特許第6474417号(P6474417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6474417-軟質及び透明衝撃コポリマー 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474417
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】軟質及び透明衝撃コポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20190218BHJP
   C08F 4/65 20060101ALI20190218BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20190218BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20190218BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C08L23/16
   C08F4/65
   C08F2/00 Z
   C08F210/16
   C08J5/18CES
【請求項の数】17
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-547562(P2016-547562)
(86)(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公表番号】特表2017-508035(P2017-508035A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2015052178
(87)【国際公開番号】WO2015117948
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】14154116.9
(32)【優先日】2014年2月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】シュトフ パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】リリヤ ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー マルクス
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02546298(EP,A1)
【文献】 国際公開第2013/092620(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/092615(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/16
C08F 2/00
C08F 4/65
C08F 210/16
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)であって、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリックス(M)と前記マトリックス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを含み、
前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、
a)ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)が2.0から10.0g/10minの範囲であり、
b)ISO16152に従って測定されるキシレン低温可溶分(XCS)(25℃)が16.0から35.0重量%の範囲であり、
c)コモノマー含有量が8.5から21.0モル%の範囲であり、
前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、内部供与体(ID)としてシトラコン酸エステルを含むチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の存在下で製造され、フタル酸エステル及びそのそれぞれの分解生成物を含まず、そして少なくとも2つのガラス転移温度Tg(1)及びTg(2)を有し、前記第1のガラス転移温度Tg(1)は前記マトリックス(M)に関し、前記第2のガラス転移温度Tg(2)は前記分散した弾性プロピレンコポリマー(E)に関し、
(a)前記第1のガラス転移温度Tg(1)が−12から+2℃の範囲であり、
及び
(b)前記第2のガラス転移温度Tg(2)が−70℃超から−20℃未満の範囲であり、
さらに、前記第2のガラス転移温度Tg(2)は不等式(I)を満たし、
Tg(2)>21.0−2.0×C(XCS) (I)
式中、
Tg(2)は、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の第2のガラス転移温度であり、
C(XCS)は、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量[モル%]である、
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)。
【請求項2】
前記キシレン低温可溶分(XCS)は、
i)コモノマー含有量が33.0から45.0モル%の範囲であり、及び/又は
ii)(デカリン中135℃で)DIN ISO1628/1に従って測定される固有粘度(IV)が1.0から1.8dl/gの範囲である、
請求項1に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)。
【請求項3】
前記ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、
i)ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)が3.0から8.0g/10minの範囲であり、及び/又は
ii)コモノマー含有量が4.4から7.3モル%の範囲である、
請求項1又は2に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)。
【請求項4】
前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)は、孤立/ブロックエチレン配列の相対含有量(I(E))が50.0から65.0%の範囲であり、前記I(E)含有量が式(II)によって定義され、
【数1】
式中、
I(E)は、孤立/ブロックエチレン配列の相対含有量[%]であり、
fPEPは、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)中のプロピレン/エチレン/プロピレン配列(PEP)のモル分率であり、
fPEEは、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)中のプロピレン/エチレン/エチレン配列(PEE)及びエチレン/エチレン/プロピレン配列(EEP)のモル分率であり、
fEEEは、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)中のエチレン/エチレン/エチレン配列(EEE)のモル分率であり、
すべての配列濃度が13C−NMRデータの統計学的三連構造分析に基づく、
請求項1からのいずれか一項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)。
【請求項5】
前記ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー及び/又は前記弾性プロピレンコポリマー(E)のコモノマーが、エチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンである、請求項1からのいずれか一項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)。
【請求項6】
前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の総重量に基づいて65.0から88.0重量%の前記ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)と、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の総重量に基づいて12.0から35.0重量%の前記弾性プロピレンコポリマー(E)とを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)。
【請求項7】
前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が核剤を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)。
【請求項8】
前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)がフタル酸化合物及びそのそれぞれの分解生成物を含まない、請求項1からのいずれか一項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)。
【請求項9】
前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が、
a)IUPACの4から6族の遷移金属の化合物(TC)と、2族金属化合物(MC)と、内部供与体(ID)とを含み、前記内部供与体(ID)は、シトラコン酸エステルである、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)、
b)任意に共触媒(Co)、及び
c)任意に外部供与体(ED)
の存在下で重合させる工程を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の製造方法。
【請求項10】
触媒(Co)と外部供与体(ED)のモル比[Co/ED]が5から45である、
請求項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の製造方法。
【請求項11】
ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリックス(M)と前記マトリックス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを含む前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が、連結された少なくとも2個の反応器を含む多段階プロセスを経て製造する、請求項9又は10に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の製造方法。
【請求項12】
(a)第1の反応器において、プロピレン及びエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンを重合させて、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)を得る工程と、
(b)前記第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)を第2の反応器に移送する工程と、
(c)前記第2の反応器において前記第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の存在下でプロピレン及びエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンを重合させて、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)を得る工程により、前記第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び前記第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)が前記マトリックス(R−PP)を形成し、
(d)前記マトリックス(M)を第3の反応器に移送する工程と、
(e)前記第3の反応器において前記マトリックス(M)の存在下でプロピレン及びエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンを重合させて、弾性プロピレンコポリマー(E)が得る工程とを含み、前記マトリックス(M)及び前記弾性プロピレンコポリマー(E)が前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を形成する、
請求項11に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の製造方法。
【請求項13】
前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、
a)ISO178に従って測定される曲げ弾性率が480から800MPaの範囲であり、及び/又は
b)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した透明度が少なくとも75.0%であり、及び/又は
c)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した曇価が≦50.0%であり、及び/又は
d)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した鮮明性が少なくとも90.0%である、
請求項1からのいずれか一項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)。
【請求項14】
請求項1からのいずれか一項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を含む未配向フィルム。
【請求項15】
前記フィルムが、キャストフィルム又はインフレーションフィルムである、請求項14に記載の未配向フィルム。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の未配向フィルムを含む容器。
【請求項17】
未配向フィルムの柔軟性と曇価とのバランスを改善するための請求項1からのいずれか一項に記載の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の使用であって、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の
