特許第6474397号(P6474397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テル ハショマー メディカル リサーチ インフラストラクチャー アンド サーヴィシーズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6474397-身体の標的部位を治療する装置 図000002
  • 特許6474397-身体の標的部位を治療する装置 図000003
  • 特許6474397-身体の標的部位を治療する装置 図000004
  • 特許6474397-身体の標的部位を治療する装置 図000005
  • 特許6474397-身体の標的部位を治療する装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474397
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】身体の標的部位を治療する装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20190218BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20190218BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20190218BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   A61N5/10 M
   A61M16/00 305A
   A61B6/00 370
   A61B6/03 377
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-526148(P2016-526148)
(86)(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公表番号】特表2016-540542(P2016-540542A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】IB2014065532
(87)【国際公開番号】WO2015059646
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年9月26日
(31)【優先権主張番号】61/961,731
(32)【優先日】2013年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/016,670
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316014386
【氏名又は名称】テル ハショマー メディカル リサーチ インフラストラクチャー アンド サーヴィシーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドスタイン ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ペレド ニール
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ズヴィ
【審査官】 吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0294279(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0106704(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0229926(US,A1)
【文献】 特開2005−230561(JP,A)
【文献】 特開2004−105359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/00
A61B 6/03
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体の標的部位で処置を実行するための装置であって、
前記患者の肺にCPAPを提供する持続的気道陽圧法(CPAP)装置、
前記標的部位で前記処置を実行するための医療器具、および、
前記処置の実行の間、前記標的部位の動きを緩和するための所望の圧力および流速で前記患者の肺にCPAPを提供するために前記CPAP装置を制御し、そして、CPAPを提供する間、医療撮像装置によって取得される前記標的部位の画像に応じて、放射線ビームによって照射される前記標的部位を含む前記患者の身体における所望の内部標的ボリューム(ITV)を決定する、ように構成されるコントローラ、
を備える、装置。
【請求項2】
