特許第6474544号(P6474544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474544
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】摩擦材
(51)【国際特許分類】
   F16D 69/02 20060101AFI20190218BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   F16D69/02 F
   C09K3/14 520G
   C09K3/14 520C
   C09K3/14 520M
   C09K3/14 520L
   C09K3/14 520F
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-265396(P2013-265396)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-121266(P2015-121266A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】309014573
【氏名又は名称】日清紡ブレーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100188640
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 圭次
(72)【発明者】
【氏名】矢口 光明
(72)【発明者】
【氏名】梶 真也
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−245338(JP,A)
【文献】 特開平05−017739(JP,A)
【文献】 特表2012−518044(JP,A)
【文献】 特開2004−346179(JP,A)
【文献】 特開2007−326999(JP,A)
【文献】 特開2012−255054(JP,A)
【文献】 特開2013−067753(JP,A)
【文献】 特開2013−076058(JP,A)
【文献】 特開2013−100476(JP,A)
【文献】 特開2009−132816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 69/02
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキパッドに使用され、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%であるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物が炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し〜10重量%含有することを特徴とする摩擦材。
【請求項2】
前記摩擦材組成物が金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を摩擦材組成物全量に対し1〜15重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。
【請求項3】
前記摩擦材組成物が無機摩擦調整材として、アルミニウム粒子,アルミニウム繊維,アルミニウムを主成分とする合金粒子,アルミニウムを主成分とする合金繊維から選ばれる1種または2種以上を摩擦材組成物全量に対し1〜10重量%含有することを特徴とする請求項2に記載の摩擦材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のディスクブレーキパッドに使用される、NAO(Non-Asbestos-Organic)材の摩擦材組成物を成型した摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の制動装置として、ディスクブレーキが使用されており、その摩擦部材として、金属製のベース部材に摩擦材が貼り付けられたディスクブレーキパッドが使用されている。
【0003】
摩擦材は、繊維基材としてスチール繊維を摩擦材組成物全量に対し30重量%以上60重量%未満含有するセミメタリック摩擦材と、繊維基材の一部にスチール繊維を含み、且つ、スチール繊維を摩擦材組成物全量に対し30重量%未満含有するロースチール摩擦材と、繊維基材としてスチール繊維およびステンレス繊維等のスチール系繊維を含まないNAO材に分類されている。
【0004】
ブレーキノイズの発生が少ない摩擦材が求められている近年においては、スチール繊維やスチール系繊維を含まず、かつ、結合材、繊維基材、潤滑材、チタン酸金属塩、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、pH調整材、充填材等から成る、NAO材の摩擦材を使用したディスクブレーキパッドが広く使用されるようになってきている。
【0005】
ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材には、要求される性能を確保するため、銅や銅合金の繊維又は粒子等の銅成分が必須成分として摩擦材組成物全量に対し、5〜20重量%程度添加されている。
【0006】
