特許第6474538号(P6474538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474538新規組成物及び基材表面の変性のためのそれの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474538
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】新規組成物及び基材表面の変性のためのそれの使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/08 20060101AFI20190218BHJP
   C09D 135/06 20060101ALI20190218BHJP
   C09D 129/08 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C09D133/08
   C09D135/06
   C09D129/08
【請求項の数】17
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2018-551507(P2018-551507)
(86)(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公表番号】特表2019-505650(P2019-505650A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】EP2016081870
(87)【国際公開番号】WO2017108755
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年11月22日
(31)【優先権主張番号】14/975,969
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511293803
【氏名又は名称】アーゼッド・エレクトロニック・マテリアルズ(ルクセンブルグ)ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】リン・グァンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウー・ヘンペン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジウン
(72)【発明者】
【氏名】イン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】バスカラン・ドゥライラジュ
(72)【発明者】
【氏名】シャン・ジエンホゥイ
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−033210(JP,A)
【文献】 特開2011−013118(JP,A)
【文献】 特開2000−119246(JP,A)
【文献】 特開2015−096939(JP,A)
【文献】 特開平11−265058(JP,A)
【文献】 特開昭59−134776(JP,A)
【文献】 特開平9−120120(JP,A)
【文献】 特表2004−522808(JP,A)
【文献】 特表2018−524461(JP,A)
【文献】 特開昭61−261374(JP,A)
【文献】 特開昭57−209908(JP,A)
【文献】 特開平3−238464(JP,A)
【文献】 特開平4−29244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/08
C09D 129/08
C09D 135/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーとスピンキャスト用有機溶剤との均一な溶液を含む非水系のグラフト可能なコーティング組成物であって、
前記組成物は、酸性化合物、着色粒子、顔料または染料は含まず、及び
前記ポリマーは、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位を含む線状ポリマー鎖構造を有し、及び
前記ポリマーは、構造(I)を有する繰り返し単位、構造(II)の末端鎖基単位及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのトリアリールメチルカルコゲニド含有部分を含み、及び
前記ポリマーは、水でイオン化可能な基、イオン性基、フリーのチオール基またはフリーのヒドロキシ基を含む繰り返し単位または末端基はいずれも含まない、
コーティング組成物。
【化1】
式中、A、A及びAは、独立して、アリールまたは置換されたアリールであり、そして
Yは、S、SeまたはTeから選択されるカルコゲンであり、そして
及びXは、独立して、選択された有機スペーサーであり、そして
は、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される有機ポリマー繰り返し単位部分であり、そして
は、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される末端基部分であり、そして
【化2】
【請求項2】
前記ポリマーにおいて、A、AまたはAの少なくとも一つが、アルキルオキシ部分で置換された置換アリールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、懸垂トリアリールメチルカルコゲニドを含まない単一の重合可能な炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位を更に含むランダムコポリマーである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
該ポリマーにおいて、前記有機スペーサーX及びXは、独立して、アルキレン、フルオロアルキレン、オキシアルキレン、オキシフルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、オキシアリーレン、カルボニルアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボニルオキシアルキレン、またはカルボニル−N(R’)−)アルキレン(R’は、水素、アルキルまたはアリールである)から選択される、請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項5】
該ポリマーにおいて、前記繰り返し単位(I)が構造(Ia)を有し、及び前記末端鎖基単位(II)が構造(IIa)を有する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成物。
【化3】
式中、R、R、R、R、R、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R1b、R2b、R3b、R4b、及びR5bは、独立して、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルコキシルオキシカルボニルオキシ、フルオロアルキル、フルオロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルオキシ、トリアルキルシリル、トリアルキルシリルオキシ、Cl、BrまたはIである。
【請求項6】
前記ポリマーにおいて、構造(Ia)の繰り返し単位が、構造(III)、構造(IV)、構造(V)、構造(VI)を有するもの及びこれらの混合物から選択される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の組成物。
【化4】
式中、Rは水素、Cl、Br、CN、アルキルまたはフルオロアルキルであり、そしてR及びRは、独立して、水素、アルキル、アルコキシカルボニルまたはCOHであり、そして
は、水素またはアルキルであり、そして
10は、水素またはアルキルであり、そして
11は、水素またはアルキルであり、そして
12及びR13は、独立して、水素またはアルキルである。
【請求項7】
前記ポリマーにおいて、構造(IIa)の末端基が、構造(IIIa)、構造(IVa)、構造(Va)及び構造(VIa)を有するものから選択される、請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物。
【化5】
式中、Rは、水素、Cl、Br、CN、アルキルまたはフルオロアルキルであり、そして
及びRは、独立して、水素、アルキル、アルコキシカルボニルまたはCOHであり、そして
10は、アルキルであり、そして
、R14、R15及びR17は、独立して、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールまたはアルキレンアリールであり、そして
16は、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アルキレンアリール、トリアルキルシリルまたはトリアルキルシロキシである。
【請求項8】
前記ポリマーが、構造(VII)、(VIII)、(VIV)及び(VV)を有するものから選択される懸垂トリアリールメチルカルコゲニド部分を持たないポリマー繰り返し単位を更に含む、請求項1〜7のいずれか一つに記載の組成物。
【化6】
式中、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、または直接原子価結合であり、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレンスペーサー、フルオロアリーレン、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシまたは直接原子価結合であり、R18は、H、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)であり、R19は、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)である。
【請求項9】
前記ポリマーが、末端基(IIa)と、構造(VII)、(VIII)、(VIV)、(VV)を有するもの及びこれらの混合物からなる群からから選択される懸垂トリアリールメチルカルコゲニド部分を持たない繰り返し単位とのみを含む、請求項1〜8のいずれか一つに記載の組成物。
【化7】
式中、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、または直接原子価結合であり、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレンスペーサー、フルオロアリーレン、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシまたは直接原子価結合であり、R18は、H、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)であり、及び19は、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)である。
【請求項10】
次のステップa)、b)及びc)を含む、グラフトしたコーティングフィルムを基材上に形成する方法:
a)請求項1〜9のいずれか一つに記載の組成物を用いて、基材上にフィルムをコーティングするステップ、
b)80℃〜300℃の間の温度で上記フィルムをベークするステップ、及び
c)上記フィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを残すステップ。
【請求項11】
ステップa)〜f)を含む自己組織化方法:
a)請求項1〜9のいずれか一つに記載の組成物を用いて、基材上にフィルムをコーティングするステップ、
b)80℃〜300℃の間の温度で上記フィルムをベークするステップ、
c)上記フィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを残すステップ、
d)上記グラフトしたフィルム上に、ブロックコポリマーのフィルムをコーティングするステップ、
e)溶剤ベークを適用して、コーティングステップd)からの溶剤を除去するステップ、及び
f)アニールベークを適用して、ブロックコポリマーの自己組織化を可能にするステップ。
【請求項12】
次のステップa)、b)及びc)を含む、金属パターンを含むパターン化基材上の金属パターン上に、グラフトしたコーティングフィルムを選択的に形成する方法:
a)請求項1〜9のいずれか一つに記載の組成物を用いて、パターン化された基材上にフィルムをコーティングし、ここでYはS、SeまたはTeであるステップ、
b)100℃〜250℃の間の温度で上記フィルムをベークするステップ、及び
c)上記フィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを上記金属パターン上に残すステップ。
【請求項13】
前記スピンキャスト用有機溶剤が、グリコールエーテル誘導体、グリコールエーテルエステル誘導体、カルボキシレート、二塩基性酸のカルボキシレート、グリコール類のジカルボキシレート、ヒドロキシカルボキシレート、ケトンエステル、アルコキシカルボン酸エステル、ケトン誘導体、ケトンエーテル誘導体、ケトンアルコール誘導体、ケタール、アセタール、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)、アミド誘導体、アニソール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項14】
前記スピンキャスト用有機溶剤が、
エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択されるグリコールエーテル誘導体;
エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)からなる群から選択されるグリコールエーテルエステル誘導体;
エチルアセテート、n−ブチルアセテート及びアミルアセテートからなる群から選択されるカルボキシレート;
ジエチルオキシレート及びジエチルマロネートからなる群から選択される二塩基性酸のカルボキシレート;
エチレングリコールジアセテート及びプロピレングリコールジアセテートからなる群から選択されるグリコール類のジカルボキシレート;
メチルラクテート、エチルラクテート(EL)、エチルグリコラート、及びエチル−3−ヒドロキシプロピオネートからなる群から選択されるヒドロキシカルボキシレート;
メチルピルベート及びエチルピルベートからなる群から選択されるケトンエステル;
メチル3−メトキシプロピオネート、エチル3−エトキシプロピオネート、エチル2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオネート、及びメチルエトキシプロピオネートからなる群から選択されるアルコキシカルボン酸エステル;
メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及び2−ヘプタノンからなる群から選択されるケトン誘導体;
ジアセトンアルコールメチルエーテルからなる群から選択されるケトンエーテル誘導体;
アセトール及びジアセトンアルコールからなる群から選択されるケトンアルコール誘導体;
1,3ジオキサラン及びジエトキシプロパンからなる群から選択されるケタールまたはアセタール;
ガンマ−ブチロラクトン(GBL);
ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドからなる群から選択されるアミド誘導体;
アニソール;
及びこれらの混合物;
からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項15】
ポリマーとスピンキャスト用有機溶剤との均一な溶液を含む非水系のグラフト可能なコーティング組成物であって、
前記組成物は、酸性化合物、着色粒子、顔料または染料は含まず、及び
前記ポリマーは、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位を含む線状ポリマー鎖構造を有し、及び
前記ポリマーは、少なくとも一つのトリアリールメチルカルコゲニド含有部分を構造(IIa)の末端鎖基単位として含み、そして前記ポリマーは、水イオン化性基、イオン性基、フリーのチオール基またはフリーのヒドロキシ基を含む繰り返し単位または末端基のいずれも含まず、
【化8】
Yは、O、S、SeまたはTeから選択されるカルコゲンであり、及び
は、有機スペーサーであり、及び
