特許第6474410号(P6474410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474410電気化学的に不活性なカチオンを含む銅電着浴
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474410
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】電気化学的に不活性なカチオンを含む銅電着浴
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/38 20060101AFI20190218BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C25D3/38 101
   C25D7/12
   H01L21/288 E
   H01L21/88 M
   H01L21/88 B
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-537558(P2016-537558)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公表番号】特表2017-508064(P2017-508064A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2014069324
(87)【国際公開番号】WO2015086180
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年7月12日
(31)【優先権主張番号】61/913,634
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508084928
【氏名又は名称】アヴニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルリジュー, ロリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブロンドー, ポール
(72)【発明者】
【氏名】サー, ドミニク
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0152303(US,A1)
【文献】 特開2013−023693(JP,A)
【文献】 特開2000−273684(JP,A)
【文献】 特表2013−500394(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0284386(US,A1)
【文献】 特表2009−509044(JP,A)
【文献】 特開2013−044035(JP,A)
【文献】 特表2011−528406(JP,A)
【文献】 特開2011−195893(JP,A)
【文献】 特開2012−127003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/00−7/12
H01L 21/28−21/288
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 23/522−23/532
H01L 29/40−29/51
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に銅を電着させるための電解液であって、銅イオンと、セシウム(Cs2+)、アルキルアンモニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される電気化学的に不活性なカチオンと少なくとも2種の芳香族アミンとの組み合わせとを水溶液中に含有し、
上記銅イオンの濃度は0.4mMと40mMとの間であり、上記芳香族アミンの合計濃度は1.6mMと160mMとの間であり、上記カチオンの濃度は0.4mMと100mMとの間であることを特徴とする電解液。
【請求項2】
上記銅イオンは、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅及び酢酸銅からなる群より選択されるに由来することを特徴とする請求項1記載の電解液。
【請求項3】
上記銅イオンの濃度は2mMと6mMとの間であり、上記芳香族アミンの合計濃度は4mMと24mMとの間であり、上記カチオンの濃度は2mMと20mMとの間であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解液。
【請求項4】
上記電気化学的に不活性なカチオンは、硫酸塩の形態で供給される
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項5】
塩素イオンを50ppm未満しか含まないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項6】
界面活性剤を含まないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項7】
上記芳香族アミンは2,2’−ビピリジン及びイミダゾールであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項8】
2,2’−ビピリジンを銅イオンの濃度に対して0.5〜2モル当量含有し、イミダゾールを銅イオンの濃度に対して1〜5モル当量含有することを特徴とする請求項7に記載の電解液。
【請求項9】
