(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記の(A)、(B)及び(C)を含有してなり、(A)100重量部に対し、(B)が0〜20重量部であり、(C)が5〜200重量部であることを特徴とする硬化型樹脂組成物(但し、有機錫系金属触媒を含む硬化型樹脂組成物を除く):
(A)架橋性珪素基を有する硬化型樹脂、
(B)チタニウムキレート化合物、有機アルミニウム化合物、ビスマス化合物及びジルコニウム化合物から選ばれる非有機錫系金属触媒、及び
(C)炭酸カルシウムが、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸の各アンモニウム塩、各アミン塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種で表面処理された表面処理炭酸カルシウム填料。
架橋性珪素基を有する硬化型樹脂(A)が、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリル化ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の硬化型樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
炭酸カルシウムには、天然炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)及び合成炭酸カルシウム(軽質(膠質)炭酸カルシウム)がある。天然炭酸カルシウムは、石灰石原石から直接製造されるもので、例えば、石灰石原石を機械的に粉砕・分級することにより製造することができる。合成炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムから製造されるもので、例えば、水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば、酸化カルシウムと水と反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば、石灰石原石をコークス等で混焼することによって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
【0019】
本発明に用いられる表面処理炭酸カルシウム填料に用いられる炭酸カルシウムは、合成炭酸カルシウムであることが好ましく、微粒子や粗粒子が少なく粒子の均一性に優れている点で、コロイド炭酸カルシウムが好ましい。また、BET比表面積が8〜40m
2 /gであることが好ましい。BET比表面積が8m
2 /g未満であると、十分なチキソ性を付与することが困難になる場合がある。また、BET比表面積が40m
2 /gを超えると、表面を被覆するために必要な表面処理剤量が多くなり、硬化型樹脂組成物の強度が低くなる場合がある。BET比表面積のさらに好ましい値は8〜35m
2 /gである。
【0020】
一般的に合成炭酸カルシウムの表面処理(被覆)は、湿式処理で行われる。この際、一般的に用いられる表面処理剤としては、脂肪酸や脂肪酸の誘導体となるナトリウム塩、カリウム塩である。これらは、炭酸カルシウムスラリー中のカルシウムイオンと反応し、炭酸カルシウム表面が置換され、対イオンが2価の脂肪酸塩であるカルシウム塩となる。しかしながら、一部がナトリウム塩、カリウム塩、そして脂肪酸として残存することがある。架橋性珪素基を有する硬化樹脂組成物が錫系触媒を含有する系においては、貯蔵後のタックフリーや硬化速度の低下はほとんど見られないが、錫系触媒を使用しない硬化型樹脂組成物や錫以外の触媒を使用した硬化型樹脂組成物においては、表面処理炭酸カルシウム中に残存したナトリウム塩、カリウム塩、あるいは脂肪酸の存在によってタックフリーが遅くなったり硬化速度が遅くなる場合が多い。
本発明で使用される飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸の各アンモニウム塩、各アミン塩は、炭酸カルシウムスラリー中のカルシウムイオンと反応し、炭酸カルシウム表面で置換反応が活発に行われ、例えば、脂肪酸を使用した場合は、対イオンが2価の脂肪酸塩である脂肪酸カルシウム塩の割合が高まり、また一部は対イオンが1価の脂肪酸アンモニウム塩、またはアミン塩として残存しても触媒効果を助長する働きがあり、また脂肪酸として残存する割合が非常に少ないので貯蔵後の硬化遅延を引き起こすことが少ない。
【0021】
本発明で用いられる表面処理剤は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸の各アンモニウム塩、各アミン塩である。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0022】
飽和脂肪酸としては、炭素数6〜31の飽和脂肪酸が好ましく、より好ましくは炭素数8〜26であり、さらに好ましくは9〜21である。飽和脂肪酸の具体例としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられる。これらの中でも、パルミチン酸、ステアリン酸及びラウリン酸が特に好ましい。
【0023】
