(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の熱交換器として、凝縮・蒸発兼用熱交換器と、蒸発・凝縮兼用熱交換器と、補助熱交換器を有し、さらに流路切替え手段を有し、前記蒸発・凝縮兼用熱交換器及び前記補助熱交換器は前記植物育成空間と連通する位置に配され、前記凝縮・蒸発兼用熱交換器は前記植物育成空間と連通しない位置に配され、前記植物育成空間の温度を上昇させる暖房運転と前記植物育成空間の温度を降下させる冷房運転とを実施可能であり、前記冷房運転時においては、前記圧縮機で圧縮した冷媒を前記凝縮・蒸発兼用熱交換器から前記膨張手段を経て前記蒸発・凝縮兼用熱交換器に至らしめて前記圧縮機に戻し、前記暖房運転時においては、前記圧縮機で圧縮した冷媒を前記蒸発・凝縮兼用熱交換器から前記膨張手段を経て前記凝縮・蒸発兼用熱交換器に至らしめて前記圧縮機に戻し、さらに前記暖房運転時に、前記蒸発・凝縮兼用熱交換器から吐出される冷媒の一部を前記補助熱交換器を介して前記圧縮機に戻すことが可能であって前記補助熱交換器の表面温度を低下させ前記植物育成空間を除湿することができることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物栽培装置用の空調装置。
【背景技術】
【0002】
野菜等を栽培する植物栽培装置が知られている。植物栽培装置の規模はまちまちであり、大きなものは建屋全体が植物育成空間となっているものがある。この様な大型の植物栽培装置は、一般に植物工場や作物工場と称される。
また建屋内に設置される植物栽培装置もある。建屋内に設置される植物栽培装置についても、一つの部屋の全体が植物育成空間となっているものや、独立した装置であって部屋の中に設置されるものもある。
【0003】
また植物栽培装置の形式として、太陽光型植物工場と称されるものと、閉鎖型植物工場(人工光型植物工場とも称される)と称されるものがある。
太陽光型植物工場は温室の一種であり、太陽光を室内に取り入れて植物に光合成を行わしめる。また太陽光型植物工場は、通気用の窓を有し、窓を開閉して植物育成空間の温度を調整する。
【0004】
これに対して閉鎖型植物工場は、人工照明と空調装置とを備え、原則的に人工照明の光だけを植物に照射して植物に光合成を行わしめる。また閉鎖型植物工場は植物育成空間と外部との空気の流通を制限し、空調装置によって植物に最適な温度環境を作る。
特許文献1には、閉鎖型植物工場の一例が開示されている。
また特許文献2には、太陽光型植物工場の一例が開示されている。特許文献2に開示された発明は、ミスト発生装置を備え、ミスト発生装置で加湿して植物育成空間内の湿度を調整することができる光合成促進システムである。
【0005】
特許文献2に開示された光合成促進システムでは、ミストコントローラを有し、ミストコントローラは湿度設定値を飽差で設定する構成となっている。
特許文献2に開示された光合成促進システムは、温室に適用されるものであり、太陽光型植物工場と言える。即ち特許文献2に開示された光合成促進システムは、原則的に天然光を利用して光合成を行わしめるものである。また特許文献2に開示された光合成促進システムは、定期的に換気を行って室内の温度上昇を抑制するものであり、この点でも閉鎖型植物工場ではない。さらに特許文献2に開示された光合成促進システムは、冷房機能を持たない。特許文献2に開示された光合成促進システムは、ミスト発生装置によって湿度を調整するものであるが、除湿する機能を持たない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
閉鎖型植物工場は、人工光を使用して昼間の環境を作り出す。人工光の光源は発熱するので、植物育成空間の温度が上昇する。そのため閉鎖型植物工場には、冷房装置を備え、冷房装置を運転して植物育成空間の温度を適正な温度に低下させる構成を採用するものがある。
また夜間の環境を作り出すために、人工光を停止するが、この場合には植物育成空間の温度が降下する。そのため閉鎖型植物工場には、暖房装置を備え、暖房装置を運転して植物育成空間の温度を適正な温度に上昇させる構成を採用するものがある。
【0008】
しかしながら、従来技術の閉鎖型植物工場の多くは、植物育成空間の湿度を一定の範囲に維持する機能を持たない。
ここで植物の成長の良否には、温度だけではなく湿度も大きな要素となる。植物の成長に関わる湿度条件としては飽差が重要視される。飽差とは、ある温度と湿度の空気に、あとどれだけ水蒸気が入る余地があるかを示す指標であり、空気1立方メートル当たりの水蒸気の空き容量をグラム数で表す。即ち飽差は、現状の空気中に含み得る水蒸気量をグラム表示したものである。