前記医療器具は、前記標的部位で組織に放射線を照射するための放射線ビームを生成する放射線ビーム発生器を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記放射線ビーム発生器は、前記IVに放射線ビームを照射するように構成するように適合される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記標的部位の前記画像を取得する医療撮像装置を含む、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記コントローラが前記ITVを決定するために前記画像を処理するために実行する実行可能な命令セットを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記医療器具は、組織を切除するために前記標的部位の組織にエネルギーを送達する組織アブレータを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記医療器具は、前記標的部位における組織の標本を取得するために作動する生検サンプラを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記医療器具は、心臓カテーテル法のためのカテーテルを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記医療器具は、ステントを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記医療器具は、医療撮像装置を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記医療器具は、前記コントローラによって制御されるロボット装置を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記医療器具は、手動で作動される医療器具を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2013年10月22日に出願された米国仮特許出願第61/961,731号および2014年6月25日に出願された米国仮特許出願第62/016,670号の米国特許法第119(e)のもとに利益を請求し、そしてその開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明の実施形態は、患者の標的部位を治療することに関する。
【背景技術】
【0003】
異なるタイプの放射線を用いて患者を治療するさまざまな方法は、1932年に彼の癌の母を治療するために中性子放射を最初に使用したE.O.ローレンス、そして1946年に影響力のある新聞に癌を治療するために陽子を使用することを最初に提案したR.R.ウィルソンから成熟した。今日、大部分の医療センターは、悪性腫瘍を治療するための放射線ビームを生成するための少なくとも1つの設備を有するか、またはそれへのアクセスを有する。その施設は、一般に、荷電粒子(例えば電子または陽子)のビームを加速するためのアクセラレータ、所望のタイプの放射線を生じるためにビームが衝突するターゲット、および患者の身体における悪性腫瘍の標的部位で明確な治療的な放射線ビームとして所望の放射線の狙いを正確に定める装置、を備える。放射線ビームは、粒子電子ビーム、陽子、中性子またはα粒子のようなハドロンのビーム、または、X線またはガンマ線のような電磁放射線ビームでもよい。
【0004】
悪性細胞のDNAに損傷を与えるのに十分な量の放射エネルギーを標的部位で堆積させることによって悪性腫瘍の標的部位で悪性細胞を殺すために、治療的な放射線ビームは、作動する。それらのDNAへの充分な損傷を負っている標的部位の悪性細胞は、死んで、自然なプロセスによって身体から取り除かれる。しかしながら、治療的な放射線ビームの放射線は、健康な細胞と悪性細胞をと区別しなくて、健康な細胞ならびに悪性細胞に損傷を与えるかもしれない。その結果、治療的な放射線ビームは、一般に正確に構成されなければならなくて、悪性腫瘍に堆積する放射エネルギーを集中させるために悪性腫瘍の標的部位を狙わなければならなくて、健康な組織を囲んでいる放射エネルギーの堆積を最小化しなければならない。
【0005】
外肢または脳の内部またはその上の悪性腫瘍のような、比較的容易に安定してよくて、放射線治療の間、静止して保たれてもよい悪性腫瘍にとって、治療的な放射線ビームは、通常、悪性腫瘍に放射エネルギーの堆積を限局するように効果的に構成されてよい。身体の胸部または腹部領域の器官の内部またはその上の悪性腫瘍(例えば、左の胸部、肺、肝臓および膵臓の悪性腫瘍)にとって、呼吸は、器官のそしてひいては悪性腫瘍の比較的大きな動きを生成してもよい。動きのある悪性腫瘍に集中させる放射線ビームを維持することは、比較的複雑でもよく、そして困難な仕事でもよい。
