特許第6474641号(P6474641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474641
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】高所作業車のジャッキ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/075 20060101AFI20190218BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20190218BHJP
   B66C 23/78 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   B66F9/075 L
   B66F11/04
   B66C23/78 H
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-37796(P2015-37796)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160000(P2016-160000A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小関 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】惠土 巧司
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−058561(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0120350(US,A1)
【文献】 実開昭56−093354(JP,U)
【文献】 特開2000−086194(JP,A)
【文献】 実開昭63−028517(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00─11/04
B66C 23/78
B60S 3/00─13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を有するキャビンと、高所作業部を搭載する荷台と、前記キャビンおよび前記荷台を支える車輌シャシの前後左右に配置される4つのジャッキとを備え、
それぞれの前記ジャッキに加わる荷重を検出する圧力センサと、
前記高所作業部の水平状態を検出する傾斜センサと、
前記圧力センサおよび前記傾斜センサでの検出によって4つの前記ジャッキの動作を制御する制御部と、を有し、
前記高所作業部の動作時に、前記圧力センサによって前記ジャッキの浮き上がりを検出して前記高所作業部の動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動を行う高所作業車のジャッキ制御方法であって、
前記制御部によって、
前記傾斜センサで左右に傾斜していることを検出すると、前記傾斜センサによって左右傾斜が矯正されることを検出するまで、前後左の前記ジャッキの伸張動作、または前後右の前記ジャッキの伸張動作を行わせる左右矯正ステップと、
前左右の前記ジャッキ内の油圧、または後左右の前記ジャッキ内の油圧を、等しくすることで捻れを取り除く捻れ取りステップと、
前記傾斜センサで前後に傾斜していることを検出すると、前記捻れ取りステップの後に、前記傾斜センサによって前後傾斜が矯正されることを検出するまで、前左右の前記ジャッキの伸張動作、または後左右の前記ジャッキの伸張動作を行わせる前後矯正ステップと
を行うことを特徴とする高所作業車のジャッキ制御方法。
【請求項2】
前記高所作業部に近い位置にある左右の前記ジャッキよりも前記高所作業部から遠い位置にある左右の前記ジャッキの方が、加わる前記荷重が大きい場合に、
前記左右矯正ステップでは、
前記高所作業部に近い位置にある左右の前記ジャッキの内で、高さが高い方の前記ジャッキが接地していることを前記圧力センサが検出すると、高さが低い方の前後2つの前記ジャッキを伸張し、
前記高所作業部に近い位置にある左右の前記ジャッキの内で、高さが高い方の前記ジャッキが接地していないことを前記圧力センサが検出すると、高さが低い方の前記高所作業部から遠い位置にある前記ジャッキだけを伸張する
ことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車のジャッキ制御方法。
【請求項3】
前記高所作業部に近い位置にある左右の前記ジャッキよりも前記高所作業部から遠い位置にある左右の前記ジャッキの方が、加わる前記荷重が小さい場合に、