は、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される末端基部分であり、及び
【化9】
、R、R、R、R、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R1b、R2b、R3b、R4b、及びR5bは、独立して、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルコキシルオキシカルボニルオキシ、フルオロアルキル、フルオロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルオキシ、トリアルキルシリル、トリアルキルシリルオキシ、Cl、BrまたはIであり、及び
前記ポリマーは、末端基(IIa)と、構造(VII)、(VIII)、(VIV)、(VV)を有するもの及びこれらの混合物からなる群から選択される懸垂トリアリールメチルカルコゲニド部分を持たない繰り返し単位とのみを含み、
【化10】
は、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、または直接原子価結合であり、
は、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレンスペーサー、フルオロアリーレン、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシまたは直接原子価結合であり、
18は、H、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)であり、及び
19は、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)である、
前記組成物。
【請求項16】
次のステップa)、b)及びc)を含む、グラフトしたコーティングフィルムを基材上に形成する方法:
a)請求項15に記載の組成物を用いて、基材上にフィルムをコーティングするステップ、
b)80℃〜300℃の間の温度で上記フィルムをベークするステップ、及び
c)上記フィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを残すステップ。
【請求項17】
ステップa)〜f)を含む自己組織化方法:
a)請求項15に記載の組成物を用いて、基材上にフィルムをコーティングするステップ、
b)80℃〜300℃の間の温度で上記フィルムをベークするステップ、
c)上記フィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを残すステップ、
d)上記グラフトしたフィルム上に、ブロックコポリマーのフィルムをコーティングするステップ、
e)溶剤ベークを適用して、コーティングステップd)からの溶剤を除去するステップ、及び
f)アニールベークを適用して、ブロックコポリマーの自己組織化を可能にするステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの結合したトリアリールメチルカルコゲニド部分を有するポリマーと溶剤とを含む新規グラフト性組成物に関する。本発明は、これらの組成物を用いて基材上にグラフトしたフィルムを形成する方法、及び自己組織化のために、基材上のこのグラフトしたフィルムを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面上に共有結合したフィルムを形成するグラフト化ポリマーは、プラズマ堆積、電気化学的堆積または自己組織化によって調製することができる。共有結合の強さはフィルムの接着性に基づくものであるが、これらのフィルムは、スピンキャストによって形成されるフィルムなどの基材の表面と二次力(secondary force)を介してしか相互作用しないフィルムよりも、一般的にかなり強く接着する。その結果、このより高い接着性の故に、基材材料上のグラフト化ポリマーの形成は、様々な用途に有用である。その中でも:
一つの例は、バイオ材料であり、この場合、基材は、バルクメカニカル特性を妥協することなく、医療プロテーゼなどの材料の表面にポリマーをグラフトすることによって生体適合性に作られる。
【0003】
基材表面へのポリマーのグラフトは、これらの表面の抗生物汚染を与えるためにまたはそれらの耐腐食性を向上するためにも使用されてきた。
【0004】
コーティング液;この場合、基材表面上へのポリマーのグラフトが、より良好なコーティングをもたらすためにこれらの基材の表面特性を変化させることができる;金属または金属酸化物ナノパーティクルの懸濁液の場合でも、これらの懸濁液のコーティング性及び安定性を、これらのナノパーティクルの表面にポリマーをグラフトすることによって改善し得る。
【0005】
自己組織化及び誘導自己組織化;この場合、ケイ素または酸化ケイ素基材の表面上へのポリマーブラシのグラフトを、これらの表面上での中性相の形成のために使用でき、この中性相は、ブロックコポリマーを、自己組織化または誘導自己組織化の間に基材表面に垂直なそれらのドメインを配向させることを可能にする。
【0006】
ブロックコポリマーの誘導自己組織化は、ナノスケールオーダーの図形の微小寸法(CD)を達成できる、微細電子デバイスの製造のためのより一層小さなパターン化された図形を生成するために有用な方法である。誘導自己組織化法は、マイクロリソグラフィ技術の解像能力を拡張するために望ましい。慣用のリソグラフィ法では、基材または層状基材上にコーティングされたフォトレジストに対してマスクを介して露光するためには紫外線(UV)を使用し得る。ポジ型もしくはネガ型フォトレジストが有用であり、そしてこれらは、慣用の集積回路(IC)プラズマ加工を用いた乾式現像を可能とするためにケイ素などの耐火性元素を含むこともできる。ポジ型フォトレジストでは、マスクを通過したUV放射線が、フォトレジスト中で光化学的反応を引き起こして、露光された領域が、現像剤溶液を用いてまたは慣用のICプラズマ加工によって除去されるようになる。これとは反対に、ネガ型フォトレジストでは、マスクを通過したUV放射線が、放射線に曝された領域を現像剤溶液を用いてはまたは慣用のICプラズマ加工では除去され難くする。次いで、集積回路図形、例えばゲート、ビアまたはインターコネクタを、基材または層状基材中にエッチングし、そして残りのフォトレジストを除去する。慣用のリソグラフィ露光プロセスを用いた場合は、集積回路図形の図形分法は制限される。パターン寸法の更なる縮小は、収差、焦点、プロキシミティ効果、達成可能な最小露光波長及び達成可能な最大開口数に関連した制限の故に放射線露光を用いては達成が困難である。大規模集積へのニーズの故に、デバイスの回路寸法及び図形は縮小され続けてきた。過去には、図形の最終の解像度は、それ自体に制限のある、フォトレジストの露光に使用される光の波長に依存してきた。ブロックコポリマー画像形成を用いたグラフォエピタキシ及びケモエピタキシなどの誘導組織化技術は、CD変動を減少しながら解像度を向上するために使用される非常に望ましい技術である。これらの技術は、慣用のUVリソグラフィ技術を増強するか、あるいはEUV、電子線、ディープUVまたは液浸リソグラフィを使用する方策において更により高い解像度及びCDコントロールを可能とするために使用することができる。誘導自己組織化ブロックコポリマーは、エッチング耐性のコポリマー性単位のブロックと、エッチングされやすいコポリマー性単位のブロックを含み、このブロックコポリマーは、基材上でコーティング、整列及びエッチングされた時に、非常に高密度のパターンの領域を与える。
【0007】
グラフォエピタキシ誘導自己組織化方法では、ブロックコポリマーは、慣用のリソグラフィ(紫外線、ディープUV、電子線、極端紫外線(EUV)露光源)を用いてプリパターン化されてライン/スペース(L/S)またはコンタクトホール(CH)パターンなどの繰り返しのトポグラフィ図形が形成されている基材の周りに自己組織化する。L/S誘導自己組織化アレイの一例では、ブロックコポリマーは、予めパターン化されたライン間のトレンチ中に異なるピッチの並行なライン−スペースパターンを形成できる自己整列したラメラ領域を形成して、トポグラフィカルライン間のトレンチ中の空間をより微細のパターンに分割することによりパターン解像度を増強することができる。例えば、ミクロ相分離することができ、かつプラズマエッチングに耐性のある炭素を豊富に含むブロック(例えばスチレンや、またはSi、Ge、Tiのような何らかの他の元素を含むもの)とプラズマエッチングまたは除去性が高いブロックとを含むジブロックコポリマーは、高解像度のパターン画定を供することができる。高エッチング性ブロックの例には、酸素を豊富に含みかつ耐火性元素を含まず、更に高エッチング性ブロックを形成することができるモノマー、例えばメチルメタクリレートを含み得る。自己組織化パターンを画定するエッチングプロセスに使用されるプラズマエッチングガスは、典型的には、集積回路(IC)の製造に用いられるプロセスに使用されるガスである。このようにして、慣用のリソグラフィ技術によって画定可能なものと比べて非常に微細なパターンを典型的なIC基材中に生成でき、そうしてパターンの増加が達成される。同様に、慣用のリソグラフィによって画定されるコンタクトホールまたはポストのアレイの周りでの誘導自己組織化によって適当なブロックコポリマーがそれ自体で整列するグラフォエピタキシを用いることによってコンタクトホールなどの図形もより密度高く生成でき、そうしてエッチングした時にコンタクトホールのより密度の高いアレイを与えるエッチング可能なドメインと耐エッチング性のドメインとの領域のより密度の高いアレイを形成する。その結果、グラフォエピタキシは、パターン修正及びパターン増倍の両方を提供する可能性を持つ。
【0008】
化学エピタキシまたはピン止め化学エピタキシでは、ブロックコポリマーの自己アセンブリは、異なる化学親和性の領域を持つが、自己組織化プロセスを誘導するトポグラフィを持たないかまたは僅かにしか持たない表面の周りに形成される。例えば、基材の表面を慣用のリソグラフィ(UV、DUV、電子線、EUV)を用いてパターン化することによって、表面ケミストリが照射によって変性された露光領域が、露光されておらず化学的変化がない領域と交互しているライン・アンド・スペース(L/S)パターンで異なる化学親和性の表面を生成できる。これらの領域はトポグラフィの差異は持たないが、ブロックコポリマーセグメントの自己組織化を誘導する表面化学的差異またはピン止めを持つ。具体的には、耐エッチング性の繰り返し単位(例えばスチレン繰り返し単位)及び高速エッチング性の繰り返し単位(例えばメチルメタクリレート繰り返し単位)を含むブロックセグメントを持つブロックコポリマーの誘導自己組織化は、パターン上での耐エッチング性ブロックセグメントと高エッチング性のブロックセグメントの正確な配置を可能とするだろう。この技術は、これらのブロックコポリマーを正確に配置すること、及びその後に、プラズマまたはウェットエッチング加工の後に基材にパターンをパターン転写することを可能にする。化学的エピタキシは、これを、化学的差異の変化によって微調整して、ラインエッジラフネス及びCDコントロールの向上を助けて、パターンの調整を可能とすることができるという利点を有する。繰り返しコンタクトホール(CH)アレイなどの他のタイプのパターンも、ケモエピタキシを用いてパターン調整することができる。
【0009】
中性層は、誘導自己組織化に使用されたブロックコポリマーのいずれのブロックセグメントにも親和性を持たない、基材上のまたは処理された基材の表面上の層である。ブロックコポリマーの誘導自己組織化のグラフォエピタキシ法では中性相が有用である、というのも、これらは、基材に対する耐エッチング性ブロックポリマーセグメント及び高エッチング性ブロックポリマーセグメントの適切な配置をもたらす誘導自己組織化のためのブロックポリマーセグメントの適切な配置または配向を可能とするからである。例えば、慣用の放射線リソグラフィで画定されたライン・アンド・スペース図形を含む表面では、中性層は、ブロックセグメントが基材の表面に対して垂直に配向するようにブロックセグメントが配向することを可能とするが、このような配向は、慣用のリソグラフィで画定されるライン間の長さに対するブロックコポリマー中のブロックセグメントの長さに依存してパターン調整とパターン増加の両方に理想的な配向である。基材が、ブロックセグメントのうちの一つとあまりに強く相互作用すると、このセグメントがその表面上に平坦に横たわって、セグメントと基材との間の接触面が最大化されるだろう;このような表面は、慣用のリソグラフィにより生成された図形に基づいたパターンの修正またはパターンの増倍のいずれかを達成するために使用できる望ましい垂直な整列を乱すことになるであろう。基材の選択された小さな領域の変性またはピン止めは、これらを、ブロックコポリマーの一つのブロックと強く相互作用するようにし、基材の残部は中性層でコーティングされた状態で残すことは、ブロックコポリマーのドメインを所望の方向に整列させるのに有用であり得、そしてこれは、パターン増倍のために使用されるピン止めケモエピタキシまたはグラフォエピタキシの基本となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体(例えばSi、GaAs、及び類似物)、金属(Cu、W、Mo、Al、Zr、Ti、Hf、Au及び類似物)及び金属酸化物(酸化銅、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及び類似物)基材上に、簡単なスピンコートを介し、その後、ポストコートベークして、基材上へのグラフト反応を促進する活性化成分、例えば酸性化合物、熱酸発生剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、光化学的ラジカル開始剤、塩基性添加剤、熱塩基発生剤または光塩基発生剤の存在無しに化学結合を起こしてグラフトしたポリマー層を形成できる新規材料への要望がある。このような熱的にまたは光化学的に反応性の添加剤化合物の存在は、これらの化合物の小サイズ及び反応性が、それらをグラフトしたフィルムから他の層へと拡散させ、腐食などの望ましくない反応を引き起こし得るために、望ましくない。他の要望は、グラフト可能なポリマーが、有機溶剤、例えばスピンコート用溶剤中のグラフト液の溶液の貯蔵寿命に悪影響を及ぼし得る過度に反応性の高いグラフト化部位を含まないグラフト材料への要望である。また、グラフト化ベークを変えることによって特定のタイプの基材に対して選択的なグラフト性を有するようにできる新規のグラフト材料への要望もある。このようにして、プラズマ堆積または電気化学的グラフト化を使用する必要なく、簡単なスピンコートプロセスによって、コーティング性などのこれらの材料の表面特性、及び耐腐食性を変えることができ、及び本発明の該新規材料を用いた新規選択的グラフト化プロセスを用いた場合にも、一つのステップで、異なる材料が一つの基材上に存在するトポグラフィまたは化学的パターンを含む基材上に一種の材料のみを基材上にコーティングできる。また、層に形成した場合に自己組織化ブロックコポリマーに対して中性のままで残るものの、誘導自己組織化技術の加工ステップによってはなおもダメージを受けず、及び誘導自己組織化用材料及びプロセスのリソグラフィ性能を更に高めることができ、特に加工ステップの数を減らし及び良好なリソグラフィ性能を持ってより良好なパターン解像度を供する、新規中性層組成物への要望もある。更に、例えばケモエピタキシ法において、ドメインを所望の方向に整列させるために、他の部分は中性層でコーティングされている、金属または金属酸化物の小さな領域のためのコーティング可能なピン止め材料への要望もある。更に、異なる材料を持つパターンを含む基材上に一つのタイプの材料のみを選択的にグラフトして、ピン止め領域を生成するグラフト用組成物への要望もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材上にコーティングされそしてベークされた時に不溶性のグラフトしたフィルムを生成できる新規コーティング組成物に関する。このフィルムは、保護バリヤ層として働き得るか、またはそれを覆うブロックコポリマーの自己組織化では、これは、ピン止め層としてまたは中性層材料として働き得る。これらの組成物は、有機溶剤と単一のオレフィン性二重結合を含むモノマーのオレフィン重合から誘導された繰り返し単位を有する線状ポリマーとを含み、ここで、前記ポリマーは、該組成物が基材上にコーティングされた時に、グラフト化プロセスを補助するための添加剤の必要なくかつ組成物の貯蔵寿命及び/または異なる基材へのフィルムのグラフト選択性に有害である虞のあるチオール、アルコール性反応性基(例えばCHOH)、カルボキシレート(すなわち−COH)、スルホネート(すなわち−SOH)、アミノ(すなわち−NH)及び類似物などのポリマー上の高反応性グラフト性懸垂部位の必要なく、グラフトすることができるトリアリールメチルカルコゲニドに基づく少なくとも一つの結合部分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】構造(V)を有する繰り返し単位から構成される新規ポリマーの非限定的な例。
