(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中空円錐台型歯列矯正部材の最大内周の直径(E)に対する最小内周の直径(e)の比(E/e、q)がl<q≦10であることを特徴とする、請求項1に記載の歯列矯正複合体。
前記漏斗型歯列矯正部材は、中空型円錐台の最大内周の直径(D)に対する前記中空型円柱の内周の直径(d)の比(D/d、r)がl<r≦10であることを特徴とする、請求項7に記載の歯列矯正複合体。
前記歯列矯正部材は、色が透明であるか、或いは白色、赤色、青色、黄色、緑色及びこれらの混合色よりなる群から選ばれたいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の歯列矯正複合体。
前記水溶性または生分解性物質は、ゼラチン、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、植物ガム、寒天、アルギン、アルギン酸塩、カラギーナン、キトサン、キトサン誘導体、ペクチン、デキストラン、ヒアルロン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、生分解性ポリアミド、生分解性ポリウレタン、及び生分解性ポリエステルの中から選ばれた1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯列矯正複合体。
【背景技術】
【0002】
歯の配列が揃っていない状態、または上下噛み合わせが正常の位置を外れた状態を「不正咬合」といい、これを直す治療を矯正治療という。不正咬合の場合には、見た目にも良くないだけでなく、発音や咀嚼機能にも障害が誘発されるので、不正咬合の歯を直すための様々な歯列矯正装置が用いられている。
【0003】
その中でも最も代表的な歯列矯正装置は、ブラケットであって、矯正用ワイヤと一緒に使って歯を移動させる。基本的に、ブラケットは、歪んだ歯列に合わせて撓んだワイヤから生じる復元力を歯に伝達しつつ、歯がワイヤに沿って滑動するようにガイドする機能がある。
しかし、ブラケットは、相対的に大きくて複雑な構造のため非常に不便であり、治療中にはブラケットが見えるので審美性が低下する。
【0004】
かかる欠点を補うために、小型中空管状のミニチューブとワイヤを用いた歯列矯正方法が採用されており、このような施術方法は、韓国登録特許第1,234,205号の「歯列矯正治療用チューブに開示されている。
しかし、ミニチューブを用いた歯列矯正方法は、次の根本的な問題点を持っている。
【0005】
第一に、不規則に歪んだ歯に付いている内径0.5mm未満のチューブにワイヤを挿し込むことが非常に難しい。
第二に、首の後ろからワイヤを挿し込むことは不可能であるため、ミニチューブは臼歯部(奥歯)に使用することができず、前歯部(前歯)の限られた部分の矯正治療にのみ使用することができる。
よって、患者の不便感は最小限に抑えながら、シンプルで普遍的な歯の矯正施術が可能な方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水溶性または生分解性物質を含む中空型歯列矯正部材と、前記中空に位置するワイヤとを含む歯列矯正複合体を提供することにある。
本発明の他の目的は、接着剤を用いて歯の表面に接着しやすく、簡便に歯の矯正手術を行うことができる歯列矯正複合体を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、歯列矯正施術の際に、所定期間後に溶解または生分解されてワイヤと接着剤との間に隙間(clearance)を形成することにより、歯がワイヤに沿って滑動することができるようにして歯の移動が容易な歯列矯正複合体を提供することにある。
本発明の別の目的は、前記歯列矯正複合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、チューブ(tube)型、中空多角柱型、中空多角錐台型、中空円錐台型または漏斗(funnel)型の歯列矯正部材と、前記歯列矯正部材の中空に位置する歯列矯正用ワイヤとを含む歯列矯正複合体であって、前記歯列矯正部材は水溶性または生分解性物質を含む、歯列矯正複合体が提供される。
【0009】
また、前記チューブ型歯列矯正部材は、0.2〜1.0mmの内径及び0.001〜0.5mmの厚さを有してもよい。
また、前記中空多角柱型歯列矯正部材はn角柱型であり、nは3〜20の整数のいずれかであってもよい。
【0010】