前記左右矯正ステップでは、
前記高所作業部から遠い位置にある左右の前記ジャッキの内で、高さが高い方の前記ジャッキが接地していることを前記圧力センサが検出すると、高さが低い方の前後2つの前記ジャッキを伸張し、
前記高所作業部から遠い位置にある左右の前記ジャッキの内で、高さが高い方の前記ジャッキが接地していないことを前記圧力センサが検出すると、高さが低い方の前記高所作業部に近い位置にある前記ジャッキだけを伸張する
ことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車のジャッキ制御方法。
【請求項4】
前記捻れ取りステップでは、
前左の前記ジャッキ内と前右の前記ジャッキ内とを連通させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の高所作業車のジャッキ制御方法。
【請求項5】
それぞれの前記ジャッキには、前記ジャッキ内の油温上昇時に前記ジャッキ内の圧力を低下させる圧力開放弁を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の高所作業車のジャッキ制御方法。
【請求項6】
前記高所作業部の動作時に、前記圧力開放弁を開状態とすることを特徴とする請求項5に記載の高所作業車のジャッキ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席を有するキャビンと、高所作業部を搭載する荷台と、キャビンおよび荷台を支える車輌シャシの前後左右に配置される4つのジャッキとを備えた高所作業車のジャッキ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放水機能及び機材収納機能に加えて、消火や救助を行える高所作業機能を備えた多機能消防車が開示されている。
このような高所作業機能を備えた車輌では、車輌シャシの前後左右に4つのジャッキが配置されている。
そして、それぞれのジャッキに加わる荷重を検出する圧力センサを備えており、高所作業機能の動作時には、圧力センサによってジャッキの浮き上がりを検出してバスケットの動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−236910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車輌シャシの前後で荷重が異なる場合には、車輌シャシの左右傾斜を矯正するために高さが低い側の前後ジャッキを伸張すると、荷重が小さい方のジャッキが伸張しやすいため、前後ジャッキの伸張量が異なることで、車輌シャシに捻れが発生する場合がある。車輌シャシに捻れが発生している場合には、ジャッキ内部の油圧を検出する圧力センサが、ジャッキに加わる荷重を正確に検出できず、バスケットの動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動に影響を与えてしまう。
一方、例えば水ポンプを搭載した高所作業車では、放水運転時にはエンジンをフルパワーに近い状態で長時間運転するため、大量の熱が発生し、この熱が原因でジャッキ内部の油温が上昇することがある。ジャッキ内部の油温が上昇すると、油圧に影響を及ぼし、ジャッキに加わる荷重を正確に検出できない。
【0005】
本発明は、バスケットの動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動のために行う圧力センサでの油圧検出を正確に行うために、ジャッキ伸張時の車輌シャシの捻れの発生を防止することができる高所作業車のジャッキ制御方法を提供することを目的とする。
また本発明は、例えばエンジンなどの熱の影響によるジャッキの油圧上昇を回避できる高所作業車のジャッキ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の高所作業車のジャッキ制御方法は、運転席を有するキャビンと、高所作業部を搭載する荷台と、前記キャビンおよび前記荷台を支える車輌シャシの前後左右に配置される4つのジャッキとを備え、それぞれの前記ジャッキに加わる荷重を検出する圧力センサと、前記高所作業部の水平状態を検出する傾斜センサと、前記圧力センサおよび前記傾斜センサでの検出によって4つの前記ジャッキの動作を制御する制御部と、を有し、前記高所作業部の動作時に、前記圧力センサによって前記ジャッキの浮き上がりを検出して前記高所作業部の動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