特許第6474496号(P6474496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474496センサエレメントの内部抵抗を求める方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474496
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】センサエレメントの内部抵抗を求める方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-556529(P2017-556529)
(86)(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公表番号】特表2018-514771(P2018-514771A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016057536
(87)【国際公開番号】WO2016173814
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】102015207880.9
(32)【優先日】2015年4月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ファイ
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−028575(JP,A)
【文献】 特開2006−250695(JP,A)
【文献】 特開2011−164087(JP,A)
【文献】 特開2005−227013(JP,A)
【文献】 特表2013−539043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ガス室内のガス混合気中のいずれかのガス成分の割合を検出するために、センサエレメント(110)の内部抵抗を求める方法であって、
前記センサエレメント(110)に、少なくとも1つのセル(114)が設けられており、
前記セル(114)は、少なくとも1つの第1の電極(116)と、少なくとも1つの第2の電極(118)と、前記第1の電極(116)と前記第2の電極(118)とを接続する少なくとも1つの固体電解質(120)とを含み、
前記第1の電極(116)と前記第2の電極(118)との間に、電圧(124)が印加され、
前記方法は、
a)前記センサエレメント(110)内に電荷移動を発生させる電流パルス(130)を当該センサエレメント(110)に印加し、前記電荷移動の発生によって、前記第1の電極(116)と前記第2の電極(118)との間の電圧(124)を上昇させるステップと、
b)前記第1の電極(116)と前記第2の電極(118)との間の前記電圧(124)の上昇の値を求めるステップと、
を含む、方法において、
前記ステップb)を、前記電荷移動の発生中のそれぞれ異なる時点で少なくとも2回行い、そこから、前記それぞれ異なる時点で、それぞれ1つずつの前記電圧(124)の上昇の値を求め、
ステップc)を次のように行う、即ち、
c)前記電荷移動の発生中にそれぞれ異なる時点で求められた前記電圧(124)の上昇の前記値から、前記電圧(124)の上昇の分極に起因する割合(138)を求め、
求められた前記電圧(124)の上昇の前記値から前記電圧(124)の上昇の分極に起因する前記割合(138)を減算することにより、前記センサエレメント(110)の内部抵抗を求める、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電荷移動の発生中にそれぞれ異なる時点で求められた前記電圧(124)の上昇の前記値から、前記センサエレメント(110)における前記電荷移動の発生を表す時定数を求める、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記センサエレメント(110)における前記電荷移動の発生を表す前記時定数を、前記第1の電極(116)と前記第2の電極(118)との間の前記電圧(124)に対する別の要素の影響を無視できる又はこれが排除されている時間範囲において求める、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
求められた、前記センサエレメント(110)における前記電荷移動の発生を表す前記時定数を電子記憶媒体に記憶させ、前記センサエレメント(110)の内部抵抗を後に少なくとも1回求めるために使用する、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記センサエレメント(110)に印加される前記電流パルス(130)の持続時間が前記センサエレメント(110)内での前記電荷移動の発生を表す前記時定数の長さを上回るように、当該電流パルス(130)の持続時間を調整する、