より正確には、飽差は次の式で定義される。
【0009】
【数1】
【0010】
植物は呼吸しその際に水蒸気を排出するが、現状の環境の飽差が小さく、環境中に水蒸気を取り込む余裕が無い場合は、植物の呼吸が阻害され、植物の生育が遅れる。逆に環境中に水蒸気を取り込む余裕が大きすぎる場合にも弊害があるとされている。
一般に植物の生育に適する飽差は、3g/m
3 から6g/m
3 (グラムパー立法メートル)であると言われている。
例えばレタスの栽培に使われる代表的に温度は、明期(昼間の環境)が摂氏23度であり、暗期(夜間の環境)が摂氏18度である。この状態における相対湿度及び露点温度の関係は、次の表の通りである。
【0011】
【表1】
【0012】
前記した様に、従来技術の閉鎖型植物工場の多くは、植物育成空間の湿度を一定の範囲に維持する機能を持たず、植物育成空間の湿度や飽差は成り行きである。
【0013】
ここで植物育成空間が昼間の環境である場合には、成り行きであっても飽差は許容範囲に納まっている場合が多いが、冷房運転によって過剰に除湿され、飽差が大きくなり過ぎる場合もある。
これに対して夜間の環境が作られている際には、植物育成空間の湿度が過剰に高くなり、過度に飽差が小さくなってしまう傾向がある。
【0014】
即ち閉鎖型植物工場は、植物育成空間内で水耕栽培を行う構造のものが多い。そのため植物育成空間内には大量に水が存在し、且つ当該水と空気とが接する面積は広い。そのため閉鎖型植物工場は、水が蒸発して水蒸気が発生しやすい環境にある。即ち閉鎖型植物工場は湿度が上がり易く、飽差が小さくなり易い環境であると言える。
【0015】
植物育成空間が昼間の環境である場合には、人工照明が点灯しているので、人工照明の発熱によって植物育成空間の温度は上昇傾向となり、水の蒸発量が増加する。しかしながら植物育成空間の温度が上昇すると、冷房運転が行われる。その結果、蒸発器の表面の温度が露点以下に降下し、蒸発器の表面で水蒸気が凝縮して湿度が下がる。そのため植物育成空間が昼間の環境である場合には、飽差が許容範囲を越えることは少ない。
ただし、冷房によって植物育成空間内の水蒸気が過剰に凝縮してしまう場合があり、冷房運転によって飽差が大きくなり過ぎる場合がある。
【0016】
これに対して、夜間の環境が作られている際には、人工照明が消灯されるので、植物育成空間内の温度が低下傾向となる。そのため温度低下を補う必要から暖房運転が行われ、水の蒸発量は昼間の環境時と同様に相当に多いものとなる。
しかしながら、空調装置は暖房運転が行われており、湿度を低下させることができない。そのため、夜間の環境が作られている際には、植物育成空間の湿度が過剰に高くなり、過度に飽差が小さくなってしまう場合がある。
【0017】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、植物育成空間の飽差や湿度を適正な範囲に収めることが可能な植物栽培装置及び空調装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、植物育成空間を有する植物栽培装置用の空調装置であって、圧縮機と、膨張手段と、複数の熱交換器を含む冷媒循環回路を有し、当該冷媒循環回路内に相変化する冷媒を循環させる空調装置において、前記植物育成空間内を目標温度に維持し且つ飽差が所定の範囲となるように圧縮機と膨張手段を制御するコントローラを有することを特徴
の一つとする植物栽培装置用の空調装置である。
【0019】
本発明の植物栽培装置における空調装置では、空気中に含み得る水蒸気量又は湿度が所定の範囲となるように圧縮機と膨張手段が制御される。そのため植物育成空間の飽差を適正な範囲に収めることができる。
【0020】
請求項
1に記載の発明
のもう一つの特徴は、前記複数の熱交換器として、前記植物育成空間と連通する位置に配される熱交換器と、前記植物育成空間と連通しない位置に配される熱交換器を有し、前記コントローラは、前記植物育成空間と連通する位置に配される熱交換器内の冷媒の蒸発温度と、前記植物育成空間内の飽差との関係を記憶又は演算するものであって、当該熱交換器内の冷媒蒸発温度が前記植物育成空間内の飽差が前記所定の範囲内となる蒸発温度になるように前記膨張手段を制御する
点にある。