不飽和脂肪酸は、分子中に二重結合を持っている脂肪酸であり、例えば、飽和脂肪酸の脱水反応によって生体内で合成される。不飽和脂肪酸としては、炭素数6〜31の不飽和脂肪酸が好ましく、より好ましくは炭素数8〜26であり、さらに好ましくは9〜21である。不飽和脂肪酸の具体例としては、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、オレイン酸、エルカ酸及びリノール酸が特に好ましい。
また、これらが混合された、牛脂や豚脂などの動物原料由来の脂肪酸、パームやヤシなどの植物原料由来の脂肪酸なども好ましく用いられる。
【0024】
脂環族カルボン酸の具体例としては、シクロペンタン環やシクロヘキサン環の末端にカルボキシル基を持つナフテン酸や、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルピン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸などが挙げられる。
【0025】
樹脂酸の具体例としては、アビエチン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸などが挙げられ、これらの成分が混合されたガムロジン、トールロジンなど、一般に市販されている樹脂酸なども好ましく用いられる。また、不均化ロジン、水添ロジン、2量体ロジン、3量体ロジンに代表される変性ロジンなども挙げられる。
【0026】
上記飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸は、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
また、本発明で用いられる表面処理剤は上記飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸の各アンモニウム塩、各アミン塩であることが必須であるが、本発明に差し障りの無い範囲で、ナトリウム塩、カリウム塩といったアルカリ金属塩に代表される、アンモニウム塩、アミン塩以外の各種金属塩や、酸などを併用することも可能である。また、本発明に差し障りの無い範囲で、アルキルベンゼンスルホン酸に代表される、スルホン酸類の各種塩や酸を併用することも可能である。
【0027】
また、表面処理炭酸カルシウム填料の単位比表面積あたりの表面処理剤量は、1.0〜3.5mg/m
2 であることが好ましい。単位比表面積あたりの処理量が1.0mg/m
2 未満になると、未処理面が存在する恐れがあり、そのため貯蔵後の硬化遅延を引き起こす恐れがある。また、単位比表面積あたりの処理量が3.5mg/m
2 を超えると、表面処理剤が過多になり、十分な強度を得られなくなる場合がある。単位比表面積あたりの処理量のさらに好ましい範囲は、1.2〜3.0mg/m
2 である。
【0028】
単位比表面積当たりの表面処理剤量 [mg/m
2]は、Tg/BET比表面積で求められる。ここで、Tgは200℃〜500℃の表面処理炭酸カルシウム1g当たりの熱減量[mg/g]で、表面処理炭酸カルシウム填料20〜30mgを直径5mmの白金パンに秤量して測定装置(リガク製 Thermo plus EVO II TG 8120 )にセットし、大気雰囲気中で30℃/分の昇温速度で昇温し200〜500℃の減量値を測定する。
また、BET比表面積は、BET比表面積計(マウンテック株式会社製)にて測定する。
【0029】
本発明の硬化型樹脂組成物は、(A)架橋性珪素基を有する硬化型樹脂、(B)非有機錫系金属触媒、及び(C)上記表面処理炭酸カルシウム填料を含有してなる。
【0030】
(A)の架橋性珪素基を有する硬化型樹脂としては、末端にシラノール基または反応性シリル基等の架橋性珪素基を有する樹脂で、加水分解と縮合反応によってシロキサン結合を形成するシリコーン樹脂や変成シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、またはシリル化ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0031】
シリコーン樹脂としては、下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0033】
(但し、式中、Rは1価炭化水素基であり、nは25℃における粘度が10〜100万センチストークスとなる整数である。)
上記一般式(1)において、Rは置換又は非置換の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1〜10、より好ましくは1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基,プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、又はこれら基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した基、例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられ、特にメチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基が好ましい。なお、nは重合度に相当する数で、25℃における粘度が10〜100万センチストークス(cSt)であり、作業性の面から好ましくは500〜10万cStの範囲である。このような式(1)で示されるオルガノポリシロキサンとして具体的には、下記化合物を挙げることができる。
