特許第6474491号(P6474491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474491
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】改善された圧送特性を有する燃料ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/10 20060101AFI20190218BHJP
   F02M 37/08 20060101ALI20190218BHJP
   F02M 37/20 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   F02M37/10 E
   F02M37/08 E
   F02M37/20 R
   F02M37/20 G
   F02M37/20 H
   F02M37/20 K
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-530069(P2017-530069)
(86)(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公表番号】特表2017-536508(P2017-536508A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015070050
(87)【国際公開番号】WO2016087064
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年6月5日
(31)【優先権主張番号】102014224938.4
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シアメンド フロー
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ハイゼ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ニッチェ
(72)【発明者】
【氏名】トアステン アルガイアー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス プリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター モイラー
(72)【発明者】
【氏名】ティム ロイレ
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−056802(JP,A)
【文献】 特開2002−155828(JP,A)
【文献】 特開2003−172225(JP,A)
【文献】 実開平04−008777(JP,U)
【文献】 実開昭56−025082(JP,U)
【文献】 特開2003−083194(JP,A)
【文献】 特開2010−190069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/10
F02M 37/08
F02M 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に燃料タンク(10)内に配置された燃料ポンプであって、
ポンプハウジング(2)と、
燃料を圧送する圧送エレメント(3)と、
前記圧送エレメント(3)を操作する発熱性のアクチュエータ(4)と、
入口(20)から圧送室(7)に通じる第1の燃料路(5)と、
前記入口(20)から前記発熱性のアクチュエータ(4)の近傍を通過して第1のハウジング開口(21)に通じる第2の燃料路(6)と、
再循環管路(17)と、
を有し、
前記第1のハウジング開口(21)は、垂直な方向(V)で前記入口(20)よりも上側に配置されており、
前記第2の燃料路(6)内での流れ方向が、前記燃料ポンプ(1)の長手方向軸線(L)に実質的に一致しており、前記長手方向軸線(L)は、前記垂直な方向(V)に一致する方向に延びる軸線であり
