特許第6474556号(P6474556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474556
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】周波数の識別による心臓活動の可視化
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0428 20060101AFI20190218BHJP
   A61B 5/044 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   A61B5/04 310B
   A61B5/04 314K
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-147576(P2014-147576)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2015-20074(P2015-20074A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】13/946,044
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−237882(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0232949(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04−5/0496
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数帯から選択されるスペクトルスライスを示すユーザー入力を受信するように構成されるインターフェイスと、
患者の心臓の表面の複数の地点における電気活動を測定し、選択された前記スペクトルスライス内の該電気活動のそれぞれのレベルを算出し、算出された前記レベルを前記心臓のマップに表示するように構成されるプロセッサーと、を備える、装置。
【請求項2】
前記インターフェイスが、前記複数の地点で前記心臓の前記表面に接触しかつ前記複数の地のそれぞれにおけるそれぞれの心電信号を測定するカテーテルから、測定された前記電気活動を受信するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサーが、前記複数の地のそれぞれにおける前記心電信号の周波数スペクトルを算定することにより、選択された前記スペクトルスライス内の前記電気活動の前記レベルを算出するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記インターフェイスが、前記カテーテルが前記地点に接触する間に測定される前記カテーテルのそれぞれの位置を受信するように構成され、前記プロセッサーは、前記心臓の前記マップ上に前記それぞれの位置における前記レベルを表示するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記インターフェイスが、スライドバー入力デバイスから選択された前記スペクトルスライスを受信するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサーが、前記レベルにそれぞれの色を割り当て、該色に従って前記心臓の前記マップに着色することにより、算出された前記レベルを表示するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記インターフェイスが、前記心臓のデジタル化された三次元画像を受信するように構成され、前記プロセッサーは、算出された前記レベルを前記三次元画像上の前記複数の地点に相関させ、相関された算出された前記レベルの前記マップ及び前記三次元画像を、ユーザーディスプレイに表示するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
メモリと、インターフェイスと、プロセッサーと、入力装置と、ディスプレイとを備える心電信号周波数識別システムを用いて、心電活動を可視化するための方法であって、
前記心電信号周波数識別システムが、患者の心臓の表面の複数の地点において予め測定された心電信号から得られる電気活動のデータ前記メモリに格納することと、
前記心電信号周波数識別システムが、周波数帯から選択される選択スペクトルスライスを示す、前記入力装置に入力されたユーザー入力を前記インターフェイスにおいて受信することと、
前記心電信号周波数識別システムが、前記択スペクトルスライス内の前記電気活動のそれぞれのレベルを前記プロセッサーによって算出することと、
