(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮熱板側挿通孔は、前記蒸気タービンが駆動したときにおける前記遮熱板の熱伸び量に相当する隙間を、冷態時において前記突出部の外周面との間に有するように構成される
請求項3に記載の蒸気弁装置。
前記遮熱板は、前記蒸気タービンが駆動したときにおける、前記第1の遮熱板要素の熱伸び量に相当する第1の隙間量、及び前記第2の遮熱板要素の熱伸び量に相当する第2の隙間量の合計に相当する隙間を、冷態時において前記第1の遮熱板要素と前記第2の遮熱板要素との間に有するように構成される
請求項6から8の何れか一項に記載の蒸気弁装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一方に開口を有する弁ハウジングと、この開口を閉塞するように弁ハウジングに締結される弁蓋と、弁蓋の挿通孔に挿通される弁揚棒とを備えるように蒸気弁装置を構成することが考えられる。このように構成することで、弁蓋を取り外すだけで弁ハウジングの内部に収容される弁体などをメンテナンスできることから、メンテナンス性に優れた蒸気弁装置とすることが出来る。
【0006】
しかしながら、本発明者の知見によれば、このような蒸気弁装置においては、高温の蒸気が流れる蒸気流路に面する弁蓋の内面と、外気に面する弁蓋の外面とで温度差が生じ、弁蓋に高い熱応力が発生する。これにより弁蓋が変形し、弁蓋に形成されている弁蓋側挿通孔と弁揚棒とが接触する虞がある。弁蓋側挿通孔と弁揚棒とが接触すると、弁揚棒が摩耗するため、弁揚棒を頻繁に交換する必要が生ずる。また、特に弁蓋の変形が大きい場合には、弁揚棒が傾いて弁体と弁座との接触が不十分となり、蒸気漏れが発生する虞がある。
【0007】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、上述した従来技術の状況の基になされた発明であって、その目的とするところは、一方に開口を有する弁ハウジングと、この開口を閉塞するように弁ハウジングに締結される弁蓋と、弁蓋の挿通孔に挿通される弁揚棒とを備える蒸気弁装置において、弁蓋の内面と外面との温度差を小さくすることで弁蓋の熱変形を低減出来るとともに、シンプルな構造で組み立て性にも優れた蒸気弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一つの実施形態にかかる蒸気弁装置は、蒸気タービンに供給する蒸気量を調整するための蒸気弁装置であって、弁体と、弁体を一方側にリフトするための弁揚棒と、弁体を収容するための弁ハウジングであって、蒸気が流れる蒸気流路が内部に形成されるとともに、一方側に開口を有する弁ハウジングと、開口を閉塞するように弁ハウジングに締結される弁蓋であって、弁揚棒が挿通される弁蓋側挿通孔を有する弁蓋と、弁蓋の内面側に設けられる遮熱板であって、蒸気流路に面する遮熱部、弁蓋と弁ハウジングとの間に挟まれる固定部、及び弁揚棒が挿通される遮熱板側挿通孔を有する遮熱板と、を備えるように構成される。
【0009】
上記(1)に記載の実施形態によれば、一方側に開口を有する弁ハウジングと、この開口を閉塞するように弁ハウジングに締結される弁蓋と、弁蓋の挿通孔(弁蓋側挿通孔)に挿通される弁揚棒とを備える蒸気弁装置において、弁蓋の内面側に遮熱板が設けられている。この遮熱板により、弁蓋の内面の温度上昇が抑制されることで、弁蓋の内面と外面との温度差が小さくなり、弁蓋に発生する熱応力が低減される。また、弁蓋の内面の温度上昇が抑制されることで、弁蓋の許容応力が高まる。これらにより、弁蓋の熱変形を低減することが出来る。
【0010】
また、上記(1)に記載の実施形態によれば、遮熱板が、蒸気流路に面する遮熱部、弁蓋と弁ハウジングとの間に挟まれる固定部、及び弁揚棒が挿通される遮熱板側挿通孔を有している。したがって、遮熱板の遮熱板側挿通孔に弁揚棒を挿通した状態で、遮熱板の固定部を弁蓋と弁ハウジングとの間に挟むだけのシンプルな構造で、遮熱板を弁蓋の内面側に取り付けることが出来、組み立て性に優れている。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の蒸気弁装置において、上記遮熱板の固定部には、弁ハウジングと弁蓋とを締結するためのボルトが挿通される遮熱板側ボルト孔が形成される。そして、上記遮熱板は、遮熱板側ボルト孔にボルトを挿通された状態で、弁ハウジングと弁蓋とが締結されることで、弁蓋の内面側に固定されるように構成されている。
