【実施例】
【0026】
以下の実施例および参考例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例および参考例によって限定されるものではない。
【0027】
(参考例1)ヒト由来ABCトランスポーター単一発現ベシクルにおける放射性診断薬の排出
放射性診断薬としてカーディオライト
(R)第一(富士フイルムRIファーマ株式会社)及びマイオビュー
(R)「注射用」(日本メジフィジックス)を用いた。それぞれの添付マニュアルに記載されている方法に従い、
99mTc注射液(370 MBq、2 mL)を用いて標識を行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)により、各診断薬の純度が95 %以上あることを確認した。
【0028】
ABCトランスポーター単一発現ベシクルおよびベシクル専用試薬キットはGenoMembrane 社から購入したものを用いた。一晩、ニトロセルロースフィルタ(MILLIPORE) をMops-Tris 緩衝液に浸した。6種類のABCトランスポーター単一発現ベシクル (P-gp、MRP1、MRP2、MRP3、MRP4およびBCRP) と、controlベシクルの各々について、0.05 mg/10 μLの溶液を調製し、1.5 mL チューブ (WATSON)に10 μL分注した。Control ベシクルとは、ABCトランスポーターを発現させていないベシクルである。
【0029】
各薬液をキットの添付マニュアルに従って調整した。阻害剤無負荷時の各ベシクルの1サンプル当たりの薬液の調整として、ATPとAMP溶液をそれぞれ20 μLチューブに注入し、約37 kBqの
99mTc標識放射性診断薬を更に10 μL加えた。更に、MRP系を発現するベシクルに用いる薬液には、グルタチオン溶液とMops-Tris緩衝液をそれぞれ0.5 μL 加え、MRP系以外を発現するベシクルに用いる薬液には、Mops-Tris 緩衝液を1 μL 注入し、1サンプル当たり加える薬液の全量を31 μLとした。阻害剤負荷時の薬液調整では、P-gp阻害剤としてverapamil hydrate (VER,Sigma) 、MRP阻害剤としてMK571 sodium salt (MK571,Cayman Chemical)を使用した。両阻害剤ともMops-Tris緩衝液で溶解し、1サンプル当たりに加える阻害剤の最終濃度がそれぞれ50 μMとなるように調整した後、阻害剤無負荷時の薬液調整においてMops-Tris 緩衝液を0.5 μLを注入した代わりに、この阻害剤の溶液を0.5 μL加えた。
【0030】
ベシクルを用いた実験にはフィルタ濾過法を使用した。チューブに分注したベシクル溶液にMops-Tris緩衝液を9 μL加え、37度で5分間のプレインキュベーションを行った。その後、ATPあるいはAMP溶液を加えた上記薬液を31 μL加え、撹拌した後、37度で5分間インキュベーションした。反応を停止するため、Mops-Tris緩衝液を1 mL加え、その反応液をフィルタに添加して、Mops-Tris緩衝液で2回洗浄した。そのフィルタを試験管に入れ、オートウェルカウンタ (AccuFLEX.7000,Aloka) で測定した。また、解析結果は各ベシクル内の蛋白量1 mgあたりに換算した集積薬剤の薬液量で表した。統計解析はStudent’s t-test により行い、有意差の判定はP < 0.05 またはP < 0.01 とした。
【0031】
99mTc-MIBIおよび
99mTc-TFのベシクルへの5分間のインキュベーション時の集積量を
図1A、Bに示す。ABCトランスポーターはATPの加水分解エネルギーを利用して薬物を輸送する。ATP存在下における
99mTc標識放射性診断薬のABCトランスポーター単一発現ベシクル内への集積量が、AMP存在下での集積量と比べて有意に増加した。つまりATP依存性が認められた場合に、そのベシクルに発現させたABCトランスポーターが
99mTc標識放射性診断薬の排出機序に関与していることを示している。非特異的集積や吸着は、ABCトランスポーターを発現させていないcontrolベシクルにおけるATP存在下とAMP存在下の集積量の差で評価した。Controlベシクルへの集積量は両放射性診断薬において有意差はなかったため、両放射性診断薬のベシクルへの集積には非特異的集積や吸着はないものと判断した。