図1b】構造(III)を有する繰り返し単位から構成される新規ポリマー構造の非限定的な例。
図2】新規ポリマー構造の非限定的な例;ここで、該新規ポリマーは、構造(V)を有する繰り返し単位、及びトリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まないビニルアリールから誘導された繰り返し単位からランダムに構成されている。
図3】新規ポリマー構造の非限定的な例;ここで、該新規ポリマーは、構造(V)を有する繰り返し単位、及びトリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まないビニルアリール、例えばスチレンまたは置換されたスチレン、並びにトリフェニルメチルカルコゲニドを含まないアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートから誘導された繰り返し単位をランダムに含む。
図4】新規ポリマー構造の非限定的な例;ここで、該新規ポリマーの主鎖は、トリフェニルメチルカルコゲニド部分は含まないビニルアリール部分から誘導された繰り返し単位からランダムに構成されているが、これらのポリマーは、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含む末端基を有し、この末端基は構造(Va)を有する。
図5】新規ポリマー構造の非限定的な例;ここで該新規ポリマーの主鎖は、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まないビニルアリール部分とアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートとから誘導される両繰り返し単位からランダムに構成されるが、これらのポリマーは、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含む末端基を有し、この末端基は構造(Va)を有する。
図6】銅ウェハ片上の合成例6の材料のグラフトしたフィルム上で250℃でアニールした、AZEMBLYTMEXP PME−120コーティング35(Lo=28nm、フィルム厚は1500rpmで35nmである)における自己組織化フィンガープリントパターンの0.5×0.5μm領域の電子線画像。
図7a】合成例6の材料のグラフト前の銅ウェハのXPSスペクトル。
図7b】合成例6の材料のグラフト後の銅ウェハのXPSスペクトル。
【0013】
本発明は、ポリマー及びスピンキャスト用有機溶剤の均一溶液を含む、非水系のグラフト可能なコーティング組成物に関する。この組成物は、酸性化合物、着色粒子、顔料または染料を含まない。この組成物のポリマーは、線状ポリマー鎖構造を有し、この線状ポリマー鎖構造は、単一の重合性オレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位を含み、及び前記ポリマーは、構造(I)を有する繰り返し単位、構造(II)の末端鎖基単位、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのトリアリールメチルカルコゲニド含有部分を含み、及び懸垂酸性基、水イオン化性基、イオン性基、フリーのチオール基またはフリーのヒドロキシ基を含む繰り返し単位または末端基を含まない。
【0014】
【化1】
ここで、(I)及び(II)において、A、A及びAは、独立して、アリールまたは置換されたアリールから選択され;Yは、O、S、SeまたはTeから選択されるカルコゲンであり;X及びXは、独立して有機スペーサーから選択され;Pは、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される有機ポリマー繰り返し単位部分であり;そしてPは、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される末端基部分であり、そして
【0015】
【化2】
また本発明は、基材上にグラフト化ポリマーフィルムを形成するためのこの組成物の使用方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用する場合、他に記載が無ければ、以下の用語はここに定義される通りである:
アリールという用語は一つの結合点を有する芳香族部分を指す(例えば、フェニル、アントラシル、ナフチル及び類似物)。結合点の他には、アリール基は、アルキル基、アルキルオキシ、トリアルキルシリル、トリアルキルシリルオキシ、アリール、アリールオキシ基またはハライド(例えばF、Cl、I、Br)で置換されていてよい。
【0017】
アリーレン基とは、1超の結合点を有する芳香族部分を指す(例えば、フェニレン、アントラシレン、ナフチレン及び類似物)。結合点の他には、アリーレン基は、アルキル基、またはハライド(例えばF、Cl、I、Br)、またはアリール基で置換されていてよい。これらのアリール及びアリーレン部分は、C〜C200炭素を含んでよい。
【0018】
アルキルという用語は、一つの結合点を有する線状、分枝状もしくは環状アルカン部分を指す(例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル及び類似物)。結合点の他には、アルキル基は、アルキル基、アリール基またはハライド(例えばF、Cl、I、Br)で置換されていてよい。特定のアルキル部分の炭素数は次の通りである:C〜C10線状アルキル、C〜C10分岐状アルキル、C〜C10環状アルキル、C〜C10非環式アルキル。
【0019】
アルキレンという用語は、二つの結合点を有する線状、分枝状もしくは環状アルカン部分を指す(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン及び類似物)。結合点の他には、アルキレン基は、アルキル基、アリール基またはハライド(例えばF、Cl、I、Br)で置換されていてよい。特定のアルキル部分の炭素数は次の通りである:C〜C10線状アルキレン、C〜C10分岐状アルキレン、C〜C10環状アルキレン、C〜C10非環式アルキレン。
【0020】
アルキルオキシという用語は、酸素を介して一つの結合手を有する線状、分枝状もしくは環状アルカン部分を指す(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、シクロヘキシルオキシ及び類似物)。結合点の他には、アルキル基は、アルキル基、アリール基またはハライド(例えばF、Cl、I、Br)で置換されていてよい。特定のアルキル部分の炭素数は次の通りである:C〜C10線状アルキルオキシ、C〜C10分岐状アルキルオキシ、C〜C10環状アルキルオキシ、C〜C10非環式アルキルオキシ。
【0021】
アルキルカルボニルオキシという用語は、カルボニルオキシ部分(−C=O−O)を介して一つの結合手を有する線状、分岐状または環状アルカン部分を指す(例えば、tert−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル及び類似物)。
【0022】
アリールオキシという用語は、酸素を介して一つの結合点を有する先に定義したアリール部分を指す(例えば、フェニルオキシ、アントラシルオキシ及び類似物)。
【0023】
アルキレンアリールという用語は、一つの結合点及びアリール置換基を有するアルキレン部分を指し(例えば、−CH−アリール、−CH−CH−アリール、及び類似物)、ここでアリール及びアルキレン部分は、他の点について先に定義した通りである。
【0024】
オキシアリーレンという用語は、これが構造(I)もしくは(II)またはこれらから誘導される他の構造中のX部分を記載するために適用される場合には、アリーレン部分を指し、この場合、このアリーレン部分は、酸素を介して、構造(I)及び(II)またはこれらから誘導される他の構造で定義したポリマー主鎖P1またはP2に結合している
【0025】
【化3】
オキシアルキレンという用語は、これが、構造(I)もしくは(II)またはこれらから誘導される他の構造中のX部分を記載する場合には、線状、分岐状、環状または非環式アルキレン部分を指し、この場合、前記アルキレン部分は、酸素を介して、構造(I)及び(II)またはこれらから誘導される他の構造で定義したポリマー主鎖P1またはP2に結合している(例えば−O−CH−、O−CH−CH−、及び類似物)。
【0026】
オキシカルボニルアルキレンという用語は、これが、構造(I)もしくは(II)またはこれらから誘導される他の構造中のX部分を記載する場合には、線状、分岐状、環状または非環式アルキレン部分を指し、この場合、前記アルキレン部分は、オキシカルボニル部分を介して、構造(I)及び(II)またはこれらから誘導される他の構造で定義したポリマー主鎖P1またはP2に結合している(例えば−O−(C=O)−CH、−O−(C=O)−CH−CH、及び類似物)。
【0027】
オキシカルボニルオキシアルキレンという用語は、これが、構造(I)もしくは(II)またはこれらから誘導される他の構造中のX部分を記載する場合には、線状、分岐状、環状または非環式アルキレン部分を指し、この場合、前記アルキレン部分は、オキシカルボニルオキシ部分を介して、構造(I)及び(II)で定義したポリマー主鎖P1またはP2またはこれらから誘導される他の構造に結合している(例えば−O−(C=O)−O−CH、−O−(C=O)−O−CH−CH、及び類似物)。
【0028】
カルボニルアルキレンという用語は、これが、構造(I)もしくは(II)またはこれらから誘導される他の構造中のX部分を記載する場合には、線状、分岐状、環状または非環式アルキレン部分を指し、この場合、前記アルキレン部分は、カルボニル部分を介して、構造(I)及び(II)またはこれらから誘導される他の構造で定義したポリマー主鎖P1またはP2に結合している(例えば−(C=O)−O−CH−、 −(C=O)−O−CH−CH、及び類似物)。
【0029】
カルボニル−N(R’)−アルキレンという用語は、これが、構造(I)もしくは(II)またはこれらから誘導される他の構造中のX部分を記載する場合には、線状、分岐状、環状または非環式アルキレン部分を指し、この場合、前記アルキレン部分は、カルボニル−N(R’)−部分を介して、構造(I)及び(II)またはこれらから誘導される他の構造で定義したポリマー主鎖P1またはP2に結合しており(例えば−(C=O)−N(R’)−CH−、−(C=O)−N(R’)−CH−CH、及び類似物)、そしてR’−は水素、アルキルまたはアリールである。
【0030】
トリアルキルシリルという用語は、先に定義したような三つのアルキル基及び一つの結合点を有するケイ素を指す(例えば、トリメチルシリル、トリブチルシリル及び類似物)。
【0031】
トリアルキルシリルオキシという用語は、先に定義したような三つのアルキル基及び酸素を介した一つの結合点を有するケイ素を指す(例えば、トリメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ及び類似物)。
【0032】
フルオロアリール、フルオロアリーレン、フルオロアルキル、フルオロアルコキシ、フルオロアルキレンとは、部分的にもしくは完全にフッ素化された先に記載したようなこれらの部分を指す。
【0033】
「−b−」という記載は「−ブロック−」を指し、ブロックコポリマーを形成するモノマー繰り返し単位を意味する。「P」という記載は、重合されたモノマーを意味するモノマー頭字語の前にあるときは「ポリ」のことである(例えば、PSは、ポリ(スチレン)を意味する、というのもSはスチレンの規定の頭字語であるからである)。
【0034】
「パターン」という用語は、それがパターン化された基材を指す場合には、その表面と同一面にあるが、周囲の領域とは異なる化学組成を有する基材領域と、基材表面上のトポグラフィ図形であって、このトポグラフィ図形を囲う基材領域とは異なる化学組成を有するトポグラフィ図形の両方を具象するものである。これに関連して「異なる化学組成」という用語は、ポリマー、レジスト、半導体、金属または金属酸化物から選択された材料を具象するものである。
【0035】
「酸性化合物」という用語は、ホスフェート酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン基、スルフィン酸基またはカルボキシル基、またはそれの塩(例えば、多価金属塩、またはアンモニウム塩)を有する化合物を指し、またこれは、強ルイス酸並びにルイス付加物、例えばAlCl、AlBr、FeCl、BF、BFOMe及び類似物も指す。
【0036】
「ポリマーの均一溶液」という用語は、ポリマーが完全に溶解されておりかつ懸濁液、分散液またはコロイド懸濁液を形成していない溶液を指す。
【0037】
酸性懸垂基という用語は、懸垂したホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基またはカルボキシル基を指す。
【0038】
「懸垂した水でイオン化可能な基」という用語は、水中にフリーに解離できる任意の部分を指す。
【0039】
「懸垂イオン性基」という用語は、正荷電及び不荷電を含む部分、例えばそれの中に塩構造を含む懸垂部分を指す。
【0040】
「単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合」という用語は、他のオレフィン性炭素二重結合と共役していない単一のオレフィン部分を指す。この場合、オレフィン性炭素二重結合という用語は、芳香族環の一部ではない炭素二重結合を指す。
【0041】
本発明は、ポリマー及びスピンキャスト用有機溶剤の均一溶液を含む、非水系のグラフト可能なコーティング組成物に関する。この組成物は、酸性化合物、着色粒子、顔料または染料を含まない。この組成物のポリマーは、線状ポリマー鎖構造を有し、この線状ポリマー鎖構造は、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位を含み、及び前記ポリマーは、構造(I)を有する繰り返し単位、構造(II)の末端鎖基単位、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのトリアリールメチルカルコゲニド含有部分を含み、及び懸垂酸性基、イオン化可能な基、イオン性基、フリーのチオール基またはフリーのヒドロキシ基を含む繰り返し単位または末端基を含まない。
【0042】
【化4】
ここで、(I)及び(II)において、A、A及びAは、独立して、アリールまたは置換されたアリールから選択され;Yは、O、S、SeまたはTeから選択されるカルコゲンであり;X及びXは、独立して有機スペーサーから選択され;Pは、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される有機ポリマー繰り返し単位部分であり;そしてPは、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される末端基部分であり、そして
【0043】
【化5】
本発明の他の態様の一つでは、該組成物は、更に、光酸発生剤、熱酸発生剤、光塩基発生剤、熱塩基発生剤、熱ラジカル発生剤、光ラジカル発生剤、レドックス開始剤及びこれらの混合物から選択されるいずれの添加剤も含まない。
【0044】
この組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーは、フリーのアミノ(すなわち−NH)を含む懸垂基を含まない。
【0045】
該組成物の更に別の態様の一つでは、ポリマー中において、YはOまたはSから選択される。
【0046】
この組成物の一つの態様では、該ポリマーは、1〜2の範囲の多分散性で、約200Mw〜約50,000Mwの範囲の分子量を有する。更に別の態様の一つでは、分子量は、1〜1.5の範囲の多分散性で、約500Mw〜約10,000Mwの範囲である。
【0047】
この組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーにおいてA、A及びAは、独立して、置換されていないフェニル、置換されたフェニル、置換されていないナフチル、置換されたナフチル、置換されていないアントラシル、及び置換されたアントラシルから選択される。この態様のより具体的な例の一つでは、A、A及びAは、独立して、置換されていないフェニルまたは置換されたフェニルから選択される。更に別のより具体的な態様の一つでは、A、AまたはAのうちの少なくとも一つは置換されたフェニルである。
