(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474553
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】洗濯工場の床面清掃装置
(51)【国際特許分類】
B08B 5/00 20060101AFI20190218BHJP
A47L 7/04 20060101ALI20190218BHJP
D01H 11/00 20060101ALN20190218BHJP
【FI】
B08B5/00 A
A47L7/04 Z
!D01H11/00 E
!D01H11/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-122583(P2014-122583)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2016-2497(P2016-2497A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】517260700
【氏名又は名称】アイナックス稲本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】西蔵 克弘
【審査官】
石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭36−020238(JP,Y1)
【文献】
登録実用新案第3156128(JP,U)
【文献】
特開2000−096365(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3092878(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00−1/04
B08B 5/00−13/00
D01H 11/00
A47L 5/14
A47L 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃しようとする領域の一側から対向する他側へと当該領域の床面に沿って空気を吹き出す空気噴出ノズルと、前記他側に設けた吸気口とを備え、前記空気噴出ノズルは、少なくとも清掃動作の開始初期に前記領域内に設置されている機械フレームと床面との間に当該床面上のリントを舞い上げないで押し動かす強さで床面に沿って層状に流れる空気流を吹き出す、洗濯工場の床面清掃装置。
【請求項2】
前記吸気口が前記他側における前記領域の幅より狭い幅で開口しており、前記領域の側方から当該吸気口に向けて空気を吹き出す集塵ノズルないし補助ノズルを備えている、請求項1記載の洗濯工場の床面清掃装置。
【請求項3】
前記空気噴出ノズルの複数個を備え、当該複数個の空気噴出ノズルは、前記一側に当該空気噴出ノズルの空気吹き出し方向と直交する方向に往復移動する往復台に、その往復動ストロークより短い間隔で配置されている、請求項1又は2記載の洗濯工場の床面清掃装置。
【請求項4】
前記空気噴出ノズルに空気を供給する空気回路に電磁切換弁ないし電磁開閉弁及び流量調整弁を備え、これらの弁の開閉動作及び調整により、前記空気噴出ノズルが、清掃動作の開始初期に清掃領域の床面上のリントを舞い上げることのない空気流を噴出し、その後それより強い空気流に切り換わる、請求項1、2又は3記載の洗濯工場の床面清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯工場の床面に堆積したリントを自動的に除去する装置に関するもので、リントを空気と共に吸引して除去する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機及び乾燥機を通過した後のある程度水分を含んだ洗濯物は、アイロナーで最終的に乾燥されるが、この乾燥の際に、洗濯物に付着しているリント(繊維屑)が洗濯物から脱落し、機械の設置床面に堆積する。堆積したリントが周囲から吹き込む風などによって再浮上して機械や洗濯物に付着すると、機械性能や洗濯物の仕上がり品質の低下、機械の故障などの原因となり、リントの堆積が多くなると火災の危険も生じる。
【0003】
