(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の消音器付き超音波流量計では、上流側に接続される配管の形状等の相違による計測値の変化が大きいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、上流側に接続される配管に起因した計測値の変化を低減可能な消音器付き超音波流量計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、計測値の変化が、環状障害壁と中央障害壁とを連結する複数の支柱の配置に依存するという知見を得た。具体的には、本願発明者は、断面矩形状の計測流路の中心軸上に1対の送受波器が対向配置される場合では、計測流路の軸方向から見て、各支柱と計測流路の中心軸を結ぶ直線が計測流路の流路断面の長手方向となす角が45度より大きく、90度以下であるときよりも、45度以下であるときの方が、計測値の変化が小さくなる、という知見を得た。また、本願発明者は、1対の送受波器が計測流路の中心軸と斜めに交差する方向に対向配置される場合では、計測流路の周方向における支柱の送受波器からのズレが45度未満のときよりも、ズレが45度以上、90度以下のときの方が、計測値の変化が小さくなる、という知見をも得た。これらの知見に基づいて、本願発明者は、以下の請求項1〜5の発明に至った。
【0007】
即ち、上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、1対の送受波器の間で超音波を送受波することで計測流路を流れる流体の流量を計測する流量計測部の上流側に消音器が備えられた消音器付き超音波流量計であって、前記計測流路は、断面矩形状をなすと共に、前記1対の送受波器は、前記計測流路の中心軸上に対向配置され、前記消音器には、前記計測流路と同軸に配置される筒形ボディと、前記筒形ボディの内周面に嵌合される環状障害
壁と、前記環状障害
壁の内側に形成される中央孔を覆うと共に、前記筒形ボディの内周面との間に環状隙間を形成する中央障害
壁と、前記環状障害
壁と前記中央障害
壁とが前記筒形ボディの軸方向で交互に配置されるように、前記環状障害
壁と前記中央障害
壁とを連結する複数の支柱と、が備えられている消音器付き超音波流量計において、各前記支柱は、前記筒形ボディの中心軸方向から見たときに、その支柱と前記筒形ボディの中心軸とを結ぶ直線と前記計測流路の流路断面の長手方向とのなす角度が45度以下となる範囲に配置されている消音器付き超音波流量計である。
【0008】
請求項2の発明は、前記複数の支柱は、前記筒形ボディの周方向で180度離れた位置に配置される1対の対向支柱のみからなる請求項1に記載の消音器付き超音波流量計である。
【0009】
請求項3の発明は、前記1対の対向支柱が前記計測流路の流路断面の長手方向に一致している請求項2に記載の消音器付き超音波流量計である。
【0010】
請求項4の発明は、1対の送受波器の間で超音波を送受波することで計測流路を流れる流体の流量を計測する流量計測部の上流側に消音器が備えられた消音器付き超音波流量計であって、前記1対の送受波器は、前記計測流路の中心軸と斜めに交差する方向に対向配置され、前記消音器には、前記計測流路と同軸に配置される筒形ボディと、前記筒形ボディの内周面に嵌合される環状障害
壁と、前記環状障害壁の内側に形成される中央孔を覆うと共に、前記筒形ボディの内周面との間に環状隙間を形成する中央障害壁と、前記環状障害壁と前記中央障害壁とが前記筒形ボディの軸方向で交互に配置されるように、前記環状障害壁と前記中央障害壁とを連結する複数の支柱と、が備えられている消音器付き超音波流量計において、前記複数の支柱は、前記筒形ボディの軸方向から見たときに、前記1対の送受波器に対する周方向のズレが45度以上、90度以下となる範囲に配置されている消音器付き超音波流量計である。
【0011】
請求項5の発明は、前記複数の支柱は、前記筒形ボディの周方向で180度離れた位置に配置される1対の対向支柱のみからなる請求項4に記載の消音器付き超音波流量計である。
【0012】
請求項6の発明は、前記1対の対向支柱の対向方向が前記1対の送受波器の対向方向と直交する請求項5に記載の消音器付き超音波流量計である。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1〜3の発明]