前記再循環管路(17)は、前記ポンプハウジング(2)の前記第1のハウジング開口(21)をハウジング構成部材(12)の第2のハウジング開口(18)に接続しており、前記第2のハウジング開口(18)は、前記燃料ポンプ(1)の前記入口(20)に流れ接続されており、
前記再循環管路(17)は、前記燃料タンク(10)内に配置されたカバー領域(50)を有し、前記カバー領域(50)を介して前記再循環管路(17)が前記ハウジング構成部材(12)の前記第2のハウジング開口(18)の近くに配置されており、前記カバー領域(50)は、少なくとも1つの第1のカバー開口(51)と、少なくとも1つの第2のカバー開口(52)とを有し、前記少なくとも1つの第2のカバー開口(52)は、前記垂直な方向(V)で前記少なくとも1つの第1のカバー開口(51)よりも上側に配置されている、燃料ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプハウジング(2)に、燃料を前記入口(20)の下流で前記第2の燃料路(6)の方向に変向させる変向エレメント(8)が配置されている、請求項1記載の燃料ポンプ。
【請求項3】
前記変向エレメント(8)は、前記燃料ポンプ(1)の長手方向軸線(L)に対して0〜90°の傾角(a)を有する、請求項2記載の燃料ポンプ。
【請求項4】
前記変向エレメント(8)は、前記燃料ポンプ(1)の長手方向軸線(L)に対して30°〜60°の傾角(a)を有する、請求項2記載の燃料ポンプ。
【請求項5】
前記変向エレメント(8)は、前記燃料ポンプ(1)の長手方向軸線(L)に対して45°の傾角(a)を有する、請求項2記載の燃料ポンプ。
【請求項6】
前記変向エレメント(8)は、円錐形フィルタを有し、前記第1の燃料路(5)は、前記円錐形フィルタを通って第1の燃料路開口(23)を介して延びている、請求項2から5までのいずれか1項記載の燃料ポンプ。
【請求項7】
前記ポンプハウジング(2)は、第2の燃料路開口(24)を有し、前記第2の燃料路開口(24)を通って前記第2の燃料路(6)が延びており、前記円錐形フィルタは、前記第2の燃料路開口(24)の直ぐ近くで終端している、請求項6記載の燃料ポンプ。
【請求項8】
前記第2の燃料路(6)は、前記発熱性のアクチュエータ(4)の内面(40)および外面(41)の近傍を通過している、請求項1から7までのいずれか1項記載の燃料ポンプ。
【請求項9】
前記発熱性のアクチュエータ(4)は、ソレノイドコイルである、請求項1から8までのいずれか1項記載の燃料ポンプ。
【請求項10】
前記再循環管路(17)は、前記第1のハウジング開口(21)の下流側に分岐管路(19)を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の燃料ポンプ。
【請求項11】
前記分岐管路(19)は、前記垂直な方向(V)に直線状に形成されている、請求項10記載の燃料ポンプ。
【請求項12】
前記再循環管路(17)と前記第2のハウジング開口(18)との間に、前記ハウジング構成部材(12)に配置されたフィルタエレメント(16)が設けられている、請求項から11までのいずれか1項記載の燃料ポンプ。
【請求項13】
燃料ポンプアッセンブリであって、
請求項1から12までのいずれか1項記載の燃料ポンプ(1)と、
燃料タンク(10)と、
を有し、
前記燃料ポンプ(1)は、少なくとも部分的に前記燃料タンク(10)内に配置されている、燃料ポンプアッセンブリ。
【請求項14】
前記燃料ポンプ(1)は、完全に前記燃料タンク(10)内に配置されている、請求項13記載の燃料ポンプアッセンブリ。
【請求項15】
前記第2の燃料路(6)は、前記燃料タンク(10)内に開口している、請求項13または14の燃料ポンプアッセンブリ。
【請求項16】
請求項1から12までのいずれか1項記載の燃料ポンプを運転する方法であって、
燃料タンク(10)から、前記燃料ポンプ(1)の入口(20)から圧送室(7)に通じている第1の燃料路(5)を介して前記圧送室(7)に燃料を供給するステップと、
