特許第6474570号(P6474570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474570
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20190218BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   H03B5/32 A
   H03B5/32 H
   H03H9/02 K
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-178740(P2014-178740)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-136092(P2015-136092A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年6月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-260820(P2013-260820)
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】木村 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 直樹
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−248807(JP,A)
【文献】 特開2005−236801(JP,A)
【文献】 特開2006−100687(JP,A)
【文献】 特開2011−199334(JP,A)
【文献】 特開2012−160534(JP,A)
【文献】 特開2012−074423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00−9/76
H03B 5/00−5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振信号を出力する発振回路と、
前記発振信号の発振周波数と異なる周波数である離調周波数における減衰量が、前記発振周波数における減衰量よりも大きい周波数特性を有する水晶フィルタと、
前記発振回路が有する水晶ブランク及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを覆うパッケージ部と、
前記パッケージ部が固定された基板と前記パッケージ部との間に設けられ、且つ、当該基板に配置された発熱抵抗により、前記発振回路が有する水晶ブランク及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを加熱する加熱部と、
を備え、
前記加熱部は、前記発振回路が有する水晶ブランクを加熱する第1発熱部と、前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを加熱する第2発熱部と、前記第1発熱部の発熱に応じた前記発振回路の周囲温度及び前記第2発熱部の発熱に応じた前記水晶フィルタの周囲温度を制御する調整部とを有し、
前記パッケージ部は、前記加熱部の前記第1発熱部及び第2発熱部が発する熱の伝導により加熱され、
前記調整部は、
前記発振回路の周囲温度が前記発振回路に対する目標温度から第1範囲に収まるように前記第1発熱部を制御し、
前記水晶フィルタの周囲温度が前記水晶フィルタに対する目標温度から前記第1範囲よりも広い第2範囲に収まるように前記第2発熱部を制御する、発振器。
【請求項2】
発振信号を出力する発振回路と、
前記発振信号の発振周波数と異なる周波数である離調周波数における減衰量が、前記発振周波数における減衰量よりも大きい周波数特性を有する水晶フィルタと、
前記発振回路が有する水晶ブランク及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを覆うパッケージ部と、
前記パッケージ部が固定され且つ前記パッケージ部の下方に形成された銅体を有する基板と前記パッケージ部との間に設けられ、且つ、当該基板に配置された発熱抵抗により、前記発振回路が有する水晶ブランク及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを加熱する加熱部と、
前記銅体の上方に設けられているレジストと、
を備え、
前記レジストは、前記基板のうち、前記パッケージ部の下部の少なくとも一部において剥離されている、
発振器。
【請求項3】
前記パッケージ部は、前記発振回路が有する水晶ブランク及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを同一のパッケージで覆う、