請求項1の発明では、計測流路が断面矩形状をなすと共に、1対の送受波器が計測流路の中心軸上に対向配置されている。そして、本発明によれば、環状障害壁と中央障害壁を連結する各支柱は、筒形ボディの中心軸方向から見たときに、その支柱と筒形ボディの中心軸とを結ぶ直線と計測流路の流路断面の長手方向とのなす角度が45度以下となる範囲に配置されているので、上流側に接続される配管に起因した計測値の変化を低減することが可能となる。しかも、請求項2の発明のように、複数の支柱が筒形ボディの周方向で180度離れた位置に配置される1対の対向支柱のみからなる構成とすれば、支柱による圧損を低減しつつ、計測値の変化を効率よく低減することが可能となる。なお、1対の対向支柱の対向方向は、計測流路の流路断面の長手方向に一致することが好ましい(請求項3の発明)。
【0014】
[請求項4〜6の発明]
請求項4の発明では、1対の送受波器が計測流路の中心軸と斜めに交差する方向に対向配置されている。そして、本発明によれば、複数の支柱は、筒形ボディの軸方向から見たときに、1対の送受波器に対する周方向のズレが45度以上、90度以下となる範囲に配置されているので、上流側に接続される配管に起因した計測値の変化を低減することが可能となる。しかも、請求項5の発明のように、複数の支柱が筒形ボディの周方向で180度離れた位置に配置される1対の対向支柱のみからなる構成とすれば、支柱による圧損を低減しつつ、計測値の変化を効率よく低減することが可能となる。なお、1対の対向支柱の対向方向は、1対の送受波器の対向方向と直交することが好ましい(請求項6の発明)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る消音器付き超音波流量計の側面図
【
図4】(A)消音器付き超音波流量計の正断面図、(B)別の例としての消音器付き超音波流量計の正断面図、(C)参考例としての消音器付き超音波流量計の正断面図
【
図9】エルボ管がされた場合の実験例1〜3の実験結果を同一のグラフに重ねて示した図
【
図10】(A)計測流路の長手方向に流速分布がある場合の流速分布と1対の送受波器の配置関係を示す図、(B)計測流路の短手方向に流速分布がある場合の流速分布と1対の送受波器の配置関係を示す図
【
図11】(A)乱流における流速分布の平滑化の概念図、(B)層流における流速分布の平滑化の概念図
【
図12】1対の対向支柱の対向方向と計測流路の長手方向が直交する場合における消音器付き超音波流量計の(A)正断面図、(B)A−A断面図
【
図13】1対の対向支柱の対向方向と計測流路の長手方向が一致する場合における消音器付き超音波流量計の(A)正断面図、(B)B−B断面図
【
図14】第2実施形態に係る消音器付き超音波流量計における(A)1対の送受波器の対向方向で切断した断面図、(B)1対の送受波器の対向方向と直交する方向で切断した断面図
【
図15】(A)消音器付き超音波流量計の正断面図、(B)別の例としての消音器付き超音波流量計の正断面図、(C)参考例としての消音器付き超音波流量計の正断面図
【
図16】(A)1対の送受波器の対向方向に流速分布がある場合の流速分布と1対の送受波器の配置関係を示す図、(B)1対の送受波器の対向方向と直交する方向に流速分布がある場合の流速分布と1対の送受波器の配置関係を示す図
【
図17】1対の対向支柱の対向方向と1対の送受波器の対向方向とが一致する場合における(A)正断面図、(B)C−C断面図
【
図18】1対の対向支柱の対向方向と1対の送受波器の対向方向とが直交する場合における(A)正断面図、(B)D−D断面図
【
図19】(A)変形例に係る消音器付き超音波流用計の正断面図、(B)変形例に係る消音器付き超音波流用計の正断面図
【
図20】(A)変形例に係る消音器付き超音波流用計の正断面図、(B)変形例に係る消音器付き超音波流用計の正断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を
図1〜
図13に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の消音器付き超音波流量計10(以下、単に「流量計10」という。)は、流体が流れる配管70(例えば、ガス管)の途中に取り付けられ、流量計測部11の上流側に消音器30を備えた構造になっている。なお、以下では、配管70のうち流量計10より上流側部分を上流側配管71と、流量計10より下流側部分を下流側配管72と、適宜、区別することにする。
【0017】
図2に示すように、流量計測部11は、計測流路20が内側に形成された計測管12と、計測流路20を流れる流体の流量を計測するための1対の送受波器21,21と、を備えている。具体的には、計測管12は、軸方向の中間部で内側断面積が段付き状に小さくなって、内側断面積の小さな小径部14が内側断面積の大きな大径部13,13に軸方向で挟まれた構造になっている。そして、1対の大径部13,13に、超音波を送受波可能な1対の送受波器21,21が固定して備えられることで、小径部14の内側部分に、直線状に延びた計測流路20が形成されている。ここで、1対の送受波器21,21は、計測流路20の中心軸上に配置されている。なお、