そのため、ロールアイロナーやその下流側の機械の設置床面は、定期的に掃除して堆積したリントを除去する必要があるが、大型のロールアイロナーは奥行き及び幅が5m近くあるため、周囲から機械内部の奥深くまで手作業で掃除することは困難である。また、エアガンなどでリントを吹き飛ばすと、舞い上がったリントが空気中に飛散して浮遊し、機械に再付着したり工場全体の環境を悪化させる危険があるなどの問題があり、機械の設置床面に堆積したリントの除去作業は手数のかかる煩雑な作業となっていた。
【0004】
なお、以下の記載において、床面に堆積したリントを落綿と言い、空気中に浮遊するリントを風綿と言う。
【0005】
ゴミや落綿を空気と共に吸い込んで除去する装置として、特許文献1、2で提案されているものがあり、風綿を空気と共に吸い込んで除去する装置として特許文献3で提案されているものがある。特許文献1で提案されている「ルームクリーニングシステム」は、室内の壁の下部又は床面に空気噴出ノズルを設けて空気が床面に沿って流れるように噴出させ、当該空気噴出ノズルと対峙する位置にある壁の下部や床に設けた空気吸入用孔で空気噴出ノズルから噴出した空気流を吸入することにより、床面上にあるごみを吸入孔に吸引するというものである。
【0006】
特許文献1には、空気噴出ノズルを横長細隙数個の横列とすることや壁全長に1個の横長細隙とすることが提案されており、また、空気噴射ノズルの細隙調整や旋回形とすることによる噴射方向の角度調整についての提案がある。更に、小馬力の送風機で大室を掃除する場合、蓄圧器を利用して間欠運転とすることもできるとしている。
【0007】
特許文献2で提案されている「織機に対する落綿収集清掃装置」は、落綿を織機の設置床面に設けたピットに収容して外部への飛散を防止し、蓄積した落綿を吸引ノズルで吸引除去する構造の落綿収集清掃装置において、先端を機台の中央下面に向けて空気を噴出する床面吹払いノズルと、機台の反対側のピットの端部に敷設した床面吸引ノズルとを設けるというものである。床面吹払いノズルは、織機上に載置された軌条に沿って走行する走行機構の吹出し管に連結されている。一方、吸引ノズルには機台側の全長に亘りフードを具えた開口が形成されている。
【0008】
また、特許文献2で提案されている「織機群に対する落綿収集清掃方法」は、工場内の織機を直列配置した群に分け、それぞれの群に清掃装置を設けるというものである。
【0009】
特許文献3には、風綿の除去装置であって、紡機機台に沿って架設されたレール上を走行可能な走行体と、走行体から吊下された吸引パイプ及び吹気パイプを備え、紡機機台に沿って走行しながら吹気パイプの途中に配設された吹気ノズルからエアーを吹き出すと共に、吸引パイプにより風綿を吸引除去する「紡機の移動清掃装置」が示されている。
【0010】
特許文献3に記載の移動清掃装置は、紡機の運転中は紡機機台に沿って往復移動を繰り返して清掃作業を自動的に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭58−183128号公報
【特許文献2】特開平9−31771号公報
【特許文献3】特開2000−96365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1〜3に提案されているような装置で、洗濯工場の機械設置床面の落綿の除去を行うことが考えられる。しかし、これらの特許文献記載の方法ないし装置では、清掃に多量の空気を必要とする。特に、清掃空気の吸引側は、吸引口が清掃する領域の幅全体に亘って開口しているので、吸引する空気量が多く、吸入ブロワの電力消費が大きい。
【0013】
更に問題となるのは、清掃時に落綿が舞い上がって風綿となる危険が大きいということである。例えば特許文献2に記載の発明では、機械の設置床面にピットを設けて機械との間に隙間を形成して当該ピットに落綿を集めるようにしているが、吹き出しノズルは床面より高い位置から機械の中央に向けて空気を噴射するようになっており、床面で反射した空気流によりピット内の落綿が風綿となって飛散する問題がある。
【0014】
特許文献1〜3に記載の発明では、清掃時に風綿を発生させる問題についての考慮がなされていない。織機や紡機では、糸が高速で運動しており、周囲の空気を攪拌しているので、多量の風綿が機械の周囲に飛散している。繊維工場では、風綿を除去すると共に工場内の空気を加湿するエアワッシャーを設けている。従って、そのような工場では、風綿の発生に対する考慮が無くても大きな問題にはならないと考えられる。
【0015】