動を行う高所作業車のジャッキ制御方法であって、前記制御部によって、前記傾斜センサで左右に傾斜していることを検出すると、前記傾斜センサによって左右傾斜が矯正されることを検出するまで、前後左の前記ジャッキの伸張動作、または前後右の前記ジャッキの伸張動作を行わせる左右矯正ステップと、前左右の前記ジャッキ内の油圧、または後左右の前記ジャッキ内の油圧を、等しくすることで捻れを取り除く捻れ取りステップと、前記傾斜センサで前後に傾斜していることを検出すると、前記捻れ取りステップの後に、前記傾斜センサによって前後傾斜が矯正されることを検出するまで、前左右の前記ジャッキの伸張動作、または後左右の前記ジャッキの伸張動作を行わせる前後矯正ステップとを行うことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の高所作業車のジャッキ制御方法において、前記高所作業部に近い位置にある左右の前記ジャッキよりも前記高所作業部から遠い位置にある左右の前記ジャッキの方が、加わる前記荷重が大きい場合に、前記左右矯正ステップでは、前記高所作業部に近い位置にある左右の前記ジャッキの内で、高さが高い方の前記ジャッキが接地していることを前記圧力センサが検出すると、高さが低い方の前後2つの前記ジャッキを伸張し、前記高所作業部に近い位置にある左右の前記ジャッキの内で、高さが高い方の前記ジャッキが接地していないことを前記圧力センサが検出すると、高さが低い方の前記高所作業部から遠い位置にある前記ジャッキだけを伸張することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の高所作業車のジャッキ制御方法において、前記高所作業部に近い位置にある左右の前記ジャッキよりも前記高所作業部から遠い位置にある左右の前記ジャッキの方が、加わる前記荷重が小さい場合に、前記左右矯正ステップでは、前記高所作業部から遠い位置にある左右の前記ジャッキの内で、高さが高い方の前記ジャッキが接地していることを前記圧力センサが検出すると、高さが低い方の前後2つの前記ジャッキを伸張し、前記高所作業部から遠い位置にある左右の前記ジャッキの内で、高さが高い方の前記ジャッキが接地していないことを前記圧力センサが検出すると、高さが低い方の前記高所作業部に近い位置にある前記ジャッキだけを伸張することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の高所作業車のジャッキ制御方法において、前記捻れ取りステップでは、前左の前記ジャッキ内と前右の前記ジャッキ内とを連通させることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の高所作業車のジャッキ制御方法において、それぞれの前記ジャッキには、前記ジャッキ内の油温上昇時に前記ジャッキ内の圧力を低下させる圧力開放弁を有することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の高所作業車のジャッキ制御方法において、前記高所作業部の動作時に、前記圧力開放弁を開状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高所作業車のジャッキ制御方法によれば、ジャッキ伸張時の車輌シャシの捻れの発生を防止し、バスケットの動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動のために行う圧力センサでの油圧検出を正確に行うことができる。
また、本発明の高所作業車のジャッキ制御方法によれば、高所作業部の動作時には熱膨張による圧力上昇を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による高所作業車の側面図
図2】本実施例による高所作業車のジャッキ制御方法を実現するブロック図
図3】本実施例による高所作業車のジャッキ制御方法を示すフローチャート
図4】本実施例による高所作業車のジャッキ制御方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による高所作業車のジャッキ制御方法は、制御部によって、