しかし、近年このような摩擦材は制動時に摩耗粉として銅を排出し、この排出された銅が河川、湖、海洋に流入することにより水域を汚染する可能性があることが示唆されている。
【0007】
このような背景から、アメリカのカリフォルニア州やワシントン州では、2021年以降、銅成分を5重量%以上含有する摩擦材を使用した摩擦部材の販売及び新車への組み付けを禁止し、その数年後に、銅成分を0.5重量%以上含有する摩擦材を使用した摩擦部材の販売及び新車への組み付けを禁止する法案が可決している。
【0008】
そして、今後このような規制は世界中に波及するものと予想されることから、NAO材の摩擦材に含まれる銅成分を削減することが急務となっており、NAO材の摩擦材に含まれる銅成分を削減することにより生じる様々な問題、特に高速高負荷制動時に発生する摩擦材端部のカケの抑制が課題となっている。
【0009】
特許文献1には、金属スズ又はスズ合金を摩擦材組成物全量に対し0.5〜50重量%と、銅を摩擦材組成物全量に対し0.001〜4.999重量%含有する摩擦材組成物を成型してなる摩擦材が記載されている。
【0010】
しかし、特許文献1に記載の摩擦材は銅成分の含有量について上記の法規を満足しているが、高速高負荷制動時に発生する摩擦材端部のカケの問題を解決するには至っていない。
【0011】
特許文献2には、繊維基材、摩擦調整材及び結合材を用いてなる非石綿系摩擦材において、部分黒鉛化コークスを0.5体積%〜2.5体積%配合したことを特徴とする非石綿系摩擦材が、特許文献3には、繊維基材と、結合剤と、充填材とからなる摩擦材であって、前記充填材として弾性黒鉛を含有し、かつ有機ダストを含有していないことを特徴とする摩擦材がそれぞれ記載されているが、いずれの特許文献においても銅成分を削減することにより生じる、高速高負荷制動時に発生する摩擦材端部のカケの問題については議論されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国公開特許2010/0331447号公報
【特許文献2】特開2007−326999号公報
【特許文献3】特開2009−155439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、高速高負荷制動時に発生する摩擦材端部のカケを抑制できる摩擦材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ディスクブレーキパッドに使用される摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して5重量%未満であるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を特定量含有する摩擦材組成物を使用することにより上記課題を解決でき、さらには、金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を特定量、無機摩擦調整材としてアルミニウム粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金粒子、アルミニウムを主成分とする合金繊維から選ばれる1種または2種以上を特定量添加することにより、弾性黒鉛化カーボン粒子を添加した際に生じる高速高負荷時のブレーキの効きの低下を抑制できることを知見し、本発明を完成した。
【0015】
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材であって、以下の技術を基礎とするものである。
【0016】
(1) ディスクブレーキパッドに使用され、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%であるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物が炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し〜10重量%含有することを特徴とする摩擦材。
【0017】
(2)前記摩擦材組成物が金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を摩擦材組成物全量に対し1〜15重量%含有することを特徴とする(1)の摩擦材。
【0018】
(3)前記摩擦材組成物が無機摩擦調整材として、アルミニウム粒子,アルミニウム繊維,アルミニウムを主成分とする合金粒子,アルミニウムを主成分とする合金繊維から選ばれる1種または2種以上を摩擦材組成物全量に対し1〜10重量%含有することを特徴とする(2)の摩擦材。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、高速高負荷制動時に発生する摩擦材端部のカケを抑制でき、さらには、高速高負荷時におけるブレーキ効きの要求性能を確保できる摩擦材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明においては、ディスクブレーキパッドに使用される、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して5重量%未満であるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し0.5〜10重量%含有する摩擦材組成物を使用する。
【0021】