これに対して洗濯工場では、乾燥した洗濯物からリントが脱落して床面上に落ちて落綿となるので、空気中に浮遊する風綿の量は織機工場や紡績工場に比べて遙かに少ない。洗濯工場の床面の清掃に特許文献1〜3に記載の方法ないし装置を使用すると、床面上の落綿が舞い上がって洗濯物に付着するので、却って洗濯物の品質を低下させる虞がある。
【0016】
この発明の課題は、洗濯工場の床面に堆積した落綿を空気中に飛散させないで除去することができる床面清掃装置を得ることであり、更に、少ない空気量で洗濯工場の床面の清掃を効率的に行うことが可能な装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
工場の床面に機械フレームが直接載置されている機械は、そのフレーム51に架台9(9、9a、9b)を取り付けてフレーム51と設置床面との間に隙間を作る。清掃しようとする領域(清掃領域)Aの一側に対向する他側に向けて略水平に空気を噴射する空気噴出ノズル(以下、「主ノズル」と言う。)1(1a、1b)を複数個配置し、前記他側に移動してきた落綿を吸い込む吸引口2(2a、2b)を設ける。清掃領域Aが機械の設置床面であるときは、主ノズル1からの空気は機械フレームと床面の間の隙間に向けて略水平に噴出する。
【0018】
主ノズル1から噴出する空気流は、落綿を舞い上げる虞のない弱い空気流とし、当該弱い空気流では落綿を前記他側まで搬送することができないときは、落綿がある程度移動したタイミングで強い空気流に切り換える。
【0019】
清掃領域Aの落綿は、床面より僅かに高い位置を水平に流れる弱い空気流により、舞い上がることなく互いに絡み合う状態になって押し動かされ、ロール状に集められて転がるように前記他側へと移動して行く。一旦絡み合ってロール状になると、空気流を強くしてもロールから離れて舞い上がることなく、その下流側の落綿を絡ませながら転がるように前記他側へと移送されるようになる。
【0020】
主ノズル1は、往復動する往復台11にその往復方向に複数個を等間隔に配置し、往復台11の往復動で清掃領域Aの幅全体に空気流が噴射されるようにする。主ノズル1から空気を噴出しながら往復動作を複数回繰り返して清掃を行うのが好ましい。
【0021】
主ノズル1と対向する吸引口2は、清掃領域Aの幅より狭い幅寸法とし、当該吸引口2側に落綿を吹き寄せる補助ノズル4や集塵ノズル3を設ける。これにより、少ない空気量で効率よく床面の清掃をすることができる。
【0022】
主ノズル1から吸引口2までの距離が長く、清掃領域の一側に設けた主ノズル1のみでは、確実にリントを吸引口2へ搬送するのが難しいときは、清掃床面の両側や中間位置に吸引口2に向かって空気を噴射する補助ノズル4や付勢ノズル5を設ける。補助ノズル4や付勢ノズル5は、所定の角度範囲で揺動動作をするように設けてやれば、少ない本数のノズルで、清掃領域の側方のリントを吸引口2へと吹き寄せることができる。
【0023】
床面の表面状態や処理する洗濯物の品種によって、床面上でのリントの移動状態に差が生じる。そこで、各ノズルに流量調整弁7(7a〜7f)を設け、個々に流量が調整できるようにするのが好ましい。
【0024】
ノズル1、3〜5の空気供給源を他の空気圧で作動する機器と共用するときは、清掃作業中に空気圧が低下して清掃性能に支障が生じたり、他の機器の動作に悪影響を及ぼすのを避けるために、エアータンク35に空気を貯め、このエアータンク35から噴射空気を各ノズルへ供給するようにするのが好ましい。更に、空気圧力が規定値以下に降下した場合は、清掃動作を中断し、圧力が復帰してから動作を継続するような運転制御装置を採用するのが好ましい。
【0025】
また、機械の使用状況や処理量の違いにより、発生するリントの量に差が生じるため、制御装置にタイマを設けて、清掃の間隔を自由に設定できるようにする。
【発明の効果】
【0026】
この発明により、洗濯工場の床面上に落下ないし堆積したリントを、再浮上させることなく、少ない空気量(噴出量及び吸引量)で除去することができる装置を提供できる。特に、乾燥した洗濯物からリントが落下するアイロナーの設置床面の清掃装置として、落綿を再浮上して機械や洗濯物に付着させる虞のない自動清掃装置を提供できるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
図1ないし3は、ロールアイロナーの設置床面をこの発明の床面清掃装置で清掃する例を示した図である。ロールアイロナーは、ホテルや病院で使用されるシーツや枕カバーなどのリネン製品の洗濯ラインに設けられる皺伸ばし機で、設置床面へのリントの堆積が最も大きい洗濯機械の一つである。