【0006】
照射の間、運動を呈している悪性腫瘍に治療的な放射線ビームによって放射エネルギーを堆積させるための従来の処置は、悪性腫瘍が照射の全体にわたってビームの横断面の中に残るように、十分に大きいビームを形成することが必要であってよい。照射の間、健康な組織の暴露を緩和するために、治療的な放射線ビームは、照射の間、悪性腫瘍の動きを追うために制御されてもよい。あるいは、または加えて、それが同じ与えられた位置を通して移動するたびに放射線の照射量が悪性腫瘍に送達されるように、治療的な放射線ビームは、患者の呼吸動作と同期してシャッターをオン/オフされてもよい。いくらかの処置において、照射の間、呼吸に起因する悪性腫瘍の動きを緩和するために患者の腹部を押圧することによって、照射の間、患者の呼吸動作を物理的に拘束するための試みは、実行されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一態様は、患者の身体の胸部または腹部領域における標的部位で処置を実行するための、そして処置の間、呼吸動作に起因する標的部位の動きを拘束するための装置(以下「安定した部位(Steady−Site)」とも呼ばれる)を提供することに関する。安定した部位は、処置の実行のために標的部位に送達される、または、処置の実行のために薬剤を標的部位に送達するための、診断用の、介入性の、および/または治療的な装置のうちの少なくとも1つまたは1つ以上のいかなる組合せを含んでよい。以下、本発明の実施形態による診断用の、介入性の、および/または治療的な装置は、医療器具と一般的に呼ばれてもよい。薬剤は、標的部位へ送達するための物質および/またはエネルギーを含んでよい。安定した部位は、標的部位の動きを拘束して、胸部腔および肺を拡大して、および/または、それらを標的部位から遠ざけるために胸部腔内の器官および組織を置換するために、処置の間、持続的気道陽圧法(CPAP)を患者の肺に提供する装置を含む。
【0008】
標的部位で実行される処置、または標的部位の治療は、標的部位でまたは標的部位において実行されてよいいかなる医療または画像処置と関連してもよい。本発明の実施形態において、医療器具は、薬剤を標的部位に送達するためにおよび/または標的部位で展開するために、独立してまたは半独立して作動する、手動で作動されるかまたは配備される医療器具またはロボット装置でもよい。
【0009】
本発明の実施形態において、安定した部位は、医療器具および/または薬剤の送達を制御するコントローラを含んでよい。任意には、コントローラは、処置の実行の間、CPAPを提供するためにCPAP装置を制御する。本発明の実施形態による処置の間、提供されるCPAPは、呼吸の間、横隔膜の動作を平らにして減らし、そして肺および胸部腔を拡大するために作動する。これにより、CPAPは、患者の呼吸に起因する胸部および腹部領域の組織および器官の動きを、そしてその結果、照射の間、標的部位の動きを緩和する。肺および胸部腔の拡張は、胸部腔および腹部の器官の間に間隔を移動して、増加させる傾向がある。患者の胸部および腹部領域の標的部位および他の器官および組織の減少した動きは、標的部位への医療器具または薬剤の送達を容易にして、医療器具または薬剤の送達から生じている標的部位外での組織に対する可能性がある副次的損害の減少に寄与する。肺および胸部腔の拡張および、結果として生じる胸部および腹部の器官の再配置および間隔は、標的部位への医療器具または薬剤の送達および、医療器具または薬剤の送達から生じている標的部位外での組織に対する可能性がある副次的損害の減少を容易にすることもできる。
【0010】
例えば、本発明の実施形態による管理されるCPAPは、左の胸部と関連して尾側に心臓を移動させる傾向がある。その結果、左の胸部の悪性病変を含んでいる標的部位に放射線の照射量を送達するように指示される放射線ビームの放射線への減少した暴露から、心臓は、利益を得てもよい。CPAPに起因する肺の拡張は、肺組織の密度を低下させる。そしてそれは、患者の胸部領域における標的部位の画像を取得するために用いるかもしれない医学画像方法のための、標的部位の組織と肺組織との対比を一般に改善する。
【0011】
本発明の実施形態において、安定した部位装置(安定した部位ACCURADまたはACCURADと呼ばれてもよい)は、放射線治療を提供するように構成されて、放射線に対する悪性腫瘍の近くの健康な組織の減少した暴露を有する患者の身体の胸部または腹部領域における任意のまたは悪性腫瘍の標的部位に放射線を送達するための放射線治療装置を含む。任意には、安定した部位ACCURADは、放射線ビーム発生器と、放射線ビームを制御するコントローラと、放射線ビームによって標的部位を照射する間、CPAPを提供するCPAP装置とを備える。したがって、ACCURAD治療的な放射線ビームは、通常、悪性腫瘍を比較的正確に狙うことができて、従来の放射線施設により提供される治療的な放射線ビームよりも小さいその伝搬の方向に対して垂直な横断面を有して構成されることができる。したがって、ACCURAD治療的な放射線ビームは、通常、健康な組織に対して減少した副次的損害を有する放射線を悪性腫瘍の標的部位に送達することが可能である