傾斜センサで左右に傾斜していることを検出すると、傾斜センサによって左右傾斜が矯正されることを検出するまで、前後左のジャッキの伸張動作、または前後右のジャッキの伸張動作を行わせる左右矯正ステップと、前左右のジャッキ内の油圧、または後左右のジャッキ内の油圧を等しくすることで捻れを取り除く捻れ取りステップと、傾斜センサで前後に傾斜していることを検出すると、捻れ取りステップの後に、傾斜センサによって前後傾斜が矯正されることを検出するまで、前左右のジャッキの伸張動作、または後左右のジャッキの伸張動作を行わせる前後矯正ステップとを行うものである。本実施の形態によれば、ジャッキ伸張時の車輌シャシの捻れの発生を防止し、バスケットの動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動のために行う圧力センサでの油圧検出を正確に行うことができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による高所作業車のジャッキ制御方法において、高所作業部に近い位置にある左右のジャッキよりも高所作業部から遠い位置にある左右のジャッキの方が、加わる荷重が大きい場合に、左右矯正ステップでは、高所作業部に近い位置にある左右のジャッキの内で、高さが高い方のジャッキが接地していることを圧力センサが検出すると、高さが低い方の前後2つのジャッキを伸張し、高所作業部に近い位置にある左右のジャッキの内で、高さが高い方のジャッキが接地していないことを圧力センサが検出すると、高さが低い方の高所作業部から遠い位置にあるジャッキだけを伸張することで捻れ取りステップを行うものである。本実施の形態によれば、高所作業部に近い位置にある左右のジャッキよりも高所作業部から遠い位置にある左右のジャッキの方が、加わる荷重が大きい場合に、加わる荷重が大きなジャッキは常時伸張させ、加わる荷重が小さなジャッキを間欠的に伸張させることで、左右傾斜の矯正を正常に完了させることができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による高所作業車のジャッキ制御方法において、高所作業部に近い位置にある左右のジャッキよりも高所作業部から遠い位置にある左右のジャッキの方が、加わる荷重が小さい場合に、左右矯正ステップでは、高所作業部から遠い位置にある左右のジャッキの内で、高さが高い方のジャッキが接地していることを圧力センサが検出すると、高さが低い方の前後2つのジャッキを伸張し、高所作業部から遠い位置にある左右のジャッキの内で、高さが高い方のジャッキが接地していないことを圧力センサが検出すると、高さが低い方の高所作業部に近い位置にあるジャッキだけを伸張することで捻れ取りステップを行うものである。本実施の形態によれば、高所作業部に近い位置にある左右のジャッキよりも高所作業部から遠い位置にある左右のジャッキの方が、加わる荷重が小さい場合に、加わる荷重が大きなジャッキは常時伸張させ、加わる荷重が小さなジャッキを間欠的に伸張させることで、左右傾斜の矯正を正常に完了させることができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による高所作業車のジャッキ制御方法において、捻れ取りステップでは、前左のジャッキ内と前右のジャッキ内とを連通させるものである。本実施の形態によれば、前左右のジャッキ内圧力を等しくでき、車輌シャシの捻れを取り除くことができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による高所作業車のジャッキ制御方法において、それぞれのジャッキには、ジャッキ内の油温上昇時にジャッキ内の圧力を低下させる圧力開放弁を有するものである。本実施の形態によれば、例えばエンジンなどの熱の影響によるジャッキの油圧上昇を回避できる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による高所作業車のジャッキ制御方法において、高所作業部の動作時に、圧力開放弁を開状態とするものである。本実施の形態によれば、高所作業部の動作時には熱膨張による圧力上昇を防止でき、ジャッキの接地動作時や傾斜矯正動作時には圧力開放弁による影響をなくすことができる。
【実施例】
【0015】
以下本発明の一実施例による高所作業車のジャッキ制御方法について説明する。
図1は本実施例による高所作業車の側面図である。
【0016】
本実施例による高所作業車は、運転席を有するキャビン10と、高所作業部20を搭載する荷台30と、キャビン10および荷台30を支える車輌シャシ40の前後左右に配置される4つのジャッキ50とを備えている。
荷台30は、車輌の後方に配置される。キャビン10は車輌の前輪11に、荷台30は車輌の後輪31に位置する。
【0017】
高所作業部20は、ターンテーブル21に旋回ポスト22を介して一端を接続した第1ブーム23と、第1ブーム23の他端に一端を接続した第2ブーム24とを備えている。
バスケット25は、第2ブーム24の他端に、旋回接手26を介して取り付けている。
