(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記歯面の理論形状に従って前記接触子を前記歯面に対して相対的に移動させた際の前記検出部で検出される検出値を取得し、この検出値から前記歯面の理論形状に対する形状誤差を求める形状誤差演算部を具備する
ことを特徴とする請求項1記載の歯車測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態を、
図1ないし
図8を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、創成方式歯車測定装置である歯車測定装置10は、所定の理論形状に従って製造された被測定歯車11の歯面12の形状を測定するものである。歯車測定装置10は、被測定歯車11の歯面12の形状を測定するのに歯切盤であるホブ盤を用いている。
【0018】
通常、ホブ盤は、歯車の製造に用いられており、ホブによって円盤状の歯車素材の周面に歯を切削するものである。このホブ盤は、インボリュート曲線、サイクロイド、トロコイド、複合曲線および自由曲線など、いずれの歯面形状の歯車でも製造可能としている。サイクロイド、トロコイド、複合曲線および自由曲線など歯面形状の歯車を製造する場合には、製造する歯車の歯面の理論形状から創成関数によってホブの歯形を求め、この歯形に形成されたホブをホブ盤に装着し、製造する歯車の歯面が理論形状となるようにホブのホブ軸周りの回転およびホブ軸方向のシフトと歯車素材の回転とをそれぞれ数値制御することにより、所定の理論形状に従った歯面形状の歯車を製造することが可能となっている。
【0019】
そして、歯車測定装置10は、ホブ盤本体15、およびこのホブ盤本体15に配置される測定部16を備えている。
【0020】
ホブ盤本体15は、ベース20、このベース20上に設けられた歯車側ユニット21およびホブ側ユニット22を備えている。ベース20は横長に設けられ、このベース20の長手方向の一端側に歯車側ユニット21が設置され、ベース20の長手方向の他端側にホブ側ユニット22が設置されている。なお、以下、ベース20の長手方向をX軸、ベース20の短手方向であってX軸と直交する方向をY軸、ベース20の上下方向をZ軸として説明する。
【0021】
歯車側ユニット21は、被測定歯車11を装着する歯車装着部25、およびこの歯車装着部25に装着された被測定歯車11を移動させる移動部26としての歯車回転部27を備えている。歯車装着部25は、Z軸に沿った歯車軸28を中心に回転する回転軸であり、被測定歯車11の中心に設けられている軸孔が装着される。歯車装着部25に装着される被測定歯車11の回転方向の位置は、例えば被測定歯車11の任意の歯面12から中心を割り出して位置決めするなどの精度のよい位置決め方法によって位置決めされる。歯車回転部27は、歯車軸28を中心として被測定歯車11を回転させる。歯車回転部27は、歯車軸モータ29、およびこの歯車軸モータ29からの回転駆動力を歯車装着部25(歯車軸28)に伝達する図示しない伝達機構などを備えている。
【0022】
また、ホブ側ユニット22は、ベース20上にX軸方向に沿って移動可能に設置されたX軸移動台であるコラム32、このコラム32にZ軸方向に沿って移動可能に設置されたZ軸移動台であるサドル33、このサドル33に角度調整機構34を介して設置されたホブヘッド35、このホブヘッド35に例えばY軸方向に沿って移動可能に設置されたY軸移動台であるシフト部36、このシフト部36に設置され測定部16を装着する測定部装着部37、およびこの測定部装着部37に装着された測定部16(接触子46)を移動させる移動部26としての接触子移動部38を備えている。
【0023】