【0012】
本発明の実施形態の一態様は、ACCURAD放射線ビームによって照射を受ける患者の悪性腫瘍のための内部標的ボリューム(ITV)を決定することに関する。悪性腫瘍のためのITVは、悪性腫瘍の臨床標的ボリューム(CTV)を含むために、通常、定められる。そしてそれは、放射線治療を必要とするために考慮されるGTVに対する周辺組織と同様に、悪性腫瘍を特徴づける肉眼的腫瘍ボリューム(GTV)を含む組織の量である。ITVは、CTVよりも一般に大きくて、それが実質的に含み、そして、照射の間、例えば患者の呼吸動作によって発生する悪性腫瘍の動きの結果として、CTVが移動することを予測されてもよい量として定義される。本発明の実施形態によれば、患者の悪性腫瘍の動きは、撮像されて、任意にMRI(磁気共鳴映像法)スキャナおよび/またはCT(コンピュータ断層撮影)スキャナを使用する。そしてそれは、例えば、患者にCPAPを提供する間、4D(4次元)CTスキャン、PET/CT(ポジトロン放射形断層撮影/CT)スキャン、またはコーンビームCTスキャンを実行してもよい。悪性腫瘍の減少した動き、器官のさらなる分離、およびCPAPの提供から生じている改良された組織の対比は、通常、従来のITVよりも小さいACCURAD放射線ビームを用いて悪性腫瘍を治療するためのITV(以下CPAP−ITVとも呼ばれる)の決定を可能にする。
【0013】
本発明の実施形態において、ACCURADは、例として超音波、PET、MRI、またはCTスキャナのような医療撮像装置を含んでよい。そして、ACCURADコントローラは、CPAP−ITVを決定するためにCPAPの提供の間、悪性腫瘍の画像および悪性腫瘍の動きを取得するために、CPAP装置および医療撮像装置を制御する。任意には、コントローラは、悪性腫瘍のためのGTVおよびCTVを決定するために画像を画像処理するための、および/またはCPAP−ITVを決定するための、コンピュータ実行可能な命令セットを含む。
【0014】
考察において、特に明記しない限り、本発明の実施形態の特徴に特有の状態または関係を修正する「実質的に」、「約」のような形容詞は、それが意図される適用のための実施形態の操作のために受け入れ可能である許容度の範囲内で状態または特徴が定義されることを意味すると理解される。特に明記しない限り、説明および請求項における用語「または」は、排他的「または」よりもむしろ両立的「または」であると考慮され、そして、それが結合するアイテムの少なくとも1つまたはいかなる組合せも示すと考慮される。
【0015】
この概要は、詳細な説明でさらに後述する簡略化された形の概念の選択を導くために設けられる。この概要は、請求された内容の鍵となる特徴または本質的特徴を確認することを意図しないし、それは、請求された内容の範囲を制限するために用いることを意図しない。
【0016】
本発明の実施形態の非限定的な例は、この段落の後にリストされる本明細書に添付の図を参照して後述される。複数の図に現れる同一の特徴は、通常、それらが現れるすべての図において同じラベルを用いてラベルづけされる。図において本発明の実施形態の所与の特徴を表すアイコンにラベルづけしているラベルは、所与の特徴を参照するために用いられてよい。図に示される特徴の寸法は、プレゼンテーションの便宜および明快さのために選択されて、一定の比率で必ずしも示されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、従来の治療的な放射線ビーム装置を使用して患者の胸腔に位置する悪性(腫瘍)を治療することを図式的に示す。
図1B図1Bは、従来の治療的な放射線ビーム装置を使用して患者の胸腔に位置する悪性(腫瘍)を治療することを図式的に示す。
図1C図1Cは、従来の治療的な放射線ビーム装置を使用して患者の胸腔に位置する悪性(腫瘍)を治療することを図式的に示す。
図2図2は、本発明の実施形態による安定した部位ACCURAD装置を使用して図1A図1Cに示される悪性(腫瘍)を治療することを図式的に示す。
