(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474558
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】炊飯装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/16 20060101AFI20190218BHJP
A47J 27/14 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
A47J27/16 F
A47J27/14 K
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-159082(P2014-159082)
(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公開番号】特開2016-34455(P2016-34455A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年7月31日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年3月18日発行、KIFEE 2014−7th KIFEE Symposium on Environment,Energy and Materials KIFEE−Symposium プログラム及び要旨集 p28(P14)、発行者 KIFEE 2014−7th KIFEE Symposium on Environment,Energy and Materials KIFEE−Symposium (刊行物等) 平成26年3月18日開催、KIFEE 2014−7th KIFEE Symposium on Environment,Energy and Materials KIFEE−Symposium、同志社大学室町キャンパス寒梅館(京都府京都市上京区烏丸通上立売下ル御所八幡町103)
(73)【特許権者】
【識別番号】598060981
【氏名又は名称】エースシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104307
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 尚司
(72)【発明者】
【氏名】北村 進一
(72)【発明者】
【氏名】佐古 圭弘
(72)【発明者】
【氏名】竹満 初穂
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−262338(JP,A)
【文献】
特開2001−169915(JP,A)
【文献】
特開2003−314825(JP,A)
【文献】
特開2007−125156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/16
A47J 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米を搬送する搬送装置を備えたチャンバと、
前記チャンバ内に過熱水蒸気を供給する過熱水蒸気供給装置と、
前記チャンバから排出された水蒸気との熱交換により温水を製造する熱交換器と、
前記熱交換器により製造された温水を、前記チャンバ内の米に散水する散水手段とを備え、
前記熱交換器は、熱交換のための水を流す冷却管と、当該冷却管と前記水蒸気を接触させる冷却搭と、当該冷却搭の塔頂部開口上方に設置された排気ファンを有する連続式炊飯装置。
【請求項2】
前記冷却搭は、前記搭頂部開口を通して備えられた通風管を備え、前記排気ファンは前記通風管の開口部上方に設置されたことを特徴とする請求項1に記載の連続式炊飯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギーの回収方法、特に排出された水蒸気が有するエネルギーを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続式の炊飯装置が例えば特許文献1や特許文献2などに開示されている。これらの炊飯装置は、過熱水蒸気が供給されるチャンバと、米を搬送するコンベアと、チャンバ内において搬送される米に散水する散水装置を備える。コンベアで搬送された米は、チャンバに供給された過熱水蒸気と散水装置から供給された温水とで炊飯され、チャンバから米飯として搬出される。