99mTc-MIBIでは、P-gpおよびMRP1発現ベシクルにおいてATP依存性が認められた。一方、
99mTc-TFでは、P-gp、MRP1に加えて、MRP2およびMRP3においてATP依存性が確認された。
【0032】
各ベシクルに対してABCトランスポーター阻害剤負荷の検討を行った結果を、
図2A、Bに示す。
99mTc-MIBIでは、P-gp発現ベシクルにおいてP-gp阻害剤VERの負荷によりベシクル内への集積量が減少し、MRP1発現ベシクルにおいてMRP阻害剤MK571の負荷により、ベシクル内への集積量が減少した。
99mTc-TFでは、P-gp発現ベシクルにおいてP-gp阻害剤VERの負荷により、ベシクル内への集積量が減少し、MRP1、MRP2、MRP3発現ベシクルにおいてMRP阻害剤MK571の負荷により、ベシクル内への集積量が減少した。
【0033】
(参考例2) 各種ヒト由来癌細胞におけるABCトランスポーター発現量の解析
ヒト由来神経芽細胞腫培養細胞株SK-N-SH (Riken Cell Bank)、ヒト由来肺腺癌培養細胞株H441 (American Type Culture Collection,ATCC)、A549 (ATCC)、ヒト由来前立腺癌培養細胞株PC3 (ATCC) の4種の癌培養細胞株を使用した。SK-N-SHはFetal Bovine Serum (FBS,Gibco) 10 %を混合したMEM(Wako)、H441およびPC3はFBS10 %、sodium pyruvate (Sigma) 1 %を混合したRPMI-1640 Medium (Sigma)、A549はFBS 10%を混合したD-MEM High Glucose with L-Glutamine、Phenol Red、Pyruvate (DMEM,Wako) の培地を用いて培養した。
【0034】
上記4種類のヒト由来癌培養細胞の各々から、RNeasy mini kit (Qiagen) を用いて添付マニュアルの方法に従って、Total RNAを抽出した。抽出後、2100 バイオアナライザー (Agilent Technologies) およびAgilent RNA6000 ナノキット (Agilent Technologies) を用いてtotal RNAの品質評価を行った。品質を確認したtotalRNAを用いて、AffinityScript QPCR cDNA Synthesis Kit (Agilent Technologies) により、キットのマニュアルに従って、cDNAを合成した。cDNAの合成反応には、Mx3005P (Agilent Technologies) を使用した。
【0035】
ABCトランスポーターのP-gp (ABCB1遺伝子)、MRP1、2、3 (ABCC1、2、3遺伝子)について、RT-PCRにより発現を確認した。また、内部標準物質としてハウスキーピング遺伝子であるhypoxanthine phosphoribosyltransferase-1 (HPRT1)、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH) およびbeta-actin (ACTB) の3種類を用いた。RT-PCR反応および検出にはMx3005Pを使用した。使用した各遺伝子のプライマー配列およびその濃度を以下に示す。
P-gp(ABCB1遺伝子) Forward:ggttcgcaaccccaagat (配列番号1)
Reverse:ggtggtccgaccttttctg(配列番号2)
MRP1(ABCC1遺伝子) Forward:gaccatgaatgtgcagaagg(配列番号3)
Reverse:gcctcatccaacacaaggat(配列番号4)
MRP2(ABCC2遺伝子) Forward:ctgcggctctcattcagtct(配列番号5)
Reverse:gccaagttggatagggtcaa(配列番号6)
MRP3(ABCC3遺伝子) Forward:catcaatccacagctgctca(配列番号7)
Reverse:tcatggagcacaggaacatc(配列番号8)