a)ISO178に従って測定される曲げ弾性率が、480から800MPaの範囲であり、
b)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した曇価が、≦50.0%である
ときに前記改善がなされる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい異相(heterophasic)プロピレンコポリマー(RAHECO)、及び異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を含む未配向フィルム、並びに未配向フィルムを含む容器を対象とする。本発明は、さらに、未配向フィルムの柔軟性と曇価のバランスを改善するための異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の使用も対象とする。
【背景技術】
【0002】
食品包装業界では、プラスチック容器、特に滅菌又は調理済み食品を含むパウチをますます使用する傾向にある。レトルトパウチは、硬質金属包装よりも調理/滅菌時間が速く、貯蔵空間が小さく、廃棄が容易であり、食味が改善されるなどの多数の利点をもたらす。典型的なパウチは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、接着剤、バリア及び外層を含む多層構造を有する。ポリオレフィン材料は、剛性及び高い衝撃強さを最終包装材料に付与することが望ましい。
【0003】
同じ傾向、すなわちポリオレフィン材料の使用の増加は、医用包装業界でも見られる。やはり、ポリマーは、十分な剛性及び高い衝撃強さを最終包装材料に付与すべきである。医学用途の場合、剛性よりも柔軟性が重要な要件である。言うまでもなく、これらの医用製品は、滅菌可能でもなければならない。
【0004】
ポリプロピレンの衝撃強さは、ゴム相をポリマーマトリックス中に分散させ、それによって異相ポリプロピレン組成物を得ることによって改善できることが知られている。特に、マトリックス中に分散されたゴムの量が十分多い場合、例えば、自立パウチにおいて一般に少なくとも10.0重量%、更には少なくとも15.0重量%の場合、異相プロピレンポリマー(衝撃改善プロピレンポリマー)は高い衝撃強さをもたらす。
【0005】
しかし、食品及び医用包装の分野では、良好な機械的性質と合わせて良好な光学的性質を有する軟質材料が必要である。
【0006】
さらに、レトルトパウチなどの一部の食品包装用途又は一部の医用包装用途では、滅菌処理が必要である。最も一般的な滅菌手順は、熱(蒸気)、放射線(ベータ線、電子又はガンマ線)又は化学物質(通常、エチレンオキシド)の使用である。蒸気滅菌は、通常、約120から130℃の温度範囲で実施される。言うまでもなく、上で概説した滅菌条件下のポリマーの処理は、その最終性質、特に透明度などの光学的性質を損なう可能性がある。
【0007】
しかし、標準の異相系は、滅菌後のその諸性質をかなり変化させることが判明した。一般に、曇価などの光学的性質、及び柔軟性などの機械的性質は、望ましくないほどに損なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上で概説した欠点を考慮すると、本発明の一目的は、機械的性質と光学的性質のバランスが最適化又は改善された軟質異相プロピレンコポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の知見は、異相プロピレンコポリマーであって、異相プロピレンコポリマーのマトリックス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)が特定のガラス転移温度を有する、異相プロピレンコポリマーを提供することである。さらに、本発明の知見は、異相プロピレンコポリマーが、フタル酸エステルのクラスに属さない内部供与体(ID:internal donor)を含むチーグラー・ナッタ触媒の存在下で製造されなければならないことである。かかるガラス転移温度及び触媒を用いて、柔軟性、曇価、耐蒸気滅菌性などの機械的性質と光学的性質のバランスが最適化又は改善された異相プロピレンコポリマーを製造することができる。
【0010】
したがって、本発明は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を対象とし、前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリックス(M)と前記マトリックス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを含み、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、
a)ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)が2.0から10.0g/10minの範囲であり、
b)ISO16152に従って測定されるキシレン低温可溶分(XCS:xylene cold soluble content)(25℃)が16.0から50.0重量%の範囲、好ましくは16.0から35.0重量%の範囲であり、
c)コモノマー含有量が8.5から21.0モル%の範囲であり、
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、少なくとも2つのガラス転移温度Tg(1)及びTg(2)を有し、第1のガラス転移温度Tg(1)はマトリックス(M)に関し、第2のガラス転移温度Tg(2)は分散弾性プロピレンコポリマー(E)に関し、さらに、第2のガラス転移温度Tg(2)は不等式(I)を満たし、
Tg(2)>21.0−2.0×C(XCS) (I)
式中、
Tg(2)は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の第2のガラス転移温度であり、
C(XCS)は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量[モル%]である。
【0011】
好ましくは、第1のガラス転移温度Tg(1)は、第2のガラス転移温度Tg(2)よりも高い。更により好ましくは、第1のガラス転移温度Tg(1)と第2のガラス転移温度Tg(2)の差は、少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも45℃である。
【0012】
好ましくは、第2のガラス転移温度Tg(2)は、−35℃未満のような−20℃未満であり、本発明において定義される不等式(I)を満たす。通常、前記ガラス転移温度Tg(2)は−70℃を超える。第1のガラス転移温度Tg(1)は、好ましくは、−12から+2℃の範囲である。
【0013】
驚くべきことに、かかる異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、機械的性質と光学的性質、特に柔軟性、曇価及び耐蒸気滅菌性のバランスが最適化又は改善されることが見いだされた。
【0014】
本発明の一実施形態においては、キシレン低温可溶性画分(XCS:xylene cold soluble fraction)は、
i)コモノマー含有量が33.0から45.0モル%の範囲であり、及び/又は
ii)(デカリン中135℃で)DIN ISO1628/1に従って測定される固有粘度(IV:intrinsic viscosity)が1.0から1.8dl/gの範囲である。
【0015】
本発明の別の一実施形態においては、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、
i)ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)が3.0から8.0g/10minの範囲であり、及び/又は
ii)コモノマー含有量が4.4から7.3モル%の範囲である。
【0016】
本発明の更に別の一実施形態においては、キシレン低温不溶性画分(XCI:xylene cold insoluble fraction)は、孤立/ブロックエチレン配列(isolated to block ethylene sequence)の相対含有量(I(E))が、50.0から65.0%の範囲である。ここで、I(E)含有量は式(II)によって定義される。
【0017】
【数1】
【0018】
式中、
I(E)は、孤立/ブロックエチレン配列の相対含有量[%]であり、
fPEPは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)中のプロピレン/エチレン/プロピレン配列(PEP:propylene/ethylene/propylene)のモル分率であり、
fPEEは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)中のプロピレン/エチレン/エチレン配列(PEE:propylene/ethylene/ethylene)及びエチレン/エチレン/プロピレン配列(EEP:ethylene/ethylene/propylene)のモル分率であり、
fEEEは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)中のエチレン/エチレン/エチレン配列(EEE:ethylene/ethylene/ethylene)のモル分率であり、
すべての配列濃度が13C−NMRデータの統計学的三連構造分析に基づく。
【0019】
本発明の更に別の一実施形態においては、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー及び/又は弾性プロピレンコポリマー(E)のコモノマーは、エチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンである。
【0020】
本発明の一実施形態においては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の総重量に基づいて、60.0から87.0重量%のような60から95重量%のランダムプロピレンコポリマー(R−PP)と、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の総重量に基づいて、13.0から40.0重量%のような5から40重量%の弾性プロピレンコポリマー(E)を含む。
【0021】
本発明の別の一実施形態においては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、核剤、好ましくはα核剤を含む。
【0022】
本発明の更に別の一実施形態においては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、フタル酸エステル及びそのそれぞれの分解生成物を含まず、好ましくは異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、フタル酸化合物及びそのそれぞれの分解生成物を含まない。
【0023】
本発明の一実施形態においては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、
a)IUPACの4から6族の遷移金属の化合物(TC)と、2族金属化合物(MC:metal compound)と、内部供与体(ID)とを含むチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C:Ziegler−Natta catalyst)、ここで、前記内部供与体(ID)は、非フタル酸化合物、好ましくは非フタル酸エステルである、
b)任意に共触媒(Co)、及び
c)任意に外部供与体(ED:external donor)
の存在下で重合されている。
【0024】
a)内部供与体(ID)が、任意に置換されたマロン酸エステル、マレイン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸エステル、安息香酸エステル並びにそれらの誘導体及び/又は混合物から選択され、好ましくは内部供与体(ID)がシトラコン酸エステルであり、
及び/又は
b)共触媒(Co)と外部供与体(ED)のモル比[Co/ED]が5から45である
ことが好ましい。
【0025】
本発明の更に別の一実施形態においては、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリックス(M)と前記マトリックス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを含む異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、連結された少なくとも2個の反応器を含む多段階プロセスにおいて製造される。
【0026】
(a)第1の反応器において、プロピレン及びエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンが重合されて、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)が得られ、
(b)前記第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)を第2の反応器に移送し、
(c)前記第2の反応器において第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の存在下でプロピレン及びエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンを重合して、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)が得られ、前記第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び前記第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)がマトリックス(R−PP)を形成し、
(d)前記マトリックス(M)を第3の反応器に移送し、
(e)前記第3の反応器においてマトリックス(M)の存在下でプロピレン及びエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンを重合して、弾性プロピレンコポリマー(E)が得られ、前記マトリックス(M)及び前記弾性プロピレンコポリマー(E)が異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を形成する
ことが好ましい。
【0027】
本発明の一実施形態においては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、
