(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
例えば自動車又は建築用途に、可視光透過率「T
vis」(高いほど通常は望ましい)と全日射透過率「T
ts」(低いほど通常は望ましい)との間の特定のバランスを有する物品(例えば窓板物品)を提供することが望ましい。単一の所与のT
tsに対して、より高いT
visは窓板の色域を広げることができ、従ってより高い設計の柔軟性を提供できる。単一の所与のT
visに対して、より低いT
tsは高温の晴天日の空調の需要を減らすことができ、燃料経済性又は電気走行距離を改善できる。しかしながら、これらの特徴、即ちT
ts及びT
visは、相反する傾向にある。より具体的には、T
visとT
tsとのバランスをプラスチック系窓板について達成しつつ、当該製造に関する(例えば、プラスチック樹脂中の添加剤濃度に関する)制限内で、外見及び光学的機能の均一性、ヘイズ(即ち前方光散乱)、耐摩耗性、色、並びに耐候性について用途に応じた要件に応えることが望ましい。
【0012】
具体的には、現行の物品の性質は保持したままで、さらに赤外線(「IR」)吸収性を有する物品を提供することが望ましい。プラスチック材料は、多くの場合に、自動車又は窓板の用途にとって十分な耐摩耗性を有さない。通常、それらは、耐候性で耐摩耗性のコーティングを用いてコーティングされる。特に望ましいコーティングは、縮合したシラノール、コロイダルシリカ、及び紫外線(UV)吸収剤を含むシリコーンハードコートである。例は、AS4000、AS4010、及びAS4700を含み、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から市販されている。ITOとコロイダルシリカとの非相容性並びに多くのIR吸収剤がその組成物に付与する色ゆえに、シリコーンハードコートに利用され得る具体的なIR吸収剤は非常に限られて来た。従って、例えば、金属酸化物ナノ粒子、特にITOの使用は非常に限られて来た。ITOの使用が試みられた場合には、物品の光学的透明度及び熱安定性が許容できないほど低下した(例えば、中江の欧州特許2009057号明細書参照)。
【0013】
本明細書では、要素として、基板(「窓板」とも呼称される)、基板の片面又は両面の赤外線吸収性(IR)コーティング、及び任意選択の層(例えば、耐候性のコーティング、プライマーなど)を含む、窓板物品が開示される。本明細書で用いられる場合、「層」は、フィルム(物品への取り付け前には自立性)及びコーティング(物品上に作られる)を含む。物品の一部の1つ以上の配置(例えば、同じ又は別々であり、コーティング、フィルム、及び/又は基板)には、相補的なそれぞれのスペクトル特性を有する2種類以上の添加剤が配されて、所望の得られる透過スペクトルを(例えば可視光透過率及び全日射透過率に関して)達成できる。添加剤は、窓板物品が用いられようとする部品(例えば、乗用車又は建築物の室内又は室外)と相対的に、並びに/或は他の機能要素、例えばUV吸収及び/又は耐摩耗性コーティングと相対的に、窓板物品の一部に戦略的に配置され得る。
【0014】
一部の添加剤はその母材(基板、フィルム、及び/又はコーティング)の色に明瞭に影響し、他は影響しない。コーティングの塗布方法(例えば、フローコーティング又はディップコーティング)がコーティングの厚さの勾配を生ずる傾向がある場合には、色に影響する添加剤を、基板若しくはフィルム(用いられている場合)、又はインモールドコーティング(例えば、本願の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2008/0265459号)、又は真空蒸着されるコーティング中に配置して、均一な分布、従って均一な機能及び外見を提供するようにすることが好ましい。色に(実用濃度において)明瞭に影響しない添加剤は、厚さの勾配を有するコーティング中に配置されても、機能上の要件がコーティングの厚さの範囲全体に渡って満たされていれば、不均一な外見を発生させずにいられる。適切なスペクトル特性を提供することに加えて、添加剤は、各母材中において可溶であるか又は安定な分散液となり、許容できないヘイズを生じず、製造(例えばコーティングのUV又は熱硬化)及び使用中にいずれも安定である。
【0015】
基板は、プラスチック(例えば透明プラスチック)、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系ポリマー、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスルホン樹脂、及び前記の少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。ポリカーボネート樹脂は芳香族系のカーボネートポリマーであり得、二価フェノールとカーボネート前駆体、例えばホスゲン、ハロ蟻酸エステル、又は炭酸エステルとを反応させることによって調製され得る。用いられ得るポリカーボネートの一例はLEXAN(商標)ポリカーボネートであって、SABICイノベーティブプラスチックス社(マサチューセッツ州ピッツフィールド)から市販されている。
【0016】
アクリル系ポリマーは、モノマー、例えばメチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなど、及び前記の少なくとも1つを含む組み合わせから調製され得る。置換されたアクリレート及びメタクリレート、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、及びn‐ブチルアクリレートも用いられ得る。
【0017】
ポリエステルは、例えば、有機ポリカルボン酸(例えばフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、ドデカン二酸など)又はそれらの無水物と第1級若しくは第2級のヒドロキシル基を含む有機ポリオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノール)とのポリエステル化反応によって調製され得る。
【0018】