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記センサエレメント(110)は、割り当てられた時定数を有するローパスフィルタを介して、制御ユニットに接続されており、
前記電圧(124)の上昇の第1の値を求めるための第1の時点が前記ローパスフィルタの前記時定数の少なくとも3倍に相当するように、当該第1の時点を選定する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記センサエレメント(110)は、割り当てられた時定数を有するローパスフィルタを介して、制御ユニットに接続されており、
前記電圧(124)の上昇の第1の値を求めるための第1の時点が前記ローパスフィルタの前記時定数の少なくとも5倍に相当するように、当該第1の時点を選定する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法の各ステップを実行するために構成された、コンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項に記載のコンピュータプログラムを記憶した、電子記憶媒体。
【請求項10】
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の方法に従って求められた、センサエレメント(110)内の電荷移動の発生を表す時定数の少なくとも1つの値が記憶されている、
請求項に記載の電子記憶媒体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の電子記憶媒体を含む、制御ユニット。
【請求項12】
測定ガス室内のガス混合気中のいずれかのガス成分の割合を検出する装置であって、
少なくとも1つのセル(114)を有するセンサエレメント(110)を含み、
前記セル(114)は、少なくとも1つの第1の電極(116)と、少なくとも1つの第2の電極(118)と、前記第1の電極(116)と前記第2の電極(118)とを接続する少なくとも1つの固体電解質(120)とを含み、
前記装置はさらに、請求項11に記載の制御ユニットを備えている、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定ガス室内のガス混合気中の、特に内燃機関の排気ガス中の、結合している酸素を含む測定ガス成分の少なくとも1種の割合を測定するように構成された、センサエレメントの内部抵抗を求める方法及び装置に関する。本発明はさらに、上記方法の各ステップを実行するために構成されたコンピュータプログラム、斯かるコンピュータプログラムを記憶した電子記憶媒体、及び、斯かる電子記憶媒体を有する電子制御装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
従来技術から、ガス混合気中のガスの少なくとも1種の割合を測定するセンサエレメントが公知である。本発明は、以下では、さらなる可能な構成を限定するものではないが、実質的に、ガス混合気中のガスの少なくとも1種の割合、特に、分圧及び/又は体積割合及び/又は質量割合を、定量検出するため及び/又は定性検出するために用いられる装置に関連して説明する。例えば、ガスは、特に、自動車分野での内燃機関の排気ガスであってよい。
【0003】
ガスの割合を検出するセンサエレメントとして、特にはラムダセンサが用いられる。ラムダセンサは、例えば、コンラート・ライフ編集、車両におけるセンサ、第2版、2012年(Konrad Reif, Hrsg., Sensoren im Kraftfahrzeug, 2.Auflage, 2012)、第160−165頁に記載されている。従来技術からは種々のバリエーションのラムダセンサが公知であり、そのなかに「2点ラムダセンサ」とも称される、セルを有するラムラセンサが存在する。2点ラムダセンサは、排気ガス中の残留酸素の割合と、センサ装置内に周囲空気として存在可能な基準ガス雰囲気の酸素の割合とを比較し、排気ガス中にリッチ混合気(即ち、λ<1)又はリーン混合気(即ち、λ>1)のいずれが存在するかを示す。セルを有するラムダセンサでは、外側電極は、高い酸素濃度を有するガス室、好ましくは基準ボリュームに接する。セルの外側電極と内側電極との間には定電圧が印加される。中空室の酸素濃度がゼロに近づくとネルンスト電位が強く上昇し、部分的に印加電圧を補償する。斯かる手段により、中空室内に一定の酸素濃度を良好な精度で調整することができる。
【0004】
