(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1等、従来知られている重合方法で得られるU/A樹脂は数10nm〜数100nm程度のサブミクロンレベルの微細な粒子であった。このため、これを加工するためには、エマルジョン加工に常用されるコーティング法等により、U/A樹脂を媒体である水から分離することなく行われるのが一般的であった。
【0005】
しかしながら、この方法で得られるU/A樹脂を輸送するためには、多量に水を同伴しているU/A樹脂の分散液(エマルジョン)を輸送する必要があり、決して効率的な方法とは言い難いものであった。
これを回避するためには、前記U/A樹脂を、例えば噴霧乾燥法のような、特殊な乾燥方法を用いて乾燥し、固形状の粒子とすればよいが、このような方法は、エネルギー消費が大きく、また樹脂の組成等によっては、噴霧乾燥中に熱融着などが起こって粒子径の調整が難しかったり、乾燥機の内壁に付着したりするという問題点を有している。
【0006】
そこで、本発明は、粒子径のより大きなU/A樹脂粒子を得ることにより、水と樹脂を分離するためのエネルギー消費を低減させて、水からの分離を容易とし、輸送を効率化すると共に、樹脂の取り扱い性を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、以下の[1]〜[9]に存している。
[1]ウレタンポリマーである(A)成分と(メタ)アクリル系単量体である(B)成分とを、分散安定剤である(C)成分を含む水性媒体中に添加・分散させ、次いで重合開始剤である(D)成分を用いて前記(B)成分を重合させることを特徴とする、ウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子の製造方法。
[2]前記の(A)成分と(B)成分とを予め混合した混合物を、前記(C)成分を含む水性媒体中に添加・分散させることを特徴とする[1]に記載のウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子の製造方法。
【0008】
[3]前記の(A)成分と(B)成分とを予め混合した混合物が、前記(B)成分の存在下で、カルボキシル基含有ジオールと多価イソシアネート化合物とを反応させて、前記(A)成分を生成することにより得られたものであることを特徴とする[2]に記載のウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子の製造方法。
[4]前記(A)成分のカルボキシル基の少なくとも一部が塩基性化合物で中和されたものであることを特徴とする[3]に記載のウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子の製造方法。
【0009】
[5]前記の(A)成分と(B)成分との重量比率が、(A)/(B)=80/20〜20/80であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載のウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子の製造方法。
[6]前記(C)成分が部分ケン化ポリ酢酸ビニルであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載のウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子の製造方法。
【0010】
[7]前記のウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子の粒子径が、5〜250μmであることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子の製造方法。
[8]平均粒子径が5〜250μmであるウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子。
【発明の効果】
【0011】
この発明の製造法で得られるU/A樹脂の粒子径は、例えば5〜250μm程度のミクロンレベルなので、従来の乳化重合法によって得られた粒子よりも1000倍程度大きくなる。このため、水と分離する方法として、濾過等の単純でエネルギーをほとんど要さない方法を用いることが可能となり、U/A樹脂を効率的に分離・取得することができ、常法によって乾燥することも可能である。このため、得られたウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子は、粒子状で輸送が可能となり、輸送を効率化することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
この発明は、ウレタンポリマー((A)成分)と(メタ)アクリル系単量体((B)成分)との混合物を、分散安定剤((C)成分)を含む水性媒体中で、重合開始剤((D)成分)を用いて前記(B)成分を重合させてウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂(U/A樹脂)粒子を製造する方法である。
【0014】
[1.ウレタンポリマー((A)成分)]
前記(A)成分であるウレタンポリマーは、多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とをウレタン化反応して得られるポリマーである。
【0015】
前記多価イソシアネート化合物は、一分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物をいい、具体例として、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート又はこれらの混合物等があげられる。
【0016】
前記ポリオール化合物とは、一分子中に少なくとも2つの水酸基を有する化合物である。
