(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
エネルギー効率向上の要請に応えるべく、各業界において、大気に排出されるガスの熱、即ち排気熱を回収し、これを再利用する対策が講じられている。特に、内燃機関を搭載する自動車分野においては、総合的な熱効率向上のため、内燃機関の排気ガスの熱を回収する排気熱回収装置が排気管に介装され、排気熱との熱交換によって加熱された冷却媒体を暖機促進や暖房性能向上に供することが一般化しつつある。例えば、下記の特許文献1には、「排気ガスと熱交換を行なう熱交換器と、排気ガスが熱交換器を迂回するバイパス経路と、バイパス経路を開閉する弁体とを備える排気熱回収装置において、熱交換器から排出直後の媒体に接触する温度作動アクチュエータを備え、温度作動アクチュエータは媒体温度が所定の値以上になると伸長運動し弁体を開駆動するようにした」排気熱回収装置が開示されている(特許文献1の段落〔0008〕に記載)。
【0003】
更に、上記の排気熱回収装置として、特許文献1には「インレットコーン、アウトレットコーン、バイパスパイプ、熱交換器が、溶接等によって相互に気密に嵌合固定し構成される。インレットコーンにはバイパスパイプと熱交換器の上流端部が嵌合され、アウトレットコーンにはバイパスパイプと熱交換器の下流端部が嵌合され」る構成が開示され(特許文献1の段落〔0013〕に記載。但し、付記された符合は省略)、更に、熱交換器について「ケーシング内に偏平断面の9本の伝熱管が、その両端部を仕切板に液密に貫通固定され」、「2枚の仕切板の間において、ケーシング内面と伝熱管外面とによって、媒体が流動するウオータージャケットが形成される」旨記載されている(同段落〔0014〕に記載。但し、付記された符合は省略)。
【0004】
また、下記の特許文献2には、「内部に排気ガスが流される伝熱チューブが複数積層され、これらの積層された伝熱チューブがコアケースに収納され、このコアケースに媒体を導入する導入口と伝熱チューブで温められた媒体を排出する排出口とが設けられ、導入口から排出口に向かって媒体が流されると共に、伝熱チューブの内部に排気ガスが流され、伝熱チューブの外周に流される媒体が排気ガスの熱で温められ、伝熱チューブは、少なくとも3つ積層され、3つ以上の伝熱チューブが積層されることで、伝熱チューブの上面とコアケースとの間、伝熱チューブと伝熱チューブとの間、伝熱チューブの下面とコアケースとの間に形成される流路は、断面視で4層以上形成され、伝熱チューブの側面とコアケースとの間に、媒体が他の層へ移動する層間路が形成され」た熱交換器が開示され、「流路閉塞手段で任意の層間路を塞ぐ」ための構成が提案されている(特許文献2の段落〔0009〕に記載)。
【0005】
更に、特許文献2には、「排熱回収装置は、内燃機関で発生した排気ガスが導入される導入部材と、この導入部材に上部通路を介して繋がれ先端がガス流入部材に支持される熱交換器と、この熱交換器の後端に接続され熱交換器を通過した排気ガスが流されるガス流出部材と、熱交換器の下方に設けられ上部通路に流されない排気ガスが流される下部通路と、媒体排出部のアクチュエータ支持部で支持され媒体の温度で作動するサーモアクチュエータと、このサーモアクチュエータの先端に設けられ上部通路に流される排気ガスの量を調節するバルブ機構とからなる」構成が開示されている(特許文献2の段落〔0032〕に記載。但し、付記された符合は省略)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献に開示された熱交換器に関し、特許文献1においては「9本の伝熱管」が用いられ、排気熱回収装置に適用される際には「インレットコーンにはバイパスパイプと熱交換器の上流端部が嵌合され、アウトレットコーンにはバイパスパイプと熱交換器の下流端部が嵌合され」る構成とされている。また、特許文献2においては、「3つ以上の伝熱チューブ」の熱交換器が用いられ、排気熱回収装置に適用される際には「内燃機関で発生した排気ガスが導入される導入部材と、この導入部材に上部通路を介して繋がれ先端がガス流入部材に支持される熱交換器と、この熱交換器の後端に接続され熱交換器を通過した排気ガスが流されるガス流出部材」を備えた構成とされている。
【0008】