【0012】
上記(2)に記載の実施形態によれば、遮熱板の固定部には、弁ハウジングと弁蓋とを締結するためのボルトが挿通される遮熱板側ボルト孔が形成される。よって、この遮熱板側ボルト孔にボルトが挿通された状態で、弁ハウジングと弁蓋とを締結するだけのシンプルな構造で、遮熱板を弁蓋の内面側に取り付けることが出来、組み立て性に優れている。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の蒸気弁装置において、上記弁ハウジングは、開口の周縁部に形成された段部を有する。段部は、弁ハウジングと弁蓋とを締結するためのボルトが挿通されるハウジング側ボルト孔よりも内周側に形成される。そして、上記遮熱板は、遮熱板の固定部が段部に載置された状態で、弁ハウジングと弁蓋とが締結されることで、弁蓋の内面側に固定されるように構成されている。
【0014】
上記(3)に記載の実施形態によれば、弁ハウジングは、開口の周縁部に形成された段部であって、弁ハウジングと弁蓋とを締結するためのボルトが挿通されるハウジング側ボルト孔よりも内周側に形成される段部を有する。よって、遮熱板の固定部が段部に載置された状態で、弁ハウジングと弁蓋とを締結するだけのシンプルな構造で、遮熱板を弁蓋の内面側に取り付けることが出来、組み立て性に優れている。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)の何れかに記載の蒸気弁装置において、上記遮熱板は、遮熱部が固定部よりも弁蓋の内面から離間するように折れ曲がる曲部をさらに有する。
【0016】
上記(4)に記載の実施形態によれば、遮熱板が、遮熱部が固定部よりも弁蓋の内面から離間するように折れ曲がる曲部をさらに有する。よって、弁蓋の内面と遮熱部との間には空間が形成され、この空間が断熱空間として機能する。このため、弁蓋の内面における温度上昇がより一層が抑制され、弁蓋の内面と外面との温度差がより一層小さくなる。これにより、弁蓋の熱変形をより一層低減することが出来る。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)の何れかに記載の蒸気弁装置において、上記弁蓋は、弁蓋側挿通孔の周縁部において、弁揚棒の延在方向に沿って弁蓋の内面から突出する筒状の突出部を有する。そして、上記遮熱板側挿通孔は、突出部が挿通されるように構成される。
【0018】
上記(5)に記載の実施形態によれば、筒状の突出部に弁揚棒を挿通することによって、蒸気流路において高温の蒸気に曝される弁揚棒の露出長さを短くすることが出来る。これにより、弁揚棒の熱伸びによって不具合が発生するリスクを低減することが出来る。また、このような突出部が弁蓋の内面に形成されていても、遮熱板を弁蓋の内面側に取り付けることが出来る。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の蒸気弁装置において、上記遮熱板側挿通孔は、蒸気タービンが駆動したときにおける遮熱板の熱伸び量に相当する隙間を、冷態時において突出部の外周面との間に有するように構成される。
【0020】
上記(6)に記載の実施形態によれば、蒸気タービンの駆動時において、蒸気流路に高温の流路が流れて遮熱板が熱伸びした場合であっても、遮熱板が突出部の外周面に当接して遮熱板が変形するのを防止することが出来る。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)に記載の蒸気弁装置において、上記遮熱板は、突出部の外周面に沿って延在する筒状のスリーブ部をさらに有する。
【0022】