a)ISO178に従って測定される曲げ弾性率が450から800MPaの範囲であり、及び/又は
b)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した透明度が少なくとも75.0%であり、及び/又は
c)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した曇価が≦50.0%であり、及び/又は
d)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した鮮明性(clarity)が少なくとも90.0%である。
【0028】
本発明は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を含む未配向フィルムも対象とする。フィルムは、キャストフィルム又はインフレーションフィルムであることが好ましい。
【0029】
本発明は、さらに、未配向フィルムを含む容器も対象とする。
【0030】
本発明は、さらに、未配向フィルムの柔軟性と透明度のバランスを改善するための異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の使用であって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、
a)ISO178に従って測定される曲げ弾性率が450から800MPaの範囲であり、
b)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した曇価が50.0%未満である
ときに改善がなされる、使用も対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例による曲げ弾性率および曇価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0033】
本発明に係る異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、特に、その特定の光学的及び機械的性質によって特徴づけられる。
【0034】
したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ISO178に従って測定される曲げ弾性率が450から800MPaの範囲であることが好ましい。例えば、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ISO178に従って測定される曲げ弾性率が480から750MPaの範囲、又は500から720MPaの範囲である。
【0035】
光学的性質に関しては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、
a)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した透明度が少なくとも75.0%、好ましくは75.0から95.0%の範囲、最も好ましくは75.0から90.0%の範囲であり、及び/又は
c)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した曇価が≦50.0%であり、好ましくは10.0から50.0%の範囲、最も好ましくは25.0から50.0%の範囲であり、及び/又は
d)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した鮮明性が少なくとも90.0%、好ましくは90.0から99.0%の範囲、最も好ましくは92.0から98.0%の範囲である
ことが好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態においては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、
a)ISO178に従って測定される曲げ弾性率が450から800MPaの範囲、好ましくは480から750MPaの範囲、最も好ましくは500から720MPaの範囲であり、
b)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した透明度が少なくとも75.0%、好ましくは75.0から95.0%の範囲、最も好ましくは75.0から90.0%の範囲であり、
c)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した曇価が≦50.0%、好ましくは10.0から50.0%の範囲、最も好ましくは25.0から50.0%の範囲であり、
d)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した鮮明性が少なくとも90.0%、好ましくは90.0から99.0%の範囲、最も好ましくは92.0から98.0%の範囲である。
【0037】
それに加えて、又はその代わりに、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、
a)50μmキャストフィルムについて測定されるASTM D1003−00に従って測定される滅菌前の曇価が5%未満、好ましくは3.5%未満であり、及び/又は
b)50μmキャストフィルムについて測定されるASTM D1003−00に従って測定される滅菌後の曇価が10%未満、好ましくは6%未満である。
【0038】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、特定の値の曲げ弾性率、透明度、曇価及び鮮明性によって特徴づけられるだけでなく、上記と同じ条件下で測定したときに、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を含む未配向フィルム、及び未配向フィルムを含む容器によっても特徴づけられる。したがって、曲げ弾性率、透明度、曇価及び鮮明性の上記値は、未配向フィルム及び容器にも同様に適用可能である。
【0039】
本発明による異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリックス(M)とその中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを含む。したがって、マトリックス(M)は、マトリックス(M)の一部ではない(微)分散含有物(inclusion)を含み、前記含有物は弾性プロピレンコポリマー(E)を含む。含有物という用語は、マトリックス(M)と含有物が、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)内で異なる相を形成することを示す。第2の相、すなわち、いわゆる含有物の存在は、例えば、電子顕微鏡法若しくは原子間力顕微鏡法のような高分解能顕微鏡法によって、又は動的機械的熱分析(DMTA:dynamic mechanical thermal analysis)によって、見ることができる。特に、DMTAにおいては、多相構造の存在は、少なくとも2つの異なるガラス転移温度の存在によって確認することができる。
【0040】
好ましくは、本発明による異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ポリマー成分としてランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び弾性プロピレンコポリマー(E)のみを含む。換言すれば、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、さらに添加剤を含むことができるが、全異相プロピレンコポリマー(RAHECO)に基づいて、1.0重量%を超えるような、5.0重量%を超える、より好ましくは3.0重量%を超える量の別のポリマーを含まない。かかる少量で存在し得る追加の一ポリマーは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の調製によって得られる副反応生成物(by−reaction product)であるポリエチレンである。したがって、特に、本発明に係る異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)と、任意に、この段落に記載の量のポリエチレンとをのみ含むと理解される。
【0041】
本発明による異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、適度のメルトフローレートによって特徴づけられる。したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、メルトフローレートMFR(230℃)が2.0から10.0g/10minの範囲、好ましくは2.5から8.0g/10minの範囲、より好ましくは3.0から5.5g/10minの範囲である。
【0042】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は熱機械的に安定であることが望ましい。したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、融解温度が少なくとも135℃、より好ましくは135から160℃の範囲、更により好ましくは137から155℃の範囲であると理解される。
【0043】
典型的には、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、結晶化温度がやや低く、すなわち110℃以下、より好ましくは95から110℃の範囲、更により好ましくは100から108℃の範囲である。
【0044】
しかし、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)がα核剤などの核剤を含む場合、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは、結晶化温度が、核形成していない異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の結晶化温度よりも高く、すなわち110℃を超え、より好ましくは110から125℃の範囲、更により好ましくは110から122℃の範囲である。
【0045】
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、プロピレン以外にコモノマーも含む。好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、プロピレン以外にエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンを含む。したがって、本発明に係る「プロピレンコポリマー」という用語は、
(a)プロピレン
及び
(b)エチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン
から誘導可能な単位を含む、好ましくは該単位からなる、ポリプロピレンとして理解される。
【0046】
したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)、すなわち第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)などのランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び弾性プロピレンコポリマー(E)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えば、エチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンなどのコモノマー、特にエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン、例えば、1−ブテン及び/又は1−ヘキセンを含む。好ましくは、本発明による異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群由来のプロピレンと共重合可能なモノマーを含む、特に該モノマーからなる。より具体的には、本発明の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、プロピレン以外に、エチレン及び/又は1−ブテンから誘導可能な単位を含む。好ましい一実施形態においては、本発明による異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、エチレン及びプロピレンのみから誘導可能な単位を含む。更により好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、すなわち第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)、並びに弾性プロピレンコポリマー(E)は、エチレンのような同じコモノマーを含む。
【0047】
したがって、弾性プロピレンコポリマー(E)は、好ましくは、エチレンプロピレンゴム(EPR:ethylene propylene rubber)であるのに対して、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、ランダムエチレンプロピレンコポリマー(R−PP)である。
【0048】
さらに、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは、材料の柔軟性に寄与する適度の全コモノマー含有量を有すると理解される。したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のコモノマー含有量は、8.5から21.0モル%の範囲、好ましくは9.0から18.0モル%の範囲、より好ましくは10.0から15.0モル%の範囲である必要がある。
【0049】
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のISO16152(25℃)に従って測定されるキシレン低温可溶性(XCS)画分は、16.0から50.0重量%の範囲、好ましくは16.0から35.0重量%の範囲、より好ましくは16.0から30.0重量%の範囲、更により好ましくは16.0から25.0重量%又は17.0から25.0重量%の範囲である。
【0050】
さらに、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温可溶性(XCS)画分は、その固有粘度によって特定されると理解される。低固有粘度(IV)値は、低重量平均分子量を示す。本発明では、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温可溶性画分(XCS)は、ISO1628/1(デカリン中135℃)に従って測定される固有粘度(IV)が、1.0dl/gから1.8dl/g未満の範囲、好ましくは1.0から1.6dl/gの範囲、より好ましくは1.1dl/gから1.6dl/g未満の範囲であると理解される。