旋回ポスト22は、ターンテーブル21とともに旋回動作する。旋回ポスト22には、第1油圧シリンダ27の一端を設けている。第1油圧シリンダ27の他端は、第1ブーム23の他端側に設けている。第1ブーム23は、第1油圧シリンダ27によって水平面に対して所定角度まで上がることができる。
第2ブーム24は、第2油圧シリンダ28によって起伏できる。第2ブーム24は、多段式の伸縮ブームとしている。第2ブーム24を、多段式の伸縮ブームとしたことで、使用時には第2ブーム24を伸ばすことができ、高所における消火や救助を行える。
傾斜センサ60は、例えば旋回ポスト22に取り付けられ、高所作業部20の水平状態を検出する。
【0018】
図2は本実施例による高所作業車のジャッキ制御方法を実現するブロック図である。
本実施例による高所作業車は、ジャッキ50として、右前ジャッキ50RF、左前ジャッキ50LF、右後ジャッキ50RB、および左後ジャッキ50LBを備えている。
ジャッキ50は、ジャッキシリンダ51のヘッド側空間52とロッド側空間53とへの油の供給量を調整することで、ジャッキピストン54に対してジャッキシリンダ51の高さを変更する。
【0019】
それぞれのジャッキ50には、ヘッド側空間52の油圧を検出する圧力センサ70を設けている。
右前圧力センサ70RFは、右前ジャッキ50RFに加わる荷重を検出し、左前圧力センサ70LFは、左前ジャッキ50LFに加わる荷重を検出し、右後圧力センサ70RBは、右後ジャッキ50RBに加わる荷重を検出し、左後圧力センサ70LBは、左後ジャッキ50LBに加わる荷重を検出する。
それぞれのジャッキ50には、ジャッキ50内の油温上昇時にロッド側空間53の油圧を低下させる圧力開放弁80を設けている。
右前圧力開放弁80RFは、右前ジャッキ50RF内の圧力を低下させ、左前圧力開放弁80LFは、左前ジャッキ50LF内の圧力を低下させ、右後圧力開放弁80RBは、右後ジャッキ50RB内の圧力を低下させ、左後圧力開放弁80LBは、左後ジャッキ50LB内の圧力を低下させる。
圧力開放弁80は、高所作業部20の動作時に開状態とし、ジャッキ50の接地動作時や傾斜矯正動作時に閉状態とすることで、高所作業部20の動作時には、例えばエンジンなどの熱の影響によるジャッキ50の熱膨張による圧力上昇を防止でき、ジャッキ50の接地動作時や傾斜矯正動作時には圧力開放弁80による影響をなくすことができる。
【0020】
制御部90は、圧力センサ70および傾斜センサ60での検出によって4つのジャッキ50の動作を制御する。
本実施例による高所作業車は、高所作業部20の動作時に、圧力センサ70によってジャッキ50の浮き上がりを検出して高所作業部20の動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動を行う。
【0021】
図3および図4は、本実施例による高所作業車のジャッキ制御方法を示すフローチャートである。
高所作業車を停車後、4つのジャッキ50を所定量伸張し、車輌シャシ40をジャッキ50によって支持する。
4つのジャッキ50によって車輌シャシ40を支持した後に、制御部90によって傾斜に対する自動矯正を開始する。
【0022】
図3において、制御部90によって、傾斜センサ60で左右に傾斜していることを検出すると(ステップ1)、傾斜センサ60によって左右傾斜が矯正されることを検出するまで、前後左のジャッキ50LF、50LBの伸張動作、または前後右のジャッキ50RF、50RBの伸張動作を行わせる(左右矯正ステップ:ステップ2)。
すなわち、左右矯正ステップでは、車輌シャシ40の左側が下がっている場合には、前後左のジャッキ50LF、50LBを伸張動作させ、車輌シャシ40の右側が下がっている場合には、前後右のジャッキ50RF、50RBを伸張動作させる。ジャッキ50の伸張動作は、ヘッド側空間52に油を流入し、ロッド側空間53から油を流出させることで行う。
左右矯正ステップの後に、前左右のジャッキ50LF、50RF内の油圧、または後左右のジャッキ50LB、50RB内の油圧を等しくする(捻れ取りステップ:ステップ3)。
捻れ取りステップでは、左前ジャッキ50LF内と右前ジャッキ50RF内とを連通し、または左後ジャッキ50LB内と右後ジャッキ50RBとを連通させる。
捻れ取りステップの後に、傾斜センサ60で前後に傾斜していることを検出すると(ステップ4)、傾斜センサ60によって前後傾斜が矯正されることを検出するまで、前左右のジャッキ50LF、50RFの伸張動作、または後左右のジャッキ50LB、50RBの伸張動作を行わせる(前後矯正ステップ:ステップ5)。