請求項1又は2に記載の発振器。
【請求項4】
前記パッケージ部は、前記発振回路が有する水晶ブランクを覆う第1パッケージ部、及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを覆う第2パッケージ部を有する、
請求項1又は2に記載の発振器。
【請求項5】
前記パッケージ部と前記加熱部との間に設けられた熱伝導シートを備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器に関する。特に、発振回路から出力される不要な雑音成分を水晶フィルタで除去して出力する発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の正確な動作を支えるため、電子機器には、一定の周期の安定した発振信号を供給し続けるタイミングデバイスが用いられている。このようなタイミングデバイスとして、水晶振動子を用いたタイミングデバイスが古くから知られており、水晶発振器として広く普及している。水晶発振器に発振回路から出力される不要な雑音成分を除去するフィルタを設けることにより、発振信号の雑音特性を向上させることができる。
【0003】
ここで、一般的な水晶発振器の一例を図8に示す。水晶発振器100は、発振回路101の水晶振動子101aを発振させることで得られた発振信号を増幅回路103で増幅して出力する。このとき、発振回路101からは、発振信号とともに不要な雑音成分も出力されるため、水晶振動子102aにより構成される水晶フィルタ102を用いて不要な雑音成分を除去する。
図9に水晶フィルタを有しない水晶発振器の位相雑音特性と、水晶フィルタを有する水晶発振器の位相雑音特性との比較例を示す。なお、図9において、縦軸は位相雑音であり、横軸は発振信号の発振周波数の中心値からの離調幅(離調周波数)である。図9に示すように、水晶フィルタを設けることで、発振周波数から数kHz離れた離調周波数帯において低雑音化を実現していることが確認できる。
【0004】
ところで、水晶振動子が所定の周波数温度特性を有していることから、水晶発振器から出力される発振信号の周波数は、水晶振動子の周囲の温度によって異なる。そこで、図8に示すように水晶発振器100にヒーター回路104を設け、このヒーター回路104の発熱部104aにて発振回路101の水晶振動子101a(より詳細には、水晶振動子101aを構成する水晶片(水晶ブランク))の周囲温度を一定に保つ温度制御型水晶発振器(所謂OCXO:Oven Controlled Xtal Oscillator)が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。この温度制御型水晶発振器によれば、外気の温度に影響されることなく安定的に一定の周波数を出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−13651号公報
【特許文献2】特開平1−248807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の温度制御型水晶発振器は、発振信号を出力する水晶振動子の温度を一定に保つことで安定性の向上を図っているものの、更なる改善の余地があった。即ち、上述の温度制御型水晶発振器では、発振回路に用いる水晶ブランクの温度特性にのみ着目しており、水晶フィルタに用いる水晶ブランクの温度特性を考慮していなかった。
【0007】
ここで、図10に水晶フィルタの温度特性を示す。図10において、縦軸は減衰量であり、横軸は周波数である。図10に示すように、水晶フィルタは、周囲温度の変化によって減衰特性の中心周波数がずれてしまい、結果として、特定の周波数における減衰量が水晶フィルタの周囲温度によって異なる。
具体的には、高温時の水晶フィルタは、図中の中心周波数から−2kHz離れた周波数の減衰量が、中心周波数(減衰量5dB)の減衰量よりも5dB大きい。これに対して、低温時の水晶フィルタは、図中の中心周波数から−2kHz離れた周波数の減衰量が、中心周波数の減衰量と同じである。そのため、低温時の水晶フィルタは、−2kHz離れた周波数の信号を適切に除去することができない。
【0008】
このように周囲温度によって水晶フィルタの減衰特性が異なることになるため、水晶発振器から出力する信号の雑音特性向上のためには、水晶フィルタの周囲温度を適切に制御する仕組みが求められる。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、出力する信号の雑音特性を向上させる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様においては、発振信号を出力する発振回路と、前記発振信号の発振周波数と異なる周波数である離調周波数における減衰量が、前記発振周波数における減衰量よりも大きい周波数特性を有する水晶フィルタと、前記発振回路が有する水晶ブランク及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを覆うパッケージ部と、前記パッケージ部が固定された基板と前記パッケージ部との間に設けられた抵抗により、前記発振回路が有する水晶ブランク及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを加熱する加熱部と、を備える発振器を提供する。