コラム32は、ベース20に設置されたX軸モータ39の駆動によってX軸方向に移動する。サドル33は、コラム32に設置されたZ軸モータ40の駆動によってZ軸方向に移動する。ホブヘッド35は、角度調整機構34によってサドル33の側面に垂直な軸を中心として角度調整可能とする。シフト部36は、ホブヘッド35に設置されたY軸モータであるシフトモータ41の駆動によってホブヘッド35に沿って(例えばY軸方向に沿って)移動する。測定部装着部37は、ホブ軸42を中心として測定部16を回転可能に支持する。測定部装着部37に装着された測定部16は、ホブ軸モータ43の駆動によってホブ軸42を中心として回転する。接触子移動部38は、測定部16(接触子46)を、ホブ軸42を中心として回転させるとともに、ホブ軸42の軸方向に移動させる。すなわち、接触子移動部38は、シフトモータ41およびホブ軸モータ43などを含んでいる。
【0024】
そして、移動部26は、歯車装着部25および測定部16(接触子46)の少なくとも一方を移動させる。本実施の形態では、移動部26は、歯車装着部25および測定部16(接触子46)の両方を移動させる。すなわち、移動部26は、歯車回転部27および接触子移動部38を有し、歯車回転部27によって歯車装着部25つまり被測定歯車11を回転させるとともに、接触子移動部38によって測定部16(接触子46)を回転および軸方向に移動させる。
【0025】
また、
図1および
図2に示すように、測定部16は、被測定歯車11の歯面12に接触する接触子(フィラー)46、この接触子46を変位可能に支持する支持部47、および接触子46の変位(変位方向および変位量を含む)を検出する検出部48などを備えている。
【0026】
接触子46の先端部が被測定歯車11の歯面12に接触する接触部である。接触子46は、円柱状またはピン状で、例えば先端側の接触部が尖った形状に形成されている。なお、接触子46の先端側の接触部は、球状や、先端側の径が大きい逆円錐状などの形状でもよい。
【0027】
支持部47は、中空の円筒状に設けられている。支持部47の軸方向の両端部が測定部装着部37に軸方向の位置および回転方向の位置がそれぞれ位置決めされた状態で装着されている。支持部47は、ホブ軸モータ43の駆動によってホブ軸42を中心として回転する。支持部47の周面の1箇所には、接触子46が移動可能に挿通される挿通孔49が形成されている。挿通孔49に挿通された接触子46は、支持部47からの進退方向すなわち支持部47の径方向に移動可能とする。挿通孔49に挿通された接触子46は、この接触子46に設けられたストッパ50が支持部47の内面側などに当接することによって支持部47からの進出量である突出量が規制されるとともに、付勢部51によって支持部47からの進出方向である突出方向に付勢されている。付勢部51には、例えばコイルスプリングなどが用いられている。
【0028】
検出部48は、支持部47からの接触子46の移動方向およびその移動量を検出する例えばリニアセンサなどが用いられている。検出部48の検出信号は、例えば支持部47の端面側に配置されるスリップリングなどを介して回転する支持部47の外部に出力される。
【0029】
そして、本実施の形態では、接触子46は、支持部47から進退方向に移動可能とし、接触子46の先端側が歯面12に接触して支持部47内に後退することで歯面12の理論形状の位置に移動するように構成されている。
【0030】
また、
図3に示すように、歯車測定装置10は、この歯車測定装置10を制御する制御ユニット60を備えている。制御ユニット60は、演算部61、移動制御部62、および形状誤差演算部63などを備えている。
【0031】
演算部61は、被測定歯車11の諸元情報を取得し、この諸元情報から歯面12の理論形状を求める。さらに、演算部61は、被測定歯車11の歯面12の理論形状から創成関数によって接触子46の移動軌跡および歯面12の移動軌跡である回転軌跡を求める。すなわち、演算部61は、被測定歯車11の歯面12の理論形状から創成関数によって理論形状の歯面12を製造するためのホブ歯形を求め、このホブ歯形と歯面12の理論形状との接触点が歯面12の理論形状に従って移動するように接触子46の移動軌跡および歯面12の回転軌跡を求める。この接触子46の移動軌跡は、理論形状の歯面12を製造する際の歯面12の理論形状とホブ歯形との接触点の移動軌跡に対応している。従って、演算部61は、歯車12の理論形状を求める理論形状演算部の機能と、接触子46の移動軌跡を求める移動軌跡演算部の機能と、歯面12の回転軌跡を求める回転軌跡演算部の機能を有している。そして、被測定歯車11の諸元情報は、被測定歯車11を製造するうえでの設計情報であって理論値であり、入力部64によって入力される。入力部64は、ホブ盤本体15が備えていてもよいし、例えば制御ユニット60に対して通信可能な外部のコンピュータなどでもよい。