HPRT1(HPRT1遺伝子) Forward:gcagacttcttcttggacatca(配列番号9)
Reverse:cctgcttggaaggctctatg(配列番号10)
GAPDH(GAPDH遺伝子) Forward:agccacatcgctcagacac(配列番号11)
Reverse:gcccaatacgaccaaatcc(配列番号12)
ACTB(ACTB遺伝子)Forward:ccaaccgcgagaagatga(配列番号13)
Reverse:ccagaggcgtacagggatag(配列番号14)
定量的PCRには、Brilliant III FastSYBR Green QPCR Master Mix (Agilent Technologies) を用いた。反応溶液の組成は、12.5 μLの2×Brilliant III Fast SYBR Green QPCR Master Mix、至適濃度のプライマー、テンプレート(1 チューブ当たり10 ng cDNA(RNA 換算)もしくは検量線用人工合成プラスミド、RNase-free 水である(最終容量25μL)。RT-PCR により得られた結果はMxPro QPCR Software Version 4.10 (Agilent Technology) を用いて解析を行った。
【0036】
各癌細胞のABCトランスポーターの発現量を表1に示す。
【表1】
P-gpはSK-N-SHにおいて高く発現しており、MRP1は全ての細胞において高く発現していた。MRP2はA549において、極めて高く発現しており、MRP3はA549、PC3の順に高く発現していた。
【0037】
(実施例1)ヒト由来癌細胞からの
99mTc標識放射性診断薬の排出に対するABCトランスポーター阻害剤の影響の確認
ABCトランスポーターが発現している癌培養細胞としてSK-N-SH、H441、A549およびPC3 の4種類のヒト由来癌培養細胞を用いて実験を行った。細胞培養用175 cm
2セルカルチャーフラスコ (Falcon) において、参考例2と同様の方法で、各細胞を培養した。SK-N-SHは12ウェル細胞培養用マルチウェルプレート(IWAKI) に1 ウェルあたり2×10
5 cells/mL、その他の3種類の細胞は1 ウェルあたり1×10
5 cells/mL になるように播種した。SK-N-SH は播種から約48 時間後に、その他の癌培養細胞は約24時間後に実験を行った。インキュベーション用緩衝液としてModified Hanks’ balanced salt solution (MHBS) (0.952 mM CaCl
2,5.36 mM KCl,0.441mM KH
2PO
4,0.812 mM MgSO
4,136.7 mM NaCl,0.385 mM Na
2HPO
4,25 mM D-glucose)を用いた。各培養液をインキュベーション用緩衝液であるMHBSで置換し、10 分間のプレインキュベーションを行った。阻害剤無負荷時の実験として、1 ウェルあたり、約37 kBqの
99mTc-MIBIまたは
99mTc-TFを投与後、5、10、30、60分間のインキュベーションを行った。阻害剤負荷時には、P-gp阻害剤のVERとMRP阻害剤のMK571を用いた。VERとMK571の最終濃度はそれぞれ50 μMとなるように
99mTc-MIBIまたは
99mTc-TF溶液とMHBSを用いて調整し、阻害剤無負荷時の実験と同様の時間でインキュベーションを行った。阻害剤の有無に関わらず、インキュベーション後に、
99mTc-MIBIまたは
99mTc-TF溶液を含んだMHBSを除去し、氷冷したMHBSで細胞が入ったウェルを2回洗浄した。0.1N NaOHで細胞を溶解させオートウェルカウンタで放射能を測定した。また解析結果は各癌細胞内の蛋白量1 mgあたりの集積薬剤物質量で表した。蛋白の定量は、PierceR BCA Protein Assay Kit (ThermoScientific) を用いて行った。吸光度は、Multiskan FC 吸光マイクロプレートリーダ (Thermo Scientific)により測定し、SkanIt
TM Software 2.5.1 (Thermo Scientific) で解析を行った。統計解析には、Student’s t-testを用いた。また、有意差の判定はP < 0.05 またはP < 0.01 とした。