上記(7)に記載の実施形態によれば、遮熱板が、突出部の外周面に沿って延在する筒状のスリーブ部を有する。このため、蒸気流路を流れる高温の蒸気が、弁蓋の内面と遮熱板との間に浸入し難くなり、弁蓋の内面における温度上昇をより一層抑制することが出来る。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)から(7)の何れかに記載の蒸気弁装置において、上記遮熱板は、遮熱板を分割した複数の遮熱板要素からなる。複数の遮熱板要素は、少なくとも第1の遮熱板要素と、第1の遮熱板要素に隣接して配置される第2の遮熱板要素とを含む。第1の遮熱板要素は、遮熱板の固定部に対応する第1の固定部を有するとともに、第2の遮熱板要素は、遮熱板の固定部に対応する第2の固定部を有する。そして、上記第1の遮熱板要素と第2の遮熱板要素とを分割する分割線が、遮熱板側挿通孔を通過するように構成される。
【0024】
上記(8)に記載の実施形態によれば、遮熱板を複数の遮熱板要素に分割することで、大型の遮熱板であっても簡単に弁蓋の内面側に取り付けることが出来る。また、第1の遮熱板要素の第1の固定部、および第2の遮熱板要素の第2の固定部の夫々を弁蓋と弁ハウジングとの間に挟むだけのシンプルな構造で、遮熱板を弁蓋の内面側に取り付けることが出来、組み立て性に優れている。また、第1の遮熱板要素と第2の遮熱板要素とを分割する分割線が、遮熱板側挿通孔を通過するように構成される。このため、例えば、弁蓋側挿通孔に弁揚棒を挿通させた状態のままでも、第1の遮熱板要素および第2の遮熱板要素を弁蓋の内面側に取り付けることが出来るため、遮熱板要素の装着性にも優れている。
【0025】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の蒸気弁装置において、上記遮熱板は、長手方向を有する長尺状の部材からなる。そして、上記分割線は、遮熱板の長手方向と直交する方向に沿って延在するように構成される。
【0026】
上記(9)に記載の実施形態によれば、遮熱板を複数の遮熱板要素に分割する際に、遮熱板の長手方向と直交する方向に沿って分割される。このため、各々の遮熱板要素が長くなり過ぎないことから、各々の遮熱板要素を弁蓋の内面側に取り付ける際の装着性に優れている。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の蒸気弁装置において、上記遮熱板は、遮熱板を分割した複数の遮熱板要素からなる。複数の遮熱板要素は、少なくとも第1の遮熱板要素と、第1の遮熱板要素に隣接して配置される第2の遮熱板要素とを含む。第1の遮熱板要素は、遮熱板の固定部に対応する第1の固定部を有するとともに、第2の遮熱板要素は、遮熱板の固定部に対応する第2の固定部を有する。そして、第1の遮熱板要素と第2の遮熱板要素とを分割する分割線が、遮熱板側挿通孔を通過し、且つ、遮熱板側ボルト孔を通過しないように構成される。
【0028】
上記(10)に記載の実施形態によれば、上記(8)に記載の実施形態と同様に、遮熱板を複数の遮熱板要素に分割することで、大型の遮熱板であっても簡単に弁蓋の内面側に取り付けることが出来る。また、第1の遮熱板要素の第1の固定部、および第2の遮熱板要素の第2の固定部の夫々を弁蓋と弁ハウジングとの間に挟むだけのシンプルな構造で、遮熱板を弁蓋の内面側に取り付けることが出来、組み立て性に優れている。また、第1の遮熱板要素と第2の遮熱板要素とを分割する分割線が、遮熱板側挿通孔を通過するように構成される。このため、例えば、弁蓋側挿通孔に弁揚棒を挿通させた状態のままでも、第1の遮熱板要素および第2の遮熱板要素を弁蓋の内面側に取り付けることが出来るため、遮熱板要素の装着性にも優れている。
【0029】
また、上記(10)に記載の実施形態によれば、第1の遮熱板要素と第2の遮熱板要素とを分割する分割線が、遮熱板側ボルト孔を通過しないように構成される。このため、分割線が遮熱板側ボルト孔を通過する場合と比べて、第1の遮熱板要素と第2の遮熱板要素との位置合わせの精度を緩くすることが出来、遮熱板要素の装着性に優れている。
【0030】