また、前記中空多角柱型歯列矯正部材の断面が中空の多角形であり、前記中空の多角形に内接する円の直径は0.2〜1.0mmであり、前記中空多角柱型歯列矯正部材の厚さは0.001〜0.5mmであってもよい。
【0011】
また、前記中空多角錐台型は中空のn角錐台型であり、nは3〜20の整数のいずれかである。
また、前記中空多角錐台型歯列矯正部材の断面が中空の多角形であり、前記中空の多角形に外接する円の最大直径(F)に対して最小直径(f)の比(F/f、p)が1<p≦10であってもよい。
【0012】
また、前記中空円錐台型歯列矯正部材の最大内周の直径(E)に対する最小内周の直径(e)の比(E/e、q)がl<q≦10であってもよい。
また、前記漏斗型歯列矯正部材は、中空型円柱の一端部に結合された中空型円錐台を含む形態であってもよい。
【0013】
また、前記漏斗型歯列矯正部材は、中空型円錐台の最大内周の直径(D)に対する前記中空型円柱の内周の直径(d)の比(D/d、r)がl<r≦10であってもよい。
また、前記歯列矯正部材は、色が透明であるか、或いは白色、赤色、青色、黄色、緑色及びこれらの混合色よりなる群から選ばれたいずれかであってもよい。
【0014】
また、前記歯列矯正部材は、マークが表示されたものであってもよい。
また、前記マークは、前記歯列矯部材の長さ方向を基準に、中心部を表示する中心マーク、前記中心部からの長さを表示する作業マーク、及び末端を表示する末端マークのうちの1種以上を含んでもよい。
【0015】
また、前記中心マークは、前記歯列矯正部材の内径または外径の大きさに応じて所定の色で表示できる。
また、前記中心マークは0.1〜5mmの厚さを有してもよい。
前記作業マークは、前記中心マークを基準に一側面または両側面に1種以上の作業長さを記載したものであってもよい。
【0016】
前記末端マークは、長さ方向を基準に一末端または両末端に表示されたものであってもよい。
また、前記色は、白色、赤色、青色、黄色、緑色およびこれらの混合色よりなる群から選ばれたいずれかであってもよく、具体的には、白色、黒色、赤色、黄赤色、黄色、黄緑色、緑色、青緑色、青色、青紫色、紫色または赤紫色であってもよい。
【0017】
また、前記水溶性または生分解性物質は、ゼラチン、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、植物ガム、寒天、アルギン、アルギン酸塩、カラギーナン、キトサン、キトサン誘導体、ペクチン、デキストラン、ヒアルロン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、生分解性ポリアミド、生分解性ポリウレタン、及び生分解性ポリエステルの中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0018】
また、前記水溶性または生分解性物質は、ゼラチン、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、植物ガム、寒天、アルギン、アルギン酸塩、カラギーナン、キトサン、キトサン誘導体、ペクチン、デキストラン、ヒアルロン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、生分解性ポリアミド、生分解性ポリウレタン、及び生分解性ポリエステルの中から選ばれた1種以上100重量部に対して、下記化学式1で表わされる化合物1〜200重量部をさらに含んでもよい。
【化1】
式中、nは1〜8の整数のいずれか一つである。
【0019】
また、前記水溶性または生分解性物質は、下記化学式2で表わされる化合物を含んでもよい。
【化2】
式中、Rはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、C1〜C6のアルキル基、またはC1〜C6のヒドロキシアルキル基であり、nは繰り返し単位であり、前記化学式2で表わされる化合物の数平均分子量は1,000乃至9,000,000である。
【0020】
本発明の他の態様によれば、水を含む溶媒、及び水溶性または生分解性物質を含む歯列矯正部材用組成物を準備する段階と、前記組成物を第1ワイヤにコーティングする段階と、前記組成物がコーティングされた第1ワイヤを乾燥させて、水溶性または生分解性物質がコーティングされた第1ワイヤを製造する段階とを含んでなる、歯列矯正複合体の製造方法が提供される。
【0021】