【0035】
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基であり、p及びqはそれぞれ正の整数であり、p+qは、nに相当する整数である。)
【0036】
次に、アセトキシ基、ケトオキシム基、アルケノキシ基、アミノキシ基およびアミノ基から選ばれる加水分解可能な基を1分子中に少なくとも2個以上有する有機珪素化合物又はその部分加水分解物は、上記オルガノポリシロキサンの架橋剤として作用するものであり、本発明の硬化型樹脂組成物が水分の存在下で室温硬化するための必須成分である。上記加水分解可能な基は、1分子中に3個以上有することが好ましい。また、この有機珪素化合物が珪素原子に結合し得る加水分解性基以外の有機基を有する場合は、前記したポリオルガノシロキサンにおけるRと同様の置換又は非置換の1価炭化水素基が好ましく、特に合成が容易であるという面から炭素原子数が1〜8のアルキル基、炭素原子数が2〜10のアルケニル基及びフェニル基が好ましい。
このような有機珪素化合物としては、具体的には、メチルトリスメチルエチルケトオキシモシラン、ビニルトリスメチルエチルケトオキシモシラン、メチルトリスアセトキシシラン、エチルトリスアセトキシシラン、ビニルトリスアセトキシシラン、メチルトリスメトトキシシラン、エチルトリスメトトキシシラン、ビチルトリスメトトキシシラン、アセトアミドシラン、アミノキシシロキサン、メチルトリスシクロヘキシルアミノシラン、メチルトリスイソプロペノキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジアセトキシメチルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、メチルトリ(ブタノキシム)シラン、ビニルトリ(ブタノキシム)シラン、フェニルトリ(ブタノキシム)シラン、プロピルトリ(ブタノキシム)シラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、トリイソプロペノキシシラン、テトラプロペノキシシラン、フェニルトリアルケノキシシラン、イソプロピルプロペノキシシラン、ブチルトリプロペノキシシラン、ビニルトリプロペノキシシラン等が例示される。なお、これら有機珪素化合物は、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよいが、安定的に製造するには同一の加水分解性基を有する有機珪素化合物を単独で又は2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0037】
上記架橋剤の有機珪素化合物又はその部分加水分解物の配合量は、オルガノポリシロキサン100部(重量部、以下同様)に対して1〜30部、特に3〜10部とすることが好ましい。配合量が1部未満では組成物の硬化が不十分になり、保存安定性が悪くなる場合があり、一方、30部を越えると得られる硬化物が硬く脆くなり、シール材等としての製品性能及びコストパフォーマンスが損なわれる場合がある。
【0038】
変成シリコーン樹脂としては、末端に珪素基である反応性シリル基を導入したシリル基末端ポリエーテルを主成分とし、これと水分との反応でシロキサン結合を形成して硬化するものであり、一般にも市販されているものを使用することができる。例えば、株式会社カネカ製のMSポリマーS−203,S−303、旭硝子株式会社製のエクセスターS−2410、S−2420、S−3430等が例示される。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。更に、必要に応じ、シリコーン樹脂と変成シリコーン樹脂とを組み合わせることも可能である。
【0039】
アクリルシリコーン樹脂としては、末端に珪素基である反応性シリル基を導入し、主鎖がアクリル系重合体を有し、これと水分との反応でシロキサン結合を形成して硬化するものであり、一般にも市販されているものを使用することができる。例えば、株式会社カネカ製のポリマーS−943等が例示される。これらは単独で又は必要に応じ変成シリコーン樹脂とを組み合わせることも可能である。
【0040】
シリル化ウレタン樹脂としては、末端に珪素基である反応性シリル基を導入し、主鎖がポリオキシプロピレングリコールとイソシアネートとのウレタン結合反応重合体を有するものである。
【0041】
本発明の硬化型樹脂組成物において、粘性、その他物性を調整するために、各種可塑剤、本発明で使用される表面処理炭酸カルシウム填料以外の充填剤、その他の添加剤などを、本発明の性能に差し支えない範囲で適宜配合しても勿論良い。
【0042】
