特許第6474461号(P6474461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6474461-全原油改良のための統合沸騰床法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474461
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】全原油改良のための統合沸騰床法
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/12 20060101AFI20190218BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20190218BHJP
   C10G 47/30 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C10G65/12
   C10G45/02
   C10G47/30
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-128979(P2017-128979)
(22)【出願日】2017年6月30日
(62)【分割の表示】特願2015-510472(P2015-510472)の分割
【原出願日】2013年5月3日
(65)【公開番号】特開2018-12832(P2018-12832A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2017年7月25日
(31)【優先権主張番号】61/642,784
(32)【優先日】2012年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511304464
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】オメル・レファ・コセオグル
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ポール・ラン
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−502204(JP,A)
【文献】 特開2001−055585(JP,A)
【文献】 7.2 The hydroconversion of residues,ENCYCLOPAEDIA OF HYDROCARBONS,イタリア,ISTITUTO DELLA ENCICLOPEDIA ITALIANA,2006年,vol II,309-323
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、硫黄および窒素を含有する望ましくないヘテロ原子化合物の含有量を低減する原油フィードの品質改良法であって、
a.原油を加熱し、および加熱原油フィードをフラッシュしてフラッシュ直留蒸留画分および大気残留画分を製造する工程;
b.大気残留画分を沸騰床反応域において水素および沸騰床反応器触媒の存在下で水素化処理して沸騰床反応器流出物流を製造する工程、ここで、沸騰床反応域は単または直列に操作される多重の沸騰床反応器を含有し、単一または多重の沸騰床反応器のための操作条件は0.1kg/mのフィード〜5kg/mのフィードの触媒置換割合を含み、沸騰床反応器触媒は0.30〜1.50cc/gmの細孔体積の合計を有し;100〜400m/gの全表面積を有し;および少なくとも50オングストロームの平均細孔径を有し、および沸騰床反応器触媒は周期律表の元素群VIB、VIIBおよびVIIIBからなる群から選択され、担体材料はアルミナ、シリカアルミナ、シリカおよびゼオライトからなる群から選択され;
c.沸騰床反応器流出物を、水素を含有する水素化処理生成物、再循環油流れおよび未変換残留物流れへ分離する工程;
d.固定床水素化処理域において水素を含有する水素化処理生成物流およびフラッシュ直留蒸留画分の組み合わせた流れを水素化処理触媒の存在下で水素化処理装置において水素化処理して水素化処理流出物を製造する工程、ここで、水素化処理生成物流からの水素の一部は、水素化処理反応のための必要水素の少なくとも一部を形成する;
e.水素化処理流出物を分離して軽質ガス流および水素化処理蒸留物流を製造する工程;および
f.水素化処理蒸留物流および未変換残留物流を組み合わせて合成原油生成物を製造する工程;および
g.軽質ガス流を精製し、および精製軽質ガス流を沸騰床反応器へ水素化処理のための水素ガス源として再循環する工程
を含む方法。
【請求項2】