また、歯列矯正複合体の製造方法は、前記水溶性または生分解性物質がコーティングされた第1ワイヤを製造する段階の後に、前記水溶性または生分解性物質がコーティングされた第1ワイヤから前記第1ワイヤを除去することにより、中空を有する歯列矯正部材を製造する段階と、第2ワイヤを前記歯列矯正部材の中空に挿入して歯列矯正複合体を製造する段階とをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、水溶性または生分解性物質を含む中空型歯列矯正部材と、前記中空に位置するワイヤとを含む歯列矯正複合体を提供することができる。
本発明は、接着剤を用いて歯の表面に接着しやすく、簡便に歯の矯正施術を行うことができる歯列矯正複合体を提供することができる。
【0023】
本発明は、歯列矯正施術の際に、所定期間後に溶解または生分解されてワイヤと接着剤との間に隙間を形成することにより、歯がワイヤに沿って滑動することができるようにして歯の移動が容易な歯列矯正複合体を提供することができる。
本発明は、前記歯列矯正複合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施し得るように、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
ところが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態について限定するものではない。本発明を説明するにあたり、関連する公知の技術についての具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にするおそれがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0029】
本明細書で使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するためのもので、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素またはこれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0030】
図1は本発明の一実施形態に係るチューブ型歯列矯正部材の概略図である。
以下、
図1を参照して本発明の歯列矯正部材について説明する。
【0031】
本発明の歯列矯正部材は、チューブ(tube)型、中空多角柱型、中空多角錐台型、中空円錐台型または漏斗(funnel)型であり、水溶性または生分解性物質を含む。
前記チューブ型歯列矯正部材は、0.2〜1.0mmの内径および0.001〜0.5mmの厚さを有することが好ましい。
【0032】
また、前記中空多角柱型歯列矯正部材の断面は中空の多角形であり、前記中空の多角形に内接する円の直径は0.2〜1.0mmである。また、前記中空多角柱型歯列矯正部材の厚さは0.001〜0.5mmであることが好ましい。しかし、前記内径及び直径は、歯列矯正部材の中空に挿入されるワイヤの直径によって異なる。
【0033】
前記中空多角柱型は、n型多角柱型であり、nが3〜20の整数のいずれか、好ましくは4〜15、より好ましくは4〜8の整数のいずれか、よりさらに好ましくは4である中球四角柱型であってもよい。
【0034】
前記中空円錐台型歯列矯正部材の最大内周の直径(E)に対する最小内周の直径(e)の比(E/e、q)は、l<q≦10、好ましくは2≦q≦5、さらに好ましくは3≦q≦4である。
【0035】
前記中空多角錐台型歯列矯正部材の断面は、中空の多角形であり、前記中空の多角形に外接する円の最大直径(F)に対する最小直径(f)の比(F/f、p)が1<p<10、好ましくは2≦p≦5、さらに好ましくは3≦p≦4である。
【0036】
前記中空多角錐台型の中空は、n角錐台型であり、nが3〜20の整数のいずれか、好ましくは4〜15、より好ましくは4〜8の整数のいずれかである。
【0037】
前記漏斗型歯列矯正部材は、中空型円柱などの一端部に結合された中空型円錐台を含む形態であり、前記中空型円錐台の最大内周の直径(D)に対する前記中空型円柱の内周の直径(d)の比(D/d、r)は、l<r≦10である。前記比は、好ましくは2≦r≦5、さらに好ましくは3≦r≦4である。また、前記漏斗型歯列矯正部材は、中空型多角柱の一端部に結合された中空型多角錐台を含む形態であり、前記中空型多角錐台の断面である中空の多角形に外接する円の最大直径(C)に対する最小直径(c)の比(C/c、s)がl<s<10、好ましくは2≦s≦5、さらに好ましくは3≦s≦4である。
【0038】
図4及び