【0032】
移動制御部62は、演算部61で求められた歯面12の理論形状、接触子46の移動軌跡および歯面12の回転軌跡などの情報を取得し、歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させるように移動部26を制御する。本実施の形態では、移動部26である歯車回転部27および接触子移動部38との両方により、歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させるように、歯車装着部25と測定部16の接触子46との両方を主体的に移動させる。
【0033】
形状誤差演算部63は、歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させる際に検出部48で検出される検出値を取得し、この検出値と歯面12の理論形状とを比較し、歯面12の理論形状に対する形状誤差を求める。検出値や求められた形状誤差などは出力部65から出力される。出力部65は、ホブ盤本体15が備える表示部でもよいし、例えば制御ユニット60に対して通信可能な外部のコンピュータなどでもよい。
【0034】
なお、制御ユニット60は、少なくとも移動制御部62を備えていればよく、演算部61や形状誤差演算部63などは歯車測定装置10の運用に用いる外部のコンピュータなどが備えていてもよい。いずれにしても、歯車測定装置10として、演算部61、移動制御部62、および形状誤差演算部63を備えていればよい。
【0036】
創成関数とは、xyz三次元空間において、母関数をx軸、y軸、z軸の各軸方向の直線運動とこれら各軸周りの回転運動をさせることのできる変数との組み合わせにより構築されていることが知られている。
【0037】
なお、ここでは、創成関数を解く説明を簡単にするために、歯車の歯面の理論形状が円弧で、かつ歯車の歯面を形成するための工具が圧延加工用のラックである場合の一例を
図4を参照して説明する。
【0038】
本例の創成関数では、
図4でC
1を中心とした半径a
1の円弧の歯面を加工するためのラックの形状を求める。
【0039】
三角形△O
1C
1Cにおいて第二余弦定理を適用すると、[数1]の式となる。
【数1】
【0040】
ここで、動径ρ
1(O
1C)と共通接線TTのなす接触角をσ
1とする。また、e
1は円弧の中心C
1とギヤピッチ円との距離を示す一定値である。
【0041】
次に、歯車に対する噛み合い方程式は、
【数2】
となる。
【0042】
[数1]の式と[数2]の式とで、ρ
1,σ
1を消去すると、接触点の軌跡が得られる。すなわち、
【数3】
となる。
【0043】
[数3]の式からラックに対する噛み合い方程式は、
【数4】
となる。
【0044】
[数2]、[数3]および[数4]の式からγとθを消去して、ラックの歯形を求める。ここで、dy/dx=pとすれば、tanθ=pとなる。
【数5】
【数6】
【0045】
[数5]および[数6]の式を[数3]の式に代入すると、
【数7】
となる。
【0046】
[数7]の式の微分方程式を解くと、ラックの歯形が得られる。
【0047】
ここで、
【数8】
であるため、[数8]の式を部分積分すると、
【数9】
となる。
【0048】
そして、求める解は、[数10]の式で表される。
【数10】
【0049】
[数10]の式が、円弧歯形を与えるためのラックの歯形(工具歯形)である。
【0050】
なお、K値は、座標の原点を決めることによって求まる。
【0051】
そして、一例として、a
1=0.4、e
1=0.1、R
1=1.0としたときに、[数10]の式は次のようになる。
【数11】
【0053】
ここで、歯車歯形がx軸と交わる点(y=0)を原点とするときは、[数12]の式によりp=15.9687となる。このp値と原点座標の値x=0,y=0とを[数12]の式に代入するとK=0.3712となる。
【0054】
なお、ここでは、創成関数を解く説明を簡単にするために、ラック歯形を求め