上記の特許文献1及び2に開示された熱交換器は何れも、両側端部に、排気ガスを導入する「インレットコーン」あるいは「導入部材」が設けられると共に、排気ガスを排出する「アウトレットコーン」あるいは「ガス流出部材」が設けられており、本体部を含む三つの部材で構成されている。従って、熱交換器の一層の小型化が望まれる。また、熱交換器に対し排気ガスを均一に導入するためには、その前後に接合される部材を含めた対策を講ずる必要があり、特許文献2でも提案されているが、複雑な構造となり、容易ではない。更に、熱交換器の小型化のみでは直ちに排気熱回収装置の小型化につながらず、組み付け等も容易ではない。
【0009】
内燃機関に搭載される排気熱回収装置においては、内燃機関及び冷却媒体が冷えた状態での冷間始動時には、早急に冷却媒体を温める必要があり、排気ガスを導入する迂回流路での熱損失を極力抑える必要があるが、上記の「インレットコーン」や「導入部材」は熱容量が大きいので、質量及び表面積の低減が要求される。また、自動車への搭載に際し、装置全体として一層の小型化が要請されている。更には、熱交換器における冷却媒体との効率的な熱交換という観点からも、特許文献1及び2に開示された熱交換器及び排気熱回収装置では、近時の要求性能を満たすことはできない。このため、所望の熱交換効率を維持しつつ、特に、迂回流路が占めるヒートマス(熱容量)及びスペース(空間)を最小化することが喫緊の課題となっている。
【0010】
そこで、本発明は、排気ガスと冷却媒体との熱交換を行う熱交換器において、少ない構成部品で一層の小型化を可能とすることを課題とする。
【0011】
また、本発明は、内燃機関の迂回流路を通過する排気ガスを熱交換器内で冷却媒体と熱交換して排気熱を回収する排気熱回収装置において、迂回流路を含めて熱交換器を適切に構成することによって、小型で効率的な熱回収を行い得る排気熱回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を達成するため、本発明は、ハウジング内で排気ガスと冷却媒体との熱交換を行う熱交換器であって、前記ハウジング内に並設される複数個の熱交換セグメントと、前記ハウジングに液密的に接合され、前記複数個の熱交換セグメントを支持する封止部材を備え、前記複数個の熱交換セグメントを構成する各熱交換セグメント内に排気ガス流路を有すると共に、前記ハウジングの内面と各熱交換セグメントとの間並びに相互に隣接する熱交換セグメント間に冷却媒体流路を有し、各熱交換セグメントが、一つの面のみに開口を有し、少なくとも該開口の外側が前記封止部材によって液密的に封止される筐体と、該筐体内に収容され、所定方向の排気ガス流のみを許容する複数の流路を有すると共に、該複数の流路の上流側及び下流側にガス導入流路及びガス排出流路を有する案内部材
とを具備し、各々の前記筐体の開口に、前記ガス導入流路に連通するガス導入口を有すると共に、前記ガス排出流路に連通するガス排出口を有
し、前記複数個の熱交換セグメントの各々の前記案内部材は、一枚の熱交換用板材が屈曲され、連続するS字状断面を有する波状に形成されたフィンを備え、該フィンの延出方向の一側面が前記ガス導入口と前記ガス排出口の間の前記筐体の開口を遮蔽し、当該フィンの両端面側が夫々前記ガス導入口と前記ガス排出口に連通するように配置される構成としたものである。例えば、上記の筐体は、長手方向の一つの面のみに開口を有する直方体形状に形成され得るが、その場合には上記の所定方向は長手方向となる。
【0014】
更に、上記の熱交換器は、前記ハウジングに形成され前記冷却媒体流路に連通する冷却媒体導入口及び冷却媒体排出口と、該冷却媒体導入口及び冷却媒体排出口の間に介装される整流板を備えたものとするとよい。この整流板は櫛型形状を有するものとし、該櫛型を構成する櫛歯の一部が、前記複数個の熱交換セグメントが相互に隣接する各間隙に介装される構成とするとよい。更に、前記整流板は、前記櫛型を構成する櫛歯の一部の先端が折曲された折曲部を有し、該折曲部によって前記各間隙に対する冷却媒体案内路が形成されている構成とするとよい。
【0017】
