【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は独立請求項の主題によって達成される。さらなる例示的な実施例は、従属請求項および以下の記載から明らかである。
【0007】
この発明のある局面は、高出力半導体モジュール、たとえばモジュール式マルチレベルコンバータの半導体モジュールに関する。高出力という語は、高出力半導体モジュールが10Aより上の電流および/または1000Vより上の電圧の処理に対して適合されてもよいことを意味してもよいことが理解されなければならない。
【0008】
この発明の実施例によれば、高出力半導体モジュールは高出力半導体装置を含み、それは、モジュールに搭載され、少なくとも2つの電気的接続を含む。高出力半導体モジュールはさらに短絡装置を含み、それも、モジュールに搭載され、トリガ信号を受信すると2つの電気的接続の間に持続的な電気的導通経路を形成するように適合される。持続的な電気的導通経路は、高出力半導体モジュールの半導体を電気的に破壊することによって形成される。
【0009】
言いかえれば、高出力半導体モジュールは、たとえば機能不良、遮断、もしくは制御不可能な半導体接合、またはモジュールの電気部品もしくは電子部品における任意の他の故障などの、半導体モジュールのいかなる故障時においても、電気信号を用いてモジュールの半導体を破壊することによって、制御された態様で電気的にバイパスされてもよい。それによって、アノードおよびカソードであり得る高出力半導体装置の2つの電気的接続は、モジュール全体を安全に放電するために、および/またはモジュールを休止させるために、電気的に接続されしたがって短絡され得る。
【0010】
この発明の要旨は、高出力半導体モジュールにおける電子的自破壊チャネルの統合において理解され、それは、モジュール式マルチレベルコンバータシステムにおいて、および/または直列冗長性を伴う高出力半導体システムにおいて用いられ得る。
【0011】
高出力半導体モジュールはたとえばコンバータモジュールであってもよい。一般に、コンバータは、第1の交流電流または直流電流を、電圧および/または周波数において第1の電流とは異なる第2の交流電流または直流電流に変換するように適合される電気的装置であり得る。
【0012】
高出力半導体モジュールの規定された電気的なバイパスに加えて、たとえば、高出力半導体装置を短絡させる磁気スイッチまたは点火スイッチのような機械的なバイパスを、安全性をさらに高めるためにモジュールにさらに搭載してもよい。
【0013】
この発明の実施例によれば、持続的な電気的導通経路は、高出力半導体装置の高出力半導体の少なくとも一部の破壊によって形成され、および/または、持続的な電気的導通経路は、短絡装置の短絡半導体の少なくとも一部の破壊によって形成される。
【0014】
対応して、たとえば遮断または制御不可能な半導体接合のような半導体モジュールの故障で、半導体モジュールの高出力半導体の少なくとも一部および/または短絡半導体の少なくとも一部の局所的な破壊を、たとえば対応する半導体のその部分を局所的に加熱し溶融することによって、永久的な電気的導通経路を形成するのに十分に強力であり得る電気信号が供給されてもよい。
【0015】
この発明の実施例によれば、短絡装置は短絡半導体としてサイリスタを含んでもよく、および/または高出力半導体装置は高出力半導体として半導体スイッチを含んでもよく、それは、たとえばサイリスタ、トランジスタ、GTO、IGCT、IGBT、および/またはダイオードのように、電流を切換えるように適合され得る。
【0016】
短絡装置および高出力半導体装置の両方は複数のさまざまな異なる半導体を含んでもよく、つまり異なるタイプの半導体のアセンブリが高出力半導体モジュールに集積されてもよい。
【0017】
この発明の実施例によれば、短絡装置は、犠牲領域を与える短絡半導体を含み、犠牲領域は、トリガ信号によってトリガされる電流パルスによって破壊されるように構成される。
【0018】
これは、短絡装置の或る領域が、高出力半導体装置をバイパスするために電流フィラメントを通る局所的な破壊によって犠牲にされてもよいことを意味し得る。それによって、トリガ信号は、電気信号またはたとえば光ファイバ通信によって与えられる光信号のような任意の他の信号であってもよい。電気的なトリガ信号は、それが電流パルスを与えて、犠牲領域を局所的に破壊するのに十分に強力ではない場合には増幅されてもよく、一方、任意の他の信号は、電流パルスに直接変換されてもよく、または電気信号に変換され、必要な場合には、増幅もされてよい。電流パルスを与えるために、および/または電気信号の増幅のために、電流源コンバータ、インダクタ、キャパシタまたは外部の電流源が、電源として機能してもよい。