ポリウレタンは、基板を作るのに用いられ得る材料のもう1つの種類である。ポリウレタンは、ポリイソシアネートとポリオール、ポリアミン、又は水との反応によって調製され得る。ポリイソシアネートの例は、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート、並びにそれらのジイソシアネートのビウレット及びチオシアヌレートを含む。ポリオールの例は、低分子量脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、脂肪族アルコールなどを含む。
【0019】
基板が作られ得る元の他の材料の例は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンポリマー、VALOX(商標)(SABICイノベーティブプラスチックス社から市販されているポリブチレンフタレート)、XENOY(商標)(SABICイノベーティブプラスチックス社から市販されているLEXAN(商標)とVALOX(商標)とのブレンド)などを含む。上記の基板材料の任意のものの組み合わせも含まれる。
【0020】
基板は、種々の方法、例えば射出成形、押出成形、冷間成形、バキュームフォーム、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、熱成形などによって作られ得る。物品は任意の形状であり得、商用の完成した物品である必要はない。即ち、裁断若しくはサイズ合わせされ、又は機械的に成形されて完成した物品となるシート材又はフィルムであり得る。
【0021】
透明プラスチック基板は、ビスフェノールAポリカーボネート及び他の樹脂等級(例えば分岐又は置換したもの)を含み得、さらに他のポリマー、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)(ABS)、ポリアリレート、又はポリエチレンと共重合又はブレンドされ得る。
【0022】
透明プラスチック基板は、種々の添加剤、例えば着色剤、離型剤、抗酸化剤、界面活性剤、可塑剤、IR吸収剤、帯電防止剤、抗菌剤、流動性調整剤、分散剤、相容化剤、UV吸収剤、及び前記添加剤の少なくとも1つを含む組み合わせ、をさらに含み得る。
【0023】
耐候性層は、任意選択で、基板の片面又は両面に用いられ得る。この層は、例えば、厚さ100マイクロメートル(μm)以下、具体的には4μm〜65μmを有し得る。耐候性層は、UV吸収材料(例えばヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、ポリアロイルレゾルシノール、及びシアノアクリレート、並びに前記の少なくとも1つを含む組み合わせ)を含み得る。耐候性層は、例えば、ポリウレタン(例えばポリウレタンアクリレート)、アクリレート、シリコーン系材料、フルオロカーボン(例えばポリフッ化ビニリデン)、アクリル系材料、及び前記の少なくとも1つを含む組み合わせであり得る。望ましくは、耐候性層は、テーバーのΔヘイズ(耐摩耗性試験)10%未満、具体的には5%以下を有する。本明細書で用いられる場合、テーバーのΔヘイズは、CS‐10Fの円盤、500グラム(g)の荷重、及び500サイクルを用いて、ASTM‐D1044‐08によって定められているように測定される。
【0024】
IRコーティングは、金属酸化物ナノ粒子を含むシリコーンハードコートであり得る。そのようなコーティングは、低いヘイズ、耐候性、UV吸収性、及び耐摩耗性を提供できる。本明細書で用いられる場合、「耐候性」は、亀裂(20/20の正常視力の裸眼による)及び層間剥離(ASTM‐D3359‐08のテープ試験による)が、フロリダの屋外において少なくとも3年間、角度5°の耐候性試験後に無いことを指す。これは、キセノンアーク型耐候性試験機の340ナノメートル(nm)で、例えばASTM‐G155‐05に記載の昼光フィルターを使用するプロトコールを用いて測定された場合に、少なくとも9メガジュール/平方メートル/ナノメートル(MJ/m
2/nm)の曝露によってシミュレーションされ得る。本明細書で用いられる場合、ヘイズは、ASTM‐D1003‐11のA法に従ってCIE標準イルミナントCを用いて測定される(ISO/CIE10526参照)。望ましくは、コーティングされた窓板(IRコーティングを有する基板)は、5%未満、具体的には3%以下、より具体的には1.5%以下、さらにより具体的には1%以下のヘイズを有する。
【0025】
金属酸化物ナノ粒子の例は、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、及び前記の少なくとも1つを含む組み合わせを含む。望ましくは、金属酸化物ナノ粒子は、動的光散乱法(DLS)によって測定された場合に、平均粒径60ナノメートル(nm)以下、具体的には45nm以下、より具体的には40nm以下、さらにより具体的には10nm〜30nmを有する。具体的には、粒子の90%以上は61nm未満の直径を有することができ、より具体的には95%以上が71nm以下の直径を有することができる。ナノ粒子の互いの凝集は、コーティング基剤に添加する前に溶媒に金属酸化物ナノ粒子を懸濁すること、適当なナノ粒子表面の修飾、及び/又は濃度限度を観察することによって、抑制され得る。
【0026】
ITOはIR吸収に特に有用であることが判明しているが、従来は、耐候性及び耐摩耗性(例えばテーバーのΔヘイズ)を維持しつつ用いられることは容易でなかった。ITOは、通常は分散液の形態で購入される。ITO分散液がコロイダルシリカコーティング混合物(即ち、部分的に縮合したシラノールとコロイダルシリカとを含むコーティング混合物)と組み合わされると、凝集(沈殿及び/又は高度の濁りとして現れる)が起こる。凝集の深刻度は、裸眼にとって可視であるほどである。換言すると、ITO分散液がコロイダルシリカコーティング混合物と組み合わされた場合には、沈殿が1週間以内に起こる。本明細書で用いられる場合、別に定められない限りにおいて、「可視」とは「裸眼にとって可視」を指す。本明細書で用いられる場合、「裸眼」は20/20の正常視力を指す。
【0027】
一実施形態においては、ジ及び/又はトリアルコキシシラン(コロイダルシリカ不含)が、任意選択で添加剤などを含み、ITO(本明細書ではITO分散液とも呼称され、供給者から受領のITOである)と混合されてITOコーティング混合物となる。ITOは、取り扱いやすさのために分散液として受領され、例えば溶媒、例えば水、アルコール(例えばイソプロピルアルコール(IPA))、又は前記の少なくとも1つを含む組み合わせの中に分散されている。例えば、ITOは、上海フーゼン(Shanghai Huzhen)ナノテクノロジー社から製品コードITO‐MP030で商業的に購入でき、30wt%のITOと70wt%のイソプロピルアルコールとを含む。ITOコーティング混合物は、基板に塗布されて所望のIR防御を達成できる。コロイダルシリカはこの実施形態では存在しないので、それによって達成される効果(例えば耐摩耗性)も存在しない。