図3図3は、本発明の実施形態によるACCURAD放射線ビームで悪性(腫瘍)を治療するための処置のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明は、例として、放射線の治療的に有効な照射量を病変に送達するために患者の左下肺の悪性病変を放射線で治療するための、図1A図1Cに図式的に示す従来の処置を記載する。図示の従来の処置は、肺および横隔膜の呼吸動作に起因する照射の間の病変の動き、および結果として生じる放射線に対する健康な組織の暴露を示す。図2は、病変の動きがCPAPによって緩和される安定した部位ACCURAD装置によって同じ病変に対して行われる類似の処置を図式的に示す。そして、本発明の実施形態によれば、放射線の比較的狭い収束ビームが病変を照射する。病変の緩和された動きおよび放射線の狭いビームは、放射線に病変を囲んでいる健康な組織の暴露を減らす。本発明の実施形態によれば、標的部位(任意に悪性病変)を治療するための処置のためのフロー図が図3に示されて、図を参照して述べられる。
【0019】
図1A図1Cは、従来の放射線学機械120によって立体円60によって表される悪性病変の治療を受けている患者100を図式的に示す。立体円60のサイズは、病変のために決定される臨床標的ボリューム(CTV)を図式的に表す。図において、患者の胸部腔106内の左肺の左上葉(LUL)102および左下葉(LLL)104の外側境界は、微細破線によって示される。そして、患者の横隔膜110は、太い破線において示される。LUL102およびLLL104を描いている微細破線の中の肺組織は、ドットの濃淡によって示される。肺組織の密度は、濃淡の密度によって図式的に表される。例えば、悪性病変60は、LLL104に置かれる。
【0020】
放射線学機械120は、病変をおさえてもよく根絶してもよい放射線の望ましい照射量を病変60に送達するために有利である特徴を有する放射線ビーム130を用いて患者100を放射線で治療するために、放射線ビーム発生器122と、ビーム発生器122を制御するコントローラ124とを備える。図は、呼吸サイクルの間、患者100を放射線で治療する放射線学機械120を示す。任意には、放射線ビーム130は、X線ビームである。
【0021】
病変60は、患者100の呼吸の間、相当な動きを受ける。そして、患者の呼吸サイクルの間、病変がいつでもビーム外に移動しないように、放射線ビーム130は、十分大きい立体角を有するコントローラ124によって構成される。特に、患者100の呼吸の間、患者の身体の矢状面(図示せず)に対して平行な病変60の動きの成分は、比較的大きい。図1A図1Cの平面は、患者の矢状面に対して平行であり、呼吸の間、病変60が実行する動きの軌跡と交差するとみなされる。したがって、呼吸の間、病変60を含むために、放射線ビームが図1A図1Cの平面において比較的大きい開口角θによって定義される比較的大きい横断面を有するように、コントローラ124は、放射線ビーム130を構成するためにビーム発生器122を制御する。
【0022】
患者100がちょうど今息を吐き出し終わった図1Aにおいて、胸部腔ボリュームを縮小して、肺容積をそれらの実質的に最小限に圧縮するために、患者の横隔膜110は、胸部腔へと最大限に上昇する。そして、患者100は、吸い込みを開始しようとしている。圧縮された肺容積の結果、肺組織の密度は、実質的に最大である。そしてそれは、LUL102およびLLL104の比較的密度の高い濃淡によって図式的に示される。病変60は、放射線ビーム130の右下縁107の近くの胸部腔の位置する高さにある。
【0023】
図1Bにおいて、患者100は、吸い込んでいて、患者の呼吸サイクルの吸い込み部分の実質的に中央にいる。胸部腔を拡大してそこの圧力減らして、肺を拡大してそこに空気を吸い込むために、横隔膜110は、胸部腔から横隔膜を下方に遠ざけるように部分的に収縮する。横隔膜110の動き、胸部腔106および胸郭(図示せず)の共同する拡大、ならびにLUL102およびLLL104の拡大の結果、放射線ビーム130の実質的に正中(図示せず)に沿って置かれるために、病変60は、胸部腔において下向きに、かつ患者100の背中109から離れる方へ移動した。図1Bの空の円61は、図1Aに示す患者100の呼吸サイクルの初期の完全な吐き出しステージにおいて病変60がどこにあったかを示す。肺の拡大が完全な吐き出しでの肺組織の密度に比べて肺組織の密度を減らしたことを示すために、LUL102およびLLL104の濃淡の密度は、図1AのLUL102およびLLL104の濃淡の密度に比べて、図1Bにおいて低下する。
【0024】
図1Cは、患者の呼吸が図1Bに示す呼吸サイクルの吸い込み部分の中央から完全に吸い込んだ状態まで進行したときの患者100を図式的に示す。胸部腔106および肺をそれらのそれぞれの最大容量まで拡大して、肺を空気で完全に満たすまで息を吸うために、横隔膜110は、最大限に収縮して、下方に引かれる。完全に拡張された肺の肺組織の密度は、実質的に最小限であり、図1CのLUL102およびLLL104の比較的まばらな濃淡によって図式的に示される。横隔膜110の動き、胸郭の共同した動き、ならびにLUL102およびLLL104の拡張の結果、病変60は、胸部腔106内のさらに下方に、そしてビーム130の左縁部108に沿った位置まで背中から離れて変位した。図1Cにおいて、白抜き丸61および62は、図1Aおよび図1Bに示す患者100の呼吸サイクルの初期のステージでの病変60の位置をそれぞれ示す。