【0003】
過熱水蒸気は飽和水蒸気を加圧下で過熱されることで得られ、大きな熱エネルギーを有するので短時間で米を加熱できる。
【0004】
しかしながら、米の加熱に利用される熱エネルギーは、チャンバ内に供給された過熱水蒸気が有する熱エネルギーの一部にしか過ぎず、その多くは高温の水蒸気としてチャンバ外に放出されていた。
【0005】
一方、過熱水蒸気が有する熱エネルギーを利用して加熱又は乾燥をした後に、その後の水蒸気を再利用する方法が、例えば特許文献3や特許文献4に記載されている。前者では、コーヒ豆と過熱水蒸気を接触させることでコーヒ豆を焙煎し、焙煎したコーヒ豆を分離した後の水蒸気を再度加熱して再び焙煎用の過熱水蒸気として利用している。また、後者では、過熱水蒸気中に含水食材を噴霧することで食材を乾燥させた後に、乾燥に利用した水蒸気を過熱して再び過熱水蒸気として利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−169915号公報
【特許文献2】国際公開WO2013/164919号公報
【特許文献3】特開平10−57247号公報
【特許文献4】特表平09−501098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、排出された水蒸気が有する熱エネルギーを回収し、例えば、連続式の炊飯装置においてエネルギーロスを少なくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る連続式炊飯装置は、
チャンバから排出された水蒸気が有する熱エネルギーを散水用の温水に利用する熱交換器を備え、当該熱交換器は熱交換を行った後の空気を排出を促進する排気ファンを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る装置によると、
過熱水蒸気として供給された熱エネルギーの一部が温水製造用の熱エネルギーとして回収され、その後製造された温水は炊飯用の散水に利用される結果、連続式炊飯
装置における省エネルギー化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態である炊飯装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は本発明の他の実施形態である炊飯装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る排水蒸気のエネルギーの回収方法は、チャンバから排出された水蒸気と熱交換を行い、水を加温して排水蒸気が有する熱エネルギーの一部を回収することを特徴とする。つまり、本発明は、チャンバ内に加熱用として供給された水蒸気のうち、加熱に用いられずにチャンバ外に排出される水蒸気が有する熱エネルギーを、熱交換により温水として回収する方法である。当該方法は、水蒸気が供給されるチャンバと、前記チャンバから排出された水蒸気(排水蒸気)と水との間で熱交換する熱交換器を備えた回収装置において実施され得る。
【0012】
本発明において、チャンバとは水蒸気によって対象物(加熱対象物)と接触させることで当該対象物を加熱できる構造を有する筐体を意味する。チャンバは、水蒸気が供給される供給口と水蒸気が排出される排気口を有し、チャンバ内は供給された水蒸気によってほぼ満される。対象物と接触させる方法は、加熱対象物に水蒸気を直接接触させる方法であり、加熱対象物に水蒸気を間接的に接触させる方法であり得る。前者の方法は、例えば、対象物が置かれたチャンバ内に水蒸気を供給する方法が例示される。後者の方法は、水蒸気が供給されたチャンバとチャンバ外の加熱対象物を接触させる方法、例えばチャンバの上壁を介して加熱対象物を接触させる方法が例示される。水蒸気は連続的にチャンバ内に供給され、排水蒸気はチャンバから連続的に排気される。
【0013】
本発明において、チャンバ内に供給される水蒸気は飽和水蒸気又は過熱水蒸気の何れでもよく、好ましくは過熱水蒸気である。過熱水蒸気とは、飽和水蒸気を過熱して得られる水蒸気を意味し、常圧を維持しながら加熱する方法や加圧しながら加熱する方法のいずれの方法でも製造できる。過熱水蒸気は大きな熱エネルギー(潜熱)を有するので、加熱対象物の加熱には有利であるが、チャンバから排出される水蒸気も大きな熱エネルギーを有し、廃棄される熱エネルギーも大きいからである。過熱水蒸気の温度は、常圧で100℃を越え、その上限は特に制限はなく、例えば500℃以下であり、300℃以下であり、200℃であり、180℃であり得る。
