(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474574
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】住宅展示構造および住宅展示方法
(51)【国際特許分類】
G09B 25/04 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
G09B25/04
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-193951(P2014-193951)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-65945(P2016-65945A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩川 君彦
(72)【発明者】
【氏名】池之内 聡
【審査官】
奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−229637(JP,A)
【文献】
特開平10−039744(JP,A)
【文献】
特開2003−216020(JP,A)
【文献】
特開2001−175183(JP,A)
【文献】
特開2001−183965(JP,A)
【文献】
特開2001−350414(JP,A)
【文献】
特開平10−123925(JP,A)
【文献】
特開平09−325689(JP,A)
【文献】
特開2001−215883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00,25/04
G09F 5/00
E04H 1/00−1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階建ての住宅の展示構造であって、
第1フロアと、前記第1フロアの上方に位置する第2フロアとを有するとともに、前記第1フロアおよび前記第2フロアそれぞれの床面上に部屋空間が形成された、住宅の構成部材の構造を展示するための建物を備え、
前記建物は、
前記第1フロアの外壁に設けられ、見学者が外部から前記第1フロアの部屋空間に出入り可能な第1開口部と、
前記第1フロアの部屋空間と前記第2フロアの部屋空間とを繋ぐ第1屋内階段と、
前記第2フロアの外壁に設けられ、見学者が外部から前記第2フロアの部屋空間に出入り可能な第2開口部とを含み、
前記建物内を回遊する見学者の動線が一方通行となるように、前記第1開口部および前記第2開口部のうちの一方が前記建物内への入口として形成され、前記第1開口部および前記第2開口部のうちの他方が前記建物内から外部に抜け出るための出口として形成されている、住宅展示構造。
【請求項2】
前記第1フロアの床面高さは、グランドレベルよりも高く、
当該住宅展示構造は、前記グランドレベルから前記第1開口部へ繋がる屋外階段をさらに備える、請求項1に記載の住宅展示構造。
【請求項3】
前記建物は、前記第1フロアの下方に位置する第3フロアの床面を形成する踊り場と、前記第1フロアの部屋空間から前記踊り場に降りる降り階段と、前記踊り場から前記第1フロアの部屋空間に昇る昇り階段とを有する第2屋内階段をさらに含む、請求項2に記載の住宅展示構造。
【請求項4】
前記踊り場に、住宅の1階の床の断面構造を示す展示ブースが設けられている、請求項3に記載の住宅展示構造。
【請求項5】
前記第1フロアの前記第1開口部側には、住宅の上階の躯体構造が露出されている、請求項2〜4のいずれかに記載の住宅展示構造。
【請求項6】
前記住宅は、集合住宅であり、
前記第1屋内階段は、途中位置に踊り場を有し、
前記第1屋内階段の踊り場に、集合住宅の界床の断面構造を示す展示ブースが設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の住宅展示構造。
【請求項7】
前記建物は、前記第1フロアと前記第2フロアとの間に位置する少なくとも1つの第4フロアをさらに有しており、
前記第1屋内階段は、前記第1フロアの部屋空間と前記第4フロアの部屋空間とを繋ぐ階段と、前記第4フロアの部屋空間と前記第2フロアの部屋空間とを繋ぐ階段とを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の住宅展示構造。
【請求項8】
前記第1開口部は、前記建物の正面に設けられ、
前記第2開口部は、前記建物の側面または裏面に設けられており、
前記建物の正面において、外壁内の躯体構造が露出されている、請求項1〜7のいずれかに記載の住宅展示構造。
【請求項9】
当該住宅展示構造は、前記第2開口部に隣接して前記建物外に設けられ、前記建物の屋根近傍まで延びる屋外通路部をさらに備え、
前記建物の屋根は、住宅の屋根構造を露出して示している、請求項1〜8のいずれかに記載の住宅展示構造。
【請求項10】