前記燃料タンク(10)から、前記入口(20)から第1のハウジング開口(21)に通じている第2の燃料路(6)を介して発熱性のアクチュエータ(4)の近傍を燃料に通過させ、前記燃料を前記発熱性のアクチュエータ(4)によって加熱して、前記燃料の易揮発性の成分を気化させるステップと、
を有し、
前記第1のハウジング開口(21)は、垂直な方向で前記入口(20)よりも上側に配置されている、燃料ポンプを運転する方法。
【請求項17】
前記入口(20)の下流で前記第2の燃料路(6)の方向に燃料を変向させる、請求項16記載の、燃料ポンプを運転する方法。
【請求項18】
加熱された前記燃料を前記第1のハウジング開口(21)を介して前記燃料タンク(10)内に到達させて、前記燃料タンク(10)内で冷却し、
冷却された前記燃料を前記燃料ポンプ(1)の前記入口(20)に戻す、
請求項16または17記載の、燃料ポンプを運転する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、自動車、たとえばモータサイクルにおいて燃料を供給するための燃料ポンプに関する。本発明の更なる態様は、前述のような燃料ポンプと、この燃料ポンプが内部に配置された燃料タンクとを有する燃料ポンプアッセンブリに関する。さらに、本発明は、前述のような燃料ポンプを運転するための方法に関する。
【0002】
前述のような燃料ポンプは、たとえば英国特許第2478876号明細書に基づき公知である。この公知の燃料ポンプは、ピストンと、このピストンを操作するためのアクチュエータと、ピストンを出発位置に戻すための戻しエレメントと、流入弁と、圧送室と、流出弁とを有する燃料ポンプ、特にソレノイド式ピストンポンプである。ピストンの操作によって、吸入段階で燃料が流入弁を介して圧送室内に吸い込まれる。圧送段階では、燃料が流出弁を介して圧送室から圧送される。流入弁における吸込み圧が低いと、温度負荷に基づき、燃料が気化し、これによって、圧送室の大部分が燃料蒸気で満たされてしまう。これは、ポンプの体積効率および機能を大幅に損ね、全体故障を引き起こしてしまう。
【0003】
発明の開示
請求項1の特徴を有する本発明に係る燃料ポンプは、従来のものに比べて、燃料ポンプが、特に沸点付近の高温の燃料を圧送する際の改善された圧送特性を有しているという利点を有している。これは、本発明によれば、構造的な手段によって達成され、これによって、煙突効果を実現するために、発熱性のアクチュエータの廃熱が利用される。したがって、燃料ポンプ内での流れ案内が改善され、次いで、燃料ポンプの吸込み領域での燃料の冷却が可能となる。さらに、燃料ポンプの圧送室内への、発生した燃料蒸気の吸入が阻止される。本発明に係る燃料ポンプは、ポンプハウジングと、燃料を圧送するための圧送エレメントと、この圧送エレメントを操作するための発熱性のアクチュエータと、入口から圧送室に通じる第1の燃料路と、入口から発熱性のアクチュエータの近傍を通過して第1のハウジング開口に通じる第2の燃料路とを有しており、第1のハウジング開口が、垂直な方向で入口よりも上側に配置されている。さらに、発熱性のアクチュエータが冷却される。これによって、燃料ポンプの、故障に対して安全な機能が確保される。ポンプハウジングは、好適には、基体と、特にプレート状に形成された保持体とを有している。
【0004】
従属請求項には、本発明の好適な改良形が示してある。
【0005】
好ましくは、第2の燃料路内での流れ方向が、燃料ポンプの長手方向軸線に実質的に対応している。これによって、煙突効果の利用および拡張が容易となる。
【0006】
さらに好適には、ポンプハウジングに、燃料を入口の下流で第2の燃料路の方向に変向させる変向エレメントが配置されている。したがって、煙突効果がアシストされる。さらに、第2の燃料路内での圧力損失を減じることができる。
【0007】
さらに好適には、燃料ポンプが、入口の下流に配置された前室を有している。この前室は、好ましくは、燃料ポンプのポンプハウジング内に材料除去加工により切欠きとして形成されている。前室内では、有利には、燃料が、第1の燃料路を介する第1の流れと、第2の燃料路を介する第2の流れとに分割される。第1の流れは、圧送エレメントの移動により形成される圧送体積に相当している。第2の流れは、煙突効果により形成される対流流れに相当している。さらに、ポンプハウジングは、流れ方向で見て、入口もしくは前室の下流に配置された少なくとも1つの第1の燃料路開口および少なくとも1つの第2の燃料路開口を有している。第1の燃料路開口を通って、第1の燃料路が延びており、第2の燃料路開口を通って、第2の燃料路が延びている。
