(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474654
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/26 20060101AFI20190218BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
H05K3/26 F
H05K3/18 G
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-52467(P2015-52467)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-174042(P2016-174042A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142686
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】福永 一範
(72)【発明者】
【氏名】溝口 憲
(72)【発明者】
【氏名】吉村 光平
(72)【発明者】
【氏名】園原 揚介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 充
【審査官】
ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−086662(JP,A)
【文献】
特開2006−093376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/10−3/26
H05K 3/38
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上にシード層となる第1の導体層を形成する工程と、
前記第1の導体層上に所定のパターンの開口を有するレジスト層を形成する工程と、
前記開口から露出した前記第1の導体層上に、電解めっきにより第2の導体層を形成する工程と、
前記第2の導体層の表面を、番手が800〜1500番のセラミックバフにより研磨する工程と、
を有し、
前記レジスト層を除去した後に、前記第2の導体層の表面を研磨する
ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2の導体層を前記表面から10μm以上研磨することを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記研磨時における前記セラミックバフと配線基板との相対速度は、1m/分以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装するための配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や水晶振動子等の電子部品を実装できる配線基板がある。このような配線基板は、その表面に電子部品を実装するための接続端子(パッド)が形成されている。近年では、配線パターンの微細化が進んでいることもあり、配線基板の接続端子を含む配線層は、通常、セミアディティブ法により形成される。
【0003】
セミアディティブ法では、絶縁層上にシード層となる第1の導体層を形成した後、第1の導体層上に所定のパターンの開口を有するレジスト層を形成する。次いで、前記開口から露出した第1の導体層上に、電解めっきにより第2の導体層を形成した後、レジスト層を除去する。その後、レジスト層の除去により露出した第1の導体層を除去して接続端子を含む配線層を形成している。
【0004】
しかしながら、上記セミアディティブ法で配線層を形成した場合、シード層となる第1の導体層上に第2の導体層を電解めっきにより析出させる際に、第2の導体層の表面が丸みを帯びた形状となったり、配線層のパターン密度の違いにより第2の導体層の厚みにばらつきが生じたりする。配線基板の給電部から第2の導体層へ接続される導線は、配線基板内部の導体パターンにより異なる為、各パターン毎に電気抵抗に差が生じる。その為、電気抵抗の差により第2の導体層の析出速度が異なり厚みばらつきが生じる。この結果、配線基板に実装される電子部品(例えば、半導体素子や水晶振動子)との接合性に問題が生じることがある。また、第2の導体層の表面が丸みを帯びた形状であると、第2の導体層の表面にコートする半田等の接合材料が流れてしまい、接続端子間がショートする虞がある。
【0005】
なお、セミアディティブ法により配線導体を形成する場合、下地金属層(第1の導体層)の上に電解銅めっき層(第2の導体層)を析出させる際に、電解銅めっき層の表面に金属粉等の異物を核として銅めっきが異常成長したノジュールと呼ばれる微笑突起が形成されることがある。このノジュールが形成されると、隣接する配線導体同士の間隔が狭くなって配線導体に対する電気的絶縁信頼性が低下したり、該配線導体上に積層される絶縁層やソルダーレジスト層の厚みが局所的に薄くなる虞がある。そこで、従来の配線基板の製造方法では、このノジュールを除去するために、電解銅めっき層の表面を番手が2000〜6000番の研磨シートをスポンジロールに巻回した研磨ロールにより研磨することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−45910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案される手法は、ノジュールを除去するために提案されたものであり研磨の条件が異なるため、第2の導体層の表面の丸みを除去したり、第2の導体層の厚みばらつきを効果的に低減することができない。