前記建物内の各フロアの部屋空間には、住宅の構成部材を展示する展示ブースが配置されている、請求項1〜9のいずれかに記載の住宅展示構造。
【請求項11】
前記第1開口部が前記入口として形成され、前記第2開口部が前記出口として形成されている、請求項1〜10のいずれかに記載の住宅展示構造。
【請求項12】
複数階建ての住宅の展示方法であって、
第1フロアと、前記第1フロアの上方に位置する第2フロアとを有する建物に、外部から前記第1フロアの床面上に形成された部屋空間へ繋がる入口を設け、前記建物内に、前記第1フロアの部屋空間から前記第2フロアの床面上に形成された部屋空間へ繋がる第1階段を配置し、前記第2フロアの部屋空間から外部に抜ける出口を設けることで、前記建物内を回遊する見学者の動線を、一方通行に形成し、
前記建物の入口側に、住宅の躯体構造を露出して展示し、
前記入口から前記出口へ至る回遊動線に沿って、住宅の構成部材の構造を展示し、
前記出口から前記建物外に抜け出る回遊動線に沿って、前記建物の屋根付近に、住宅の屋根構造を展示する、住宅展示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅展示構造および住宅展示方法に関し、特に、複数階建ての集合住宅を構成する構成部材の構造を展示するための展示構造および展示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅の構成部材の構造(たとえば、躯体構造、床構造など)を見学者が視認できるように、様々な展示用住宅が提案されている。たとえば、特開2001−183965号公報(特許文献1)では、実際に建築した住宅の基礎、床、天井および屋根等の各部の構成部材やその断面を露出させた展示用住宅が開示されている。この展示用住宅では、住宅の基礎部下が見えるように、床下の地面が掘り下げられている。
【0003】
また、特開平10−39744号公報(特許文献2)では、実物大の戸建住宅を縦に切断した断面セクションをそのまま配置し、この住宅を各部において見ることができるように、住宅断面セクションの中央に、上り口が2本で、上部で1本に合流した視認用の階段を配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−183965号公報(特許第3517172号)
【特許文献2】特開平10−39744号公報(特許第3514920号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の展示用住宅では、実際の住宅の断面構造を見学者が視認し易くすることに重点を置いているため、見学者は効率良く展示物を見学することができない。また、複数の見学者が上述のような展示用住宅を見学する場合、見学者の回遊動線が交錯し、見学通路が混雑するおそれもある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、見学者が効率良く住宅の構成部材の構造を見学することのできる住宅展示構造および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に従う住宅展示構造は、複数階建ての住宅の展示構造であって、第1フロアと、第1フロアの上方に位置する第2フロアとを有し、住宅の構成部材の構造を展示するための建物を備える。建物は、第1フロアの外壁に設けられ、見学者が出入り可能な第1開口部と、第1フロアの部屋空間と第2フロアの部屋空間とを繋ぐ第1屋内階段と、第2フロアの外壁に設けられ、見学者が出入り可能な第2開口部とを含む。建物は、建物内を回遊する見学者の動線が一方通行となるように、第1開口部および第2開口部のうちの一方が建物内への入口として形成され、これらのうちの他方が建物内から外部に抜け出るための出口として形成されている。
【0008】
好ましくは、第1フロアは、グランドレベルよりも高く、住宅展示構造は、グランドレベルから第1開口部へ繋がる屋外階段をさらに備える。
【0009】
好ましくは、建物は、第2屋内階段をさらに含む。第2屋内階段は、第1フロアの下方に位置する第3フロアとしての踊り場と、第1フロアの部屋空間から踊り場に降りる降り階段と、踊り場から第1フロアの部屋空間に昇る昇り階段とを有する。
【0010】
好ましくは、第3フロアとしての踊り場に、住宅の1階の床の断面構造を示す展示ブースが設けられている。
【0011】
また、第1フロアの第1開口部側には、住宅の上階の躯体構造が露出されていることが望ましい。
【0012】
住宅は、集合住宅であってもよい。この場合、第1屋内階段は、途中位置に踊り場を有し、第1屋内階段の踊り場に、集合住宅の界床の断面構造を示す展示ブースが設けられていることが望ましい。
【0013】
あるいは、建物は、第1フロアと第2フロアとの間に位置する少なくとも1つの第4フロアをさらに有していてもよい。この場合、第1屋内階段は、第1フロアの部屋空間と第4フロアの部屋空間とを繋ぐ階段と、第4フロアの部屋空間と第2フロアの部屋空間とを繋ぐ階段とを含む。