種々の理由から、センサエレメントの内部抵抗が既知であると有利であり得る。これは特に、センサエレメントの内部抵抗が、センサエレメントの種々の特性及び/又はセンサエレメントで求められる測定量にアクセスする機関制御装置に対して影響を有し得るためである。例えば、これに関連して、センサエレメントの電気的診断、センサエレメントの動作準備の識別、及び、センサエレメントの温度の安定化が挙げられる。
【0005】
センサエレメントの内部抵抗を求めるために、従来技術により、センサエレメントに電流パルスが印加される。この場合、「測定パルス」とも称される「電流パルス」は、特に、センサエレメントの第1の電極、この第1の電極と第2の電極とを接続する固体電解質及び第2の電極を通って流れる電流の跳躍的上昇であると理解されたい。ここから生じるセンサエレメントの電流負荷により、センサエレメント内で電荷移動が発生する。ここで、センサエレメントでの電荷移動の発生は、第1の電極と第2の電極との間にかかる電圧の上昇を引き起こし得る。第1の電極と第2の電極との間の電圧の特性を、センサエレメントに電流パルスを印加した直後から監視することにより、センサエレメントに電流パルスを印加した結果として、電圧上昇値を求めることができる。
【0006】
従来技術によれば、センサエレメントの内部抵抗は、センサエレメントの第1の電極と第2の電極との間の電圧をそれぞれ上述した電流負荷がある場合とない場合とで相互に関連づけることにより、求めることができる。但し、センサエレメントへの電流パルスの印加は、上述したセンサエレメントでの電荷移動の発生も生じさせる。センサエレメントのセルは容量性の割合も常に有するので、電流パルスは、キャパシタの充放電から当業者に既知の、セルにかかる電圧の付加的な上昇を発生させ得る。但し、当該セル内の付加的な電圧上昇は、センサエレメントの内部抵抗につき求められた値を、センサエレメントの内部抵抗の真の値から変化させることがある。
【0007】
従って、これらの理由から、センサエレメントの第1の電極と第2の電極との間の電圧の特性を、電流負荷の開始後可能な限り早い時点でのセンサエレメントへの電流負荷のもとで検出すると有利である。但し、実際には、センサエレメント、特にラムダセンサは、特に機関制御装置からセンサエレメントへの高周波信号障害の伝達を最大限に抑制するために、通常はローパスフィルタを介して対応する機関制御装置に接続されているので、当該有利な手段は行われない。従って、実際には、第1の電極と第2の電極との間にかかる電圧は、電流負荷の開始後の典型的には最初の3ミリ秒の電流負荷のもとで検出される。当該3ミリ秒の期間中に発生するセンサエレメントでの電荷移動はセンサエレメントの内部抵抗の計算イベントに影響することがあるが、この効果は、従来技術による内部抵抗の計算時には考慮されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】コンラート・ライフ編集、車両におけるセンサ、第2版、2012年(Konrad Reif, Hrsg., Sensoren im Kraftfahrzeug, 2.Auflage, 2012)、第160−165頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の開示
従って、本発明では、公知の方法及び装置の欠点を少なくともおおよそ回避することができる、センサエレメントの内部抵抗を求める方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここでのセンサエレメントは、少なくとも1つのセルを有し、ここで、セルは、少なくとも1つの第1の電極と、少なくとも1つの第2の電極と、第1の電極と第2の電極とを接続する少なくとも1つの固体電解質とを含む。2つの電極は、好ましくは二酸化ジルコニウムから形成される。好ましい構成では、ここでの第1の電極は多孔性の保護層を介して測定ガス室に接続される。一方、第2の電極は、好ましくは少なくとも1つの拡散バリアを介して測定ガス室からのガスが供給される電極中空室内に配置される。冒頭に言及したように、セルの第1の電極と第2の電極との間には定電圧が印加される。電極中空室の酸素濃度がゼロに近づくと、ネルンスト電位が強く上昇し、部分的に印加電圧を補償する。斯かる手段により、電極中空室内の一定の酸素濃度を良好な精度で調整することができる。
【0011】
本発明は、第1の態様では、センサエレメントの内部抵抗を求める方法に関する。当該方法は方法ステップa)乃至c)を含み、これらは好ましくはステップa)で始まってステップc)で終わる当該順序で行うことができる。但し、この場合に、個々のステップを部分的に同時に行うこともできる。さらに、後述するように、ここでは、ステップc)を行う前にステップa)及びb)を少なくとも2回行うことが要求される。