即ち請求項1に記載の発明は、植物育成空間を有する植物栽培装置用の空調装置であって、圧縮機と、膨張手段と、複数の熱交換器を含む冷媒循環回路を有し、当該冷媒循環回路内に相変化する冷媒を循環させる空調装置において、前記植物育成空間内を目標温度に維持し且つ飽差が所定の範囲となるように前記圧縮機と前記膨張手段を制御するコントローラを有し、前記複数の熱交換器は、前記植物育成空間と連通する位置に配される熱交換器と、前記植物育成空間と連通しない位置に配される熱交換器を有し、前記コントローラは、前記植物育成空間と連通する位置に配される熱交換器内の冷媒の蒸発温度と、前記植物育成空間内の飽差との関係を記憶又は演算するものであって、当該熱交換器内の冷媒蒸発温度が前記植物育成空間内の飽差が前記所定の範囲内となる蒸発温度になるように前記膨張手段を制御するものであることを特徴とする植物栽培装置用の空調装置である。
請求項
2に記載の発明は、
植物育成空間を有する植物栽培装置用の空調装置であって、圧縮機と、膨張手段と、複数の熱交換器を含む冷媒循環回路を有し、当該冷媒循環回路内に相変化する冷媒を循環させる空調装置において、前記植物育成空間内を目標温度に維持し且つ飽差が所定の範囲となるように前記圧縮機と前記膨張手段を制御するコントローラを有し、空気温度検知手段と湿度検知手段を有し、前記コントローラは、前記空気温度検知手段と前記湿度検知手段の検知信号を用いて現状の飽差を演算し、現状の飽差が所定の範囲となるように制御するものであることを特徴
とする植物栽培装置用の空調装置である。
請求項
3に記載の発明は、前記複数の熱交換器として、凝縮・蒸発兼用熱交換器と、蒸発・凝縮兼用熱交換器と、補助熱交換器を有し、さらに流路切替え手段を有し、前記蒸発・凝縮兼用熱交換器及び
前記補助熱交換器は
前記植物育成空間と連通する位置に配され、前記凝縮・蒸発兼用熱交換器は
前記植物育成空間と連通しない位置に配され、
前記植物育成空間の温度を上昇させる暖房運転と
前記植物育成空間の温度を降下させる冷房運転とを実施可能であり、
前記冷房運転時においては、
前記圧縮機で圧縮した冷媒を
前記凝縮・蒸発兼用熱交換器から
前記膨張手段を経て
前記蒸発・凝縮兼用熱交換器に至らしめて
前記圧縮機に戻し、
前記暖房運転時においては、
前記圧縮機で圧縮した冷媒を
前記蒸発・凝縮兼用熱交換器から
前記膨張手段を経て
前記凝縮・蒸発兼用熱交換器に至らしめて
前記圧縮機に戻し、さらに
前記暖房運転時に、
前記蒸発・凝縮兼用熱交換器から吐出される冷媒の一部を
前記補助熱交換器を介して
前記圧縮機に戻すことが可能であって
前記補助熱交換器の表面温度を低下させ
前記植物育成空間を除湿することができることを特徴とする請求項1
又は2に記載の植物栽培装置用の空調装置である。
【0021】
請求項
3に記載の空調装置は、ヒートポンプ式の空調装置である。
即ち請求項
3に記載の空調装置は、ヒートポンプ回路を構成する熱交換器として、凝縮・蒸発兼用熱交換器と、蒸発・凝縮兼用熱交換器を有している。そして冷房運転時においては、圧縮機で圧縮した冷媒を凝縮・蒸発兼用熱交換器から膨張手段を経て蒸発・凝縮兼用熱交換器に至らしめて圧縮機に戻す。その結果、圧縮された冷媒が凝縮・蒸発兼用熱交換器で凝縮され、膨張手段を経て蒸発・凝縮兼用熱交換器に入り、蒸発・凝縮兼用熱交換器の表面温度を低下させる。
蒸発・凝縮兼用熱交換器は、植物育成空間と連通する位置に配されているから、蒸発・凝縮兼用熱交換器の表面温度を低下させることによって植物育成空間が冷房される。また必要に応じて植物育成空間を除湿することもできる。
一方、暖房運転時においては、圧縮機で圧縮した冷媒を蒸発・凝縮兼用熱交換器から膨張手段を経て凝縮・蒸発兼用熱交換器に至らしめて圧縮機に戻す。その結果、蒸発・凝縮兼用熱交換器の表面温度が上昇する。前記した様に、蒸発・凝縮兼用熱交換器は、植物育成空間と連通する位置に配されているから、蒸発・凝縮兼用熱交換器の表面温度を上昇させることによって植物育成空間が暖房される。
また本発明の空調装置は、通常のヒートポンプ回路を構成する熱交換器に加えて補助熱交換器を有している。
補助熱交換器は、蒸発・凝縮兼用熱交換器から吐出される冷媒の一部を補助熱交換器を介して圧縮機に戻すことが可能であり、蒸発・凝縮兼用熱交換器で凝縮された冷媒を蒸発させることができる。その結果、補助熱交換器の表面温度を低下させ植物育成空間を除湿することができる。そのため本発明の空調装置によると、暖房運転を実施している際においても、植物育成空間内を除湿することができる。
【0022】
請求項
4に記載の発明は、