【0028】
シリコーンコーティング基剤は、式R
nSi(OH)
4−nのシラノールの部分縮合物の、低級脂肪族アルコール・水混合物を含み得る(式中、nは1又は2に等しく、Rは1〜3個の炭素原子のアルキルラジカル、ビニルラジカル、3,3,3‐トリフルオロプロピルラジカル、γ‐グリシドキシプロピルラジカル、及びγ‐メタクリルオキシプロピルラジカルから選択される)。任意選択で、シラノールの70wt%以上はCH
3Si(OH)
3であり得る。混合物がシリコーンコーティング基剤を用いて作られる場合には、混合物はコロイダルシリカ又はITOを含むことができ、10〜90重量パーセントの部分縮合物を含む10〜50重量パーセントの固形分を含み得る。任意選択で、混合物は、3.0〜6.0のpHを有するのに十分な酸を含み得る。
【0029】
コロイダルシリカコーティング混合物は、コロイダルシリカ分散液とシリコーンコーティング基剤とを含む。コロイダルシリカコーティング混合物は10〜50wt%の固形分を含み得、前記固形分は、10〜80wt%のコロイダルシリカと20〜90wt%の部分縮合物と、任意選択で3.0〜6.0のpHを提供するのに十分な酸とを含み得る。コロイダルシリカコーティング混合物の例は、クラークの米国特許第3,986,997号明細書に開示されている。コロイダルシリカコーティング混合物のさらなる例は、AS4010又はAS4700(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から市販されている)などのシリコーン樹脂コーティング溶液を含む。コロイダルシリカ分散液がシリコーンコーティング基剤と組み合わされる前又は後に、添加剤が導入され得る。
【0030】
ITOコーティング混合物は、ITO分散液とシリコーンコーティング基剤とを含む。ITOコーティング混合物は10〜50wt%の固形分を含み得、前記固形分は、10〜70wt%のITOと30〜90wt%の部分縮合物と、任意選択で3.0〜6.0のpHを提供するのに十分な酸とを含み得る。ITO分散液がシリコーンコーティング基剤と組み合わされる前又は後に、添加剤が導入され得る。ITOコーティング混合物を生ずる適当な処理工程及び適当な処理条件、例えば24時間以上の撹拌によって、ITOナノ粒子はシリコーンコーティング基剤中に包含され得る。
【0031】
上記のように、ITOがそのままコロイダルシリカコーティング混合物と組み合わされた場合には、ITOナノ粒子とコロイダルシリカ(CS)との凝集が通常は(例えば、ポリマー系分散剤の添加が無い場合には)起こる。しかしながら、ITOとコロイダルシリカとの間の非相容性は克服され得ることが発見された。即ち、今や、ITOとコロイダルシリカとが1つの共通のコーティング混合物中に共存しながら、ITOナノ粒子の凝集が無い、例えば可視の濁り又は沈殿が2週間の間、さらには2週間を超えても無いことが可能である。この相容性は、ポリマー系分散剤(例えばポリメチルメタクリレート)を供給者から受領したITO分散液に添加しなくても達成され得る。換言すると、ITOコーティング混合物は、1質量部のITOに対して0.05質量部以下のポリマー系分散剤、具体的には1質量部のITOに対して0.01質量部以下のポリマー系分散剤、より具体的には0質量部のポリマー系分散剤を含み得る。ITOとコロイダルシリカとが、別々に調製されたシリコーンコーティング基剤に個々に包含されて、得られるコーティング混合物が別々にエージングされた後に組み合わされて、コーティング基剤、ITO、コロイダルシリカ、及び任意選択の添加剤を含む組み合わされた混合物となり得ることが発見された。換言すると、組み合わされた混合物は、特定の量のポリマー系分散剤を有しており、ITO(例えばITO分散液)が仮にコロイダルシリカコーティング混合物とそのまま混合されて、組み合わされた混合物と同量のポリマー系分散剤を有する標本混合物を作った場合には、沈殿が標本混合物中において撹拌無しの1週間以内に起こるようにできる。
【0032】
一方の別々に調製された混合物、即ちITOコーティング混合物は、シリコーンコーティング基剤を含み、ITOを含み、コロイダルシリカを含まず(例えば、ITOコーティング混合物の総重量に対して0wt%のコロイダルシリカ)、任意選択で、硬化触媒、UV吸収剤、及び任意選択で他の添加剤をさらに含む。もう1つの混合物、即ちコロイダルシリカコーティング混合物は、シリコーンコーティング基剤を含み、コロイダルシリカを含み、ITOを含まず(例えば、コロイダルシリカコーティング混合物の総重量に対して0wt%のITO)、任意選択で、硬化触媒、UV吸収剤、及び任意選択で他の添加剤をさらに含む。各混合物、即ちITOコーティング混合物及びコロイダルシリカコーティング混合物は、単一の混合物、即ち組み合わされた混合物となる前にエージングされ得る。エージング時間は組成そのものによって決まり、(裸眼にとって)可視の沈殿を撹拌無しの少なくとも2週間は呈さない、組み合わされた混合物(ITOコーティング混合物とコロイダルシリカコーティング混合物との組み合わせ)が得られるような十分な時間及び撹拌を用いる。エージングは、1日以上(例えば1日〜2週間)の撹拌(例えば室温における撹拌)、又は35℃〜65℃への加温と1時間以上(例えば1時間〜1日)の撹拌(例えば撹拌)によって達成され得る。
【0033】
コーティング混合物と一緒に用いられ得る可能な添加剤は、着色剤、抗酸化剤、界面活性剤、可塑剤、IR吸収剤(例えばITO以外)、帯電防止剤、抗菌剤、流動性調整剤、分散剤、相容化剤、硬化触媒、UV吸収剤、及び前記添加剤の少なくとも1つを含む組み合わせ、を含む。
【0034】
ITOコーティング混合物がエージングされた後は、別々に調製されたITOコーティング混合物とコロイダルシリカコーティング混合物とを組み合わせる(例えば混合する)ことによって、組み合わされた混合物が作られ得る。望ましくは、組み合わされた混合物は、ITOコーティング混合物とコロイダルシリカコーティング混合物とがエージングされた後に作られる。上記のように、別々に調製された混合物の一方又は両方(即ち、ITOコーティング混合物及び/又はコロイダルシリカコーティング混合物)は、UV吸収剤(UVA)、硬化触媒、及び他の添加剤を、必要に応じて含み得る。UV吸収剤、硬化触媒、及び他の任意選択の添加剤も、必要に応じて、混合時以降の組み合わされた混合物に添加され得る。