上記アルキルアンモニウムは、式(N−R(式中、R、R、R及びRは互いに独立して水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。ただし、R、R、R及びRが同時に水素である場合を除く。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項10】
誘電体基板に形成された凹パターン上に銅を堆積させる電気化学プロセスであって、上記パターンの開口寸法は40nm未満であり、
上記パターンの表面を請求項1〜のいずれか1項に記載の電解液と接触させる工程と、
上記パターンの表面をアノード電位又はカソード電位に分極させて銅を電着させることにより、連続した銅堆積層を形成する工程とを含むことを特徴とする電気化学プロセス。
【請求項11】
上記パターンの表面は、銅拡散バリアを形成する層で被覆されており、上記連続した銅堆積層は、上記パターンの全容積に充填され、上記バリア層と接触することを特徴とする請求項10に記載の電気化学プロセス。
【請求項12】
上記パターンの表面は、銅拡散バリアを形成する層で被覆されており、上記連続した銅堆積層は、上記バリア層と接触するコンフォーマルなシード層であることを特徴とする請求項10に記載の電気化学プロセス。
【請求項13】
上記誘電体基板は、銅拡散バリアを形成する層で被覆されており、該層自体は、厚さが0.5nmと10nmとの間の銅シード層で少なくとも部分的に被覆されており、
上記連続した銅堆積層は、上記シード層と接触し、上記パターンの全容積に充填されることを特徴とする請求項10に記載の電気化学プロセス。
【請求項14】
上記銅拡散バリアを形成する層は、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、炭窒化タングステン(WCN)、マンガン(Mn)及び窒化マンガン(Mn)からなる群より選択される少なくとも1種の材料を含むことを特徴とする請求項1113のいずれか1項に記載の電気化学プロセス。
【請求項15】
上記銅拡散バリアを形成する層は、銅拡散バリアを形成する材料及び銅付着を促進する材料を含む、異なる材料からなる複数の層の積層体を構成することを特徴とする請求項14に記載の電気化学プロセス。
【請求項16】
上記パターンは、フォームファクタが2/1を超える、好ましくは3/1を超えることを特徴とする請求項10に記載の電気化学プロセス。
【請求項17】
上記パターンはトレンチ又は層間接続ビアであることを特徴とする請求項10に記載の電気化学プロセス。
【請求項18】
少なくとも上記パターン内において、1)厚さが0.5nmと3nmとの間の窒化タンタル層、2)厚さが0.5nmと3nmとの間のコバルト層、及び、3)厚さが0.5nmと5nmとの間の銅層で順次被覆された誘電体基板上で行われることを特徴とする請求項10に記載の電気化学プロセス。
【請求項19】
上記誘電体基板は、少なくとも上記パターン内において、1)厚さが0.5nmと3nmとの間の窒化タンタル層、及び、2)厚さが0.5nmと5nmとの間のルテニウム層で順次被覆されていることを特徴とする請求項10に記載の電気化学プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な基板、好ましくは金属基板に銅を電気めっきするのに使用される銅電着浴に関する。また、本発明は、集積回路の相互接続配線を作製するために銅を電着させる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
相互接続配線(interconnects)は、導電性を有する銅の配線網を形成して様々な部品を接続する。相互接続配線の作製では、まず誘電体にトレンチをエッチングし、続いてそのトレンチに銅を充填する。銅の充填は、電気化学的又は非電気化学的な方法で実施できる。
【0003】
集積回路を耐久性良く機能させるためには、銅拡散バリアを形成する層を誘電体と銅配線との間に設ける必要がある。しかしながら、バリア性を有する材料の抵抗率は非常に高いため、トレンチを銅で均一に充填することはできない。したがって、公知の方法によれば、電気化学的に銅を充填する工程の前に、銅シード層と呼ばれる金属銅の薄層でバリア層を被覆して、被覆する基板の導電率を増加させる必要がある。銅シード層の堆積方法としては、本質的に、物理的気相成長法(PVD)及び電気化学堆積法の2種類がある。
【0004】
気相法は方向性のある方法であるため、被覆するトレンチの表面全体に一定の厚さで銅が堆積しない。通常、トレンチの入口に余分な材料が堆積し、銅シード層がトレンチの側壁で途切れてしまうため、充填工程中にトレンチの途中や底部で銅堆積層にボイドが生じる。
【0005】
構造体を銅で充填するのに使用される浴では、均一な薄層をバリア材上に直接堆積させることができなかったため、銅シード層をバリア材上に電着させる技術の開発が必要とされている。
【0006】
また、高記録密度且つ低損失の高性能コンピュータチップなどのデバイスを微細化するためには、トレンチのサイズを小さくする必要があり、トレンチの幅とともにシード層の厚さは薄くなる。例えば、トレンチの幅が20nmである場合、シード層の厚さは5nmを超えてはならない。既存の方法では、このような薄いシード層を連続的に堆積させることはできない。一定の閾値を下回ると、従来技術の電解液では、微細で連続的であると同時にコンフォーマルでもあるシード層を得ることはできない。
【0007】
トレンチのフォームファクタが通常3/1を超えるような高い値である場合、銅の充填に使用される電解液は機能しないことが分かった(なお、フォームファクタとは、基板表面のパターン開口部の幅に対するパターンの深さの比に相当する)。特に、このようなトレンチに堆積させた銅には、充填工程の終わりにボイドが生じる場合があり、それにより抵抗が大きくなり、更には銅の導電配線が破断してしまいさえする傾向があることが確認されている。ボイドは基板と銅堆積層との間又は銅堆積層自体に形成され、通常は、トレンチの両端から等距離にある線状ボイドや、穴である。