【0014】
好ましくは、第1開口部は、建物の正面に設けられ、第2開口部は、建物の側面または裏面に設けられている。この場合、建物の正面において、外壁内の躯体構造が露出されていることが望ましい。
【0015】
当該住宅展示構造は、第2開口部に隣接して建物外に設けられ、建物の屋根近傍まで延びる屋外通路部をさらに備えていることが望ましい。建物の屋根は、住宅の屋根構造を露出して示していることが望ましい。
【0016】
建物内の各フロアの部屋空間には、住宅の構成部材を展示する展示ブースが配置されていてもよい。
【0017】
好ましくは、第1開口部が入口として形成され、第2開口部が出口として形成されている。
【0018】
この発明の他の局面に従う住宅展示方法は、複数階建ての住宅の展示方法であって、第1フロアと、第1フロアの上方に位置する第2フロアとを有する建物に、外部から第1フロアの部屋空間へ繋がる入口を設け、建物内に、第1フロアの部屋空間から第2フロアの部屋空間へ繋がる第1階段を配置し、第2フロアの部屋空間から外部に抜ける出口を設けることで、建物内を回遊する見学者の動線を、一方通行に形成している。住宅展示方法は、建物の入口側に、住宅の躯体構造を露出して展示し、入口から出口へ至る回遊動線に沿って、住宅の構成部材の構造を展示し、出口から建物外に抜け出る回遊動線に沿って、建物の屋根付近に、住宅の屋根構造を展示する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、見学者は、効率良く住宅の構成部材の構造を見学することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る住宅展示構造を模式的に示す外観図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る住宅展示用の建物の第1フロアを示す平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る住宅展示用の建物の第2フロアと屋外経路部とを示す平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る住宅展示用の建物の屋根を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る住宅展示用の建物の第2フロアの天井付近の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0022】
(住宅展示構造の概要)
はじめに、
図1を参照して、本実施の形態に係る住宅展示構造1の概要について説明する。
【0023】
住宅展示構造1は、展示会場に建てられた2階建ての建物11と、建物11の一方の側面側に隣接して設けられた屋外通路部13とを備えている。本実施の形態では、建物11は、見学者が、展示会場のグランドレベルGLにおいて、建物11の正面側のみ全体の外観が観覧できるように建てられている。
【0024】
建物11は、住宅展示用の建物であり、より具体的には、2階建ての集合住宅を構成する構成部材の構造を展示するための建物である。建物11を構成する各部材の寸法は、実棟(集合住宅)の構成部材の寸法と同じである。本実施の形態において、住宅の構成部材には、少なくとも、住宅の躯体(梁、柱など)および床が含まれ、望ましくは、屋根が含まれる。
【0025】
建物11は、第1フロア21と、第1フロア21の上方に位置する第2フロア22とを有している。第1フロア21は、建物11の1階に相当し、第2フロア22は、建物11の2階に相当する。
【0026】
建物11の入口31は、外部から第1フロア21の部屋空間へ繋がる位置に設けられている。建物11の出口32は、第2フロア22の部屋空間から外部へ抜け出る位置に設けられている。すなわち、第1フロア21の外壁に設けられた、見学者が出入り可能な開口部が、入口31として形成され、第2フロア22の外壁に設けられた、見学者が出入り可能な開口部が、出口32として形成されている。入口31は、建物11の正面側に設けられ、出口32は、建物11の一方の側面側(屋外通路部13側)に設けられている。
【0027】
建物11の正面側の外壁には、外装材(サイディング)および断熱材が配置されておらず、正面全体において、外壁内の躯体構造が露出されている。すなわち、建物11の梁33、柱34、および、耐力壁の補強構造としてのダブルブレース35が露出されている。なお、これらの部材の隙間から外部への人や物の落下を防止するために、各フロアの外壁は、透明パネル36により覆われている。透明パネル36は、たとえば部屋空間側に設けられている。
【0028】
ここで、建物11の梁33は、第1フロア21の床下位置にも設けられている。つまり、第1フロア21の正面側には、住宅の上階(2階以上)の躯体構造が露出されている。これにより、正面側においては、構造上、第1フロア21および第2フロア22は、それぞれ住宅の2階および3階として展示することができる。したがって、通常近くで見ることができない、1階天井と2階床との間に位置する梁33などの構成を、グランドレベルGLにおいて視認することができる。