本発明の硬化型樹脂組成物に使用される可塑剤としては、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソノデシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、テトラヒドロフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジ−n−アルキル、ジブチルジグリコールアジペート(BXA)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、マレイン酸ジブチル(DBM)、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOM)、フマル酸ジブチル(DBF)、リン酸トリクレシル(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)トリブチルホスフェート(TB20P)、トリス・(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリ(クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリスジクロロプロピルホスフェート(CRP)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、オクチルジフェニルホスフェート(CDP)、クエン酸アセチルトリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどがあり、その他にはトリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、ステアリン酸系可塑剤など、さらにジメチルポリシロキサン等のシリコ−ンオイル、最近ではポリオキシプロピレングリコール系、パラフィン系、ナフテン系、イソパラフィン系等の石油系高沸点溶剤などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0043】
本発明の硬化型樹脂組成物に使用される表面処理炭酸カルシウム填料以外の充填剤としては、無機系のものと有機系のものが挙げられる。無機系のものとしては、重質炭酸カルシウム、カルシウム・マグネシウム炭酸塩(天然品、合成品)、塩基性炭酸マグネシウム、石英粉、珪石粉、微粉珪酸(乾式品、湿式品、ゲル法品)、微粉末珪酸カルシウム、微粉珪酸アルミニウム、カオリンクレー、パイオフィライトクレー、タルク、セリサイト、雲母、ベントナイト、ネフェリンサイナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック(ファーネス、サーマル、アセチレン)、グラファイトなどが挙げられる。針状・繊維状では、セピオライト、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウム、カーボン繊維、ミネラル繊維、ガラス繊維などが挙げられる。バルーン・ビーズ状では、シラスバルーン、フライアッシュバールン、ガラスバルーン、シリカビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどが挙げられる。有機系のものとしては、アクリロニトリル系、塩化ビニリデン系等の樹脂バルーン、木粉、クルミ粉、コルク粉、小麦粉、澱粉、エボナイト粉末、ゴム粉末、リグニン、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられ、繊維状ではセルロース粉末、パルプ粉末、合成繊維粉末などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
ただし、本発明の硬化型樹脂組成物の効果を得るには、本発明の表面処理炭酸カルシウム填料を主として充填剤として用いることが前提であり、本発明の硬化型樹脂組成物の性能を低下させない範囲で上記充填剤もしくは一般的な脂肪酸、もしくは脂肪酸ナトリウムやカリウム等の金属塩で表面処理した炭酸カルシウムを併用することができる。
【0044】
本発明の硬化型樹脂組成物に使用されるその他の添加剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ブタン等の脂肪族炭化水素、ガソリン他の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、セロソルブアセテート等のエーテルエステル、などの各種溶剤や、アマイドワックス、カストル油ワックスなどのワックス、着色剤などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて用いられる。
【0045】
本発明に用いられる(B)の非有機錫系金属触媒としては、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムアクリルオキシド、チタニウムn―プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムエチルアセトセテート、チタニウムアセチルアセトネート等のチタニウムキレート化合物;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物;ビスマスートリス(ネオデカノエート)などのビスマス化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート等のジルコニウム化合物等である。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0046】
本発明の硬化型樹脂組成物における(B)の非有機錫系金属触媒の配合量は、(A)の架橋性珪素基を有する硬化型樹脂の種類や用途によって異なり一概には規定しにくいが、(A)の硬化型樹脂100部に対して0〜20部で、好ましくは0〜15部である。非有機錫系金属触媒が20部より多いと硬化速度が速くなり過ぎて貯蔵安定性の悪化や作業性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0047】