【0019】
それとは別に、半導体を破壊する実際の電流パルスは、さらに、高出力半導体装置それ自体によって与えられてもよい。より正確には、電気的なトリガ信号がモジュールの故障で与えられてもよい。このトリガ信号は、短絡装置をオンにするよう、つまりたとえば短絡装置のサイリスタを切換えるように働いてもよく、電気的導通経路が高出力半導体装置の2つの電気的接続間に形成され得る。次いで、高出力半導体は電気エネルギを解放して、それは、たとえば、単一または複数のキャパシタに保存されて、短絡装置の半導体の少なくとも一部を破壊するように十分に高い電流パルスを与えてもよい。
【0020】
短絡装置の半導体をオンにすることに対しては、必要とされるエネルギはかなり小さくてもよい。他方、半導体の破壊については、供給されるエネルギは、たとえば典型的なGCTまたはサイリスタのセグメントのような半導体を局所的に溶融するために、約30mJであり得る。しかしながら、たとえばGCTセグメントに対するターンオフチャネルキャパシタのような、高出力半導体装置において適用される典型的なキャパシタは、約20Vに帯電される場合には、そのエネルギ量の何倍もの倍数を含み、通常は、高出力半導体装置のゲートユニットには何十ものそのようなキャパシタがある。したがって、短絡装置の半導体をオンにすることおよびモジュールの半導体(つまり短絡装置または高出力半導体装置の半導体)の破壊の両方の戦略のために必要とされるエネルギは、容易に提供されるだろう。
【0021】
この発明の実施例によれば、高出力半導体装置は高出力半導体を含み、短絡装置は短絡半導体を含み、高出力半導体および短絡半導体は共通基板に配置される。
【0022】
共通基板における高出力半導体および短絡半導体の両方の集積は、かなりコンパクトな高出力半導体モジュールを製造することを可能にし、モジュールの多くの構成要素を低減することを支援するだろう。これは、次いで、モジュールの製造のためのコストを低減し、構成要素の整備を単純化するであろう。それとは別に、共通基板における集積は、電気的導通経路が確実に形成されることを保証し、なぜならば、この経路は共通基板において直接形成されてもよく、たとえば磁気スイッチまたは点火スイッチのような外部の部品は必要とされなくてもよいからである。
【0023】
高出力半導体モジュールは、さらに、それぞれ、共通基板の複数のセルを含み、セルの各々は高出力半導体および短絡半導体ならびに少なくとも2つの電気的接続を含み得る。したがって、高出力半導体装置はさらに複数の高出力半導体を含んでもよく、短絡装置はさらに複数の短絡半導体を含んでもよい。モジュールのいかなる故障ででも、2つの電気的接続の間の持続的な電気的導通経路が、トリガ信号の受信の際に、それぞれ、各セルにおいて、または複数のセルにおいて形成され得る。各セル内における電気的導通経路が、前のセクションおよび後のセクションにおいて記載されるように、モジュール全体を休止させるために形成されてもよい。
【0024】
この発明の実施例によれば、短絡半導体は、高出力半導体によって完全に取り囲まれる。
【0025】
そのような構成は、高出力半導体モジュールの製造を単純化し、および製造費用を低減し、ならびにモジュールの多くの異常を起こしやすい構成要素の低減によって信頼性のある態様で高出力半導体の2つの電気的接続の間に電気的導通経路を形成することを可能するであろう。
【0026】
この発明の実施例によれば、極片が高出力半導体の側部に取付けられ、極片は、たとえば短絡半導体にトリガ信号を伝送するためのばねにより付勢された接続ピン用の絶縁された取付部を伴う穴を含み、および/または極片は、絶縁された制御リードが極片に取付けられたトレンチを含み、制御リードは、ばねにより付勢された接続ピンに接続され得る。
【0027】
制御リードは、必ずしもばねにより付勢された接続ピンによって短絡半導体装置と接触させられる必要はなく、任意の他の好適な態様において、たとえばはんだ接触または差込み式の接続で接触させられてもよい。
【0028】
極片は、たとえば、銅もしくは任意の他の好適な導電材料を含んでもよく、またはそれから形成されてもよい。接続ピンのための絶縁された取付部は、たとえば、極片の穴においてろう付けされ、したがって絶縁のために極片と接しているセラミックのブッシングの第1の領域と、接続ピンを制御リードと接触させるための第2の領域とを含む。第2の領域は、たとえば、第1の領域においてろう付けされるとともに第1の領域によって絶縁された銅のブッシングであってもよい。
【0029】
