特許第6474557号(P6474557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474557ティッシュペーパー製造設備およびティッシュペーパーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474557
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】ティッシュペーパー製造設備およびティッシュペーパーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   A47K10/16 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-157271(P2014-157271)
(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-34297(P2016-34297A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】391054453
【氏名又は名称】川之江造機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一色 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】上岡 一光
(72)【発明者】
【氏名】中野 茂美
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 陽二
(72)【発明者】
【氏名】与那覇 奨
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−113498(JP,A)
【文献】 特開昭58−006859(JP,A)
【文献】 特開2010−220799(JP,A)
【文献】 特開2006−271458(JP,A)
【文献】 特開2013−220638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00、10/16
B31F 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の原反紙を重ね合せた状態で加圧するカレンダ装置と、該カレンダ装置を出た原反紙にエンボス圧着加工を施すエンボス圧着装置と、エンボス圧着加工された原反紙を所望の幅寸法にスリットするスリット装置とを備えたティッシュペーパー製造設備であって、
前記エンボス圧着装置は、
受ロールと該受ロールに当接できる位置に配置された2台のエンボスローラとからなり、前記2台のエンボスローラは、各々のエンボスローラの外周面にエンボス加工面を各々1条のみ有しており、
前記2台のエンボスローラは、原反紙幅方向においてオフセットして配置されており、そのオフセット量は原反紙に施すべきエンボス加工ラインに合せられており、
前記カレンダ装置と前記エンボス圧着装置と前記スリット装置は、いずれも専用の駆動モータを備えており、前記各駆動モータを原反紙に一定の張力が作用するよう紙送り速度を制御する同期制御装置を備えている
ことを特徴とするティッシュペーパー製造設備
【請求項2】
複数枚の原反紙を重ね合せた状態でエンボス圧着加工を施すティッシュペーパーの製造方法であって、
専用の駆動モータを備えたカレンダ装置により複数枚の原反紙を重ね合せた状態で加圧し、
専用の駆動モータを備えたエンボス圧着装置により前記カレンダ装置を出た原反紙にエンボス圧着加工を施し、
専用の駆動モータを備えたスリット装置により、エンボス圧着加工された原反紙を所望の幅寸法にスリットする方法であって、
前記エンボス圧着装置は、
受ロールと該受ロールに当接できる位置に配置された2台のエンボスローラとからなり、前記2台のエンボスローラは、各々のエンボスローラの外周面にエンボス加工面を各々1条のみ有しており、
前記2台のエンボスローラは、原反紙幅方向においてオフセットして配置されており、そのオフセット量は原反紙に施すべきエンボス加工ラインに合せられており、
前記各駆動モータは同期制御装置により原反紙に一定の張力が作用するよう紙送り速度を制御する