工程bにおいて、補充水素を沸騰床反応域に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再循環油流れを沸騰床反応域へ再循環する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水素化処理生成物流に含まれる水素は、固定床水素化処理域において水素化処理のための唯一の供給源である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フラッシュ直留蒸留物は、ナフサおよび300℃〜400℃の範囲のカットポイント未満で沸騰するガス油画分を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
沸騰床反応器のための操作条件は、
100バール〜200バールの全圧;
350℃〜500℃の操作温度;
0.1h−1〜2.0h−1の液体時間空間速度;および
フィード1リットル当たり700標準リットル〜フィード1リットル当たり2500標準リットルの水素−フィード比を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
固定床水素化処理域は、単一固定床反応器または直列に操作される多重固定床反応器を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
固定床反応器のための操作条件は、
100バール〜200バールの全圧;
350℃〜450℃の操作温度;
0.1h−1〜2.0h−1の液体時間空間速度;および
フィード1リットル当たり700標準リットル〜フィード1リットル当たり2500標準リットルの水素−フィード比
を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年5月4日に特許出願された米国仮特許出願第61/642784号についての優先権を請求する。その内容は、ここに参照により組込まれる。
【0002】
本発明は、全原油を品質改良する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
原油は、従来、蒸留後、種々のクラッキング、溶媒処理および水素化変換法により処理され、燃料、潤滑油生成物、化学薬品、化学原料などの所望のスレートを製造する。従来精製法の一例としては、ガス油、ナフサ、ガス状生成物および大気残留物を回収する常圧蒸留における原油の蒸留が挙げられる。燃料の沸点で原油蒸留から回収された流れは、従来、燃料として直接使用された。一般的に、大気残留物は、減圧蒸留ユニットでさらに分留され、真空ガス油および真空残留物を生産する。真空ガス油は、一般に、クラックされて流動床式接触分解ユニットにおいてまたは水素化分解法により、より価値のある軽輸送燃料生成物を提供する。真空残留物は、より価値のある生成物への変換のためにさらに処理することができる。例えば真空残留物品質改良法は、1以上の残留物水素処理、残留物流動床式接触分解、コークス化および溶剤脱瀝を含むことができる。
【0004】
一般に、精製業に使用される3つの共通の反応器型が存在する:固定床、沸騰床および移動床。特別の型の反応器を用いる決定は、とりわけ原料の種類、所望の変換パーセンテージ、柔軟性、運転時間および製品品質を含む多くの基準に基づく。精製所では、触媒の置換あるいは一新のための休止時間はできるだけ短くなければならない。さらに、方法の経済状態は、一般に、汚染物、例えば硫黄、窒素、金属および/または有機金属化合物、例えば真空ガス油、脱瀝油および残渣などの可変量を含有するフィード流を取り扱う系の多様性に依存する。
【0005】
固定床反応器では、触媒粒子は静止していて、固定参照座標系に関して移動しない。固定床技術は、これらの汚染物が触媒の急速な不活性化および反応器の閉塞を引き起こすので、ヘテロ原子、金属およびアスファルテンの比較的高い量を含有する特に重装入を処理することに相当な問題がある。従来の固定床反応器では、触媒活性および処理量の所要のレベルを維持するために水素化触媒を規則的に置き換える。直列に接続している多数の固定床反応器を300〜400℃の範囲のカットポイントを超えて沸騰する重原料の比較的高い転化率を得るのに用いることができるが、このような設計は高い資本投資および特定の原料のために、商業的に非実用的な、例えば3〜4か月毎の触媒交換を必要とする。
【0006】