【0048】
この組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーは、一超の種の繰り返し単位(I)を含み、そしてランダムコポリマーである。
【0049】
この新規組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーにおいて、A、AまたはAのうちの少なくとも一つは、アルキルオキシ部分で置換された置換アリールである。この態様のより具体的な例の一つでは、A、AまたはAのうちの少なくとも一つは、アルキルオキシ部分で置換された置換フェニルである。更に別のより具体的な態様の一つでは、A、AまたはAのうちの少なくとも一つは、C〜C10線状アルキルオキシで置換された置換フェニルである。
【0050】
この新規組成物の一つの態様では、該組成物中のポリマーは、(トリフェニル)メチルチオアクリレート、(トリフェニル)メチルチオメタクリレート、(トリフェニル)メチルアクリレート、(トリフェニル)メチルメタクリレートまたは2−(トリフェニル)メチルオキシ)エチルメタクリレートから誘導される構造(II)を有する繰り返し単位は含まない。
【0051】
この新規組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーは、少なくとも一つの繰り返し単位(I)を含むが、構造(II)を有する末端基は含まない。この態様のより具体的な例の一つでは、該ポリマーはOまたはSから選択されたYを有する。
【0052】
この新規組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーは、少なくとも一超の繰り返し単位(I)を含むが、構造(II)を有する末端基は含まない。この態様のより具体的な例の一つでは、該ポリマーはOまたはSから選択されたYを有する。
【0053】
この新規組成物の更に別の態様の一つでは、該ポリマーは、(II)の末端基を含むが、構造(I)の繰り返し単位は含まない。この態様のより具体的な例の一つでは、該ポリマーはOまたはSから選択されたYを有する。
【0054】
この発明の更に別の態様の一つでは、該ポリマーは、懸垂トリアリールメチルカルコゲニドを含まない、単一の重合可能な炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位を更に含むランダムコポリマーである。
【0055】
この組成物の他の態様の一つでは、ポリマーにおいて、有機スペーサーX及びXは、アルキレン、フルオロアルキレン、オキシアルキレン、オキシフルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、オキシアリーレン、カルボニルアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボニルオキシアルキレン、またはカルボニル−N(R’)−アルキレンから独立して選択され、R’は水素、アルキルまたはアリールであり、更には、異なる可能な結合点を有する置換基において、“”は、以下のように繰り返し単位PまたはPのいずれかとの結合点を示す:オキシアルキレン、オキシフルオロアルキレン、オキシアリーレン、カルボニルアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボニルオキシアルキレン、カルボニル−N(R’)−アルキレン。この態様のより具体的な例の一つでは、有機スペーサーX及びXは独立してアルキレンから選択される。
【0056】
このポリマーの他の態様の一つでは、繰り返し単位(I)は構造(Ia)を有し、そして末端鎖基単位(II)は構造(IIa)を有する:
【0057】
【化6】
式中、R、R、R、R、R、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R1b、R2b、R3b、R4b、及びR5bは、独立して、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルコキシルオキシカルボニルオキシ、フルオロアルキル、フルオロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルオキシ、トリアルキルシリル、トリアルキルシリルオキシ、Cl、BrまたはIである。
【0058】
該ポリマーが構造(Ia)または(IIa)を含む場合のこの組成物の他の態様の一つでは、R、R、R、R、R、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R1b、R2b、R3b、R4bまたはR5bの一つまたは複数はアルコキシである。
【0059】
該ポリマーが構造(Ia)または(IIa)を含む場合のこの組成物の他の態様の一つでは、構造(Ia)の繰り返し単位は、構造(III)、構造(IV)、構造(V)、構造(VI)またはこれらの混合物を有するものから選択される。
【0060】
【化7】
式中、Rは、水素、Cl、Br、CN、アルキルまたはフルオロアルキルであり;R及びRは、独立して、水素、アルキル、アルコキシカルボニルまたはCOHであり;Rは、水素またはアルキルであり;R10は、水素またはアルキルであり;R11は、水素またはアルキルであり;R12及びR13は、独立して水素またはアルキルである。この態様のより具体的な例の一つでは、該ポリマーは、構造(III)、構造(V)またはこれらの混合物を有するものから選択される繰り返し単位を含む。この態様の更に別の具体的な例の一つでは、該ポリマーは、構造(III)を有する繰り返し単位を含む。この態様の他の具体的な例の一つでは、該ポリマーは、構造(V)を有する繰り返し単位を含む。この組成物の他の態様では、該ポリマーにおいて、R、R、R、R、R、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R1b、R2b、R3b、R4bまたはR5bの一つまたは複数はアルコキシである。
【0061】
該ポリマーが、構造(III)、構造(IV)、構造(V)、構造(VI)及びこれらの混合物を含む場合の該組成物の他の態様の一つでは、これは、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まない、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位をランダムに更に含んでもよい。
【0062】
該ポリマーが構造(Ia)または(IIa)を含む場合のこの組成物の他の態様の一つでは、構造(IIa)の末端基は、構造(IIIa)、構造(IVa)、構造(Va)、及び構造(VIa)を有するものから選択される:
【0063】
【化8】
式中、Rは、水素、Cl、Br、CN、アルキルまたはフルオロアルキルであり;そしてR及びRは、独立して、水素、アルキル、アルコキシカルボニルまたはCOHであり;R10はアルキルであり;R、R14、R15及びR17は、独立して、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリール、またはアルキレンアリールであり;R16は、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アルキレンアリール、トリアルキルシリルまたはトリアルキルシロキシである。この例の更に具体的な態様の一つでは、該ポリマーは、構造(IIIa)を有する末端基を含む。この組成物の他の態様では、該ポリマーにおいて、R、R、R、R、R、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R1b、R2b、R3b、R4bまたはR5bの一つまたは複数はアルコキシである。
【0064】
他の具体的な例の一つでは、該ポリマーは、構造(Va)を有する末端基を含む。
【0065】
該ポリマーにおいて、構造(IIa)の末端基が、構造(IIIa)、構造(IVa)、構造(Va)及び構造(VIa)を有するものから選択される場合のこの組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーは、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まない、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位をランダムに更に含む。
【0066】
該ポリマーにおいて繰り返し単位(I)が構造(Ia)を有しかつ末端鎖基単位(II)が構造(IIa)を有する場合の組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーは、Xが、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、カルボニル、カルボニルオキシまたは直接原子価結合であり、Xが、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレンスペーサー、フルオロアリーレン、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシまたは直接原子価結合であり、R18が、H、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)であり、R19が、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)である構造(XII)、(VIII)、(VIV)及び(VV)を有するものから選択される懸垂トリアリールメチルカルコゲニドを持たないポリマー繰り返し単位を更に含む。
【0067】
【化9】
式中、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、または直接原子価結合であり、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレンスペーサー、フルオロアリーレン、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシまたは直接原子価結合であり、R18は、H、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)であり、R19は、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)である。
【0068】
この組成物の更に別の態様では、該ポリマーにおいて、構造(Ia)の繰り返し単位は、構造(III)を有するものだけであり、そして該ポリマーは、構造(VII)、(VIV)及びこれらの混合物を有するものから選択されるトリアリールメチルカルコゲニド懸垂部分を持たない繰り返し単位のみを更に含む。
【0069】
この組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーにおいて、構造(Ia)の繰り返し単位は、構造(III)を有するものだけであり、そして該ポリマーは、構造(VII)を有するトリアリールメチルカルコゲニド懸垂部分を持たない繰り返し単位のみを更に含む。
【0070】
この組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーにおいて、構造(Ia)の繰り返し単位は、構造(III)を有するものだけであり、そして該ポリマーは、構造(VIV)を有するトリアリールメチルカルコゲニド懸垂部分を持たない繰り返し単位のみを更に含む。
【0071】
この組成物の更に別の態様では、該ポリマーにおいて、構造(Ia)の繰り返し単位は、構造(V)を有するものだけであり、そして該ポリマーは、構造(VII)、(VIV)及びこれらの混合物を有するものから選択されるトリアリールメチルカルコゲニド懸垂部分を持たない繰り返し単位のみを更に含む。
【0072】
この組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーにおいて、構造(Ia)の繰り返し単位は、構造(V)を有するものだけであり、そして該ポリマーは、構造(VII)を有するトリアリールメチルカルコゲニド懸垂部分を持たない繰り返し単位のみを更に含む。
【0073】
この組成物の更に別の態様の一つでは、該ポリマーにおいて、構造(Ia)の繰り返し単位は、構造(V)を有するものだけであり、そして該ポリマーは、構造(VIV)を有するトリアリールメチルカルコゲニド懸垂部分を持たない繰り返し単位のみを更に含む。この組成物の他の態様の一つでは、該ポリマーは、少なくとも一つのトリアリールメチルカルコゲニド含有部分を含み、そしてトリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まない、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位を更にランダムに含む。トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まないこれらのモノマーの非限定的な例は、ビニルアリール(例えば、スチレン類及び類似物)、アルキルビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルアルキルオキシド、ビニルアルキルカルボキシレート、ビニルアルコール、N−アルキルアクリルアミド及び類似物である。使用し得るアルキルビニル化合物、アルキルオキシビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルアルキルオキシド、ビニルアルキルカルボキシレート、N−アルキルアクリルアミドの非限定的な例は、アルキル基がC〜Cフルオロアルキル、C〜C10線状アルキル部分、C〜Cヒドロキシフルオロアルキレン基、C〜C10アルキルオキシアルキレン基、C〜C10ヒドロキシアルキレン基、C〜C20分枝状アルキル、C〜C20環状アルキル、C〜C20カルボキシルアルキレン、C〜C20アルキルオキシカルボキシルアルキレン、またはC〜C20アルキルオキシカルボキシルオキシアルキレンであるものである。カルボキシル部分に結合したこれらの例におけるアルキル基は、熱酸発生剤または光酸発生剤のいずれかによって生成した強酸と反応した時にフリーのカルボキシル部分を放出することができる酸開裂性基、例えば第三級エステル、アセタールまたはケタールであってもよい。前記アルキルビニル化合物、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートは、耐エッチング性のブロック部分として使用でき、ここでアルキル基は、耐火性元素を含む部分、例えばC〜C20トリアルキルシリル基、C〜C20トリアルキルゲルマニウム基、C〜C20トリアルキルスズ基またはC〜C20トリアルキルチタン基によって置換されていてよい。ビニルアリール化合物の非限定的な例は、置換されていないスチレン、置換されていないビニルナフタレン類、置換されていないビニルアントラサイト、置換されていないビニルピレン及び類似物であり、またはこれらのアリール部分は、一つまたは複数の置換基、例えばC〜C20アルキル基、C〜C20ヒドロキシアルキル基、C〜C10アルキルオキシアルキレン基、C〜Cフルオロアルキル、C〜Cヒドロキシフルオロアルキレン基、ヒドロキシル基、酸不安定性基でブロックされたヒドロキシル基、カルボキシル基、酸不安定性基でブロックされたカルボキシル基(これらの酸開裂性部分は、熱酸発生剤または光酸発生剤のいずれかによって形成された、フィルム中に存在する強酸と反応した際に、フリーのヒドロキシル部分またはフリーのカルボキシル部分をそれぞれ放出できる);フルオロアルコール基、C〜C20トリアルキルシリル基、C〜C20トリアルキルゲルマニウム基、C〜C20トリアルキルスズ基、C〜C20トリアルキルチタン基、C〜C20アルキルカルボニル、C〜C20アルキルカルボニルオキシ、C〜C20アルコキシまたはC〜C36トリス(トリアルキルシリル)シリル基;置換されていないビニルナフタレン、及び次の置換基、すなわちC〜C20アルキル基、C〜C20トリアルキルシリル基、C〜C20トリアルキルゲルマニウム基、C〜C20トリアルキルスズ基、C〜C20トリアルキルチタン基、C〜C20アルキルカルボニル、C〜C20アルキルカルボニルオキシ、C〜C20アルコキシ、C〜C36トリス(トリアルキルシリル)シリル基で置換されたビニルナフタレン;ビニルアントラセン、及び次の置換基、すなわちC〜C20アルキル基、C〜C20トリアルキルシリル基、C〜C20トリアルキルゲルマニウム基、C〜C20トリアルキルスズ基、C〜C20トリアルキルチタン基、C〜C20アルキルカルボニル、C〜C20アルキルカルボニルオキシ、C〜C20アルコキシ、C〜C36トリス(トリアルキルシリル)シリル基で置換されたビニルアントラセン;ビニルピレン、及び次の置換基、すなわちC〜C20アルキル基、C〜C20トリアルキルシリル基、C〜C20トリアルキルゲルマニウム基、C〜C20トリアルキルスズ基、C〜C20トリアルキルチタン基、C〜C20アルキルカルボニル、C〜C20アルキルカルボニルオキシ、C〜C20アルコキシもしくはC〜C36トリス(トリアルキルシリル)シリル基で置換されたビニルピレン;及び類似物である。