【0029】
本実施の形態では、建物11の第1フロア21は、グランドレベルGLよりも高く、実棟の1階よりも嵩上げされている。そのため、住宅展示構造1は、建物11外において、グランドレベルGLから建物11の入口31へ繋がる屋外階段12をさらに備えている。第1フロア21の高さは、グランドレベルGLに起立する成人の顔の高さと同じぐらいであることが望ましい。具体的には、第1フロア21の高さは、グランドレベルGLから1200mm〜1500mm程度の高さであることが望ましい。これにより、見学者は、上記した、第1フロア21の正面側に露出された梁33を、起立したまま間近で見ることができる。
【0030】
屋外通路部13は、建物11の出口32に隣接して設けられ、建物11の屋根25の近傍にまで延びている。本実施の形態では、屋外通路部13は、展示会場の2階デッキ部14上に形成されている。
【0031】
(建物の内部構成)
次に、
図2および
図3を参照して、建物11の内部構成について説明する。
図2には、建物11の第1フロア21の平面図が示され、
図3には、建物11の第2フロア22の平面図が示されている。なお、各図には、建物11の正面側が矢印A1にて示されている。
【0032】
図2に示されるように、建物11は、第1フロア21よりも下方に位置し、第1フロア21よりも狭い第3フロア23をさらに有している。第3フロア23は、建物11の地階に相当する。第3フロア23の高さは、グランドレベルGL近傍の高さである。
【0033】
このように、建物11は高さの異なる3つのフロアを有するため、建物11内には、第1フロア21の部屋空間210から第2フロア22の部屋空間220へ繋がる階段(第1屋内階段)41と、第1フロア21の部屋空間210から第3フロア23へ繋がる階段(第2屋内階段)42とが設けられている。
【0034】
階段41は、途中位置に踊り場410を有する折返し階段として形成されている。階段41は、第1フロア21から踊り場410にまで延在する下側階段411と、踊り場410から第2フロア22にまで延在する上側階段412とを有している。階段41は、第1フロア21に位置する昇り口、および、第2フロア22に位置する降り口の双方が、建物11の正面側を向くように配置されている。本実施の形態では、階段41の上側階段412は、建物11の他方の側面側に位置する外壁に隣接している。
【0035】
階段42は、第1フロア21の部屋空間210から第3フロア23に降りる降り階段421と、第3フロア23から第1フロア21の部屋空間210に昇る昇り階段422とを有している。階段42は、平面視においてL字状に形成されている。
【0036】
降り階段421の、第1フロア21に位置する降り口は、建物11の正面側を向くように配置され、その幅方向両側が、建物11の他方の側面側に位置する外壁と、階段41の昇り口とにそれぞれ隣接している。昇り階段422の、第1フロア21に位置する降り口は、建物11の一方の側面側を向くように配置されている。昇り階段422は、階段41の下方において下側階段411を横切るように配置されている。この場合、第3フロア23は、階段41の下方に形成された狭い床部であることから、階段42の踊り場420として機能する。
【0037】
階段41,42が上記のように配置される場合、第1フロア21の部屋空間210は、階段41,42よりも正面側に位置する正面側空間211と、階段41,42よりも一方の側面側に位置する側面側空間212とで構成される。同様に、第2フロア22の部屋空間220は、階段41の正面側に位置する正面側空間221と、階段41の一方の側面側に位置する側面側空間222とで構成される。
【0038】
上記のような構成の建物11内に、集合住宅を構成する様々な構成部材の構造が展示される。
【0039】
具体的には、階段42の踊り場420(第3フロア23)に、住宅の1階の床の断面構造を示す展示ブース51が設けられている。展示ブース51では、住宅の1階の床の断面構造が、第1フロア21の床面高さ付近に展示されている。また、第1フロア21と第2フロア22との間に位置する階段41の踊り場410には、集合住宅の界床の断面構造、すなわち遮音床構造を示す展示ブース52が設けられている。このように、住宅の床の断面構造が、建物11の床と関連付けて展示されるため、見学者は実棟の床構造を容易にイメージすることができる。
【0040】
また、第1フロア21の側面側空間212には、住宅の壁構造や、住宅の配管防音材が展示されている。具体的には、第1フロア21の側面側空間212の間仕切り部55に、住宅の間仕切り壁として採用される耐力壁の構造が露出されている。また、第1フロア21の一方の側面側に位置する外壁部56には、住宅の外壁として採用される二重耐力壁の構造が露出されている。また、第1フロア21および第2フロア22の天井には、仕上げ材が配置されておらず、住宅の1階および2階の天井内の躯体構造がそれぞれ露出されていてもよい。