沸騰床反応器は、変換要件が、例えば真空残留物のために増加する、比較的重い原料の処理中に固定床反応器と一般に関連する閉塞の問題を解消するために開発された。一般に、沸騰床反応器は、同時に、液体または液体、固体および気体のスラリーのフロー流を、触媒を含有する垂直配向筒状容器より同時に含む。触媒を液体中の動きに置き、および全体体積を、静止している場合に塊の体積より大きい液体媒体より分散させる。沸騰床反応器では、触媒は、拡張床にあり、これにより、固定床反応器に関連した閉塞性の問題に対抗する。沸騰床反応器中の触媒の流動体化された性質はまた、床のほんの一部のオンライン触媒置換を可能とする。これは、時間に応じて変わらない高いネットベッド活性をもたらす。初期の沸騰床方法および系は、Johansonにより米国特許2,987,465および同3,197,288において記載され、これらはいずれも参照によりここに組み込む。
【0007】
移動床反応器は、固定床操作のある利点および沸騰床技術の比較的容易な触媒置換を組み合わせる。操作条件は一般に、固定床反応器に典型的に用いられる操作条件より厳しく、すなわち、圧力は200kg/cmを超える場合があり、および温度は、400℃〜430℃の範囲である場合がある。触媒置換中に、触媒移動は、フィードの線速度に比べて遅い。触媒添加および除去は、例えば水門系により反応器の上部および底部にて行う。移動床反応器の利点は、移動床の上部層が新鮮な触媒からなり、床の上部に堆積した汚染物は、触媒とともに下方へ動き、および触媒除去中に底部にて放出されることである。したがって、金属および他の汚染物に対する耐性は固定床反応器における耐性よりはるかに大きい。この能力で、移動床反応器は、非常に重いフィードの水素化処理のための利点を、特にいくつかの反応器を直列に組み合わせる場合に有する。
【0008】
沸騰床技術を開発する会社は次のものが挙げられる:Chevron Lummus Global、Axens、Headwaters、Institut Francais du Petrole(IFP) Energies Nouvelles、Hydrocarbon Research Institute(HRI)、City Services、Texaco、Hydrocarbon Technologies Inc.(HTI)。沸騰床技術用の市販名としては次のものが挙げられる:H−Oil、T−StarおよびLC−Fining。
【0009】
重質油留分または全原油を水素化処理する場合に定義される1つの主な技術的挑戦は、汚染物、例えば有機ニッケルおよびバナジウム化合物および多核芳香族化合物等の少ない濃度の影響である。これらの有機金属化合物などが、水素化処理触媒の活性または耐用年数を低減することを証明した。そのような金属汚染物の存在および多核芳香族化合物は、減少したプロセス性能、増加した資本費用および/または精製処理ユニットの増加した操作費用をもたらす。原油の残留画分中の金属は、水素化処理触媒上で堆積し、触媒不活性をもたらす。多核芳香族化合物は、コークス前駆体であり、高温において触媒不活性化をさらに引き起こすコークスを形成する。
【0010】
従来用いられる方法は、全原油フィードの処理についての有効性において制限される。例えば固定床反応器は、触媒抜き取りおよび交換のために操業停止が必要となる。これは、操業中の要因を低減し、その結果、水素化処理ユニットの処理費を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第2,987,465号明細書
【特許文献2】米国特許第3,197,288号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、その品質を改良する全原油の効率的な処理のための改善されたシステムおよび方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
金属、硫黄および窒素を含有する望ましくないヘテロ原子化合物の含有量を低減するため、全原油原料を改良するための統合された系および方法を提供する。上記方法は、原油原料を加熱する工程;加熱減量をフラッシュしてフラッシュされた直留蒸留留分および大気残留画分を製造する工程;大気残留画分を沸騰床反応域において第1触媒系、例えば沸騰床反応器触媒の存在下で水素化処理し、沸騰床反応器流出物を製造する工程;沸騰床反応器流出物を、水素を含有する水素化処理生成物、再生油画分および未変換残留画分へ分離する工程;水素化処理生成物およびフラッシュされた直留蒸留画分から構成される流れを、第2触媒流、例えば水素化触媒の存在下で、水素化処理領域において水素化処理して水素化処理流出物を製造する工程;水素化処理流出物を分離して軽質ガス画分および水素化処理蒸留画分を製造する工程;軽質ガス画分を精製し、および精製軽質ガス画分を、水素化処理のための水素ガス原として沸騰床反応域へ再生する工程;および任意に再生油流れを沸騰床反応域へ再生する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、全原油の処理のための沸騰床反応器および固定床反応器の統合方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の方法では、生成物は、鼈甲にまたは混合物として回収される。例えば、ある態様では、水素化処理蒸留画分の全てまたは一部および未変換残留画分の全部または一部を組み合わせて合成原油生成物を製造する。ある態様では、水素化処理蒸留画分の全てまたは一部は、別箇に回収してよく、および未変換残留画分の全てまたは一部は、別箇に回収してよい。