(11)幾つかの実施形態では、上記(8)から(10)の何れかに記載の蒸気弁装置において、上記遮熱板は、蒸気タービンが駆動したときにおける、第1の遮熱板要素の熱伸び量に相当する第1の隙間量、及び第2の遮熱板要素の熱伸び量に相当する第2の隙間量の合計に相当する隙間を、冷態時において第1の遮熱板要素と第2の遮熱板要素との間に有するように構成される。
【0031】
上記(11)に記載の実施形態によれば、蒸気タービンの駆動時において、蒸気流路に高温の流路が流れて遮熱板が熱伸びした場合であっても、隣接して配置される遮熱板要素同士が当接して遮熱板が変形するのを防止することが出来る。
【発明の効果】
【0032】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、一方に開口を有する弁ハウジングと、この開口を閉塞するように弁ハウジングに締結される弁蓋と、弁蓋の挿通孔に挿通される弁揚棒とを備える蒸気弁装置において、弁蓋の内面と外面との温度差を小さくすることで弁蓋の熱変形を低減出来るとともに、シンプルな構造で組み立て性にも優れた蒸気弁装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
また、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。また、比較形態を示す図においては、対応する実施形態の構成の符号に「´」を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0035】
図1〜
図4は、本発明の一実施形態にかかる蒸気弁装置の断面図である。
図5〜
図8は、本発明の一実施形態にかかる蒸気弁装置の遮熱板を示した図である。
本発明の一実施形態にかかる蒸気弁装置10(10A,10B,10C,10D)は、不図示の蒸気タービンに供給する蒸気量を調整するための蒸気弁装置である。
図1〜
図4に示すように、本発明の一実施形態にかかる蒸気弁装置10(10A,10B,10C,10D)は、弁体2と、弁揚棒4と、弁ハウジング6と、弁蓋8と、遮熱板9とを備える。
【0036】
図示した例示的な実施形態では、弁体2は、弁ポート3の弁座面31に対して離接するように構成された弁本体部21と、弁本体部21と一端側において連結される弁軸部22と、弁軸部22の他端側に設けられる弁頭部23とを有している。弁軸部22は、弁揚板5に形成されている弁軸孔51に挿通されており、弁軸孔51の下側には弁本体部21が位置し、弁軸孔51の上側には弁頭部23が位置している。弁本体部21および弁頭部23は、弁軸孔51の孔断面よりも大きい外形状を有している。
【0037】
弁揚棒4は、弁体2を上方側にリフトするためのものである。
【0038】
図示した例示的な実施形態では、弁揚棒4は、弁ハウジング6の内部において弁揚板5と連結されるとともに、弁ハウジング6の外部においてアクチュエータ11に接続されている。そして、アクチュエータ11の駆動力によって弁揚棒4を上方側にリフトすると、弁揚板5の上面5aと弁頭部23の下面23aとが当接し、弁本体部21が上方側(弁座面31から離間する方向)にリフトされるように構成されている。なお、弁本体部21が弁座面31に当接している状態における、弁揚板5の上面5aと弁頭部23の下面23aとの隙間s1は、複数の弁体2の各々によって夫々異なっており、これにより、各弁体2の開弁タイミングおよび開口面積が夫々異なるように設定されている。
【0039】
弁ハウジング6は、弁体2を収容するためのハウジング部材である。弁ハウジング6の内部には、蒸気が流れる蒸気流路7が形成されている。また、弁ハウジング6は、一方側に開口6Aを有している。
【0040】
図示した例示的な実施形態では、弁ハウジング6は、上方側に開口6Aを有する箱型形状に形成されており、弁ハウジング6の軸方向(長手方向)に沿って直列に配列された4つの弁体2を収容している。また、弁ハウジング6の軸方向の一端側には蒸気導入管61が設けられているとともに、弁ハウジング6の底部には、4つの弁体2に対応して4つの弁ポート3が形成されている。図中の矢印で示したように、蒸気導入管61から弁ハウジング6の内部に導入された蒸気は、蒸気流路7を流れ、弁本体部21と弁座面31との間を通過する。そして、弁ポート3を介して、蒸気弁装置10の下方に配置されている不図示の蒸気タービンに供給される。