本発明における硬化触媒としては、有機錫系触媒を使用しないのが特徴であるため、以下に示す有機錫系触媒は含有してはならない。具体的には有機錫化合物として、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫アセテート、ジオクチル錫ステアレート、ジオクチル錫ラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ビスイソノニル・3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスアセチルアセトネート、ジブチル錫ビス(O−フェニルフェノキサイド)、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドなどが例示される。
【0048】
本発明の硬化型樹脂組成物は、接着性を高めるためにアミン化合物を含有することができる。このようなアミン化合物としては、アミノ基含有シラン化合物が好ましく、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アミン、N,N−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕アミン、N,N−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕アミン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0049】
本発明の硬化型樹脂組成物における(C)の表面処理炭酸カルシウム填料の配合量は、(A)の架橋性珪素基を有する硬化型樹脂の種類や用途によって異なるが、(A)の硬化型樹脂100部に対して通常5〜200部が適当で、好ましくは20〜180部、より好ましくは40〜150部程度である。(C)の表面処理炭酸カルシウム填料が5部より少ないと十分なチキソ性を付与することができなくなったり、樹脂組成物中のアンモニウム塩、アミン塩の割合が少なくなり過ぎて十分な触媒効果が得られず、硬化速度が遅くなったり、タックフリー延長に繋がる場合がある。また、200部より多いと粘度が高くなり過ぎ、作業性が悪くなったり、樹脂組成物中のアンモニウム塩、アミン塩の割合が多くなり過ぎて、硬化速度が速くなったり、貯蔵安定性が悪化する場合がある。
【実施例】
【0050】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約を受けるものではない。
【0051】
[表面処理炭酸カルシウム填料の作製]
実施例1
濃度160gCaCO
3 /L、温度を70℃に調整したBET比表面積20m
2 /gの沈降製炭酸カルシウムの水スラリー10Lに対して、温度90℃で濃度10重量%に調整したラウリン酸アンモニウム水溶液を800g添加して1時間撹拌し、表面処理を行った。その後、固形分60重量%まで脱水、乾燥、粉砕して、ラウリン酸アンモニウムで表面処理したBET比表面積19m
2 /gの炭酸カルシウム填料を得た。
【0052】
実施例2
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをラウリン酸トリエタノールアミンに変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0053】
実施例3
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをラウリン酸ジエタノールアミンに変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0054】
実施例4
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをステアリン酸アンモニウムに変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0055】
実施例5
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをオレイン酸アンモニウムに変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0056】
実施例6
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムを牛脂脂肪酸アンモニウム(脂肪酸のアルキル組成:C12 2%、C14 5%、C16 30%、C16F1 3%、C18 20%、C18F1 40%)に変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0057】
実施例7
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをナフテン酸アンモニウムに変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0058】
実施例8
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをアビエチン酸アンモニウムに変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0059】