その具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、メチルペンタンジオールアジペート等の比較的低分子量のポリオール類、又はこれらの少なくとも1種と、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、(無水)フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸の少なくとも一種とを重縮合して得られるポリエステルポリオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリアルキレングリコール等のポリエーテルポリオール類、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリル酸エステルポリオール、及びこれらのポリオール類にプロピレンオキシドを付加したポリエーテルポリオール類などが挙げられる。
これらのポリオール化合物は、1種のみを用いてもよく、複数種を用いてもよい。
【0017】
これらのポリオール化合物の中でも、前記のポリカーボネートジオールやポリエステル系ジオール又はポリオールは、粒子化したときにベタつき(タック性)が少ない点で好ましい。
【0018】
前記ジオール化合物としてカルボキシル基含有ジオールを用いた場合、得られる(A)成分(ウレタンポリマー)は、カルボキシル基の存在により、水性分散液が安定化するとともに、後述する懸濁重合の際、分散安定性も得られるので好ましい。
【0019】
前記(A)成分を水性分散体として得たい場合、前記の多価イソシアネート化合物とジオール化合物との混合比は、多価イソシアネート化合物/ジオール化合物(当量比)=1.2/1.0以上、2.0/1.0以下が好ましい。
混合比が1.2/1.0未満では、生成するウレタンプレポリマーの粘度が高くなり、後述する懸濁重合の際に水性媒体への分散性が低下して、凝集したり粗大粒子が発生したりすることがある。一方、前記混合比が2.0/1.0より大きいと、未反応の多価イソシアネートが多くなって、水性媒体分散時に凝集したり、発泡が起こったりして、分散状態が悪化することがある。
混合比の下限は1.4/1.0がより好ましく、またその上限は、1.9/1.0がより好ましい。
【0020】
前記ウレタン化反応の反応温度や反応時間は、ウレタンポリマーの製造において通常用いられる条件と同様の条件でよく、例えば反応温度は50〜120℃、好ましくは70〜100℃であり、反応時間は0.5〜15時間、好ましくは2〜7時間、より好ましくは3〜5時間である。
【0021】
前記カルボキシル基含有ジオールを用いる場合、全ジオール化合物に対するカルボキシル基含有ジオールの使用割合は、30重量%以下がよく、20重量%以下が好ましい。30重量%より大きいと、水に溶解しやすくなる点で好ましくない場合がある。一方、使用割合の下限は、0.5重量%がよく、1.0重量%が好ましい。0.5重量%より小さいと、所望の粒径の微粒子が形成しにくい場合があり、好ましくない。
【0022】
前記ジオール化合物の一部にカルボキシル基含有ジオールを用いた場合、すなわち、(A)成分にカルボキシル基が含まれる場合、必要に応じて、この(A)成分のカルボキシル基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで、粒子の分散性が向上することがある。
この塩基性化合物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、アンモニア等があげられる。
【0023】
[2.(メタ)アクリル系単量体((B)成分)]
前記(B)成分は、(メタ)アクリル系単量体であり、二重結合を1つ有する単官能(メタ)アクリル系単量体や、二重結合を複数有する多官能(メタ)アクリル系単量体が含まれる。また、この(B)成分が例えば水酸基のような、ウレタンポリマー((A)成分)と結合可能な官能基を有すると、(A)成分と(B)成分とをさらに緊密に複合化することができるので好ましい。このような、ウレタンポリマー((A)成分)と結合可能な官能基を有する重合性単量体を、「ウレタン結合性重合性単量体」と称する。
なお、この明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0024】
前記単官能(メタ)アクリル系単量体の例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等の(メタ)アクリル酸エステル類があげられる。
【0025】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
【0026】
また、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。
【0027】
前記多官能(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリル系単量体やトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレート類が例示でき、また、多官能ウレタン結合性重合性単量体としてはトリスアクリル酸=ヒドロキシエチルリジントリ(メチレン)等が例示できる。
【0028】
前記ウレタン結合性重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシイソプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体等をあげることができる。
これらの(メタ)アクリル系単量体は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
[3.その他の単量体成分]
本発明のU/A樹脂粒子の製造方法においては、必須成分である前記の(A)成分、(B)成分に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニルその他のビニル系単量体などの重合性単量体も使用することができる。
【0030】
例えば、前記(B)成分以外の重合性単量体としては、スチレン及びその誘導体として、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等があげられ、また酢酸ビニルその他のビニル系単量体の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系化合物、アクリロニトリル等の重合性ニトリル類、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、その他の多官能重合性二重結合含有単量体が挙げられる。