【0008】
特に好適には、変向エレメントが、燃料ポンプの長手方向軸線に対して0〜90°、好適には30°〜60°、特に好適には45°の傾角を有している。
【0009】
変向エレメントが、円錐形フィルタとして形成されており、第1の燃料路が、円錐形フィルタを通って延びていると、さらに有利である。この円錐形フィルタによって、燃料を変向させることに加えて、発生した蒸気泡を第1の燃料路から遠ざけることが確保される。したがって、燃料ポンプの機能を大幅に制限してしまう恐れがある圧送室内への蒸気泡の到達が阻止される。円錐形フィルタの形状によって、蒸気泡が第2の燃料路の方向に移動させられ、第2の流れにより第2の燃料路内で搬送されることが可能となる。特に好適には、発生した蒸気泡が、特に第1のハウジング開口を通って燃料ポンプから遠ざけられてもよい。円錐形フィルタの使用は、フィルタを全く使用しないかまたは円筒状のフィルタを使用することに比べて、圧力および体積流量における落込みが排除されるので、さらに有利である。フィルタが設けられていないと、蒸気泡が圧送室内に到達し、これによって、燃料圧送量ひいては圧力にも影響が与えられてしまう。
【0010】
さらに好適には、ポンプハウジングが、第2の燃料路開口を有しており、この第2の燃料路開口を通って第2の燃料路が延びており、円錐形フィルタが、第2の燃料路開口の直ぐ近くで終端している。したがって、第2の燃料路の、流れに有利な設計が可能となる。特に円錐形フィルタは、この円錐形フィルタの傾けられた部分が、第2の燃料路開口の直ぐ近くで終端しているように傾けられている。
【0011】
本発明の好適な実施の形態によれば、第2の燃料路が、発熱性のアクチュエータの内面および外面の近傍を通過している。燃料が発熱性のアクチュエータを周流することによって、発生した熱の大部分を燃料に放出することができる。その結果、周流する燃料がより多く加熱される。これによって、煙突効果が維持され、強化される。
【0012】
さらに好適には、発熱性のアクチュエータが、ソレノイドコイルである。1つには、ソレノイドコイルの使用によって、圧送エレメントの操作を簡単にかつ正確に実現することができる。もう1つには、ソレノイドコイルが迅速なかつ大きな放熱を有している。これによって、燃料ポンプ内に煙突効果を迅速に発生させることができ、ひいては、対流流れを形成することができる。
【0013】
さらに好適には、燃料ポンプが、この燃料ポンプを内部に配置することができる燃料タンクの開口を閉鎖するように構成されたハウジング構成部材を有している。ポンプハウジングとハウジング構成部材とは、共にハウジング全体を形成している。さらに、ハウジング構成部材は、ポンプハウジングを少なくとも部分的に取り囲んでいる。これによって、燃料ポンプを規格化して形成することができる。この場合には、ハウジング構成部材を顧客固有に製造することができる。択一的には、ポンプハウジングとハウジング構成部材とが一体型に形成されていてもよい。さらに、好ましくは、ハウジング構成部材が、第2のハウジング開口と第3のハウジング開口とを有している。第2のハウジング開口を介して、燃料を燃料タンクからハウジング構成部材を通して燃料ポンプの入口に供給することができる。燃料ポンプにより圧送された燃料は、第3のハウジング開口を介してさらに圧送することができる。
【0014】
さらに好適には、ハウジング構成部材が、戻し通路を有しており、この戻し通路が、その第1の端部では、第2のハウジング開口によって第1のハウジング開口に流れ接続されていて、戻し通路の第2の端部では、燃料ポンプの入口に流れ接続されている。これによって、発熱性のアクチュエータの廃熱により加熱された燃料を、燃料タンク内に存在している燃料によって冷却することができ、燃料ポンプの入口に供給することができる。したがって、燃料ポンプの吸込み領域の冷却が行われる。これによって、圧送特性が改善される。さらに、冷却された燃料を燃料ポンプの入口に戻すことによって、燃料を燃料ポンプの吸込み領域で予め加速させる循環が形成される。これによって、吸込み損失が減少する。