そして、本発明の排気熱回収装置は、内燃機関の排気ガスを導入する主排気流路と、該主排気流路の一部から分岐してガス導入口を構成すると共に当該主排気流路の他の部分に合流してガス排出口を構成する迂回流路と、該迂回流路を通過する排気ガスをハウジング内で冷却媒体と熱交換して排気熱を回収する熱交換器とを備え、該熱交換器が、前記ハウジング内に並設される複数個の熱交換セグメントと、前記ハウジングに液密的に接合され、前記複数個の熱交換セグメントを支持する封止部材を備え、前記複数個の熱交換セグメントを構成する各熱交換セグメント内に排気ガス流路を有すると共に、前記ハウジングの内面と各熱交換セグメントとの間並びに相互に隣接する熱交換セグメント間に冷却媒体流路を有し、各熱交換セグメントが、一つの面のみに開口を有し、少なくとも該開口の外側が前記封止部材によって液密的に封止される筐体と、該筐体内に収容され、所定方向の排気ガス流のみを許容する複数の流路を有すると共に、該複数の流路の上流側及び下流側にガス導入流路及びガス排出流路を有する案内部材
とを具備し、各々の前記筐体の開口に、前記ガス導入流路に連通するガス導入口を有し、該ガス導入口が前記迂回流路のガス導入口を構成すると共に、各々の前記筐体の開口に、前記ガス排出流路に連通するガス排出口を有し、該ガス排出口が前記迂回流路のガス排出口を構成
し、前記複数個の熱交換セグメントの各々の前記案内部材は、一枚の熱交換用板材が屈曲され、連続するS字状断面を有する波状に形成されたフィンを備え、該フィンの延出方向の一側面が前記ガス導入口と前記ガス排出口の間の前記筐体の開口を遮蔽し、当該フィンの両端面側が夫々前記ガス導入口と前記ガス排出口に連通するように配置される構成としたものである。
【0019】
上記の排気熱回収装置に供される前記熱交換器は、前記ハウジングに形成され前記冷却媒体流路に連通する冷却媒体導入口及び冷却媒体排出口と、該冷却媒体導入口及び冷却媒体排出口の間に介装される整流板とを備えたものとし、該整流板は櫛型形状を有し、該櫛型を構成する櫛歯の一部が、前記複数個の熱交換セグメントが相互に隣接する各間隙に介装される構成とするとよい。更に、前記整流板は、前記櫛型を構成する櫛歯の一部の先端が折曲された折曲部を有し、該折曲部によって前記各間隙に対する冷却媒体案内路が形成されているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明は、ハウジング内で排気ガスと冷却媒体との熱交換を行う熱交換器であって、前記ハウジング内に並設される複数個の熱交換セグメントと、前記ハウジングに液密的に接合され、前記複数個の熱交換セグメントを支持する封止部材を備え、前記複数個の熱交換セグメントを構成する各熱交換セグメント内に排気ガス流路を有すると共に、前記ハウジングの内面と各熱交換セグメントとの間並びに相互に隣接する熱交換セグメント間に冷却媒体流路を有し、各熱交換セグメントが、一つの面のみに開口を有し、少なくとも該開口の外側が前記封止部材によって液密的に封止される筐体と、該筐体内に収容され、所定方向の排気ガス流のみを許容する複数の流路を有すると共に、該複数の流路の上流側及び下流側にガス導入流路及びガス排出流路を有する案内部材
とを具備し、各々の前記筐体の開口に、前記ガス導入流路に連通するガス導入口を有すると共に、前記ガス排出流路に連通するガス排出口を有
し、前記複数個の熱交換セグメントの各々の前記案内部材は、一枚の熱交換用板材が屈曲され、連続するS字状断面を有する波状に形成されたフィンを備え、該フィンの延出方向の一側面が前記ガス導入口と前記ガス排出口の間の前記筐体の開口を遮蔽し、当該フィンの両端面側が夫々前記ガス導入口と前記ガス排出口に連通するように配置される構成であるので、必要な空間を極力小さくしつつ効率的な熱交換を行うことができると共に、熱交換効率が良好な案内部材を各熱交換セグメント内に容易に組み込むことができ、一層の小型化が可能となる。
【0027】
更に、上記の熱交換器において、ハウジングに形成され冷却媒体流路に連通する冷却媒体導入口及び冷却媒体排出口と、該冷却媒体導入口及び冷却媒体排出口の間に介装される整流板を備えたものとすれば、冷却媒体を円滑に循環させて、効率的に熱交換を行うことができる。上記の整流板は櫛型形状を有するものとし、櫛型を構成する櫛歯の一部が、複数個の熱交換セグメントが相互に隣接する各間隙に介装される構成とすれば、各熱交換セグメント内で冷却媒体を適切且つ円滑に循環させることができる。更に、櫛型を構成する櫛歯の一部の先端が折曲された折曲部を有し、折曲部によって各間隙に対する冷却媒体案内路が形成されている整流板を用いれば、各熱交換セグメント内で均等に熱交換を行うことができ、効率的に熱交換を行うことができる。
【0029】