【0031】
[4.(A)成分と(B)成分との混合物]
前記(A)成分と(B)成分とは、前記(C)成分を含む水性媒体中に添加・分散されるが、これらは、両者を予め混合した混合物を添加してもよく、個別に添加してもよい。より均一な生成物を得るためには、予め両者を混合した混合物を添加・分散することが好ましい。
なお、(A)成分が水性分散液として得られる場合、(A)成分と(B)成分との混合物は、混合液(又は混合分散液)として得られる。
【0032】
両者を混合した混合物を得る方法としては、前記(A)成分であるウレタンポリマーの生成反応後、得られた(A)成分に前記(B)成分を混合する方法や、前記(B)成分の構成成分である(メタ)アクリル系単量体の存在下で、多価イソシアネート化合物とジオール化合物とをウレタン化反応させて(A)成分を生成させて両者の混合物を得る方法が好ましく用いられる。
【0033】
特に後者の方法を用いた場合、得られる微粒子は、(A)成分と(B)成分とがより緊密に複合化された粒子となるので、更に好ましい。中でも、前記(B)成分中にその少なくとも一部として、前記の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体等のウレタン結合性重合性単量体を含むと、水酸基が多価イソシアネートと反応して、(A)成分中に重合性二重結合が含まれることとなり、(メタ)アクリル系単量体を重合する際に、この重合性二重結合が(B)成分の(メタ)アクリル系単量体と反応して(A)成分と(B)成分とが、さらに緊密に複合化し得るので、特に好ましい。
【0034】
前記の(A)成分と(B)成分との混合割合は、重量比率で、(A)/(B)=80/20以下がよく、70/30以下が好ましい。80/20より大きいと、微粒子が形成されにくい場合がある。一方、混合割合の下限は、20/80がよく、30/70が好ましい。20/80より小さいと、べたつきが生じやすいことがある。
【0035】
[5.(C)成分(分散安定剤)]
(C)成分の分散安定剤としては、水中油型の分散液を形成するために通常用いられる分散安定剤が特に制限無く使用できる。その具体例としては、例えば部分ケン化ポリ酢酸ビニルや完全ケン化ポリ酢酸ビニル(ポリビニルアルコール)等のいわゆるポリビニルアルコール(以下「PVA」と記す)類、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ゼラチンなどの水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0036】
また、分散助剤としてラウリル硫酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類やグリセリン脂肪酸エステル類などの非イオン性界面活性剤等を使用してもよい。これらの分散剤あるいは分散助剤は単独で又は2種類以上を組合せて用いることもできる。
【0037】
部分ケン化ポリ酢酸ビニルの例としては、日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールGM−14」、「同GH−17」、「同GH−20」等、(株)クラレ製「クラレ ポバールPVA217」(商品名、以下同じ)、「同PVA220」等、電気化学工業(株)製「デンカポバールB−17」、「同B−20」等が挙げられる。
【0038】
完全ケン化ポリ酢酸ビニル(ポリビニルアルコール)の例としては、日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールNM−14」、「同NH−18」、「同NH−26」等、(株)クラレ製「クラレ ポバールPVA117」、「同PVA110」等、電気化学工業(株)製「デンカポバールK−17E」、「同K−24E」等が挙げられる。
【0039】
この(C)成分は水性媒体に溶解又は分散させて用いられる。この水性媒体とは、水、又は水及び水と相互溶解可能な水性アルコール(メタノール、エタノール等)の混合溶媒等があげられる。
【0040】
この(C)成分の使用割合は、(A)成分及び(B)成分の固形分合計量に対し、1重量%以上がよく、2重量%以上が好ましい。1重量%より少ないと、生成した粒子を水系媒体中に安定して分散させる効果が不足して、粗大粒子を生成したり、粒子が分離・沈降したりすることがある。一方、使用割合の上限は、20重量%がよく、15重量%が好ましい。20重量%より多いと、得られるU/A樹脂粒子の平均粒子径が後述する範囲未満となりやすく、微粒子の生成が多くなって、濾過による水性媒体からの分離が困難となり、分離・洗浄工程に長時間を要することがある。
【0041】
[6.(D)成分(重合開始剤)、その他の添加物]
(D)成分の重合開始剤としては、通常のラジカル重合で使用される重合開始剤を特に制限無く使用することができる。このラジカル重合開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物等のラジカル重合開始剤があげられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらのラジカル重合開始剤と、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)等の還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤として用いることもできる。
この(D)成分の使用量は、例えば(メタ)アクリル系単量体に対して、0.01〜2重量%等の、通常のラジカル重合に一般的に用いられる量で差し支えない。
【0042】