【0008】
本出願人は、シード層をバリア層上に形成するための銅電着用組成物に関していくつか特許出願を行っている。
【0009】
特許文献1によれば、コンフォーマルで均一な付着性銅シード層を抵抗性バリア上に堆積できる電着組成物が公知である。この特許文献に記載の組成は、数十Ω/□程度の抵抗率を有する基板上に、厚さが通常は20nm未満の極めて薄い堆積層を形成できるよう設計されている。このような電解液を用いても、トレンチを銅で完全には充填できないことが分かった。このような浴を使用すると、実際に銅堆積層に「ボイド」や線状ボイド(「シーム」)が現れる。
【0010】
また、特許文献2によれば、銅バリア上での1工程だけで相互接続配線用の線や穴(ビアともいう)に銅を充填できる電着組成物が公知である。層間接続ビアを、それより寸法がはるかに大きいシリコン貫通ビア(TSV)と混同してはならない。
【0011】
特許文献2に記載の組成は、相互接続配線用の線や穴を充填するという課題を解決できるよう特別に設計されている。しかしながら、記載された組成物を使用しても、サイズが小さいトレンチを充填できないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2007/034116号
【特許文献2】国際公開第2007/096390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
微細化が進む相互接続構造体を充填するために、i)バリア基板上に微細な銅シード層をコンフォーマルに堆積できる電解液、ii)欠陥なくトレンチを充填できる電解液、及び、iii)シード層をあらかじめ堆積させる必要がなく、シード層をあらかじめ形成しないでトレンチを充填できる電解液が求められている。
【0014】
本発明者らは、芳香族アミンを含有する銅電解液に特定の電気化学的に不活性なカチオンを加えることによって、銅拡散に対するバリアとなる材料の中でもルテニウムやコバルトのような最も抵抗が大きい材料上で銅の核生成を改善できることを見出した。また、本発明者らは、上記カチオンを上記アミンと組み合わせることで、銅の堆積に特異的な抑制効果が得られることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
このように、本発明は、一態様によれば、基板上に銅を電着させるための電解液であって、銅イオンと、上記基板上での金属銅の核生成を促進する促進剤とを水溶液中に含有し、上記銅の核生成促進剤は、セシウム(Cs2+)、アルキルアンモニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される電気化学的に不活性なカチオンと、少なくとも2種の芳香族アミンとの組み合わせであることを特徴とする電解液に関する。
【0016】
上記アルキルアンモニウムは、式(N−R(式中、R、R、R及びRは互いに独立して水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。ただし、R、R、R及びRが同時に水素である場合を除く。)で表される化合物及びそれらの混合物であってもよい。
【0017】
第二の態様によれば、本発明は、銅拡散に対するバリアとなる材料で被覆した誘電体基板に形成された凹パターン上に銅を堆積させる電気化学プロセスであって、上記パターンの開口幅又は直径は40nm未満であり、
・上記トレンチの表面を上述した電解液と接触させる工程と、
・上記バリア層上に連続した銅堆積層を形成するのに充分な時間、上記バリア層の表面をアノード電位又はカソード電位に分極させて上記バリア層上に銅を電着させる工程と
を含むことを特徴とする電気化学プロセスに関する。
【0018】
本発明の電解液を用いると、フォームファクタが高い微細なトレンチ又は微細なビアを材料欠陥なく充填できることが明らかとなった。
【0019】
(定義)
本明細書において「電着」とは、基板の表面を金属又は有機金属の皮膜で被覆できる方法を意味する。この方法では、基板を電気的に分極させ、上記金属又は有機金属の皮膜の前駆物質を含有する液体(電解液と呼ばれる)に接触させて、上記皮膜を形成する。電着は、例えば、皮膜材料の前駆物質(例えば、金属皮膜の場合は金属イオン)源と、形成される皮膜の特性(堆積層の平坦さ及び微細さ、抵抗率等)を改善するための任意の各種薬剤とを含有する浴中で、一電極(金属皮膜の場合はカソード)を構成する被覆対象の基板と、別の電極(アノード)との間に、必要に応じて参照電極の存在下、電流を流すことによって行う。国際的な取り決めによれば、所望の基板、すなわち電気化学回路のカソードに印加される電流及び電圧が負となる。本明細書全体にわたって、上記電流及び電圧が正の値で記載される場合、その値は上記電流又は電圧の絶対値を表しているものである。
【0020】
「電解液」とは、上で定義した電着プロセスにおいて使用される金属皮膜の前駆物質を含有する液体を意味する。
【0021】
「抑制剤」とは、電着プロセスの開始時及びそのプロセス中にバリア層の表面又はバリア層上に堆積した銅の表面に吸着される物質を意味し、被覆される表面を部分的にマスキングして、該表面で起こる反応を減速させる機能を有する。
【0022】
「促進剤」とは、トレンチ底部での銅の成長を加速させる物質を意味する。促進剤は、銅の還元機構を変化させるよう作用し、金属の堆積速度を増加させる効果を示す。
【0023】
「電気化学的に不活性なカチオン」とは、上で定義した電着プロセスにおいて電流が流れる間、還元反応も酸化反応も受けないカチオンを意味する。
【0024】