【0035】
種々の実施形態においては、コロイダルシリカコーティング混合物(コロイダルシリカを含み、ITOは含まない)は、シリコーンハードコート混合物、例えばAS4010又はAS4700(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から市販されている)であり得る。ITOと混合されるコーティング基剤は、コロイダルシリカ混合物のコーティング基剤と同じ(例えば、AS4010又はAS4700と同じで、コロイダルシリカは含まない)組成物であり得る。このことは、ITOコーティング混合物中への同量の同じUV吸収剤の使用を可能にし、組み合わされた混合物中に標準的なシリコーンハードコートと同じ(例えば所望の性質を達成するために現在用いられているのと同じ)UV吸収剤量をもたらし、増強されたIR吸収性という追加の効果をもたらす。
【0036】
さらに、コロイダルシリカコーティング混合物は、標準よりも多いUV吸収剤及び/又はコロイダルシリカの量を有するので、コロイダルシリカを含まず且つ任意選択でUV吸収剤を含まないITOコーティング混合物による希釈を補うことができる。組み合わされた混合物(即ち組み合わされたITOコーティング混合物及びコロイダルシリカコーティング混合物)は、従って、従来のシリコーンハードコート混合物と同じUV吸収剤及びコロイダルシリカの量を有することができ、さらにITOの添加がされている。換言すると、コーティング混合物中の各成分の量は、組み合わされた混合物(ITOコーティング混合物とコロイダルシリカコーティング混合物とを含む)の所望の量に基づいて決定され得る。さらに、組み合わされた混合物を作るこの方法ゆえに、さらなるポリマー系分散剤を添加すること無く、ITOとコロイダルシリカとは組み合わされて単一の混合物になることができる。任意選択でITO分散液及び/又はITOコーティング混合物を精製するだけではなく、ITO分散液は供給者から購入したままでも用いられ得る。一部の実施形態においては、組み合わされた混合物がポリマー系分散剤を含まない。
【0037】
組み合わされた混合物中の金属酸化物ナノ粒子、即ちITOの濃度は、出来上りの硬化したコーティング中の所望の濃度に基づく。出来上りの硬化したコーティング中のITOナノ粒子の濃度は、コーティングされた物品の具体的な用途(例えば、許容可能なヘイズ及び所望の透過率)によって部分的には決まる。通常は、硬化したコーティングの総重量(即ち、出来上りの硬化したコーティング中の全コーティング固形分)に対して2wt%〜40wt%、具体的には5wt%〜40wt%、より具体的には5wt%〜35wt%、さらにより具体的には5wt%〜20wt%又は15wt%〜25wt%が存在し得る。米国国家規格協会のANSI‐Z26.1‐1996の規定にあるモーター・ビークル用の品目2の窓板の光線透過率について定められた要件を満たすためには、金属酸化物ナノ粒子の濃度は、硬化したコーティングの総重量(即ち、出来上りの硬化したコーティング中の全コーティング固形分)に対して10wt%〜40wt%、具体的には15wt%〜35wt%、より具体的には20wt%〜30wt%であり得る。品目3の窓板用途の場合(例えば、基板の性質がより拘束されないので、より多いIR吸収剤を含むことができる場合)には、しかしながら、(例えば天窓の場合には)、金属酸化物ナノ粒子の濃度は、硬化したコーティングの総重量(即ち、出来上りの硬化したコーティング中の全コーティング固形分)に対して2wt%〜25wt%、具体的には5wt%〜15wt%であり得る。
【0038】
種々の実施形態においては、コロイダルシリカ混合物へのITOナノ粒子の添加は、それによってコーティングされた物品の初期のヘイズを許容不可能なほどに上昇させた。例えば、初期のヘイズは20%以上であった。コロイダルシリカコーティング混合物は、アンモニウムで安定化されたコロイダルシリカ(例えば、ナルコ社から市販されているナルコ2327)又は酸で安定化されたコロイダルシリカ(例えば、ナルコ社から市販されているナルコ1034A)を含む場合にも、同様に振る舞うことが発見された。即ち、(i)コロイダルシリカ(例えば酸で安定化された又はアンモニウムで安定化されたもの)をITO/IPA分散液に添加することは凝集に至り、(ii)ITO/IPA分散液とコロイダルシリカ(例えば酸で安定化されたもの又はアンモニウムで安定化されたもの)を含むシリコーンハードコート混合物とを組み合わせることも凝集に至った。しかしながら、アンモニウムで安定化されたコロイダルシリカを含むコーティング混合物の場合と同様に、本明細書に記載の方法を適用すること(即ち、ITOコーティング混合物とナルコ1034Aを含むコロイダルシリカコーティング混合物とをエージング(後者では約10時間)の後に組み合わせること)は、低ヘイズのコーティングをもたらした(即ち凝集をもたらさなかった)。
【0039】
理論によって拘束されるものではないが、場合によっては、本発明者は、組み合わされたコーティング混合物中のITO(又は可能性としてはITO中の不純物)の存在が、ITO無しの場合と比較して、コーティングされた物品のより高いテーバーのΔヘイズに至ることを見いだした。従って、ITOコーティング混合物、コロイダルシリカコーティング混合物、及び組み合わされたコーティング混合物の1つ以上への硬化触媒の添加によって、テーバーのΔヘイズのさらなる低下が達成され得る。カルボン酸の第四級アンモニウム塩は硬化触媒として用いられ得る。硬化触媒の具体例は、酢酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム(TBAA)、ギ酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、安息香酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、2‐エチルヘキサン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、p‐エチル安息香酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、及びプロピオン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウムを含む。硬化触媒の量は、全コーティング基剤中の固形分の総重量に対して2重量パーセント(wt%)以下、具体的には0.01wt%〜2wt%、より具体的には0.05wt%〜1.5wt%、さらにより具体的には0.1wt%〜1wt%であり得る。可能な硬化触媒のさらなる検討は、ファクターらの米国特許第4,863,520号明細書に見られる。