【0015】
好ましくは、燃料ポンプが、再循環管路をさらに有しており、この再循環管路が、ポンプハウジングの第1のハウジング開口をハウジング構成部材の第2のハウジング開口に接続しており、この第2のハウジング開口が、燃料ポンプの入口に流れ接続されていてもよい。これによって、発熱性のアクチュエータの廃熱により加熱された燃料が、燃料ポンプの入口に的確に供給される。したがって、燃料を燃料ポンプの入口に戻すことによって、燃料を燃料ポンプの吸込み領域で予め加速させる循環が形成される。これによって、吸込み損失が減少する。本発明による再循環管路を備えた燃料ポンプを新規に製造することのほかに、既存の燃料ポンプへの本発明による再循環管路の簡単な後装備が可能である。
【0016】
有利には、再循環管路が、第1のハウジング開口の下流側に分岐管路を有していてもよい。この分岐管路によって、発生した蒸気泡を燃料ポンプから遠ざけることができる。これによって、燃料ポンプの圧送室内へのガス形成に基づく圧送量落込みの危険が最小限に抑えられる。したがって、圧送室もしくは燃料ポンプをより小さく寸法設定することができる。特に圧送室容積を最大1〜4倍だけ減じることができる。これによって、燃料の圧送に対するより迅速な動特性と低いエネルギ消費率とが達成される。択一的または付加的には、アクチュエータもしくは磁気回路に対する構造的な手間を減じることができる。
【0017】
特に好適には、分岐管路が、垂直な方向に直線状に形成されていてもよい。分岐管路が、燃料ポンプの長手方向軸線に対して同心に配置されていると、さらに有利であり得る。したがって、発生した蒸気泡を燃料ポンプから迅速にかつ確実に遠ざけることができ、ひいては、燃料ポンプの圧送特性の改善を保証することができる。
【0018】
有利には、再循環管路が、釣鐘状の領域を有しており、この釣鐘状の領域が、第1のハウジング開口の近くに、特に燃料ポンプの長手方向軸線に対して同心に配置されていて、横断面拡張された下側領域と、ピン状の張出し下側領域とを有していてもよい。このピン状の張出し下側領域は分岐管路として用いることができる。択一的には、分岐管路がピン状の張出し下側領域に取り付けられていてもよい。したがって、ガス導出のための自由横断面が十分に存在している。
【0019】
別の択一的な実施の形態によれば、発生した蒸気泡が、燃料ポンプから、釣鐘状の領域に設けられた孔を通して遠ざけられてもよい。
【0020】
さらに好適には、再循環管路と第2のハウジング開口との間に、ハウジング構成部材に配置されたフィルタエレメントが設けられていてもよい。したがって、再循環する燃料が燃料ポンプの圧送室内に供給される前に、燃料を濾過することができる。これによって、燃料ポンプの、故障に対して安全な機能が確保される。
【0021】
再循環管路が、カバー領域を有しており、このカバー領域を介して再循環管路が、ハウジング構成部材の第2のハウジング開口の近くに配置されており、カバー領域が、少なくとも1つの第1のカバー開口と、少なくとも1つの第2のカバー開口とを有しており、この少なくとも1つの第2のカバー開口が、垂直な方向で少なくとも1つの第1のカバー開口よりも上側に配置されていると、さらに有利である。好ましくは、カバー領域によって、混合ゾーンが画定されている。燃料タンクから、低温の燃料が第1のカバー開口を通って混合ゾーンに達することができ、この混合ゾーン内で、低温の燃料が、アクチュエータの廃熱により加熱された燃料と混合される。燃料タンクから吸い込まれた燃料が、高い周辺温度または太陽光入射に基づき、すでにその沸騰状態付近にあると、再循環する高温の方の燃料との十分な混合によって、燃料タンクから吸い込まれた燃料が混合ゾーンで沸騰し、より難揮発性となる。発生したガスは、第2のカバー開口を通って燃料タンク内に導出される。再循環する燃料がその熱の一部を、この再循環する燃料と十分に混合される燃料タンクからの燃料に放出することによって、前者が冷却される。両燃料分から成る混合物の温度はその沸騰温度未満にある。ゆえに、燃料ポンプの圧送室内の、吸入に起因した負圧によって、圧送室内にガスが形成されなくなり、したがって、圧送量が落ち込むことがなくなる。