【0041】
さらに、第1フロア21の側面側空間212内、および、第2フロア22の側面側空間222内にも、別途、展示ブース53,54が設けられていてもよい。第1フロア21の展示ブース53では、たとえば、集合住宅の下水の配管材が展示される。この場合、実棟の配管材の防音性能を示すために、実棟に採用される配管材のカットサンプルと、一般的な配管材のカットサンプルとが、実際に手に取れるように並べて置かれる。第2フロア22の展示ブース54には、たとえば、実棟に採用され得る柱部材のカットサンプル、遮音コンクリートのカットサンプル、および、天井パネルなどが陳列される。
【0042】
(屋外通路部の構成)
次に、
図3および
図4を参照して、屋外通路部13の構成について説明する。
【0043】
屋外通路部13は、建物11の第2フロア22と略同じ高さの2階デッキ部14上に形成されている。2階デッキ部14は、建物11の出口32に繋がる廊下部71と、廊下部71に隣接し、建物11の一方の側面から離れて配置された屋外床部72とを有している。
【0044】
屋外通路部13は、2階デッキ部14の廊下部71と、屋外床部72上に配置された階段61と、これらの間に位置する屋外床部72の一部とを含む。これにより、階段61の踊り場610において、見学者は、屋根25の構造を間近で見学することができる。階段61は、たとえば、昇り口が正面側を向くように配置されている。
【0045】
ここで、
図4を参照して、建物11の屋根25の構成例について説明する。建物11の屋根25の正面側または一方の側面側(出口32側)の少なくとも一部は、住宅の屋根構造が露出して示されている。本実施の形態では、側面側の屋根部252の一部253において、瓦が剥がされており、屋根25を支える構成部材(広小舞など)が露出されている。この部分253から、屋根裏構造を視認することもできる。屋根25の瓦の種類は、正面側と側面側とで異ならせてもよい。正面側の屋根部251は、たとえば化粧スレート瓦によって仕上げられている。側面側の屋根部252は、たとえば陶器製平瓦によって仕上げられており、その上には、太陽光パネルが設置されている。
【0046】
(見学者の回遊動線)
住宅展示構造1が上述のような建物11および屋外通路部13を備えるため、建物11内および建物11外を回遊する見学者の動線は、一方通行に形成される。見学者の回遊動線について、見学者の見学順序とともに具体的に説明する。
図2,
図3には、建物11内における見学者の回遊動線L1が示され、
図3,
図4には、建物11外における見学者の回遊動線L2が示されている。
【0047】
図2を参照して、見学者は、まず、屋外階段12から入口31を介して、建物11の第1フロア21の部屋空間210(正面側空間211)へ入る。第1フロア21の部屋空間210へ入ると、見学者は、一旦、降り階段421を介して第3フロア23へ降りる。第3フロア23では、展示ブース51に展示された1階床構造を見学することができる。
【0048】
展示ブース51の見学が終わると、昇り階段422を昇り、第1フロア21の部屋空間210(側面側空間212)へ出る。第1フロア21の側面側空間212では、見学者は、間仕切り部55や外壁部56において露出された、住宅の壁構造を視認することができる。また、該空間212に配置された展示ブース53において、配管材を実際に手に取り防音性能について確認することができる。
【0049】
見学者が一回りして第1フロア21の正面側空間211へ戻ると、正面側の外壁の構造を建物11内からも確認することができる。その後、見学者は、第2フロア22へ至る階段41(下側階段411)を昇る。
【0050】
図3を参照して、階段41の踊り場410では、見学者は、展示ブース52に展示された界床構造を見学することができる。踊り場410からさらに階段41(上側階段412)を昇り、第2フロア22の部屋空間220(正面側空間221)へ至ると、第2フロア22においても、正面側の外壁の構造を確認してもよい。
【0051】
その後、見学者は、第2フロア22の側面側空間222へ移動する。該空間222では、展示ブース54において、住宅の構成部材のサンプルを見学することができる。
【0052】
住宅11内での見学が終わると、出口32を介して、建物11外の屋外通路部13へ抜け出る。屋外通路部13へ出た見学者は、正面側へ迂回してから階段61を昇り、
図4に示す踊り場610において、建物11の屋根25の構造や太陽光パネルの設置状況などを見学することができる。
【0053】
このように、建物11内外の回遊動線L1,L2が一方通行に形成されているため、見学者は、効率良く短時間で、集合住宅の展示物を見学することができる。また、複数の見学者が同時に見学する場合でも、見学者同士がぶつかったり、見学通路が混雑するといった不都合を解消または低減することができる。