実施例9
実施例1で、沈降製炭酸カルシウムのBET比表面積を15m
2 /g、濃度10重量%に調整したラウリン酸アンモニウム水溶液を600g、得られた炭酸カルシウム填料のBET比表面積を14m
2 /gに変更する以外は実施例1と同様とした。
【0060】
実施例10
実施例1で、沈降製炭酸カルシウムのBET比表面積を10m
2 /g、濃度10重量%に調整したラウリン酸アンモニウム水溶液を400g、得られた炭酸カルシウム填料のBET比表面積を9m
2 /gに変更する以外は実施例1と同様とした。
【0061】
実施例11
実施例1で、沈降製炭酸カルシウムのBET比表面積を35m
2 /g、濃度10重量%に調整したラウリン酸アンモニウム水溶液を1400g、得られた炭酸カルシウム填料のBET比表面積を33m
2 /gに変更する以外は実施例1と同様とした。
【0062】
実施例12
実施例1で、沈降製炭酸カルシウムのBET比表面積を40m
2 /g、濃度10重量%に調整したラウリン酸アンモニウム水溶液を1600g、得られた炭酸カルシウム填料のBET比表面積を37m
2 /gに変更する以外は実施例1と同様とした。
【0063】
比較例1
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをラウリン酸ナトリウムに変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0064】
比較例2
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをオレイン酸ナトリウムに変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0065】
比較例3
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをラウリン酸カリウムに変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0066】
比較例4
実施例1で、ラウリン酸アンモニウムをラウリン酸に変える以外は全て実施例1と同様とした。
【0067】
実施例1〜12、比較例1〜4の表面処理炭酸カルシウム填料の概要を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
[架橋性珪素基含有シリコーン系シーラントの作成]
実施例13〜33、比較例5〜12
表2に示す原材料を表2に示す配合割合で下記の混練方法で混練して、シリコーン系シーラントを作成し、その物性を下記の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
[混練方法]
5L万能混合撹拌機((株)ダルトン製)にシリコーン樹脂、シリコーンオイル(可塑剤)、メチルトリメトキシシラン(架橋剤)を投入し、あらかじめ105℃×2時間以上乾燥させた表面処理炭酸カルシウム填料とともに投入し、低速15分間予備撹拌を行った。その後、混合撹拌機内に付着した填料を掻き落とした後、ただちに真空雰囲気下で高速30分間混練を行った。その後、40℃まで冷却後に有機金属触媒を投入し真空雰囲気下で低速15分間混合した。これをアルミ箔ラミネートコーティングされたカートリッジ内に充填し、金属プランジャーで密栓し、架橋性珪素基を有する1成分形シリコーン系シーラントを作成した。
【0073】
[初期粘度・チキソ性の測定方法]
23℃で1日静置したシーラントをカートリッジガンにて100mlのPPカップへ詰め、BS型粘度計(VISCOMETER TV−20、トキメック製)を用いて(ローターNO.7)測定した。
1rpm粘度は3分後の値を、10rpmは1分後の値をそれぞれ粘度値とした。また、TI値は、1rpm粘度値を10rpm粘度値で割った値で表した。
[初期粘度・チキソ性の判定基準]
TI値(1rpm粘度/10rpm粘度)に応じて以下の基準にて判定を行った。
◎:5.5以上
○:5.0以上5.5未満
△:4.5以上5.0未満
×:4.5未満
【0074】
[貯蔵後粘度・チキソ性の測定方法及び判定基準]
カートリッジに充填したシーラントを50℃×7日間貯蔵後、23℃×3時間放冷した後、カートリッジガンにて100mlのPPカップへ詰め、BS型粘度計を用いて(ローターNO.7)測定した。貯蔵後粘度、チキソ測定条件及び判定基準は、初期粘度、チキソ測定条件及び判定基準に準拠して行った。
【0075】
[貯蔵安定性の測定方法]
貯蔵安定性は、下記の如く、初期と貯蔵後における各粘度値の変化率とTI値の変化率で示す。
1rpm粘度変化率:(貯蔵後の1rpm粘度値/初期の1rpm粘度値)×100(%)
10rpm粘度変化率:(貯蔵後の10rpm粘度値/初期の10rpm粘度値)×100(%)
TI値変化率:(貯蔵後のTI値/初期のTI値)×100(%)
[貯蔵安定性判定基準]
上式で求めた変化率に応じて以下の基準にて判定を行った。
◎:粘度変化率110%未満、TI値変化率95% 以上
○:粘度変化率110%以上120%未満、TI値変化率90% 以上95% 未満
△:粘度変化率120%以上150%未満、TI値変化率80% 以上90% 未満
×:粘度変化率150%以上、TI値変化率80% 未満
【0076】
[初期タックフリーの測定方法]