ことを特徴とするティッシュペーパーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティッシュペーパー製造設備およびティッシュペーパーの製造方法に関する。さらに詳しくは、ティッシュペーパーを製造する場合に用いられるティッシュペーパー製造設備およびティッシュペーパーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、2プライのティッシュペーパーTPは2枚の薄紙p,pを重ねた状態で両端縁をエンボス圧着加工したエンボス圧着部e1,e2で互いに接合したものである。上記のようなティッシュぺ―パーTPは、2本の広幅(たとえば数m幅)の原反ロールから引き出した一続きになっている原反紙を2枚重ねにし、カレンダー工程を経てエンボス圧着加工を施し、スリッターで約20cm幅にスリットする。このスリット紙をいったん巻き取った後、さらに長さ約20cmにカットして毎葉のティッシュペーパーTPとする。
【0003】
図7は上記工程のうち、エンボス圧着加工とスリット加工のイメージを示している。原反紙Wは広幅であり、数個から数10個のティッシュペーパーTPを取れる幅を有している。ティッシュペーパーTPの幅が約20cmであることに合わせ、複数のエンボスローラ101が配置され、それぞれが図示しない受ロールに対向している。原反紙Wはこのエンボスローラ101と受ロールとの間を通され、数条のエンボス圧着加工が施される。e1,e2はエンボス圧着部を示している。1本のエンボスローラ101には2条のエンボス加工面102、102が設けられており、後工程でスリットされて隣り合うことになるティッシュペーパーTPの端縁同士を一緒にエンボス圧着加工する。そして、隣り合うエンボス圧着部e1,e2の間をスリットすると、所定幅にスリットされ、かつ両端縁にエンボス圧着部e1,e2を有するスリット紙srとなる。
【0004】
上記のようなエンボス圧着加工を行う従来技術として、特許文献1(19頁および図3)に記載されたコンタクトエンボス装置がある。この従来技術は、金属ロールまたは弾性ロールである受ロールと表面に細かい凸部を有する硬質のコロを用い、受ロールとコロの間にティッシュ−用原反紙を通してエンボス圧着加工するものである。
【0005】
図8は従来から用いられているコンタクトエンボス装置の一例を示している。同図(A)において、100は受ロールであり、金属製の硬質ロールで構成されている。101はエンボスローラで、支持アーム103で揺動可能に支持され、エアシリンダ104で受ロール100側に押しつけ付勢されている。
エンボスローラ101の外表面には2条のエンボス加工面102,102が形成されており、その表面にはエンボス模様が形成されている。この2条のエンボス加工面102,102は図7に示す隣り合うスリット紙srの隣接するエンボス圧着部e1,e2を形成するためのものである。
【0006】
しかるに、上記従来例のエンボスローラ101ではつぎの問題がある。
a)2条のエンボス加工面102,102のうち片側のみが受ロール100に当る片当り現象が生じやすい。この片当りによる摩耗むら等が原因で振動が発生し、高速運転時にはジャンピングが発生する。このため、エンボス圧着加工に不良品が発生する。
【0007】
また、製造装置全体の問題として、b)コンタクトエンボス装置の前後のカレンダやスリッターなどの駆動速度にムラがあると、紙に加わるテンション変動が生じ、エンボス圧着部eから紙が裂けるエンボス裂けが発生し、不良品を生じてしまう。
【0008】
上記のような問題a),b)はティッシュペーパーの製造速度が約900m/分位までは、さほど大きな問題ではなかったが、高速化を目指そうとすると、とたんに不具合が頻発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−188380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、製造速度の高速化、たとえば従来の製造速度の約1.5倍に相当する1400m/分で運転しても原反紙にエンボス裂けが生じず、綺麗なエンボス圧着加工が施せ、しかも高能率生産が可能なティッシュペーパー製造設備およびティッシュペーパーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明のティッシュペーパー製造設備は、複数枚の原反紙を重ね合せた状態で加圧するカレンダ装置と、該カレンダ装置を出た原反紙にエンボス圧着加工を施すエンボス圧着装置と、エンボス圧着加工された原反紙を所望の幅寸法にスリットするスリット装置とを備えたティッシュペーパー製造設備であって、前記エンボス圧着装置は、受ロールと該受ロールに当接できる位置に配置された2台のエンボスローラとからなり、前記2台のエンボスローラは、各々のエンボスローラの外周面にエンボス加工面を各々1条のみ有しており、前記2台のエンボスローラは、原反紙幅方向においてオフセットして配置されており、そのオフセット量は原反紙に施すべきエンボス加工ラインに合せられており、前記カレンダ装置と前記エンボス圧着装置と前記スリット装置は、いずれも専用の駆動モータを備えており、前記各駆動モータを原反紙に一定の張力が作用するよう紙送り速度を制御する同期制御装置を備えていることを特徴とする