図6を参照すると、前記歯列矯正部材10の中空に歯列矯正用ワイヤ30を含む歯列矯正複合体20を、前記歯列矯正部材10にワイヤ30を挿入して製造し、前記部材が囲んでいるワイヤを、歪んだ歯列にレジンを用いて歯に接着する。歪んだ歯列に合わせて撓んで接着されたワイヤでは復元力が発生し、これは接着剤たるレジンを媒介体として歯を移動させることができる矯正力として歯へ伝達される。これと同時に、歯列矯正部材は、水溶性または生分解性であって口腔内で溶けるため、ワイヤとレジンとの間には隙間が形成されるので、歯はワイヤに沿って滑動することができる。
【0039】
また、前記歯列矯正部材は、作業上の便宜のために色を透明にするか、或いは白色、赤色、青色、黄色、緑色およびこれらの混合色で製造することができ、具体的には、透明に製造するか、或いは白色、黒色、赤色、黄赤色、黄色、黄緑色、緑色、青緑色、青色、青紫色、紫色または赤紫色で製造することができる。
【0040】
また、
図3及び
図5を参照すると、前記歯列矯正部材10は、作業上の便宜のために、マーク100、200、300を表示することができる。
【0041】
また、前記マークは、前記歯列矯正部材10の長さ方向を基準に、中心部を表示する中心マーク100、前記中心部からの距離を表示する作業マーク200、または末端を表示する末端マーク300であり得る。
【0042】
また、前記中心マークは、前記歯列矯正部材の内径または外径の大きさに応じて所定の色で表示できる。
また、前記中心マークは、0.1〜5mmの厚さを有することができる。
【0043】
また、前記作業マークは、前記中心マークを基準に一側面または両側面に1種以上の作業長さを記載することができる。
また、前記末端マークを、長さ方向を基準に一末端または両末端に表示することができる。
【0044】
また、前記マークの色は、白色、赤色、青色、黄色、緑色、およびこれらの混合色よりなる群から選ばれたいずれかであり、具体的には、白色、黒色、赤色、黄赤色、黄色、黄緑色、緑色、青緑色、青色、青紫色、紫色または赤紫色であり得る。マークが表示された歯列矯正部材を使用する場合、前記中心マークを用いて歯列矯正部材の中心とワイヤの中心とを容易に一致させることができ、作業マークを用いて容易に中心部からの作業長さを知ることができ、末端マークを用いて歯列矯正用部材の末端を容易に確認することができる。
【0045】
以下、本発明の前記水溶性または生分解性物質を製造するために使用する歯列矯正部材用組成物について説明する。
本発明の歯列矯正部材用組成物は、水溶性または生分解性物質と、水を含む溶剤とを含むことができる。また、前記歯列矯正部材用コーティング組成物は、歯列矯正用ワイヤにコーティングするために使用し、或いは中空を有する歯列矯正部材を製造するために使用することができる。
【0046】
好ましくは、前記歯列矯正部材用組成物は、水溶性または生分解性物質10〜100重量部、及び水を含む溶剤20〜990重量部を含むことができる。
【0047】
前記水溶性または生分解性物質は、口腔内で溶解または分解できる物質であればいずれでもよい。好ましくは、前記水溶性または生分解性物質は、ゼラチン、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、植物ガム、寒天、アルギン、アルギン酸塩、カラギーナン、キトサン、キトサン誘導体、ペクチン、デキストラン、ヒアルロン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、生分解性ポリアミド、生分解性ポリウレタン、及び生分解性ポリエステルの中から選ばれた1種以上である。
【0048】
前記生分解性ポリアミドは、ポリ乳酸、変性ポリ乳酸であってもよい。
また、前記水溶性または生分解性物質は、前記ゼラチン、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、植物ガム、寒天、アルギン、アルギン酸塩、カラギーナン、キトサン、キトサン誘導体、ペクチン、デキストラン、ヒアルロン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、生分解性ポリアミド、生分解性ポリウレタン、及び生分解性ポリエステルの中から選ばれた1種以上100重量部に対して、下記化学式1で表わされる化合物1〜200重量部をさらに含むことができる。
【化3】
式中、nは1〜8の整数のいずれか一つである。
【0049】
前記化学式1で表わされる化合物は、好ましくはソルビトール及びグリセリンである。
前記水溶性または生分解性物質は、さらに好ましくはゼラチン100重量部に対してグリセリン5〜100重量部及びソルビトール1〜100重量部を含むことができる。