前記蒸発・凝縮兼用熱交換器と
前記補助熱交換器とを結ぶ流路に補助膨張手段が設けられ、
前記補助熱交換器内における冷媒の蒸発温度を検知する蒸発温度検知手段を有し、
当該蒸発温度検知手段で検知された冷媒蒸発温度が所望の温度となる様に
前記補助膨張手段が制御されることを特徴とする請求項
3に記載の植物栽培装置用の空調装置である。
【0023】
蒸発温度検知手段は、冷媒の蒸発温度を直接的にまたは間接的に検知することができるものであれば足る。従って蒸発温度検知手段は冷媒流路内に温度センサーが差し込まれた構造のものに限定されず、例えば補助熱交換器の表面温度を検知するものであったり、補助熱交換器の近傍の配管の温度を検知するものであってもよい。
【0024】
請求項
5に記載の発明は、請求項1乃至
4のいずれかに記載の植物栽培装置用の空調装置を備えた植物栽培装置である。
【0025】
本発明の植物栽培装置によると、植物育成空間温度の温度や湿度、あるいは飽差を適切に制御することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の空調装置によると、植物育成空間の飽差や湿度を適正な範囲に収めることができる。そのため本発明の空調装置を採用すると、植物の生育が良く、収量の増加が期待できる。本発明の植物栽培装置についても同様であり、植物の生育が良く、収量の増加が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の植物栽培装置1は、閉鎖型植物工場と称されるものであり、建屋2の略全域が植物育成空間3となっている。
植物育成空間3には、多層に棚5が設けられている。そして各棚5の上部側には、人工照明6が設けられている。人工照明6は、LEDや蛍光灯等の照明装置である。
各棚5には、栽培パレット7が載置されている。栽培パレット7は、レタス等の作物8を水耕栽培するものであり、内部に栽培用水(図示せず)が溜められている。また栽培パレット7に栽培用水を供給する供給配管10や、栽培用水を排出する排出用管が設けられている。
【0029】
前記した様に植物栽培装置1は、閉鎖型植物工場と称されるものであり、植物育成空間3の内外の通気は制限されている。即ち植物育成空間3には外部と連通する通気口(図示せず)はあるものの、明期(昼間の環境)は通常閉鎖されている。なお暗期(夜間の環境)は酸素を取り入れるために開かれる。
通気口にはフィルターが設けられており、フィルターによって異物や虫等が除去された空気のみが植物育成空間3に入り得る。
【0030】
また植物栽培装置1は、
図2に示す空調装置20を備えている。
空調装置20は、ヒートポンプ式空調装置であり、公知のそれと同様のヒートポンプ回路を構成する主回路11が形成されたものである。
主回路11は、
図2において太線で表示する冷媒循環回路である。主回路11は、
図2の様に、圧縮機21、凝縮・蒸発兼用熱交換器22、膨張弁群23(冷房用膨張弁及び暖房用膨張弁 いずれも膨張手段)、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び流路切替え弁(流路切替え手段)26を有し、これらが環状に接続されてなるものである。
即ち圧縮機21、凝縮・蒸発兼用熱交換器22、膨張弁群23、及び蒸発・凝縮兼用熱交換器25がこの順序に環状に接続されており、圧縮機21と凝縮・蒸発兼用熱交換器22及び蒸発・凝縮兼用熱交換器25の間に流路切替え弁26が介在されている。
【0031】
流路切替え弁26は、四方弁であり、4ポートA,B,C,Dを有している。そしてポートAに圧縮機21の吐出側が接続され、ポートBに圧縮機21の吸い込み側が接続されている。
また流路切替え弁26のポートCは、凝縮・蒸発兼用熱交換器22に接続されている。ポートDは、蒸発・凝縮兼用熱交換器25に接続されている。
流路切替え弁26は、圧縮機21の吐出側を凝縮・蒸発兼用熱交換器22に接続するか、あるいは蒸発・凝縮兼用熱交換器25に接続するかを切り換えることができる。流路切替え弁26を切り換えて、圧縮機21の吐出側を凝縮・蒸発兼用熱交換器22に接続した状態の際には、蒸発・凝縮兼用熱交換器25が圧縮機21の吸い込み側に接続される。また流路切替え弁26を切り換えて、圧縮機21の吐出側を蒸発・凝縮兼用熱交換器25に接続した状態の際には、凝縮・蒸発兼用熱交換器22が圧縮機21の吸い込み側に接続される。
【0032】