図2では、1対の送受波器21,21を計測管12に固定するための機構は省略して示されている。
【0018】
図4(A)に示すように、本実施形態では、計測流路20の断面形状は、矩形状になっている。具体的には、計測流路20の断面における短手方向では、計測流路20の長さは、送受波器21の長さとほぼ同じ大きさになっていて、長手方向では、計測流路20の長さは、送受波器の長さの約2〜20倍となっている。
【0019】
図2に示すように、消音器30は、計測管12に接続される筒形ボディ31を有している。筒形ボディ31は、円筒状をなして計測管12(計測流路20)と同軸に配置され、筒形ボディ31の内径は、上流側配管71の内径よりも大径となっている。詳細には、筒形ボディ31の内径は、計測管12の大径部13の内径と同一径となっている。また、筒形ボディ31の両端部にはフランジ31F,31Fが備えられ、それらフランジ31F,31Fが上流側配管71のフランジ71Fと計測管12のフランジ12Fに重ねられて連結されている。
【0020】
筒形ボディ31の内部には、環状障害壁43と中央障害壁44とが一定の間隔をあけて交互に並べて備えられ、それら環状障害壁43及び中央障害壁44によって筒形ボディ31の内部が複数の部屋36,36,・・・に仕切られている。
【0021】
環状障害壁43は、円環状をなして径方向中央に中央孔43Aを有し、筒形ボディ31の内周面31Mに嵌合されている。中央障害壁44は、円形状をなして、筒形ボディ31の内周面31Mとの間に環状隙間44Aを形成する。ここで、中央障害壁44の大きさは、環状障害壁43の中央孔43Aよりも大径となっていて、中央障害壁44と中央孔43Aが筒形ボディ31の軸方向で対向配置されている。また、環状障害壁43と環状隙間44Aも筒形ボディ31の軸方向で対向配置されている。このように、本実施形態では、中央障害壁44が環状障害壁43の中央孔43Aを覆うように配置されていて、中央孔43Aと環状隙間44Aとが筒形ボディ31の軸方向で重ならないようになっている。
【0022】
図3に示すように、環状障害壁43と中央障害壁44は、複数の支柱47によって連結されてインナーユニット40を構成している。支柱47は、環状障害壁43よりも大径なフランジ壁41から起立して筒形ボディ31の軸方向に延び、環状障害壁43と中央障害壁44とを貫通して、環状障害壁43と中央障害壁44との間を一定の間隔で固定している。
図2に示されるように、インナーユニット40は、筒形ボディ31の上流側の開口部32から挿入され、フランジ壁41を筒形ボディ31のフランジ31Fと上流側配管71のフランジ71Fとの間に挟むことで筒形ボディ31内に位置決めされている。なお、フランジ壁41の中央部に貫通形成された円形孔41Aは、例えば、中央孔43Aと同一径となっている(
図2参照)。
【0023】
本実施形態では、複数の支柱47は、筒形ボディ31の周方向で180度離れた位置に対をなして配置される1対の対向支柱47T,47Tのみで構成されている。このように、本実施形態では、環状障害壁43と中央障害壁44を連結する支柱47の数が2つのみとなっているので、支柱47による流体の圧損を低減することが可能となっている。
【0024】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、各対向支柱47Tは、筒形ボディ31の軸方向から見たときに、対向支柱47Tと筒形ボディ31の中心軸を結ぶ直線L1と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角が45度以下となる範囲に配置される。言い換えれば、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角が45度以下となっている。
図4(A)と
図4(B)とには、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角が0度のもの(即ち、両方向が一致するもの)と、45度のものが示されている。また、
図4(C)には、本発明の技術的範囲に属しない参考例として、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角が90度のものが示されている。
【0025】
本実施形態に係る流量計10の構成に関する説明は以上である。次に、流量計10の作用効果について説明する。
【0026】
本実施形態の流量計10では、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角が45度以下(
図4(A)及び