また、前記水溶性または生分解性物質は、精製水1〜250重量部をさらに含むことができる。
【0050】
前記ゼラチンは、30〜500Bloom、好ましくは100〜400Bloomのゼリー強度を有することができる。
前記ゼリー強度とは、ゼラチンの代表的な物理的特性である。ブルーム値(Bloom Value)は、ゼラチンの強度を表示するために使用され、ゼリー強度(Jelly strength)は、BS基準(British Standard:BS757)に基づいて6.67%のゼラチン溶液をゼリー強度計のプランジャー(Plunger)が表面から4mmの深さで押したときに必要な力(Force)と定義することができる。
【0051】
また、前記水溶性または生分解性物質は、下記化学式2で表わされる化合物であるセルロース誘導体を含むことができる。
【化4】
式中、Rはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、C1乃至C6のアルキル基またはC1〜C6のヒドロキシアルキル基であり、nは繰り返し単位であり、前記化学式2で表わされる化合物の数平均分子量は1,000乃至9,000,000である。
【0052】
前記ポリエチレングリコールは、1,000乃至100,000の重量平均分子量を有する固体相であることが好ましい。
前記水溶性または生分解性高分子は、変性澱粉及び植物ガムなどを含むことができる。
前記化学式2で表わされる化合物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり得る。
【0053】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、メトキシ基の置換度が15〜30%であり、ヒドロキシプロポキシの置換度が4〜32%であり得る。
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、20℃の温度及び2重量%の水溶液濃度で1〜35mPa・sの粘度を有することができる。
【0054】
前記溶剤は、線型または粉砕型のC2乃至C9のアルコールをさらに含むことができる。ここで、溶剤に含まれる水とアルコールの重量比は100:0〜5:95であり得る。
前記歯列矯正部材用組成物は、ソルビン酸塩、サリチル酸塩および安息香酸塩の中から選ばれた1種以上の安定剤をさらに含むことができる。
【0055】
前記安定剤の含有量は、水溶性または生分解性物質100重量部に対して0.01〜5重量部であり得る。安定剤の含有量が0.01未満である場合には、保存効果を示さず、安定剤の含有量が5重量部を超える場合には、製造された歯列矯正部材の機械的物性を低下させて好ましくない。
【0056】
前記歯列矯正部材用組成物は色素をさらに含むことができる。
前記色素は、天然食用色素、タール系食用色素、ベータカロチン、硫酸銅、酸化第二鉄、カラメル、銅、鉄クロロフィルリンナトリウムまたは酸化チタンであり得る。
【0057】
前記歯列矯正用コーティング組成物は、界面活性剤0.1〜5重量部をさらに含むことができる。
前記界面活性剤は、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、脂肪酸モノグリセリンエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレングリコール縮合型非イオン界面活性剤であり得る。
【0058】
前記ポリエチレングリコールは、1,000乃至100,000の分子量を有する固体相であり得る。
以下、本発明の歯列矯正部材の製造方法について説明する。
まず、水溶性または生分解性物質と精製水とを混合して歯列矯正部材用組成物を製造する(段階(a))。
【0059】
ここで、歯列矯正部材用組成物は、下記化学式1で表わされる化合物をさらに含むことができる。
【化5】
式中、nは1〜8の整数のいずれか一つである。
【0060】
段階(a)は、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール溶液及び精製水を混合して組成物を製造する段階を含むことができる。前記ソルビトール溶液の溶媒は水であり得る。
【0061】
ここで、水溶性または生分解性物質は、下記化学式2で表わされる化合物であり得る。
式中、Rはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、C1〜C6のアルキル基またはC1〜C6のヒドロキシアルキル基であり、nは繰り返し単位であり、前記化学式2で表わされる化合物の数平均分子量は1,000乃至9,000,000である。