膨張弁群23は、膨張手段たる冷房用膨張弁30及び暖房用膨張弁31によって構成されている。冷房用膨張弁30及び暖房用膨張弁31は並列接続されている。より具体的には、冷房用膨張弁30を迂回するバイパス回路35が設けられており、当該バイパス回路35に暖房用膨張弁31が設けられている。暖房用膨張弁31の接続方向は、前記した冷房用膨張弁30とは逆である。即ち冷房用膨張弁30は、導入側が凝縮・蒸発兼用熱交換器22側に接続され、吐出側が蒸発・凝縮兼用熱交換器25側に接続されているのに対し、暖房用膨張弁31は、導入側が蒸発・凝縮兼用熱交換器25側に接続され、吐出側が凝縮・蒸発兼用熱交換器22側に接続されている。
バイパス回路35であって暖房用膨張弁31よりも蒸発・凝縮兼用熱交換器25側の位置に、開閉弁33が設けられている。開閉弁33は電磁弁である。
【0033】
本実施形態で採用する空調装置20は、特有の構成として補助除湿回路40を有している。補助除湿回路40は、
図2において細線で表示する回路である。
補助除湿回路40は、主回路11の膨張弁群23と蒸発・凝縮兼用熱交換器25との間が分岐され、圧縮機21の吸い込み側に至る回路であり、開閉弁41、補助膨張弁(補助膨張手段)42及び補助熱交換器43を有している。なお開閉弁41は流路切替え手段の一つである。開閉弁41は電磁弁である。
【0034】
本実施形態で採用する空調装置20で採用する圧縮機21は、内蔵するモータ(図示せず)がインバータ制御されており、回転数を任意に変更することができる。そのため圧縮機21は、冷媒の圧縮量を調整することができる。
また各膨張弁はいずれも電子式膨張弁であり、開度を調節することができる。即ち冷房用膨張弁30、暖房用膨張弁31及び補助膨張弁42はいずれも電子式膨張弁であり、開度を調節することができる。
【0035】
本実施形態で採用する空調装置20は、配管系統中に温度検知手段として、主回路蒸発温度検知手段45と、補助回路蒸発温度検知手段46を有している。主回路蒸発温度検知手段45と、補助回路蒸発温度検知手段46は熱電対やサーミスタ等の公知の温度センサーである。
主回路蒸発温度検知手段45は、蒸発・凝縮兼用熱交換器25の近傍であって圧縮機21側に設けられており、空調装置20を冷房運転した場合における蒸発・凝縮兼用熱交換器25内の冷媒の蒸発温度を検知するものである。
補助回路蒸発温度検知手段46は、補助熱交換器43内の冷媒の蒸発温度を検知するものである。
【0036】
植物栽培装置1では、空調装置20の各部材は、
図1に示すレイアウトで配置されている。
即ち植物栽培装置1には、植物育成空間3と連通する空調ダクト50があり、当該空調ダクト50に、蒸発・凝縮兼用熱交換器25と補助熱交換器43が内蔵されている。また空調ダクト50には送風機51が配されており、空調ダクト50を通風状態とすることができる。
前記した空調ダクト50は、両端が植物育成空間3と連通しており、植物育成空間3との間で循環空気路を形成している。本実施形態では、植物育成空間3内の空気が図面下側の空気導入口53から空調ダクト50内に導入され、空調ダクト50内を通過した空気が図面上側の空気吐出口55から植物育成空間3に戻される。
【0037】
また本実施形態では、空調ダクト50の空気導入口53の近傍に空気温度検知手段56と湿度検知手段57が設けられている。
【0038】
空調装置20の他の部材は、いずれも植物育成空間3とは連通しない位置にある。特に凝縮・蒸発兼用熱交換器22は、植物育成空間3の建屋の外にあり、植物育成空間3とは連通しない。
【0039】
次に空調装置20を制御する制御装置について説明する。空調装置20は、
図2の様に主コントローラ60と、電子膨張弁コントローラ61,62を有している。
主コントローラ60は、表示機能と設定機能と制御機能を備えている。主コントローラ60には、空気温度検知手段56と湿度検知手段57の検知信号が入力される。また主コントローラ60から、電子膨張弁コントローラ61,62に対して制御信号が出力される。
電子膨張弁コントローラ61には主回路蒸発温度検知手段45から蒸発・凝縮兼用熱交換器25内の冷媒蒸発温度が入力される。そして電子膨張弁コントローラ61によって冷房用膨張弁30、暖房用膨張弁31の開度が制御される。
電子膨張弁コントローラ62には補助回路蒸発温度検知手段46から補助熱交換器43内の冷媒蒸発温度が入力される。そして電子膨張弁コントローラ62によって補助膨張弁42の開度が制御される。
【0040】
