【実施例】
【0015】
以下本発明の一実施例による高所作業車のジャッキ制御方法について説明する。
図1は本実施例による高所作業車の側面図である。
【0016】
本実施例による高所作業車は、運転席を有するキャビン10と、高所作業部20を搭載する荷台30と、キャビン10および荷台30を支える車輌シャシ40の前後左右に配置される4つのジャッキ50とを備えている。
荷台30は、車輌の後方に配置される。キャビン10は車輌の前輪11に、荷台30は車輌の後輪31に位置する。
【0017】
高所作業部20は、ターンテーブル21に旋回ポスト22を介して一端を接続した第1ブーム23と、第1ブーム23の他端に一端を接続した第2ブーム24とを備えている。
バスケット25は、第2ブーム24の他端に、旋回接手26を介して取り付けている。
旋回ポスト22は、ターンテーブル21とともに旋回動作する。旋回ポスト22には、第1油圧シリンダ27の一端を設けている。第1油圧シリンダ27の他端は、第1ブーム23の他端側に設けている。第1ブーム23は、第1油圧シリンダ27によって水平面に対して所定角度まで上がることができる。
第2ブーム24は、第2油圧シリンダ28によって起伏できる。第2ブーム24は、多段式の伸縮ブームとしている。第2ブーム24を、多段式の伸縮ブームとしたことで、使用時には第2ブーム24を伸ばすことができ、高所における消火や救助を行える。
傾斜センサ60は、例えば旋回ポスト22に取り付けられ、高所作業部20の水平状態を検出する。
【0018】
図2は本実施例による高所作業車のジャッキ制御方法を実現するブロック図である。
本実施例による高所作業車は、ジャッキ50として、右前ジャッキ50RF、左前ジャッキ50LF、右後ジャッキ50RB、および左後ジャッキ50LBを備えている。
ジャッキ50は、ジャッキシリンダ51のヘッド側空間52とロッド側空間53とへの油の供給量を調整することで、ジャッキピストン54に対してジャッキシリンダ51の高さを変更する。
【0019】
それぞれのジャッキ50には、ヘッド側空間52の油圧を検出する圧力センサ70を設けている。
右前圧力センサ70RFは、右前ジャッキ50RFに加わる荷重を検出し、左前圧力センサ70LFは、左前ジャッキ50LFに加わる荷重を検出し、右後圧力センサ70RBは、右後ジャッキ50RBに加わる荷重を検出し、左後圧力センサ70LBは、左後ジャッキ50LBに加わる荷重を検出する。
それぞれのジャッキ50には、ジャッキ50内の油温上昇時にロッド側空間53の油圧を低下させる圧力開放弁80を設けている。
右前圧力開放弁80RFは、右前ジャッキ50RF内の圧力を低下させ、左前圧力開放弁80LFは、左前ジャッキ50LF内の圧力を低下させ、右後圧力開放弁80RBは、右後ジャッキ50RB内の圧力を低下させ、左後圧力開放弁80LBは、左後ジャッキ50LB内の圧力を低下させる。
圧力開放弁80は、高所作業部20の動作時に開状態とし、ジャッキ50の接地動作時や傾斜矯正動作時に閉状態とすることで、高所作業部20の動作時には、例えばエンジンなどの熱の影響によるジャッキ50の熱膨張による圧力上昇を防止でき、ジャッキ50の接地動作時や傾斜矯正動作時には圧力開放弁80による影響をなくすことができる。
【0020】
制御部90は、圧力センサ70および傾斜センサ60での検出によって4つのジャッキ50の動作を制御する。
本実施例による高所作業車は、高所作業部20の動作時に、圧力センサ70によってジャッキ50の浮き上がりを検出して高所作業部20の動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動を行う。
【0021】
図3および
図4は、本実施例による高所作業車のジャッキ制御方法を示すフローチャートである。
高所作業車を停車後、4つのジャッキ50を所定量伸張し、車輌シャシ40をジャッキ50によって支持する。
4つのジャッキ50によって車輌シャシ40を支持した後に、制御部90によって傾斜に対する自動矯正を開始する。
【0022】
図3において、制御部90によって、傾斜センサ60で左右に傾斜していることを検出すると(ステップ1)、傾斜センサ60によって左右傾斜が矯正されることを検出するまで、前後左のジャッキ50LF、50LBの伸張動作、または前後右のジャッキ50RF、50RBの伸張動作を行わせる(左右矯正ステップ:ステップ2)。