図4(B)参照)になっているので、以下の[確認実験]で説明するように、上流側に接続される配管に起因した計測値の変化を低減することが可能となる。しかも、本実施形態では、複数の支柱47が1対の対向支柱47T,47Tのみからなるので、支柱47による圧損を低減しつつ、計測値の変化を効率よく低減することが可能となる。なお、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路の流路断面の長手方向とのなす角は、0度とすることが好ましい(
図4(A)参照)。
【0027】
[確認実験]
本発明に係る流量計10の効果を、実験により確認した。具体的には、
図5に示すように、流量計10の上流側に試験用配管81を、下流側にストレート管82を接続し、ストレート管82の下流側寄り部分に標準器85を取り付けた。そして、ストレート管82の下流側に接続したブロワ83にて室内空気を吸引し、流量計10と標準器85の計測値のズレを測定した。実験条件及び実験結果は、以下の通りである。
【0028】
[実験条件]
流量計10における1対の対向支柱47T,47Tの配置を、
図4(A)と
図4(B)に示す配置としたもの実験例1,2とした。また、流量計10において1対の対向支柱47T,47Tの配置を
図4(C)に示す配置としたものを、実験例3とした。流量については、ブロワ83の最大吸引量を100%としたときに、0〜100%の範囲で吸引量を変化させて、空気の流量を変化させた。そして、実験例1〜3について、各流量における計測値のズレを測定した。試験用配管81としては、ストレート管とエルボ管の2種類を用いた(
図5には、エルボ管の例が示されている。)。標準器85としては、臨界ノズルを使用した。なお、試験中の室内温度は23℃、室内圧力は大気圧、室内湿度は50%RHである。
【0029】
[実験結果]
実験例1〜3の実験結果を
図6〜
図8に示す。
図6〜
図8において、縦軸の計測値のズレ(%)は、各実験例1〜3の流量計の計測値と標準器85の計測値との差を、標準器85の計測値で除することで算出した。
図6〜
図8に示すように、実験例1〜3の何れについても、流量が0〜30%の範囲で、計測値のズレ(%)が大きくなっている。また、流量0〜30%の範囲では、実験例1〜3の何れについても、試験用配管81としてエルボ管を用いた場合の方が、ストレート管を用いた場合よりも、計測値のズレ(%)が大きくなっている。
【0030】
図9には、試験用配管81としてエルボ管が用いられた場合における実験例1〜3の結果の流量0〜40%の範囲が拡大して示されている。同図に示されるように、計測値のズレ(%)は、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向のなす角が90度の場合(
図4(C)参照)で、−0.69%〜0.88%、45度の場合(
図4(B)参照)で、−0.41%〜0.56%、0度の場合(
図4(A)参照)で、−0.46%〜0.31%となっていて、両方向のなす角が小さくなるに従って、計測値のズレ(%)が小さくなっていることが分かる。このことから、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角が45度以下の場合には、その角が45度より大きい場合よりも、上流側の配管(試験用配管81)に起因した計測値の変化が低減されることが確認できた。
【0031】
なお、流量計10の効果の原因については、以下のことが推測される。この推測について説明する前に、まず、消音器30がない場合を考える。この場合において、
図10(A)に示すように、計測流路20の流路断面の長手方向に流体の流速分布があると、1対の送受波器21,21が送受波する超音波は、ある流速で流れる流体の部分のみを通過し、超音波の通過領域に流速分布が反映されない。このため、流体の流速の平均値を計測することが困難となり、流量計測値が安定し難くなる。なお、
図10(B)に示すように、計測流路20の流路断面の短手方向に流体の流速分布がある場合には、1対の送受波器21,21が送受波する超音波の通過領域に流速分布が反映されるので、流速の平均値を計測することが可能となり、流量計測値が安定し易くなる。このように、流量計測値が変化する一因として、流体の流速分布が考えられる。
【0032】
次に、消音器30がある場合について考える。流量計測部11の上流側に消音器30があると、環状障害壁43と中央障害壁44とによって、流体は、筒形ボディ31の径方向中央側と径方向外側との間を行き来しながら蛇行するうように流れる。このように、消音器30では、筒形ボディ31の軸方向に直線状に流体が流れる場合と比較して、流体が流れる距離が長くなるので、流体の流速分布が平滑化されやすくなる。
図11(A)及び
図11(B)には、流体の流れが乱流である場合と、層流である場合における流速分布の平滑化が概念的に示されている(
図11(A)及ぶ
図11(B)では、矢印の大きさが流速の大きさを表している。)。
【0033】