「銅の核生成促進剤」とは、形成される材料及びその微細構造特性の起点となる最初の種晶(核ともいう)の密度を改善し、そのサイズを縮小することを意味する。
【0025】
ビアやトレンチ等のパターンの「開口寸法」とは、誘電体にあらかじめ形成された凹パターンの平均直径又は平均幅を意味する。これらの寸法は、誘電材料の表面で測定される。
【0026】
「連続した堆積層」とは、パターンが底部から頂部へと(ボトムアップで)最適に充填されたことを表すボイドのない銅の塊、又は、パターン容積を埋め尽くさない薄いコンフォーマルな堆積層を意味する。従来技術においては、パターン壁と銅堆積層との間で銅堆積層に穴や材料ボイドが見られる場合がある(「側壁ボイド」)。また、パターン壁から等距離にある穴状又は線状(「シーム」)のボイドが見られることもある。これらのボイドは電子顕微鏡法で観察し、堆積層の横断面を作成して定量化できる。本発明の連続した堆積層の平均ボイド率は、10体積%未満、好ましくは5体積%以下であることが好ましい。ボイドの数は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定できる。コンフォーマルな堆積層の適合度(conformity)は、80%超、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更には99%超であり得る。適合度は、走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察してシード層の様々な場所の厚さを比較することによって算出できる。ここで選択する場所は全て、表面上ではなくパターン内に存在することが好ましい。例えば、パターン内において堆積層の一番薄い部分の厚さと一番厚い部分の厚さとの差を測定してもよい。
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、基板上に銅を電着させるための電解液であって、銅イオンと、上記基板上での金属銅の核生成を促進する促進剤とを水溶液中に含有し、上記銅の核生成促進剤は、セシウム(Cs2+)、アルキルアンモニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される電気化学的に不活性なカチオンと、少なくとも2種の芳香族アミンとの組み合わせを含む又はその組み合わせからなることを特徴とする電解液に関する。
【0028】
電気めっきする基板は、銅、タンタル、チタン、コバルト及びルテニウムからなる群より選択される金属であることが好ましい。
【0029】
通常、本発明に係る電着組成物は、第二銅イオンCu2+(銅II)源を塩の形態で含む。上記電解液の調製に用いる銅イオン源としては、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅等の銅(II)塩、好ましくは硫酸銅、より好ましくは硫酸銅五水和物であることが有利である。
【0030】
具体的な特徴としては、電着組成物中の銅イオン源の濃度は、0.4mMと40mMとの間、例えば1mMと25mMとの間、より好ましくは2mMと6mMとの間である。
【0031】
本出願において「…と…との間」という表現はカットオフ値を含まず、一方、「…〜…」という表現は記載された下限値及び上限値を含む。
【0032】
上記アルキルアンモニウムとしては、例えば、式(N−R(式中、R、R、R及びRは互いに独立して水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。ただし、R、R、R及びRが同時に水素である場合を除く。)で表される化合物が挙げられる。NHイオンは本発明には含まれない。
【0033】
炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル又はn−ブチルが挙げられる。上記アルキルアンモニウムとしては、テトラアルキルアンモニウム、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム又はテトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム及びエチルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0034】
上記カチオンは、例えば硫酸塩のような塩の形態で供給される。塩におけるカチオンの対イオンは、銅(II)塩の対イオンと同じであることが好ましい。
【0035】
上記2種の芳香族アミンは、ビピリジン、1,2−ジアミノベンゼン、3,5−ジメチルアニリン、ピリジン、8−ヒドロキシキノリンスルホン酸塩、3,5−ジメチルピリジン、2,2’−ビピリミジン、2−メルカプトチアゾリン、2−メチルアミノピリジン及びイミダゾールからなる群より選択できる。上記2種の芳香族アミンは−COOH基を有さないことが有利である。
【0036】
上記芳香族アミンの合計濃度は、1.6mMと160mMとの間、好ましくは4mMと100mMとの間、例えば4mMと24mMとの間であることが好ましい。特定の実施形態において、上記2種の芳香族アミンは2,2’−ビピリジン及びイミダゾールである。
【0037】
上記2種のアミンの一方がビピリジン、好ましくは2,2’−ビピリジンである場合、ビピリジンの濃度は、0.4mMと40mMとの間、好ましくは1mMと25mMとの間、例えば2mMと6mMとの間であることが好ましい。
【0038】
上記ビピリジンは、銅イオンの濃度に対して0.5〜2モル当量であるのが好ましく、0.75〜1.25モル当量であるのがより好ましく、1モル当量程度であるのがより好ましい。
【0039】