【0016】
本発明の方法の他の局面、実施態様および利点について以下に詳述する。さらに、以下の情報および以下の詳細な説明はいずれも、種々の局面および実施態様の単なる例示であり、クレームされた特徴および態様の性質および特徴を理解するために概観またはフレームワークを提供するように意図される。添付図面は、種々の局面および実施態様の説明およびさらなる理解を提供するために含まれる。図面は、明細書の残りと共に、原理および記載のおよび特許請求された局面および実施態様の原理および操作を説明する働きをする。
【0017】
前述の要約と同様に以下の詳細な説明は、添付図面と合わせて読む場合に理解される。
【0018】
図1は、全原油の処理のための沸騰床反応器および固定床反応器の統合方法の模式図である。
【0019】
本発明の方法は、沸騰床反応域および固定床反応域を組合わせて用いて全原油原料を脱硫および水素化処理(すなわち、水素処理および水素化分解)して低硫黄性低芳香族性燃料を形成する。全原油を加熱し、フラッシュ直留蒸留物および大気残留画分へ分離する。大気残留画分を沸騰床反応器において水素化処理するが、水素化処理生成物およびフラッシュ直留蒸留画分を組み合わせて直列固定床反応器において水素化処理する。ある態様では、固定床反応器は沸騰床反応器流出物から水素を単に受け取る。
【0020】
脱硫に先立って原油材料を脱塩することができ、揮発性材料を除去することができる。原油フィードの実質的部分について、脱硫反応域において脱硫する。多くの反応が脱硫プロセスの間に生じると考えられる。原油フィードの金属含有成分は、脱硫プロセスの間に少なくとも部分的に脱金属化され、窒素および酸素を、脱硫プロセスの間に硫黄と共に除去する。
【0021】
望ましい燃料生成物の収率は、本発明の方法において、脱硫原油生成物は、好ましくは大気および真空蒸留塔を有する多重段階分別域において増加する。多重段階蒸留からの生成物は、ナフサ画分、軽質軽油画分、減圧軽油画分および残存画分を含む。36℃〜180℃の範囲で沸騰するナフサ画分は、改質法において品質改良してガソリンブレンド成分を製造することができる。一般に、約370℃未満の沸騰を有する軽質軽油画分は、燃料として直接用いてよく、または向上した燃料特性のためにさらに水素化処理してよい。本発明の方法では、減圧軽油留分は、水素化分解して燃料収率を増加させ、および燃料特性をさらに改善する。単一または多重段階反応器を使用することができる。水素化分解生成物は、水素化分解生成物の蒸留中に回収することができる少なくとも1つの低硫黄燃料生成物を含む。
【0022】
従って、粗製脱硫ユニットにおいて原油を水素化脱硫し、脱硫組成油を分離し、およびナフサ画分、軽質軽油画分、減圧軽油画分および残存画分を分離し、真空ガス油を水素化分解しいて少なくとも1つの低硫黄燃料生成物を形成し;および軽質軽油画分を水素化処理するための方法を提供する。この統合された方法全体は、ある態様において、中間生成物、例えば脱硫原油、軽質軽油画分および減圧軽油留分などのタンク貯蔵を必要とすることなく行うことができる。必要な中間生成物のタンク貯蔵がないので、この方法は、中間生成物の従来行われる冷却がなく、したがって本発明の方法の操作費用を減少させながら行うことができる。資本および操作費用の低減に寄与する本発明の方法の更なるおよび運転費用の一層の特質は、水素化分解および水素処理を、単一水素供給ループを用いて行う粗製脱硫を含む水素化変換工程に関連する。
【0023】
従って、統合された精製系および方法は、全原油または全原油の実質的一部を生成物の完全な範囲へ所望の生成物の高い選択性および高い収率において処理するために記載される。総合方法は、一連の反応域を使用して、それぞれ、組成物および特性を変える触媒を、連続的に次第に軽いものとより清潔な燃料生成物を変換するために含有する。
【0024】
総合方法はさらに、水素を、単一水素分離および気圧調節ユニットの使用により、分離し、精製しおよび種々の変換反応域へ供給するための方法を提供する。
【0025】