【0025】
図1Cで示す完全な吸い込みに続いて、図1Aから図1Cに示す動きを逆にたどって、胸部腔を縮ませて、患者100の呼吸サイクルの吐き出し部分において肺から空気を吐き出すために、横隔膜110は、弛緩する。完全に弛緩するときに、横隔膜110は、図1Aに示す胸部腔106内のその完全に高い位置まで戻される。そして、患者100は、吸い込みを再び開始して、新しい呼吸サイクルを開始する。吐き出しの間、横隔膜110の動きおよび胸部腔106の収縮に関連して、病変60は、その移動を逆転させて、図1Cのその位置から、白抜き丸62によって示される位置を通って、図1Aの病変60の位置であり図1Cに白抜き丸61によって示される位置まで移動するように、その軌跡を逆にたどる。
【0026】
各完全な呼吸サイクルについては、吐き出しの完了による吸い込みの開始から、病変60は、図1Aのその位置から図1Cのその位置まで、そして図1Aのその位置へと戻る、往復運動を実行する。図1Cの境界線64は、空の円61および62および病変60を囲んで、病変60の往復の軌跡を含む。境界線64は、病変60のための内部標的ボリューム(ITV)の境界線を表す。数字64は、境界線64に囲まれているITVならびに境界線に関するために用いてもよい。患者100の呼吸サイクルの間、放射線ビーム130の中に病変を維持するために、放射線ビーム130のサイズおよびITV64のサイズは、病変60および制約のGTVのサイズによって実質的に決定される。放射線ビーム130のサイズおよび図1A図1CのITV64のサイズは、病変60のGTVに加えて、治療の間、患者の健康な組織の相当なボリュームが潜在的に損傷を及ぼす放射を浴びることを示す。
【0027】
図2は、本発明の実施形態による放射線治療を提供するための安定した部位ACCURAD装置20を図式的に示す。図において、ACCURAD20は、図1A図1Cに示すLLL104の同じ病変60のための図式的に示された治療患者100である。
【0028】
任意には、安定した部位ACCURAD20は、放射線ビーム発生器22と、CPAP装置40と、放射線ビーム発生器およびCPAP装置を制御するコントローラ50とを備える。任意には、CPAP装置40は、患者100の顔面に取り付けられて、フローチューブ44によってエアポンプ・システム46に接続されて示される顔マスク42を備える。呼吸に適した気体の流れ(例えば、所望の圧力の空気、そして顔マスクへの、ひいてはフローチューブ44を経て患者100への流速)を提供するために、エアポンプ・システムは、コントローラ50によって制御可能である。任意には、CPAP装置40は、空気に含まれる従来の気体混合割合以外の気体の流れを顔マスク42に提供するために制御可能である。例えば、環境空気よりも高いかまたは低い酸素含有量を有する混合気体を顔マスク42に提供するために、コントローラ50は、本発明の実施形態によるエアポンプ・システム46を制御してもよい。任意には、顔マスク42へと流れる気体の所望の湿度および/または温度を提供するために、コントローラ50は、エアポンプ・システム46を制御する。圧力、流速、温度および湿度のいかなる適当な条件の、そして、本発明の実施形態によるCPAP装置によって患者(例えば患者100)に提供されるいかなる適切な混合の気体流も、CPAP気体流またはCPAP気流に委ねてよい。
【0029】
放射線の望ましい照射量を病変60に提供するために、患者100の肺を実質的に完全に拡大するのに十分な圧力および流速で空気の任意に一定のCPAP気体流を顔マスク42に提供して、呼吸の間、患者の胸部腔内の横隔膜110、肺および他の内部臓器の動きおよび位置、そしてこれにより病変60の動きを緩和するために、コントローラ124は、CPAP装置40を制御する。完全に拡張された肺は、図1Cに表される低い肺組織密度に実質的に等しくてもよい比較的低い肺組織密度を有する。低い肺組織密度は、LUL102およびLLL104の濃淡の密度によって図2に示される。そしてそれは、図1CのLUL102およびLLL104の濃淡の密度と同様である。
【0030】
患者100に対するCPAP気流の開始に続いて、コントローラ50は、病変60を狙う放射線のビーム30を発生するためにビーム発生器22を制御する。本発明の実施形態によるCPAP気流の供給が病変60の動きを緩和するので、病変は、病変が従来の放射線学機械(例えば放射線学機械120(図1A図1C))によって治療されるときに病変60(図1C)と関連したITV64よりも小さい境界70によって図式的に示されるITV(「CPAP−ITV」)と関連している。その結果、本発明の実施形態による安定した部位ACCURAD20により提供される放射線ビーム30は、ビーム130の立体角と比べて比較的小さい立体角によって特徴づけられてよい。したがって、図2の平面に図式的に示されるように、病変60を治療するために安定した部位ACCURAD20によって発生する放射線ビーム30は、従来の放射線学機械120によって発生する放射角ビーム130(図1A図1C)の開口角θと比べて比較的小さい開口角φを有する。