上記2種のアミンの一方がイミダゾールである場合、イミダゾールの濃度は、1.2mMと120mMとの間、好ましくは1.5mMと75mMとの間、例えば2mMと18mMとの間であることが好ましい。
【0040】
イミダゾールは、銅イオンの濃度に対して1〜5モル当量であるのが好ましく、1〜4モル当量であるのがより好ましく、約1モル当量であるのがより好ましい。
【0041】
本発明の電解液は、銅の電着の促進剤としてチオジグリコール酸を1mg/lと500mg/lとの間、好ましくは2mg/lと100mg/lとの間の濃度で含有していてもよい。
【0042】
上記電解液は、当業者に公知の銅(II)錯化剤、好ましくはアミンを更に含有していてもよい。上記電解液は、チオジグリコール酸以外のカルボン酸及びピリジンを含有しないものであってもよい。
【0043】
上記電解液は電流を印加して使用される。無電解プロセスでは用いられず、そのため、ジメチルアミンボラン又は次亜リン酸等の銅酸化物の還元剤を含有しない。
【0044】
溶媒は原則として限定されないが(ただし、溶液の活性種を充分に可溶化し、電着を妨げないものとする)、水が好ましい。一実施形態によれば、溶媒は体積基準で主に水を含む。
【0045】
上記2種のアミンと上記電気化学的に不活性なカチオンとの混合物は、銅に特異的な抑制剤として機能し得る。また、本発明の電解液は、ポリエチレングリコール等の高分子抑制剤を含有しないことが有利である。従来技術では、通常、電解液に塩素イオン源を加えて高分子抑制剤と相乗的に作用させる。本発明においては、溶液の効力を確保するために塩素イオンを加える必要はないことが見出された。また、本発明の電解液は、塩素イオンを50ppm未満しか含まない。本発明の電解液は塩素イオンを含まないことが好ましい。
【0046】
従来技術では、通常、銅で被覆するバリア材表面の濡れ性を改善するために界面活性剤が必要である。本発明によれば、界面活性剤を電解液に配合する必要はない。
【0047】
上記電解液は、従来公知のレベリング剤及び/又は光沢剤、例えばポリピリジンを含有していてもよい。
【0048】
上記電解液のpHは、6.7よりも大きくなるよう選択するのが好ましい。これは、空洞を充填するのに使用される従来の電解液では、通常、Hイオンの存在によって溶液の導電性を充分に確保し、結果的に充分な反応速度を得るためにpHが非常に低いことから、一層驚くべきことである。本発明の電解液のpHは、6.7を超えることが好ましく、6.8を超えることがより好ましく、8と13との間、例えば8と10との間であることがより好ましく、9から9.5程度であることが更により好ましい。
【0049】
上記組成物のpHは、芳香族アミンを銅IIイオン及び電気化学的に不活性なカチオンと混合した後、当業者に公知の塩基又は酸を用いて適宜調整できる。
【0050】
一度調整した組成物のpHは、「Handbook of Chemistry and Physics−84th edition」(David R.Lide,CRC Press)に記載の緩衝剤等を用いて上記pH範囲に適宜安定化できる。例えば、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩が挙げられる。
【0051】
本発明の電解液は、脂肪族アミンや有機酸等の銅錯化剤を含有しないことが好ましい。上記銅錯化剤としては、例えばEDTA、クエン酸、ポリカルボン酸、脂肪族アミン(エチレンジアミン等)及びグリオキシル酸が挙げられる。本発明の電解液は、チオジグリコール酸以外のポリカルボン酸を含有しないことが好ましい。
【0052】
具体的な実施形態によれば、上記銅イオンの濃度は0.4mMと40mMとの間であり、ビピリジンの濃度は0.4mMと40mMとの間であり、イミダゾールの濃度は1.2mMと120mMとの間であり、電気化学的に不活性なカチオンの濃度は0.4mMと100mMとの間である。例えば、銅イオンの濃度は2mMと6mMとの間であり、上記芳香族アミンの合計濃度は4mMと24mMとの間であり、上記カチオンの濃度は2mMと20mMとの間である。
【0053】
本発明はまた、誘電体基板に形成された凹パターンの表面に銅を堆積させる電気化学プロセスであって、上記パターンの開口寸法は40nm未満であり、
・上記パターンの表面を上述した電解液と接触させる工程と、
・上記パターンの表面をアノード電位又はカソード電位に分極させて銅を電着させることにより、連続した銅堆積層を形成する工程と
を含むことを特徴とする電気化学プロセスに関する。
【0054】
本発明の第一の態様に関して記載した全ての特徴が電着プロセスに適用される。
【0055】
本発明の方法において、上記誘電体基板は銅拡散バリアを形成する層で被覆してもよく、必要に応じて銅シード層で被覆してもよい。これらの層はどちらも当業者に公知の方法で堆積される。
【0056】
上記基板が銅拡散バリアを形成する層で被覆されている場合、本発明の方法は、1)上記バリア層上に銅シード層を堆積させる工程、又は、2)上記トレンチを上記銅堆積層で完全に充填する工程を含んでもよい。
【0057】
上記基板が銅拡散バリアを形成する層及び銅シード層で順次被覆されている場合、本発明の方法は、上記トレンチを上記銅堆積層で完全に充填する工程からなっていてもよい。
【0058】
第一の実施形態において、本発明の方法は、パターンの表面に銅シード層を堆積させる方法である。本方法によれば、上記誘電体基板は銅拡散バリアを形成する層で被覆されており、上記連続した銅堆積層は、上記バリア材と接触して少なくとも部分的に被覆する厚さ10nm未満のコンフォーマルなシード層である。
【0059】
第二の実施形態において、本発明の方法は、パターンを充填する方法である。本方法によれば、
・上記誘電体基板は、銅拡散バリアを形成する層で被覆されており、該層自体は銅シード層で少なくとも部分的に被覆されており、