23℃湿度55%±5%で1日静置したカートリッジに充填したシーラントを、カートリッジガンにて約10mmの幅でガラス板(厚さ3mm縦100mm×横100mm)上に3本押し出した。
エチルアルコールで清浄にした指先で、押し出されたシーラント表面を軽く触れてみて、指先に付着しなかった時間を計測した。
タックフリーが30分以内の場合には1分単位、30分を超え1時間以内の場合には5分単位、1時間を超え3時間以内の場合には10分単位、3時間を超える場合には1時間単位で四捨五入によって丸めて表した。
【0077】
[貯蔵後タックフリーの測定方法]
カートリッジに充填したシーラントを50℃×7日貯蔵後、23℃湿度55%±5%で3時間以上静置させる。シーラントを、カートリッジガンにて約10mmの幅でガラス板(厚さ3mm縦100mm×横100mm)上に3本押し出した。
タックフリーの測定は、初期タックフリーの測定方法に準拠して行った。
【0078】
[貯蔵後タックフリーの変化率]
貯蔵後タックフリーの変化率(%):
(貯蔵後タックフリー(分)/初期タックフリー(分))×100(%)
【0079】
[貯蔵後タックフリーの判定基準]
上式で求めた変化率を以下の基準にて判定を行った。
◎:90%以上110%未満
○:80%以上90%未満、110%以上120%未満
△:50%以上80%未満、120%以上150%未満
×:50%未満、150%以上
【0080】
[接着性の試験方法]
日本建築学会発行「建築工事標準仕様書・同解説 JASS 8 防水工事」に準拠し、アルミニウム板(1mm ×100mm ×150mm )表面に、上記シーラントを充填(形状幅20mm×厚み3mm ×長さ100mm )し、35℃×14日養生し、23℃×1 日後に手剥離にて90度方向に引張って接着性を測定した。
[接着性の判定基準]
手剥離試験後の接着性を、アルミ接着面にシーラントが残った状態を凝集破壊(CF)であらわし、以下の基準にて判定した。
○:シーラントが100%残った状態で破壊(CF100%)
△:シーラントが50% 以上100%未満残った状態で破壊(CF50% 〜CF100%未満)
×:シーラントが50% 未満残った状態CF<50% 、もしくは剥がれた状態(AF)
【0081】
表2、表3から、実施例1〜12の表面処理炭酸カルシウム填料を配合した実施例13〜33の架橋性珪素基を持ったシリコーン系シーラントは、優れたチキソ性、貯蔵安定性を有し、有機錫系触媒を使用しなくても貯蔵後のタックフリーの遅延も大きく低下することなく、接着性も良好であることがわかる。また、本発明の表面処理炭酸カルシウム填料は触媒作用を有するので、有機金属触媒を配合しなくても優れたチキソ性、接着性、貯蔵安定性が得られる(実施例13)。
【0082】
[架橋性珪素基含有変成シリコーン系シーラントの作成]
実施例34〜55、比較例13〜20
表4に示す原材料を表4に示す配合割合で下記の混練方法で混練して、変成シリコーン系シーラントを作成し、その物性を下記の方法で測定評価した。評価結果を表5に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
[混練方法]
5L万能混合撹拌機((株)ダルトン製)に変成シリコーン樹脂、フタル酸ジイソノニル(可塑剤)を投入し、あらかじめ105℃×2時間以上乾燥させた表面処理炭酸カルシウム填料、重質炭酸カルシウムとともに投入し、低速15分間予備撹拌を行った。その後、混合撹拌機内に付着した填料を掻き落とした後、ただちに加熱真空雰囲気下で高速30分間混練を行った。その後、40℃以下まで冷却後にビニルシラン(脱水剤)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(接着付与剤)、有機金属触媒を投入し真空雰囲気下で低速15分間混合した。これをアルミ箔ラミネートコーティングされたカートリッジ内に充填、金属プランジャーで密栓し、架橋性珪素基を含有した1成分形変成シリコーンシーラントを作成した。
【0086】
[初期粘度・チキソ性の測定方法]
シリコーンシーラントの場合と同じである。
【0087】
[初期粘度・チキソ性の判定基準]
TI値(1rpm粘度/10rpm粘度)に応じて以下の基準にて判定を行った。
◎:6.0以上
○:5.5以上6.0未満
△:5.0以上5.5未満
×:5.0未満
【0088】
[貯蔵後粘度・チキソ性の測定方法及び判定基準]
シリコーンシーラントの場合と同じである。
【0089】
[貯蔵安定性の測定方法及び判定基準]
シリコーンシーラントの場合と同じである。
【0090】
[初期タックフリーの測定方法]
シリコーンシーラントの場合と同じである。
【0091】
[貯蔵後タックフリーの測定方法、変化率及び判定基準]
シリコーンシーラントの場合と同じである。
【0092】
[接着性の試験方法及び判定基準]
シリコーンシーラントの場合と同じである。
【0093】
表4、表5から、実施例1〜12の表面処理炭酸カルシウム填料を配合した実施例34〜55の架橋性珪素基を持った変成シリコーン系シーラントは、優れたチキソ性、貯蔵安定性を有し、有機錫系触媒を使用しなくても貯蔵後のタックフリーの遅延も大きく低下することなく、接着性も良好であることがわかる。また、本発明の表面処理炭酸カルシウム填料は触媒作用を有するので、有機金属触媒を配合しなくても優れたチキソ性、接着性、貯蔵安定性が得られる(実施例34)。