る例を示したが、同様にして創成関数によってホブ歯形を求めることができる。また、歯面が円弧の場合について説明したが、インボリュート曲線、サイクロイド、トロコイド、複合曲線および自由曲線などの歯面形状の場合についても同様にしてホブ歯形を求めることができる。また、複合曲線などは、曲面毎に創成関数によってホブ歯形を求める。そして、ホブ歯形を求めることにより、ホブ歯形に従った接触子46の移動軌跡を求めることが可能となる。
【0055】
次に、歯車測定装置10による測定動作を説明する。
図5には測定動作の説明図を示し、
図6には測定動作のフローチャートを示す。
【0056】
被測定歯車11を歯車装着部25に位置決め装着し、被測定歯車11の諸元情報を入力する(ステップS1)。
【0057】
演算部61により、被測定歯車11の諸元情報から歯面12の理論形状を求める。さらに、演算部61により、被測定歯車11の歯面12の理論形状から創成関数によって接触子46の移動軌跡および歯面12の回転軌跡を求める(ステップS2)。すなわち、演算部61により、被測定歯車11の歯面12の理論形状から創成関数によって理論形状の歯面12を製造するためのホブ歯形を求め、このホブ歯形と歯面12の理論形状との接触点が歯面12の理論形状に従って移動するように接触子46の移動軌跡および歯面12の回転軌跡を求める。
【0058】
移動制御部62により、被測定歯車11の測定を行う1つの歯の歯面12と測定部16の接触子46との原点調整を行う(ステップS3)。例えば、被測定歯車11が歯車装着部25に位置決め装着されたことで分かる被測定歯車11の歯面12の位置と、測定部16がホブヘッド35の測定部装着部37に位置決め装着されたことで分かる接触子46の先端側の接触部の位置とから、原点調整が可能となっている。
【0059】
そして、測定動作を開始する(ステップS4)。移動制御部62により、ホブ軸モータ43を駆動してホブ軸42を中心として接触子46を回転させるとともに、シフトモータ41を駆動してホブ軸42の軸方向に沿って接触子46を移動させ、同時に、歯車軸モータ29を駆動して被測定歯車11を回転させる。
【0060】
このとき、移動制御部62では、演算部61で求められた歯面12の理論形状、接触子46の移動軌跡および歯面12の回転軌跡などの情報を取得し、歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させるように、接触子46のホブ軸42を中心とした回転と、接触子46のホブ軸42の軸方向に沿った移動と、被測定歯車11の回転とを制御する(ステップS5)。言い換えれば、ホブ盤のホブの変わりに接触子46を有する測定部16を装着し、あたかも接触子46で被測定歯車11の歯面12を切削加工するように動作させることになる。
【0061】
接触子46は、歯面12に対して接触点Pで接触し、この接触子46のホブ軸42を中心とした回転によって歯面12の歯幅方向に接触点Pが移動しながら測定する。さらに、
図7(a)〜
図7(d)に示すように、接触子46は、接触子46のホブ軸42の軸方向に沿った移動と被測定歯車11の回転とによって歯面12の歯先側から歯元側に向けて接触点Pが移動しながら測定する。なお、歯面12に対する接触子46の接触角度は、例えば、
図7(a)は75°、
図7(b)は60°、
図7(c)は45°、
図7(d)は30°である。
【0062】
接触子46は、歯面12との接触によって支持部47内に後退することで実際の歯面12の位置に移動する。このとき、接触子46が接触する歯面12との実際の接触点Pが理論形状と一致する場合には、接触子46が歯面12の理論形状の接触点に位置することになる。
【0063】
そして、測定動作に伴って接触子46と歯面12との接触点Pが移動する。接触点Pが移動しても、上述したように接触子46が接触する歯面12との実際の接触点Pが理論形状と一致している場合には、接触子46が支持部47に対して変位せず、つまり支持部47に対して進退する方向に移動しない。また、接触子46が接触する歯面12との実際の接触点Pが理論形状の位置からずれている場合には、支持部47に対して接触子46が進退方向に変位する。すなわち、接触子46が接触する歯面12との実際の接触点Pが理論形状の位置よりも歯面12の外側に膨らんでいる場合には、接触子46が歯面12で押され、接触子46が支持部47内に後退するように移動する。一方、接触子46が接触する歯面12との実際の接触点Pが理論形状の位置よりも歯面12の内側に窪んでいる場合には、接触子46が支持部47から進出するように移動する。