【0029】
図1は、ロールアイロナーの設置床面を上方から見た図で、図の下方が前側、すなわち洗濯物を挿入する側で、上方が後側、すなわち洗濯物の排出側である。図に想像線で示した51は、ロールアイロナーのフレームである。ロールアイロナーは、複数の加熱シリンダと搬送ベルトの間に洗濯物を通過させることによってアイロンがけを行う機械であり、複数のシリンダは、その両端をフレーム51で支持されて回転駆動されている。そのため、フレーム51は、加熱シリンダやその駆動機構を支持する側部51sが頑丈な構造になっている。
【0030】
従来、ロールアイロナーは、そのフレーム51の下面を工場の床面に直接載置して設置されていた。この発明の床面清掃装置を設けるときは、フレーム51の下に架台9を設けて、フレーム51の下面と設置床面との間に5〜10cmの間隙を設けた状態でロールアイロナーを設置する。図の例では、架台9a、9aと9b、9b間の領域の上方を洗濯物が通過するので、洗濯物から脱落したリントは殆どがこの領域に落下する。
【0031】
設置床面Aの前側には、ロールアイロナーにおける洗濯物の送り方向と直交する方向のレール12がフレームの枠桁52又は設置床面自体に固定して設けられ、空気シリンダ32によってレール12に沿って往復移動する細長いノズルユニット11が設けられている。ノズルユニット11には、設置床面Aの対向する他側、すなわち後側に向いた複数の主ノズル1(1a、1b)が設けられている。
【0032】
図の例では、それぞれに流量調整弁7a、7b(
図3)を取り付けた8個の主ノズル1を2個一組として、幅方向、すなわち
図1の左右方向に等間隔に4組設けている。各組の一方の主ノズル1aは、流量調整弁7aで流量を絞った低速(低圧)ノズルとし、他方1bは流量調整弁7bの開度を開いた高速(高圧)ノズルとしている。
【0033】
4個の低速ノズル1aは、1個の開閉弁6aで開閉される空気流路に連結されている。高速ノズル1bの内、中央の2個は、1個の開閉弁6bで開閉される空気流路に連結され、両端の2個は、他の1個の開閉弁6cで開閉される空気流路に連結されている(
図3参照)。
【0034】
設置床面Aの他側、すなわち後側には、フレームの枠桁53又は設置床面に直接固定して、幅方向に細長い吸引ボックス21が設けられている。吸引ボックス21は、隔壁22で両側21bと中央21aとに3分割されている。中央の吸引ボックス21aの中央には、前側を向いた吸引口2aが開口しており、両側の吸引ボックス21bのそれぞれには、それぞれの側の2つの架台9の間に補助吸引口2bが開口している。
【0035】
吸引ボックス21は、リントを捕捉するフィルタを内蔵したリントボックス23を経て排気ブロワ24の吸気口に連結されている。リントボックス23には3個の接続口が設けられ、中央の吸引ボックス21aは、2本のダクト25a、25aでリントボックス23に接続され、両側の吸引ボックス21b、21bは、まとめて1本のダクト25bでリントボックス23に連結されている。従って、中央の吸引口2aから多くの空気が吸入され、補助吸引口2bから吸入される空気の量は少ない。
【0036】
主ノズル1は、ノズルユニット11の往復移動に伴って内側の架台9a、9aの間の全幅に亘って空気を吹き出している。従って、その空気流によって搬送されるリントを吸い込むためには、内側の架台9b、9bの間の全幅に開口する吸引口を設けなければならない。しかし、そのようにすると吸気量が多くなり、排気ブロワ24の消費電力が増大する。
【0037】
そこでこの発明では、吸引口2aをその両側の架台9の間隔より狭い幅寸法で開口し、設置床面Aの両側部Asに落下したリントを中央に寄せると共に、主ノズル1からの空気流の拡散を抑制するように、中央の吸引口2a側に向いて空気を吹き出す補助ノズル4(4a、4b)と、吸引ボックス21の直前の位置でリントを中央の吸引口2aへと集める集塵ノズル3を設けている。補助ノズル4は、フレームの架台9で空気流が遮られる部分のリントを除去できるように、図に円弧矢印で示した揺動範囲を往復揺動するように設けている。
【0038】