前記心電信号周波数識別システムが、算出された前記電気活動のそれぞれのレベルを前記心臓のマップに重ねて前記ディスプレイに表示することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記心電信号周波数識別システムが、前記選択スペクトルスライス内の前記電気活動のそれぞれのレベルを前記プロセッサーによって算出することが、前記心電信号周波数識別システムが、それぞれの前記複数の地点における前記心電信号の周波数スペクトルを前記プロセッサーで演算することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記心電信号周波数識別システムが、前記ユーザー入力を前記インターフェイスにおいて受信することは、前記心電信号周波数識別システムが、スライドバー入力デバイスから前記選択スペクトルスライスを前記インターフェイスを介して受信することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記心電信号周波数識別システムが、算出された前記電気活動のそれぞれのレベルを前記心臓のマップに重ねて前記ディスプレイに表示することが、前記心電信号周波数識別システムが、算出された前記電気活動のそれぞれのレベルにそれぞれの色を割り当てることと、その色に従って前記心臓のマップに着色することと、を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、電気解剖学的マッピングに関し、特に、心電信号を可視化するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
心腔における心臓信号を空間的にマッピングするための各種技術が、当該技術分野では知られている。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0190625号には、(i)空間的に分散された複数の電極を含むカテーテルを、心内膜面を有する心腔に挿入することと、(ii)心内膜面から離間するカテーテルを用いて、心腔中の電気活動に反応するカテーテルの電極における信号を測定することと、(iii)測定された信号と心内膜面に対する電極の位置とに基づいて、心内膜面の複数の場所で生理学的な情報を決定することと、を含む、非接触型の心臓マッピング法が記載されている。関連のシステム及びコンピュータプログラムも開示されている。
【0003】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0306641号には、複数の心拍周期を含む時間にわたって、患者の心腔内の複数の位置における1つ以上の電極で信号を測定することを含む、患者の心臓を電子解剖学的に表現する方法が記載され、信号の少なくとも一部は、患者の心腔における電気活動に反応する。測定された信号の1つ以上の特定の信号に対して、アルゴリズムを適用し、特定の信号におけるトリガーイベントを決定する。1つ以上の電極で測定される信号は、トリガーイベントに基づいて、心拍周期に従って、コンピュータにより同期される。患者の心臓の電子解剖学的表現が、同期された測定された信号及びカテーテルの電極の位置に基づいて、コンピュータにより生成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細に記載される本発明の実施形態は、患者の心臓の表面の複数の地点における電気活動を測定することを含む方法を提供する。周波数帯から選択されるスペクトルスライスを示すユーザー入力が受信される。選択されたスペクトルスライス内の電気活動のそれぞれのレベルが算出される。算出されたレベルが心臓のマップに表示される。
【0005】
一部の実施形態では、電気活動を測定することが、複数の地点で心臓の表面をカテーテルと接触させることと、カテーテルを用いて、複数のそれぞれの地点における心電信号を測定することと、を含む。他の実施形態では、選択されたスペクトルスライス内の電気活動のレベルを算出することが、複数のそれぞれの地点における心電信号の周波数スペクトルを算定することを含む。さらに他の実施形態では、レベルを表示することが、カテーテルが該地点に接触する間に、カテーテルのそれぞれの位置を測定することと、心臓のマップ上にそれぞれの位置におけるレベルを表示することと、を含む。
【0006】
一部の実施形態では、ユーザー入力を受信することは、スライドバー入力デバイスから選択されたスペクトルスライスを受信することを含む。他の実施形態では、算出されたレベルを表示することが、レベルにそれぞれの色を割り当てることと、その色に従って心臓のマップに着色することと、を含む。さらに他の実施形態では、レベルを表示することが、デジタル化された心臓の三次元画像を受信することと、算出されたレベルを画像上の複数の地点に相関させることと、相関させた算出レベルのマップと画像とを、ユーザーディスプレイ上に表示することと、を含む。
【0007】
本発明の実施形態に従って、インターフェイス及びプロセッサーを含む機器が、更に本明細書において提供される。インターフェイスは、周波数帯から選択されるスペクトルスライスを示すユーザー入力を受信するように構成される。プロセッサーは、患者の心臓の表面の複数の地点における電気活動を測定し、選択されたスペクトルスライス内の電気活動のそれぞれのレベルを算出し、算出されたレベルを心臓のマップに表示するように、構成される。