【0064】
接触子46の変位方向および変位量を検出部48で検出する。検出部48で検出された検出値を制御ユニット60が有する記憶部で記憶する。
【0065】
そして、被測定歯車11の1つの歯の一側である左側の歯面12の測定動作を完了したら、同じ歯の他側である右側の歯面12を測定するか、あるいは他の歯の左側の歯面12および右側の歯面12を測定する。そして、右側の歯面12を測定する場合には、左側の歯面12の理論形状やこの左側の歯面12の理論形状から創成関数によって求めた接触子46の移動軌跡などを反転させることにより、左側の歯面12の測定と同様にして右側の歯面12の測定が行える。すなわち、
図8(a)〜
図8(d)に示すように、接触子46は、接触子46のホブ軸42の軸方向に沿った移動と被測定歯車11の回転とによって歯面12の歯先側から歯元側に向けて接触点Pが移動しながら測定する。なお、歯面12に対する接触子46の接触角度は、例えば、
図8(a)は75°、
図8(b)は60°、
図8(c)は45°、
図8(d)は30°である。また、測定する歯面12を変える際には、接触子46を被測定歯車11から一旦退避させた後に被測定歯車11を回転させ、次に測定する歯面12を測定位置に移動させる。また、被測定歯車11の測定は、被測定歯車11の互いに直交してそれぞれ対向する4箇所の歯について行ってもよいし、全ての歯について行ってもよい。
【0066】
測定動作が完了したら(ステップS6)、形状誤差演算部63により、歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面に対して相対的に移動させた際に検出部48で検出される検出値を取得し、この検出値と歯面12の理論形状とを比較し、歯面12の理論形状に対する形状誤差を求める(ステップS7)。
【0067】
そして、接触子46が接触する歯面12との実際の接触点Pが理論形状の位置と一致するために、接触子46が支持部47に対して変位していない場合には、形状誤差はないと判断される。
【0068】
接触子46が接触する歯面12との実際の接触点Pが理論形状の位置とずれているために、接触子46が支持部47に対して変位している場合には、形状誤差があると判断される。形状誤差は、理論形状に対しての誤差であり、理論形状に対して誤差が生じた方向つまり歯面12が膨らんでいるか窪んでいるかの方向、およびそれらの方向での誤差量が判断される。
【0069】
このように、本実施の形態の歯車測定装置10によれば、被測定歯車11の歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させて測定することにより、歯面形状を精度よく測定できる。
【0070】
さらに、形状誤差演算部63では、歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させる際に検出部48で検出される検出値を取得し、この検出値から歯面12の理論形状に対する形状誤差を求めるため、歯面の形状誤差を精度よく求めることができる。
【0071】
また、歯車測定装置10は、被測定歯車11の歯面12の形状を測定するのに、歯車の製造に用いられるホブ盤を用いており、このホブ盤のホブの変わりに接触子46を有する測定部16を装着し、あたかも接触子46で被測定歯車11の歯面12を切削加工するように動作させることにより測定するため、測定精度がよく、短時間で効率よく測定できる。
【0072】
しかも、被測定歯車11の歯面12の理論形状から創成関数によって接触子46の移動軌跡および歯面12の回転軌跡を求めるため、すなわち、被測定歯車11の歯面12の理論形状から創成関数によって理論形状の歯面12を製造するためのホブ歯形を求め、このホブ歯形と歯面12の理論形状との接触点が歯面12の理論形状に従って移動するように接触子46の移動軌跡および歯面12の回転軌跡を求めるため、インボリュート曲線はもちろん、インボリュート曲線以外のサイクロイド、トロコイド、複合曲線および自由曲線などの歯面形状でも測定することができる。