【0041】
弁蓋8は、上述した弁ハウジング6の一方側に形成されている開口6Aを閉塞するように弁ハウジング6に締結される蓋部材である。また、弁蓋8には、上述した弁揚棒4が挿通される弁蓋側挿通孔81が形成されている。
【0042】
図示した例示的な実施形態では、弁蓋8の周縁部には弁蓋側ボルト孔82が形成されている。また、弁ハウジング6の周縁部にも、弁蓋側ボルト孔82に対応する位置にハウジング側ボルト孔62が形成されている。そして、これら弁蓋側ボルト孔82およびハウジング側ボルト孔62にボルト83が挿入され、ボルト83が締め付けられることで、弁蓋8が弁ハウジング6に連結される。また、弁蓋側挿通孔81には筒状のブッシュ84が挿通されており、弁揚棒4は、このブッシュ84に挿通されている。
【0043】
遮熱板9は、弁蓋8の内面8a側に設けられる板状部材である。遮熱板9は、
図5〜
図11に示すように、蒸気流路7に面する遮熱部91、弁蓋8と弁ハウジング6との間に挟まれる固定部92、及び弁揚棒4が挿通される遮熱板側挿通孔93を有する。
【0044】
このように構成される本発明の一実施形態によれば、一方側に開口を有する弁ハウジング6と、この開口6Aを閉塞するように弁ハウジング6に締結される弁蓋8と、弁蓋8の弁蓋側挿通孔81に挿通される弁揚棒4とを備える蒸気弁装置1において、弁蓋8の内面8a側に上述した遮熱板9が設けられている。この遮熱板9により、弁蓋8の内面8aの温度上昇が抑制されることで、弁蓋8の内面8aと外面8bとの温度差が小さくなり、弁蓋8の熱変形が抑制される。
【0045】
図10は、本発明の一実施形態にかかる蒸気弁装置の効果を説明するための図である。
図10において、横軸は蒸気タービンの駆動開始からの経過時間を示し、縦軸は温度を示している。また、
図10の(a)は、比較形態の蒸気加減弁装置における弁蓋の温度変化を示しており、
図10の(b)は、本実施形態の蒸気加減弁装置における弁蓋の温度変化を示している。ここで、G1(G1´)は、弁蓋の内面の温度変化、G2(G2´)は、弁蓋の外面の温度変化、G3(G3´)は、弁蓋の内面と外面との温度差の変化をそれぞれ示している。また、
図11は、本発明の一実施形態にかかる蒸気弁装置の効果を説明するための図である。
図11において、横軸は温度を示し、縦軸は弁蓋に発生する応力を示している。
【0046】
図10に示したように、弁蓋8の内面8aと外面8bとの温度差は、比較形態と比べて本実施形態の方が小さくなる。これに伴って、
図11に示したように、弁蓋8の内外面の温度差によって発生する熱応力も、比較形態と比べて本実施形態の方が小さくなる。また、
図11に示したように、弁蓋8を構成する材料(例えば、クロムモリブデン鋼)の許容応力は、材料の温度が低い方が高くなる。よって、弁蓋8の内面8aの温度上昇が抑制されることで、弁蓋8の許容応力自体も比較形態と比べて本実施形態の方が高くなる。これらにより、比較形態と比べて本実施形態の方が塑性変形発生域から遠ざかるところに位置することとなる。すなわち、弁蓋8の熱変形が抑制されるようになる。
【0047】
また、このように構成される本発明の一実施形態によれば、遮熱板9が、蒸気流路7に面する遮熱部91、弁蓋8と弁ハウジング6との間に挟まれる固定部92、及び弁揚棒4が挿通される遮熱板側挿通孔93を有している。したがって、遮熱板9の遮熱板側挿通孔93に弁揚棒4を挿通した状態で、遮熱板9の固定部92を弁蓋8と弁ハウジング6との間に挟むだけのシンプルな構造で、遮熱板9を弁蓋8の内面8a側に取り付けることが出来、組み立て性に優れている。
【0048】
幾つかの実施形態では、
図1、
図3、
図4に示した蒸気弁装置10(10A、10C、10D)において、
図5、
図7、
図8に示すように、遮熱板9(9A、9C、9D)の固定部92には、弁ハウジング6と弁蓋8とを締結するためのボルト83が挿通される遮熱板側ボルト孔94が形成される。そして、遮熱板9(9A、9C、9D)は、遮熱板側ボルト孔94にボルト83が挿通された状態で、弁ハウジング6と弁蓋8とが締結されることで、弁蓋8の内面8a側に固定されるように構成されている。