【0051】
さらに、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温可溶性(XCS)画分のコモノマー含有量、すなわちエチレン含有量は、45.0モル%以下、より好ましくは33.0から45.0モル%の範囲、更により好ましくは35.0から44.0モル%の範囲、更により好ましくは37.0から43.0モル%の範囲であることが好ましい。キシレン低温可溶性(XCS)画分中に存在するコモノマーは、それぞれランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び弾性プロピレンコポリマー(E)に対して上で定義されたものである。好ましい一実施形態においては、コモノマーはエチレンのみである。
【0052】
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、さらに、その個々の成分、すなわちランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び弾性プロピレンコポリマー(E)によって定義することができる。
【0053】
ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えば、エチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン、特にエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン、例えば、1−ブテン及び/又は1−ヘキセンなどのコモノマーを含む。好ましくは、本発明によるランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群由来のプロピレンと共重合可能なモノマーを含む、特に該モノマーからなる。より具体的には、本発明のランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、プロピレン以外に、エチレン及び/又は1−ブテンから誘導可能な単位を含む。好ましい一実施形態においては、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、エチレン及びプロピレンのみから誘導可能な単位を含む。
【0054】
上述したように、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、適度のコモノマー含有量によって特徴づけられる。したがって、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含有量は、4.4から7.3モル%の範囲、更により好ましくは4.8から7.0モル%の範囲、更により好ましくは5.0から6.5モル%の範囲である。
【0055】
「ランダム」という用語は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)並びに第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のコモノマーが、プロピレンコポリマー内で無作為に分布することを示す。ランダムという用語は、IUPAC(「高分子科学の基本的術語の用語集(Glossary of basic terms in polymer science)」、IUPACの勧告1996年)に準じて理解される。
【0056】
ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、好ましくは、2個又は3個のポリマー部分のような少なくとも2個のポリマー部分を含み、そのすべてがプロピレンコポリマーである。更により好ましいランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)を含み、好ましくはそれらからなる。第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、コモノマーの少ない部分であるのに対して、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、コモノマーの多い部分であることが好ましい。
【0057】
第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)に使用されるコモノマーに関しては、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマーを参照されたい。好ましくは、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、エチレンのような同じコモノマーを含む。
【0058】
ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、その孤立/ブロックエチレン配列の相対含有量(I(E))によって特徴づけられることが好ましい。本発明によれば、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)の孤立/ブロックエチレン配列(I(E))は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)に対して測定される。したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)は、孤立/ブロックエチレン配列(I(E))が、50.0から65.0%の範囲、より好ましくは53.0から63.0%の範囲、更により好ましくは55.0から62.0%の範囲である。
【0059】
I(E)含有量[%]は、不等式(II)によって定義される。
【0060】
【数2】
【0061】
式中、
I(E)は、孤立/ブロックエチレン配列の相対含有量[%]であり、
fPEPは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)中のプロピレン/エチレン/プロピレン配列(PEP:propylene/ethylene/propylene)のモル分率であり、
fPEEは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)中のプロピレン/エチレン/エチレン配列(PEE:propylene/ethylene/ethylene)及びエチレン/エチレン/プロピレン配列(EEP:ethylene/ethylene/propylene)のモル分率であり、
fEEEは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温不溶性画分(XCI)中のエチレン/エチレン/エチレン配列(EEE:ethylene/ethylene/ethylene)のモル分率であり、
すべての配列濃度が13C−NMRデータの統計学的三連構造分析に基づく。
【0062】
本発明によるランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃/2.16kg)が3.0から8.0g/10minの範囲、より好ましくは3.2から7.0g/10minの範囲、更により好ましくは3.3から6.5g/10minの範囲である。
【0063】
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の総重量に基づいて、(65から95重量%のような)60から95重量%、より好ましくは(65から90重量%のような)60から90重量%、更により好ましくは(65から87重量%のような)60.0から87.0重量%又は(65から88重量%のような)60.0から88.0重量%のランダムプロピレンコポリマー(R−PP)を含む。
【0064】
さらに、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の総重量に基づいて、(5から35重量%のような)5から40重量%、より好ましくは(10から35重量%のような)10から40重量%、更により好ましくは(12から35重量%のような)12.0から40.0重量%又は(13から35重量%のような)13.0から40.0重量%の弾性プロピレンコポリマー(E)を含む。
【0065】
したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の総重量に基づいて、(65から95重量%のような)60から95重量%、より好ましくは(65から90重量%のような)60から90重量%、更により好ましくは(65から87重量%のような)60.0から87.0重量%又は(65から88重量%のような)60.0から88.0重量%のランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、及び(5から35重量%のような)5から40重量%、より好ましくは(10から35重量%のような)10から40重量%、更により好ましくは(12から35重量%のような)12.0から40.0重量%又は(13から35重量%のような)13.0から40.0重量%の弾性プロピレンコポリマー(E)を含み、より好ましくはそれらからなることが理解される。
【0066】
したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の更なる成分は、マトリックス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)である。弾性プロピレンコポリマー(E)に使用されるコモノマーに関しては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)に対して提供した情報を参照されたい。したがって、弾性プロピレンコポリマー(E)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えば、エチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン、特にエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン、例えば、1−ブテン及び/又は1−ヘキセンなどのコモノマーを含む。好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(E)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群由来のプロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特に該モノマーからなる。より具体的には、弾性プロピレンコポリマー(E)は、プロピレン以外に、エチレン及び/又は1−ブテンから誘導可能な単位を含む。したがって、特に好ましい一実施形態においては、弾性プロピレンコポリマー(E)は、エチレン及びプロピレンのみから誘導可能な単位を含む。
【0067】
弾性プロピレンコポリマー(E)のコモノマー含有量は、好ましくは、35.0から55.0モル%の範囲、より好ましくは37.0から53.0モル%の範囲、更により好ましくは38.0から51.0モル%の範囲である。
【0068】
上述したように、多相構造は、少なくとも2つの異なるガラス転移温度の存在によって確認することができる。より高い第1のガラス転移温度(Tg(1))はマトリックスを表すのに対して、より低い第2のガラス転移温度(Tg(2))は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の弾性プロピレンコポリマー(E)を示す。
【0069】
したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が不等式(I)、より好ましくは不等式(Ia)、更により好ましくは不等式(Ib)を満たす第2のガラス転移温度Tg(2)を有することが本発明の好ましい一要件である。
【0070】
Tg(2)>21.0−2.0×C(XCS) (I)
Tg(2)>21.5−2.0×C(XCS) (Ia)
Tg(2)>22.0−2.0×C(XCS) (Ib)
式中、
Tg(2)は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の第2のガラス転移温度であり、
C(XCS)は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のキシレン低温可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量[モル%]である。
【0071】
好ましくは、第2のガラス転移温度Tg(2)は−35℃未満のような−20℃未満、より好ましくは−65から−45℃の範囲、更により好ましくは−62から−48℃の範囲である。異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、本発明において定義される不等式(I)を満たす、この段落で述べた第2のガラス転移温度Tg(2)を有することが特に好ましい。
【0072】
さらに、本発明による異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、さらに、(異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のマトリックス(M)を表す)第1のガラス転移温度Tg(1)が−12から+2℃の範囲、より好ましくは−10から+2℃の範囲であると理解される。
【0073】
したがって、第1のガラス転移温度Tg(1)は、好ましくは、第2のガラス転移温度Tg(2)より高い。更により好ましくは、第1のガラス転移温度Tg(1)と第2のガラス転移温度Tg(2)の差は、少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも45℃、更により好ましくは40から55℃の範囲、更により好ましくは45から52℃の範囲である。
【0074】
本発明において定義された異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、核剤及び酸化防止剤、並びにスリップ剤及びブロッキング防止剤のような添加剤を最高5.0重量%含むことができる。好ましくは、添加剤含有量(α核剤を含まない)は、1.0重量%未満のような3.0重量%未満である。
【0075】
本発明の一実施形態においては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、核剤、より好ましくはα核剤を含む。更により好ましくは、本発明はβ核剤を含まない。α核剤は、好ましくは、以下からなる群から選択される。