そして、本発明の排気熱回収装置においては、内燃機関の排気ガスを導入する主排気流路と、主排気流路の一部から分岐してガス導入口を構成すると共に主排気流路の他の部分に合流してガス排出口を構成する迂回流路と、迂回流路を通過する排気ガスをハウジング内で冷却媒体と熱交換して排気熱を回収する熱交換器であって、前述のように構成された熱交換器とを備え、各々の筐体の開口に形成されるガス導入口及びガス排出口が、夫々迂回流路のガス導入口及びガス排出口を構成しているので、迂回流路の熱容量及びこれに必要な空間を極力小さくしつつ、効率的な熱回収を行うことができ
ると共に、熱交換効率が良好な案内部材を各熱交換セグメント内に容易に組み込むことができ、熱交換器のみならず、排気熱回収装置全体として小型化が可能となる。
【0031】
上記の排気熱回収装置に供される熱交換器は、ハウジングに形成され冷却媒体流路に連通する冷却媒体導入口及び冷却媒体排出口と、冷却媒体導入口及び冷却媒体排出口の間に介装される整流板とを備えたものとし、この整流板は櫛型形状を有するものとし、櫛型を構成する櫛歯の一部が、複数個の熱交換セグメントが相互に隣接する各間隙に介装される構成とすれば、上記各熱交換セグメント内で冷却媒体を適切且つ円滑に循環させることができ、効率的に熱回収を行うことができる。更に、櫛型を構成する櫛歯の一部の先端が折曲された折曲部を有し、折曲部によって各間隙に対する冷却媒体案内路が形成されている整流板を用いれば、各熱交換セグメント内で均等に熱交換を行うことができ、効率的に熱回収を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施形態に係る熱交換器を備えた排気熱回収装置の横断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る熱交換器における冷却媒体の流れを示す部分断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置の縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態における隣接する熱交換セグメント間の関係を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に供される熱交換セグメントを構成する部品の組付前の状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に供される熱交換セグメント及び整流板の組付状況を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る熱交換器をハウジングの開口側から見た斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に供される隔壁部材の斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に供される熱交換セグメントの筐体を構成する蓋部材の縦断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に供される熱交換セグメントを構成する筐体の部分断面正面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に供される封止部材に複数の熱交換セグメント及び整流板が装着された状態を示す平面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に供される封止部材に熱交換セグメント及び整流板が装着された状態を示す側面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に供されるアッパハウジングの側面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に供されるアッパハウジングの縦断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置の部分断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置の平面図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置の正面図である。
【
図18】本発明の他の実施形態に係る排気熱回収装置の一部を示す断面図である。
【
図19】本発明の更に他の実施形態に係る排気熱回収装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の望ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1乃至