【0054】
なお、屋外通路部13の階段61は、階段61を昇る見学者と階段61を降りる見学者とがぶつかり合うことのないよう、その横幅は、建物11内の階段41,42の横幅よりも広く形成されていることが望ましい。あるいは、階段61は、建物11内の階段42と同様に、昇り階段と降り階段とを有してもよい。
【0055】
以上説明したように、建物11を利用して、2階建て集合住宅の、通常見ることができない構成部材(梁、柱、耐力壁などの躯体や、床、屋根、配管材など)の構造を、見学者に視認させることができる。また、建物11を構成する各部材の寸法は、実棟の構成部材に即した寸法であるため、見学者は、集合住宅の雰囲気を体感しながら、実棟に搭載される技術を確かめることができる。
【0056】
なお、建物11の屋根25の屋根裏構造、すなわち住宅の屋根裏構造をより間近で視認可能とするためには、
図5に示されるように、建物11内に、第2フロア22の部屋空間220(正面側空間221)から第2フロア22の天井付近まで延びる屋根裏階段43をさらに配置してもよい。階段43の踊り場430上の天井(すなわち、建物11の第2フロア22の天井)は切り抜かれており、階段43の踊り場430に起立した見学者は、屋根裏構造を視認することができる。また、建物11の天井の切断面は露出されており、見学者は、住宅の2階天井の断面構造を確認することもできる。
【0057】
なお、この階段43を通過する動線L3は、例外的に双方通行可能に形成されているが、階段43も、階段42と同様に昇り階段と降り階段とを設け、一方通行となるように構成されてもよい。
【0058】
上記実施の形態では、建物11の出口32は、建物11の一方の側面側に設けられることとしたが、裏面側に設けられてもよい。また、建物11の入口31は、正面側に設けられることとしたが、他の面に設けられてもよい。ただし、入口31が設けられる面と、出口32が設けられる面とは、異なっていることが望ましい。
【0059】
また、屋外通路部13に、階段61が設けられることとしたが、階段61に代えてスロープが設けられてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態では、建物11内外の回遊動線L1,L2が一方通行に形成されていることとしたが、少なくとも建物11内の回遊動線L1が一方通行に形成されていればよい。
【0061】
また、上述のような建物11を利用した住宅展示方法が、提供されてもよい。すなわち、建物11の入口31側に、住宅の躯体構造を露出して展示し、入口31から出口32へ至る回遊動線L1に沿って、住宅の構成部材の構造を展示し、出口32から建物11外に抜け出る回遊動線L2に沿って、建物11の屋根25付近に、住宅の屋根構造を展示する方法が、提供されてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、建物11が2階建ての建物であることとしたが、3階建て以上の建物であってもよい。つまり、入口31が設けられた第1フロア21と、出口32が設けられた第2フロア22との間に、少なくとも1つの第4フロア(図示せず)をさらに有していてもよい。その場合、最下階である第1フロア21の部屋空間210と最上階である第2フロア22の部屋空間220とを繋ぐ屋内階段は、第1フロア21の部屋空間210と第4フロアの部屋空間とを繋ぐ階段と、第4フロアの部屋空間と第2フロア22の部屋空間220とを繋ぐ階段とを含んでいるものとする。
【0063】
また、上記実施の形態では、第1フロア21の外壁に設けられた開口部が入口31として形成され、第2フロア22の外壁に設けられた開口部が出口32として形成されていることとしたが、入口31と出口32とが逆であってもよい。すなわち、第1フロア21の外壁に設けられた開口部および第2フロア22の外壁に設けられた開口部のうちの一方が、建物11内への入口31として形成され、これらのうちの他方が、建物11内から外部に抜け出るための出口32として形成されていればよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、展示対象の住宅が集合住宅であることとして説明したが、戸建住宅を展示対象としてもよい。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 住宅展示構造、11 建物、12 屋外階段、13 屋外通路部、14 階デッキ部、21 第1フロア、22 第2フロア、23 第3フロア、25 屋根、31 入口、32 出口、33 梁、34 柱、35 ダブルブレース、36 透明パネル、41,41,42,43,61 階段、51,52,53,54 展示ブース、55 間仕切り部、56 外壁部、71 廊下部、72 屋外床部、210,220 部屋空間、410,420,430,610 踊り場、411 下側階段、412 上側階段、421 降り階段、422 昇り階段、GL グランドレベル、L1,L2,L3 動線。