【0076】
(i)モノカルボン酸及びポリカルボン酸の塩、例えば、安息香酸ナトリウム又はアルミニウムtert−ブチルベンゾアート(aluminum tert−butylbenzoate)、及び
(ii)ジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、及びメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトール、ジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)などのC〜Cアルキル置換ジベンジリデンソルビトール誘導体、又は1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールなどの置換ノニトール誘導体、及び
(iii)リン酸のジエステルの塩、例えば、ナトリウム2,2−メチレンビス(4,6,−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファート又はアルミニウム−ヒドロキシ−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファート]、及び
(iv)ビニルシクロアルカンポリマー及びビニルアルカンポリマー、並びに
(v)それらの混合物。
【0077】
かかる添加剤は、一般に市販されており、例えば、「プラスチック添加剤ハンドブック(Plastic Additives Handbook)」、5版、2001年、ハンス ツワイフェル(Hans Zweifel)に記載されている。
【0078】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、最高2.0重量%のα核剤を含む。好ましい一実施形態においては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、3000ppm以下、より好ましくは1から3000ppm、より好ましくは5から2000ppmの、特にジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、又は1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールなどの置換ノニトール誘導体、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択されるα核剤を含む。
【0079】
本発明による異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは、
(a)IUPACの4から6族の遷移金属の化合物(TC)と、2族金属化合物(MC)と、内部供与体(ID)とを含むチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)、ここで、前記内部供与体(ID)は、非フタル酸化合物、好ましくは非フタル酸エステルであり、更により好ましくは、非フタル酸ジカルボン酸のジエステルである、
(b)任意に共触媒(Co)、及び
(c)任意に外部供与体(ED)
の存在下で製造される。
【0080】
内部供与体(ID)は、任意に置換されたマロン酸エステル、マレイン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸エステル、安息香酸エステル並びにそれらの誘導体及び/又は混合物から選択され、好ましくは内部供与体(ID)はシトラコン酸エステルであることが好ましい。それに加えて、又はその代わりに、共触媒(Co)と外部供与体(ED)のモル比[Co/ED]は5から45である。
【0081】
したがって、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは、フタル酸エステル及びそのそれぞれの分解生成物、すなわち、典型的にはチーグラー・ナッタ(ZN)触媒の内部供与体として使用される、フタル酸エステルを含まないと理解される。好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、フタル酸化合物及びそのそれぞれの分解生成物、すなわち典型的にはチーグラー・ナッタ(ZN)触媒の内部供与体として使用されるフタル酸化合物を含まない。
【0082】
本発明の意味において、フタル酸エステル、好ましくはフタル酸化合物を「含まない」という用語は、フタル酸エステル及びそれぞれの分解生成物、好ましくはフタル酸化合物及びそれぞれの分解生成物が全く検出されない異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を指す。
【0083】
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び弾性プロピレンコポリマー(E)を含むので、個々の成分も、好ましくは、フタル酸エステル及びそのそれぞれの分解生成物、より好ましくはフタル酸化合物及びそのそれぞれの分解生成物を含まない。
【0084】
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリックス(M)と前記マトリックス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを含む。好ましくは、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、2個又は3個のポリマー部分のような少なくとも2個のポリマー部分を含み、そのすべてがプロピレンコポリマーである。更により好ましいランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)を含み、好ましくはそれらからなる。
【0085】
さらに、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)と第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、ほぼ同じメルトフローレートを有することが好ましい。したがって、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)と第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のメルトフローレートの差[MFR(Pre−R−PP)−MFR(Pre−R−PP1)]は、+/−2.5g/10min未満、より好ましくは+/−2.0g/10min未満、更により好ましくは+/−1.5g/10min未満であることが好ましい。したがって、一実施形態においては、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、メルトフローレートMFR(230℃)が3.0から8.5g/10minの範囲である。
【0086】
コモノマー含有量は、キシレン可溶分にも影響する。その結果、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、キシレン低温可溶分(XCS)が3.0から15.0重量%の範囲、より好ましくは3.5から12.0重量%の範囲であり、及び/又はランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、キシレン低温可溶分(XCS)が4.0から15.0重量%の範囲、より好ましくは4.5から12.0重量%の範囲であることが好ましい。
【0087】
本発明は、本発明に係る異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を対象とするだけでなく、それから製造される未配向フィルムも対象とする。したがって、別の一実施形態においては、本発明は、少なくとも70.0重量%、好ましくは少なくとも80.0重量%、より好ましくは少なくとも90.0重量%、更により好ましくは少なくとも95.0重量%、更により好ましくは少なくとも99.0重量%の本発明に係る異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を含む、キャストフィルム又はインフレーションフィルム、例えば、空冷インフレーションフィルムのような未配向フィルムを対象とする。
【0088】
未配向フィルムと配向フィルムは区別される(例えば、ポリプロピレンハンドブック、ネロ パスクイーニ(Nello Pasquini)、2版、ハンサー(Hanser)参照)。配向フィルムは、一般に、一軸又は二軸配向フィルムであり、未配向フィルムはキャスト又はインフレーションフィルムである。したがって、未配向フィルムは、配向フィルムによってなされるように縦及び/又は横方向に強力に延伸されない。したがって、本発明による未配向フィルムは、一軸又は二軸配向フィルムではない。好ましくは、本発明による未配向フィルムは、インフレーションフィルム又はキャストフィルムである。
【0089】
特定の一実施形態においては、未配向フィルムは、キャストフィルム又は空冷インフレーションフィルムである。
【0090】
好ましくは、未配向フィルムの厚さは、10から1000μm、より好ましくは40から500μmのような20から700μmである。
【0091】
本発明は、キャストフィルム又はインフレーションフィルム、例えば、空冷インフレーションフィルムのような未配向フィルムの製造における異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の使用も対象とする。
【0092】
さらに、本発明は、滅菌可能な又は滅菌された未配向フィルムのような滅菌可能又は滅菌フィルムも対象とする。より好ましくは、本発明は、本明細書に定義される(未配向)フィルムを含む、好ましくは該フィルムからなる、容器、すなわちパウチ、特に滅菌可能な又は滅菌された容器、すなわちパウチを対象とする。容器は特にパウチである。さらに、前記容器、すなわちパウチは、好ましくは、滅菌処理されている。
【0093】
それに加えて、本発明は、未配向フィルムの柔軟性と曇価のバランスを改善するための本明細書に定義される異相プロピレンコポリマーの使用も対象とする。特に、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の
a)ISO178に従って測定される曲げ弾性率が、450から800MPaの範囲、好ましくは480から650MPaの範囲、最も好ましくは500から650MPaの範囲であり、及び/又は
b)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した曇価が、≦50.0%、好ましくは10.0から50.0%の範囲、最も好ましくは25.0から50.0%の範囲である
ときに改善がなされる。
【0094】
それに加えて、又はその代わりに、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の
a)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した透明度が、少なくとも75.0%、好ましくは75.0から95.0%の範囲、最も好ましくは75.0から90.0%の範囲であり、及び/又は
b)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した鮮明性が、少なくとも90.0%、好ましくは90.0から99.0%の範囲、最も好ましくは92.0から98.0%の範囲である
ときに改善がなされる。
【0095】
例えば、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の
a)ISO178に従って測定される曲げ弾性率が、450から800MPaの範囲、好ましくは490から650MPaの範囲、最も好ましくは500から650MPaの範囲であり、
b)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した曇価が、≦50.0%、好ましくは10.0から50.0%の範囲、最も好ましくは25.0から50.0%の範囲であり、
c)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した透明度が、少なくとも75.0%、好ましくは75.0から95.0%の範囲、最も好ましくは75.0から90.0%の範囲であり、及び/又は
b)厚さ1mmの射出成形試料について測定されるASTM D1003−00に準拠した鮮明性が、少なくとも90.0%、好ましくは90.0から99.0%の範囲、最も好ましくは92.0から98.0%の範囲である
ときに改善がなされる。
【0096】
それに加えて、又はその代わりに、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の
c)50μmキャストフィルムについて測定されるASTM D1003−00に従って測定される滅菌前の曇価が、5%未満、好ましくは3%未満であり、及び/又は
d)50μmキャストフィルムについて測定されるASTM D1003−00に従って測定される滅菌後の曇価が、10%未満、好ましくは6%未満である
ときに改善がなされる。
【0097】
本発明に係る異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは、連結された少なくとも2個の反応器を含む多段階プロセスにおいて製造され、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ランダムプロピレンコポリマー(PP)であるマトリックス(M)と前記マトリックス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを含む。
【0098】
さらに、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)と第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の重量比は、好ましくは、20:80から80:20、より好ましくは25:75から75:25、更により好ましくは30:70から70:30である。
【0099】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、以下のステップを含む逐次重合プロセスによって得られる。
【0100】
(a)第1の反応器において、プロピレン及びエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンを重合させ、それによって第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)を得るステップ、