【0062】
ここで、C1〜C6のアルキル基は、好ましくは−CH3であり、C1〜C6のヒドロキシアルキル基は、好ましくは−CH2−CHOH−CH3である。
段階(a)の後に組成物を50〜100℃の温度に維持する段階(a−1)をさらに含むことができる。段階(a−1)は、好ましくは55〜95℃、さらに好ましくは60〜90℃で行われ得る。
【0063】
上記の温度範囲で、前記組成物の成分が均一に混合できる。
段階(a−1)は、好ましくは2〜6時間行われるが、段階(a−1)の温度に応じて変わり得る。また、段階(a−1)は、真空下で脱泡する段階をさらに含むことができる。
【0064】
前記段階(a−1)の後に、前記組成物を50〜65℃の温度に維持する段階(a−2)をさらに含むことができる。段階(a−2)は、好ましくは53乃至62℃、さらに好ましくは54〜60℃で行われる。
次に、ワイヤを準備し、前記ワイヤの表面に前記組成物をコーティングすることにより、組成物のコーティングされたワイヤを製造する(段階(b))。
【0065】
前記段階(b)のコーティングは、好ましくは、前記組成物のゲル化温度に応じて変わる。ゲル化温度が低い物質の場合、前記組成物は、ゲル化温度以上で前記ワイヤに均一にコーティングでき、ゲル化温度が高い物質の場合、前記組成物は、ゲル化温度以下で前記ワイヤに均一にコーティングできる。例えば、ゼラチンは、低い温度でゲル化されるので、ゲル化温度以上でコーティングすることが好ましく、HPMCは、高い温度でゲル化されるので、ゲル化温度よりも低い温度でコーティングすることが好ましい。
【0066】
前記歯列矯正部材は、チューブ型、中空多角柱型、漏斗型、中空円錐台型、または中空多角錐台型である。
次に、前記組成物でコーティングされたワイヤの前記組成物を乾燥させることにより、前記ワイヤ、及び前記ワイヤを中空に含む歯列矯正部材を製造する(段階(c))。
【0067】
前記段階(c)は、好ましくは25〜30℃、相対湿度20〜40%で行われ得るが、これに限定されるものではない。段階(c)は、前記組成物が平衡状態に達するまで行うことができ、前記条件で行われる場合には12乃至72時間行うことができる。
【0068】
段階(c)で、前記組成物は、固体に近いゲル(gel)として固まることができる。前記歯列矯正部材は、歯の矯正施術に適用したときに歯の配列状態に適することができるように矯正用ワイヤの曲がりにも破損しない柔軟性を有しながら中空を維持する程度の強度を有することが好ましい。
【0069】
最後に、前記中空にワイヤを結合した歯列矯正部材から前記ワイヤを除去して歯列矯正部材を製造する(段階(d))。
段階(d)の後に、前記歯列矯正部材の表面にオイルを処理する段階をさらに含むことができる(段階d−l)。
【0070】
前記オイルは、ミネラルオイル、シリコーンオイル、植物性油などが使用可能である。
一方、施術者が施術を容易に行うために歯列矯正部材にワイヤを挿入して提供することができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の好適な実施形態を挙げて説明する。ところが、これらの実施形態は、例示のためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
製造例1:コーティング溶液の製造
430重量部のゼラチン(ゼルテック社製、250bloom)を390重量部の水に分散させた後、140重量部のグリセリンを入れて混合した。その後、水に溶解させたソルビトール溶液(70%濃度)5重量部を入れ、均一に分散させた。次に、60分間90℃でゼラチン溶解過程を経た後、30分間65℃で700mmHgの真空にて脱泡した。前記脱泡された溶液を60℃で6時間エージング(aging)させてコーティング溶液を製造した。
【0073】
製造例2:コーティング溶液の製造
2重量%水溶液の粘度が6mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いてコーティング溶液を製造した。精製水585重量部とソルビン酸カリウム1重量部を入れて混合した後、溶液を90℃まで加熱した。90℃の溶液にHPMC220重量部とエタノール194重量部を投入して2時間混合することにより、HPMCを溶解させた。前記製造された組成物を55℃で12時間熟成させて歯列矯正部材用コーティング組成物を製造した。
【0074】
製造例3:水溶性チューブの製造