・上記連続した銅堆積層は、上記シード層と接触し、上記パターンの全容積に充填される。
【0060】
第三の実施形態において、本発明の方法は、パターンを充填する方法である。本方法によれば、
・上記誘電体基板は、銅拡散バリアを形成する層で被覆されており、
・上記連続した銅堆積層は、上記バリア層と接触し、上記パターンの全容積に充填される。
【0061】
これらの実施形態において、堆積したシード層は、パターン内で測定した厚さが0.5nmと10nmとの間、例えば2nmと5nmとの間であることが好ましい。
【0062】
本発明の方法によれば、開口寸法の小さいパターン、特に幅が非常に小さいトレンチに銅を堆積できる。このように、パターンの開口寸法は、40nm、35nm、30nm及び25nmからなる群より選択される上限値より小さくてもよい。上記パターンの開口寸法は、5nm以上であることが好ましい。
【0063】
パターンの深さ/開口寸法の比で表されるフォームファクタは、2:1〜20:1の範囲、例えば3:1〜10:1の範囲で変動してもよい。本発明に係る方法は、例えば2:1を超える、3:1を超える、4:1を超える、5:1を超える、6:1を超える又は更には7:1を超える及びそれ以上のフォームファクタなど、特に高いフォームファクタを有する空洞に銅を均一に堆積でき、有利である。
【0064】
上記銅拡散バリアを形成する層は、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、炭窒化タングステン(WCN)、マンガン(Mn)及び窒化マンガン(Mn)から選択される少なくとも1種の材料を含んでいてもよい。上記バリア層の厚さは、通常、0.5nmと10nmとの間である。
【0065】
上記銅拡散バリアを形成する層は、銅拡散バリアを形成する材料層及び銅付着を促進する材料層(ライナー)を含む、異なる材料からなる複数の層の積層体を構成していてもよい。第一の実施形態例によれば、使用される誘電体基板は、少なくとも上記パターン内において、1)厚さが0.5nmと3nmとの間の窒化タンタル層、2)厚さが0.5nmと3nmとの間のコバルト層、及び、3)厚さが0.5nmと5nmとの間の銅層で順次被覆されている。
【0066】
第二の実施形態例によれば、使用される誘電体基板は、少なくとも上記パターン内において、1)厚さが0.5nmと3nmとの間の窒化タンタル層、及び、2)厚さが0.5nmと5nmとの間のルテニウム層で順次被覆されている。
【0067】
堆積工程中、充填される空洞の表面は、定電流モード(印加電流を固定)、定電圧モード(必要に応じて参照電極に対して、印加電位を固定)又は(電流若しくは電圧)パルスモードのいずれかで分極させてもよい。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、パターンの空洞表面の分極は、連続モードを用いて単位面積当たり0.1mA/cm〜50mA/cm、好ましくは0.5mA/cm〜5mA/cm、好ましくは0.5〜1.5mA/cmの範囲で電流を印加することによって行う。
【0069】
本発明の他の一実施形態によれば、パターンの空洞表面の分極は、中周波数又は高周波数の電流パルスモード又は電圧パルスモードで行う。
【0070】
上記表面の分極は、例えば、電流パルスモードを用いて分極期間と分極させない休止期間とを交互に繰り返すことによって行ってもよい。分極期間の周波数は、0.1kHzと50kHzとの間(すなわち、分極時間は0.02ミリ秒と10ミリ秒との間)、好ましくは1kHzと20kHzとの間、例えば5kHzと15kHzとの間であってもよく、一方、休止期間の周波数は、0.1kHzと50kHzとの間、好ましくは1kHzと10kHzとの間、例えば5kHzであってもよい。最大強度が0.01mA/cmと10mA/cmとの間、例えば約0.4から5mA/cmの電流を印加して表面を分極させてもよい。
【0071】
40nm未満のパターンの充填時間は、パターンのサイズにもよるが、10秒と10分との間であることが有利であり、15秒と5分との間であることが好ましい。一実施形態において、開口寸法が40nm未満、深さが50nmを超えるトレンチを完全に充填するためには、電着工程の時間は2分未満である。
【0072】
本発明に係る電解液は、「通電投入(hot entry)」工程を最初に行う手順に従って使用できるが、被覆する表面を電気分極させずに電着浴と接触させ、この状態で所望の時間保持する「非通電投入(cold entry)」工程を最初に行う手順に従って使用することもでき、特に有利である。このように、具体的な一特徴によれば、本発明に係る方法は、電着前に、充填する空洞の表面を電気分極させずに本発明に係る電着組成物と接触させ、必要に応じてこの状態で少なくとも30秒間保持する「非通電投入」工程を含む。
【0073】
本発明に係る電着プロセスは、20℃と30℃との間の温度、すなわち室温で行ってもよい。そのため、電着浴を加熱する必要がない。
【0074】
本発明に係る方法によって、材料欠陥なく優れた品質で銅を充填できた。
【0075】
本方法は、バリア層の表面が少なくとも部分的に銅シード層で被覆された空洞を充填するのに使用できる。
【0076】
本発明に係る方法は、銅拡散バリアを形成する材料を少なくとも1種含み、且つ、銅シード層で被覆されていない表面を有する空洞を充填するのに使用することもでき、有利である。
【0077】
最後に、本発明は、以上の方法によって得られる半導体デバイスに関する。
【0078】
以下の図面及び実施例によって本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】本発明の電着溶液を用いて幅25nm、深さ75nmのトレンチに銅を充填したものを示す。