(b)前記第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)を第2の反応器に移送するステップ、
(c)前記第2の反応器において第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の存在下でプロピレン及びエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンを重合して、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)が得られ、前記第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び前記第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)がマトリックス(PP)を形成するステップ、
(d)前記マトリックス(M)を第3の反応器に移送するステップ、
(e)前記第3の反応器においてマトリックス(M)の存在下でプロピレン及びエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィンを重合して、弾性プロピレンコポリマー(E)が得られ、前記マトリックス(M)及び前記弾性プロピレンコポリマー(E)が異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を形成するステップ。
【0101】
異相プロピレンコポリマー(HECO)、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)及び弾性コポリマー(E)の好ましい実施形態については、上記定義を参照されたい。
【0102】
「逐次重合プロセス」という用語は、異相プロピレンコポリマー(HECO)が、連結された3個のような少なくとも2個の反応器中で製造されることを示す。したがって、該プロセスは、少なくとも第1の反応器、第2の反応器、及び任意に第3の反応器を含む。「重合プロセス」という用語は、主重合(main polymerization)が起こることを示すものとする。すなわち、プロセスが3個の重合反応器からなる場合、この定義は、プロセス全体が、例えば、予備重合反応器における予備重合ステップを含む選択肢を除外しない。「からなる」という用語は、主重合プロセスから見た閉じた表現(closing formulation)にすぎない。
【0103】
第1の反応器は、好ましくは、スラリー反応器であり、バルク又はスラリーで作動する任意の連続又は単一の撹拌バッチ槽型反応器又はループ反応器とすることができる。バルクとは、少なくとも60%(w/w)のモノマーを含む反応媒体中の重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器は、好ましくは、(バルク)ループ反応器である。
【0104】
第2の反応器及び第3の反応器は、好ましくは、気相反応器である。かかる気相反応器は、任意の機械混合又は流動層反応器とすることができる。好ましくは、気相反応器は、気体速度が少なくとも0.2m/sの機械撹拌流動層反応器を含む。したがって、気相反応器は、好ましくは機械撹拌機を備えた、流動層型反応器であると理解される。
【0105】
したがって、好ましい一実施形態においては、第1の反応器はループ反応器のようなスラリー反応器であり、第2の反応器及び第3の反応器(R3)は気相反応器(GPR:gas phase reactor)である。したがって、本発明に係るプロセスでは、少なくとも3個、好ましくは3個の重合反応器、すなわち、ループ反応器のようなスラリー反応器、第1の気相反応器、及び第2の気相反応器が連結されて使用される。必要に応じて、スラリー反応器の前に予備重合反応器が置かれる。
【0106】
好ましい多段階プロセスは、例えば、欧州特許第0 887 379号、国際公開第92/12182号、国際公開第2004/000899号、国際公開第2004/111095号、国際公開第99/24478号、国際公開第99/24479号、国際公開第00/68315号などの特許文献に記載の(BORSTAR(登録商標)技術として知られる)Borealis A/S、デンマークによって開発されたものなどの「ループ気相」プロセスである。
【0107】
別の適切なスラリー−気相プロセスは、BasellのSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0108】
好ましくは、上で定義したように異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を製造する本発明に係るプロセスにおいては、第1の反応器、すなわちループ反応器のようなスラリー反応器の条件は、以下のようにすることができる。
− 温度は、50℃から110℃、好ましくは60℃から100℃、より好ましくは68から95℃の範囲内であり、
− 圧力は、20バールから80バール、好ましくは40バールから70バールの範囲内であり、
− 水素は、それ自体公知の様式でモル質量を制御するために添加することができる。
【0109】
続いて、第1の反応器の反応混合物は、第2の反応器、すなわち気相反応器に移送され、条件は、好ましくは、以下の通りである。
− 温度は、50℃から130℃、好ましくは60℃から100℃の範囲内であり、
− 圧力は、5バールから50バール、好ましくは15バールから35バールの範囲内であり、
− 水素は、それ自体公知の様式でモル質量を制御するために添加することができる。
【0110】
第3の反応器における条件は、第2の反応器と同様である。
【0111】
滞留時間は、3つの反応器領域において変わり得る。
【0112】
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を製造するプロセスの一実施形態においては、バルク反応器、例えばループにおける滞留時間は、0.1から2.5時間、例えば、0.15から1.5時間の範囲であり、気相反応器における滞留時間は、一般に、0.5から4.0時間のような0.2から6.0時間である。
【0113】
必要に応じて、重合は、第1の反応器、すなわちループ反応器のようなスラリー反応器において超臨界条件下で公知の様式で、及び/又は気相反応器において凝縮方式として、実施することができる。
【0114】
好ましくは、プロセスは、以下に詳述するように、チーグラー・ナッタ触媒前駆体(procatalyst)と外部供与体と任意に共触媒とを含む触媒系を用いた予備重合も含む。
【0115】
好ましい一実施形態においては、予備重合は、液体プロピレン中のバルクスラリー重合として行われ、すなわち、液相は、主にプロピレンを含み、その中に溶解した少量の別の反応物及び任意に不活性成分を含む。
【0116】
予備重合反応は、一般に、10から60℃、好ましくは15から50℃、より好ましくは20から45℃の温度で実施される。
【0117】
予備重合反応器における圧力は、重要ではないが、反応混合物を液相で維持するのに十分な高さでなければならない。したがって、圧力は、20から100バール、例えば30から70バールとすることができる。
【0118】
触媒成分は、好ましくは、すべて予備重合ステップに導入される。しかしながら、固体触媒成分(i)と共触媒(ii)を別々に供給することができる場合、共触媒の一部のみを予備重合ステージに導入し、残りの部分を後続の重合ステージに導入することができる。かかる場合においても、十分な重合反応がその中で得られる多量の共触媒を予備重合ステージに導入することが必要である。
【0119】
別の成分も予備重合ステージに添加することができる。すなわち、当該技術分野で公知のように、水素を予備重合ステージに添加してプレポリマーの分子量を制御することができる。さらに、帯電防止添加剤を使用して、粒子が互いに付着するのを防止することができ、又は粒子が反応器の壁に付着するのを防止することができる。
【0120】
予備重合条件及び反応パラメータの正確な制御は、当該技術分野の技術範囲内である。
【0121】
本発明によれば、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、触媒系の存在下で、上述したように、多段階重合プロセスによって得られる。
【0122】
上で指摘したように、上で定義した異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の調製のための特定のプロセスにおいては、特定のチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)を使用しなければならない。したがって、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)を以下により詳細に説明する。
【0123】
本発明で使用される触媒は、チタンのようなIUPACの4から6族の遷移金属の化合物(TC)と、マグネシウムのような2族金属化合物(MC)と、非フタル酸化合物、好ましくは非フタル酸エステル、更により好ましくは以下でより詳細に説明する非フタル酸ジカルボン酸のジエステルである内部供与体(ID)とを含む固体チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)である。したがって、触媒は、望ましくないフタル酸化合物を全く含まない。さらに、固体触媒は、シリカ又はMgClのような外部支持材料を含まないが、触媒は自立形(selfsupported)である。
【0124】
チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、さらに、得られた方法によって定義することができる。したがって、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、好ましくは、以下のステップを含むプロセスによって得られる。
【0125】
a)
)任意に有機液体反応媒体中の、ヒドロキシル部分に加えて少なくとも1個のエーテル部分を含むアルコール(A)と2族金属化合物(MC)の反応生成物である少なくとも2族金属アルコキシ化合物(Ax)の溶液を用意するステップ、
又は
)任意に有機液体反応媒体中の、アルコール(A)と式ROHの一価アルコール(B)のアルコール混合物と2族金属化合物(MC)の反応生成物である少なくとも2族金属アルコキシ化合物(Ax’)の溶液、
又は
)任意に有機液体反応媒体中の、2族金属化合物(MC)と一価アルコール(B)の反応生成物である2族金属アルコキシ化合物(Bx)と2族アルコキシ化合物(Ax)の混合物の溶液を用意するステップ、及び
b)ステップa)の前記溶液を4から6族の遷移金属の少なくとも1種の化合物(TC)に添加するステップ、及び
c)固体触媒成分粒子を得るステップ、
及びステップc)の前の任意のステップにおいて非フタル酸内部電子供与体(ID)を添加するステップ。
【0126】
内部供与体(ID)又はその前駆体は、好ましくは、ステップa)の溶液に添加される。
【0127】
上記手順によれば、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、物理的条件、特にステップb)及びc)において使用される温度に応じて、沈殿法又はエマルジョン(液/液2相系)凝固法によって得ることができる。
【0128】
どちらの方法(沈殿又はエマルジョン凝固)でも、触媒化学的性質は同じである。
【0129】
沈殿法では、ステップa)の溶液とステップb)における少なくとも1種の遷移金属化合物(TC)が組合せられ、反応混合物全体が少なくとも50℃、より好ましくは55から110℃の温度範囲、より好ましくは70から100℃の範囲に維持されて、固体粒子の形の触媒成分の十分な沈殿を確保する(ステップc)。
【0130】
ステップb)のエマルジョン凝固法では、ステップa)の溶液は、典型的には、−10から50℃未満、好ましくは−5から30℃などのより低温で、少なくとも1種の遷移金属化合物(TC)に添加される。エマルジョンの撹拌中、温度は、典型的には、−10から40℃未満、好ましくは−5から30℃で維持される。エマルジョンの分散相の液滴は、活性な触媒組成物を形成する。液滴の凝固(ステップc)は、エマルジョンを温度70から150℃、好ましくは80から110℃に加熱することによって適切に実施される。
【0131】
エマルジョン凝固法によって調製される触媒が好ましくは本発明に使用される。
【0132】
好ましい一実施形態においては、ステップa)において、a)又はa)の溶液、すなわち(Ax’)の溶液又は(Ax)と(Bx)の混合物の溶液が使用される。
【0133】
好ましくは、2族金属(MC)はマグネシウムである。
【0134】
マグネシウムアルコキシ化合物(Ax)、(Ax’)及び(Bx)は、上述したようにマグネシウム化合物をアルコール(単数又は複数)と反応させることによって、触媒調製プロセスの第一ステップ、すなわちステップa)においてその場で(in situ)調製することができ、又は前記マグネシウムアルコキシ化合物は、別々に調製されたマグネシウムアルコキシ化合物とすることができ、又はそれらは、すぐに使えるマグネシウムアルコキシ化合物として市販品を入手し、そのまま本発明の触媒調製プロセスに使用することさえできる。
【0135】
アルコール(A)の説明的例は、二価アルコールのモノエーテル(グリコールモノエーテル)である。好ましいアルコール(A)は、C〜Cグリコールモノエーテルであり、エーテル部分は、2から18個の炭素原子、好ましくは4から12個の炭素原子を含む。好ましい例は、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタノール、2−ブチルオキシエタノール、2−ヘキシルオキシエタノール及び1,3−プロピレン−グリコール−モノブチルエーテル、3−ブトキシ−2−プロパノールであり、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタノール及び1,3−プロピレン−グリコール−モノブチルエーテル、3−ブトキシ−2−プロパノールが特に好ましい。
【0136】
説明のための一価アルコール(B)は、式ROHのものであり、Rは直鎖又は分岐C〜C10アルキル残基である。最も好ましい一価アルコールは、2−エチル−1−ヘキサノール又はオクタノールである。
【0137】
好ましくは、Mgアルコキシ化合物(Ax)と(Bx)の混合物、又はアルコール(A)と(B)の混合物は、それぞれ、8:1から2:1、より好ましくは5:1から3:1のBx:Ax又はB:Aのモル比で使用及び利用される。
【0138】