【0008】
本発明は、以下の詳細な実施形態の説明を、図面と併せ読むことによって、より十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態にかかわる電気解剖学的マッピングシステムの模式的な画図である。
図2】本発明の実施形態にかかわる心電信号周波数識別システムを模式的に示すブロック図である。
図3A】本発明の実施形態にかかわる心臓の画像上に心電活動を可視化して示す図である。
図3B】本発明の実施形態にかかわる心臓の画像上に心電活動を可視化して示す図である。
図4】本発明の実施形態にかかわる、周波数の識別による心電活動を可視化するための方法を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
概論
患者の心電信号は、心臓治療処置の間、モニターされる場合がある。心腔内に誘導されるカテーテルを用いて、心電信号が局所的に抽出される場合がある。電気解剖学的マッピングシステムは、心臓のマップ画像とともに局所的な心電信号を用いて、各種病理が存在する可能性がある心臓における局所領域を同定する。例えば、局所的な心電信号が高周波である領域は、細動及び他の心臓の機能障害を伴う心組織を示す。
【0011】
本明細に記載される本発明の実施形態は、心電活動を可視化するための改良された方法及びシステムを含む。開示された実施形態では、周波数識別システムによって、心電活動のレベルを、オペレータが選択する特定のスペクトルスライスに対して可視化することができる。このように、心電信号の特定の周波数スライスに関連する領域が、心臓の画像上に空間的にマッピングされる。
【0012】
実施形態では、オペレータは、所望の心電信号の周波数を選択する。それに応じて、システムは、心臓の表面全体の電気活動レベルを表示するように構成されるが、それは、その周波数に限定される。所望の周波数における電気活動の振幅が異なる箇所を、例えば、異なる色で表してもよい。オペレータは、リアルタイムで好適な制御を行って、所望のスペクトルスライスを選択してもよい。オペレータが選択されたスペクトルスライスを修正した場合、可視化は、それに応じて変化する。オペレータは、スペクトルスライスの変化に対する着色の変化を観測することができ、この形式の可視化技術を用いて、各種の心臓の病理を同定することができる。
【0013】
例えば、細動及び/又はコンプレックス細分化電位図を伴う心臓の領域は、正常な電気活動の領域と比較して、高周波の活動の優位性を示す場合がある。したがって、心内腔の領域上における電気活動の周波数分布を直接可視化することにより、不整脈の同定及び治療計画に有用な場合がある。
【0014】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態にかかわる電気解剖学的マッピングシステム10の模式的な画図である。カテーテル15は、ガーニー19上に伏している患者の生体17に経皮的に挿入される。カテーテル15は、システム10における電気解剖学的マッピング及びナビゲーションユニット(EMNS)20に接続される。カテーテル15は、患者の心臓18の中へ誘導される。カテーテルナビゲーション及びトラッキングシステム(EMNS)20の一例が、CARTOシステム(Biosense Webster社、Diamond Bar,CA)である。
【0015】
実施形態において、心電信号を受信するために、1つ以上の心電信号(ECS)プローブセンサ22が、心臓18の近くの患者の体17の表面に取り付けられる。プローブセンサ22は、EMNS 20に接続している。センサ22により得られた信号は、例えば、心電図(ECG)周期の特定の段階まで可視化を制御するために用いられてもよい。
【0016】
1つ以上の磁場発生器26が、患者の体を通る磁場を形成し、この磁場は、ポジションセンサの信号を、カテーテル15の遠位先端内に誘導する(図示せず)。心臓18におけるカテーテル15の位置を追跡するために、誘導信号が、EMNS 20によって用いられる。
【0017】
カテーテル15の遠位先端が心組織に局所的に接触すると、局所的な心電信号が抽出される。追跡中のカテーテル遠位先端の位置は、モニター50の出力ディスプレイ60上で、オペレータ70に表示され、局所的な心電信号とともに記録される。心電信号の抽出中に、カテーテル15の遠位先端の位置を知ることにより、EMNS 20が、患者17の心腔の表面における複数の地点の位置での電気活動を記録することが可能となる。
【0018】
一部の実施形態では、必須ではないが、心臓の画像を得るために撮像システム(IS)30が用いられる。撮像システム30は、撮像ソース32を備え、これは、磁気共鳴映像法(MRI)、X線コンピュータ断層撮影法(CT)、X線透視法、又は心臓の画像を得るための任意の適切な撮像技術を用いてもよい。次に、心臓の画像はデジタル化され、IS 30に格納される。
【0019】