【0049】
図示した例示的な実施形態では、遮熱板側ボルト孔94は、遮熱板9(9A、9C、9D)の外周縁部において、周方向に間隔を置いて複数形成されている。また、この遮熱板側ボルト孔94の孔径は、蒸気タービンが駆動したときにおける遮熱板9(9A、9C、9D)の熱伸び量に相当する隙間を、冷態時においてボルト83の外周面との間に有するように構成される。ここで冷態時とは、蒸気タービンが駆動していない状態であって、蒸気弁装置10(10A、10B、10C、10D)の蒸気流路7に高温の蒸気が流れていない状態を意味する。この冷態時における弁ハウジング6および弁蓋8の温度は、蒸気弁装置10(10A、10B、10C、10D)が配置されているプラント内の室内温度とほぼ同じとなる。
【0050】
このような実施形態によれば、遮熱板側ボルト孔94にボルト83が挿通された状態で、弁ハウジング6と弁蓋8とを締結するだけのシンプルな構造で、遮熱板9(9A、9C、9D)を弁蓋8の内面8a側に取り付けることが出来、組み立て性に優れている。
【0051】
幾つかの実施形態では、
図2に示した蒸気弁装置10(10B)において、弁ハウジング6は、開口6Aの周縁部に形成された段部63を有する。段部63は、弁ハウジング6と弁蓋8とを締結するためのボルト83が挿通されるハウジング側ボルト孔62よりも内周側に形成される。そして、遮熱板9(9B)は、
図6に示すように、遮熱板9(9B)の固定部92mが段部63に載置された状態で、弁ハウジング6と弁蓋8とが締結されることで、弁蓋8の内面8a側に固定されるように構成されている。
【0052】
図示した例示的な実施形態では、段部63は、弁ハウジング6の頂面64よりも高さhだけ下がった部分である。段部63の高さhは、遮熱板9(9B)の厚みとほぼ同じである。また、遮熱板9(9B)と段部63の周面63aとの間には、冷態時において、蒸気タービンが駆動したときにおける遮熱板9(9B)の熱伸び量に相当する隙間が形成される。
【0053】
このような実施形態によれば、遮熱板9(9B)の固定部92mが段部63に載置された状態で、弁ハウジング6と弁蓋8とを締結するだけのシンプルな構造で、遮熱板9(9B)を弁蓋8の内面8a側に取り付けることが出来、組み立て性に優れている。
【0054】
幾つかの実施形態では、
図3、
図4に示した蒸気弁装置10(10C、10D)において、
図7、
図8に示すように、遮熱板9(9C、9D)は、遮熱部91が固定部92よりも弁蓋8の内面8aから離間するように折れ曲がる曲部95をさらに有する。
【0055】
図示した例示的な実施形態では、曲部95は、遮熱部91の外周縁部、すなわち、遮熱部91と固定部92との間の位置に形成されている。そして、曲部95は、相反する方向に屈曲する2つの屈曲部から構成されている。また、図示しない例示的な実施形態では、曲部95は、遮熱部91の外周縁部よりも内周側の位置に形成される。また、図示しない例示的な実施形態では、曲部95は、相反する方向に屈曲する2つの湾曲部から構成される。
【0056】
このような実施形態によれば、弁蓋8の内面8aと遮熱部91との間には空間97が形成され、この空間97が断熱空間として機能する。このため、弁蓋8の内面8aにおける温度上昇がより一層が抑制され、弁蓋8の内面8aと外面8bとの温度差がより一層小さくなる。これにより、弁蓋8の熱変形をより一層低減することが出来る。
【0057】
幾つかの実施形態では、
図1〜
図4に示した蒸気弁装置10(10A、10B、10C、10D)において、弁蓋8は、弁蓋側挿通孔81の周縁部において、弁揚棒4の延在方向に沿って弁蓋8の内面8aから突出する筒状の突出部85を有する。そして、遮熱板側挿通孔93は、突出部85が挿通されるように構成される。
【0058】
このような実施形態によれば、筒状の突出部85に弁揚棒4を挿通することによって、蒸気流路7において高温の蒸気に曝される弁揚棒4の露出長さを短くすることが出来る。これにより、弁揚棒4の熱伸びによって不具合が発生するリスクを低減することが出来る。また、このような突出部85が弁蓋8の内面8aに形成されていても、遮熱板9を弁蓋8の内面8a側に取り付けることが出来る。