図2】電気化学的に不活性なカチオンを含まない電解液を用いて幅25nm、深さ75nmのトレンチに銅を充填したものを示す。トレンチには線状ボイド及び穴状ボイドが見られる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0080】
(比較例1)本発明のカチオンを含まない電解液
2,2’−ビピリジン及びイミダゾールを含有するが、電気化学的に不活性なカチオンを含まない組成物を用いて、幅25nm、深さ75nmのトレンチのルテニウムバリア層上に銅を直接充填した。
【0081】
(A)材料及び機器
(基板)
本例で使用した基板は、長さ4cm、幅4cmのシリコン片で構成されたものであり、幅25nm、深さ75nmのトレンチを有する構造化された酸化ケイ素層で被覆されており、該酸化ケイ素層自体は、原子層堆積によって堆積させた厚さ4nm未満のルテニウム(Ru)層で被覆されていた。上記ルテニウム層の抵抗率は250Ω/□であった。
【0082】
このルテニウム層は、集積回路に銅相互接続配線を作製する際にいわゆる「ダマシン」構造で使用されるような銅拡散バリアを構成する。上記トレンチは「ダブルパターニング」と呼ばれる方法で作製される。
【0083】
(電着溶液)
本溶液において、2,2’−ビピリジンの濃度は4.55mM、イミダゾールの濃度は4.55mMであった。CuSO(HO)の濃度は1.3g/lであったが、これは4.55mMに相当する。チオジグリコール酸の濃度は5〜200ppmの範囲で変動し、例えば25ppmであった。本溶液のpHは6.8であった。
【0084】
(機器)
本例では、系の流体力学的特性を制御するための流体再循環システムを備える電着溶液を収容するためのセル、及び、使用した試料片のサイズ(4cm×4cm)に適した試料ホルダーを備える回転電極という2つの部材で構成された電解析出装置を使用した。電解析出セルは以下の2つの電極を備えていた。
・銅アノード
・カソードを構成するルテニウム層で被覆された構造化シリコン片
【0085】
20V又は2Aまで供給可能なポテンシオスタットに電気リード線で接続された電極同士をコネクタによって電気的に接続した。
【0086】
(B)実験プロトコル
電流パルスモードを用いて、パルス周波数をカソード分極では1kHzと10kHzとの間、2つのカソードパルス間のゼロ分極では0.5kHzと5kHzとの間とし、3mA(すなわち0.33mA/cm)〜15mA(すなわち1.67mA/cm)の電流範囲、例えば11.4mA(すなわち1.27mA/cm)でカソードを分極させた。
【0087】
電着工程の時間は、幅25nm、深さ75nmのトレンチを完全に充填するためには14分49秒であった。
【0088】
(C)結果
トレンチ壁には穴(側壁ボイド)が見られたため、横断面を作成してTEMで定量化したところ、40%(トレンチの40%が側壁ボイドを有する)であった。
【0089】
また、充填物には穴又は筋状の穴が見られたため、トレンチ底部から上方への銅成長が不充分であり、ボトムアップ効果が得られないことが明らかとなった(図2参照)。
【0090】
(実施例2)
2,2’−ビピリジン、イミダゾール及び硫酸セシウムを主体とした本発明に係る組成物を用いて、幅25nm、深さ75nmのトレンチのルテニウムバリア層上に銅を直接充填した。
【0091】
(A)材料及び機器
(基板)
本例では、例1と同じ基板を使用した。
【0092】
(電着溶液)
本溶液において、2,2’−ビピリジンの濃度は2.28mM、イミダゾールの濃度は2.28mMであった。CuSO(HO)の濃度は0.65g/lであったが、これは2.28mMに相当する。チオジグリコール酸の濃度は5〜200ppmの範囲で変動し、例えば10ppmであった。硫酸セシウムの濃度は1g/l〜5g/lの範囲で変動し、例えば3g/l(8.29mM)であった。本溶液のpHは6.8であった。
【0093】
(機器)
本例では、例1と同じ機器を使用した。
【0094】
(B)実験プロトコル
電流パルスモードを用いて、パルス周波数をカソードパルスでは10kHz、2つのカソードパルス間の休止期間では5kHzとし、5mA(すなわち0.63mA/cm)〜15mA(すなわち1.88mA/cm)の電流範囲、例えば7.5mA(すなわち0.94mA/cm)でカソードを分極させた。
【0095】
電着工程の時間は、幅25nm、深さ75nmのトレンチを完全に充填するためには1分であった。
【0096】
(C)結果
充填されたトレンチの壁に穴(側壁ボイド)がないため、硫酸セシウムの存在下でバリア層上での銅の核生成が良好になることが表されている(図1参照)。
【0097】
(実施例3)
2,2’−ビピリジン、イミダゾール及び硫酸テトラメチルアンモニウムを主体とした本発明に係る組成物を用いて、幅25nm、深さ75nmのトレンチのルテニウムバリア層上に銅を直接充填した。
【0098】
(A)材料及び機器
(基板)
本例では、例1と同じ基板を使用した。
【0099】
(電着溶液)
本溶液において、2,2’−ビピリジンの濃度は4.55mM、イミダゾールの濃度は4.55mMであった。CuSO(HO)の濃度は1.3g/lであったが、これは4.55mMに相当する。チオジグリコール酸の濃度は5〜200ppmの範囲で変動し、例えば10ppmであった。硫酸テトラメチルアンモニウムの濃度は1g/l〜5g/lの範囲で変動し、例えば3.45g/l(14mM)であった。本溶液のpHは6.7と7.2との間であった。
【0100】
(機器)
本例では、例1と同じ機器を使用した。
【0101】
(B)実験プロトコル