【0038】
VERまたはMK571を用いて、P-gpおよびMRPをそれぞれ阻害することにより、癌細胞内への集積が増加した場合には、そのABCトランスポーターが放射性診断薬の癌細胞における排出機序に関与していることを示している。各癌細胞における両放射性診断薬投与後5分の集積量を
図3に示す。SK-N-SHにおいて両放射性診断薬の集積量は、controlに比べて、VER負荷時に有意に増加した。同様に、H441において両放射性診断薬の集積量は、controlに比べてMK571負荷時に有意に増加した。A549およびPC3において、
99mTc-TFの集積量は、controlに比べて、MK571負荷時に有意に増加した。
【0039】
SK-N-SHにおける両放射性診断薬の集積量の経時変化を
図4A,Bに示す。
99mTc-MIBIの集積量は、controlでは投与後30 分まで経時的に増加したが、その後若干減少傾向を示した。P-gp阻害剤VER負荷時の集積量は、経時的に増加傾向を示し、全てのインキュベーション時間においてVER負荷時には、controlに比べて集積量が有意に増加した。
99mTc-TFにおいては、controlでは経時的集積性を示し、VER負荷時にはcontrolに比べて集積量が有意に増加した。
99mTc-MIBIと
99mTc-TFの結果を比較すると、VER負荷時には、
99mTc-MIBIが
99mTc-TFに比べての集積量の増加が大きく、集積量の経時変化に両者の違いが見られた。また、投与後60 分におけるcontrolに対するVER負荷時の集積量は、
99mTc-MIBIで約10.2倍、
99mTc-TFで約1.7倍高くなった。
H441における両放射性診断薬の集積量の経時変化を
図4C,Dに示す。
99mTc-MIBIの集積量は、controlでは投与後30 分まで経時的に増加したが、その後若干減少傾向を示した。MK571負荷時には集積量が経時的に増加し、投与後10 分を除いてMK571負荷時はcontrolに比べて集積量が有意に増加した。
99mTc-TFの集積量は、controlでは投与後30 分まで経時的に増加したが、その後若干減少傾向を示した。また、すべてのインキュベーション時間でVER負荷時にはcontrolに比べて、集積量が有意に増加した。
99mTc-MIBIと
99mTc-TFの結果を比較すると、SK-N-SHと同様に、MK571負荷時は
99mTc-MIBIが
99mTc-TFに比べて集積量の増加が大きく、集積量の経時変化において両者の違いが見られた。また、投与後60 分におけるcontrolに対するMK571負荷時の集積量は、
99mTc-MIBIで約12.5 倍、
99mTc-TFで約8.6 倍高くなった。
【0040】
(参考例3)ヒト由来ABCトランスポーター単一発現ベシクルにおける放射性治療薬の排出
放射性治療薬として
131I-MIBG (富士フイルムRIファーマ株式会社) を用いた。本参考例3は、参考例1と同様にして行った。MRP 阻害剤としてMK571、およびprobenecid (PBC,Invitrogen) を使用した。なお両阻害剤ともMops-Tris 緩衝液で溶解し、1 サンプル当たりに加える阻害剤の最終濃度がそれぞれ50 μMと1 mMとなるように調整した後、阻害剤無負荷時の薬液調整においてMops-Tris 緩衝液を0.5 μL を注入した代わりに、阻害剤の溶液を0.5 μL 加えた。
【0041】
131I-MIBGのABCトランスポーター単一発現ベシクルへの5 分間のインキュベーション時の集積量を
図5に示す。本参考例の系では、ATP存在下における
131I-MIBGのベシクル内への集積量が、AMP存在下での集積量と比べて有意に増加した場合に、そのベシクルに発現させたABCトランスポーターが、
131I-MIBGの排出機序に関与していることを示唆する。Control ベシクルへの集積量は、ATP存在下とAMP存在下で有意差がなかったため、
131I-MIBGのベシクルへの集積には非特異的集積や吸着はないものと判断した。
131I-MIBGでは、MRP1およびMRP4発現ベシクルにおいて、ATP依存的な集積量の増加が確認された。
【0042】