【0012】
ステップa)では、本発明のセンサエレメントに電流パルスが印加される。冒頭に言及したように、「電流パルス」又は「測定パルス」なる概念は、セルに生じる電流の値の、電流パルスの印加前又は印加後の通常の規模を越えた跳躍的上昇を意味する。即ち、ステップa)の電流パルスは、常に、電流パルスの持続時間にわたる、セルへの電荷の付加的な供給分と見なされる。従って、当該電流パルスは、センサエレメントでの電荷移動の発生を生じさせる。当業者に知られているように、センサエレメントでの電荷移動の発生は、セルの第1の電極と第2の電極との間の電圧の上昇を生じさせる。これによって生じた、セルの第1の電極と第2の電極との間の電圧の上昇の値が、本発明に係る方法のステップb)で求められる。
【0013】
但し、従来技術から公知のセンサエレメントの内部抵抗を求める方法とは異なり、ここでは、上述したステップb)を、電荷移動の発生中のそれぞれ異なる時点で少なくとも2回、好ましくは2回又は3回連続して行い、ここから、関連する時点につきそれぞれ1つずつの電圧上昇の値を求めることが提案される。電荷移動の発生中の少なくとも2つの異なる時点で求められた電圧上昇の値から、ステップc)により、センサエレメントの内部抵抗を求めることができる。
【0014】
ステップa)の期間中、センサエレメントのセルに印加される電流パルスは、パルスの開始後にまずセンサエレメントでの電荷移動の形成を誘起し、ついでパルスの終了後に、先行して生じた電荷移動を低下させるので、特に有利には、セルの電圧上昇の値を求めるための種々の時点が、電荷移動の上昇の時間範囲又は電荷移動の低下の時間範囲のいずれか一方のみに入るようにする。斯かる手段により、センサエレメントの内部抵抗に影響する同じ物理的効果が考慮されることを保証することができる。
【0015】
特に有利には、セルの電圧上昇の値の少なくとも2回の検出は、この検出からセルの電圧上昇のうち分極に起因する割合を求めるために用いることができる。当該分極に起因する割合は、センサエレメントの電流負荷中、上述した付加的な電圧上昇分から、キャパシタの充放電曲線と類似の方式で得られる。電流負荷中の電圧上昇のうち分極に起因する割合を求めることにより、電圧上昇の値全体からステップb)で求められた分極に起因する割合を減算し、このようにして、セルの電圧上昇のうちのオーム性の割合のみを求めることができる。当該セルの電圧上昇のオーム性の割合によって、センサエレメントのオーム内部抵抗の計算をより正確に行うことができる。ここから、センサエレメントの「内部抵抗」なる概念につき、センサエレメントに電流を印加したときにセンサエレメントにかかる電圧のオーム値とみなすことのできる定義も同時に得られる。なお、センサエレメントの電圧に影響するさらなる効果、特にここから同様に誘起されるセンサエレメントの分極の効果は、無視される。
【0016】
特に、電荷移動の発生中の異なる時点で求められたセルの電圧上昇の値から、センサエレメントにおける電荷移動の発生の特性を記述する時定数を求めることができる。「時定数」なる概念は、ここでは、センサエレメントに生じ得る分極に関する特徴的なパラメータをいうものと理解されたい。当該パラメータは、キャパシタと電気抵抗との間に直列回路が設けられている場合のキャパシタの公知の充電と同様に、電気抵抗値とキャパシタのキャパシタンス値との積によって表される。従って、電荷移動中にセルにかかる電圧の好ましくは指数的な時間特性から、電流負荷中のセルの電圧上昇のうち分極に起因する割合を推定することができる。よって、このようにして求められた、セルの電圧上昇のうちの分極に起因する割合の値は、上述したように、センサエレメントの内部抵抗の値のより正確な計算に使用することができる。
【0017】
この場合、特に有利には、センサエレメントの電荷移動の発生を表す少なくとも1つの時定数は、セルの電圧への別の要素の影響を排除又は無視し得る時間範囲において求められる。従って、センサエレメントの内部抵抗の検出は、好ましくは、最大限に一定のラムダ値が支配的となる時間範囲において行われるとよい。
【0018】
センサエレメントの所定の温度では、この場合に観察可能なセルの分極を表す値が通常は一定にとどまるので、ここで提案している方法に従ってセンサエレメントの同じ温度で行われる、センサエレメントの内部抵抗の連続2回の測定では、センサエレメントの内部抵抗の値は変化しないことを基礎とすることができる。ゆえに、ここでの観察は、一方では場合により妥当でない測定値を消去するために、他方ではステップc)によりセンサエレメントの内部抵抗の複数回の個別測定の結果を平均することで時定数の計算精度を高めるために、使用することができる。
【0019】