【0040】
これらのIR吸収コーティングは、独立して又は添加剤と一緒に、IR吸収物品に用いられ得る。添加剤の場合には、添加剤(例えばATO及びLaB
6)の配置は制限されず(例えば基板及び/又は層の中であり)、それらの添加剤の配置は実用上の観点から決定され得る。例えば、より均一な添加剤量は、場合によってはコーティング中よりも基板中において達成され得る(例えば基板は均一な厚さに作られ得るが、コーティングはコーティング方法に応じてより大きい厚さのばらつきを有し得る)ので、添加剤は通常は基板(例えばポリカーボネート組成物)中に配置される。ITOは通常はポリカーボネートと相容性でない(即ち、ポリカーボネートに単純に添加され得ない。例えば、中江の欧州特許第2009057号明細書の段落[0002]参照)。従って、ITOはコーティング中に配置される。従って、(ITO以外の)添加剤は、通常は、物品(コーティング及び/又は基板)のどこに存在してもよい。例えば、有機系の添加剤(例えば、商業用BASF製品であるルモゲン(商標)IR765)、及び/又は無機系の添加剤(例えばLaB
6)、及び/又はATOがポリカーボネート基板中にあって、コーティング中の透明な導電性酸化物(例えばITO(インジウムドープ酸化スズ)、及び/又はATO(アンチモンドープ酸化スズ))と組み合わされてもよい。
【0041】
任意選択で、コーティングの1つ以上が、ラミネーション又はフィルムインサート成形などの方法によって基板に付与されるフィルム(例えば、ポリカーボネート又はポリビニルブチラール)によって置き換えられ得る。フィルムはスペクトル特性を有し、これは本質的であるか、フィルムが含む添加剤に起因するか、又はフィルムが有するスペクトル選択的な多層構造に起因し、通常はそれぞれの添加剤を含む基板及び/又は任意のコーティングのスペクトル特性を相補する。この場合には、コーティングは、フィルム及び/又はフィルムを有する面とは反対の基板面に塗布され得る。
【0042】
当然のことながら、UV輻射遮蔽要素及び耐摩耗性要素は、乗用車又は建築物の室外側においてはより厳しい要件を通常満たさなければならないが、基板中のIR吸収添加剤を補っているIR吸収コーティング又はフィルムは、室内側にあっても有効である。従って色々な用途、例えば自動車の天窓の場合には、十分で且つIR吸収コーティングよりも良好な耐摩耗性をUV遮蔽コーティングが提供し得、UVコーティング及びIRコーティングはそれぞれ窓板の室外側及び室内側に配置される。別の用途においては、プラズマ蒸着された耐摩耗性のコーティングが、例えばIR遮蔽機能を有する任意の他のコーティング上に用いられ、前記他のコーティングの配置はその耐摩耗性に関係なく選択され得る。例えば、一実施形態においては、ITOとコロイダルシリカとを含むシリコーンハードコートが、基板の両面(室内及び室外)に配置され得る。さらに別の実施形態において、例えば当該システムがIR反射要素をIR吸収要素に加えて含み、反射される波長がIR吸収によって吸収される波長と重なり合う場合には、光はIR吸収要素に到達する以前にIR反射要素に接触することが望ましい。従って、そのような状況においては、IR反射要素は室外及び/又は基板内に配置され得、IR吸収要素は室内側に配置され得、非対称的なコーティングシステム(例えば非対称的なウェットコーティングシステム)をもたらす。
【0043】
組み合わされたコーティング混合物(即ち、ITO及びコロイダルシリカを両方含むコーティング基剤)は対称的に塗布され得る。即ち、同一のコーティング混合物が基板(例えば窓板)の両面に塗布されて、組み合わされた混合物からなる硬化したコーティング上にプラズマ蒸着されたコーティングが存在しない場合であっても、標準的なシリコーンハードコートに特有の耐摩耗性及び耐候性を提供できる。ITOを含む対称的なコーティングシステムは、ITOを含まない対称的なコーティング、例えば標準的なシリコーンハードコートと比較して特別な製造工程を必要としない。コーティングは、様々な方法、例えばフローコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティングなどによって塗布され得る。本発明のプロセスは、例えば自動車の窓板用途の種々の物品を作るために用いられ得る。
【0044】
さらに、LaB
6は緑色であるので、塗布方法に起因する厚さの勾配(例えば、フローコーティング及び一部の他のコーティング法によって呈されるくさび効果)を有するコーティングに添加された場合には、得られるコーティングは不均一な色又は外見を呈し得る。同時に、ポリカーボネート基板に導入されたITOナノ粒子の場合には、高いヘイズに至る。
【0045】
以下の実施例は、単に本発明のコーティング基剤及びコーティングされた物品をさらに例証するためのものであって、本明細書の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0046】
実施例1〜3(シミュレーション):
IR吸収材料の種々の組み合わせがT
ts及びT
visに及ぼす影響がシミュレーションされた。各IR吸収剤の吸収係数が、波長域300〜2,500nmに渡って個別に測定された。表1の各量(物品の総重量に対するmg/cm
2)の添加剤の混合物について、透過スペクトルがランベルト・ベールの法則から決定された。T
visは、透過スペクトルから、ISO9050:2003の式1及び表1を用いて決定された。日射直接透過率は、透過スペクトルから、ISO13837:2008の表2を用いて決定された。反射スペクトルは、4mmの厚さ及びシリコーンハードコートを有するポリカーボネート参照試料(即ち、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から市販されているAS4010)について測定された。日射直接反射率は、ISO13837:2008の表2を用いて日射直接透過率と同様の方法で決定され、表1の全ての実施例に共通である。T