マグネシウムアルコキシ化合物は、上で定義したアルコール(単数又は複数)と、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムアルコキシド、マグネシウムジアルコキシド、アルコキシマグネシウムハライド及びアルキルマグネシウムハライドから選択されるマグネシウム化合物との反応生成物とすることができる。アルキル基は、類似の又は異なるC〜C20アルキル、好ましくはC〜C10アルキルとすることができる。典型的なアルキルアルコキシマグネシウム化合物は、使用するときには、エチルマグネシウムブトキシド、ブチルマグネシウム五酸化物、オクチルマグネシウムブトキシド及びオクチルマグネシウム八酸化物である。好ましくは、ジアルキルマグネシウムが使用される。最も好ましいジアルキルマグネシウムは、ブチルオクチルマグネシウム又はブチルエチルマグネシウムである。
【0139】
マグネシウム化合物は、アルコール(A)及びアルコール(B)に加えて、式R’’(OH)の多価アルコール(C)と反応して、前記マグネシウムアルコキシド化合物を得ることもできる。好ましい多価アルコールは、使用する場合、R’’が直鎖、環式又は分岐C〜C10炭化水素残基であり、mが2から6の整数である、アルコールである。
【0140】
ステップa)のマグネシウムアルコキシ化合物は、したがって、マグネシウムジアルコキシド、ジアリールオキシマグネシウム、アルキルオキシマグネシウムハライド、アリールオキシマグネシウムハライド、アルキルマグネシウムアルコキシド、アリールマグネシウムアルコキシド及びアルキルマグネシウムアリールオキシドからなる群から選択される。さらに、マグネシウムジハライドとマグネシウムジアルコキシドの混合物を使用することができる。
【0141】
本発明に係る触媒の調製に使用される溶媒は、5から20個の炭素原子、より好ましくは5から12個の炭素原子を有する、芳香族及び脂肪族直鎖、分岐及び環状炭化水素、又はそれらの混合物から選択することができる。適切な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、クメン、キシロール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びノナンが挙げられる。ヘキサン及びペンタンが特に好ましい。
【0142】
Mg化合物は、典型的には、上述したように溶媒中の10から50重量%溶液として提供される。典型的な市販Mg化合物、特にジアルキルマグネシウム溶液は、トルエン又はヘプタン中の20〜40重量%溶液である。
【0143】
マグネシウムアルコキシ化合物を調製するための反応は、温度40から70℃で実施することができる。最も適切な温度は、使用するMg化合物及びアルコール(単数又は複数)に応じて選択される。
【0144】
4から6族の遷移金属化合物は、好ましくは、チタン化合物、最も好ましくはTiClのようなハロゲン化チタンである。
【0145】
本発明に使用される触媒の調製に使用される内部供与体(ID)は、好ましくは、非フタル酸カルボン(二)酸の(ジ)エステル、1,3−ジエーテル、それらの誘導体及び混合物から選択される。特に好ましい供与体は、モノ不飽和ジカルボン酸のジエステル、特にマロン酸エステル、マレイン酸エステル、コハク酸エステル、シトラコン酸エステル、グルタル酸エステル、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸エステル及び安息香酸エステル、並びにそれらの任意の誘導体及び/又は混合物を含む群に属するエステルである。好ましい例は、例えば、置換マレイン酸エステル及びシトラコン酸エステル、最も好ましくはシトラコン酸エステルである。
【0146】
エマルジョン法においては、二相液−液系は、単に撹拌によって、任意に、エマルジョンの形成を促進するために、及び/又はエマルジョンを安定化するために、当該技術分野で公知の様式で使用される、界面活性剤のような乱流最小化剤(TMA:turbulence minimizing agent)及び/又は乳化剤及び/又は乳化安定剤などの、(更なる)溶媒(単数又は複数)及び添加剤を添加することによって、形成することができる。好ましくは、界面活性剤は、アクリル又はメタクリルポリマーである。特に好ましいのは、ポリ(ヘキサデシル)メタクリラート、ポリ(オクタデシル)メタクリラート及びそれらの混合物などの非分岐C12〜C20(メタ)アクリラートである。乱流最小化剤(TMA)は、使用する場合、好ましくは、ポリオクテン、ポリノネン、ポリデセン、ポリウンデセン若しくはポリドデセン又はそれらの混合物のような6から20個の炭素原子を有するα−オレフィンモノマーのα−オレフィンポリマーから選択される。最も好ましくはポリデセンである。
【0147】
沈殿法又はエマルジョン凝固法によって得られた固体粒子生成物は、少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回、最も好ましくは少なくとも3回、芳香族及び/又は脂肪族炭化水素、好ましくはトルエン、ヘプタン又はペンタンで洗浄することができる。触媒は、さらに、蒸発若しくは窒素流によって乾燥させることができ、又は乾燥ステップなしに、スラリー化して油状液体にすることができる。
【0148】
最後に得られるチーグラー・ナッタ触媒は、望ましくは、一般に平均粒径範囲5から200μm、好ましくは10から100の粒子の形である。粒子は、空隙率の低い成形体であり、表面積が20g/m未満、より好ましくは10g/m未満である。典型的には、Tiの量は触媒組成物の1から6重量%、Mgは10から20重量%、供与体は10から40重量%である。
【0149】
触媒の調製の詳細な説明は、参照により本明細書に援用する国際公開第2012/007430号、欧州特許第2610271号、欧州特許第261027号及び欧州特許第2610272号に開示されている。
【0150】
チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、好ましくは、アルキルアルミニウム共触媒及び任意に外部供与体と共に使用される。
【0151】
本発明に係る重合プロセスにおける更なる成分として、外部供与体(ED)が好ましくは存在する。適切な外部供与体(ED)としては、ある種のシラン、エーテル、エステル、アミン、ケトン、複素環式化合物及びこれらの混合物が挙げられる。シランの使用が特に好ましい。一般式
Si(OR(4−p−q)
のシランの使用が最も好ましい。式中、R、R及びRは、炭化水素基、特にアルキル又はシクロアルキル基を表し、p及びqは、0から3の数であり、それらの和p+qは3以下である。R、R及びRは、互いに独立に選択することができ、同じでも異なっていてもよい。かかるシランの具体例は、(tert−ブチル)Si(OCH、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH、(フェニル)Si(OCH及び(シクロペンチル)Si(OCH、又は一般式
Si(OCHCH(NR
である。式中、RとRは、同じでも異なっていてもよく、1から12個の炭素原子を有する炭化水素基である。
【0152】
及びRは、1から12個の炭素原子を有する鎖状脂肪族炭化水素基、1から12個の炭素原子を有する分岐脂肪族炭化水素基、及び1から12個の炭素原子を有する環式脂肪族炭化水素基からなる群から独立に選択される。R及びRは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、オクチル、デカニル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert−ブチル、tert−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択されることが特に好ましい。
【0153】
より好ましくは、RとRは同じであり、更により好ましくはRとRはどちらもエチル基である。
【0154】
特に好ましい外部供与体(ED)は、ペンチルジメトキシシラン供与体(D供与体)又はシクロヘキシルメチルジメトキシシラン供与体(C供与体)であり、後者が特に好ましい。
【0155】
チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)及び任意に選択できる外部供与体(ED)に加えて、共触媒を使用することができる。共触媒は、好ましくは、周期表(IUPAC)13族の化合物、例えば、アルミニウムアルキル、アルミニウムハライド又はアルミニウムアルキルハライド化合物のようなアルミニウム化合物などの有機アルミニウムである。したがって、特定の一実施形態においては、共触媒(Co)は、トリエチルアルミニウム(TEAL)のようなトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロリド若しくはアルキルアルミニウムジクロリド又はそれらの混合物である。特定の一実施形態においては、共触媒(Co)はトリエチルアルミニウム(TEAL)である。
【0156】
有利には、トリエチルアルミニウム(TEAL)は、AlHとして表される水素化物含有量がトリエチルアルミニウム(TEAL)に対して1.0重量%未満である。より好ましくは、水素化物含有量は0.5重量%未満であり、最も好ましくは水素化物含有量は0.1重量%未満である。
【0157】
好ましくは、共触媒(Co)と外部供与体(ED)の比[Co/ED]、及び/又は共触媒(Co)と遷移金属(TM:transition metal)の比[Co/TM]は、慎重に選択されるべきである。
【0158】
したがって、
(a)共触媒(Co)と外部供与体(ED)のモル比[Co/ED]は、5から45の範囲、好ましくは5から35の範囲、より好ましくは5から25の範囲でなければならず、任意に、
(b)共触媒(Co)とチタン化合物(TC:titanium compound)のモル比[Co/TC]は、80超から500の範囲、好ましくは100から400の範囲、更により好ましくは120から350の範囲でなければならない。
【0159】
以下、本発明をさらに実施例によって説明する。
【実施例】
【0160】
1.測定方法
用語及び測定法の以下の定義は、別段の記載がない限り、本発明の上記概要及び下記実施例に適用される。
【0161】
第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のコモノマー含有量の計算:
【0162】
【数3】
【0163】
式中、
w(PP1)は、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の重量分率[重量%]であり、
w(PP2)は、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の重量分率[重量%]であり、
C(PP1)は、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のコモノマー含有量[モル%]であり、
C(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含有量[モル%]であり、
C(PP2)は、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の計算コモノマー含有量[モル%]である。
【0164】
第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のキシレン低温可溶(XCS)分の計算:
【0165】
【数4】
【0166】
式中、
w(PP1)は、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の重量分率[重量%]であり、
w(PP2)は、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の重量分率[重量%]であり、
XS(PP1)は、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のキシレン低温可溶(XCS)分[重量%]であり、
XS(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のキシレン低温可溶(XCS)分[重量%]であり、
XS(PP2)は、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の計算キシレン低温可溶(XCS)分[重量%]である。
【0167】
第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のメルトフローレートMFR(230℃)の計算:
【0168】
【数5】
【0169】
式中、
w(PP1)は、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の重量分率[重量%]であり、
w(PP2)は、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の重量分率[重量%]であり、
MFR(PP1)は、第1のプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のメルトフローレートMFR(230℃)[g/10min]であり、
MFR(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のメルトフローレートMFR(230℃)[g/10min]であり、
MFR(PP2)は、第2のプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の計算メルトフローレートMFR(230℃)[g/10min]である。
【0170】
それぞれ、弾性プロピレンコポリマー(E)のコモノマー含有量の計算:
【0171】
【数6】
【0172】
式中、
w(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、すなわち第1及び第2の反応器(R1+R2)において製造されるポリマーの重量分率[重量%]であり、
w(E)は、弾性プロピレンコポリマー(E)、すなわち第3及び第4の反応器(R3+R4)において製造されるポリマーの重量分率[重量%]であり、
C(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含有量[モル%]、すなわち第1及び第2の反応器(R1+R2)において製造されるポリマーのコモノマー含有量[重量%]であり、
C(RAHECO)は、プロピレンコポリマーのコモノマー含有量[モル%]、すなわち第4の反応器(R4)における重合後に得られるポリマーのコモノマー含有量[モル%]であり、
C(E)は、弾性プロピレンコポリマー(E)、すなわち第3及び第4の反応器(R3+R4)において製造されるポリマーの計算コモノマー含有量[モル%]である。
【0173】
MFR(230℃)をISO1133に従って測定する(230℃、2.16kg負荷)。