すなわち、左右矯正ステップでは、車輌シャシ40の左側が下がっている場合には、前後左のジャッキ50LF、50LBを伸張動作させ、車輌シャシ40の右側が下がっている場合には、前後右のジャッキ50RF、50RBを伸張動作させる。ジャッキ50の伸張動作は、ヘッド側空間52に油を流入し、ロッド側空間53から油を流出させることで行う。
左右矯正ステップの後に、前左右のジャッキ50LF、50RF内の油圧、または後左右のジャッキ50LB、50RB内の油圧を等しくする(捻れ取りステップ:ステップ3)。
捻れ取りステップでは、左前ジャッキ50LF内と右前ジャッキ50RF内とを連通し、または左後ジャッキ50LB内と右後ジャッキ50RBとを連通させる。
捻れ取りステップの後に、傾斜センサ60で前後に傾斜していることを検出すると(ステップ4)、傾斜センサ60によって前後傾斜が矯正されることを検出するまで、前左右のジャッキ50LF、50RFの伸張動作、または後左右のジャッキ50LB、50RBの伸張動作を行わせる(前後矯正ステップ:ステップ5)。
【0023】
図4を用いて、
図3における左右矯正ステップを更に詳細に説明する。
図4は、車輌シャシ40の前側、すなわちキャビン10側が、車輌シャシ40の後側、すなわち高所作業部20側よりも荷重が大きく、車輌シャシ40の左側が低く傾斜している場合を示している。すなわち、高所作業部20に近い位置にある後左右のジャッキ50LB、50RBよりも、高所作業部20から遠い位置にある前左右のジャッキ50LF、50RFの方が、加わる荷重が大きい。
ステップ1において、傾斜センサ60によって車輌シャシ40の左側が低いと判断すると、右後ジャッキ50RBが接地しているか否かを判断する(ステップ21)。すなわち、ステップ1で高いと判断された側で、傾斜センサ60に近い側のジャッキ50の接地を判断する。接地の判断は、圧力センサ70によって検知される検知圧力と閾値との比較で行い、検知圧力が閾値より大きければ接地と判断し、検知圧力が閾値以下であればジャッキ50が地面から浮き上がっていると判断する。
【0024】
ステップ21において、右後ジャッキ50RBが接地していると判断した場合には、左前ジャッキ50LFおよび左後ジャッキ50LBをともに伸張する(ステップ22)。
ステップ21において、右後ジャッキ50RBが接地していないと判断した場合には、左前ジャッキ50LFを伸張し、左後ジャッキ50LBは伸張しない(ステップ23)。
ステップ21およびステップ22の動作は、ステップ1における左右傾斜が矯正されるまで行われ、ステップ21およびステップ22の動作は、ステップ21における右後ジャッキ50RBの接地状態を判断しながら行われる。
従って、左右矯正ステップにおいて、高所作業部20に近い位置にある後左右のジャッキ50LB、50RBの内で、高さが高い方の右後ジャッキ50RBが接地していることを、高さが高い方の右後ジャッキ50RBの右後圧力センサ70RBが検出すると、高さが低い方の前後左のジャッキ50LF、50LBを伸張し、高所作業部20に近い位置にある後左右のジャッキ50LB、50RBの内で、高さが高い方の右後ジャッキ50RBが接地していないことを、高さが高い方の右後ジャッキ50RBの右後圧力センサ70RBが検出すると、高さが低い方の左前ジャッキ50LFだけを伸張することで
左右矯正ステップを行う。
【0025】
本実施例によれば、車輌シャシ40の前側が後側よりも荷重が大きい場合に、荷重の大きな前左右のジャッキ50LF、50RFは常時伸張させ、荷重の小さな後左右のジャッキ50LB、50RBを間欠的に伸張させることで、左右傾斜の矯正を正常に完了させることができる。
なお、車輌シャシ40の後側が前側よりも荷重が大きい場合には、ステップ21では右前ジャッキ50RFが接地しているか否かを判断し、ステップ23では左後ジャッキ50LBを伸張し、左前ジャッキ50LFを伸張しないことで、荷重の大きな後左右のジャッキ50LB、50RBは常時伸張させ、荷重の小さな前左右のジャッキ50LF、50RFを間欠的に伸張させて、左右傾斜の矯正を正常に完了させることができる。
また、高所作業部20に近い位置にある後左右のジャッキ50LB、50RBよりも、高所作業部20から遠い位置にある前左右のジャッキ50LF、50RFの方が、加わる荷重が小さい場合には、ステップ21では、右前ジャッキ50RFが接地しているか否かを判断し、ステップ23では左後ジャッキ50LBを伸張し、左前ジャッキ50LFを伸張しないことで、荷重の大きな後左右のジャッキ50LB、50RBは常時伸張させ、荷重の小さな前左右のジャッキ50LF、50RFを間欠的に伸張させて、左右傾斜の矯正を正常に完了させることができる。