発明のティッシュペーパーの製造方法は、複数枚の原反紙を重ね合せた状態でエンボス圧着加工を施すティッシュペーパーの製造方法であって、専用の駆動モータを備えたカレンダ装置により複数枚の原反紙を重ね合せた状態で加圧し、専用の駆動モータを備えたエンボス圧着装置により前記カレンダ装置を出た原反紙にエンボス圧着加工を施し、専用の駆動モータを備えたスリット装置により、エンボス圧着加工された原反紙を所望の幅寸法にスリットする方法であって、前記エンボス圧着装置は、受ロールと該受ロールに当接できる位置に配置された2台のエンボスローラとからなり、前記2台のエンボスローラは、各々のエンボスローラの外周面にエンボス加工面を各々1条のみ有しており、前記2台のエンボスローラは、原反紙幅方向においてオフセットして配置されており、そのオフセット量は原反紙に施すべきエンボス加工ラインに合せられており、前記各駆動モータは同期制御装置により原反紙に一定の張力が作用するよう紙送り速度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、つぎの効果を奏する。
a)エンボス圧着装置の前工程であるカレンダ装置と後工程であるスリット装置が同一の紙送り速度で運転できるので、原反紙に作用するテンションが常に同一となる。このためエンボス圧着加工時にエンボス圧着加工部からの紙裂けが生じなくなる。このため、従来装置以上の高速加工が可能となる。
b)エンボス加工面が1条のみであるので、従来装置で生じていたような片当りが生じない。このため、安定したエンボス圧着加工ができるので、高速加工が可能となる。
発明によれば、つぎの効果を奏する。
a)エンボス圧着装置の前工程であるカレンダ装置と後工程であるスリット装置との間で、原反紙に作用する張力が一定となるためティッシュペーパーのエンボス圧着加工部からの紙裂けが生じなくなる。このため、従来装置以上の高速加工が可能となる。
b)エンボス加工面が1条のみであるので、従来装置で生じていたような片当りが生じない。このため、安定したエンボス圧着加工ができるので、高速加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るティッシュペーパー製造設備におけるエンボス圧着装置の側面図である。
図2】(A)はエンボスローラの斜視図、(B)は同正面図である。
図3】エンボスローラにおけるエンボスパターンの説明図である。
図4】エンボスパターンの参考図である。
図5】本発明に係るティッシュペーパー製造設備の構成図である。
図6】ティッシュペーパーTPの斜視図である。
図7】従来のエンボス圧着装置を用いたエンボス圧着加工とスリット加工の説明図である。
図8】(A)は従来のエンボス圧着装置の側面図、(B)は一部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
まず、図5に基づきティッシュペーパー製造設備の全体構成を説明する。
同図において、1と2はティッシュペーパーの原紙を巻取っている原反ロールである。原反ロール1,2は幅が3〜4m位あり、直径が2〜3.5m位である。この原反ロール1,2は外接式の回転駆動部1d、2dにより回転させられ原反紙1w、2wを送り出す。
【0015】
この2枚の原反紙は2枚に重ねられ(重ねられた2プライの原反紙を符号Wで示す)、第1カレンダー3と第2カレンダー4に通される。第1,第2カレンダー3,4は一対のロールから構成された公知のカレンダ装置である。原反紙Wは、この一対のロールの間を通されて加圧されることによって、平滑さと光沢を与えられる。
【0016】
5はエンボス圧着装置である。エンボス圧着装置5では、図6および図7に示すように、エンボス圧着部e1,e2を付与するエンボス圧着加工を行う。エンボス圧着加工の目的は、2プライ(2枚重ね)の原反紙を圧着して、自然には互いに離れないように接合することにある。6はスリット装置であり、刃物ローラで原反紙Wを帯状にスリットしていく公知の装置である。
【0017】
7はスリットロールであり、図7に示したスリット紙srを巻取ったロールである。つまり原反紙Wにエンボス圧着加工とスリット加工が施されたティッシュ紙のロールである。このスリットロール7を別の装置で改めて繰り出し、長さ方向に沿って二つ折りし、これを複数枚重ねて長さ方向で適寸にカットすると毎葉のティッシュペーパーができ上がる。この毎葉のティッシュペーパーを適宜の形状に折り畳み箱詰めすると、市販可能な完成品としてのティッシュペーパーが得られる。