【0074】
この発明の更に別の態様の一つでは、該新規組成物において、少なくとも一つの懸垂トリアリールメチルカルコゲニドを含む該ポリマーは、構造(V)または構造(III)を有する繰り返し単位のみを含む。図1a及び1bは、それぞれ、nがホモポリマー中の繰り返し単位の数を示すこの態様の非限定的な例を示す。誘導自己組織化において基材上のグラフトしたポリマーフィルムとして使用する場合は、図1aに示した非限定的例などの材料が、スチレン系ブロック及びアルキルメタクリレートブロックを含むブロックコポリマーの誘導自己組織化のためのスチレン系ドメインのピン止め部位として有用である。これとは反対に、図1bに示したものなどの材料から誘導されたグラフトしたポリマーフィルムは、スチレン系ブロック及びアルキルメタクリレートブロックを含むブロックポリマーのアルキルメタクリレートブロックドメインのピン止め部位として有用である。構造IV及びVIを有する繰り返し単位のみからなる類似のホモポリマーにも同様の議論を行うことができる。
【0075】
該組成物の他の態様の一つでは、少なくとも一つの懸垂トリアリールメチルカルコゲニドを含むポリマーは、構造(V)を有する繰り返し単位、及びトリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まないビニルアリール、例えばスチレンまたは置換されたスチレンから誘導される繰り返し単位をランダムに含む。図2は、この態様の非限定的な例を示し、ここでn及びmは、該ランダムコポリマー中の各々のタイプの繰り返し単位の数を示す。この態様では、構造(V)を有する繰り返し単位のモル%は0.5〜30モル%の範囲であり、そしてトリフェニルメチルカルコゲニドを含まないビニルアリールから誘導される繰り返し単位のモル%は70〜99.5モル%の範囲である。
【0076】
該新規組成物中の少なくとも一つの懸垂トリアリールメチルカルコゲニドを含むポリマーがもっぱらスチレン系単位からなる場合には、これらの組成物は、グラフトポリマーフィルムを基材に施与するプロセスにおいて有用であり、この際、このグラフトポリマーフィルムは、次いで、ブロックコポリマーフィルムをアニールした時に起こる自己組織化の間に、スチレン系ブロック及びアルキルメタクリレートブロックを含む上を覆うブロックコポリマーフィルムのスチレン系ブロックドメインのためのピン止め部位として有用である。
【0077】
この発明の他の態様の一つでは、該組成物において、該ポリマーは、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルオキシビニルまたはN−アルキルアクリルアミドのいずれかから誘導される繰り返し単位とランダムに共重合された構造(III)、(IV)または(VI)を有する繰り返し単位を含む。主に極性繰り返し単位を含むこのような材料は、基材上にグラフトする時に、極性ドメイン及び非極性ドメインを含むブロックコポリマー(ブロックコポリマーの非限定的な例は、スチレン系ブロックと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルオキシビニル、またはN−アルキルアクリルアミドから誘導されるブロックとを含む)の誘導自己組織化のプロセスにおいて、極性ドメインのピン止め部位として有用である。
【0078】
この発明の他の態様の一つでは、該ポリマーは、構造(V)を有する繰り返し単位、及びトリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まないビニルアリール、例えばスチレンまたは置換されたスチレン、並びにトリフェニルメチルカルコゲニドを含まないアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートから誘導された繰り返し単位をランダムに含む。図3は、この態様の非限定的な例を示し、ここでn、m及びlは、各々のタイプの繰り返し単位の数を示す。この態様では、構造(V)を有する繰り返し単位のモル%は0.5〜30モル%の範囲であり、トリフェニルメチルカルコゲニドを含まないビニルアリールから誘導される繰り返し単位のモル%は2.0〜90モル%の範囲であり、そしてトリフェニルメチルカルコゲニドを含まないアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートから誘導される繰り返し単位のモル%は20〜90モル%の範囲である。誘導自己組織化においてグラフトポリマーフィルムとして使用される場合には、90モル%超のスチレン系単位からなるこのような材料(例えば、図3において(n+m)/l>90%)は、スチレン系ブロック及びアルキルメタクリレートブロックを含むブロックコポリマーの誘導自己組織化のためのスチレン系ドメインのピン止め部位として有用である。これとは反対に、90%超のアルキルメタクリレート単位からなる材料(例えば図3において、l/n+m*100>90モル%)が、アルキルメタクリレートブロックのピン止め部位として役立ち得る。また、スチレン系単位及びアルキルメタクリレート単位の割合がほぼ同じである場合も同様である(すなわち、図3の非限定的な例において(n+m)≒1)。一つの態様では、このコポリマーは、基材上にグラフトする時に、構造(V)を有する単位、及びトリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まないスチレン系単位から誘導される全スチレン系繰り返し単位のモル%が45〜55モル%の範囲であり、及びアルキルメタクリレートまたはアルキルアクリレートの割合が55〜45モル%の範囲である場合に、中性層として働き得る。類似の新規ポリマーを基材上にグラフトし、この際、これらのポリマーが、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートから誘導される繰り返し単位の代わりに、アルキルビニル、アルコキシビニルまたはN−アルキルアクリルアミドから誘導される単位を同じモル割合で含む場合にも、中性相を得ることができる。
【0079】
この発明の更に別の態様の一つでは、該ポリマーの主鎖は、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まないが、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含む末端基を有し、この際、この末端基が構造(Va)を有するビニルアリール部分から誘導される繰り返し単位をランダムに含む。図4は、このような構造の非限定的な例を示している。これらの材料は、主として、ビニルアリール部分、例えばスチレン類から誘導される繰り返し単位を含むために、基材上にグラフトした場合には、これらの材料は、先に記載したようにピン止め層として働く。
【0080】
この発明の他の態様の一つでは、該ポリマーの主鎖は、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含まないが、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含む末端基を有し、この際、この末端基が構造(Va)を有する、ビニルアリール部分及びアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートから誘導される両方の繰り返し単位をランダムに含む。図5は、このような構造の非限定的な例を示している。先に記載したように、このような材料は極性の繰り返し単位と非極性の繰り返し単位の両方を含むために、これらは、基材上にフィルムとしてグラフトした時に、ピン止め層または中性層のいずれかとして働き得る。それ故、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートから誘導される繰り返し単位の全量が90モル%を超える場合には、これらのポリマーは、グラフトした時に、アルキルメタクリレートから誘導されるものなどのポリマーブロックドメインのピン止め材料として働き得る。これとは逆に、スチレン系材料から誘導される繰り返し単位の全量が90モル%を超える場合には、これらは、グラフトした時に、スチレン系ドメインのピン止め材料として働き得る。また、各々のタイプの繰り返し単位の量がほぼ同じ場合も(すなわち、全スチレン系が45〜55モル%、全アルキルアクリレートもしくはメタクリレートが45〜55モル%)、グラフトしたフィルムは中性層として機能する。
【0081】
この発明の他の観点の一つは新規組成物であり、ここで、ポリマーは、構造(I)を有するトリフェニルメチルカルコゲニド部分を含む主鎖繰り返し単位、構造(II)を有するトリフェニルメチルカルコゲニド部分を含む末端鎖基単位、またはこれらの二つのタイプの単位の混合物を含み、及び溶剤を含む。先に記載した通り、このような材料は、基材にグラフトした場合に、グラフトしたポリマーフィルムの上にコーティングされたブロックコポリマーのブロックドメインの極性と比べて各々のタイプの繰り返し単位のモル割合に依存して、ピン止め材料または中性材料として働き得る。
【0082】
構造(I)の懸垂トリフェニルメチルカルコゲニドを含むこの発明のポリマーは、アルケン含有モノマーをランダムに重合できる様々な方法(例えば、ニトロキシド媒介重合、カチオン、アニオン縮合鎖重合、及び類似法)によって製造することができるが、一般的に、これらは、ラジカル重合、例えばAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)、過酸化ベンゾイルまたは他の標準的な熱ラジカル開始剤などの遊離基開始剤によって開始されるラジカル重合によって製造される。該新規ポリマーは、CHOHまたはCHL(式中、Lは脱離基、例えばCl、Br、I、またはトシレート(Ts)などのスルホネート脱離基である)などの反応性懸垂基または末端基を有するアルキルビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルオキシビニルもしくはN−アルキルアクリルアミド、アリールビニルポリマーまたはこれらのコポリマーのポリマー変性によっても製造できる。例えば、YがOである構造(I)の単位を含む新規ポリマーは、CHOH懸垂基を有する前駆体ポリマーを、Hal=Cl、BrまたはIである構造(VIIa)を有するハロトリチル誘導体化合物と反応させることによって製造することができる。YがOである構造(I)または(II)の単位を含む新規ポリマーは、CHL懸垂基(すなわち、−CH−Cl、CH−Br、CHOTs及び類似物)を有するポリマーまたはコポリマーと構造(VIIb)を有する化合物とを反応させることによって製造することができる。同様に、Y=Se、Teである構造(I)を含むポリマーは、CHOH懸垂基を有するポリマーを、構造(VIIc)の化合物と、AlBrまたはAlClなどのルイス酸の存在下に塩化メチレン中で反応させることによって製造し得る。
【0083】
【化10】
同様に、Y=Sである構造(II)を有する末端基を含む新規ポリマーは、反応性CHL基(すなわち、CH2OTs及び類似物)を含むアルキルビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルオキシビニルもしくはN−アルキルアクリルアミド、アルキルビニルポリマーまたはこれらのコポリマーと、構造VIIbを有する化合物との適当な末端キャッピング反応によって製造し得る。一例として、スチレンはアニオン的に重合でき、そして反応性アニオン性末端キャップは、エチレンオキシドなどのオキシラン類またはトリメチレンオキシド(TMO)(別名1,3−プロピレンオキシド)などのオキシ部分を含む四員環状化合物と反応させて、ヒドロキシ末端基を生成する。次いで、このヒドロキシ末端基は、YがSである構造(VIIb)の化合物と反応させて、その結果、YがSである構造(II)の末端基を生成する。その代わりに、このヒドロキシキャップドスチレンは構造(VIIa)の化合物と反応させて、構造(II)においてYがOである材料を生成することができる。同様に、YがSeまたはTeである構造(II)でのエンドキャッピングは、YがSeまたはTeである構造(VIIc)の化合物とカップリングした−CHOH末端基を含むポリマーを用いて行い得る。
【0084】
該新規組成物に適した溶剤は、(I)または(II)を単独でまたは他の成分との組み合わせで含むポリマーを溶解するものである。適当な溶剤には、非限定的な例として、グリコールエーテル誘導体、例えばエチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、またはジエチレングリコールジメチルエーテル;グリコールエーテルエステル誘導体、例えばエチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、またはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA);カルボキシレート、例えばエチルアセテート、n−ブチルアセテート及びアミルアセテート;二塩基性酸のカルボキシレート、例えばジエチルオキシレート及びジエチルマロネート;グリコール類のジカルボキシレート、例えばエチレングリコールジアセテート及びプロピレングリコールジアセテート;及びヒドロキシカルボキシレート、例えばメチルラクテート、エチルラクテート(EL)、エチルグリコラート、及びエチル−3−ヒドロキシプロピオネート;ケトンエステル、例えばメチルピルベートまたはエチルピルベート;アルコキシカルボン酸エステル、例えばメチル3−メトキシプロピオネート、エチル3−エトキシプロピオネート、エチル2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオネート、またはメチルエトキシプロピオネート;ケトン誘導体、例えばメチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンまたは2−ヘプタノン;ケトンエーテル誘導体、例えばジアセトンアルコールメチルエーテル;ケトンアルコール誘導体、例えばアセトールまたはジアセトンアルコール;ケタールまたはアセタール、例えば1,3ジオキサラン及びジエトキシプロパン;ラクトン、例えばガンマ−ブチロラクトン(BGL);アミド誘導体、例えばジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド、アニソール、及びこれらの混合物などが挙げ得る。該組成物は、更に、界面活性剤などの添加剤を含んでよい。
【0085】
溶剤中の構造(I)の重量%は、0.1〜10重量%の範囲であってよい。他の態様の一つでは、前記範囲は0.5〜10重量%であってよい。更に別の態様の一つでは、前記範囲は0.5〜5重量%であってよい。更に別のより具体的な態様の一つでは、前記範囲は0.8〜1.2重量%であってよい。
【0086】
該新規組成物は、レベリング剤、界面活性剤などを初めとした任意選択の追加の添加剤を含んでよい。光酸発生剤、熱酸発生剤、塩基、及び類似物も任意選択の添加剤として使用してよいが、これらは、グラフト化を達成するためには必要ではない。
【0087】
この発明の他の観点の一つは、該新規組成物を、次のようにステップa)、b)及びc)を含む、グラフトしたフィルムを基材上に形成する方法に使用することである:
a)該新規組成物を用いて、基材上にフィルムをコーティングし、ここで、該ポリマーは、構造(I)または(II)においてYがO、S、SeまたはTeであるステップ、b)このフィルムを80〜300℃の間の温度でベークするステップ、c)このフィルムを溶剤で洗浄して、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを残すステップ。グラフトしてない溶剤を除去するステップc)において、またはグラフトしてないポリマーを除去する必要がある他のその後の記載のステップにおいて使用される溶剤は、先に記載したように該新規ポリマーを溶解するのに適したものから選択し得る。この方法のより具体的な態様の一つでは、該ポリマーにおいてYはOまたはSである。