図3は本発明の一実施形態に係る熱交換器1を備えた排気熱回収装置を示すもので、排気熱回収装置は、内燃機関(図示せず)の排気ガスを導入する主排気流路2と、この主排気流路2から分岐し主排気流路2に合流する迂回流路3と、この迂回流路3を通過する排気ガスと冷却媒体との熱交換を行い排気熱を回収する熱交換器1を備えている。本実施形態においては、排気熱回収装置のハウジング20は、主排気流路2に対し(車両に搭載した状態で)上方に配置されたアッパハウジング21と、これに接合されるロアハウジング22によって筐体形状に形成され、封止部材23によって液密的に分離されている。尚、本実施形態においては、二つの部材22a及び22bが接合されてロアハウジング22が形成されている。更に、主排気流路2と迂回流路3との連通を開閉する弁装置4が設けられているが、先ず熱交換器1について説明する。
【0040】
本実施形態の熱交換器1は、そのハウジングが排気熱回収装置のアッパハウジング21によって構成され、
図1乃至
図7に示すように、複数個(本実施形態では5個)の熱交換セグメント(代表して10で示す)を有し、各熱交換セグメント10は、一つの面のみが開口する筐体11と、筐体11内に収容された案内部材12によって構成されている。本実施形態の筐体11は長手方向の下側平面部が開口する直方体形状に形成されているが、例えば、両側面が正方形で下側平面部が開口する直方体形状に形成してもよく、あるいは、
図1等の上方に円弧状曲面を有し、両側面が半円形で下側平面部が開口する形状等に形成してもよい。
【0041】
各案内部材12は、所定方向(本実施形態では筐体11の長手方向)の排気ガス流のみを許容する複数の流路GPを有すると共に、その上流側及び下流側にガス導入流路GI及びガス排出流路GOを有し、後述するように、各々の筐体11の開口に、ガス導入流路GIに連通するガス導入口11aを有すると共に、ガス排出流路G0に連通するガス排出口11bを有する構成とされる。上記5個の熱交換セグメント10は所定の間隙を隔てて平行に配置され、各熱交換セグメント10の開口面10aと同じ側の面に開口21aを有するアッパハウジング21によって囲繞されている。而して、アッパハウジング21内に5個の熱交換セグメント10が収容され、各熱交換セグメント10の所定方向(筐体11の長手方向)の前後に設けられるガス導入口11a及びガス排出口11bによって、夫々、迂回流路3のガス導入口3a及びガス排出口3bが構成される。
【0042】
上記の熱交換器1は、アッパハウジング21内を液密的に区画し、少なくとも筐体11の開口の外側を液密的に封止する封止部材23を備えており、この封止部材23には、
図5及び
図6に示すように5箇所にスリット(代表して23aで示す)が平行に形成されており、各スリット23aに夫々熱交換セグメント10が嵌合されて
図1及び
図2(並びに後述の
図11及び
図12)に示すように支持される。而して、アッパハウジング21及び封止部材23の内面と5個の熱交換セグメント10の外面との間、並びに、それらの熱交換セグメント10が相互に隣接する筐体11、11間の間隙に、冷却媒体流路FPが形成される。本実施形態のアッパハウジング21においては、
図2及び
図7(並びに後述の
図13)に示すように、冷却媒体流路FPへの冷却媒体導入口21bが、冷却媒体流路FPからの冷却媒体排出口21cより(車両に搭載した状態で)下方に設けられており、冷却媒体導入口21bと冷却媒体排出口21cとの間に整流板24が介装されている。
【0043】
整流板24は、
図5及び
図6に示すように櫛型形状を有し、櫛型を構成する櫛歯24a乃至24fのうち櫛歯24b乃至24eは、5個の熱交換セグメント10が相互に隣接する各間隙に介装されている。更に、櫛歯24b乃至24eの先端が折曲されて折曲部24g乃至24jが形成されており、幅方向中央に位置する折曲部24h及び24iが最長となるように設定されている。これら折曲部24h及び24iによって、上記の熱交換セグメント10間の各間隙に対する冷却媒体案内路が形成される。而して、櫛歯24a乃至24fによって、各熱交換セグメント10の幅方向の中間部では冷却媒体の流速が速く、端部では遅くなるように調整されるので、各熱交換セグメント10内で均等に熱交換を行うことができる。
【0044】
各熱交換セグメント10の筐体11は、
図5(及び、後述の