【0011】
上記の発振器では、前記加熱部は、発熱する発熱部と、前記発熱部の発熱に応じた前記発振回路及び前記水晶フィルタの周囲温度を制御する調整部とを有し、前記パッケージ部は、前記加熱部の前記発熱部が発する熱の伝導により加熱されることとしてもよい。
【0012】
上記の発振器では、前記加熱部は、前記発振回路が有する水晶ブランクを加熱する第1発熱部と、前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを加熱する第2発熱部を有し、前記パッケージ部は、前記発振回路が有する水晶ブランクを覆う第1パッケージ部、及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを覆う第2パッケージ部を有することとしてもよい。
【0013】
上記の発振器では、前記調整部は、前記発振回路の周囲温度が前記発振回路に対する目標温度から第1範囲に収まるように前記第1発熱部を制御し、前記水晶フィルタの周囲温度が前記水晶フィルタに対する目標温度から前記第1範囲よりも広い第2範囲に収まるように前記第2発熱部を制御することとしてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、前記パッケージ部は、前記発振回路が有する水晶ブランク及び前記水晶フィルタが有する水晶ブランクを1のパッケージで覆う発振器を提供する。
【0015】
上記の発振器では、前記調整部は、前記発振回路及び前記水晶フィルタの周囲温度が目標温度から所定範囲に収まるように前記発熱部を制御することとしてもよい。
【0016】
本発明の第3の態様においては、前記基板のうち、前記パッケージ部の下部の少なくとも一部において、レジストを剥離することとしてもよい。
【0017】
上記の発振器では、前記パッケージ部と前記加熱部との間に塗布されたシリコーンを備えることとしてもよい。
【0018】
上記の発振器では、前記パッケージ部と前記加熱部との間に設けられた熱伝導シートを備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、出力する信号の雑音特性を向上させる発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態の水晶発振器の機能構成図である。
図2】水晶発振器の発振回路及び水晶フィルタの回路構成図である。
図3】水晶発振器のヒーター回路の回路構成図である。
図4A】水晶発振器の外観を示す上面図である。
図4B図4AのI−I断面の一部を示す断面図である。
図4C図4BのJ−J断面の断面図である。
図5】第2の実施形態の水晶発振器の機能構成図である。
図6A】水晶発振器の基板及びパッケージの断面図である。
図6B】第3の実施形態の水晶発振器の基板及びパッケージの断面図である。
図7A】水晶振動子を複数有する発振回路及び水晶フィルタの回路構成図である。
図7B】水晶振動子を複数有する発振回路及び水晶フィルタの回路構成図である。
図7C】水晶振動子を複数有する発振回路及び水晶フィルタの回路構成図である。
図8】従来の水晶発振器の機能構成図である。
図9】水晶フィルタを有しない水晶発振器の位相雑音特性と、水晶フィルタを有する水晶発振器の位相雑音特性との比較を示す図である。
図10】水晶フィルタの温度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る水晶発振器1の機能構成図であり、図2は、水晶発振器1の発振回路2及び水晶フィルタ3の回路構成図であり、図3は、水晶発振器1のヒーター回路5の回路構成図である。
図1に示すように、水晶発振器1は、発振回路2と、水晶フィルタ3と、増幅回路4と、加熱部としてのヒーター回路5とを含んで構成される。
【0022】
図1及び図2に示すように、発振回路2及び水晶フィルタ3は、夫々、水晶ブランク(水晶片)2a及び水晶ブランク3aを有する。
発振回路2は、水晶ブランク2aを発振させることで発振信号を出力する。水晶フィルタ3は、発振回路2から発振信号とともに出力される不要な雑音成分を除去する。即ち、水晶フィルタ3は、発振信号の発振周波数と異なる周波数である離調周波数における減衰量が、発振周波数における減衰量よりも大きい周波数特性を有する。増幅回路4は、水晶フィルタ3を介して得られた発振信号を増幅し、出力する。