【0088】
基材は、半導体、金属または金属酸化物から選択し得る。適当な半導体の非限定的な例は、ケイ素、ゲルマニウム、リン化アルミニウム、ヒ化アルミニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウムである。金属の非限定的な例は、銅、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、タングステン、及びモリブデンである。金属酸化物の非限定的な例は、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化タングステン、及び酸化モリブデンである。
【0089】
この発明の他の観点の一つは、以下のようにステップa)〜f)を含む自己組織化のための方法において該新規組成物を使用することである:
a)該新規組成物を用いて、基材上にフィルムをコーティングし、ここで該ポリマーは、先に記載した通り、構造(I)または(II)においてYがO、S、SeまたはTeであるものであるステップ、b)このフィルムを80〜300℃の間の温度でベークするステップ、c)このフィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを残すステップ、d)このグラフトしたフィルム上に、ブロックコポリマーのフィルムをコーティングするステップ、e)溶剤ベークを適用して、コーティングステップd)からの溶剤を除去するステップ、f)アニールベークを適用して、ブロックコポリマーの自己組織化を可能にするステップ。この方法のより具体的な態様の一つは、該ポリマーにおいてYがOまたはSである態様である。
【0090】
他の本発明の方法は、次のようにステップa)、b)及びc)を含む、パターン化された基材上の金属パターン上に、グラフトされたコーティングフィルムを選択的に形成することである:a)該新規組成物を用いて、パターン化された基材上にフィルムをコーティングし、ここで、該ポリマーは、構造(I)または(II)においてYがS、SeまたはTeであるものであるステップ、b)このフィルムを、80〜300℃の間の温度でベークするステップ、c)このフィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを金属パターン上に残すステップ。この新規グラフト化方法のより具体的な態様の一つは、前記金属パターンがCu金属パターンである態様である。この新規方法の更に別の他の態様の一つは、ステップb)において温度が100℃と250℃の間である態様である。この本発明方法の他のより具体的な態様の一つは、パターン化された基材が、Si半導体パターンなどの他のパターンも含む態様である。この方法の他のより具体的な態様の一つは、該ポリマーにおいてYがSである態様である。
【0091】
他の本発明方法の一つは、次のようにステップa)〜f)を含む、金属パターンを含むパターン化された基材上で誘導自己組織化のための方法である:a)該新規組成物を用いて、パターン化された基材上にフィルムをコーティングし、ここで該ポリマーは、構造(I)または(II)においてYがS、SeまたはTeであるものであるステップ、
b)このフィルムを、80〜300℃の間の温度でベークするステップ、c)このフィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、上記金属パターン上にグラフトしたフィルムのみを残すステップ、d)このグラフトしたフィルム上に、ブロックコポリマーのフィルムをコーティングするステップ、
e)溶剤ベークを適用して、コーティングステップd)からの溶剤を除去するステップ、
f)200℃と300℃との間のアニールベークを適用して、ブロックコポリマーの自己集合化を可能にするステップ。
【0092】
この誘導自己組織化方法のより具体的な態様の一つは、ステップb)においてベーク温度が100〜250℃である態様である。この誘導自己組織化方法の他の態様の一つは、金属パターンがCu金属パターンである態様である。この誘導自己組織化方法の更に別の態様の一つでは、パターン化された基材は、Si半導体パターンなどの他のパターンも含む。
【0093】
他の本発明方法の一つは、誘導自己組織化用途のために該新規組成物を使用する方法であって、ここでは、グラフトしたコーティングフィルムを、一つの所望のパターン表面上へ施与し、但し他の表面に施与せずに、ケモエピタキシまたはグラフォエピタキシ誘導自己組織化用途のための交互パターンを生成する方法である。この誘導自己組織化方法では、グラフトされたポリマーフィルム上にコーティングされたブロックコポリマーの組成と比較した該グラフトされたポリマーフィルム中のモノマーの組成が、グラフトしたフィルムがピン止めフィルムまたは中性フィルムのどちらとして作用するかを決定する。具体的には、グラフトしたポリマーが、ブロックコポリマー中のブロックドメインのうちの一つと化学的に類似する繰り返し単位から主として(90〜100モル%)なる場合には、このグラフトしたポリマーフィルムは、誘導自己組織化においてこのブロックドメインのためのピン止め部位として作用する。非限定的な例は、主としてスチレン繰り返し単位を有しそしてポリ(スチレン−b−メタクリレート)フィルムのスチレンドメインのためのピン止め部位として作用するこの発明の該新規ポリマーから形成されたグラフトされたフィルムであろう。このような材料は、例えば、構造(V)を有する繰り返し単位を含むホモポリマー、または構造(V)のスチレン系単位及び他のスチレン系繰り返し単位から主としてなるコポリマーであり得る。
【0094】
反対に、他の非限定的な例の一つは、自己組織化の間に上を覆うブロックコポリマー中の対応するドメインのためのピン止め部位として作用し得る極性部分から主として(すなわち>90モル%)構成されるこの発明の該新規ポリマーフィルムから誘導されるグラフトされたフィルムであろう。例えば、自己組織化の間の、上を覆うブロックコポリマーのためのステップd)〜f)の間の自己組織化の間にポリスチレンメチルメタクリレートブロックコポリマーP(S−b−MMA)のメチルメタクリレートドメインのためのピン止め層として作用できるメチルメタクリレートと類似の極性を持つ繰り返し単位から構成される新規のグラフトされたポリマー。
【0095】
最後に、この新規方法では、該新規ポリマーから生じたグラフトされたフィルムは、先に記載した通り、極性繰り返し単位及び非極性繰り返し単位から誘導される単位の割合がほぼ同じである場合には中性層としても作用し得る。
【0096】
該新規グラフト化材料を用いた誘導自己組織化方法は、慣用のリソグラフィ技術、例えばUVリソグラフィ(450nm〜10nm)、液浸リソグラフィ、EUVまたは電子線によって形成された既存のパターンの解像度またはCD均一性の更なる改善を可能とする。
【0097】
ステップa)〜f)を含む自己組織化または誘導自己組織化の上記方法では、ステップd)においてコーティングされたブロックコポリマーフィルムはジブロックコポリマー溶液からコーティングしてよく、ここで、該ブロックコポリマーは、高エッチング耐性のブロックと高エッチング可能なブロックとを含み、及び該ブロックコポリマーは、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)であろう。典型的には、これらの発明で使用するのに適したブロックコポリマーは、約3,000〜約500,000g/モルの範囲の重量平均分子量(M)、及び約1,000〜約400,000の数平均分子量(M)、及び約1.01〜約6、または1.01〜約2、または1.01〜約1.5の多分散性(M/M)(PD)を有する。他のジブロックコポリマーの他の具体的な非限定的な例は、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン)、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−アルケニル芳香族類)、ポリ(スチレン−b−(エチレン−プロピレン))、ポリ(スチレン−b−t−ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(スチレン−b−テトラヒドロフラン)、ポリ(スチレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(スチレン−b−カーボネート)、ポリ(スチレン−b−ラシド)、及びポリ(メチルメタクリレート−b−4−ビニルピリジン))である。これらの全てのポリマー性材料は、ICデバイスの製造に典型的に使用されるプラズマエッチング技術に対し耐性のある繰り返し単位を有する少なくとも一つのブロックと、これらの同じ条件下に迅速にエッチングされるかまたは化学的もしくは光化学的プロセスによって除去できる少なくとも一つのブロックとの存在という点で共通する。これは、誘導自己組織化ポリマーを基材上にパターン転写してビア形成を起こすことを可能にする。これらのブロックコポリマーを溶解するのに適した溶剤は、該新規ポリマーを溶解するのに適したものとして先に記載したようなスピンキャスト用溶剤である。
【0098】
ステップa)〜f)で製造された該新規のグラフトしたポリマーフィルムと共同して誘導自己組織化に使用されるブロックコポリマーは、自己組織化を介してドメインを形成できるものであれば任意のブロックコポリマーであることができる。自己会合する傾向のある同じタイプのブロックによって、ミクロドメインが形成される。典型的には、この目的に使用されるブロックコポリマーは、モノマーから誘導された繰り返し単位が、組成的に、構造的にまたはその両方で異なりかつ相分離及びドメイン形成ができるブロックに整列するポリマーである。これらのブロックは、一方のブロックは削除し、他方のブロックは表面上にそのまま維持でき、そうして表面上にパターンを供するのに使用できるという異なる性質を有する。それ故、ブロックは、プラズマエッチング、溶剤エッチング、水性アルカリ性溶液を用いた現像剤エッチングなどによって選択的に削除することができる。有機モノマーをベースとするブロックコポリマーでは、一つのブロックは、ポリジエンも包含するポリオレフィン系モノマー、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ブチレンオキシド)及びこれらの混合物などのポリ(アルキレンオキシド)を始めとするポリエーテルからできていることができ;他のブロックは、ポリ((メタ)アクリレート)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノゲルマン及び/またはこれらの混合物などの様々なモノマーからできていることができる。ポリマー鎖中のこれらのブロックは、それぞれ、モノマーから誘導された一種またはそれ超の繰り返し単位を含むことができる。必要なパターン及び使用する方法のタイプに依存して、異なるタイプのブロックコポリマーを使用し得る。例えば、これらは、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ターポリマーまたはマルチブロックコポリマーから成っていてよい。これらのブロックコポリマーのブロックは、それら自体が、ホモポリマーまたはコポリマーから成っていてよい。異なるタイプのブロックコポリマーも自己組織化に使用でき、例えば樹脂状ブロックコポリマー、超分岐ブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、有機ジブロックコポリマー、有機マルチブロックコポリマー、線状ブロックコポリマー、星形ブロックコポリマー、両親媒性無機ブロックコポリマー、両親媒性有機ブロックコポリマー、または少なくとも異なるタイプのブロックコポリマーからなる混合物などがある。
【0099】
有機ブロックコポリマーのブロックは、C2−30オレフィンなどのモノマー、C1−30アルコールから誘導される(メタ)アクリレートモノマー、無機含有モノマー、例えばSi、Ge、Ti、Fe、Alをベースとするものを含む無機含有モノマーから誘導される繰り返し単位を含んでもよい。C2−30オレフィンをベースとするモノマーは、単独でまたは一種の他のオレフィン性モノマーとの組み合わせで、高エッチング耐性のブロックを構成することができる。このタイプのオレフィン性モノマーの具体例は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソプレン、ジヒドロピラン、ノルボルネン、無水マレイン酸、スチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メチルスチレン、アルファ−メチルスチレンまたはこれらの混合物である。高エッチング可能な単位の例は、(メタ)アクリレートモノマー、例えば(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたはこれらの混合物から誘導することができる。
【0100】
一つのタイプの高エッチング耐性繰り返し単位を含むブロックコポリマーの説明に役立つ例は、スチレンから誘導される繰り返し単位のみを含むポリスチレンブロックと、メチルメタクリレートから誘導される繰り返し単位のみを含む他のタイプの高エッチング可能なポリメチルメタクリレートブロックであろう。これらは一緒になって、ブロックコポリマーであるポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)を形成し、ここでbはブロックのことを指す。
【0101】
パターン化された中性層上での誘導自己組織化に使用されるグラフォエピタキシ、ケモエピタキシまたはピン止めケモエピタキシに有用なブロックコポリマーの具体的で非限定的な例は、ポリ(スチレン−b−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン)、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−アルケニル芳香族類)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−(エチレン−プロピレン))、ポリ(エチレンオキシド−b−カプロラクトン)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−t−ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−t−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−テトラヒドロフラン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ジメチルシロキサン)、または上記のブロックコポリマーの少なくとも一つを含む組み合わせである。これらの全てのポリマー性材料は、ICデバイスの製造に典型的に使用されるエッチング技術に対し耐性のある繰り返し単位に富む少なくとも一つのブロックと、これらの同じ条件下に迅速にエッチングされる少なくとも一つのブロックとの存在という点で共通する。これは、誘導自己組織化されたポリマーが、基材上にパターン転写し、パターン調整またはパターン増倍のいずれかをもたらすことを可能とする。
【0102】
典型的には、グラフォエピタキシ、ケモエピタキシまたはピン止めケモエピタキシなどでの誘導自己組織化に使用されるブロックコポリマーは、約3,000〜約500,000g/モルの範囲の重量平均分子量(M)、及び約1,000〜約60,000の数平均分子量(M)、及び約1.01〜約6、または1.01〜約2、または1.01〜約1.5の多分散性(M/M)を有する。分子量のM及びMは両方とも、例えば、ポリスチレン標準に対してキャリブレートした一般のキャリブレーション法を用いてゲル透過クロマトグラフィにより測定できる。これは、ポリマーブロックが、所与の表面に付与された時に自然発生的に、または純粋に熱的な処理を用いることで、または自己組織化が起こるようにセグメントの流れを高めるためにポリマーフレームワーク中に溶剤蒸気を吸収させることでアシストされた熱的プロセスを介して、自己組織化するための十分な可動性を持つことを保証する。
【0103】
フィルムを形成するためのブロックコポリマーの溶解に適した溶剤は、トリフェニルメチルカルコゲニド部分を含む該新規ポリマーの溶解について記載したものと同じである。
【0104】