【0059】
幾つかの実施形態では、
図1〜
図4に示した蒸気弁装置10(10A、10B、10C、10D)において、遮熱板側挿通孔93は、蒸気タービンが駆動したときにおける遮熱板9の熱伸び量に相当する隙間s2を、冷態時において突出部85の外周面85aとの間に有するように構成される。
【0060】
このような施形態によれば、蒸気タービンの駆動時において、蒸気流路7に高温の流路が流れて遮熱板9が熱伸びした場合であっても、遮熱板9が突出部85の外周面85aに当接して遮熱板9が変形するのを防止することが出来る。
【0061】
幾つかの実施形態では、
図4に示した蒸気弁装置10(10D)において、
図8に示すように、遮熱板9は、突出部85の外周面85aに沿って延在する筒状のスリーブ部96をさらに有する。
【0062】
図示した例示的な実施形態では、スリーブ部96の先端部96aは、突出部85の先端面85bと同じ高さまで延在している。
【0063】
このような実施形態によれば、蒸気流路7を流れる高温の蒸気が、弁蓋8の内面8aと遮熱板9との間に浸入し難くなり、弁蓋8の内面8aにおける温度上昇をより一層抑制することが出来る。
【0064】
幾つかの実施形態では、
図4に示した蒸気弁装置10(10D)において、スリーブ部96は、スリーブ部96の先端部96aと外周面85aとの間の冷態時における隙間s3が、スリーブ部96の基端部96bと外周面85aとの間の冷態時における隙間s2(すなわち、上述した遮熱板側挿通孔93と外周面85aとの間の冷態時における隙間s2)よりも小さい。
【0065】
スリーブ部96は、基端部96bよりも先端部96aの方が変形し易いことから、基端部96bが外周面85aに当接するよりも、先端部96aが外周面85aに当接する方が、遮熱板9全体に与える影響は小さい。よって、このような実施形態によれば、蒸気タービンの駆動時にスリーブ部96の先端部96aを外周面85aに当接させることで、遮熱板9全体が変形するリスクを回避しつつ、蒸気流路7を流れる高温の蒸気が弁蓋8の内面8aと遮熱板9との間に浸入するのを確実に防止することが出来る。これにより、弁蓋8の内面8aにおける温度上昇をより一層抑制することが出来る。
【0066】
幾つかの実施形態では、
図1〜
図4に示す蒸気弁装置10(10A、10B、10C、10D)において、
図5〜
図8に示すように、遮熱板9(9A、9B、9C、9D)は、遮熱板9を分割した複数の遮熱板要素からなる。複数の遮熱板要素は、少なくとも第1の遮熱板要素191(191A、191B、191C、191D)と、第1の遮熱板要素191に隣接して配置される第2の遮熱板要素192(192A、192B、192C、192D)とを含む。第1の遮熱板要素191は、遮熱板9の固定部92、92mに対応する第1の固定部921、921mを有するとともに、第2の遮熱板要素192は、遮熱板9の固定部92、92mに対応する第2の固定部922、922mを有する。そして、上述した第1の遮熱板要素191と第2の遮熱板要素192とを分割する分割線Ldが、遮熱板側挿通孔93を通過するように構成される。
【0067】
図示した例示的な実施形態では、遮熱板9(9A、9B、9C、9D)は、3つの遮熱板要素191、192、193に分割されている。そして、3つの遮熱板要素191、192、193の各々は、上述した遮熱部91に対応する第1の遮熱部911、第2の遮熱部912、第3の遮熱部913と、固定部92に対応する第1の固定部921、921m、第2の固定部922、922m、第3の固定部923、923mとを有している。すなわち、第1の遮熱部911、第2の遮熱部912、第3の遮熱部913によって、遮熱部91が構成され、第1の固定部921、921m、第2の固定部922、922m、第3の固定部923、923mによって、固定部92が構成される。
【0068】
また、
図7および
図8に示した例示的な実施形態では、3つの遮熱板要素191、192、193の各々は、上述した曲部95に対応する第1の曲部951、第2の曲部952、第3の曲部953をさらに有している。すなわち、第1の曲部951、第2の曲部952、第3の曲部953によって、曲部95が構成される。また、