【0022】
本発明の好適な構成によれば、多数の第1のカバー開口と、多数の第2のカバー開口とが設けられており、これらの第1のカバー開口および/または第2のカバー開口が、パーフォレーション孔として形成されていて、再循環管路のカバー領域の外周に配置されている。
【0023】
さらに好適には、再循環管路が、少なくとも1つのクリップ結合手段によってポンプハウジングにかつ/またはフィルタエレメントにかつ/またはハウジング構成部材に配置されていてもよい。したがって、再循環管路の解離可能な固定が簡単にかつ廉価に可能となる。
【0024】
本発明の更なる態様は、燃料ポンプアッセンブリであって、この燃料ポンプアッセンブリが、本発明に係る燃料ポンプと、燃料タンクとを有しており、燃料ポンプが、少なくとも部分的に、好ましくは完全にこの燃料タンク内に配置されている、燃料ポンプアッセンブリに関する。したがって、燃料ポンプアッセンブリのコンパクトな構造が可能となる。このことは、モータサイクルの場合に特に重要である。
【0025】
好ましくは、第2の燃料路が、燃料タンク内に開口している。したがって、第2の燃料路の燃料が戻される。さらに、好適には、発生した蒸気泡が、第1のハウジング開口を介して燃料タンク内に達することができる。蒸気泡は、燃料量を失わないようにするために、燃料タンク内に存在している燃料によって凝縮されるか、または場合により燃料タンクから遠ざけられる。
【0026】
さらに、本発明は、燃料ポンプを運転するための方法であって、燃料を燃料タンクから、燃料ポンプの入口から圧送室に通じている第1の燃料路を介して圧送室に供給するステップと、燃料を燃料タンクから、入口から第1のハウジング開口に通じている第2の燃料路を介して発熱性のアクチュエータの近傍を通過させ、燃料を発熱性のアクチュエータによって加熱し、これによって、燃料の易揮発性の成分を気化させるステップとを有しており、第1のハウジング開口が、垂直な方向で入口よりも上側に配置されている、燃料ポンプを運転するための方法に関する。これには、燃料ポンプならびに燃料ポンプアッセンブリに関連して上述した利点が結び付けられている。
【0027】
有利には、燃料が、第2の入口の下流で第2の燃料路の方向に変向させられる。
【0028】
さらに、加熱された燃料が、第1のハウジング開口を介して燃料タンク内に到達し、燃料タンク内で冷却され、冷却された燃料が、燃料ポンプの入口に戻されると有利である。これによって、燃料ポンプの吸込み領域で冷却が行われる。したがって、燃料ポンプの吸込み領域での燃料の気化を低減することができ、燃料ポンプの、故障に対して安全な機能を確保することができる。
【0029】
以下に、添付の図面を参照しながら、本発明の複数の実施例を詳細に説明する。なお、同一の部材もしくは機能的に同一の部材には、それぞれ同一の符号が付してある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施例による燃料ポンプを備えた燃料ポンプアッセンブリの簡単な概略的な断面図である。
図2図1に示した燃料ポンプアッセンブリの拡大領域を示す図である。
図3】本発明の第2の実施例による燃料ポンプを備えた燃料ポンプアッセンブリの簡単な概略的な断面図である。
【0031】
発明の実施の形態
以下に、図1および図2を参照しながら、本発明の第1の実施例による燃料ポンプ1ならびに燃料ポンプアッセンブリ9を詳細に説明する。
【0032】
図1および図2から明らかであるように、本発明に係る燃料ポンプ1は、燃料ポンプアッセンブリ9の燃料タンク10内に部分的に配置されている。
【0033】
燃料ポンプ1は、ポンプハウジング2と、燃料を圧送するための圧送エレメント3と、ソレノイドコイルとして形成されていて、圧送エレメント3を操作するための発熱性のアクチュエータ4とをさらに有している。圧送エレメント3はピストンとして形成されている。燃料ポンプ1は、入口20から圧送室7に通じる第1の燃料路5と、入口20から発熱性のアクチュエータ4の近傍を通過して第1のハウジング開口21に通じる第2の燃料路6とをさらに有している。