また、第2の導体層表面に対する凹凸追従性の高い、例えば不織布バフのようなバフを使用した場合、配線層のパターンのエッジ部(角部)と平面部とで掛かる圧力が異なり、エッジ部の形状が崩れて配線層のパターン変形が発生する虞がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に対処してなされたものであり、半導体素子や水晶振動子等の電子部品との接合性を向上することができる配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明の配線基板の製造方法は、絶縁層上にシード層となる第1の導体層を形成する工程と、第1の導体層上に所定のパターンの開口を有するレジスト層を形成する工程と、開口から露出した第1の導体層上に、電解めっきにより第2の導体層を形成する工程と、第2の導体層の表面を、番手が800〜1500番のセラミックバフにより研磨する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の配線基板の製造方法によれば、電解めっきにより第2の導体層を形成した後、該第2の導体層の表面を、番手が800〜1500番のセラミックバフにより研磨している。このため、配線層となる第2の導体層の表面を均一に研磨することができ、第2の導体層の表面が丸みを帯びた形状ではなく、平ら(フラット)になる。また、第2の導体層の厚み(高さ)ばらつきを低減することができる。その結果、配線基板への電子部品の接合性が向上する。また、第2の導体層の表面にコートする半田等の接合材料が流れてしまい、接続端子間がショートする虞を低減することができる。
【0011】
本発明の配線基板の製造方法は、第2の導体層を表面から10μm以上研磨することを特徴とする。このため、より確実に第2の導体層の表面を平ら(フラット)とすることができる。また、表面第2の導体層の厚み(高さ)ばらつきをより確実に低減することができる。その結果、配線基板への電子部品の接合性がさらに向上する。
【0012】
本発明の配線基板の製造方法は、研磨時におけるセラミックバフと配線基板との相対速度は、1m/分以下であることを特徴とする。研磨時におけるセラミックバフと配線基板との相対速度を、1m/分以下とすることで、研磨時に配線層となる第2の導体層が絶縁層から剥離したり、第2の導体層の表面を十分研磨できない虞を低減することができる。
【0013】
本発明の配線基板の製造方法は、レジスト層を除去した後に、第2の導体層の表面を研磨することを特徴とする。レジスト層を除去した後に第2の導体層の表面を研磨することで、セラミックバフがレジスト層により目詰まりすることを防止できる。目詰まりが発生した場合は、これを除去するためにセラミックバフ表面を研磨する必要があり、バフ寿命の低減となる。このため、セラミックバフが長寿命化される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、半導体素子や水晶振動子等の電子部品との接合性を向上することができる配線基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
図1〜
図6は、実施形態に係る配線基板の製造工程図である。以下、
図1〜
図6を参照して実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。なお、本発明は、配線層の厚みが30μm以上である配線基板の製造方法に適用することが好ましい。配線層の厚みを30μm以上とすると配線層の厚みばらつきが生じやすく、また、配線層を構成する配線及び接続端子の表面形状が丸みを帯びやすくなるためである。
【0017】
初めに、配線基板を構成する絶縁層110上にシード層となる第1の導体層210を形成する(
図1参照)。なお、第1の導体層210は、従来公知の手法、例えば、無電解銅めっき、スパッタ(PVD)や真空蒸着等により形成することができる。
【0018】
次に、第1の導体層210上に所定のパターンの開口311を有する感光性樹脂からなるレジスト層310を形成する(
図2参照)。ここで、レジスト層310の厚みT1は、60μm以上とすることが好ましい。第2の導体層220を、厚みが40μm以上となるまで形成するためである。
【0019】
次に、レジスト層310の非形成部分に電解銅めっきを行い、第2の導体層220を形成する(
図3参照)。なお、第2の導体層220の厚みT2は、後述の研磨により薄くなることを考慮して40μm以上とすることが好ましい。
【0020】
次に、レジスト層310をKOH等の剥離液を用いて剥離する(
図4参照)。次いで、第2の導体層220の表面221を、番手が800〜1500番のセラミックバフ400により研磨する(
図5参照)。
【0021】
番手が800番未満では、セラミックバフ400の目が粗すぎるため第2の導体層220が研磨により変形してしまう虞がある。また、番手が1500番を超えると第2の導体層220の研磨に時間がかかり過ぎる虞や、研磨後の第2の導体層220の表面粗さが十分でない虞がある。
【0022】
なお、上記研磨では、第2の導体層220を表面221から10μm以上研磨することが好ましい。第2の導体層220が厚いため、10μm未満の研磨では、第2の導体層220の表面221から丸みを帯びた領域を除去することが難しいためである。
【0023】