弾性黒鉛化カーボン粒子は圧縮荷重を加えた後、荷重を除いたときの体積の復元率が大きいという特性を有するものであり、炭素質メソフェース又はコークスからなる炭素素材を膨張・発泡処理した後、X線回折の測定による黒鉛化度が80〜95%となるよう1900℃〜2700℃の温度で黒鉛化処理することにより製造されるものである。
【0022】
膨張・発泡処理の方法としては、炭素材料を硝酸もしくは硝酸と硫酸との混酸で処理した後、炭素素材をアルカリ水溶液中で溶解させ、次いで酸水溶液で析出させて得られたアクアメソフェースを約300℃で加熱処理する方法や、炭素素材を硝酸に接触させて急速に加熱する方法や、炭素素材を二酸化窒素ガスに接触させる方法等が挙げられる。
【0023】
弾性黒鉛化カーボン粒子を添加した摩擦材組成物を加熱加圧成型すると、弾性黒鉛化カーボン粒子に圧縮荷重が加えられた状態で、摩擦材組成物に結合材として含まれる熱硬化性樹脂が硬化して摩擦材の外殻が形成される。
その結果、摩擦材の内部には、弾性黒鉛化カーボン粒子が復元しようとする力が残留した状態が維持される。
【0024】
高速高負荷制動時における摩擦材の端部のカケは、高速高負荷制動により発生する摩擦熱により摩擦材自体が高温になり、摩擦材に含まれる有機物が分解して形成される気孔から微細な亀裂が生じ、その亀裂を起点にして発生すると推定される。
【0025】
弾性黒鉛化カーボン粒子を含む摩擦材は、復元しようとする弾性黒鉛化カーボン粒子が周囲の気孔を埋める作用を示し、カケの原因となる亀裂の発生を抑制しているものと考えられる。
【0026】
弾性黒鉛化カーボン粒子は炭素質系潤滑材であり、高い潤滑性を示すため、カケを抑制するために摩擦材組成物に対し多量に添加すると、高速高負荷時におけるブレーキの効きが低下するという問題が生じる。
【0027】
そこで本発明では、高速高負荷時におけるブレーキの効きの要求性能を確保するため、金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を摩擦材組成物全量に対し1〜15重量%、及び/又は、無機摩擦調整材として、アルミニウム粒子,アルミニウム繊維,アルミニウムを主成分とする合金粒子,アルミニウムを主成分とする合金繊維から選ばれる1種または2種以上を摩擦材組成物全量に対し1〜10重量%添加する。
【0028】
硫化第一鉄は通常の使用領域では潤滑材として作用するが、高速高負荷制動時にはブレーキの効きを向上させる摩擦調整材として作用する。
【0029】
また、アルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金も、高速高負荷制動時において凝着摩擦を発生させブレーキの効きを向上させる摩擦調整材として作用する。
【0030】
アルミニウムを主成分とする合金としては、アルミニウムを90重量%以上含有する、アルミニウム−亜鉛系合金,アルミニウム−銅系合金,アルミニウム−マンガン系合金,アルミニウム−ケイ素系合金,アルミニウム−マグネシウム系合金,アルミニウム−マグネシウム−ケイ素系合金,アルミニウム−亜鉛−マグネシウム系合金等を使用することができる。
【0031】
アルミニウム−銅系合金を使用する場合は、銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して5重量%未満となるようにする。
【0032】
なお、環境負荷低減の観点から摩擦材組成物には銅成分を含まないことがより好ましい。
【0033】
本発明の摩擦材は、上記の弾性黒鉛化カーボン粒子、硫化第一鉄、アルミニウム粒子、アルミニウムを主成分とする合金粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金繊維の他に、通常摩擦材に使用される結合材、繊維基材、チタン酸塩、潤滑材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、pH調整材、充填材等を含む摩擦材組成物から成る。
【0034】
結合材として、ストレートフェノール樹脂や、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂等の摩擦材に通常用いられる結合材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。結合材の含有量は摩擦材組成物全量に対して4〜12重量%とするのが好ましく、5〜8重量%とするのがより好ましい。
【0035】
繊維基材としては、アラミド繊維,セルロース繊維,ポリ-パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維,アクリル繊維等の摩擦材に通常使用される有機繊維が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。繊維基材の含有量は摩擦材組成物全量に対して1〜7重量%とするのが好ましく、2〜4重量%とするのがより好ましい。
【0036】
チタン酸塩としては、板状の形状や、複数の凸部を有する不定形の形状をしたものが好ましく、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸カリウムマグネシウム等の摩擦材に通常使用されるチタン酸塩が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。チタン酸塩の含有量は摩擦材組成物全量に対して7〜35重量%とするのが好ましく、17〜25重量%とするのがより好ましい。