電流パルスモードを用いて、パルス周波数をカソードパルスでは10kHz、2つのカソードパルス間の休止期間では5kHzとし、5mA(すなわち0.63mA/cm)〜15mA(すなわち1.88mA/cm)の電流範囲、例えば7.5mA(すなわち0.94mA/cm)でカソードを分極させた。
【0102】
この工程の時間は、トレンチを完全に充填するためには、通常、15秒と2分との間であった。
【0103】
本例において、電着工程の時間は、幅25nm、深さ75nmのトレンチを完全に充填するためには1分であった。
【0104】
(C)結果
トレンチ壁に穴(側壁ボイド)がないため、硫酸テトラメチルアンモニウムの存在下でバリア層上での銅の核生成が良好になることが表されている。
【0105】
(比較例4)本発明のカチオン以外のカチオンを含む電解液
2,2’−ビピリジン、イミダゾール及び硫酸カリウムを含有する組成物を用いて、幅25nm、深さ75nmのトレンチのルテニウムバリア層上に銅を直接充填した。
【0106】
(A)材料及び機器
(基板)
本例では、例1と同じ基板を使用した。
【0107】
(電着溶液)
本溶液において、2,2’−ビピリジンの濃度は4.55mM、イミダゾールの濃度は4.55mMであった。CuSO(HO)の濃度は1.3g/lであったが、これは4.55mMに相当する。チオジグリコール酸の濃度は5〜200ppmの範囲で変動し、例えば10ppmであった。硫酸カリウムの濃度は1g/l〜5g/lの範囲で変動し、例えば1.27g/l(7.22mM)であった。本溶液のpHは6.7と7.2との間であった。
【0108】
(機器)
本例では、例1と同じ機器を使用した。
【0109】
(B)実験プロトコル
電流パルスモードを用いて、パルス周波数をカソードパルスでは10kHz、2つのカソードパルス間の休止期間では5kHzとし、5mA(すなわち0.63mA/cm)〜15mA(すなわち1.88mA/cm)の電流範囲、例えば7.5mA(すなわち0.94mA/cm)でカソードを分極させた。
【0110】
電着工程の時間は、幅25nm、深さ75nmのトレンチを完全に充填するためには1分であった。
【0111】
(C)結果
トレンチ壁には穴(側壁ボイド)が見られた。
【0112】
また、充填物には穴又は筋状の穴が見られるため、トレンチ底部から上方への銅成長が不充分であること(ボトムアップ効果なし)が明らかである。
【0113】
(比較例5)本発明のカチオン以外のカチオンを含む電解液
2,2’−ビピリジン、イミダゾール及び硫酸アンモニウムを含有する組成物を用いて、幅25nm、深さ75nmのトレンチのルテニウムバリア層上に銅を直接充填した。
【0114】
(A)材料及び機器
(基板)
本例では、例1と同じ基板を使用した。
【0115】
(電着溶液)
本例で使用した電着溶液は、CuSO(HO)、2,2’−ビピリジン、イミダゾール、チオジグリコール酸及び硫酸アンモニウムを含有する水溶液であった。
【0116】
本溶液において、2,2’−ビピリジンの濃度は4.55mM、イミダゾールの濃度は4.55mMであった。CuSO(HO)の濃度は1.3g/lであったが、これは4.55mMに相当する。チオジグリコール酸の濃度は5〜200ppmの範囲で変動し、例えば10ppmであった。硫酸アンモニウムの濃度は0.5g/l〜5g/lの範囲で変動し、例えば0.99g/l(6.9mM)であった。本溶液のpHは6.7と7.2との間であった。
【0117】
(機器)
本例では、例1と同じ機器を使用した。
【0118】
(B)実験プロトコル
電流パルスモードを用いて、パルス周波数をカソードパルスでは10kHz、2つのカソードパルス間の休止期間では5kHzとし、5mA(すなわち0.63mA/cm)〜15mA(すなわち1.88mA/cm)の電流範囲、例えば7.5mA(すなわち0.94mA/cm)でカソードを分極させた。
【0119】
この工程の時間は、トレンチを完全に充填するためには、通常、15秒と2分との間であった。
【0120】
本例において、電着工程の時間は、幅25nm、深さ75nmのトレンチを完全に充填するためには1分であった。
【0121】
(C)結果
トレンチ壁には穴(側壁ボイド)が見られた。
【0122】
また、充填物には穴又は筋状の穴が見られるため、トレンチ底部から上方への銅成長が不充分であること(ボトムアップ効果なし)が明らかである。
【0123】
(実施例6)
幅25nm、深さ75nmのトレンチ内で、ルテニウムで仕上げたバリアを構成する積層体上に銅シード層を直接堆積させた。本発明に係る電解液組成物は、2,2’−ビピリジン、イミダゾール及び硫酸セシウムを主体としたものであった。
【0124】
(A)材料及び機器
(基板)
本例では、例1と同じ基板を使用した。
【0125】
(電着溶液)
本溶液において、2,2’−ビピリジンの濃度は2.28mM、イミダゾールの濃度は2.28mMであった。CuSO(HO)の濃度は0.65g/lであったが、これは2.28mMに相当する。硫酸セシウムの濃度は1g/l〜5g/lの範囲で変動し、例えば3g/l(8.29mM)であった。本溶液のpHは6.8であった。
【0126】
(機器)
本例では、例1と同じ機器を使用した。
【0127】
(B)実験プロトコル
電流パルスモードを用いて、パルス周波数をカソードパルスでは10kHz、2つのカソードパルス間の休止期間では5kHzとし、5mA(すなわち0.63mA/cm)〜15mA(すなわち1.88mA/cm)の電流範囲、例えば7.5mA(すなわち0.94mA/cm)でカソードを分極させた。
【0128】
電着工程の時間は、幅25nm、深さ75nmのトレンチに5nmの銅シード層を形成するためには15秒であった。
【0129】
(C)結果
堆積した銅シード層は連続したコンフォーマルな層(パターン内とパターン外で厚さが同じ)である。
図1
図2