tsは、日射直接透過率及び日射直接反射率から、ISO13837:2008の附属書Bの式を用いて「静止した乗用車」の風速を用いて決定された。
【0047】
【表1】
太字の数字は拘束値を示す。
1添加剤量は、試料表面の単位面積を、当該表面に対する垂直方向に試料中を平行移動させることによって掃引される体積中の、添加剤の総質量である。
2T
tsはISO13837:2008のA法に準拠。
3T
visはISO13837:2008のA法に準拠。
4ルモゲンIR765はクアテリレン系色素である(BASF社から市販されている)。
【0048】
表1からは、物品へのITOの添加がT
ts及びT
visを改善したことが明らかである。換言すると、T
tsが低下及び/又はT
visが上昇した。
【0049】
実施例4(コロイダルシリカコーティング混合物と組み合わせる前の、室温での撹拌によるITOコーティング混合物のエージング時間が、コーティングのヘイズに及ぼす影響):
プライマー溶液が、4.01gのポリメチルメタクリレート(PMMA)を29.36gのジアセトンアルコール及び166.53gの1‐メトキシ‐2‐プロパノールに撹拌によって溶解することによって調製された。プライマー溶液はポリカーボネート基板の両面に塗布され、室温で15分間蒸発させられ、オーブン中において125℃で0.5時間焼成された。得られたヘイズは、ASTM‐D1003‐11のA法に従ってCIE標準イルミナントCを用い、3〜5マイクロメートル(μm)の厚さにおいて測定された場合に、0.38%であった。ITOコーティング混合物が、6.37gのn‐ブタノールと9.95gのITO分散液(30wt%、イソプロピルアルコール中)とを組み合わせることによって調製された。この混合物に対して、7.3gの脱イオン水、0.4gの酢酸、及び18.3gのメチルトリメトキシシランが添加されて撹拌された。ITOコーティング混合物は、撹拌によって室温(20℃)で所与のエージング時間連続してエージングされた。エージング後のITOコーティング混合物は、同体積のコロイダルシリカコーティング混合物(例えばAS4700)と組み合わされた。組み合わされた混合物は30秒間撹拌され、室温でさらなる撹拌無しに保存された。組み合わされた混合物は、プライマーを有するポリカーボネート基板の片面に塗布され、15分間室温で放置され、オーブン中において125℃で1時間硬化された。表2に示されるように、ITOコーティング混合物の室温における撹拌によるエージング時間は、例えば得られる硬化したコーティングのヘイズが1%未満となるためには、24時間以上とすべきである。従って、室温の場合には、ITOコーティング混合物を24時間以上、具体的には48時間以上、より具体的には1週間以上、撹拌(例えば撹拌)しながらエージングすることが望ましい。
【0050】
【表2】
*ASTM‐D1003‐11のA法、CIE標準イルミナントC使用。
プライマーはPC基板の両面にあり、コーティングは片面にある。
プライマーを有するPC基板上のヘイズは、コーティングの塗布前には0.38%であった。
【0051】
実施例5〜10(ITOコーティング混合物及び/又はコロイダルシリカコーティング混合物のエージングがコーティングのヘイズに及ぼす影響):
プライマーを有するポリカーボネート基板が、実施例4と同様に調製された。ITOコーティング混合物は実施例4と同様に調製された。コロイダルシリカ(CS)コーティング混合物は、表3の実施例7及び9については、クラークの米国特許第3,986,997号明細書の実施例1に従って、酸で安定化されたコロイダルシリカ(ナルコ社から市販されているナルコ1034A)をコロイダルシリカコーティング混合物として用いて調製され、エージングは2週間に変更された。コロイダルシリカ(CS)コーティング混合物は、表3の実施例8及び10については、クラークの米国特許第3,986,997号明細書の実施例2に従って、アンモニウムで安定化されたコロイダルシリカ(ナルコ社から市販されているナルコ2327)をコロイダルシリカコーティング混合物として用いて調製され、エージングは2週間に変更された。実施例4と同様に混合物が作られ、コーティングが塗布され、硬化された。
【0052】
【表3】
*ITOコーティング混合物及びCSコーティング混合物は、撹拌によって20℃で2週間エージングされた。
**ASTM‐D1003‐11のA法、CIE標準イルミナントC使用。
プライマーはPC基板の両面にあり、コーティングは片面にある。
プライマーを有するPC基板のヘイズは、コーティングの塗布前には0.38%であった。
【0053】
表3は、2つのエージングされたコーティング溶液の組み合わせ(実施例9及び10)が、1%未満のヘイズを有するコーティングをもたらしたことを示している。この発見は、酸で安定化されたコロイダルシリカ(CS)(実施例9)及びアンモニウムで安定化されたコロイダルシリカ(実施例10)の何れにも該当した。ただし、2週間のエージングが実施例では用いられたが、エージングが室温であって1%未満のヘイズを達成する場合にも、より短いエージング時間が可能だと考えられる。例えば、24時間以上、具体的には48時間以上、より具体的には1週間以上の、撹拌(例えば撹拌)を伴うエージングである。時間は、混合物の加熱によってさらに短縮され得る。
【0054】
実施例11〜14(テーバー耐摩耗性):
シリコーンハードコートへのITO添加によって遭遇される問題の1つは、ITOを含まない同じシリコーンハードコートと比較した場合の、テーバーのΔヘイズの増大である。
【0055】
プライマーを有するポリカーボネート(PC)基板が、実施例4と同様に調製された。実施例11のためには、コロイダルシリカコーティング混合物(AS4700)が、プライマーを有するポリカーボネート基板に塗布され、15分間室温で放置され、オーブン中において125℃で1時間硬化された。実施例12〜14のためには、ITOコーティング混合物は実施例4と同様に調製されたが、それらの実施例では、ITO量は、ITOコーティング混合物がコロイダルシリカコーティング混合物と1:2重量比で組み合わされた後に、得られた硬化したコーティング中のITO量が実施例3bと同じになった。ITOコーティング混合物は、室温(20℃)で撹拌によって14日間エージングされた後に、コロイダルシリカコーティング混合物と組み合わされて、組み合わされた混合物となった。組み合わされた混合物は、プライマーを有するポリカーボネート基板に塗布され、15分間室温で放置され、オーブン中において125℃で1時間硬化された。