総合プロセスは、原油原料からの燃料の製造における反応、生成物分離、水素分離および再生、およびエネルギー使用法のためのユニットの組合わせより効率的な使用を可能とする。本発明の方法の実施において、広範囲の重油生成物を、比較的少数の反応容器および生成物回収容器でおよび水素および中間体を取り扱うための最小数の支持容器で効率的に製造することができる。さらなる利益として、本発明の方法は、先行技術の方法と比べて少数のオペレーターを採用しながら行うことができる。
【0026】
本発明の方法は、広い沸点範囲のフィードに調節された粗製脱硫、その後の幾つかの蒸留流れを形成する蒸留、有用な燃料および潤滑油ベースストック生成物を形成する統合水素化分解/水素化処理法におけるバルク品質改良の組み合わせに基づくものである。本発明の方法は、原油フィードを多くの蒸留液および残留画分へ分離し、そのそれぞれは別箇に同様に処理されるが品質改良法を分離する、従来法による精製の実施について効率的で費用のかからない代替方法を提供する。
【0027】
図1において概略的に示された実施態様を参照しながら、全原油流れ1を炉19において加熱し、および加熱流2をフラッシュ容器30へ送ってフラッシュ直留蒸留画分3および大気残留画分4を製造する。大気残留画分4は、例えば沸騰ポンプ21より沸騰床反応域10へ水素(本明細書に記載の通り再生水素22および任意に補給水素6であってよい)と共に沸騰床反応器触媒の存在下で運ばれ、水素化処理して沸騰床反応器流出物流8を製造する。沸騰床反応域10は、単一沸騰床反応器または直列に操作される多重沸騰床反応器を含有することができる。さらに、沸騰ポンプ21は、沸騰床反応域10への装填4に関連しながら示され、適当な沸騰ポンプは再生流に関係することができると理解される。さらに沸騰床反応域10は、液体が内部的に、循環下降管で、あるいは外部再生での配置において再生される沸騰床反応器を含むことができる。
【0028】
沸騰床反応器流出物流8は、典型的には、例えば熱交換器23および冷却沸騰床反応器流出物河川流9を、分離ユニット20において水素ガスおよびナフサおよび軽油範囲において沸騰する物質を含有する水素化処理生成物流11、未変換残渣流12および任意の再生油流18へ分離する。
【0029】
水素化処理生成物流11およびフラッシュ直留蒸留画分3を組み合わせて、固定床水素化処理反応域40において水素化処理触媒の存在下で水素化処理して水素化処理流出物14を製造する。固定床水素化処理反応域40は、単一固定床反応器または直列に操作される多重固定床反応器を含有することができる。水素化処理流出物流14を、軽質ガス15および水素化処理蒸留物流16へ分離域50において分離する。軽質ガス流15を、例えば領域60において精製し、および再生水素22を沸騰床反応器へ運ぶ。
【0030】
再生油流18は、任意に、沸騰床反応器10へ更なる処理のために、例えば再生油流18とフラッシュ容器30からの大気残留画分とを与わせて沸騰ポンプ21より運ばれる組合わさった流れ5を形成することにより、再生される。
【0031】
ある態様では、水素化処理蒸留流16の全てまたは一部および未変換残留画分の全部または一部を組み合わせて合成原油生成物を製造することができる。ある態様では、水素化処理蒸留流16の全てまたは一部は、別箇に回収してよく、および未変換残留画分の全てまたは一部は、別箇に回収してよい。
【0032】
本発明の方法は、原油の水素化処理を増強するために沸騰床反応器のある特徴を利用する。原油は2つの画分へフラッシュし、各画分を別々に:沸騰床反応器における大気残留物および固定床反応器における蒸留物へ脱硫する。総合された系および方法から2つの異なった反応器型を用いて誘導された1つの利益は、反応器体積において全面的な減少である。イソスループットを操作するために、または反応器の寸法を低減するために精製機のための柔軟性およびラティチュードを提供する。
【0033】
更に、本発明の方法の配置では、補給水素を沸騰床反応器中で使用するだけである。沸騰床反応器からの水素化処理生成物流11は、水素含有オフガスを含み、これは、固定床反応域40の反応物質水素として働く。
【0034】
本発明の方法は、全原油品質改良およびインライン水素部分圧のための沸騰床反応域10を用いて固定床反応域40における蒸留物を品質改良する。全原油からの蒸留物の分離は、蒸留物のクラッキングを最小限にし、下流精製操作においてより高い蒸留物収率をもたらす。汚染物、例えば金属とアスファルテン等は、触媒をオンライン、例えば毎日または特定の処理量区間で添加および/または取り出す。
【0035】