心電信号周波数識別システム(ESFDS)40は、IS 30におけるデジタル化された心臓の画像及びEMNS 20から得た局所的な心電信号を受信する。(代替的な実施形態では、IS 30は省略され、位置情報及び局所的な電気活動レベルの両方が、EMNS 20から受信される。)ESFDS 40は、心腔の表面の複数の地点において、心臓画像データと局所的な心電信号データとを相関させる。
【0020】
一部の実施形態では、心臓の表面のそれぞれの地点における心電データの周波数スペクトルを得るように、ESFDS 40は周波数変換を実行する。このように、ESFDSは、複数の地点における局所的な周波数スペクトルの心電信号を伴う心臓の三次元(3D)空間マップを形成する。
【0021】
ESFDS 40は、オペレータ70からユーザー入力を受信するように構成され、振幅の可視化を行おうとする特定のスペクトルスライスを示す。オペレータ端末50は、ディスプレイ60と、タッチスライドバー65等のユーザー入力デバイスと、を備える。オペレータは、図1の差込図に示すように、周波数スライドバー65上で指を動かすことにより、心電信号の所望のスペクトルスライス(周波数範囲)を選択することができる。ESFDS 40は、選択されたスペクトルスライス内の、例えば、心電信号の電圧レベル等の電気活動のそれぞれのレベルを算出する。選択したスペクトルスライスの算出されたレベルは、心臓18のマップ上で見ることができ、かつ、オペレータ70は、ディスプレイ60で見ることができる。スライドバー65の代替として、ESFDS 40は、オペレータ70からのスペクトルスライスの選択を受信するために、他の任意の適切な制御機器を用いてもよい。
【0022】
図1に示される例示的なシステム10は、視覚的な明快さを目的としたものであり、本発明の実施形態を限定するものではない。一部の実施形態では、システム10は、同一の診断セッション中に動作させることができる、撮像システム30及びEMNS 20の両方を備えていてもよい。他の実施形態では、システム10は、電気解剖学的マッピングを提供するために、ESFDS 40及びEMNS 20のみを備えてもよい。さらに代替的には、ESFDS 40は、予め取得され、ESFDSにアップロードされている撮像データを用いてもよい。さらに他の実施形態では、システム10は、例えば、カテーテル15がまた、心組織切除を実行するように構成されるような、他の治療処置とともに用いられてもよい。
【0023】
図2は、本発明の実施形態にかかわる、心電信号周波数識別システム40を模式的に示すブロック図である。電気解剖学的マッピング及びナビゲーションユニット(EMNS)20からの局所的なECSデータ並びに撮像システム(IS)30からの心臓画像マップデータが、ESFDSインターフェイス100を介してESFDS 40に送られる。ESFDSインターフェイス100はまた、オペレータ70によって選択される周波数スライスを、オペレータ端末50上のユーザー入力デバイス65(例えば、タッチスライドバー65)から受信する。
【0024】
ESFDS 40は、プロセッサー110と、メモリ120と、を更に備える。プロセッサー110は局所的なECSデータ及び心臓画像マップを受信し、局所的なECSデータの周波数スペクトルを算出し、処理されたデータを心臓画像マップと相関させる。処理された局所的なECSデータと心臓の画像との相関マップが、メモリ120に格納される。プロセッサー110はまた、入力デバイス65により設定される周波数スライスにおける心電信号の活動の算出されたレベル(例えば、電圧振幅)を出力する。それぞれのレベルは、あらかじめ心臓の表面に沿った複数の地点でIS 30によって得られ、かつ、ディスプレイ60に出力される心臓の画像に、空間的にマップされる。
【0025】
一部の実施形態では、ESFDS 40は別々のユニットでもよい。他の実施形態では、ESFDS 40は、EMNS 20又はIS 30の内部に、あるいは、本明細に記載される機能を実行するための他の任意の適切な構成に統合されてもよい。ESFDS 40の一部の要素は、例えば、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等のハードウェアで実行されてもよい。追加的に又は代替的に、一部のESFDS要素は、ソフトウェアを用いて、又は、ハードウェアとソフトウェアの要素との組合せを用いて、実行されてもよい。一部の実施形態において、プロセッサー110は汎用コンピュータを備え、その汎用コンピュータは、本明細書で説明する機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、それに代わって若しくはそれに加えて、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形のメディア上に提供及び/又は格納されてもよい。
【0026】
心電周波数の識別
心臓の表面に沿った複数の地点において、カテーテル15により抽出される局所的な心電信号の周波数スペクトルにより、局所的な心臓の機能障害を標示することがきる。例えば、高周波の心電活動を示す心臓の領域は、正常な電気活動の他の領域と比べて、細動又はコンプレックス細分化電位図を示す場合がある。