また、研磨時におけるセラミックバフ400と配線基板との相対速度は、1m/分以下であることが好ましい。セラミックバフ400と配線基板との相対速度が、1m/分を超えると、第2の導体層220が絶縁層110から剥離したり、第2の導体層220の表面221が十分に研磨されない虞があるためである。
【0024】
図5に示すように、本実施形態では、配線基板を搬送用ベルトVにより搬送している。つまり、本実施形態では、搬送用ベルトVの送り速度を1m/分以下とすることにより、研磨時におけるセラミックバフ400と配線基板との相対速度を1m/分以下としている。ここで、搬送用ベルトVによる配線基板の送り方向αとセラミックバフ400の回転方向βは、配線基板の送り方向αが紙面に向かって右向きの場合は、回転方向βを反時計周りとすることが好ましい。また、逆に、配線基板の送り方向αが紙面に向かって左向きの場合は、回転方向βを時計周りとすることが好ましい。セラミックバフ400の回転方向を上記と逆にすると、配線基板の第2の導体層220をスムーズに研磨することができないためである。
【0025】
なお、
図5では、搬送用ベルトVにより配線基板側を搬送しているが、配線基板とセラミックバフ400との相対速度が1m/分以下となればよく、セラミックバフ400側を動かしてもよい。また、配線基板とセラミックバフ400の両方を動かすようにしてもよい。
【0026】
セラミックバフ400による研磨終了後、第1の導体層210のうち第2の導体層220から露出している部分を除去し、電子部品(例えば、半導体素子や水晶振動子)との接続端子を含む配線層を得る(
図6参照)。
【0027】
図7は、セラミックバフ400の断面図である。
図8は、セラミックチップ420の側面図である。
図7に示すように、セラミックバフ400は、スポンジロールの本体部410と、本体部410の外周面400Fを覆うように配置された複数のセラミックチップ420とを備える。また、
図8に示すように、各セラミックチップ420の表面420Fには、平均粒径が1〜14μm程度のグリーンシリコンカーバイト(GC)の砥粒421が付着している。この実施形態では、硬度の高いグリーンシリコンカーバイト(GC)を研磨に用いることで、高い研磨レートと加工性を実現している。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る配線基板の製造方法は、絶縁層110上にシード層となる第1の導体層210を形成する工程と、第1の導体層210上に所定のパターンの開口311を有するレジスト層310を形成する工程と、開口311から露出した第1の導体層210上に、電解めっきにより第2の導体層220を形成する工程と、第2の導体層220の表面221を、番手が800〜1500番のセラミックバフ400により研磨する工程とを有している。
【0029】
本実施形態に係る配線基板の製造方法によれば、電解めっきにより第2の導体層220を形成した後、該第2の導体層220の表面221を、番手が800〜1500番のセラミックバフ400により研磨している。このため、配線層となる第2の導体層220の表面221を均一に研磨することができ、第2の導体層220の表面が丸みを帯びた形状ではなく、平ら(フラット)になる。また、第2の導体層220の厚み(高さ)ばらつきを低減することができる。その結果、配線基板への電子部品(例えば、半導体素子や水晶振動子)の接合性が向上する。また、第2の導体層の表面にコートする半田等の接合材料が流れてしまい、接続端子間がショートする虞を低減することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る配線基板の製造方法は、第2の導体層220を表面から10μm以上研磨している。このため、第2の導体層220の表面221の丸みを帯びた領域を除去して、第2の導体層220の表面221をより確実に平ら(フラット)とすることができる。また、第2の導体層220の厚み(高さ)ばらつきをより確実に低減することができる。その結果、配線基板への電子部品の接合性がさらに向上する。
【0031】
また、本実施形態に係る配線基板の製造方法は、研磨時におけるセラミックバフ400と配線基板との相対速度を1m/分以下としている。このため、研磨時に配線層となる第2の導体層220が絶縁層110から剥離したり、第2の導体層220の表面221を十分研磨できない虞を低減することができる。
【0032】
さらに、本実施形態に係る配線基板の製造方法は、レジスト層310を除去した後に、第2の導体層220の表面221を研磨している。レジスト層310を除去した後に第2の導体層220の表面221を研磨することで、セラミックバフ400がレジスト層310により目詰まりすることを防止できる。目詰まりが発生した場合は、これを除去するためにセラミックバフの表面を研磨する必要があり、バフ寿命の低減となる。この結果、セラミックバフ400が長寿命化される。
【0033】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、多数の配線基板を一枚の配線基板から分割して得る多数個取り配線基板にも適用できる。本発明は、前記各形態の構造、形状のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて適宜に設計変更して具体化できる。
【符号の説明】
【0034】
110 絶縁層
210 第1の導体層(シード層)
220 第2の導体層(電解めっき層)
310 レジスト層
400 セラミックバフ
410 本体部
420 セラミックチップ
V 搬送用ベルト