【0018】
図5に示す製造設備において、駆動源であるモータは各機器に個別に付設されている。その対応関係は以下のとおりである。
外接式駆動部1d、2d=モータM1、M2
第1カレンダ3=モータM3
第2カレンダ4=モータM4
エンボス圧着装置5=モータM5
スリット装置6=モータM6
上記各モータM1〜M6には速度制御の制御性の良いベクトルインバータモータやサーボモータを用いるのが好ましい。
【0019】
各駆動モータM1〜M6の駆動制御は、図示しない同期制御装置により、原反紙Wに作用するテンションが一定になるよう下流側の紙送り速度が上流側よりもやや速くなるように制御される。とくに、エンボス圧着装置5の前工程であるカレンダ装置3,4と後工程であるスリット装置6は一定の張力が作用するよう下流側が少し速い紙送り速度で運転されるように制御される。この場合、原反紙Wに作用するテンションが常に同一となるのでエンボス圧着加工中に原反紙Wに不要な引っ張り負荷がかからず、エンボス圧着部eからの紙裂けが生じなくなる。このため、たとえば1400m/分程度の高速加工が可能となる。
【0020】
つぎに、エンボス圧着装置5の詳細を説明する。
図1に示すように、エンボス圧着装置5は、受ロール11とこの受ロール11に当接できる位置に配置された2台のエンボスローラ12,12とからなる。2台のエンボスローラ12,12は共に揺動アーム13で支持され、エアーシリンダ14で押し付け付勢されている。このため受ロール11と2台のエンボスローラ12,12との間を通されて原反紙Wはエンボスローラ12,12の加圧を受けてエンボス圧着加工される。
【0021】
図2に示すように、エンボスローラ12は、外周面にエンボス加工面15を1条のみ有している。このように、エンボス加工面15が1条のみであると、従来装置で生じていたような片当りが生じない。このため、安定したエンボス圧着加工ができるので、1400m/分程度の高速加工も可能となる。
【0022】
図1に示すように、エンボスローラ12は2台が受ロール11の下方に配置され、共に受ロール11に接触可能となっている。また、この2台のエンボスローラ12,12は、原反紙幅方向においてオフセットして配置されており、そのオフセット量は原反紙Wに施すべきエンボス加工ラインに合せられている。つまり、図7に示す、スリットされると隣り合うことになるスリット紙srの両端縁に施されるエンボス圧着部e1,e2の間の間隔に合せられている。
また、このような2台のエンボスローラ12,12のセットが、スリットされるべきスリット紙srの本数に合せた数だけ設けられている。
【0023】
図3に示すように、エンボスローラ12のエンボス加工面15にはエンボスパターンが形成されている。このエンボスパターンは、複数本の溝16により区画された複数個の凸面17からなる。図3の(B),(C)の例では断面三角形の溝16が円周方向および幅方向に対し斜めに形成されている。また、複数の溝16同士が互いに交差しているので、台形であって、頂面が四角形の凸面17が複数個形成される。図3の(A)の例では、断面三角形の溝16が斜めに形成され、複数の溝16が平行である。そして、溝16,16の間が細幅で斜めに延びる凸面17となっている。
【0024】
上記の(A),(B),(C)の各凸面17は、エンボスローラ12を側面視で見たとき円周方向において重なりが生じるように形成されている。図4は比較のため示した参考例であり、この例では溝16が断面三角形ではあるが、その上面幅が広く、結果として凸面17も面積が狭いものとなっている。この例では、エンボスローラ12を側面視で見たとき、円周方向で凸面17の重なりが無い部分が生じ、円周方向で一種の段差が生じている。
【0025】
図4の参考例と比べると分かるように、図3に示す本実施形態では、(A),(B),(C)の3種のエンボス加工面15は円周方向では360°全周で溝16が現われず、凸面17のみが受ロールに当接することになる。このためエンボス加工面15の円周方向における段差は全く存在しないので当接圧の瞬間的変動が生じず、振動も発生しない。このため1400m/分程度の高速加工が可能となる。
【符号の説明】
【0026】
3,4 カレンダ装置
5 エンボス圧着装置
6 スリット装置
12 エンボスローラ
15 エンボス加工面
16 溝
17 凸面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8