該ブロックコポリマー組成物は、無機含有ポリマー;小分子、無機含有分子、界面活性剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、クエンチャ、硬化剤、架橋剤、鎖延長剤、及び類似物などを包含する添加剤;並びに上記の少なくとも一つを含む組み合わせからなる群から選択される追加の成分及び/または添加剤を含むことができ、ここで前記追加の成分及び/または添加剤の一種以上は、ブロックコポリマーと一緒に共集合して、ブロックコポリマーアセンブリを形成する。
【0105】
該ブロックコポリマー組成物は、慣用のリソグラフィによって表面上に画定された該新規中性層のパターンに施与され、ここでその中性表面は、該新規組成物から形成された架橋されたコーティングである。適用及び溶剤除去の後、ブロックコポリマーは、次いで、慣用のリソグラフィプロセスで生成された基材表面の実際のトポグラフィ図形またはパターン化された化学的差異のいずれかを介して、中性層上の慣用のリソグラフィ加工によって形成された特定のパターンによって誘導されて自己組織化を起こす。パターン転写のための標準的なIC加工の後でのパターンとミクロ相分離距離との相対的なピッチに依存して、同じ解像度を維持したパターン補正が達成され、及び/または慣用のリソグラフィで画定された図形の間に多相境界が形成される場合にはパターン増倍も達成し得る。
【0106】
スピン技術(スピンドライイングも含む)によるブロックコポリマーの施与が、自己誘導化ブロックコポリマー組織を形成するのに十分であり得る。自己誘導化ドメイン形成の他の方法は、施与時、ベーク時、アニール時またはこれらの操作の一つ以上の組み合わせの時に起こり得る。こうして、上記の方法によって配向したブロックコポリマー組織が調製され、これは、中性表面に対し垂直に配向したシリンダ型のミクロドメインを含むかまたは中性表面に対し垂直に配向したラメラ型ドメインを含むミクロ相分離ドメインを有する。一般的に、ミクロ相分離ドメインは、中性表面に対し垂直に配向したラメラ型ドメインであり、これは、並行なライン/スペースパターンをブロックコポリマー組織に供する。こうして配向したドメインは、後の加工条件下に熱的に安定していることが望ましい。そのため、有用なジブロックコポリマー、例えばポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)を含むブロックコポリマーアセンブリの層をコーティングし、及び任意選択的にベーク及び/またはアニールした後に、ブロックコポリマーのドメインは、中性表面上に形成しかつそれに対し垂直に留まり、そうして基材表面上に高耐性領域と高エッチング可能領域とを与え、これを、更に基材層中にパターン転写することができる。誘導自己組織化ブロックコポリマーパターンは、既知の技術を用いて下にある基材中に転写される。一つの例では、湿式エッチングまたはプラズマエッチングを、任意にUV露光と組み合わせて、使用し得る。湿式エッチングは酢酸を用いたものであることができる。標準的なプラズマエッチングプロセス、例えば酸素を含むプラズマを使用してよく;追加的に、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、CF、CHFもプラズマ中に存在してよい。
【0107】
上記の方法は、実施できる新規方法を記載するものである。この方法は、本発明の該新規ピン止めまたは中性層組成物を使用することができる。
【0108】
上記で触れた文献はそれぞれ、全ての目的に関してその内容の全てが本明細書に掲載されたものとする。以下の具体例は、本発明の組成物を製造及び利用する方法の詳細な例示を与えるものである。しかし、これらの例は、本発明の範囲を如何様にも限定もしくは減縮することを意図したものではなく、本発明を実施するために排他的に利用しなければならない条件、パラメータまたは値を教示するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0109】
ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィを用いて測定した。全ての化学品は、Sigma−Aldrich Corporation(ミズーリ州セントルイス)またはFisher Scientific International,Inc.(ニューハンプシャー州ハンプトン)から得た。AZ(登録商標)EBR 70/30EBR及びAZEMBLYTMEXP PME−120コーティング35は、EMD Performance Materials Corp.(08876ニュージャージー州、サマービル、メイスター通り70)から得た。
【0110】
合成例1:CHCHOHで末端キャップされたポリスチレン(VIII)の合成
【0111】
【化11】
一つ首の1Lガラス反応器に、反応器へのN及び真空の適用を容易にするために隔壁アダプターを装備した。この反応器を、動的真空(dynamic vacuum)下にヒートガンを用いて乾燥し、そして乾燥Nを充填した。約600mLの無水シクロヘキサンを、N下にステンレススチールカニューレを用いて上記反応器に移した。次いで、110mL(99.66グラム)のスチレン(N下に脱気及び貯蔵したもの)を、N洗浄したシリンジを用いて上記反応器中に加えた。sec−BuLi(1.4M)を滴下して、モノマー溶液中の不純物をクエンチした。僅かな蜂蜜色が溶液中に持続するまでこの滴定を行った。その後直ぐに、持続性の色が達成された後に、14.5mL、0.020モルのsec−BuLi(1.4M)を、シリンジを用いて反応混合物中に加えた。この溶液は橙色に変わった。この反応を水浴中で45℃で4時間維持した。次いで、少量のsecーBuLi上で蒸留した精製エチレンオキシド(EO)2mLを、カニューレを用いて上記混合物に加えることによって、このリビングポリスチリルリチウムアニオンを末端キャップした。EOを加えると、このリビングポリスチリルリチウムの橙色は直ぐに消失した。45℃に維持した反応に低沸点モノマー溶液を加えながら特別な注意を払うべきである。添加後、熱い水浴を取り除き、そして末端キャップ反応を2時間、25℃で続けた。0.5mLの1M HClを加えて反応混合物を停止し、そしてNバブリング送り込み入口管を挿入した。次いで、窒素を反応混合物中に15分間バグリングして、残った過剰のEOを出口カニューレ中に追い出して、隔壁を介してNaOH溶液を含むフラスコに送った。次いで、この反応混合物を30mLのテトラヒドロフラン(THF)で希釈し、そして過剰のエタノール中にまたは10%水溶液のエタノール中に析出した。析出したポリマーを、濾液が中性pHとなるまでエタノールで洗浄し、そしてこのポリマーを真空下に55℃で10時間乾燥した。収率100%。Mw=6058及び=4,893g/モル。
【0112】
合成例2:mmt−SH(mmt=4−モノメトキシトリチル)(IX)の合成
【0113】
【化12】
700gのアセトン/700gの水の混合物中に溶解した60gの次亜硫酸ナトリウム水和物を3Lのフラスコ中に仕込み、そしてこの溶液中にNをバブリングして脱気することにより空気を除去した。次いで、250gの熱いアセトン中に溶解した60gの4−モノメトキシトリイルクロライドをこのフラスコに加えた。この混合物を室温で2時間攪拌した。形成したmmt−SH固形物を濾過して単離し、そしてDI水で徹底的に洗浄し、そして最後に、室温(rt)減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、52gのmmt−SHを得た。プロトンNMRは、その構造(CDCl中、6.8〜7.4ppmで14フェニルH;3.8ppmで−OCH中の3H、及び3.15ppmでSH中の1H)を確認した。
【0114】
合成例3:CHCH−S−mmt(mmt=4−モノメトキシトリチル)(X)の合成
【0115】
【化13】
窒素ガス保護下に、例1で製造した100.3gのポリマーを、460gのメチレンクロライド中に溶解し、そして3Lフラスコ中に仕込んだ。これに、240gのメチレンクロライド中に溶解した30gのp−トルエンスルホニルクロライド(TsCl)を加えた。次いで、攪拌しながら、18.3gのトリエチルアミンを数回に分けて加えた。この添加の後、その反応混合物を、室温で24時間攪拌した。この時間の後、その溶液を、激しく攪拌しながらメタノール中にゆっくりと注ぎ入れた。このポリマーを濾過して単離した。このポリマーをTHF中に溶解し、そして水中で析出し、再び溶解し、そして最後にメタノール中に析出することによって、ポリマーを更に精製した。この精製したポリマーを45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、93gの白色のポリマーを得た。プロトンNMRは、OH末端基が首尾良くOTsに転化されたことを示した。
【0116】
窒素保護下に、合成例2で製造した12.8gのmmt−SHを62gのTHF中に溶解し、そしてTHF中の1M カリウムtert−ブトキシド33gをこの溶液に加えた。室温で10分間攪拌した後に、328gのTHF中に溶解した上記で製造した93gのポリマーをこの溶液に加えた。この反応混合物を室温で24時間攪拌した。この溶液を、激しく攪拌しながら、4Lの1:1(V/V)石油エーテル/イソプロパノール中に注ぎ入れた。この析出したポリマーを濾過して単離した。このポリマーをTHF中に溶解し、そして水中で再析出し、そして最後にメタノール中に析出することによって、ポリマーを更に精製した。この精製したポリマーを45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、77gの白色のポリマーを得た。プロトンNMRは、OTs末端基が首尾良くS−mmtに転化されたことを示した。Mw=5959及びMn=4738g/モル。
【0117】
合成例4:次の構造(XI)を有するポリマーの合成
【0118】
【化14】
マグネチックバー及び冷水凝縮器を備えたフラスコ中で、0.59gの2−クロロエチルメタクリレート、0.6gのAIBN及び19.6gのメチルメタクリレートを45gのメチルエチルケトン中に溶解し、そしてこの溶液を窒素ガスで30分間パージした。このフラスコを80℃の油浴中に浸漬した。次いで、この反応をこの温度で5時間維持した。冷却後、このポリマー溶液を激しく攪拌しながらメタノール中にゆっくりと注ぎ入れた。得られたポリマーを濾過して単離し、そして45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、15gの白色のポリマーを得た。
【0119】
窒素雰囲気の保護下に、合成例2で製造した0.7gのmmt−SHを3gのTHF中に溶解し、次いでTHF中の1.78gの1M カリウムtert−ブトキシドをこの溶液に加えた。室温で約10分間攪拌した後、上記で製造した8gのポリマーを20gのTHF中に溶解して、この溶液に加えた。この生じた反応混合物を50℃で24時間攪拌した。次いでこの溶液を冷却し、そして激しく攪拌しながら、1:1(V/V)の石油エーテル/イソプロパノール中に注ぎ入れた。この形成したポリマーを濾過して単離した。このポリマーをTHF中に溶解し、そしてこれを水中に析出し、そして最後にこれをメタノール中で再び析出することによって、ポリマーを精製した。この精製したポリマーを45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、6.8gの白色のポリマーを得た。プロトンNMRは、このポリマーが所望のS−mmt側基を含むことを示した。Mw=16821及びMn=10544g/モル。
【0120】
合成例5:次の構造(XIII)を有するポリマーの合成
【0121】
【化15】
マグネチックスターラーバー及び冷水凝縮器を備えたフラスコ中で、0.66gの4−ビニルベンジルクロライド、1.0gのAIBN及び20.4gのスチレンを45gのメチルエチルケトン中に溶解し、そしてこの溶液を窒素ガスで30分間パージした。このフラスコを80℃の油浴中に浸漬した。この反応をこの温度で5時間維持した。冷却後、このポリマー溶液を激しく攪拌しながらメタノール中にゆっくりと注ぎ入れた。得られたポリマーを濾過して単離し、そして45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、11gの白色のポリマーを得た。
【0122】
窒素保護下に、合成例2で製造した0.71gのmmt−SHを3gのTHF中に溶解し、そしてTHF中の1.78gの1M カリウムtert−ブトキシドを加えた。室温で10分間攪拌した後に、20gのTHF中に溶解した上記で製造した8gのポリマーを加えた。この反応混合物を50℃で24時間攪拌した。次いで、この溶液を冷却し、そして激しく攪拌しながら、1:1(V/V)の石油エーテル/イソプロパノール中に注ぎ入れた。この形成したポリマーを濾過して単離した。このポリマーをTHF中に溶解し、そしてこれを水中に析出し、そして最後にこれをメタノール中で再び析出することによって、ポリマーを精製した。この精製したポリマーを45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、5.3gの白色のポリマーを得た。プロトンNMRは、このポリマーが所望のS−mmt側基を含むことを示した。Mw=6128及びMn=4357g/モル。
【0123】
合成例6:次の構造(XIV)を有するポリマーの合成
【0124】
【化16】
マグネチックスターラーバー及び冷水凝縮器を備えたフラスコ中で、0.62gの4−ビニルベンジルクロライド、0.657gのAIBN、10gのスチレン及び10gのメチルメタクリレートを45gのメチルエチルケトン中に溶解し、そしてこの溶液を窒素ガスで30分間パージした。このフラスコを次いで80℃の油浴中に浸漬した。この反応をこの温度で6時間維持した。冷却後、このポリマー溶液を激しく攪拌しながらメタノール中にゆっくりと注ぎ入れた。得られたポリマーを濾過して単離し、そして45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、11gの白色のポリマーを得た。
【0125】
窒素雰囲気の保護下に、合成例2で製造した1.05gのmmt−SHを4gのTHF中に溶解し、そしてTHF中の2.62gの1M カリウムtert−ブトキシドを加えた。室温で約10分間攪拌した後に、25gのTHF中に溶解した上記で製造した11gのポリマーを加えた。この反応混合物を50℃で24時間攪拌した。この溶液を冷却し、そして激しく攪拌しながら、1:1(V/V)の石油エーテル/イソプロパノール中に注ぎ入れた。この形成したポリマーを濾過して単離した。このポリマーをTHF中に溶解し、そしてこれを水中に析出し、そして最後にこれをメタノール中で再び析出することによって、ポリマーを精製した。この精製したポリマーを45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、5.3gの白色のポリマーを得た。プロトンNMRは、このポリマーが所望のS−mmt側基を含むことを示した。Mw=10550g/モル及びMn=7507g/モル。
【0126】
合成例7:PS−CHCHODMT(DMT=4,4’−ジメトキシトリチル)(XV)の合成
【0127】
【化17】
フラスコ中に、合成例1に記載のものと同じ手順を用いて製造した5.1gのPS−CHCHOH(Mn:11110g/モル及びPDI:1.02)を14gのTHF中に溶解した。窒素下に、2gのTHF中の0.47gの4,4’−ジメトキシトリチルクロライドをこの溶液に加え、次いで0.2gのトリエチルアミンを加えた。この反応混合物を室温で19時間攪拌した後、この溶液を、激しく攪拌しながらメタノール中にゆっくりと注ぎ入れた。このポリマーを濾過して単離した。このポリマーをTHF中に溶解し、そしてこれを水中に析出し、そして最後にこれをメタノール中で再び析出することによって、ポリマーを精製した。この精製したポリマーを45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、4.7gの白色のポリマーを得た。プロトンNMRは、OH末端基が首尾良くO−DMT末端基に転化されたことを示した。GPCは、このポリマーがMw=11108g/モル及びDPI=1.02を有したことを示した。
【0128】
合成例8:CHCHCHOHで末端キャップされたポリスチレンの合成