【0023】
ヒーター回路5は、発振回路2の水晶ブランク2a及び水晶フィルタ3の水晶ブランク3aを加熱する。図1及び図3に示すように、このヒーター回路5は、発熱する発熱部5a−1,5a−2,5bと(以下、発熱部5a−1,5a−2を総称して「発熱部5a」と呼ぶことがある)、発熱部5a,5bの発熱に応じた水晶ブランク2a,3aの周囲温度を制御する調整部5cとを含んで構成される。
【0024】
発熱部5a,5bは、例えば、発熱抵抗であり、直流電圧が供給されて電流が流れることに応じて発熱する。調整部5cは、例えば、水晶ブランク2aの周囲温度を測定する温度センサとして機能するサーミスタ51aと、水晶ブランク3aの周囲温度を測定する温度センサとして機能するサーミスタ51bと、サーミスタ51aが測定した周囲温度に基づいて発熱部5aに流す電流量を制御するトランジスタ52a−1,52a−2と(以下、総称して「トランジスタ52a」と呼ぶことがある)、サーミスタ51bが測定した周囲温度に基づいて発熱部5bに流す電流量を制御するトランジスタ52bと、トランジスタ52a及びトランジスタ52bを制御する制御回路53とから構成される。トランジスタ52a及びトランジスタ52bは、発熱部5a,5bとともに、自ら加熱部としても機能する。
【0025】
調整部5cは、サーミスタ51a,51bの出力電圧が目標温度に対応する基準電圧と一致するように発熱部5a,5bに流す電流量を制御することで、加熱対象の水晶ブランク2a,3aの周囲温度を一定に保つ。目標温度は、水晶ブランク2a,3aが安定的に動作する温度であればよく、発振回路2の水晶ブランク2aと水晶フィルタ3の水晶ブランク3aとで共通であってもよく、また、別々としてもよい。ただし、別々の目標温度とした場合には、相互の影響を受けることになり、温度分布を考慮した制御が必要になるため、同一の目標温度にすることが好ましい。
【0026】
また、目標温度は、水晶ブランクのカットに応じて設定することが好ましく、ATカットの水晶ブランクの場合は、周波数温度特性が最小となる谷間のピーク付近を目標温度とし、SCカットの水晶ブランクの場合は、周波数温度特性が最大となる山のピーク付近を目標温度とする。
なお、本実施形態では、目標温度を水晶ブランク2a,3aで共通としており、その温度を80℃としている。
【0027】
ここで、温度変化による影響は、水晶フィルタ3の減衰特性よりも周波数安定度を司る発振回路2の方が大きい。そのため、水晶発振器1から出力する信号の雑音特性向上のためには、発振回路2の水晶ブランク2aの温度管理は高精度に行わなければいけない一方で、水晶フィルタ3の水晶ブランク3aの温度管理はそこまでの精度が要求されない。
【0028】
そこで、水晶発振器1では、水晶ブランク2aの加熱に用いられる発熱部5aに対する制御を、水晶ブランク3aの加熱に用いられる発熱部5bに対する制御よりも厳密に行う。即ち、調整部5cは、水晶ブランク2aの周囲温度が水晶ブランク2aに対する目標温度から第1範囲に収まるように発熱部5aの発熱量を制御する一方で、水晶ブランク3aの周囲温度が水晶ブランク3aに対する目標温度から第1範囲よりも広い第2範囲に収まるように発熱部5bの発熱量を制御する。具体的には、1つのトランジスタに対して3つの発熱抵抗をセットにし、発振回路2の水晶ブランク2aに対しては2セットのトランジスタ及び発熱抵抗(図3の発熱部5a−1,5a−2参照)、水晶フィルタ3の水晶ブランク3aに対しては1セットのトランジスタ及び発熱抵抗(図3の発熱部5b参照)を用いることで、水晶ブランク2aに対する高精度な温度管理を実現している。
【0029】
以上、水晶発振器1の機能構成及び回路構成について説明した。続いて、図4A,4B,4Cを参照して、本実施形態に係る水晶発振器1の具体的な配置例について説明する。図4Aは、ケースを外した状態の水晶発振器1の外観を示す上面図であり、図4Bは、図4AのI−I断面の一部を示す断面図であり、図4Cは、図4BのJ−J断面の断面図である。
【0030】
図4Aに示すように、水晶発振器1は、基板上に発振回路2、水晶フィルタ3、増幅回路4及びヒーター回路5が配置されて構成される。また、基板上には、金属で成形されたパッケージP1,P2が取り付けられる。基板とパッケージP1,P2との間に、熱伝導シートやアルミニウム製の台座が設けられていてもよい。パッケージP1の内部には、発振回路2の水晶ブランク2aが配置され、パッケージP2の内部には、水晶フィルタ3の水晶ブランク3aが配置される。なお、水晶ブランク2a及び水晶ブランク3aが格納されたパッケージP1,P2が水晶振動子に相当する。
【0031】