図2は、補助ノズル4及び付勢ノズル5の揺動機構を示した平面図である。補助ノズル4は、床面と直交する方向の支点ピン41で揺動自在に支持されたシーソーレバー42の先端に装着されており、当該レバーの他方には、エアシリンダ33(33a、33b、33c)のロッド43が連結されている。補助ノズル4の空気の噴射方向は、床面に対して5度下向きで、揺動範囲は、約65〜75度としている。なお、33aは補助ノズル4aの揺動シリンダ、33bは補助ノズル4bの揺動シリンダ、33cは付勢ノズル5の揺動シリンダである。
【0039】
シリンダ本数の多いロールアイロナーは、設置床面積が大きく、前縁と後縁との間隔も長くなる。床面の前後間隔が大きいときは、その間隔の途中に減衰する空気流を加速するための付勢ノズル5を設けるのがよい。
図1の例では、設置床面の幅中央に後縁側を向いて揺動する1個の付勢ノズル5を設けているが、複数の付勢ノズルを幅方向に並べて設けてもよく、また、扇状に空気を噴射するノズルを設けてもよい。
【0040】
図3は、上述したノズル及びシリンダの空気回路を示した図である。ロールアイロナーは、その運転に必要なアクチュエータを駆動するための空気源を備えているので、その空気源31を利用して主ノズル1a、1b、補助ノズル4、集塵ノズル3及び付勢ノズル5からの空気の噴射及びシリンダ32、33の駆動を行っている。空気源31の空気は、ミストセパレータ34を経て空気タンク35に蓄えられ、この空気タンクから開閉弁6(6a〜6d)を介して主ノズル1、補助ノズル4、集塵ノズル3及び付勢ノズル5に空気が供給されている。補助ノズル4、集塵ノズル3及び付勢ノズル5は、1個の開閉弁6dで開閉される空気流路に連結されている。
【0041】
ノズル流量の設定の実施例としては、主ノズル1は、高速ノズルを300L〜500L/min(ANR)、低速ノズルを、100L〜300L/min(ANR)の範囲で調整し、左右の補助ノズル、中央の付勢ノズル及び集塵ノズルは、200〜400L/min(ANR)となるように調整する。
【0042】
ノズルユニット11の往復シリンダ32及び補助ノズルと付勢ノズルの揺動シリンダ33には、電磁切換弁36、37を介してミストセパレータ34を通過する前の空気が供給されている。電磁切換弁36、37及び電磁開閉弁6は、清掃装置の運転を制御する制御器からの指令によって切り換え及び開閉される。また、エアータンク35の圧力を検出する圧力スイッチ38が設けられて、空気タンク35内の圧力が規定値(例えば0.4ないし0.5MPa)以下に降下したときは、制御器が電磁切換弁36、37及び電磁開閉弁6の信号を遮断してこれらの弁を閉状態にすることで、空気圧が低下してロールアイロナーの運転に支障が生ずるのを防止している。
【0043】
床面清掃装置の運転間隔ないし運転タイミングは、設置床面の状態やリントの堆積速度に応じて制御器に設けられたタイマで自由に設定できるようになっている。
【0044】
床面清掃装置の運転が開始されると、開閉弁6が開いて低速ノズル1a、補助ノズル4、集塵ノズル3及び付勢ノズル5から空気が噴射されると共に、排気ブロワ24が運転されて、吸引口2a及び補助吸引口2bから空気が吸引される。同時に切換弁36、37が交互に切り換えられて、ノズルユニット11が往復動を開始し、補助ノズル4及び付勢ノズル5が揺動動作を開始する。
【0045】
ノズルユニット11の移動ストローク端には、リミットスイッチ14、14が設けられており、ノズルユニット11がその移動端でリミットスイッチを動作させることによって切換弁36が切り換えられる。
【0046】
リミットスイッチ14によって、ノズルユニット11の1回の移動又は1回の往復移動が検出されると、開閉弁6aが閉じ、開閉弁6bが開いて高速ノズル1bから空気が噴射される。この状態で複数回のノズルユニット11の往復移動を行い、その間補助ノズル4、集塵ノズル3及び付勢ノズル5並びに排気ブロワ24が運転を継続することで、1回の清掃動作が終了する。
【0047】
床面より少し高い位置で床面と平行に噴射された低速ノズル1aからの弱い空気流は、床面に沿って層状に流れ、床面から少し高い位置の流速が最大になり、それより下のリントの舞い上がりが防止される。弱い空気流によって押し動かされたリントは、互いに絡まってロール状になり、転がるように後側へと移動してゆく。
【0048】
このリントのロールが形成されると、その下流側の落綿に強い空気流が直接吹き付けられるのが遮られ、ロールを形成しているリントは、互いに絡まっているので、空気流を高速側に切り換えても、リントが舞い上がることなく、下流側の落綿を絡ませながら転がるように後側へと移動してゆく。
【0049】
