3.7vol%であった。形成を開始するためのガンマ相の理論上の体積分率は、すべての立方晶炭化物がガンマ相を形成すると仮定すると、6.4vol%であった;即ち、ガンマ相体積分率の差異は約2.7vol%であった;これにより、六方晶系ドープWC中のTaドーピングが焼結後に六方晶系WC中の固溶体に残り、焼結片のバルク中のグラジエント及びガンマ相の形成に寄与しなかったことが示される。
【0057】
平均微小硬度(HV0.01)は、グラジエント中では1620HVであり、超硬合金のバルク中では1850HVであった。硬度はVickers圧痕法により測定した。結果は10回の圧入の平均とした。
【0058】
実施例4 液相焼結の間にNガスとして付加される窒素によるガンマ相の脱窒化及びグラジエント形成の制御
7.5wt%のCo、0.9wt%のTiC、0.4wt%のTiN、及び2.7wt%のTaCでドープした残部六方晶系WCを含み、更に2%のPEGを含む組成物を混合し、顆粒化し、加圧成形して、焼結するための素地を生成した。
【0059】
素地は、450℃を下回る温度でのPEGを除去する脱ろう工程を含む方法により焼結され、脱ろう工程の後に、合金の共融温度に到達するまで、減圧下において、1〜10℃/分の加熱率での加熱工程が素地に対して実行され、続いて「液相焼結」のための最大焼結温度に到達するまで(1300〜1600℃)、減圧下且つ1〜10℃/分の加熱率での加熱工程が、続いて15mbarの窒素焼結分圧を含む制御雰囲気条件下において、1時間にわたる液相焼結条件での焼結工程が、及び50mbarの窒素焼結分圧を含む制御雰囲気条件下において、最大焼結温度から温度900℃まで1〜10℃/分の冷却率での冷却工程と、それに続く40℃への炉冷が実行された。
【0060】
窒素雰囲気下での焼結工程は、TiCの窒化と、それによりTiNの分解を遅らせ、更には六方晶系ドープWC粒子を窒化させることを目的としたものであった。減圧工程は、焼結超硬合金にガンマ相減少表面を形成するために、超硬合金を非窒化することを目的としていた。15mbarの制御N雰囲気での焼結工程は、窒化ガンマ相及び六方晶系ドープWCの脱窒化を制御することを目的としたものであり、更にはグラジエント厚の形成を制御することを目的としていた。
【0061】
焼結片の最終的微細構造は、バルクと、ガンマ相(グラジエントゾーン)が減少した厚さ20μmの表面近傍ゾーンとに、六方晶系TaドープWC及び(Ti、W、Ta)(C、N)ガンマ相を呈した。
【0062】
超硬合金のバルク中のガンマ相の体積分率は、4.9vol%であり、上記実施例に記載のように決定された。形成を開始するためのガンマ相の理論的体積分率は、6.4vol%であった。
体積分率の差異から、一定量のTaC(約1.5wt%)が、焼結後に六方晶系WCの固溶体中に残り、焼結片のバルク中のグラジエント及びガンマ相の形成に寄与しなかったことが観察できた。
【0063】
平均微小硬度(HV0.01)は、グラジエント中では1700HVであり、超硬合金のバルク中では1800HVであった。硬度はVickers圧痕法により測定した。結果は10回の圧入の平均とした。
【0064】
実施例5 Ta及びCrの両方でドープし、TiN粉末の付加により窒素に曝露した六方晶系WC
7.5wt%のCo、0.9wt%のTiC、0.4wt%のTiN及び0.39wt%のTaC及び0.3wt%のCrでドープした残部六方晶系WCを含み、更に2%のPEGを含む組成物を混合し、顆粒化し、加圧成形して、焼結するための素地を生成した。
【0065】
素地は、450℃を下回る温度でのPEGを除去する脱ろう工程を含む方法により焼結され、脱ろう工程の後に、合金の共融温度に到達するまで、窒素ガスを含む50mbarの分圧による制御雰囲気条件下において、1〜10℃/分の加熱率でのでの加熱工程が、続いて「液相焼結」のための最大焼結温度に到達するまで(1300〜1600℃)、減圧下において1〜10℃/分の加熱率での加熱工程が、続いて数mbar(1〜100mbar)のガス状Ar/CO混合物(50:50)を含む雰囲気下において、1時間にわたる液相焼結条件での焼結工程が、及びアルゴンの保護雰囲気下において、最大焼結温度から温度900℃まで1〜10℃/分の冷却率での冷却工程と、それに続く40℃への炉冷が実行された。
【0066】
焼結片の最終的微細構造は、バルクと、ガンマ相(グラジエントゾーン)の減少した厚さ76μmの表面近傍ゾーンとに、六方晶系ドープWC及び(Ti、W、Ta)(C、N)ガンマ相を呈した。これは、上記実施例に記載のように計算された。
【0067】
超硬合金のバルク中の焼結部品について上記実施例に記載のような画像分析により決定したガンマ相の体積分率は、4.0vol%であった。
【0068】
形成を開始するためのガンマ相の理論的体積分率は、4.3vol%であった。体積分率の差異から、一定量のTaC及びCr(約0.3wt%)が、焼結後に六方晶系ドープWCの固溶体中に残り、焼結片のバルク中のグラジエント及びガンマ相の形成に寄与しなかったことが観察できた。グラジエントの相当により大きな厚さは、Nに対するTaの親和性よりも、Nに対するCrの高親和性と相関させることができる。
【0069】
CrでWCをドープすることにより、より微細な焼結WC粒子サイズが達成され、したがってより高い硬度値が達成される。平均微小硬度(HV0.01)は、グラジエント中では1900HVであり、超硬合金のバルク中では2100HVであった。硬度はVickers圧痕法により測定した。結果は10回の圧入の平均とした。
【0070】
したがって、上記実施例及び以下の表に見ることができるように、六方晶系ドープWCを使用する場合、従来のWCを使用することによるものと同じ硬度レベルを達成するためには、組成物中の硬質相の体積分率を高める必要がある。これは、結合相の体積分率の低減、つまり従来の超硬合金と等しいWC六方晶系ドープWC超硬合金の強靭性レベルが、結合金属含有量を減少させて可能になることを示す。
【0071】
加えて、上記実施例及び以下の表も、総Tiの減少、ガンマ相の体積分率の低減、及びグラジエントの厚みの減少を示している。更に、ガンマ相を含まないグラジエント層形成のための窒化/脱窒化方法が、焼結雰囲気の種類を選択することにより制御できることも示された。Crといった六方晶系WCに対する他のドーピング元素の付加は、TaCに関してグラジエント形成に同じ効果を有し、WC粒子サイズにも効果を有する。
【0072】
表1
【0073】
表2
【0074】
表3
図1A
図1B
図2
図3