MRP1とMRP4発現ベシクルに対して阻害剤負荷の検討を行った結果を、
図6に示す。MRP1およびMRP4発現ベシクルにおいて、阻害剤負荷によってベシクル内へのATP依存的な集積量が減少した。
【0043】
(参考例4) 各種ヒト癌由来細胞におけるABCトランスポーター発現量の解析
ヒト由来神経芽細胞腫培養細胞株SK-N-SH、ヒト由来肺腺癌培養細胞株H441、A549、ヒト由来前立腺癌培養細胞株PC3およびヒト由来結腸腺癌培養細胞株DLD-1 (大日本住友
製薬株式会社) の5種類の癌培養細胞株を使用し、参考例2で用いたプライマーに加えて以下のプライマーを使用した以外は、参考例2の手法と同様にして各ABCトランスポーターの発現を、RT-PCRを用いて行った。
MRP4(ABCC4遺伝子)Forward:ttattctcctaaacactgcagctc(配列番号15)
Reverse:tcctcctccatttacagtgaca(配列番号16)
BCRP(ABCG2遺伝子)Forward:cacagtcttcaaggagatcagcta(配列番号17)
Reverse:cccagtacgactgtgacaatg(配列番号18)
【0044】
各癌細胞のABCトランスポーターの発現量を表2に示す。
【表2】
P-gpはSK-N-SHで最も高く発現しており、MRP1は全ての細胞で総じて高く発現していた。MRP2はA549において極めて高く発現しており、MRP3はA549、PC3の順に高く発現していた。MRP4はDLD-1で最も高く発現しており、その他は中程度の発現であった。以上より、SK-N-SHではMRP1の発現が高く、DLD-1においてはMRP1およびMRP4の発現が高いことが分かった。
【0045】
(実施例2) ヒト由来癌細胞における
131I-MIBG 集積量に対するABCトランスポーター阻害剤による影響の確認
ABCトランスポーターが発現している癌細胞として、
131I-MIBGによる治療対象となるヒト神経芽細胞腫由来細胞株SK-N-SHと、MRP1とMRP4の高発現モデル細胞であるヒト由来結腸腺癌細胞株DLD-1の2種類のヒト由来癌細胞を用い、実施例1と同様の方法で、実験を行った。阻害剤無負荷時の実験として、各細胞を播種したプレートの1 ウェルあたりに、約37 kBqの
131I-MIBGを投与して、SK-N-SHにおいては1 分間から180 分間、DLD-1においては1 分間から5 分間のインキュベーションを行った。阻害剤負荷時の実験には、MRP阻害剤としてMK571およびPBCを用いた。MK571とPBCの最終濃度はそれぞれ50 μMと1 mMとなるように
131I-MIBG 溶液とMHBSを用いて調製し、阻害剤無負荷時の実験と同様の時間でインキュベーションを行った。解析は実施例1と同様の方法で行った。
【0046】
図7では、癌細胞内の蛋白量1 mg あたりに換算したヒト由来癌細胞における
131I-MIBGの集積量が示されている。投与後1、3、5分のSK-N-SHにおける
131I-MIBGの集積量は、DLD-1に比べて全体的に高かった 。MRP阻害剤を用いてMRP1とMRP4を阻害したことから、これらのトランスポーターが
131I-MIBGの癌細胞における排出機序に関与していることがわかった。SK-N-SHおよびDLD-1共にcontrolの
131I-MIBGの集積量に比べてMRP阻害剤であるMK571およびPBC負荷時の集積量が有意に増加した。更に、時間経過における集積の増加率もSK-N-SHがDLD-1よりも高い傾向を示した。
臨床で
131I-MIBGの治療対象となっているSK-N-SH における
131I-MIBGの滞留性を検討するため、長時間の阻害剤負荷による排出阻害実験を行った。投与後1分から180分までの
131I-MIBG集積量の経時変化を
図8に示した。controlおよび阻害剤負荷時の集積量は投与後120 分にピークに達した。また、controlとMK571負荷時の集積量を比較すると、ほとんどのインキュベーション時間において、MK571負荷時にはcontrolに比べて、集積量が有意に増加した 。さらにPBC負荷時の集積量は、投与後全ての時間でcontrolの集積量に比べて有意に増加した。また、MK571負荷時に比べPBC負荷時の集積量が高い傾向を示した。