上述のように、水晶フィルタ3の水晶ブランク3aに対しては3つの発熱抵抗(発熱部5b)が用いられる。そのため、図4B,4Cに示すように、基板上のパッケージP2の下方(即ち、パッケージP2が固定された基板とパッケージP2との間)には、3つの発熱抵抗が均等に配置される。パッケージP2の内部(即ち、水晶ブランク3a)は、3つの発熱抵抗が発する熱の伝導により加熱される。また、発熱部5bの近傍には、調整部5cを構成するサーミスタ51bが配置され、水晶ブランク3aの周囲温度を測定する。
なお、パッケージP1については、水晶ブランク2aに対して6つの発熱抵抗(発熱部5a)を用いる点が異なるのみであるため、図示及び詳細な説明を省略する。
【0032】
以上、第1の実施形態に係る水晶発振器1について説明した。第1の実施形態に係る水晶発振器1によれば以下の効果を期待できる。
【0033】
水晶発振器1では、発振回路2の水晶ブランク2aだけでなく水晶フィルタ3の水晶ブランク3aについても、周波数温度特性に応じた温度制御を行う。即ち、水晶発振器1では、水晶フィルタ3の水晶ブランク3aを発熱部5bで加熱する。特に、水晶発振器1においては、発熱部5a,5bが発熱抵抗により構成されており、制御回路53が発熱部5a,5bを流れる電流を制御するので、温度制御の精度を高めることができる。これにより、水晶ブランク3aの周囲温度を略一定に保つことができるため、水晶フィルタ3の減衰特性の中心周波数を発振信号の周波数と一致させることができ、不要な雑音成分を適切に除去することができる。その結果、水晶発振器1から出力する信号の雑音特性を向上させることができる。
【0034】
また、水晶発振器1では、発振回路2の水晶ブランク2aと、水晶フィルタ3の水晶ブランク3aとを別々のパッケージP1,P2で覆うため、夫々の水晶ブランク2a,3aに応じた個別の温度制御を行うことができる。
即ち、水晶発振器1では、発振回路2の水晶ブランク2aの周囲温度を目標温度から第1範囲に収まるように発熱部5aを制御するとともに、水晶フィルタ3の水晶ブランク3aの周囲温度を目標温度から第1範囲よりも広い第2範囲に収まるように発熱部5bを制御する。これにより、厳密な温度管理が要求される発振回路2の水晶ブランク2aの周囲温度を精度よく管理することができ、水晶発振器1から出力する信号の周波数安定度を向上させることができる。
【0035】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態に係る水晶発振器1Aについて説明する。
第1の実施形態に係る水晶発振器1では、発振回路2の水晶ブランク2aと水晶フィルタ3の水晶ブランク3aとを別々のパッケージP1,P2で覆うのに対して、第2の実施形態に係る水晶発振器1Aでは、発振回路2の水晶ブランク2aと水晶フィルタ3の水晶ブランク3aとを同じパッケージP3で覆う。なお、以下において第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0036】
図5は、第2の実施形態に係る水晶発振器1Aの機能構成図である。水晶発振器1Aは、発振回路2と、水晶フィルタ3と、増幅回路4と、ヒーター回路5とを含んで構成される。発振回路2の水晶ブランク2aと水晶フィルタ3の水晶ブランク3aとは、パッケージP3で覆われる。
これにより、パッケージP3の内部温度、即ち、水晶ブランク2a,3aの周囲温度が略一定に保たれる。
【0037】
具体的には、ヒーター回路5の調整部5cは、サーミスタの出力電圧が目標温度に対応する基準電圧と一致するように発熱部5dに流す電流量を制御することで、加熱対象の水晶ブランク2a,3aの周囲温度を目標温度から所定範囲に収める。
【0038】
なお、第2の実施形態における目標温度は、発振回路2の水晶ブランク2aと水晶フィルタ3の水晶ブランク3aとの双方が安定的に動作する温度である。
また、上述のように発振回路2の水晶ブランク2aと水晶フィルタ3の水晶ブランク3aとでは、発振回路2の水晶ブランク2aの方が厳密な温度管理が要求される。そこで、水晶ブランク2a,3aの周囲温度を測定するサーミスタ等は、水晶ブランク3aよりも水晶ブランク2aの近傍に配置することとしてもよい。また、発熱部5dとして2セットのトランジスタ及び発熱抵抗を用いることで、水晶ブランク2aに対する高精度な温度管理を実現することとしてもよい。このとき、発熱抵抗の配置は、水晶ブランク2aからの距離が均等になるように配置することとしてもよい。
【0039】
以上、第2の実施形態に係る水晶発振器1Aについて説明した。第2の実施形態に係る水晶発振器1Aによれば以下の効果を期待できる。
【0040】
水晶発振器1Aでは、発振回路2の水晶ブランク2aと、水晶フィルタ3の水晶ブランク3aとを同じパッケージP3で覆い、発熱部5dを用いて加熱する。これにより、発振回路2の水晶ブランク2aだけでなく水晶フィルタ3の水晶ブランク3aについても、周波数温度特性に応じた温度制御を行うことができ、水晶発振器1から出力する信号の雑音特性を向上させることができる。また、基板上に複数のパッケージを配置する必要がなくなるため、水晶発振器1Aを小型化することができる。