図10)に示すように、二つの蓋部材11x及び11yの開口側壁部が接合されて(長手方向の一つの面が開口する)直方体形状に形成される。
図5及び
図6(並びに、後述の
図9及び
図10)に示すように、各筐体11の相互に隣接する側の側面に少なくとも一つの凸部11pが同位置に形成されており、凸部11pが冷却媒体流路FP内に配置される。本実施形態においては、長手方向に延在する長尺の凸部11pに加え、複数の突起状の凸部11qが形成されている。
図4に示すように、相互に隣接する凸部11p、11pの間に空隙(s)が形成されており、ここで、冷却媒体に混入した気泡が分離されて
図4の上方に移動する。一方、相互に隣接する凸部11q、11qは当接しているが、これらによって、隣接する筐体11、11間の間隙が規定され、
図1に実線の矢印で示し、
図2に実線及び二点鎖線の矢印で示すように冷却媒体が案内され、上記の整流板24と共に、所望の冷却媒体流路FPが確保される。
【0045】
また、本実施形態においては、各熱交換セグメント10の案内部材12は、
図1、
図3、
図4及び
図5に示すように、一枚の熱交換用板材が屈曲され、連続するS字状断面を有する波状に形成されたフィン13で構成されている。そして、
図1及び
図7に示すように、フィン13の延出方向の一側面13aが筐体11の長手方向の開口を遮蔽すると共に、フィン13の両端面13b、13cが夫々ガス導入口11a(ひいては、迂回流路3のガス導入口3a)及びガス排出口11b(ひいては、迂回流路3のガス排出口3b)に連通するように配置されている。而して、
図1に示す排気ガスの流路(GI、GP、GO)が構成され、排気ガスの流れは破線矢印で示すようになる。上記の蓋部材11x及び11yの接合、筐体11とフィン13との接合、各熱交換セグメント10が各スリット23aに嵌合された後の接合に際しては、ロウ付け等によって適宜、気密的あるいは液密的に固定される。尚、筐体11における上記長手方向の開口は、フィン13の延在方向の一側面13aに代えて、別部材(図示せず)を接合することとしてもよく、あるいは、筐体11と一体的に閉塞部(図示せず)を形成することとしてもよい。
【0046】
一方、弁装置4はロアハウジング22に装着され、ロアハウジング22内に主排気流路2が形成されている。従って、主排気流路2から迂回流路3に分岐する分岐部2aと、迂回流路3から(後述する第2の弁部材42を介して)主排気流路2に合流する合流部2bが、ロアハウジング22内に形成されている。
図1に示すように、弁座25aを有する隔壁部材25が部材22aに接合されると共に、連通孔26aを有する隔壁部材26が部材22bに嵌合されており、隔壁部材25によって分岐部2aと合流部2bが分離されている。尚、隔壁部材25及び26は接合されて一体的な部材として、
図7に二点鎖線で示すように配置される。
【0047】
隔壁部材26は、
図7及び
図8に示すように、鞍型の筐体に形成されており、合流部2bで主排気流路2に連通する連通孔26aと、後述の保持部材44が嵌合する連通孔26b、26bが形成されている。隔壁部材26には、
図8に示すように傾斜面部26cが形成されており、各熱交換セグメント10の開口面10aに対向するように配置され、各熱交換セグメント10から排出される熱交換後のガスが連通孔26a方向に案内される。また、連通孔26b、26bの中心を結ぶ軸に平行に形成された平面部26dが形成されており、この平面部26dが、
図1及び
図3に示すように、緩衝部材として機能するワイヤメッシュ27を介して、各熱交換セグメント10の開口面10a及びフィン13の延在方向の側面13aの中央部を遮蔽し、迂回流路3をガス導入口3a側とガス排出口3b側に分離するように配置されている。
【0048】
而して、隔壁部材26は、
図1に示すように、その開口26eが主排気流路2の弁装置4下流側に開口するように配置される。この結果、前述のように、フィン13の両端面13b、13cが夫々ガス導入口11a(3a)及びガス排出口11b(3b)に連通し、
図1に示す排気ガスの流路(GI、GP、GO)が構成される。尚、
図7に示すように、隔壁部材26の側面の上下方向に凹部26fが形成されているが、これは、排気ガス中の水分が凝縮した凝縮水を排出する溝に供される。
【0049】
ここで、上記の構成になる熱交換器1について、更に、
図9乃至
図14を参照して主要な構成部品の組付手順に沿って説明する。
図9に断面を示す蓋部材11xと略同形状の蓋部材11yが、