製造例1によって製造されたコーティング溶液を、45℃に維持されている担持液筒に入れる。長さ100mm、直径0.5mmのステンレス鋼(stainless steel)直線型ワイヤを固定ネジで固定し、前記ワイヤをパラフィンでコーティングした。前記ワイヤをコーティング溶液に担持した後、直ちに取り出してコーティング溶液を均一にコーティングした。その後、常温で相対湿度25%、24時間乾燥させた後、前記ワイヤを除去して歯列矯正部材を製造した。
【0075】
製造例4:水溶性チューブの製造
製造例2によって製造されたコーティング溶液を、20℃に維持されている担持液筒に入れる。長さ100mm、直径0.5mmのワイヤを固定ネジで固定し、前記ワイヤをパラフィンでコーティングした。前記ワイヤをコーティング溶液に担持した後、直ちに取り出してコーティング溶液を均一にコーティングした。
図3及び
図4を参照すると、その後、常温で相対湿度25%、24時間乾燥させた後、コーティング部に食用色素を用いて白色の中心マーク、作業マーク及び末端マークを表示し、ワイヤを除去することにより、白色マークが表示された歯列矯正部材を製造した。
【0076】
実施例1:ワイヤを結合した歯列矯正複合体の製造
製造例3の歯列矯正部材にワイヤを挿入してワイヤを結合した歯列矯正複合体を製造した。
【0077】
実施例2:ワイヤを結合した歯列矯正複合体の製造
図5及び
図6を参照すると、製造例4の中心マーク、作業マーク及び末端マークが表示された歯列矯正部材に、中心線が表示されたワイヤを挿入し、中心線と中心マークとを一致させてワイヤを結合した歯列矯正複合体を製造した。
【0078】
[試験例]
臨床試験例1:歯列矯正複合体を用いた歯列矯正
実施例1によって製造された歯列矯正複合体を用いた歯列矯正の臨床試験過程を
図7に示し、正面及び側面写真を
図8に示した。
【0079】
図7及び
図8を参照すると、製造例3によって製造された水溶性チューブに口腔外でニッケル−チタンワイヤを挿入し、ワイヤの挿入されたチューブを直接歯に接着した。その結果、臼歯部でも応用が可能であることが分かった。
【0080】
従って、実施例1によって製造された水溶性チューブが適用された歯列矯正複合体は、単純な構造であって審美的であり、装置による軟組織刺激がなくて楽であり、容易に口腔衛生を維持することができることが分かった。
【0081】
臨床試験例2:歯列矯正複合体を用いた歯列矯正
実施例2によって歯列矯正部材の中空にワイヤを貫通させてワイヤを結合した歯列矯正複合体を適用した歯列矯正の臨床試験過程を
図9に示し、歯列矯正複合体を適用した歯列の正面及び側面写真を
図10に示した。
【0082】
図9及び
図10を参照すると、実施例2によって製造された歯列矯正複合体を直接歯に接着した。その結果、臼歯部においても応用が可能であることが分かった。
【0083】
したがって、実施例2によって製造されたワイヤと結合された歯列矯正複合体は、単純な構造であって審美的であり、装置による軟組織刺激がなくて楽であり、容易に口腔衛生を維持することができることが分かった。
【0084】
臨床比較試験例1:従来のブラケットを用いた歯列矯正
図2は本発明の水溶性チューブ型歯列矯正部材にワイヤを挿入した歯列矯正複合体と従来のブラケットまたは小型中空管の側断面を概略的に示し、
図11は従来のブラケットを用いた歯列矯正の結果を示すものである。
【0085】
図2および
図11を参照すると、従来のブラケットを歯に接着した後、結束タイを用いて、ワイヤがブラケットから抜けないように結束した。その結果、大きくて複雑な構造を持つブラケット及びその付属物は口腔内の軟組織を刺激することが分かった。
【0086】
従って、従来のブラケットは、複雑な構造であって審美的ではなく、口腔内の軟組織を刺激して口腔衛生の維持を難しくすることが分かった。
【0087】
臨床比較試験例2:中空管状のチューブを用いた歯列矯正
従来の中空管状のチューブを用いた歯列矯正の写真を
図12に示した。
【0088】
図2および
図12を参照すると、従来の中空管状のチューブを歯に接着した後、ワイヤを順次通過するように挿入した。その結果、首の後ろからワイヤを挿し込むことは根本的に不可能であるため、前歯部に限られた部分矯正治療にのみ応用することができることが分かった。
【0089】
したがって、中空管状のチューブは、前歯部に限られた部分矯正治療にのみ適用することができ、ワイヤの挿入に多くの時間がかかることが分かった。
【0090】
本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。