同様に、センサエレメントの内部抵抗の後続の計算に対して先行して求められた少なくとも1つの時定数を使用することもできる。このようにすれば、上述した時定数を個々の計算のたびに改めて求める必要はなくなる。これに代えて、セルの電圧上昇のうち分極に起因する割合を、先行の測定で求められた時定数によって推定することも有利であり得る。このために、求められた少なくとも1つの時定数を、有利には機関制御装置内に配置可能な電子記憶媒体に記憶させるように構成することもできる。このようにすれば、後の時点においても、そこで改めて時定数を求める必要なく、センサエレメントの内部抵抗の計算を行うことができる。
【0020】
好ましい実施形態では、センサエレメントに印加される電流パルスの持続時間が、センサエレメントにおける電荷移動の発生について求められた時定数の長さを上回るように調整される。従って、ここから、特に時定数の値がセルでの電流負荷の通常の持続時間を上回る場合、センサエレメントへの電流負荷を長い時間範囲にわたって1回のみ又は所定の間隔で作動させると有意であり得る。なお、このようにするとセル内の分極の増大が誘起されることがあるので、独国特許出願公開第102012200038号明細書(DE102012200038A1)に記載されているように、「対抗パルス」とも称し得る、逆方向において引き続く電流負荷を相応に延長し、この手段によって、センサエレメントのセル内での分極が全体として上述した電流パルスシーケンスの終了後に可能な限り迅速に低下するようにすると、特に有利であり得る。
【0021】
冒頭に言及したように、センサエレメントは、ローパスフィルタを介して制御ユニット、特に機関制御装置に接続可能である。このことに関連して既に述べたように、ローパスフィルタにも同様に、相応に求められた電気量から当業者が容易に導出可能な対応する時定数が設けられる。ゆえに、セルにかかる電圧の過渡過程の持続時間が、センサエレメントへの電流負荷による電荷移動の結果、典型的には0.1msから0.5msまでの範囲にあるローパスフィルタの時定数よりも通常著しく長くなる、即ち、典型的には数ミリ秒となるという観察から、セルの電圧上昇の値を求めるための種々の時定数を、セルの分極の上昇中又は低下中に、この場合の測定値へのローパスフィルタの影響が可能な限り無視可能となるように選定すると有利であり得ると結論することができる。このために、特には、ステップb)に従ってセルの電圧上昇の値を求めるための第1の時点が、電流負荷の開始後又は終了後、ローパスフィルタの時定数の少なくとも3倍、好ましくは少なくとも5倍の経過後とされるように構成可能である。
【0022】
別の態様では、本発明は、上述した方法の各ステップを実行するように構成されたコンピュータプログラムを含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、このように構成されたコンピュータプログラムを記憶するように構成された電子記憶媒体に関する。好ましい構成では、電子記憶媒体は特に、上述した方法に従って求められた、センサエレメントでの電荷移動の発生を表す少なくとも1つの時定数の値を記憶するように構成される。ここで、当該求められた値は、有利には、時定数の値を改めて求める必要なく、本発明に係る方法においてこの時定数を後に使用するために取り出すことができる。
【0024】
別の態様では、本発明は、好ましくは、上述した方法の各ステップを実行するように構成されたコンピュータプログラムと、場合により別の値、特にセンサエレメントでの電荷移動の発生を表す少なくとも1つの時定数とを記憶した電子記憶媒体を含むように構成された制御ユニット、特に機関制御装置に関する。
【0025】
別の態様では、本発明は、測定ガス室内のガス混合気中のいずれかのガス成分の割合を検出する装置に関する。ここで、当該装置は、少なくとも1つのセルを有する上述したセンサエレメントを有し、セルは、少なくとも1つの第1の電極と、少なくとも1つの第2の電極と、これら第1の電極と第2の電極とを接続する少なくとも1つの固体電解質とを含む。当該装置はさらに、上述した制御ユニット、特に機関制御装置も備える。これに関して、本発明に係る装置は、一体型の形態に構成されてもよいが、好ましくは複数部材から成る形態で構成されてよく、特にセンサエレメントが適切な電気線路を介して同様に個別ユニットとして構成された制御ユニットに相互接続される個別の要素として構成されてもよいことを指摘しておきたい。
【発明の効果】
【0026】
発明の利点