【0056】
【表4】
*硬化したコーティング中の固形分の総重量に対するもの。
**コロイダルシリカコーティング混合物(正確にはAS4700)と組み合わされる前の、ITOコーティング混合物の処理。元のITO分散液が十分に純粋である場合には、必要だとは考えられない。
***テーバー試験プロトコール:ASTM‐D1044‐08、CF‐10Fの円盤、500gの荷重、500サイクル。
【0057】
表4の実施例12は、何れのコーティングも0.4wt%のTBAAを含み、且つITOコーティング混合物を精製するための手段が取られない場合には、1:2重量比の混合物からなるコーティングが、単なるコロイダルシリカコーティング混合物からなるコーティング(4.1%、実施例11)よりもかなり高いテーバーのΔヘイズ(7.6%)を有することを例示している。表4は、単なるコロイダルシリカコーティング混合物に匹敵するテーバーを達成するための2つの方法を示唆している。即ち、(i)コロイダルシリカコーティング混合物と混合する前のITO分散液を少なくとも部分的に精製するか(例えば抽出による)(実施例13)、及び/又はTBAA量を例えば0.6%まで増やす(実施例14)。
【0058】
実施例13のためには、25gのITOコーティング混合物が、50gの水と一緒に振盪された。数分間の沈降後に、水相が残りの青色スラリーから傾瀉され、抽出がその都度25gの水を用いて2回繰り返された。残りの青色のスラリーが、十分な1‐メトキシ‐2‐プロパノール中に再分散されて、元のITOコーティング混合物と同じ固形分レベルを有する青色溶液を得た。このITOコーティング混合物の1部がコロイダルシリカコーティング混合物の2部と組み合わされ、0.4%のTBAA触媒を含むように調整された。組み合わされた混合物は、プライマーを有するポリカーボネート基板に塗布され、1時間125℃で硬化された。テーバーのΔヘイズは4.3%であり、実施例11のテーバーのΔヘイズに匹敵する。
【0059】
実施例14のためには、未抽出のITOコーティング混合物の1部がコロイダルシリカコーティング混合物の2部と混合され、0.6%のTBAA触媒を含むように調整された。組み合わされた混合物は、プライマーを有するポリカーボネート基板に塗布され、1時間125℃で硬化された。テーバーのΔヘイズは4.0であり、実施例11のテーバーのΔヘイズに匹敵する。
【0060】
実施例13及び14は、硬化の阻害が、恐らくITO分散液中の不純物に起因するが、ITOコーティング混合物の精製又はより多くの硬化触媒を添加することによって対処され得ることを示している。抽出の代わりは、ITO分散液又はITOコーティング混合物を精製すること(例えばイオン交換による)及び/又は十分な純度を最初から有するITO分散液を作製することである。
【0061】
種々の異なる配置への複数の添加剤の使用は、物品の透過スペクトルの微調整を可能にする。異なる配置の使用は、(仮に共局在した場合には)非相容な材料の使用も可能にする。添加剤を様々な配置に配することが可能であることは、添加剤濃度の制限を、例えばヘイズ発生(例えば、添加剤粒子の凝集に起因するもの)及び/又は工程要件に関して(例えば、射出成形の場合に)克服することも助ける。このことは、多用途の一般的な基板樹脂(少々の基底の添加剤を含む)の使用が、基板以外の窓板要素へのさらなる添加剤の選択的使用と組み合わされた場合に、多種多様なスペクトル要件を有する多種多様な用途に対して効率的に対応することも可能にする。
【0062】
一実施形態においては、赤外輻射吸収コーティングを作るための方法が、ITOと第1のコーティング基剤とを含むITOコーティング混合物を作ることを含み、前記第1のコーティング基剤は式R
nSi(OH)
4−nのシラノールの部分縮合物(式中、nは1又は2に等しく、RはC
1−3アルキルラジカル、ビニルラジカル、3,3,3‐トリフルオロプロピルラジカル、γ‐グリシドキシプロピルラジカル、及びγ‐メタクリルオキシプロピルラジカルから選択される)を含み、前記ITOコーティング混合物はコロイダルシリカを含まず、コロイダルシリカと第2のコーティング基剤とを含むコロイダルシリカコーティング混合物を作ることを含み、前記第2のコーティング基剤は式R
nSi(OH)
4−nのシラノールの部分縮合物(式中、nは1又は2に等しく、Rは1〜3個の炭素原子のアルキルラジカル、ビニルラジカル、3,3,3‐トリフルオロプロピルラジカル、γ‐グリシドキシプロピルラジカル、及びγ‐メタクリルオキシプロピルラジカルから選択される)を含み、前記ITOコーティング混合物と前記コロイダルシリカコーティング混合物とを混合して組み合わされた混合物を作ることを含む。前記組み合わされた混合物は、撹拌無しの2週間の後にも裸眼にとって可視の沈殿物を含まない。
【0063】
一実施形態においては、シリコーンコーティング組成物が、式R
nSi(OH)
4−nのシラノールの部分縮合物を含むコーティング基剤(式中、nは1又は2に等しく、RはC
1−3アルキルラジカル、ビニルラジカル、3,3,3‐トリフルオロプロピルラジカル、γ‐グリシドキシプロピルラジカル、及びγ‐メタクリルオキシプロピルラジカルから選択される)と、コロイダルシリカと、動的光散乱法で測定された場合に60nm以下の平均粒径を有するITOと、を含む。
【0064】
別の実施形態においては、シリコーンコーティング組成物が、式R
nSi(OH)
4−nのシラノールの部分縮合物を含むコーティング基剤(式中、nは1又は2に等しく、RはC
1−3アルキルラジカル、ビニルラジカル、3,3,3‐トリフルオロプロピルラジカル、γ‐グリシドキシプロピルラジカル、及びγ‐メタクリルオキシプロピルラジカルから選択される)と、動的光散乱法で測定された場合に60nm以下の平均粒径を有するITOとを含み、前記シリコーンコーティングがコロイダルシリカを含まない。
【0065】
別の実施形態においては、コーティングされた窓板が、プラスチック基板と、基板上の硬化したシリコーンコーティングとを含む。前記硬化したシリコーンコーティングは、式R
nSi(OH)