【0023】
図4を用いて、図3における左右矯正ステップを更に詳細に説明する。
図4は、車輌シャシ40の前側、すなわちキャビン10側が、車輌シャシ40の後側、すなわち高所作業部20側よりも荷重が大きく、車輌シャシ40の左側が低く傾斜している場合を示している。すなわち、高所作業部20に近い位置にある後左右のジャッキ50LB、50RBよりも、高所作業部20から遠い位置にある前左右のジャッキ50LF、50RFの方が、加わる荷重が大きい。
ステップ1において、傾斜センサ60によって車輌シャシ40の左側が低いと判断すると、右後ジャッキ50RBが接地しているか否かを判断する(ステップ21)。すなわち、ステップ1で高いと判断された側で、傾斜センサ60に近い側のジャッキ50の接地を判断する。接地の判断は、圧力センサ70によって検知される検知圧力と閾値との比較で行い、検知圧力が閾値より大きければ接地と判断し、検知圧力が閾値以下であればジャッキ50が地面から浮き上がっていると判断する。
【0024】
ステップ21において、右後ジャッキ50RBが接地していると判断した場合には、左前ジャッキ50LFおよび左後ジャッキ50LBをともに伸張する(ステップ22)。
ステップ21において、右後ジャッキ50RBが接地していないと判断した場合には、左前ジャッキ50LFを伸張し、左後ジャッキ50LBは伸張しない(ステップ23)。
ステップ21およびステップ22の動作は、ステップ1における左右傾斜が矯正されるまで行われ、ステップ21およびステップ22の動作は、ステップ21における右後ジャッキ50RBの接地状態を判断しながら行われる。
従って、左右矯正ステップにおいて、高所作業部20に近い位置にある後左右のジャッキ50LB、50RBの内で、高さが高い方の右後ジャッキ50RBが接地していることを、高さが高い方の右後ジャッキ50RBの右後圧力センサ70RBが検出すると、高さが低い方の前後左のジャッキ50LF、50LBを伸張し、高所作業部20に近い位置にある後左右のジャッキ50LB、50RBの内で、高さが高い方の右後ジャッキ50RBが接地していないことを、高さが高い方の右後ジャッキ50RBの右後圧力センサ70RBが検出すると、高さが低い方の左前ジャッキ50LFだけを伸張することで左右矯正ステップを行う。
【0025】
本実施例によれば、車輌シャシ40の前側が後側よりも荷重が大きい場合に、荷重の大きな前左右のジャッキ50LF、50RFは常時伸張させ、荷重の小さな後左右のジャッキ50LB、50RBを間欠的に伸張させることで、左右傾斜の矯正を正常に完了させることができる。
なお、車輌シャシ40の後側が前側よりも荷重が大きい場合には、ステップ21では右前ジャッキ50RFが接地しているか否かを判断し、ステップ23では左後ジャッキ50LBを伸張し、左前ジャッキ50LFを伸張しないことで、荷重の大きな後左右のジャッキ50LB、50RBは常時伸張させ、荷重の小さな前左右のジャッキ50LF、50RFを間欠的に伸張させて、左右傾斜の矯正を正常に完了させることができる。
また、高所作業部20に近い位置にある後左右のジャッキ50LB、50RBよりも、高所作業部20から遠い位置にある前左右のジャッキ50LF、50RFの方が、加わる荷重が小さい場合には、ステップ21では、右前ジャッキ50RFが接地しているか否かを判断し、ステップ23では左後ジャッキ50LBを伸張し、左前ジャッキ50LFを伸張しないことで、荷重の大きな後左右のジャッキ50LB、50RBは常時伸張させ、荷重の小さな前左右のジャッキ50LF、50RFを間欠的に伸張させて、左右傾斜の矯正を正常に完了させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、ジャッキ伸張時の車輌シャシの捻れの発生を防止し、バスケットの動作範囲の設定や、車輌の転倒防止機能としての安全装置の作動のために行う圧力センサでの油圧検出を正確に行うことができ、アウトリガーを備えた高所作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0027】
10 キャビン
20 高所作業部
30 荷台
40 車輌シャシ
50 ジャッキ
50LF 左前ジャッキ
50RF 右前ジャッキ
50LB 左後ジャッキ
50RB 右後ジャッキ
60 傾斜センサ
70 圧力センサ
70LF 左前圧力センサ
70RF 右前圧力センサ
70LB 左後圧力センサ
70RB 右後圧力センサ
80 圧力開放弁
80LF 左前圧力開放弁
80RF 右前圧力開放弁
80LB 左後圧力開放弁
80RB 右後圧力開放弁
図1
図2
図3
図4