ここで説明している方法と、この方法を実行するように構成された装置とにより、センサエレメント、特にラムダセンサの内部抵抗を高い精度で求めることができる。こうして、センサエレメントの内部抵抗に基づく機能及び効果も高い精度で求めることができるようになる。特に、このようにすれば、センサエレメントの温度をより正確に調整することができ、これによって、一方ではセンサエレメントが形成する信号の精度が高められ、他方では生じ得るオーバーヒートによるセンサエレメントの損傷の危険が低減される。こうして、有利には、センサエレメントの寿命も延長することができる。
【0027】
ここで、本発明に係る方法は、特に種々のタイプのセンサエレメント、特には種々のタイプのラムダセンサ、好ましくは2点ラムダセンサに適用可能である。センサエレメントに対して選定される制御ユニット又はこれを備える車両に関する制限は存在しない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の好ましい実施形態を図示し、以下の説明において詳細に説明する。
図1】本発明に係る方法により内部抵抗を求めることができるセンサエレメントの電気回路を示す概略図である。
図2】センサエレメントの第1の電極と第2の電極との間の電圧の時間特性を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の実施形態
以下に、センサエレメントの内部抵抗を求める本発明に係る方法を、例示としての、内燃機関の排気ガス中の酸素の割合を検出するように構成されたセンサエレメント、特にセルを有するラムダセンサに則して説明する。
【0030】
図1には、測定ガス室内のガス混合気中のいずれかのガス成分の割合を検出するセンサエレメント110と付属の電気回路112とが概略的に示されている。ここに例示されているセンサエレメント110には、第1の電極116と、第2の電極118と、これら第1の電極116と第2の電極118とを接続する固体電解質120とを含むセル114が設けられている。電流122をセル114へ印加することにより、第1の電極116と第2の電極118との間で、適切な電圧検出装置によって電圧124を検出することができる。ここに示されているセンサエレメント110にはさらに、対応する加熱制御部128によってセンサエレメント110の温度を調整することができるように駆動可能な加熱素子126が設けられている。
【0031】
センサエレメント110の内部抵抗を求める方法のステップa)によれば、センサエレメント110に電流パルス130が印加される。当該電流パルス130は、その印加のために構成されたパルス形成ユニット132によって形成され、電流122に加えて、セル114へ印加される。センサエレメント110に電流パルス130を印加することにより、センサエレメント110において電荷移動が発生する。当該電荷移動は、第1の電極116と第2の電極118との間のセル114での電圧124の測定可能な上昇として現れる。
【0032】
ステップb)によれば、電荷移動の発生中、異なる時点で少なくとも2回、それぞれ、第1の電極116と第2の電極118との間のセル114での電圧124の上昇の値が求められる。ここから、ステップc)により、特に図2に関連して以下に詳述するように、センサエレメント110の内部抵抗を求めることができる。
【0033】
図2には、センサエレメント110の第1の電極116と第2の電極118との間のセル114での電圧124の時間特性が概略的に示されている。ここでは、センサエレメント110に、電流パルス130とこれに続く対抗パルス134とを印加した。従って、センサエレメント110への対抗パルス134の印加は、好ましくは、センサエレメント110への電流パルス130の印加に起因する、センサエレメント110、特にセル114での分極を可能な限り直ちに除去するために行ったものである。
【0034】
図2に示されている、セル114における電圧124の時間特性は、電流パルス130中に、オーム性の割合136と、パルスシーケンスの印加前後の値140に対する電圧124の上昇のうち分極に起因する割合138とを有する。電流パルス130中のセンサエレメント110の電圧124の時間特性の形状から、電気キャパシタを有するセルの挙動を類推することにより、センサエレメント110、特にセル114での電荷移動の発生を表す時定数を求めることができる。上述したように、このケースでは、当該時定数は、内部抵抗の値とセンサエレメント110のキャパシタンスとの積に相当する。このため、近似によってセンサエレメント110、特にセル114のキャパシタンスの値を求めることができ、ここから、電流パルス130中の電圧124の上昇分のうち分極に起因する割合138を求めることができる。最終的には、分極に起因する割合138を電圧124の上昇全体から減算し、そこから、センサエレメント110の内部抵抗を表す求めるべきオーム性の割合136を計算することによって、センサエレメント110の内部抵抗が得られる。
図1
図2