制御リードのためのトレンチは、たとえばプラスチック、セラミック、または任意の他の絶縁材料でライニングされた、極片における単なるチャネルであってもよい。
【0030】
この発明の実施例によれば、高出力半導体装置は、共通基板において配置された還流ダイオードを含む。
【0031】
一般的に、還流ダイオードは、さらに、フライバックダイオード、抑制器ダイオードまたはキャッチダイオードとして公知であってもよく、電源が急に低減されるか除去された場合に回路において誘導負荷にわたって生じる電圧の突然のスパイクであるフライバックを除去するために用いられ得る。したがって、共通基板に還流ダイオードを配置することによって、たとえば障害のある遮断半導体接合または電源に接続された回路の一部の絶縁破壊の結果としての電圧スパイクが回避され得る。
【0032】
この発明の他の実施例によれば、高出力半導体装置および短絡半導体装置は、共通基板の円板に配置される。それによって、円板は、短絡半導体を含む中央領域と、中央領域を取り囲むとともに、還流ダイオードを含む第1の環状領域と、第1の環状領域を取り囲むとともに、高出力半導体を含む第2の環状領域とを含み得る。
【0033】
共通基板内における、短絡半導体、還流ダイオードおよび高出力半導体の配置は、コンパクトな高出力半導体モジュールの製造を低コストで容易にするであろう。さらに、個々の構成要素の数を低減することによって、異常が生じやすい構成要素の数が低減され、それは次いで、モジュールの信頼性を増大するであろう。
【0034】
高出力半導体モジュールはさらに複数のセルを含み、それらは、さらに、円板形状であってもよく、セルの各々は、高出力半導体、短絡半導体および還流ダイオードを含み得る。セルの各々は、それぞれ、2つの電気的接続によって電気的に接続され得る。したがって、高出力半導体装置は複数の高出力半導体を含み、短絡装置は複数の短絡半導体を含み得る。高出力半導体モジュールのそのようなレイアウトは、特にIGBT上に基づくモジュールに適用され得る。そのようなモジュールにおいては、通常は、複数のIGBTセルがモジュール上に搭載され、並列に接続される。モジュールのいかなる故障ででも、2つの電気的接続の間の持続的な電気的導通経路が、トリガ信号の受信で、それぞれ、各IGBTセルにおいて、または複数のIGBTセルにおいて、形成されてもよい。各IGBTセル内における電気的導通経路は、モジュール全体を休止させるために、前のおよび後のセクションにおいて記載されるように、形成されてもよい。
【0035】
この発明のさらに他の実施例によれば、短絡装置は、電気的導通経路が形成されるように半導体の少なくとも一部を破壊するための、および/または短絡装置をトリガするための、つまりたとえば短絡装置の短絡半導体を切換えるための、電気エネルギを与えるためのキャパシタを含む。
【0036】
短絡装置に個々および別々のキャパシタを備えることによって、モジュールの部品が障害を有するか、または任意の理由、たとえば壊れた回路のために休止状態にあっても、短絡半導体を切換えるための、および/またはモジュールの半導体を局所的に破壊するための電源が保証され得る。
【0037】
この発明の他の実施例によれば、短絡装置のキャパシタは、高出力半導体装置のキャパシタが放電すると、短絡装置のキャパシタの放電を防ぐために、ダイオードを介して高出力半導体装置のキャパシタに接続される。
【0038】
一旦モジュールが動作に入れば、短絡装置のキャパシタは高出力半導体装置によって充電され得る。万一モジュールの任意の故障が動作中に生じる場合、持続的な電気的導通経路が形成される前に短絡装置のキャパシタは放電しないことが保証され得る。たとえば、高出力半導体装置の主なゲートユニットが短絡した場合、短絡装置のキャパシタは、ダイオードを介して短絡装置から高出力半導体への電流の任意の逆流を防ぐことによって電気的導通経路を形成するための電気エネルギを依然として与えることができる。これは、短絡装置の適切な機能およびモジュールの安全な動作を確実にするであろう。
【0039】
それとは別に、ダイオードは、最終的な短絡による電力の逆流を回避しながら、短絡装置を高出力半導体装置から電気的に分離するように機能し得る。これは次いで短絡装置および高出力半導体装置をたとえばモジュールの共通のプリント基板上に搭載することを可能にする。
【0040】
この発明の他の実施例によれば、短絡装置は、光ファイバ接続と、光ファイバ接続からのトリガ信号を電気的なトリガ信号に変換するための制御回路とを含む。
【0041】
この発明のさらに他の実施例によれば、高出力半導体装置は、光ファイバ接続と、光ファイバ接続からの制御信号を処理するための制御回路とを含む。
【0042】