主コントローラ60は、前記した様に表示機能と設定機能と制御機能を備えている。設定機能は、例えばテンキーによって実現され、植物育成空間3内の目標環境を設定することができる。具体的には、植物育成空間3の目標温度と、目標飽差を設定することができる。表示機能は、公知のディスプレイであり、設定内容や現状の温度、湿度、飽差等を表示することができる。
主コントローラ60には、空気温度検知手段56の検知温度が入力され、植物育成空間3内の温度が目標温度に一致する様に、圧縮機21、冷房用膨張弁30、暖房用膨張弁31がPID制御される。
【0041】
また主コントローラ60は、冷房運転時における蒸発・凝縮兼用熱交換器25内の冷媒の蒸発温度と、植物育成空間3内の飽差との関係が記憶あるいは演算される機能を備えている。
即ち空調装置20を冷房運転し、植物育成空間3内の温度が特定の温度となっている場合、蒸発・凝縮兼用熱交換器25内の冷媒の蒸発温度をどの程度の温度とすれば、植物育成空間3内の飽差が適正範囲に収まるかが、主コントローラ60によって記憶あるいは演算される。
【0042】
同様に、主コントローラ60には、暖房運転時における補助熱交換器43内の冷媒の蒸発温度と、植物育成空間3内の飽差との関係が記憶あるいは演算される機能を備えている。
即ち空調装置20を暖房運転し、植物育成空間3内の温度が特定の温度となっている場合、補助熱交換器43内の冷媒の蒸発温度をどの程度の温度とすれば、植物育成空間3内の飽差が適正範囲に収まるかが、主コントローラ60によって記憶あるいは演算される。
なお冷媒の蒸発温度と、植物育成空間3内の飽差との関係は、実験によって求められる。
【0043】
本実施形態の空調装置20では、植物育成空間3内の飽差を適正範囲とするのに適切な蒸発温度が選定または演算され、その信号が主コントローラ60から電子膨張弁コントローラ61及び電子膨張弁コントローラ62に送信される。
そして電子膨張弁コントローラ61及び電子膨張弁コントローラ62によって、冷房用膨張弁30、暖房用膨張弁31、補助膨張弁42の開度が制御され、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43内の冷媒蒸発温度が調節される。
【0044】
即ち除湿量は、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度に関係し、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度と現状の環境における露点との差に応じて除湿量が変わる。
また蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度は、冷媒の蒸発温度に依存し、冷媒の蒸発温度は暖房用膨張弁31及び補助膨張弁42の開度と関連する。即ち暖房用膨張弁31及び補助膨張弁42の開度を絞ると冷媒の蒸発温度が低下し、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度が低下して除湿量が増大する。逆に暖房用膨張弁31及び補助膨張弁42の開度を広げると冷媒の蒸発温度が上昇し、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度が上昇して除湿量が低下する。 そこで本実施形態では、暖房用膨張弁31の開度を制御して蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43内の冷媒蒸発温度を調節し、除湿量を調整して植物育成空間3内の飽差を適正範囲に調整する。
【0045】
次に本実施形態の植物栽培装置1の機能を空調装置20を中心に説明する。
植物栽培装置1は、人工照明6が設けられており、人工照明6を点灯することによって昼間の環境を作ることができる。また人工照明6を消灯することによって夜間の環境を作ることができる。
さらに空調装置20によって植物育成空間3の温度及び飽差を一定の範囲に収めることができる。
季節によって相違はあるものの、昼間の環境が作られている際には、人工照明6の発熱によって植物育成空間3内の温度が上昇傾向となる。そのような場合には、空調装置20を冷房運転する。
【0046】
空調装置20は、前記した様にヒートポンプ式の空調装置であるから、流路切替え弁(流路切替え手段)26を切り換えることによって、冷房運転を行うことができる。
冷房運転時における冷媒の流れは、
図3の通りである。