【0037】
潤滑材としては、上記の弾性黒鉛化カーボン粒子、硫化第一鉄の他に、二硫化モリブデン,硫化亜鉛,硫化スズ,複合金属硫化物等の金属硫化物系潤滑材や、人造黒鉛,天然黒鉛,石油コークス,活性炭,酸化ポリアクリロニトリル繊維粉砕粉等の炭素質系潤滑材等の摩擦材に通常使用される潤滑材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。潤滑材の含有量は摩擦材組成物全量に対して2〜21重量%とするのが好ましく、4〜17重量%とするのがより好ましい。
【0038】
なお、弾性黒鉛化カーボン粒子としては、Superior Graphite CO.のRGC14A等を使用することができる。
【0039】
無機摩擦調整材としては、上記のアルミニウム粒子、アルミニウムを主成分とする合金粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金繊維の他に、タルク,マイカ,バーミキュライト,四三酸化鉄,ケイ酸カルシウム水和物,ガラスビーズ,酸化マグネシウム,酸化ジルコニウム,ケイ酸ジルコニウム,γ―アルミナ,α―アルミナ,炭化ケイ素等の粒子状無機摩擦調整材や、ウォラストナイト,セピオライト,バサルト繊維,ガラス繊維,生体溶解性人造鉱物繊維,ロックウール等の繊維状無機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。無機摩擦調整材の含有量は、上記のアルミニウム粒子、アルミニウムを主成分とする合金粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金繊維と合わせて摩擦材組成物全量に対して15〜50重量%とするのが好ましく、20〜45重量%とするのがより好ましい。
【0040】
有機摩擦調整材として、カシューダスト,タイヤトレッドゴムの粉砕粉や、ニトリルゴム,アクリルゴム,シリコーンゴム,ブチルゴム等の加硫ゴム粉末又は未加硫ゴム粉末等の摩擦材に通常使用される有機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機摩擦調整材の含有量は摩擦材組成物全量に対して3〜8重量%とするのが好ましく、4〜7重量%とするのがより好ましい。
【0041】
pH調整材として水酸化カルシウム等の通常摩擦材に使用されるpH調整材を使用することができる。pH調整材は、摩擦材組成物全量に対して2〜6重量%とするのが好ましく、2〜3重量%とするのがより好ましい。
【0042】
摩擦材組成物の残部としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の充填材を使用する。
【0043】
本発明のディスクブレーキに使用される摩擦材は、所定量配合した摩擦材組成物を、混合機を用いて均一に混合する混合工程、得られた摩擦材原料混合物と、別途、予め洗浄、表面処理し、接着材を塗布したバックプレートとを重ねて熱成形型に投入し、加熱加圧して成型する加熱加圧成型工程、得られた成型品を加熱して結合材の硬化反応を完了させる熱処理工程、粉体塗料を塗装する静電粉体塗装工程、塗料を焼き付ける塗装焼き付け工程、回転砥石により摩擦面を形成する研磨工程を経て製造される。なお、加熱加圧成型工程の後、塗装工程、塗料焼き付けを兼ねた熱処理工程、研磨工程の順で製造する場合もある。
【0044】
必要に応じて、加熱加圧成型工程の前に、摩擦材原料混合物を造粒する造粒工程、摩擦材原料混合物を混練する混練工程、摩擦材原料混合物又は造粒工程で得られた造粒物、混練工程で得られた混練物を予備成型型に投入し、予備成型物を成型する予備成型工程が実施され、加熱加圧成型工程の後にスコーチ工程が実施される。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0046】
参考例1〜3、実施例〜14・比較例1〜3の摩擦材の製造方法]
表1、表2に示す組成の摩擦材組成物をレディゲミキサーにて5分間混合し、成型金型内で30MPaにて10秒間加圧して予備成型をした。この予備成型物を、予め洗浄、表面処理、接着材を塗布した鋼鉄製のバックプレート上に重ね、熱成型型内で成型温度150℃、成型圧力40MPaの条件下で10分間成型した後、200℃で5時間熱処理(後硬化)を行い、研磨して摩擦面を形成し、乗用車用ディスクブレーキパッドを作製した(参考例1〜3、実施例〜14、比較例1〜3)。
【0047】
【表1】












【0048】
【表2】
【0049】
得られた摩擦材において、高速高負荷時のブレーキの効き、耐摩耗性を評価した。評価結果を表3、表4に、評価基準を表5に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
表3及び表4から、本発明の摩擦材は、銅成分の含有量が少なくても、特に、銅成分を含まない実施例2〜14においても、十分な評価結果が得られていることがうかがえる。実用上問題ない結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、高速高負荷制動時に発生する摩擦材端部のカケを抑制でき、更には、高速高負荷時におけるブレーキ効きの要求性能を確保でき、きわめて実用的価値の高いものである。