【0041】
また、水晶発振器1Aでは、水晶ブランク2a,3aの双方が目標温度から所定範囲に収まるように発熱部5dを制御する。これにより、水晶ブランク2a,3aの双方を安定的に動作させることができ、水晶発振器1から出力する信号の雑音特性を向上させることができる。
【0042】
<第3の実施形態>
続いて、第3の実施形態に係る水晶発振器1Bについて説明する。第3の実施形態に係る水晶発振器1Bでは、第1及び第2の実施形態と比較して、発熱部5a乃至5dが発する熱の伝達効率を向上させる更なる工夫を有する。
以下、図6A及び図6Bを参照して、第3の実施形態に係る水晶発振器1Bの詳細について説明する。なお、図6A及び図6Bは、図4Bに対応して設けられた図面であり、基板及びパッケージP2の断面図を示す。また、図6Aは、第3の実施形態に係る水晶発振器1Bとの比較用の断面図であり、図6Bは、第3の実施形態に係る水晶発振器1Bの断面図である。なお、図6A及び図6Bでは、パッケージP2の断面図のみを示しているが、パッケージP1,P3についても同様である。
【0043】
図6Aに示すように、プリント配線の基板PWBでは、生成した回路パターンを保護するために、通常、表面にレジストと呼ばれる絶縁膜となるインク(以下、レジスト300)を塗布する。パッケージP2と基板PWB間にレジスト300が塗布されている場合、発熱部5bから発生した熱は基板PWBの銅体を通してパッケージP2全体を温めるが、レジスト300が抵抗となり、パッケージP2への熱の伝達効率が低下してしまう。
【0044】
そこで、第3の実施形態に係る水晶発振器1Bでは、図6Bに示すように、基板PWBのうち、パッケージP2の下部の少なくとも一部においてレジストを剥離する。なお、レジストを剥離する一部は、パッケージP2の下部領域の全てであるのが好ましい。
本実施形態では、パッケージP2の下部を含む矩形状の領域においてレジストを剥離することとしている。より詳細には、図4A及び図4Cに示すように、パッケージP2の底面が円形であるため、本実施形態では、パッケージP2(円)に外接する矩形状の領域においてレジストを剥離する。
【0045】
また、第3の実施形態に係る水晶発振器1Bでは、発熱部5bのパッケージP2に対する熱の伝達効率をより高めるため、図6Bに示すように、パッケージP2の底面に熱伝導シート302を設け、この熱伝導シート302を覆うようにシリコーン301を塗布することとしてもよい。これにより、発熱部5Bから発生した熱が基板PWBを介してパッケージP2(詳細には、水晶ブランク3a)に効率よく伝達することになる。
【0046】
以上説明した第3の実施形態に係る水晶発振器1Bによれば、第1及び第2の実施形態に係る水晶発振器1,1Aに比べ、発熱部5bから発生した熱を効率よく伝達することができるため、より安定した温度制御が可能になる。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0048】
例えば、上記実施形態では、1つの発振回路2に1つの水晶ブランク2aを用いることとしているが、これに限られるものではなく、1つの発振回路2に複数の水晶ブランクを用いることとしてもよい。即ち、図7A,7Bに示すように、発振回路2のトランジスタのエミッタ側又は/及びコレクタ側に水晶ブランク2b、2cを用いることとしてもよい。このようにすることで、発振回路2の出力周波数を低雑音化することができる。
この場合においても、発振回路2の水晶ブランク2a,2b,2c及び水晶フィルタ3の3aを所定のパッケージで覆い、温度管理することで、周波数特性のピークを急峻にしたことに伴う、温度変化の影響を軽減することができ、水晶発振器1から出力する信号の周波数安定度及び雑音特性を向上させることができる。
【0049】
この場合において、水晶ブランク2a,2b,2c,3aの夫々を個別のパッケージで覆うこととしてもよく、また、水晶ブランク2a,2b,2c,3aの全てを同一のパッケージで覆うこととしてもよく、また、水晶ブランク2a,2b,2c,3aを任意に組み合わせ、組み合わせ毎にパッケージで覆うこととしてもよい。
【0050】
また、図7Aに示す回路構成に代えて、図7Cに示す回路構成を採用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・・水晶発振器、2・・・発振回路、2a・・・水晶ブランク、3・・・水晶フィルタ、3a・・・水晶ブランク、4・・・増幅回路、5・・・ヒーター回路、5a、5b・・・発熱部、5c・・・調整部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10