即ち流路切替え弁26を切り換えて、圧縮機21の吐出側を凝縮・蒸発兼用熱交換器22に接続した状態とする。この際には、蒸発・凝縮兼用熱交換器25が圧縮機21の吸い込み側に接続される。またバイパス回路35に設けられた開閉弁33を閉じ、暖房用膨張弁31(膨張手段)に冷媒が流れることを防止する。同様に補助除湿回路40に設けられた開閉弁(流路切替え手段)41を閉じ、補助膨張弁42及び補助熱交換器43に冷媒が流れることを防止する。そしてこの状態において、圧縮機21を運転する。
【0047】
その結果、圧縮機21で加圧された冷媒が、凝縮・蒸発兼用熱交換器22に導入され、熱を奪われて液化する。液化した冷媒は、冷房用膨張弁30を経由して蒸発・凝縮兼用熱交換器25に流れ込み、冷媒は蒸発して周囲から熱を奪う。なお冷房運転時には、前記した様に暖房用膨張弁31(膨張手段)に冷媒が流れることはないから、暖房用膨張弁31は機能しない。
その結果、蒸発・凝縮兼用熱交換器25の表面温度が低下し、植物育成空間3の温度を低下させる。
即ち主コントローラ60には、空気温度検知手段56の検知温度が入力され、且つ圧縮機21はインバータ制御されており、圧縮機21から供給される冷媒量を増減することができる。本実施形態では、植物育成空間3内の温度が目標温度に一致する様に、圧縮機21の回転数が増減される。
【0048】
また冷房運転中は、主回路蒸発温度検知手段45によって蒸発・凝縮兼用熱交換器25内の冷媒蒸発温度を監視し、植物育成空間3内の飽差が適切な範囲に収まる様に、冷房用膨張弁30の開度が調節される。
前記した様に、冷房運転を実施している場合には、冷房によって植物育成空間3内の水蒸気が過剰に凝縮してしまう場合がある。本実施形態によると、冷媒蒸発温度が監視され、過剰に除湿されることが防がれるので、植物育成空間3内の飽差を適切な範囲に収めることができる。
なお、除湿量を少なくするためには、冷媒蒸発温度を高めにする必要があり、現状の環境の温度と蒸発・凝縮兼用熱交換器25の表面温度との差を小さくする必要がある。そのため蒸発・凝縮兼用熱交換器25は、熱交換量を確保することを目的として、空気との接触面積が大きいものを採用することが推奨される。例えば、凝縮・蒸発兼用熱交換器22、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の内では、蒸発・凝縮兼用熱交換器25が最も大きい接触面積を有するものとする。
【0049】
また季節によって相違はあるものの、夜間の環境が作られている際には、人工照明6が消灯されて熱源が消失するから、植物育成空間3内の温度が降下傾向となる。そのような場合には、空調装置20を暖房運転する。
空調装置20は、前記した様にヒートポンプ式の空調装置であるから、流路切替え弁(流路切替え手段)26を切り換えることによって、暖房運転を行うことができる。
暖房運転時における冷媒の流れは、
図4の通りである。
即ち流路切替え弁26を切り換えて、圧縮機21の吐出側を蒸発・凝縮兼用熱交換器25に接続した状態とする。この際には、凝縮・蒸発兼用熱交換器22が圧縮機21の吸い込み側に接続される。またバイパス回路35に設けられた開閉弁33を開き、暖房用膨張弁31(膨張手段)に冷媒を流す。
その結果、圧縮機21で加圧された冷媒が、蒸発・凝縮兼用熱交換器25に導入され、蒸発・凝縮兼用熱交換器25の表面温度が上昇する。そして植物育成空間3の温度が上昇する。
【0050】
植物育成空間3の温度が上昇すると、水耕栽培の用水の蒸発が進み、飽差が小さくなって行く。その様な場合には、補助除湿回路40に設けられた開閉弁41を開き、補助膨張弁42及び補助熱交換器43に冷媒を流す。
前記した様に補助除湿回路40は、主回路11の膨張弁群23と蒸発・凝縮兼用熱交換器25との間が分岐されたものである。そして暖房運転時においては、当該部分に液状の冷媒が流れている。
即ち暖房運転時においては、圧縮機21で加圧された冷媒が、蒸発・凝縮兼用熱交換器25に導入され、外部に熱を奪われて液化する。従って蒸発・凝縮兼用熱交換器25から吐出される冷媒は、液相であり、液相状態の冷媒が、補助除湿回路40に導入される。補助除湿回路40に導入された冷媒は、補助膨張弁42及び補助熱交換器43に入り、蒸発して周囲から熱を奪う。その結果、補助熱交換器43の表面温度が低下する。補助熱交換器43は、植物育成空間3と連通する位置に設けられているから、植物育成空間3内の空気に含まれる水蒸気を凝縮し、飽差を大きくする。
【0051】
またこの間、補助回路蒸発温度検知手段46から補助熱交換器43内の冷媒蒸発温度が監視され、植物育成空間3内の飽差が適切な範囲に収まる様に、補助膨張弁42の開度が調節される。