【0031】
その比較的小さい立体角の結果、安定した部位ACCURAD20により提供されるACCURAD放射線ビーム30から潜在的に損傷する放射線を浴びる患者100の健康な組織のボリュームは、従来の放射線ビーム130から放射線を浴びる健康な組織のボリュームと比べて、比較的少ない。
【0032】
数値の例として、従来の放射X線機械120は、約100cm(センチメートル)の距離から、X線(図1A〜1C)の放射線ビーム130を用いて病変60を放射線で治療してもよい。病変は、X線ビーム130の伝搬の方向に対して垂直な約10cmに等しい最大寸法によって特徴づけられる決定されたITV64を有してよい。したがって、X線ビームは、約5.7°に等しい(図1A〜1Cの平面における)角度θを有してよい。同じ病変60のために、安定した部位ACCURAD放射線機械20(図2)用に決定されるCPAP−ITV70は、約7cmに等しいACCURADにより提供されるACCURAD放射線ビーム30に対して垂直な最大寸法を有してよい。したがって、図2の平面において、ACCURAD放射線ビーム30は、約4.0°に等しい角度φ(図2)を有してよい。
【0033】
本発明の実施形態において、ACCURAD20と類似の安定した部位ACCURAD装置は、ACCURADによって治療される患者の病変(任意に悪性(腫瘍))の画像を操作可能な医療撮像装置(図示せず)を備える。撮像装置は、病変を撮像するために、さまざまな適切な医学画像方法のいずれかを使用してよい。例えば、医療撮像装置は、MRI(磁気共鳴映像法)、蛍光透視法、CT(コンピュータ断層撮影)、PET(陽電子放射断層撮影)、SPECT(単光子放射形コンピュータ断層撮影)、または超音波スキャナのうちの1つ、または1つ以上の任意の組合せを使用して病変を撮像してよい。患者の肺を拡大して、患者の横隔膜および病変の動きを緩和するCPAP気流を患者に提供するためにコントローラ124がCPAP装置40を制御すると一方で、ACCURADは、病変を撮像するために医療撮像装置を操作してよい。病変を確認して、患者にCPAP気流の供給の間、病変の緩和された動きを決定するために、任意にコントローラ124に含まれるプロセッサは、画像を処理する。プロセッサは、確認された病変および撮像された緩和された動きに応じて、病変を治療するための放射線ビームを構成するために用いるCPAP−ITV(例えば図2に示すCPAP−ITV70)を決定してよい。
【0034】
図3は、安定した部位ACCURAD装置が治療的な放射線を患者の身体の標的部位に送達するために作動してよい簡略処置のフロー図200を示す。
【0035】
ブロック202において、安定した部位ACCURAD20は、CPAP気流を患者に提供する。任意にブロック204において、患者がCPAP気流を経験している間、安定した部位ACCURADは、患者の身体の関心部分(ROI)の画像を取得する。ブロック206において、安定した部位ACCURADにより提供される放射線で治療されるROIの標的部位を確認して、呼吸の間、標的部位の動きを決定するために、画像は処理される。任意にブロック208において、CPAP−ITVは、標的部位のために決定される。そしてブロック210において、標的部位は、CPAP−ITVに応じて安定した部位ACCURADにより提供される放射線によって照射を受ける。
【0036】
上記の説明では、ACCURAD20により提供される放射線ビーム30は、病変60の照射の間、実質的に不変である静的ビームであるとして放射により考えてもよいのに対して、本発明の実施形態の実行は、静的放射線ビームに限られない。例えば、病変が実質的に位置により移動するときにだけ、CPAP−ITV内で同じ位置で病変を放射線で照射するために、ACCURAD放射線ビームは、CPAP−ITV内で病変の動きと同期してシャッターを開閉されてもよい。あるいは、または加えて、ACCURAD放射線ビームは、CPAP−ITV内でその動きの間、病変を追跡するために制御されてもよい。
【0037】