モジュールの付近では、かなり強い、静電界、磁界、および/または電磁界が、モジュールにおいて流れるかなり強い電流のために存在するかもしれない。したがって、短絡装置および高出力半導体装置の両方または一方を光ファイバ接続によって接触させることは、破壊または電気的干渉がそれぞれの接続において生じないことを保証し得る。
【0043】
短絡装置および高出力半導体装置の両方の制御回路は、たとえば、信号を受信するための受信機、光信号を電気信号に、および電気信号を光信号に変換するためのコンバータ、光信号および/もしくは電気信号を増幅するための増幅器、光信号および/もしくは電気信号を送信するための送信機、ならびに/または光信号および/もしくは電気信号を処理するための処理ユニットを含んでもよい。
【0044】
短絡装置および高出力半導体装置の両方は、たとえば、たとえ光ファイバ接続が途絶さされたとしても、モジュール全体の適切な通信および機能を保証するために、複数の冗長な光ファイバ接続および制御回路を含んでもよい。それとは別に、接続および回路における冗長性が、誤った信号を登録するためのツールを与えてもよい。たとえば、同一のはずであろう2つの信号が、互いとは強く異なる場合、これは異常を示し得る。
【0045】
この発明のさらなる局面はモジュール式マルチレベルコンバータシステムに関し、それは、先に、および後のセクションに記載されるような、複数の高出力半導体モジュールを含む。モジュール式マルチレベルコンバータシステムは、さらに、高出力半導体モジュールの高出力半導体装置を制御するためのコントローラを含み、コントローラは、高出力半導体モジュールの故障を検出するように、およびトリガ信号を短絡装置に与えて、故障した高出力半導体装置をバイパスするように、適合される。
【0046】
多くの高出力半導体モジュールの増大によって、電圧における増大、およびある程度の冗長性が達成され得る。
【0047】
モジュール式マルチレベルコンバータシステムのコントローラは、モジュールから光信号および/もしくは電気信号を受信するための受信機、光信号を電気信号に、および電気信号を光信号に変換するためのコンバータ、光信号および/もしくは電気信号を増幅するための増幅器、光信号および/もしくは電気信号を送信するための送信機、ならびに/または光信号および/もしくは電気信号を処理するための処理ユニットを含み得る。これらの構成要素はすべて、冗長性を与えるとともに、システムの適切な機能を保証するように、多種多様の態様において利用可能であり得る。
【0048】
障害のあるモジュールは、たとえば、対応するモジュールから受信された信号を評価および/または解釈し、その信号を基準値と比較することによって、コントローラによって検出されてもよい。基準値は、たとえば、コントローラにおいて実施されてもよく、またはコントローラによって、たとえば参照テーブルにおいてアクセスされてもよい。それとは別に、たとえばモジュールの信号の周波数における欠如、遅延、変化、またはモジュールの信号の強度における変化は、障害のある高出力半導体モジュール、たとえば破損したファイバなどについての指標として働いてもよく、コントローラに、応答してトリガ信号を対応する短絡装置に与えさせてもよい。さらに、冗長な光ファイバ接続によって与えられる同一であるはずの信号における差も、モジュールの構成要素の故障を示し得る。
【0049】
この発明の他の局面は、高出力半導体モジュールをバイパスする方法に関する。この方法は、高出力半導体モジュールの故障を検出するステップと、故障が検出された場合に、トリガ信号を生成するステップと、トリガ信号を受信した時に、高出力半導体モジュールの半導体を電気的に破壊することによって、高出力半導体モジュールの2つの電気的接続の間に持続的な電気的導通経路を形成するステップとを含む。
【0050】
高出力半導体モジュールの2つの電気的接続は、前のセクションおよび後のセクションにおいて記載されるようなモジュール上に搭載され得る高出力半導体装置の2つの電気的接続であり得る。
【0051】
上記および以下において記載されるような方法の特徴は、上記および以下において記載されるようなシステムおよび/またはモジュールの特徴であってもよいことが理解されなければならない。
【0052】
技術的に可能な場合であるが、明示的に言及されない場合でも、上記および以下に記載されるこの発明の実施例の組合せも、この方法およびシステムの実施例である場合がある。
【0053】
この発明のこれらおよび他の局面は以下に記載される実施例から明らかになり、それらを参照して解明される。
【0054】
図面の簡単な説明
この発明の主題は、添付の図面において示される例示的な実施例を参照して以下の記載に、より詳細に説明される。