【0052】
以上説明した実施形態では、冷房運転時における蒸発・凝縮兼用熱交換器25内の冷媒の蒸発温度と、植物育成空間3内の飽差との関係を記憶あるいは演算させた。そして冷房運転時には蒸発・凝縮兼用熱交換器25内の冷媒の蒸発温度を監視し、適切な蒸発温度となる様に冷房用膨張弁30の開度を制御した。
また以上説明した実施形態では、暖房運転時における補助熱交換器43内の冷媒の蒸発温度と、植物育成空間3内の飽差との関係を記憶あるいは演算させた。そして暖房運転時には補助熱交換器43内の冷媒の蒸発温度を監視し、適切な蒸発温度となる様に補助膨張弁42の開度を制御した。
【0053】
要するに以上説明した実施形態は、記憶又は演算によって求められた蒸発温度となる様に、冷房用膨張弁30及び補助膨張弁42の開度をフィードバック制御しており、植物育成空間3内の飽差や湿度を直接フィードバック制御するものではない。
しかしながら本発明は、この構成に限定されるものではなく、植物育成空間3内の飽差や湿度を直接フィードバックして空調装置20を運転してもよい。
【0054】
以下、本発明の変形例として、植物育成空間3内の飽差や湿度を直接フィードバックして空調装置20を運転する構成について説明する。
本実施形態(変形例)の空調装置20では、主コントローラ60に空気温度検知手段56と湿度検知手段57の検知信号が入力され、これらのデータから、現状の飽差を演算することができる。また主コントローラ60によって、圧縮機21、冷房用膨張弁30、暖房用膨張弁31及び補助膨張弁42がPID制御される。
即ち空気温度検知手段56の検知信号と目標温度を比較し、圧縮機21の回転数と、冷房用膨張弁30、暖房用膨張弁31が制御され、植物育成空間3内の温度が制御される。
【0055】
また現状の飽差と目標飽差を比較し、除湿量が適正となる様に冷房用膨張弁30と補助膨張弁42が制御される。
即ち除湿量は、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度に関係し、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度と現状の環境における露点との差に応じて除湿量が変わる。
また蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度は、冷媒の蒸発温度に依存し、冷媒の蒸発温度は冷房用膨張弁30及び補助膨張弁42の開度と関連する。即ち冷房用膨張弁30及び補助膨張弁42の開度を絞ると冷媒の蒸発温度が低下し、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度が低下して除湿量が増大する。逆に冷房用膨張弁30及び補助膨張弁42の開度を広げると冷媒の蒸発温度が上昇し、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43の表面温度が上昇して除湿量が低下する。ただし冷房用膨張弁30及び補助膨張弁42の開度を広げると、蒸発・凝縮兼用熱交換器25及び補助熱交換器43に導入される冷媒の量が増加するので、空気を冷却する能力は増大する。
【0056】
そして冷房運転時において、現状の環境における飽差が小さく、除湿する必要がある場合には冷房用膨張弁30の開度を絞って蒸発・凝縮兼用熱交換器25の表面温度を低下させる。逆に飽差が大きく、除湿する必要が無い場合であって、且つ植物育成空間3の温度をより低下させる必要がある場合は、冷房用膨張弁30の開度を開いて蒸発・凝縮兼用熱交換器25の表面温度を上昇させる。
また暖房運転時において、現状の環境における飽差が小さく、除湿する必要がある場合には補助膨張弁42の開度を絞って補助熱交換器43の表面温度を低下させる。逆に飽差が大きく、除湿する必要が無い場合には、冷房用膨張弁30の開度を開いて蒸発・凝縮兼用熱交換器25の表面温度を上昇させるか、あるいは開閉弁41を閉じて補助熱交換器43に対する冷媒の導入を遮断する。
【0057】
以上説明した実施形態では、主コントローラ60に目標飽差を入力したが、飽差に代えて湿度を入力してもよい。例えば、前記した表1に基づき、適切な飽差とするための湿度を調べ、その数値を手入力してもよい。
【0058】
以上説明した実施形態では、補助熱交換器43に至る流路に専用の補助膨張弁42を設けたが、
図5に示す様に、膨張弁群23と凝縮・蒸発兼用熱交換器22との間を分岐して補助熱交換器43に接続することにより、補助膨張弁42を省略することもできる。