図10の左方に一部断面を示すように、両者の開口側壁部が重合するように接合されて、
図10に示す筐体11が形成される。この筐体11には、高さが異なる前述の長尺の凸部11pと突起状の凸部11qが形成されており、両者の高さの差は(s/2)に設定されている。そして、
図5に示すように、フィン13が筐体11内に収容された状態で蓋部材11x及び11yが接合されると、
図6に示す熱交換セグメント10が構成される。
【0050】
図5及び
図6に示すように、封止部材23には5箇所にスリット23aが平行に形成されており、各スリット23aに夫々熱交換セグメント10が嵌合されると
図11及び
図12に示すように支持され、
図4に拡大して示すように、相互に隣接する筐体11の凸部11p、11pの間に空隙(s)が形成される。次に、
図5及び
図6に示す整流板24の櫛歯24b乃至24eが5個の熱交換セグメント10の隣接する各間隙に介装されると共に、
図6及び
図11に示すように、櫛歯24a及び24fが両側の熱交換セグメント10の外側に位置するように配設され、アッパハウジング21内に収容される。
【0051】
熱交換器1のハウジングを構成するアッパハウジング21は、
図13及び
図14に示す筐体形状で、冷却媒体導入口21b及び冷却媒体排出口21cが形成されており、効率的な熱交換を企図し、冷却媒体導入口21bが冷却媒体排出口21cより(車両に搭載した状態で)下方に設けられている。同様の趣旨で、
図2及び
図12に示すように両者間に整流板24が位置するように構成されており、
図2及び
図3に示すようにアッパハウジング21内に配置される。
【0052】
一方、本実施形態の排気熱回収装置に供される弁装置4は、主排気流路2を開閉する第1の弁部材41と、迂回流路3を開閉する第2の弁部材42と、これら第1及び第2の弁部材41、42を支持する単一の軸部材43と、軸部材43を囲繞するように保持しロアハウジング22の少なくとも一方の側面(本実施形態では
図3の左側の側面)に支持される保持部材44を備え、アクチュエータ50によって軸部材43が回転駆動されるように構成されている。尚、保持部材44は、見かけ上はロアハウジング22の一方(
図3の左側)の側面のみに支持された片持支持構造であるが、隔壁部材26に両端が支持されているので、実質的には両端支持構造となっている。
【0053】
本実施形態の第2の弁部材42は、円板状の第1の弁部材41の支持部に接合された湾曲板で構成されており、(隔壁部材26に両端が支持された)保持部材44に対し回動自在に軸支された軸部材43を中心に、第1の弁部材41と一体となってピボット作動するように構成されている。そして、第2の弁部材42は合流部2bで迂回流路3を開閉するように配設され、第1の弁部材41が主排気流路2を開とするときには、第2の弁部材42が迂回流路3を閉とする(但し、必ずしも全閉状態とする必要はない)と共に、保持部材44を主排気流路2内の排気ガスに対し遮蔽するように配設されている。これにより、保持部材44ひいては軸部材43が主排気流路2内の高温の排気ガスに晒されることを阻止することができる。また、前述のように隔壁部材25及び26は接合されて一体的な部材として配設されるので、作動時のみならず組付工程においても、弁座25a及び連通孔26aに対する第1及び第2の弁部材41、42の位置関係を確実に維持することができる。
【0054】
図15乃至
図17に示すように、ロアハウジング22にブラケット28が固定されており、このブラケット28に、アクチュエータ50が支持されると共に弁装置4の保持部材44が嵌合されている。この保持部材44は
図3及び
図8に示す隔壁部材26の連通孔26bに嵌合されており、保持部材44に収容され回動自在に支持されている軸部材43がロアハウジング22の外側に延出し、ブラケット28に一端が係止されたリターンスプリング45によって所定位置(第1の弁部材41の閉位置)方向に付勢されている。更に、軸部材43の先端部にはレバー46が装着されており、その端部46aに対しアクチュエータ50のロッド50aが当接可能に配設されている。
【0055】
そして、
図15乃至
図17に示すように、内燃機関(図示せず)の冷却媒体が導入側パイプFTbを介して冷却媒体導入口21bからアッパハウジング21内に導入され、冷却媒体排出口21cから排出される熱交換後の高温の冷却媒体が排出側パイプFTc及び温度検出部FTxを介して内燃機関(図示せず)に還流するように配管されている。尚、