ところで、一般に、層流は、流速が比較的低い場合に起こり易く、乱流は、流速が比較的高い場合に起こり易いことが知られている。従って、層流と乱流が切り替わる遷移域では、
図11(A)及び
図11(B)に示した何れの平滑化も起こり難く、消音器30による平滑化の効果が低下することが考えられる。
図6〜
図8に示した実験結果において、流量0〜30%の範囲で計測値のズレ(%)が大きくなっていることの原因は、流体の流れが遷移域となっっていることが原因であると推測される。
【0034】
ここで、計測流路20の流路断面の長手方向に流体の流速分布がある場合において、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角が90度であると、
図12に示すように、流体の流れは、対向支柱47T,47Tによって流速が速い部分と遅い部分とに分けられる(
図12では、矢印の大きさが流速の大きさを表している。)。従って、消音器30内を流れる流体は、筒形ボディ31の径方向中央側から径方向外側へ移動し、再び径方向中央側へ戻ってくるまでの間、流速分布が速い部分と遅い部分が混ざり合うことが困難となり、流速分布の平滑化にかかる時間が長くなることが予想される。
【0035】
これに対し、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角度が0度であると、
図13に示すように、対向支柱47T,47Tによって分けられた流体は、対向支柱47T,47Tによって分けられる前の流速分布と同様の流速分布を有することとなる(
図13では、矢印の大きさが流速の大きさを表している。)。従って、筒形ボディ31の径方向中央側から径方向外側へ移動し、再び径方向中央側へ戻ってくるまでの間、流速分布が速い部分と遅い部分が混ざり易くなり、流速分布の平滑化にかかる時間が短くなることが予想される。
【0036】
以上、纏めると、消音器30による流速分布の平滑化にかかる時間は、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角度に依存して変化すると考えられる。この変化は、特に、層流と乱流の遷移域において顕著であると考えられる。そして、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角度が0度〜45度の範囲になる場合、その角度が45度〜90度の範囲にあるときよりも、平滑化にかかる時間が短くなると考えられる。そして、この平滑化にかかる時間の相違が、実験例1〜3の計測値のズレ(%)の相違となって表れていると推測される。
【0037】
[第2実施形態]
以下、本実施形態の第2実施形態を
図14〜
図18に基づいて説明する。
図14(A)及び
図14(B)に示すように、本実施形態の消音器付き超音波流量計10V(以下、単に、流量計10Vという。)は、主として、流量計測部11Vの構成が上記第1実施形態の流量計測部11の構成と異なっている。具体的には、計測流路20Vは、断面円形状になっていて、1対の送受波器21,21は、計測流路20の中心軸と斜めに交差する方向で対向配置されるように計測管12に固定して備えられている。
【0038】
本実施形態では、複数の支柱47は、筒形ボディ31の軸方向から見たときに、1対の送受波器21,21に対する周方向のズレが45度以上、90度以下となる範囲に配置されている(
図15(A)及び
図15(B)参照)。詳細には、本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、複数の支柱47が1対の対向支柱47T,47Tのみで構成され、筒形ボディ31の軸方向から見たときに、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と1対の送受波器21,21の対向方向とのなす角が45度以上、90度以下となっている。なお、
図15(A)と
図15(B)とには、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と1対の送受波器21,21の流路断面の長手方向とのなす角が90度のもの(即ち、両方向が直交するもの)と、45度のものが示されている。また、
図15(C)には、本発明の技術的範囲に属しない参考例として、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と送受波器21,21の対向方向とのなす角が0度のものが示されている。
【0039】
流量計10Vのその他の構成は、上記第1実施形態と同様になっているので、同一符号を付すことで説明を省略する。本実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。
【0040】