更に、本発明方法においては、必要に応じて、(メタ)アクリル系単量体の重合に使用される重合度調整剤(連鎖移動剤、架橋剤)、酸化防止剤、pH調整剤、レドックス系開始剤の活性化剤等の各種重合助剤を適宜添加することができ、これらの各成分の使用量・使用条件等は、従来(メタ)アクリル系単量体の重合で実施されている一般的な量・条件で差し支えない。例えば、重合度調整剤は(メタ)アクリル系単量体に対して0.01〜5重量%、酸化防止剤はU/A樹脂に対して0.01〜5重量%、pH調整剤はU/A樹脂に使用される酸成分に対して、アンモニアや水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質を0.5〜1.5当量程度をそれぞれ必要に応じて使用すればよい。
【0043】
なお、本発明方法において使用可能な重合度調整剤としては、トリクロルエチレン、四塩化炭素、2−メルカプトエタノール、オクチルメルカプタン等の連鎖移動剤、フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の架橋剤が例示される。
【0044】
[7.ラジカル重合反応]
ラジカル重合反応は、前記の通り、(A)成分と(B)成分との混合物を、(C)成分を含む水性媒体中に添加・分散させ、次いで(D)成分を用いて前記(B)成分を重合させることにより行われる。これにより、U/A樹脂水性懸濁液が得られる。
【0045】
このラジカル重合反応の重合温度は、通常50〜100℃程度で、反応時間は、通常2〜16時間程度、好ましくは3〜10時間程度である。圧力条件は、反応温度に合わせて、反応系中の液状成分、例えばジオール類や(メタ)アクリル単量体が還流するような条件とするのがよい。
【0046】
得られた前記U/A樹脂水性懸濁液は、その粒子径が従来法で得られたものよりも大きいため、濾過により、U/A樹脂粒子と水性媒体とを分離することが可能となる。
得られるU/A樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上、中でも特に好ましくは20μm以上である。平均粒子径が5μmより小さいと、得られた微粒子の分離に手間を要することがある。一方、平均粒子径の上限は、好ましくは250μm、より好ましくは200μm、特に好ましくは150μm、中でも特に好ましくは100μmである。平均粒子径が250μmより大きいと、製造工程において分離・沈降が生じやすくなるという問題点を生じる場合がある。
なお、粒子径の測定方法としては、光学顕微鏡で観察する方法や、レーザー回折型粒子径測定機、光散乱型粒子径測定機などを用いて測定する方法などが挙げられる。
【0047】
[8.用途]
このようにして製造されたU/A樹脂粒子は、その皮膜形成能を活かしてコーティング剤、化粧料等の用途向けに、より簡便な加工方法を適用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。まず、使用した原材料について説明する。
【0049】
(原材料)
[(A)成分の原料]
・P−2010…メチルペンタンジオールアジペート、(株)クラレ製:P−2010、水酸基価(OHV):57
・Bis−MPA…ジメチロールプロピオン酸、広栄パーストープ(株)製:Bis−MPA
・IPDI…イソホロンジイソシアネート、エボニック・デグサ・ジャパン(株)製:IPDI
【0050】
[(B)成分]
・MMA…メチルメタクリレート、三菱レイヨン(株)製
・BA…ブチルアクリレート、三菱化学(株)製
【0051】
[(C)成分]
・PVA205…ポリビニルアルコール、(株)クラレ製:PVA205、10重量%水溶液
[(D)成分]
・H−70…t−ブチルハイドロパーオキサイド、化薬アクゾ(株)製、:カヤブチルH−70
・アスコルビン酸…BASFジャパン(株)製
【0052】
[実施例1]
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、P−2010を60重量部、Bis−MPAを9.4重量部、MMAを70重量部、BAを39重量部加え、撹拌及び昇温を開始した。内温が50℃となったところで、IPDIを40重量部加えて90℃に昇温し、引き続き90℃に維持して5時間ウレタン化反応を行い、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系単量体との混合物を得た。(この時の(A)ウレタンポリマー/(B)(メタ)アクリル系単量体の重量比は、50/50であった。)
別途準備した温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコにPVA205の5重量%水溶液70重量部、イオン交換水630重量部を加え、その後、60℃に加温し、撹拌を開始した。
ここにH−70を0.3重量部、アスコルビン酸を0.1重量部添加して、液温を60℃に調節しながら、前記で得たウレタンポリマーと(メタ)アクリル系単量体との混合物を、滴下ロートを用いて3時間掛けて添加した。添加終了後も撹拌を継続し、重合による発熱が終了した後、引き続き内温を50℃に維持して30分間撹拌を行ってウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子を得た。
冷却後、目開き200メッシュのろ布を用いて、ウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子を捕集した。得られた複合樹脂粒子はイオン交換水を用いて、洗液から濁りがなくなるまで水洗した。
仕込量及び条件を表1に示す。
【0053】
[実施例2]
表1に示すように(メタ)アクリル系単量体の使用比率を変更したこと以外は、前記実施例1と同様にしてウレタン/(メタ)アクリル系複合樹脂粒子を製造した。
仕込量及び条件を表1に併せて示す。
【0054】
【表1】
【0055】
(結果)
前記実施例1、2で得られた微粒子を光学顕微鏡で観察した。観察結果をそれぞれ
図1、
図2に示す。
それぞれの図上で、観察される粒子のうち10個をランダムに選んで粒径を測定した。測定された粒径の平均値を算出して平均粒子径とした。その結果を表2に示す。
前記結果より、本発明の方法を用いることにより、前記特許文献1(特開平11−140149)の実施例1において示されるようなウレタン−アクリル複合粒子(平均粒子径130nm)(同文献、[0093])と比較して、約1000倍の粒子径をもつウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂粒子を得られることができたことが判る。
【0056】
【表2】