図17のA−A線断面図が
図1、B−B線断面図が
図2、C−C線断面図が
図15に夫々対応している。このため、冷却媒体導入口21bは、
図1と
図2(及び
図13)とで異なる形状(上下方向寸法)が表れている。
【0056】
本実施形態においては、アクチュエータ50として、
図15に示すように、従前と同様の温度感応ワックスを内蔵した温度感応部材(サーモエレメント)50bが用いられており、温度検出部FTx内の熱交換後の冷却媒体温度に応じて、温度感応部材50bがリターンスプリング50cの付勢力に抗してロッド50aを前進駆動するように構成されているが、負圧駆動式のアクチュエータや電動モータ等を用いることとしてもよい。尚、
図15及び
図16には、例えば凍結時に強制的に第1の弁部材41を駆動するため、更に、電気加熱式のアクチュエータ60が装着され、レバー46の端部46aと反対側の端部46bに対しロッド60aが当接可能に配設されているが、これは省略することとしてもよい。
【0057】
上記のように構成された排気熱回収装置において、
図1乃至
図3に示す態様は、内燃機関(図示せず)の暖気過程(冷間時)において、排気熱回収優先とし、冷却媒体を早急に温めて暖機及び暖房に供する状態を示しており、主排気流路2が第1の弁部材41によって全閉状態とされると共に、迂回流路3が全開状態とされている。これにより、排気ガスの流れを破線矢印で示すように、排気管(図示せず)から流入する排気ガスの全てがガス導入口11a(迂回流路3のガス導入口3a)から熱交換器1へ流入して積極的に熱回収(冷却)され、ガス排出口11b(迂回流路3のガス排出口3b)から主排気流路2内へ排出される。尚、暖気過程(冷間時)においては、第1の弁部材41によって主排気流路2が全閉状態となるのが好ましいが、排気ガスの完全遮断が必須ではないので、主排気流路2の排気流量が必要量だけ絞られていれば、必ずしも全閉状態とする必要はなく、若干開いた状態でも構わない。
【0058】
一方、内燃機関(図示せず)の中回転乃至高回転時における排気効率優先時には、
図1に二点鎖線で示すように主排気流路2が全開状態とされると共に、迂回流路3が第2の弁部材42によって略全閉状態とされ、排気ガスの殆どが主排気流路2から排気管(図示せず)へ排出される。
【0059】
次に、
図18及び
図19は、本発明の他の実施形態に係る熱交換器1x、1yを示すもので、各熱交換セグメント10の案内部材12として、
図1及び
図2に示すフィン13に代えて、フィン13x、13yが用いられている。即ち、
図18においては、フィン13xの両端面13bx、13cxと筐体11の内面との間に形成されるガス導入流路GI及びガス排出流路GOが、夫々、ガス導入口11a(迂回流路3のガス導入口3a)及びガス排出口11b(迂回流路3のガス排出口3b)側から離隔する側(
図18の上方)に向かって流路面積が漸減するように形成されている。
【0060】
また、
図19に示す実施形態においては、フィン13ya、13yb及び13ycの三部材から成るフィン13yが用いられ、排気ガスの流路(GI、GP、GO)に夫々配置されている。尚、
図18及び
図19におけるその他の構成は
図1に示す構成と同様であるので、
図1と実質的に同じ構成部材には
図1と同じ符合を付して説明を省略する。
【0061】
以上のように、何れの実施形態においても、アッパハウジング21内に複数個の熱交換セグメント10が収容され、各熱交換セグメント10内に夫々排気ガスの流路(GI、GP、GO)が形成されており、これらによって迂回流路3が構成されているので、迂回流路3の熱容量及びこれに必要な空間を極力小さくしつつ、熱交換器1、1x、1yによって効率的な熱回収を行うことができるので、排気熱回収装置全体の小型化が可能となる。
【0062】
尚、
図1及び
図3に示す車両搭載状態における複数個の熱交換セグメント10の配置に限らず、各熱交換セグメント10が
図1及び
図3の紙面上下方向に積層された状態で車両に搭載することとしてもよい。また、本発明の排気熱回収装置は、上記の熱交換器1、主排気流路2及び迂回流路3を基本構成とするものであり、装置の用途や名称に限定されるものではない。即ち、内燃機関の排気管に介装される狭義の排気熱回収器に留まらず、例えば、内燃機関に搭載される所謂EGRクーラのように、排気ガス冷却を目的としながらも結果的に排気熱を回収する装置に対しても、本発明を適用し所期の効果を奏することができる。