全原油を品質向上するための2重反応器の統合は、品質向上合成原油の製造を可能にする。原料、即ちアスファルテンおよび金属含有量の重くおよび汚れた特性に起因して、沸騰床反応器を用いて、300℃〜400℃の範囲、例えば370℃以上におけるカットポイントを超える沸点する炭化水素を処理し、および300℃〜400℃の範囲、例えば370℃以下でのカットポイント未満で沸騰する蒸留物を、固定床反応器において沸騰床反応器オフガス流から誘導される水素源で処理する。沸騰床反応器は触媒置換系であり、したがって、沸騰床反応器中の全原油から金属を取り除く。さらに、残留物をクラックし、固定床反応器においクラック生成物を水素化処理する。本明細書に記載の例では、残留物変換により、アラブ軽全原油のAPI度を33.2度から41.5度へ増加する。さらに、アラブ軽全原油の硫黄含有量は、1.973W%から0.3W%へ減少し、約85%の低減になる。
【0036】
沸騰床反応器用操作条件は約100バール〜約200バールの全圧;約350℃〜約500℃の操作温度;約0.1h−1〜約2.0h−1の液体時間空間速度;フィード1リットル当たり約700標準リットル〜フィード1リットル当たり約2500標準リットルの水素−フィード比;および約0.1kg/mのフィード〜約5kg/mのフィードの触媒置換割合を含む。
【0037】
沸騰床反応器において用いた触媒は、汚染物の所望の除去および/または転化率を、フィードの比較的重い部分において促進することができる。適当な沸騰床反応器触媒は、一般に、2〜25重量%の全活性金属、ある実施態様では5〜20重量%活性金属を含有し;0.30〜1.50cc/gmの細孔体積の合計を有し;100〜400m/gの全表面積を有し;および/または少なくとも50オングストロームの平均細孔径を有する。適当な活性金属は、周期律表の元素群VIB、VIIBおよびVIIIBからなる群から選択されるものである。例えば適当な金属としては、1以上のコバルト、ニッケル、タングステンおよびモリブデンが挙げられる。担体材料は、アルミナ、シリカアルミナ、シリカおよびゼオライトからなる群から選択することができる。
【0038】
沸騰固定床反応器のための操作条件は、約100バール〜約200バールの全圧;約350℃〜約450℃の操作温度;約0.1h−1〜約2.0h−1の液体時間空間速度;およびフィード1リットル当たり約700標準リットル〜フィード1リットル当たり約2500標準リットルの水素−フィード比;
【0039】
固定床反応器に用いる触媒は、フィードの比較的軽い部分の所望の水素化処理を促進することができる触媒であってよい。適当な固定床反応器触媒は、一般に、2〜25重量%の全活性金属、ある実施態様では5〜20重量%の活性金属を含有し;0.30〜1.50cc/gmの細孔体積の合計を有し;100〜400m/gの全表面積を有しおよび/または少なくとも50オングストロームの平均細孔径を有する。適当な活性金属は、周期律表の元素群VIB、VIIBおよびVIIIBからなる群から選択されるものである。例えば適当な金属としては、1以上のコバルト、ニッケル、タングステンおよびモリブデンが挙げられる。支持材料は、アルミナ、シリカアルミナ、シリカおよびゼオライトからなる群から選択することができる。
【実施例】
【0040】
1000kgのアラブ軽質原油のサンプルを、大気フラッシュユニットにおいて加熱およびフラッシュし、直留蒸留画分および大気残留画分を得る。全原油およびその画分の特性を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
大気残留画分と水素とを混合し、および440℃、160バールの水素分圧、0.2h−1の液体時間空間速度、0.86kg触媒/油mの触媒置換にて操作する沸騰床反応器へ送った。沸騰床反応器は、外部循環容器を有し、これから未変換油を6のフィードに対する再生比にて反応器へ再生する。
【0043】
フラッシュ容器からの直留蒸留画分、水素を含有する水素化処理蒸留物および沸騰床ユニットから来る軽質気体を組み合わせて、アルミナ触媒上にNi−Moを含有する蒸留水素化処理ユニットへ送った。さらなる水素を、沸騰床ユニットからの水素分圧が反応器の水素化処理に十分なように、さらなる水素は注入しなかった。水素化処理機は、380℃、1h−1の液体時間空間粘度3にて操作した。水素化蒸留物および未変換大気残留物を組み合わせて41.5のAPI度および0.31重量%の硫黄含有量を有する合成石油を製造する。全API度改良は8度であるが、85重量%の硫黄を原油から除去する。これは、製造された原油について実質的な割増をもたらす。方法物質収支を表2に与える。
【0044】
【表2】
【0045】
本発明の方法および系は、上におよび添付図面に記載した。しかしながら、変更は当業者に明らかであり、本発明の保護の範囲は、請求項により決定される。
図1