図8に支援した例示的な実施形態では、3つの遮熱板要素191、192、193の各々は、上述したスリーブ部96に対応する第1のスリーブ961、第2のスリーブ部962、第3のスリーブ部963をさらに有している。すなわち、第1のスリーブ961、第2のスリーブ部962、第3のスリーブ部963によって、スリーブ部96が構成される。
【0069】
このような実施形態によれば、遮熱板9を複数の遮熱板要素に分割することで、大型の遮熱板9であっても簡単に弁蓋8の内面8a側に取り付けることが出来る。また、第1の遮熱板要素191の第1の固定部911、911m、および第2の遮熱板要素192の第2の固定部912、912mの夫々を弁蓋8と弁ハウジング6との間に挟むだけのシンプルな構造で、遮熱板9(9A、9B、9C、9D)を弁蓋8の内面8a側に取り付けることが出来、組み立て性に優れている。また、第1の遮熱板要素191と第2の遮熱板要素192とを分割する分割線Ldが、遮熱板側挿通孔93を通過するように構成されるため、例えば、弁蓋側挿通孔81に弁揚棒4を挿通させた状態のままでも、第1の遮熱板要素191および第2の遮熱板要素192を弁蓋8の内面8a側に取り付けることが出来、遮熱板要素の装着性にも優れている。
【0070】
幾つかの実施形態では、
図1〜
図4に示す蒸気弁装置10(10A、10B、10C、10D)において、
図5〜
図8に示すように、遮熱板9(9A、9B、9C、9D)は、長手方向を有する長尺状の部材からなる。そして、分割線Ldは、遮熱板9の長手方向と直交する方向に沿って延在するように構成される。
【0071】
このような実施形態によれば、遮熱板9(9A、9B、9C、9D)を複数の遮熱板要素に分割する際に、遮熱板9の長手方向と直交する方向に沿って分割される。このため、各々の遮熱板要素が長くなり過ぎないことから、各々の遮熱板要素を弁蓋8の内面8a側に取り付ける際の装着性に優れている。
【0072】
幾つかの実施形態では、
図1、
図3、
図4に示す蒸気弁装置10(10A、10C、10D)において、
図5、
図7、
図8に示すように、第1の遮熱板要素191と第2の遮熱板要素192とを分割する分割線Ldが、遮熱板側挿通孔93を通過し、且つ、遮熱板側ボルト孔94を通過しないように構成される。
【0073】
このような実施形態によれば、第1の遮熱板要素191と第2の遮熱板要素192とを分割する分割線Ldが、遮熱板側ボルト孔94を通過しないように構成される。このため、分割線Ldが遮熱板側ボルト孔94を通過する場合と比べて、第1の遮熱板要素191と第2の遮熱板要素191との位置合わせの精度を緩くすることが出来、遮熱板要素の装着性に優れている。
【0074】
図9は、本発明の一実施形態にかかる遮熱板要素の分割線周辺を拡大した図である。
幾つかの実施形態では、
図1〜
図4に示す蒸気弁装置10(10A、10B、10C、10D)において、
図9に示すように、遮熱板9は、蒸気タービンが駆動したときにおける、第1の遮熱板要素191の熱伸び量に相当する第1の隙間量sa1、及び第2の遮熱板要素192の熱伸び量に相当する第2の隙間量sa2の合計に相当する隙間saを、冷態時において第1の遮熱板要素191と第2の遮熱板要素192との間に有するように構成される。
【0075】
このような記載の実施形態によれば、蒸気タービンの駆動時において、蒸気流路7に高温の流路が流れて遮熱板9が熱伸びした場合であっても、隣接して配置される遮熱板要素191、192が当接して遮熱板9が変形するのを防止することが出来る。
【0076】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、弁揚棒4は弁揚板5と連結されており、弁揚棒4を上方側にリフトすることで、弁揚板5を介して弁体2を上方側にリフトするように構成されている。しかしながら、本発明の他の実施形態(不図示)のように、弁揚棒4と弁体2とを直接連結し、弁揚棒4を上方側にリフトすることで弁体2を直接上方側にリフトするように構成してもよい。