【0027】
図3A及び3Bは、本発明の実施形態にかかわる心臓の画像上における心電信号のマッピングを示す図である。図3Aでは、オペレータ70は、fLOで示された低周波を有するスペクトルスライスにおける心電信号の電圧振幅を観測することを決定する。そのようにするため、オペレータ70は、ディスプレイ60上のタッチスライドバー65を動かすことで、スライドバー65によって評価できる周波数帯内の低周波fLOのスペクトルスライスを選択する。それに応じて、ESFDS 40は、心臓の画像及び周波数fLOにおける電気活動を有する心臓18の領域150を示す。より周波数の低い心電信号が正常な心臓機能を伴うため、図3Aで示すように、低周波fLO成分を有する心電信号は、心腔の表面の大部分に存在する。
【0028】
図3Bにおいて、心臓の局部的な機能障害を評価するために、オペレータ70は、スライドバー65上で高周波(fHI)を有するスペクトルスライスを選択し、これは、前述の通り、不整脈を伴うことが知られている。この場合、オペレータ70はディスプレイ60上で、心臓18の局部的に損傷した領域160を見ることができる。
【0029】
スライドバー65は、典型的には、オペレータ70が、心電信号データの周波数変換において得られる周波数の範囲内のスペクトルスライスを選択できるように構成される。スライドバーの下端及び上端は、それぞれ、変換から最も低い周波数及び最も高い周波数となるように構成される。実施形態において、表示される最も低い周波数及び最も高い周波数は、それぞれ、0.01Hz及び300Hzである。10〜25Hzの周波数範囲は、典型的には、本明細に記載される実施形態にかかわる心臓の機能障害を同定するために用いられる対象帯域である。
【0030】
一部の実施形態では、ESFDS 40は、スペクトルスライスにおける心電信号のそれぞれのレベル(例えば、電圧振幅)に対して、それぞれの色を割り当てる。次に、これらの色は、ディスプレイ60の心臓の3Dマップ上に重ねられて、オペレータ70によって見ることができる。本形態の可視化では、選択された周波数における高い活動の領域は、特定の色で印をつけられる一方、選択された周波数における低い活動の領域は、異なる色で印をつけられる。代替的には、ESFDS 40は可視化の他の任意の適切な形態を用いてもよい。
【0031】
局所的に損傷した領域160の所定の位置において任意の変化を見て観察するために、オペレータ70は、スライドバー上を指でなぞり、選択された周波数を迅速に変えることができる。周波数の変化による心臓の全表面における電気活動の分布の変化は、有用な診断入力となり得る。
【0032】
一部の実施形態では、システム10はまた、切除療法などの治療処置を実行するための付加的なユニットを有するESFDS 40を備えてもよい。カテーテル15は、局所的な心電信号を抽出するだけでなく、ESFDS 40によって同定される損傷した組織を切除するために、領域160に誘導されてもよい。この方法により、同じ医療処置中に、ESFDS 40によって、心臓の機能障害の診断の直後に心臓が正常に機能するよう回復させることができる。
【0033】
一部の実施形態では、EMNS 20により心臓表面上のさまざまな地点で得られた心電信号の電圧波形は、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いて、プロセッサー110により周波数スペクトルに変換される。他の実施形態では、取得した心臓の画像とあらかじめ相関させた心腔の表面に沿った複数の地点における心電信号の周波数スペクトルの算出されたレベル(例えば、電圧振幅)が、メモリ120にアップロードされ、格納される。予め相関させるデータは、診断処置の前に取得されてもよい。
【0034】
図4は、本発明の実施形態にかかわる心電活動を可視化するための方法を模式的に示すフローチャートである。格納する工程200において、心電信号周波数識別システム(ESFDS)40は、心臓18の表面の複数の場所における空間像マッピングとともに、心電周波数情報を、メモリ120に格納する。
【0035】
受信する工程210において、ESFDSインターフェイス100は、入力デバイス65からスペクトルスライスの選択を受信する。この選択により、オペレータ70が見たい、ディスプレイ60上の心臓18の画像に空間的にマップされる心電信号の周波数帯のスペクトルスライスが定義される。表示する工程220において、ESFDS 40は、工程200から得られるマッピングに基づき、心臓の空間像に沿って、選択された入力周波数の振幅を表示する。
【0036】
本明細に記載される実施形態では、主として、心臓診断処置における周波数の識別を用いて取り扱っているが、本明細に記載される方法及びシステムは、脳波検査法(EEG)等の他の用途にも用いることができる。
【0037】