上記の説明は、CPAP気流の提供の間、病変を放射線で照射すること、および、さまざまな画像診断法のいずれかおよびCPAP気流を使用して患者の病変を撮像することを記載する。しかしながら、本発明の実施形態の実行は、病変の放射線療法または医学的撮像に限られない。本発明の実施形態による安定した部位装置は、例えば、標的部位の組織の生検を実行するのを容易にするために、または、高周波またはMRIフォーカスされた標的部位の組織の超音波アブレーションを実行するために、患者の身体の標的部位の組織を安定させるために使用してもよい。安定した部位装置は、例として、心臓の弁交換またはカテーテ治療、あるいは、心臓のまたはそれに繋がる血管のカテーテ治療および/またはステント配備のような医学技法の間、器官を安定させる使用のために適していてもよい。通常、標的部位(例えば心臓または血管)のカテーテル治療は、標的部位を撮像すると共に実行される。上記のように、カテーテル治療の間、CPAPを提供することは、標的部位の動きを減らして、隣接する器官からの標的部位の距離を増やして、および/または、周囲の組織に対する標的部位の対比を増加させることによって、撮像の解像度を改良してもよい。この改良された解像度は、放射線の照射量、および/または、撮像を遂行するために患者が露出されてもよい対比または同位元素の量の減少を可能にしてもよい。
【0038】
したがって、患者の身体の標的部位で処置を実行するための装置が本発明の実施形態において提供される。その装置は、患者の肺にCPAPを提供する持続的気道陽圧法(CPAP)装置、標的部位で処置を実行するための医療器具、および処置の実行の間、患者の肺にCPAPを提供するCPAP装置を制御するコントローラ、を備える。任意には、医療器具は、目標で組織を放射線で照射するための放射線ビームを発生する放射線ビーム発生器を備える。任意には、放射線ビーム発生器は、標的部位を含む患者の身体の内部標的ボリューム(ITV)を照射するように放射線ビームを構成する。ITVは、患者の肺にCPAPを提供する間、医療撮像装置によって取得される標的部位の画像に応じて決定されてもよい。装置は、標的部位の画像を取得する医療撮像装置を備えてもよい。任意にコントローラは、コントローラがITVを決定するために画像を処理するために実行する実行可能な命令セットを備える。
【0039】
本発明の実施形態において、医療器具は、組織を切除するために標的部位の組織にエネルギーを送達する組織アブレータを含む。
【0040】
本発明の実施形態において、医療器具は、標的部位の組織の標本を取得するために作動する生検サンプラを含む。
【0041】
本発明の実施形態において、医療器具は、カテーテルを含む。
【0042】
本発明の実施形態において、医療器具は、ステントを含む。
【0043】
本発明の実施形態において、医療器具は、医療撮像装置を含む。
【0044】
本発明の実施形態において、医療器具は、コントローラによって制御されるロボット装置を含む。
【0045】
本発明の実施形態において、医療器具は、手動で作動される医療器具を備える。
【0046】
患者の身体の標的部位で処置を実行する方法が本発明の実施形態においてさらに提供される。その方法は、患者の肺に持続的気道陽圧法(CPAP)を提供するステップ、および患者の肺にCPAPを提供する間、標的部位で処置を実行するステップ、を含む。
【0047】
任意には、処置は、放射線で標的部位を照射することを含む。任意には、方法は、放射線によって照らされる標的部位のための内部標的ボリューム(ITV)を決定するステップを含む。任意には、ITVを決定するステップは、患者の肺にCPAPを提供する間、標的部位の画像を取得するステップ、および画像に応じてITVを決定するステップを含む。
【0048】
本発明の実施形態において、処置は、標的部位で組織の生検を実行することを含む。本発明の実施形態において、処置は、標的部位で組織を切除することを含む。本発明の実施形態において、処置は、標的部位で組織の画像を取得することを含む。本発明の実施形態において、処置は、標的部位をカテーテル治療することを含む。
【0049】
本発明の実施形態において、処置は、標的部位で組織の生検を実行することを含む。本発明の実施形態において、処置は、標的部位で組織を切除することを含む。本発明の実施形態において、処置は、標的部位で組織の画像を取得することを含む。本発明の実施形態において、処置は、標的部位をカテーテル治療することを含む。
【0050】
本願の説明および請求項において、動詞「備える」、「含む」、「有する」の各々、およびその接合体は、その動詞の目的語がその動詞の主語の構成要素、要素または部分の必ずしも完全なリストではないことを示すために用いる。
【0051】
本願における本発明の実施形態の説明は、例として提供されていて、本発明の範囲を制限することを意図しない。記載された実施形態は、異なる特徴を含み、そのすべては、本発明のすべての実施形態において必要とされるわけではない。いくらかの実施形態は、特徴のいくつかだけまたは特徴の可能な組合せを利用する。記載された本発明の実施形態のバリエーション、および記載された実施形態にみられる特徴の異なる組合せを含む本発明の実施形態は、当業者に思いつく。本発明の範囲は、請求項によってのみ制限される。

図1A
図1B
図1C
図2
図3