【0073】
なお、接触子46は、ホブ軸42を中心として回転させず、歯面12に対して歯たけ方向に相対的に移動させて測定するようにしてもよい。
【0074】
また、支持部47は接触子46をホブ軸42の軸方向に対応して変位可能に支持し、検出部48はホブ軸42の軸方向に対応して変位する接触子46の変位を検出するようにしてもよい。
【0075】
次に、
図9に第2の実施の形態を示す。
【0076】
測定部16の接触子46を定位置に配置し、被測定歯車11の歯面12の理論形状に従って被測定歯車11を移動させることにより、歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させる。
【0077】
移動部26は、被測定歯車11を歯車軸28を中心として回転させるのに加えて、被測定歯車11をX軸方向およびY軸方向に移動させる。この場合、測定部16の接触子46は、回転しても回転しなくてもよい。
【0078】
そして、移動制御部62は、被測定歯車11の歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させるように移動部26を制御し、つまり歯面12の理論形状に従って被測定歯車11を主体的に移動させるように制御する。
【0079】
このように、歯面12の理論形状に従って被測定歯車11を主体的に移動させながら測定することにより、歯面形状を精度よく測定できる。
【0080】
なお、この第2の実施の形態においては、ホブ盤本体15を利用してもよいし、専用の歯車測定装置10を用いてもよい。
【0081】
次に、
図10に第3の実施の形態を示す。
【0082】
被測定歯車11を定位置に固定し、測定部16の接触子46を被測定歯車11の歯面12の理論形状に従って主体的に移動させることにより、被測定歯車11の歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させる。この場合、測定部16の接触子46は、回転しても回転しなくてもよい。
【0083】
そして、移動制御部62は、被測定歯車11の歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させるように移動部26を制御し、つまり歯面12の理論形状に従って接触子46を主体的に移動させるように制御する。
【0084】
このように、歯面12の理論形状に従って接触子46を主体的に移動させながら測定することにより、歯面形状を精度よく測定できる。
【0085】
なお、この第3の実施の形態においては、ホブ盤本体15を利用してもよいし、専用の歯車測定装置10を用いてもよい。
【0086】
また、歯車測定装置としては、ホブ盤以外の歯切盤であるギヤシェーパーを用いてもよい。このギヤシェーパーは、刃物の歯車軸方向への往復運動によって円盤状の歯車素材の周面に歯を切削するものである。そして、刃物の変わりに接触子を有する測定部を装着し、あたかも接触子で被測定歯車の歯面を切削加工するように動作させることにより、歯面形状を測定することができる。
【0087】
さらに、歯車測定装置としては、ラックを円盤状の歯車素材の周面に押し付けながら相互に噛み合い状態の回転運動を与え、塑性加工によって歯車を製造する転造装置を用いてもよい。この場合、ラックの代わりに接触子を有する測定部を用い、あたかも接触子で被測定歯車の歯面を転造加工するように動作させることにより、歯面形状を測定することができる。
【解決手段】歯車装着部25は、被測定歯車11を装着する。測定部16は、被測定歯車11の歯面12に接触する接触子46、接触子46を変位可能に支持する支持部47、および接触子46の変位を検出する検出部を有する。移動部26は、歯車装着部25および接触子46の少なくとも一方を移動させる。移動制御部は、歯面12の理論形状を取得し、歯面12の理論形状に従って接触子46を歯面12に対して相対的に移動させるように移動部26を制御する。