そして、その間の補助ノズル4からの空気流によって、設置床面の両側のリントも中央へと吹き寄せられ、更に集塵ノズル3からの空気流によって、ロール状に絡まったリントが吸引口2へと寄せ集められて、吸引ボックス21a内へと吸い込まれる。設置床面の両側部Asに残ったリントは、揺動する補助ノズル4の空気流によって補助吸引口2bへと導かれて、吸引ボックス21b内へと吸い込まれる。
【0050】
このような作用により、設置床面A上のリントは、少ない空気量で飛散することなく除去されるのである。
【0051】
以上はこの発明をロールアイロナーの設置床面の清掃に用いた例であり、この発明の利点が最も良く発揮される例であるが、洗濯工場に設置される他の機械や洗濯ラインの設置床面の清掃用にも用いることが可能である。
図4は、リネン製品の洗濯ラインの一部に、この発明の床面清掃装置を設置した例を示す模式図である。
【0052】
図4において、61はロールアイロナー、62は洗濯物を折り畳むフォルダ、63は図示しない乾燥機から送られて来た洗濯物を展開してロールアイロナー61に投入する投入機、64はロールアイロナー61からフォルダ62へ洗濯物を搬送するコンベア(検査装置内蔵)、65は折り畳まれた洗濯物を客先別や種類別に仕分けする仕分け台である。
【0053】
ロールアイロナー61、フォルダ62、投入機63及びコンベア64は、架台9を設けてそれらのフレームと設置床面との間に間隙を形成している。仕分け台65のフレームは、比較的細い脚で支持されており、設置床面との間に大きな間隙を備えている。
【0054】
図4において、洗濯物からのリントの脱落が生ずる投入機63以降の洗濯ラインの両側にレール12、15が配置され、その一方にノズルユニット11が、他方に吸引ボックス21がそれぞれのレール12、15に沿って移動可能に配置されている。ノズルユニット11には、
図1と同様に複数の低速のノズルと高速ノズルとが吸引ボックス21側に向けて設けられている。従って
図4の例では、ロールアイロナー61の設置床面を流れる空気流は、洗濯物の送り方向と直交する方向である。
【0055】
ノズルユニット11及び吸引ボックス21は、レール12、15に沿って設けたチェン16、17に連結されて移動するようになっており、レール12に沿って設けたリミットスイッチ14a〜14jやチェン16、17の駆動系に設けたエンコーダなどによって移動位置が検出されるようになっている。
【0056】
図の例では、投入機63の設置床面を清掃するときは、ノズルユニット11はリミットスイッチ14aと14bの間で往復移動し、吸引ボックス21は、リミットスイッチ14fと14gとの間で停止する。ロールアイロナー61の設置床面を清掃するときは、ノズルユニット11はリミットスイッチ14bと14cの間で往復移動し、吸引ボックス21は、リミットスイッチ14gと14hとの間で停止する。同様に、コンベア64の設置床面を清掃するときは、ノズルユニット11は、リミットスイッチ14cと14dの間で往復移動し、吸引ボックス21は、リミットスイッチ14hと14iの間で停止する。また、フォルダ62の設置床面を清掃するときは、ノズルユニット11はリミットスイッチ14dと14eの間で往復移動し、吸引ボックス21は、リミットスイッチ14iと14jの間で停止する。
【0057】
ノズルユニット11は、
図1で説明したと同様な構造であるが、チェン16で往復動させることができるので、往復動シリンダ32は不要である。複数設けた高速ノズル及び低速ノズルのそれぞれに電磁開閉弁を設けて、それぞれのノズルが架台9の直前を通過するときに空気の吹き出しを停止するようにすれば、空気流が架台9に衝突することによって生ずる気流の乱れを防止することができる。
【0058】
吸引ボックス21は、設置されている架台9の配置に合わせて吸引口2の位置を決定する。補助ノズル4や集塵ノズル3は、必要に応じて適宜設けてやればよく、隣接する清掃領域の境界部分に設けた補助ノズル4や集塵ノズル3は、90度ないし180度回動する回動台に設置することにより、両側の清掃領域で共通に利用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1(1a、1b) 主ノズル
2(2a、2b) 吸引口
3 集塵ノズル
4 補助ノズル
5 付勢ノズル
7(7a〜7f) 流量調整弁
6(6a〜6d) 電磁開閉弁
9(9、9a、9b) 架台
11 往復台(ノズルユニット)
35 エアータンク
51 機械フレーム
A 清掃領域