【0014】
本発明において、排水蒸気とは加熱対象物の加熱に用いられた後の水蒸気を意味し、チャンバの排気口から排出される。排出される水蒸気は、過熱水蒸気を含み得る。
【0015】
チャンバから排出された排水蒸気は熱交換器に供給される。熱交換器はいわゆる当業者が通常用いる意味で用いられ、排水蒸気が有する熱エネルギーを冷媒の加温に用いる。熱交換器は排水蒸気と冷媒との間で熱交換でき、暖められた冷媒を外部に取り出せる装置であればその構造は問われない。本発明では冷媒は好ましくは水である。
【0016】
本発明により得られた温水は種々の用途に用いられる。その用途は、例えば、チャンバに供給される水蒸気、特に過熱水蒸気製造用の水としての再利用であり、チャンバ内への加水又は散水用の温水としての利用である。特に過熱水蒸気の温度が180℃〜200℃を越えると、直接接触させた加熱対象物の乾燥が過度に進行する傾向にある。そこで、チャンバ内に加水又は散水することで、加熱対象物の乾燥を防ぐ。また、それとともに、後述する炊飯方法のように、加熱対象物をいわゆる蒸し煮することができる。チャンバ内への加水や散水方法も特に限定されず、例えば散水ノズルを備えた散水装置を用いた散水が例示される。
【0017】
加熱対象物は特に限定されず、加熱(蒸し煮を含む)して食品として利用されるもの、加熱殺菌されるもの、乾燥して利用されるものであり得る。加熱対象物は、飲食品であるかどうかも問われない。飲食品として、例えば、飲料水や牛乳などの各種飲料、野菜(カボチャなどの果菜類、芋などの根菜類、ほうれん草などの葉菜類、エノキダケなどの菌茸類)、米、食肉などが例示される。また、飲食品以外では、水、油、木材、植物などが例示される。
【0018】
水蒸気による加熱は、いわゆるバッチ式、つまり、チャンバ内に加熱対象物を置いた状態で水蒸気を連続的に供給する方法、また、連続式、つまり、チャンバ内にコンベアなどの搬送装置を用いて加熱対象物を連続的に供給しながら水蒸気を連続的に供給する方法の何れでもよい。特に野菜や米などを加熱対象物(加工対象物)を連続的に供給することで、蒸し煮された加工食品や乾燥された加工食品が効率よくかつ少ないエネルギーで提供される。
【0019】
本発明のエネルギー回収方法は、例えば、過熱水蒸気と温水を供給して炊飯する連続式の炊飯方法に利用できる。つまり、本発明に係る炊飯方法は、チャンバ内に過熱水蒸気と温水を供給して炊飯する連続式の炊飯方法において、チャンバから排出された水蒸気との熱交換により温水を得て、当該温水を炊飯に必要な温水の一部又は全部として利用する方法である。当該方法は、米を搬送する搬送装置を備えたチャンバと、前記チャンバ内に過熱水蒸気を供給する過熱水蒸気供給装置と、前記チャンバから排出された水蒸気との熱交換により温水を製造する熱交換器と、前記熱交換器により製造された温水を、前記チャンバ内の米に散水する散水装置を備えた炊飯装置により実施され得る。チャンバは米をチャンバに搬入する搬入口と炊飯された米飯を搬出する搬出口と水蒸気を熱交換器に供給するための排気口を備え、当該排気口には熱交換器への配管が備えられる。
【0020】
チャンバ内に過熱水蒸気と温水を供給して炊飯する連続式の炊飯方法や炊飯装置は、前記のとおり公知の方法であって、例えば、特許文献1や特許文献2に記載された方法や炊飯装置が例示される。
【0021】
過熱水蒸気はチャンバ内に連続的に供給され、過熱水蒸気の有する熱エネルギー(潜熱)は米の炊飯に用いられる。潜熱が奪われた後の水蒸気はチャンバから排出される。排出された水蒸気は配管を介してチャンバ外に備えられた熱交換器に供給される。この水蒸気は過熱水蒸気を含み得る。熱交換器は、供給された水蒸気と供給された水との間で熱交換を行い、供給された水を温水に変換する。水蒸気と水との間で熱交換できれば熱交換器の構造は問われない。熱交換器は、例えば凝縮器であり得る。また、強制換気(ベンチレーション)機構を備えた熱交換器でもあり得る。特に後者の熱交換器は、換気速度を調整することで温水の温度を調整できるなどの利点を有するので、好ましい。熱交換器は例えば対向流式の熱交換器であり、並流式の熱交換器でもあり得る。
【0022】