したがって、上述の実施形態は一例として引用したものであり、また、本発明は上記に具体的に図示及び記載したものに限定されないことは認識されるであろう。むしろ本発明の範囲には、上記に述べた様々な特徴の組み合わせ及び下位の組み合わせ、並びに上記の説明を読むことによって当業者には想到されるであろう、先行技術において開示されていない変形例及び改変例も含まれるものである。参照により本特許出願に組み込まれる文書は、組み込まれた文書内の用語が、本明細書で明示的又は暗黙的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本出願の一体部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが検討されるべきである。
【0038】
〔実施の態様〕
(1) 患者の心臓の表面の複数の地点における電気活動を測定することと、
周波数帯から選択されるスペクトルスライスを示すユーザー入力を受信することと、
該選択されたスペクトルスライス内の該電気活動のそれぞれのレベルを算出することと、
該算出されたレベルを該心臓のマップに表示することと、を含む、方法。
(2) 前記電気活動を測定することが、前記複数の地点で前記心臓の前記表面をカテーテルに接触させることと、該カテーテルを用いて、前記複数のそれぞれの地点における、それぞれの心電信号を測定することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記選択されたスペクトルスライス内の前記電気活動の前記レベルを算出することが、前記複数のそれぞれの地点における前記心電信号の周波数スペクトルを算定することを含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記レベルを表示することが、前記カテーテルが前記地点に接触する間に、前記カテーテルのそれぞれの位置を測定することと、前記心臓の前記マップ上に前記それぞれの位置における前記レベルを表示することと、を含む、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記ユーザー入力を受信することは、スライドバー入力デバイスから前記選択されたスペクトルスライスを受信することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0039】
(6) 前記算出されたレベルを表示することが、前記レベルにそれぞれの色を割り当てることと、該色に従って前記心臓の前記マップに着色することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記レベルを表示することが、前記心臓のデジタル化された三次元画像を受信することと、前記算出されたレベルを該画像上の前記複数の地点に相関させることと、前記相関された算出されたレベルの前記マップと該画像とを、ユーザーディスプレイに表示することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 周波数帯から選択されるスペクトルスライスを示すユーザー入力を受信するように構成されるインターフェイスと、
患者の心臓の表面の複数の地点における電気活動を測定し、該選択されたスペクトルスライス内の該電気活動のそれぞれのレベルを算出し、該算出されたレベルを該心臓のマップに表示するように構成されるプロセッサーと、を備える、装置。
(9) 前記インターフェイスが、前記複数の地点で前記心臓の前記表面に接触しかつ前記複数のそれぞれの地点におけるそれぞれの心電信号(electro-cardiac signals)を測定するカテーテルから、前記測定された電気活動を受信するように構成される、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記プロセッサーが、前記複数のそれぞれの地点における前記心電信号の周波数スペクトルを算定することにより、前記選択されたスペクトルスライス内の前記電気活動の前記レベルを算出するように構成される、実施態様9に記載の装置。
【0040】
(11) 前記インターフェイスが、前記カテーテルが前記地点に接触する間に測定される前記カテーテルのそれぞれの位置を受信するように構成され、前記プロセッサーは、前記心臓の前記マップ上に前記それぞれの位置における前記レベルを表示するように構成される、実施態様9に記載の装置。
(12) 前記インターフェイスが、スライドバー入力デバイスから前記選択されたスペクトルスライスを受信するように構成される、実施態様8に記載の装置。
(13) 前記プロセッサーが、前記レベルにそれぞれの色を割り当て、該色に従って前記心臓の前記マップに着色することにより、前記算出されたレベルを表示するように構成される、実施態様8に記載の装置。
(14) 前記インターフェイスが、前記心臓のデジタル化された三次元画像を受信するように構成され、前記プロセッサーは、前記算出されたレベルを該画像上の前記複数の地点に相関させ、前記相関された算出されたレベルの前記マップ及び該画像を、ユーザーディスプレイに表示するように構成される、実施態様8に記載の装置。
図1
図2
図3A
図3B
図4