一つ首の5Lガラス反応器を、反応器へのN及び真空の適用を容易にするために隔壁アダプターに取り付けた。この反応器を、動的真空下にヒートガンを用いて乾燥し、そしてNを充填した。約2000mLの無水シクロヘキサンを、N下にステンレススチールカニューレを用いて上記反応器に移した。次いで、322グラムのスチレン(N下に脱気及び貯蔵したもの)を、N洗浄したシリンジを用いて上記反応器中に加えた。sec−BuLi(1.4M)を滴下して、モノマー溶液中の不純物をクエンチした。僅かな蜂蜜色が溶液中に持続するまでこの滴定を行った。その後直ぐに、46mL、0.064モルのsec−BuLi(1.4M)をシリンジを用いて反応に加えた。この溶液は橙色に変わった。この反応を水浴中、50℃で3時間維持した。このリビングポリスチリルリチウムアニオンを、精製したトリメチレンオキシド(TMO)でエンドキャップした。少量のsec−BuLi上で蒸留したこの精製したTMO(20mL)をカニューレを介して上記反応器中に移した。TMOを加えると、このリビングポリスチリルリチウムの橙色は直ぐに消失した。50℃で維持した反応器中に低沸点モノマー溶液を加えながら特別な注意を払うべきである。この添加後、熱い水浴を取り除き、そしてこの末端キャップ反応を2時間、25℃で続けた。この反応を、脱気した4mlメタノール(二滴の0.5N HClを含む)を用いて停止した。この溶液全体を過剰のイソプロピルアルコール(IPA)中に析出し(1:6体積比の反応混合物:IPA)、そして濾過し、そして重力損失が観察されなくなるまで動的真空下に50℃で乾燥した。回収したポリマーを、4000mlの4−メチル−2−ペンタノン中に再溶解し、そして4LのDI水を用いて5回洗浄した。次いで、このポリマー溶液をIPA中に析出した(1:6体積比の反応混合物:IPA)。このポリマーを濾過し、そして重量損失が観察されなくなるまで動的真空を用いて50℃で乾燥した。収率100%。BBでのGPCの結果は、Mn:4.7Kg/モル;PDI=1.04;カップルドPHS<2.0%であった。
【0129】
合成例9:CHCHCH−S−mmt(mmt=4−モノメトキシトリチル)で末端キャップしたポリスチレン(XVI)の合成
【0130】
【化18】
窒素ガス雰囲気下に、例8で製造した100.3gのポリマーを、460gのメチレンクロライド中に溶解し、そして3Lフラスコ中に仕込んだ。240gのメチレンクロライド中に溶解した30gのp−トルエンスルホニルクロライドをこの混合物に加えた。攪拌しながら、18.3gのトリエチルアミンを数回に分けて加えた。この反応混合物を室温で24時間で攪拌した後、この溶液を、激しく攪拌しながらメタノール中にゆっくりと注ぎ入れた。このポリマーを濾過して単離した。このポリマーを、水中に、そして最後に再びメタノール中に析出することによって、ポリマーを精製した。この精製したポリマーを45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、93gの白色のポリマーを得た。プロトンNMRは、OH末端基が首尾良くOTsに転化されたことを示した。
【0131】
窒素保護下に、合成例2で製造した12.8gのmmt−SHを62gのTHF中に溶解し、そしてTHF中の33gの1M カリウムtert−ブトキシドを加えた。室温で約10分間攪拌した後に、328gのTHF中に溶解した上記で製造した93gのポリマーを加えた。この反応混合物を室温で24時間攪拌した。この溶液を、激しく攪拌しながら、4Lの1:1(V/V)の石油エーテル/イソプロパノール中に注ぎ入れた。この形成したポリマーを濾過して単離した。このポリマーを、水中に、そして最後に再びメタノール中に析出することによって、ポリマーを精製した。この精製したポリマーを45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、77gの白色のポリマーを得た。プロトンNMRは、OTs末端基が首尾良くS−mmtに転化されたことを示した。
【0132】
試験例1(ポリマー安定性試験)
Polymer Source Inc.(カナダ、H9P 2X8、ケベック州、ドーヴァル(モントレアル)、アブロストリート124)から購入したCHCHSH(PS−CHCHSH)で末端キャップしたポリスチレンをGPCによって分析したところ、シングルピークで15529g/モルのMw及び13405g/モルのMnが確認された。このポリマーを−20℃のフリーザー中で1ヶ月貯蔵し、そして再びGPCによって分析したところ、二峰性トレースで18530g/モルのMw及び14405g/モルのMnが確認された。これは、このポリマーの分子量が貯蔵の間に、恐らくは空気酸化したS−Sカップリングの故に上昇したことを明らかに示した。
【0133】
試験例2(ポリマー安定性試験)
試験例1で使用した第一のポリマーPS−CHCHSHを、以下の手順を用いて変性した。
【0134】
試験例1で使用した0.60gのPS−CHCHSHを、5.4gのメチレンクロライド中に溶解した。窒素ガス保護下に、メチレンクロライド中の4gの5重量%mmt−Cl(4−モノメトキシトリチルクロライド)溶液をこれに加え、その後、メチレンクロライド中のトリエチルアミンの5重量%溶液1.5gを加えた。この反応混合物を室温で24時間攪拌した後、この溶液を、激しく攪拌しながらメタノール中にゆっくりと注ぎ入れた。このポリマーを濾過して単離した。このポリマーを、水中に、そして最後に再びメタノール中に析出することによって、ポリマーを精製した。この精製したポリマーを45℃の減圧炉中で重量が一定になるまで乾燥して、0.3gの白色のポリマーを得た。プロトンNMRは、SH末端基が首尾良くS−mmt末端基に転化されたことを示した。その直後にこのポリマーをGPCで分析し、そしてこのポリマーサンプルを室温で1ヶ月貯蔵し、そして再びGPCで分析した。この新鮮な及び熟成したサンプルのGPC比較は全く変化が無かったことを示す。新鮮なサンプル:Mw=14077及びMn=12823。熟成したサンプル:Mw=13985及びMn=12673g/モル。
【0135】
試験例3(様々な表面上への選択的グラフト化)
PGMEA中の合成例6の1重量%の材料からなる調合物を調製した。この調合物を個々にCuまたはSiクーポンウェハ上に1500rpmでコーティングし、そしてそれぞれ120℃、140℃、170℃または200℃で1分間ベークした。次いで、これらのウェハをそれぞれAZ(登録商標)EBR 70/30EBR(EBR7030)で30秒間洗浄し、そして110℃で1分間ベークした。Cuクーポン及びSiクーポンウェハも1500rpmでコーティングし、そして120℃で1分間ベークしたが、EBR洗浄は行わなかった。これらの全てのウェハのウェハ接触角(CA)を表1に報告する。
【0136】
【表1】
【0137】
試験例4(様々な表面上への選択的グラフト化)
PGMEA中の合成例6の1重量%の材料からなる調合物を調製した。この調合物をCuまたはSiクーポンウェハ上に1500rpmでコーティングし、そして140℃で1分間ベークした。次いで、これらのウェハをEBR7030で30秒間洗浄し、そして110℃で1分間ベークした。次いで、ラメラタイプのブロックコポリマー(BCP)溶液AZEMBLYTMEXP PME−120コーティング35(Lo=28nm、膜厚は1500rpmで35nm)をこれらの二つのCuまたはSiグラフトクーポンウェハ上に1500rpmでコーティングし、そして250℃で二分間アニールした。両クーポンウェハ上のこれらのアニールしたフィルムを、NanoSEMを用いることによって電子線で検査した。フィンガープリント画像は、アニールしたBCPコートCuクーポンウェハでのみ観察され、Siクーポンウェハ上のアニールしたBCPフィルムにはフィンガープリント画像は観察されなかった。図6は、合成例6の材料をグラフトした、コーティング及びアニールしたCuクーポンウェハ上に観察されたBCP自己組織化フィンガープリント電子線画像を示す。この図の視野は0.5×0.5μmである。X線光電子分光法(XPS)を、ベア銅ウェハについて行い、そして例6の材料でコーティングした銅ウェハを図7a(銅ウェハのXPS)及び図7b(例6の材料でコーティングした銅ウェハのXPS)に示す。これらのXPSスペクトルは、銅上の合成例6の材料の首尾の良いグラフト化を示唆する、この材料でグラフトした表面の増量した炭素含有量を明らかに示した。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
ポリマーとスピンキャスト用有機溶剤との均一な溶液を含む非水系のグラフト可能なコーティング組成物であって、
前記組成物は、酸性化合物、着色粒子、顔料または染料は含まず、及び
前記ポリマーは、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位を含む線状ポリマー鎖構造を有し、及び
前記ポリマーは、構造(I)を有する繰り返し単位、構造(II)の末端鎖基単位及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのトリアリールメチルカルコゲニド含有部分を含み、及び
前記ポリマーは、水でイオン化可能な基、イオン性基、フリーのチオール基またはフリーのヒドロキシ基を含む繰り返し単位または末端基はいずれも含まない、
コーティング組成物。
【化19】
式中、A、A及びAは、独立して、アリールまたは置換されたアリールであり、そして
Yは、O、S、SeまたはTeから選択されるカルコゲンであり、そして
及びXは、独立して、有機スペーサーから選択され、そして
は、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される有機ポリマー繰り返し単位部分であり、そして
は、単一の重合可能なオレフィン性炭素二重結合を含むモノマーから誘導される末端基部分であり、そして
【化20】
2.
ポリマーにおいて、A、AまたはAの少なくとも一つが、アルキルオキシ部分で置換された置換アリールである、上記1に記載の組成物。
3.
前記ポリマーが、懸垂トリアリールメチルカルコゲニドを含まない単一の重合可能な炭素二重結合を含むモノマーから誘導される繰り返し単位を更に含むランダムコポリマーである、上記1または2に記載の組成物。
4.
該ポリマーにおいて、前記有機スペーサーX及びXは、独立して、アルキレン、フルオロアルキレン、オキシアルキレン、オキシフルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、オキシアリーレン、カルボニルアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボニルオキシアルキレン、またはカルボニル−N(R’)−)アルキレン(R’は、水素、アルキルまたはアリールである)から選択される、上記1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
5.
該ポリマーにおいて、前記繰り返し単位(I)が構造(Ia)を有し、及び前記末端鎖基単位(II)が構造(IIa)を有する、上記1〜4のいずれか一つに記載の組成物。
【化21】
式中、R、R、R、R、R、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R1b、R2b、R3b、R4b、及びR5bは、独立して、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルコキシルオキシカルボニルオキシ、フルオロアルキル、フルオロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルオキシ、トリアルキルシリル、トリアルキルシリルオキシ、Cl、BrまたはIである。
6.
前記ポリマーにおいて、構造(Ia)の繰り返し単位が、構造(III)、構造(IV)、構造(V)、構造(VI)を有するもの及びこれらの混合物から選択される、上記1〜5のいずれか一つに記載の組成物。
【化22】
式中、Rは水素、Cl、Br、CN、アルキルまたはフルオロアルキルであり、そしてR及びRは、独立して、水素、アルキル、アルコキシカルボニルまたはCOHであり、そして
は、水素またはアルキルであり、そして
10は、水素またはアルキルであり、そして
11は、水素またはアルキルであり、そして
12及びR13は、独立して、水素またはアルキルである。
7.
前記ポリマーにおいて、構造(IIa)の末端基が、構造(IIIa)、構造(IVa)、構造(Va)及び構造(VIa)を有するものから選択される、上記1〜6のいずれか一つに記載の組成物。
【化23】
式中、Rは、水素、Cl、Br、CN、アルキルまたはフルオロアルキルであり、そして
及びRは、独立して、水素、アルキル、アルコキシカルボニルまたはCOHであり、そして
10は、アルキルであり、そして
、R14、R15及びR17は、独立して、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールまたはアルキレンアリールであり、そして
16は、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アルキレンアリール、トリアルキルシリルまたはトリアルキルシロキシである。
8.
前記ポリマーが、構造(VII)、(VIII)、(VIV)及び(VV)を有するものから選択される懸垂トリアリールメチルカルコゲニド部分を持たないポリマー繰り返し単位を更に含む、上記1〜7のいずれか一つに記載の組成物。
【化24】
式中、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、または直接原子価結合であり、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレンスペーサー、フルオロアリーレン、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシまたは直接原子価結合であり、R18は、H、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)であり、R19は、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)である。
9.
前記ポリマーが、末端基(IIa)と、構造(VII)、(VIII)、(VIV)、(VV)を有するもの及びこれらの混合物からなる群からから選択される懸垂トリアリールメチルカルコゲニド部分を持たない繰り返し単位のみを含む、上記1〜8のいずれか一つに記載の組成物。
【化25】
式中、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレン、フルオロアリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、または直接原子価結合であり、Xは、アルキレン、フルオロアルキレン、アリーレンスペーサー、フルオロアリーレン、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシまたは直接原子価結合であり、R18は、H、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)であり、R19は、アルキル、フルオロアルキル、トリアルキルシリル、アリール、フルオロアリール、またはアリーレン(トリアルキルシリル)である。
10.
次のステップa)、b)及びc)を含む、グラフトしたコーティングフィルムを基材上に形成する方法:
a)上記1〜9のいずれか一つに記載の組成物を用いて、基材上にフィルムをコーティングするステップ、
b)80℃〜300℃の間の温度で上記フィルムをベークするステップ、
c)上記フィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを残すステップ。
11.
ステップa)〜f)を含む自己組織化方法:
a)上記1〜9のいずれか一つに記載の組成物を用いて、基材上にフィルムをコーティングするステップ、
b)80℃〜300℃の間の温度で上記フィルムをベークするステップ、
c)上記フィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを残すステップ、
d)上記グラフトしたフィルム上に、ブロックコポリマーのフィルムをコーティングするステップ、
e)溶剤ベークを適用して、コーティングステップd)からの溶剤を除去するステップ、f)アニールベークを適用して、ブロックコポリマーの自己組織化を可能にするステップ。
12.
次のステップa)、b)及びc)を含む、金属パターンを含むパターン化基材上の金属パターン上に、グラフトしたコーティングフィルムを選択的に形成する方法:
a)上記1〜9のいずれか一つに記載の組成物を用いて、パターン化された基材上にフィルムをコーティングし、ここでYはS、SeまたはTeであるステップ、
b)100℃〜250℃の間の温度で上記フィルムをベークするステップ、
c)上記フィルムを溶剤で洗浄し、グラフトしていないポリマーを除去して、グラフトしたフィルムを上記金属パターン上に残すステップ。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b