熱交換により得られた温水の一部又は全部は、散水装置からチャンバ内の米に散水される。このとき、熱交換により得られた温水の温度が炊飯に必要とされる温度よりも低い場合には新たに付加される加熱装置によって加温され得る。また、熱交換により得られる温水量が必要量よりも少ない場合には、新たに付加される温水製造装置によって製造された温水が加えられることもあり得る。一方、温水の温度が高い場合には加水する、換気速度を調整することで、温水の温度を下げることもできる。こうして、これまで廃棄されていた潜熱が奪われた後の水蒸気の有する熱エネルギーは散水に用いられる温水の製造に利用される結果、これまでの炊飯方法に比べて少ないエネルギー消費量で米飯が製造され得る。
【0023】
次に添付された図面を用いて本発明についてさらに具体的に説明する。なお、以下の各実施例では米を用いた連続式炊飯装置として利用する場合について述べるが、本発明は下記の実施例に限定されないのはいうまでもない。
【実施例1】
【0024】
図1に示す炊飯装置1はいわゆるベンチレーション機能を有する熱交換器を備えた炊飯装置1である。炊飯装置1は、米を連続的に搬送する搬送装置であるコンベア2を備えたチャンバ3と、当該チャンバ3内に過熱水蒸気を供給する過熱水蒸気供給装置(図示せず)と、前記チャンバ3から排出された水蒸気との熱交換により温水を製造する熱交換器10と、当該熱交換器10により製造された温水を、前記チャンバ3内の米に散水する散水ノズル5と、米をコンベア2に供給する供給装置6を備える。チャンバ3は、炊飯される米(原料米)をチャンバ3内に搬入する搬入口3aと、チャンバ3内で炊飯された米飯を搬出する搬出口3bと、チャンバ3内の水蒸気を熱交換器10に供給するための排気口3cを備え、チャンバ3内はほぼ常圧になっている。
【0025】
熱交換器10は、冷媒となる水を流す冷却管12と、冷却管12と水蒸気を接触させる空間を形成する冷却塔11と、排気ファン13を有する。冷却塔11はその塔頂部に開口14を有し、通風管15が当該開口14を通じて備えられている。通風管15は冷却された後の空気の排気路となり、通風管15の下端は冷却塔11の内部下方に位置している。冷却管12は通風管15の周りをらせん状に配置され、冷却管12の一方端(図では上側端部)は、水量調整器(図示せず)及び必要に応じて備えられる温度調整器(図示せず)を介して散水ノズル5に接続される。冷却管12の他端(図では下側端部)は、給水装置(図示せず)に接続され、給水装置からは飲用に適した水(例えば上水)が供給される。冷却塔11の下部には、チャンバ3の排気口3cに接続された排気管8が接続され、チャンバ3から排出された水蒸気が冷却塔11に供給される。冷却塔11の下端には、塔内部で生成された凝結水を排水するための排水口16が備えられている。排気ファン13は通風管
15の開口部上方に設置され、除湿された空気の排出を促進し、その排出量を調整す
る。
【0026】
コンベア2には原料米が供給装置6から連続して投下され、投下された原料米はチャンバ3内に搬送される。チャンバ3内ではコンベア2の下方から過熱水蒸気が供給され、原料米にはその上方から温水が散水されることで、原料米は炊飯される。このとき、コンベア2上の米は攪拌装置7で攪拌され、炊飯の均一化が図られる。また、チャンバ3内の廃水(余剰の温水や過熱水蒸気から生じる水)は廃水管から排出され、廃棄される。
【0027】
供給された過熱水蒸気が有する熱エネルギーの一部は原料米の加熱に使用され、その後の水蒸気は排気管8を通じてチャンバ3から熱交換器10に排出される。熱交換器10では、供給された水蒸気と冷却管12に通された水との間で熱交換が行われ、水が加温される。加温された水は、散水用の温水として利用される。このようにチャンバ3にて利用されなかった熱エネルギーの少なくとも一部は温水製造のために利用され、エネルギーロスが軽減される。
【実施例2】
【0028】
図2に示す炊飯装置1は
図1に示す炊飯装置とほぼ同様の構成であり、
図2に示す炊飯装置は、ベンチレーション機能を有しない、いわゆる濃縮器である熱交換器20を備えている点で、
図1に示す炊飯装置1と異なる。熱交換器20は、下端に排水口16を備えた冷却塔21を有する。冷却塔21は
図1に示す排気用の通風管15を備えず、冷却塔21で生じた水分や水蒸気が冷却された後の空気は、排水口16から外部に排出される。このような濃縮器である熱交換器20も使用できる。
【符号の説明】
【0029】
2 コンベア
3 チャンバ
5 散水ノズル
8 排気管
10 熱交換器
11 冷却塔
12 冷却管
13 排気ファン