【0034】
本発明によれば、第1のハウジング開口21が、垂直な方向Vで入口20よりも上側に配置されている。この配置形態によって、燃料ポンプ1の運転中に煙突効果が得られる。この煙突効果については、あとで、燃料ポンプ1の機能形式を述べる際に詳しく説明する。第2の燃料路6内では、燃料の流れ方向が、燃料ポンプ1の長手方向軸線Lに実質的に一致している。
【0035】
燃料ポンプは、入口20の下流に配置された前室22をさらに有している。この前室は、燃料ポンプ1のポンプハウジング2内に材料除去加工により切欠きとして形成されている。ポンプハウジング2内には、第1の燃料路開口23と第2の燃料路開口24とがさらに設けられている。第1の燃料路開口23を通って、第1の燃料路5が延びており、第2の燃料路開口24を通って、第2の燃料路6が延びている。この第2の燃料路6は、発熱性のアクチュエータ4の内面40および外面41の近傍を通過していて、次いで、燃料タンク10内に開口している。
【0036】
燃料ポンプ1の圧送特性を改善するために、ポンプハウジング2に、燃料を入口20の下流で第2の燃料路6もしくは第2の燃料路開口24の方向に変向させる変向エレメント8が配置されている。このために、この変向エレメント8は、燃料ポンプ1の長手方向軸線Lに対して60°の傾角aを有している。したがって、入口20と第2の燃料路開口24との間で低損失の移行が可能となる。
【0037】
特に変向エレメント8は円錐形フィルタを有している。第1の燃料路5は、円錐形フィルタを通って第1の燃料路開口23を介して延びている。円錐形フィルタは、第2の燃料路開口24の直ぐ近くで終端している。したがって、第2の燃料路の、流れに有利な設計が可能となる。
【0038】
円錐形フィルタによって、燃料を入口20の下流で第2の燃料路6の方向に変向させることに加えて、発生した蒸気泡11を第1の燃料路5から遠ざけることが確保される。円錐形フィルタは、蒸気泡11を第2の燃料路6の方向で第2の燃料路開口24に導くために用いられる。
【0039】
ポンプハウジング2は、基体200とプレート状の保持体201とを有している。さらに、燃料ポンプ1は、好適には、ハウジング構成部材12を有している。このハウジング構成部材12は、本実施例では、別体の構成部材として形成されている。択一的には、ハウジング構成部材12が、燃料ポンプ1のポンプハウジング2と一体化されて形成されていてもよい。ハウジング構成部材12は戻し通路13を有している。この戻し通路13は、第1の端部14では、第2のハウジング開口18によって第1のハウジング開口21に流れ接続されていて、第2の端部15では、燃料ポンプ1の入口20に流れ接続されている。燃料は、戻し通路13を通って入口20に戻されるようになっている。
【0040】
以下に、図2を参照しながら、本発明に係る燃料ポンプ1を運転するための方法を詳細に説明する。
【0041】
燃料ポンプ1の運転中には、燃料タンク10から燃料が燃料ポンプ1の入口20に供給される。前室22内で、燃料流が、第1の燃料路5を介する第1の流れと、第2の燃料路6を介する第2の流れとに分割される。第1の流れは、燃料ポンプ1の実際の圧送体積に相当している。この圧送体積は、発熱性のアクチュエータ4による圧送エレメント3の操作によって形成され、圧送室7内に達する。このとき、発熱性のアクチュエータ4の廃熱が発生させられる。これによって、第2の燃料路6を介する第2の流れが、対流により形成される。アクチュエータ4の廃熱によって、結果的に、燃料の易揮発性の成分の気化も生じる。
【0042】
第2の燃料路6内の加熱された燃料は、垂直な方向Vで上昇し、燃料タンク10内に達する。加熱された燃料に加えて、発生した蒸気泡11も燃料タンク10内に達する。蒸気泡11は、最終的に燃料タンク10から図示しない形式で遠ざけられるかまたは凝縮する。
【0043】