4−nのシラノールの部分縮合物を含むコーティング基剤(式中、nは1又は2に等しく、Rは1〜3個の炭素原子のアルキルラジカル、ビニルラジカル、3,3,3‐トリフルオロプロピルラジカル、γ‐グリシドキシプロピルラジカル、及びγ‐メタクリルオキシプロピルラジカルから選択される)と、コロイダルシリカと、動的光散乱法で測定された場合に60nm以下の平均粒径を有するITOと、任意選択で、UV吸収剤、界面活性剤、可塑剤、IR吸収剤、硬化触媒、着色剤、帯電防止剤、抗菌剤、流動性調整剤、抗酸化剤、分散剤、相容化剤、及び前記添加剤の少なくとも1つを含む組み合わせから選択される添加剤と、から本質的になる組成物から作られた。コーティングされた窓板は、ASTM‐D1003‐11のA法に従ってCIE標準イルミナントCを用いて測定された場合に3%以下のヘイズを有する。
【0066】
前記の種々の実施形態においては、(i)ITOコーティング混合物を作ることが、ITOコーティング混合物をエージングさせることをさらに含み、及び/又は(ii)ポリマー系分散剤が、ITOコーティング混合物、コロイダルシリカコーティング混合物、及び組み合わされた混合物に添加されず、及び/又は(iii)第1のコーティング基剤と第2のコーティング基剤とが同じであり、及び/又は(iv)コーティング組成物が、1質量部のITOに対して0.05質量部以下のポリマー系分散剤を含み、及び/又は(v)コーティング組成物が0質量部のポリマー系分散剤を含み、及び/又は(vi)ITO粒子の90%以上は61nm未満の直径を有し、及び/又は(vii)UV吸収添加剤をさらに含み、及び/又は(viii)カルボン酸の第四級アンモニウム塩をさらに含み、及び/又は(ix)ITOコーティング混合物がカルボン酸の第四級アンモニウム塩を含み、及び/又は(x)酢酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム(TBAA)、ギ酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、安息香酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、2‐エチルヘキサン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、p‐エチル安息香酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、プロピオン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、及び前記の少なくとも1つを含む組み合わせから選択される硬化触媒をさらに含み、及び/又は(xi)コーティングされた窓板が70%以上のT
vis及び60%以下のT
tsを有し、及び/又は(xii)プラスチック基板が、ポリカーボネート樹脂、アクリル系ポリマー、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスルホン樹脂、及び前記の少なくとも1つを含む組み合わせから選択される材料を含み、及び/又は(xiii)ヘイズが2%以下であり、及び/又は(xiv)ヘイズが1%以下であり、及び/又は(xv)UV防御コーティングをプラスチック基板の両面にさらに有し、及び/又は(xvi)UV防御コーティングをプラスチック基板の片面に、IRコーティングをプラスチック基板の反対側の面にさらに含み、及び/又は(xvii)組成物が特定の量のポリマー系分散剤を含んでおり、ITOが仮にコロイダルシリカコーティング混合物とそのまま混合されて、組み合わされた混合物と同量のポリマー系分散剤を有する標本混合物を作った場合には、可視の沈殿が標本混合物中において撹拌無しの1週間以内に起こるようにする。
【0067】
通常、本発明は、それぞれ、本明細書に開示される任意の適当な構成要素を含み、それからなり、又は本質的にそれからなることができる。本発明は、追加的又は代替的に、従来技術の組成物に用いられる(又は、本発明の機能及び/又は目的の達成に必要でない)任意の部品、材料、成分、補助剤、又は化学種を含まない(又は実質的に含まない)ように製造され得る。
【0068】
所与の構成要素又は性質に関して本明細書に開示される全ての範囲は、その端点を含む。端点は、互いに独立して組み合わせ可能である(例えば「最大25wt%、又は、より具体的には5wt%〜20wt%」の範囲は、その端点及び「5wt%〜25wt%」、例えば10wt%〜23wt%などの範囲の全中間値を含む)。「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、アロイ、反応生成物などを含む。さらに、用語「第1」、「第2」などは、本明細書においてはいかなる順序、量、又は重要度も意味しておらず、所与の要素を別の要素から区別するために用いられる。用語「前部」、「後部」、「底部」、及び/又は「頂部」は、本明細書において、別に但し書きされない限りにおいて、単に説明の便宜のために用いられ、いかなる特定の位置や空間的方向性にも限定されない。用語「a」及び「an」及び「the」は、本明細書で別に指示されたり明らかに文脈と矛盾したりしない限りにおいて、本明細書においては量の制限を意味せず、単数形及び複数形の両方を包含すると理解されるべきものである。接尾辞「(s)」は、本明細書で用いられる場合には、それが修飾する用語の単数形及び複数形を包含することを意図されており、従って当該用語の1つ以上を含む(例えば、「フィルム(film(s))」は1つ以上のフィルムを含む)。本明細書における「一実施形態」、「別の実施形態」、「実施形態」などの表現は、当該実施形態に関連して記載される所与の要素(例えば特徴、構造、及び/又は特質)が、本明細書に記載された少なくとも1つの実施形態に含まれており、他の実施形態において存在したりしなかったりし得ることを意味する。さらに、当然ながら上記の要素は、任意の適当な方法によって種々の実施形態において組み合わされ得る。
【0069】
全ての被引用特許、特許出願、及び他の文献は、参照によってその全体が本明細書に援用される。ただし、本明細書の所与の用語が、援用された文献の用語と矛盾又は対立する場合には、援用された文献の対立する用語よりも本願の用語が優先される。
【0070】
いくつかの具体的な実施形態が記載されて来たが、本明細書において予想されていない(又はその可能性がある)代替、修正、変形、改良、及び実質的な均等が、当業者には発想され得る。従って、出願時及び補正される場合の添付の請求項は、全てのそのような代替、修正、変形、改良、及び実質的な均等を包含することが意図されている。