なお、流量計10Vの効果の原因については、以下のことが推測される。この推測の説明においても、記第1実施形態のときと同様に、まず、消音器30がない場合を考える。この場合において、
図16(A)に示すように、1対の送受波器21,21の対向方向に流体の流速分布があると、1対の送受波器21,21が送受波する超音波の通過領域に流速分布が反映されるので、流速の平均値を計測することが可能となり、流量計測値が安定し易くなる一方、
図16(B)に示すように、1対の送受波器21,21の対向方向と直交する方向に流体の流速分布があると、超音波の通過領域に流速分布が反映されない。このため、流体の流速の平均値を計測することが困難となり、流量計測値が安定し難くなるこのように、本実施形態においても、流量計測値が変化する一因として、流体の流速分布が考えられる。なお、
図16(A)及び
図16(B)では、矢印の大きさが流速の大きさを表している。
【0041】
次に、消音器30がある場合について考える。上記第1実施形態と同様に、消音器30では、筒形ボディ31内を流体が蛇行しながら流れるので、筒形ボディ31の軸方向に直線状に流体が流れる場合と比較して、流体が流れる距離が長くなり、流体の流速分布が平滑化されやすくなる。
【0042】
ここで、筒形ボディ31の軸方向から見て、1対の送受波器21,21の対向方向と直交する方向に流体の流速分布がある場合に、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と1対の送受波器21,21の対向方向とのなす角が0度であると、
図17に示すように、流体の流れは、対向支柱47T,47Tによって流速が速い部分と遅い部分とに分けられる(
図17では、矢印の大きさが流速の大きさを表している。)。従って、消音器30内を流れる流体は、流速分布が速い部分と遅い部分が混ざり合うことが困難となり、流速分布の平滑化にかかる時間が長くなることが予想される。
【0043】
これに対し、筒形ボディ31の軸方向から見て、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と1対の送受波器21,21の対向方向とが直交していると、
図18に示すように、対向支柱47T,47Tによって分けられた流体は、対向支柱47T,47Tによって分けられる前の流速分布と同様の流速分布を有することとなる(
図18では、矢印の大きさが流速の大きさを表している。)。従って、消音器30内を流れる流体は、流速分布が速い部分と遅い部分が混ざり易くなり、流速分布の平滑化にかかる時間が短くなることが予想される。
【0044】
以上、纏めると、消音器30による流速分布の平滑化にかかる時間は、筒形ボディ31の軸方向かた見たときの1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と1対の送受波器21,21の対向方向とのなす角度に依存して変化すると考えられる。そして、1対の対向支柱47T,47Tの対向方向と1対の送受波器21,21の対向方向とのなす角度が45〜90度の範囲にある場合、その角度が0度〜45度の範囲にある場合よりも、平滑化にかかる時間が短くなると考えられる。
【0045】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)上記第1実施形態では、支柱47を2本のみ備えた構成であったが、筒形ボディ31の軸方向から見たときに、各支柱47が、その支柱47と筒形ボディ31の中心軸とを結ぶ直線と計測流路20の流路断面の長手方向とのなす角が45度以下の範囲に配置されていれば、
図19(A)及び
図19(B)に示すように、3本以上備えた構成であってもよい。なお、この場合において、複数の支柱47には、1対の対向支柱47T,47Tを含む構成であってもよいし、1対の対向支柱47T,47Tを含まない構成であってもよい。
【0047】
(2)上記第2実施形態では、支柱47を2本のみ備えた構成であったが、筒形ボディ31の軸方向から見たときに、1対の送受波器21,21に対する周方向のズレが45度以上、90度以下となる範囲に各支柱47が配置されていれば
図20(A)及び
図20(B)に示すように、3本以上備えた構成であってもよい。なお、この場合において、複数の支柱47には、1対の対向支柱47T,47Tを含む構成であってもよいし、1対の対向支柱47T,47Tを含まない構成であってもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、中央障害壁44は円形であったが、四角形状であってもよいし楕円形状であってもよい。また、上記実施形態では、環状障害壁43は円形であったが、四角形状であってもよいし楕円形状であってもよい
【0049】
(4)上記実施形態では、環状障害壁43と中央障害壁44を複数ずつ備えた構成であったが、1つずつ備えた構成であってもよい。