燃料タンク10内では、加熱された燃料が、燃料タンク10内に存在する、一般的に低い方の温度を有する燃料によって冷却される。加熱された燃料は、第2の燃料路6によって垂直な方向Vで上向きに上昇するので、前室22内に負圧が形成される。これによって、燃料タンク10から燃料が吸い込まれる(矢印B)。煙突効果と呼ばれるこの現象によって、冷却された燃料も、第1の端部14にフィルタエレメント16が配置された戻し通路13を介して燃料ポンプ1の入口20に戻される。したがって、自続性であると共に自ずと強化される循環(図2における矢印K)が得られる。
【0044】
本発明に係る燃料ポンプ1は、特に高温の燃料を圧送する際の改善された圧送特性を有している。より良好な冷却および吸込み損失の低減も達成することができる。さらに、本発明によって、高温ガソリン運転に対してピストンポンプ原理が主として可能となる。
【0045】
以下に、図3を参照しながら、本発明の第2の実施例による燃料ポンプ1ならびに燃料ポンプアッセンブリ9を詳細に説明する。
【0046】
第2の実施例は、再循環管路17が設けられている点で第1の実施例と基本的に異なっている。好ましくは、この再循環管路17はプラスチックから形成されている。さらに、再循環管路17は、ポンプハウジング2の第1のハウジング開口21をハウジング構成部材12の第2のハウジング開口18に接続している。この第2のハウジング開口18は、燃料ポンプ1の入口20に流れ接続されている。さらに、第2のハウジング開口18は、戻し通路13の第1の端部14に配置されている。
【0047】
さらに、再循環管路17は、第1のハウジング開口21の下流側に分岐管路19を有している。この分岐管路19によって、発生した蒸気泡を燃料ポンプ1から遠ざけることができる(矢印G)。特に分岐管路19は垂直な方向Vに直線状に形成されている。付加的には、分岐管路19は燃料ポンプ1の長手方向軸線Lに対して同心に配置されている。
【0048】
さらに、再循環管路17は釣鐘状の領域49を有している。この釣鐘状の領域49は、第1のハウジング開口21の近くに、特に燃料ポンプの長手方向軸線Lに対して同心に配置されている。釣鐘状の領域49は、やはり、横断面拡張された下側領域49aと、ピン状の張出し下側領域49bとに分割されている。このピン状の張出し下側領域49bは分岐管路19として用いられる。択一的には、ピン状の張出し下側領域49bに別体の管路が取り付けられていてもよい。
【0049】
さらに、再循環管路17はカバー領域50を有している。このカバー領域50を介して、再循環管路17はハウジング構成部材12の第2のハウジング開口18の近くに配置されている。カバー領域50は、第1のカバー開口51と、垂直な方向Vで見て、この第1のカバー開口51よりも上側に配置された第2のカバー開口52とを有している。カバー領域50は混合ゾーン53を画定している。この混合ゾーン53の機能を以下に詳しく説明する。燃料タンク10から、低温の燃料が第1のカバー開口51を通って混合ゾーン53に達し(矢印M)、この混合ゾーン53内で、低温の燃料が、アクチュエータ4の廃熱により加熱された燃料と混合される。再循環する燃料内に相変わらず存在している蒸気泡、または燃料タンクから吸い込まれた燃料が、高い周辺温度もしくは太陽光入射に基づき、再循環する高温の方の燃料との十分な混合に組み合わされてガス発生することにより生じた蒸気泡が、第2のカバー開口52を通って燃料タンク10内に導出される(矢印N)。これによって、再循環する燃料の冷却が行われ、ひいては、燃料ポンプ1の吸込み領域の冷却も行われる。したがって、燃料ポンプ1の圧送特性を大幅に改善することができる。
【0050】
再循環管路の簡単なかつ確実な固定を可能にするためには、この再循環管路17が、第1のクリップ結合手段54によってポンプハウジング2に配置されていて、第2のクリップ結合手段55によってフィルタエレメント16に配置されている。第1のクリップ結合手段54と第2のクリップ結合手段55とは、それぞれ、再循環管路17の両端に配置された多数のクリップ舌片と、これらのクリップ舌片を係止する多数のクリップ突起とを有している。これらのクリップ突起は、特に円形に周方向に延びる張出し部として形成されている。
図1
図2
図3