【0174】
NMR分光法による微細構造の定量化
定量的核磁気共鳴(NMR:nuclear−magnetic resonance)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含有量及びコモノマー配列分布を定量化した。定量的13C{H}NMRスペクトルを、H及び13Cそれぞれ400.15及び100.62MHzで動作するBruker AdvanceIII400NMR分光計を用いて溶液状態で記録した。全スペクトルを13C最適化10mm拡張温度プローブヘッドを用いて125℃ですべての気圧装置(pneumatics)に窒素ガスを用いて記録した。材料約200mgを1,2−テトラクロロエタン−d(TCE−d)3mlにクロム(III)アセチルアセトナート(Cr(acac))と一緒に溶解させ、溶媒中の緩和剤の65mM溶液を得た(シン(Singh),G、コタリ(Kothari),A、グプタ(Gupta),V、ポリマー・テスティング(Polymer Testing)28 5(2009年)、475)。確実に均質の溶液にするために、熱ブロック中の最初の試料調製後、NMR管を回転乾燥器中で少なくとも1時間更に加熱した。磁石に挿入し、管を10Hzで回転させた。この設定は、第一に高分解能のために選択され、正確なエチレン含有量の定量化のために定量的に必要である。標準単一パルス励起をNOEなしで使用し、最適化された先端角度、1秒のリサイクル遅延及びバイレベル(bi−level)WALTZ16デカップリングスキームを用いた(ゾウ(Zhou),Z、クエメル(Kuemmerle),R、キウ(Qiu),X、レッドワイン(Redwine),D、コング(Cong),R、タハ(Taha),A、バウ(Baugh),D、ウィニフォード(Winniford),B、ジャーナル・オブ・マグネティック・レゾナンス(J.Mag.Reson.)187(2007年)225、ブシコ(Busico),V、カーボニーレ(Carbonniere),P、シプロ(Cipullo),R、ペレッキア(Pellecchia),R、セバン(Severn),J、タラリーコ(Talarico),G、マクロモレキュラー・ラピッド・コミュニケーションズ(Macromol.Rapid Commun.)2007年、28、1128)。1回のスペクトル当たり合計6144(6k)のトランジェントを得た。
【0175】
定量的13C{H}NMRスペクトルを処理し、積分し、関連する定量的性質を所有のコンピュータプログラムを用いて積分から求めた。化学シフトはすべて、溶媒の化学シフトを用いて30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中心メチレン基を間接的基準とした。この手法によって、この構造単位が存在しないときでも、比較参照が可能であった。エチレンの組入れに対応する特徴的なシグナルが認められたチェン(Cheng),H.N.、マクロモレキュルズ(Macromolecules)17(1984年)、1950)。
【0176】
(L.レスコニ(Resconi)、L.カバロ(Cavallo)、A.フェイト(Fait)、F.ピエモンテシ(Piemontesi)、ケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)2000年、100(4)、1253、チェン(Cheng),H.N.、マクロモレキュルズ(Macromolecules)1984年、17、1950、並びにW−J.ワン(Wang)及びS.ジュ(Zhu)、マクロモレキュルズ(Macromolecules)2000年、33 1157に記載のように)観察された2,1エリスロ部位欠損に対応する特徴的なシグナルを用いて、求めた性質に対する部位欠損の影響を補正する必要があった。別のタイプの部位欠損に対応する特徴的なシグナルは観察されなかった。
【0177】
ワン(Wang)らの方法(ワン(Wang),W−J、ジュ(Zhu),S、マクロモレキュルズ(Macromolecules)33(2000年)、1157)を用いて、13C{H}スペクトルのスペクトル領域全体にわたる複数のシグナルを積分して、コモノマー分率を定量化した。この方法は、その堅牢性のため、また、必要なときに部位欠損の存在を説明できるので、選択された。得られるコモノマー含有量の全範囲にわたる妥当性を高めるために積分領域をわずかに調節した。
【0178】
PPEPP配列中の孤立エチレンのみが認められた系の場合、ワン(Wang)らの方法を修正して、存在しないことが知られている部位の非ゼロ積分の影響を低下させた。この手法は、かかる系のエチレン含有量の過大評価を抑制し、絶対的エチレン含有量の決定に用いられる部位の数を
E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))
に削減することによって成された。このセットの部位を使用して、対応する積分式は、ワン(Wang)らの論文(ワン(Wang),W−J、ジュ(Zhu),S、マクロモレキュルズ(Macromolecules)33(2000年)、1157)で用いられた同じ記号を用いて、
E=0.5(I+I+0.5(I+I))
になる。絶対的プロピレン含有量に用いた式は修正しなかった。
【0179】
モルパーセントコモノマー取り込みをモル分率から計算した。
E[mol%]=100*fE
【0180】
重量パーセントコモノマー取り込みをモル分率から計算した。
E[重量%]=100*(fE*28.06)/((fE*28.06)+((1−fE)*42.08))
【0181】
三連構造レベルのコモノマー配列分布をカクゴ(Kakugo)らの分析法によって求めた(カクゴ(Kakugo),M.、ナイトウ(Naito),Y.、ミズヌマ(Mizunuma),K.、ミヤタケ(Miyatake),T.マクロモレキュルズ(Macromolecules)15(1982年)1150)。この方法をその堅牢性のために選択し、積分領域をわずかに調節して、より広い範囲のコモノマー含有量に対する適用性を高めた。
【0182】
孤立/ブロックエチレン組入れの相対含有量を三連構造配列分布から以下の関係(式(I))を用いて計算した。
【0183】
【数7】
【0184】
式中、
I(E)は、孤立/ブロックエチレン配列の相対含有量[%]であり、
fPEPは、試料におけるプロピレン/エチレン/プロピレン配列(PEP)のモル分率であり、
fPEEは、試料におけるプロピレン/エチレン/エチレン配列(PEE)及びエチレン/エチレン/プロピレン配列(EEP)のモル分率であり、
fEEEは、試料におけるエチレン/エチレン/エチレン配列(EEE)のモル分率である。
【0185】
固有粘度をDIN ISO1628/1、1999年10月に従って測定する(デカリン中135℃)。
【0186】
キシレン可溶分(XCS、重量%):キシレン低温可溶分(XCS)の含有量を25℃でISO16152、第1版、2005年7月1日に従って測定する。不溶性のままである部分がキシレン低温不溶性(XCI)画分である。
【0187】
ヘキサン抽出可能画分を、単層キャストフィルムライン上で溶融温度220℃及び冷却ロール温度20℃で製造された厚さ100μmのキャストフィルムについて、FDA法に従って測定する(連邦登録(federal registration)、第21編、1章、177部、第1520節、s.付属B)。抽出を温度50℃及び抽出時間30分で行った。
【0188】
融解温度(T)及び融解熱(H)、結晶化温度(T)及び結晶化熱(H):試料5から10mgをMettler TA820示差走査熱量測定(DSC)で測定。DSCをISO11357−3:1999に従って加熱/冷却/加熱サイクルにおいて走査速度10℃/minで温度範囲+23〜+210℃で行う。結晶化温度及び結晶化熱(H)を冷却段階から求め、融解温度及び融解熱(H)を第2の加熱段階から求める。
【0189】
ガラス転移温度Tgを動的機械分析によってISO6721−7に従って測定する。測定をねじれモードで圧縮成形試料(40x10x1mm)に対して−100℃から+150℃で加熱速度2℃/min及び周波数1Hzで実施する。
【0190】
縦及び横方向の引張弾性率を、単層キャストフィルムライン上で溶融温度220℃及び冷却ロール温度20℃で製造された厚さ50μmのキャストフィルムについて、ISO527−3に従って23℃で測定した。試験をクロスヘッド速度1mm/minで実施した。
【0191】
全貫通エネルギー:
フィルムの衝撃強さを、引張弾性率の場合に記述したフィルムについて、ISO7725−2に従う「Dynatest」法によって測定する。値「Wbreak」[J/mm]は、フィルムが破断前に吸収することができる厚さ1mm当たりの全貫通エネルギーである。この値が高いほど、材料は強靱である。
【0192】
透明度、曇価及び鮮明性を、EN ISO1873−2に従って溶融温度200℃で射出成形された60x60x1mm板(plaque)、並びに単層キャストフィルムライン上で溶融温度220℃及び冷却ロール温度20℃で製造された厚さ50μmのキャストフィルムについて、ASTM D1003−00に従って測定した。
【0193】
曲げ弾性率:曲げ弾性率をEN ISO1873−2に従って23℃で射出成形された80x10x4mm試験バーについてISO178に従って3点屈曲で測定した。
【0194】
シャルピーノッチ付き衝撃強さをEN ISO1873−2に従って射出成形された80x10x4mm試験バーを使用して23°及び−20℃でISO179 1eAに従って測定する。
【0195】
蒸気滅菌をSystec Dシリーズ機械(Systec Inc.、USA)において行った。試料を23℃から加熱速度5℃/minで加熱した。121℃で30分間保持後、試料を蒸気滅菌器からすぐに取り出し、更に処理するまで室温で貯蔵した。
【0196】
2.実施例
本発明実施例(IE:inventive example)の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の重合プロセスに使用される触媒を以下のように調製した。
【0197】
使用化学物質:
Chemturaによって供給されたブチルエチルマグネシウム(Mg(Bu)(Et)、BEM:butyl ethyl magnesium)の20%トルエン溶液
Amphochemによって供給された2−エチルヘキサノール
Dowによって供給された3−ブトキシ−2−プロパノール(DOWANOL(商標)PnB)
SynphaBaseによって供給されたビス(2−エチルヘキシル)シトラコン酸エステル
Millenium Chemicalsによって供給されたTiCl
Aspokemによって供給されたトルエン
Evonikによって供給されたViscoplex(登録商標)1−254
Chevronによって供給されたヘプタン
【0198】
Mgアルコキシ化合物の調製
20lステンレス鋼反応器中で撹拌しながら(70rpm)、2−エチルヘキサノール4.7kgとブトキシプロパノール1.2kgの混合物をブチルエチルマグネシウム(Mg(Bu)(Et))の20重量%トルエン溶液11kgに添加することによってMgアルコキシド溶液を調製した。添加中に反応器内容物を45℃未満に維持した。添加終了後、反応混合物の混合(70rpm)を60℃で30分間続けた。室温に冷却後、供与体ビス(2−エチルヘキシル)シトラコン酸エステル2.3kgをMgアルコキシド溶液に添加し、温度を25℃未満に維持した。混合を撹拌下(70rpm)15分間続けた。
【0199】
固体触媒成分の調製
TiCl 20.3kg及びトルエン1.1kgを20lステンレス鋼反応器に添加した。350rpmで混合し、温度を0℃に維持して、実施例1で調製したMgアルコキシ化合物14.5kgを1.5時間添加した。Viscoplex(登録商標)1−254 1.7l及びヘプタン7.5kgを添加し、0℃で1時間混合後、形成されたエマルジョンを1時間以内に90℃に昇温した。30分後、混合を停止し、触媒液滴を固化し、形成された触媒粒子を沈殿させた。沈殿後(1時間)、上清液体を吸引除去した。次いで、触媒粒子をトルエン45kgによって90℃で20分間洗浄し、続いてヘプタンで2回洗浄した(30kg、15min)。1回目のヘプタン洗浄中に温度を50℃に降下させ、2回目の洗浄中に室温に降下させた。
【0200】
こうして得られた触媒を、共触媒のトリエチル−アルミニウム(TEAL)及び供与体のシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(C供与体)と一緒に使用した。
【0201】
アルミニウムと供与体の比、アルミニウムとチタンの比、及び重合条件を表1に示す。
【0202】
比較例(CE1)の重合プロセスに用いた触媒は、共触媒のトリエチルアルミニウム(TEAL)及び供与体のジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)と一緒の国際公開第2010009827号A1の実施例の項の触媒(30及び31ページ参照)であった。
【0203】
【表1】
【0204】
【表2】
【0205】
すべてのポリマー粉体を、同方向回転二軸押出機Coperion ZSK 57において220℃で0.2重量%Irganox B225(ドイツのBASF AGのIrganox 1010(ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3’,5’−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシトルイル)プロピオナートとトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファート)ホスファイト)の1:1−ブレンド)及び0.1重量%ステアリン酸カルシウムと混合した。IE4及びCE2は、ヘント/ベルギーのMilliken Chemical製Millad 3988として市販されている0.2重量%DMDBS(1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)を用いた、それぞれIE3及びCE1の核形成バージョンである。略語「b.s.」及び「a.s.」は、滅菌前及び後の状態を指す。
【0206】
【表3】
【0207】
表2からわかるように、本発明実施例は、光学的性質と機械的性質のバランスが最適化又は改善され、すなわち光学性能が改善され、剛性(又は柔軟性)レベルも同様である。α核形成すると(IE4)、この改善された性質バランスが保持され、強化さえされる。表2によれば、本発明実施例の耐衝撃性も、核形成によって同様であり、更に強化される。同じことが図1からもわかる。すなわち、本発明実施例は、光学的性質と機械的性質のバランスが最適化又は改善され、すなわち光学性能が改善され、柔軟性レベルも同様である。

図1