特許第6474717号(P6474717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474717
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】複合粒子及び複合粒子分散体
(51)【国際特許分類】
   C08F 259/08 20060101AFI20190218BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C08F259/08
   C08L51/00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-251041(P2015-251041)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-121352(P2016-121352A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-263154(P2014-263154)
(32)【優先日】2014年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 尚史
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰治
(72)【発明者】
【氏名】吉井 要
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−242479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F259
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子(F)と単量体(b)と液状又は超臨界二酸化炭素(X)と混合し、単量体(b)を重合し、減圧して二酸化炭素を除去することにより、フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子(F)と、単量体(b)を構成単量体とする(共)重合体(B)とを含む複合粒子を製造する複合粒子の製造方法であって、フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子(F)がポリテトラフルオロエチレン及び/又はテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の粒子であり、前記粒子(F)の表面が前記(共)重合体(B)を含有する被覆層で被覆され、前記粒子(F)の表面から内側に前記(共)重合体(B)が含浸した含浸層を有する複合粒子(C)の製造方法。
【請求項2】
ASTM D150に準拠した60Hz時の(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)が1.05以上である請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項3】
疎水性指数が80%未満である請求項1又は2に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項4】
数平均粒径が0.01μm以上100μm未満である請求項1〜3いずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の製造方法で得られた複合粒子を樹脂(R)及び/又は溶媒(S)に分散させてなる複合粒子分散体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子及び複合粒子分散体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、剥離性シート等にフッ素含有ポリマー粒子を樹脂溶液に分散させる時には、フッ素系分散剤が広く用いられている。しかしながら、分散させるためには多量の分散剤の添加が必要となり、シートの物性が著しく低下する。そのため、乳化重合を利用したマイクロカプセル化が提案されている。
【0003】
例えば、架橋性単量体を粒子と共に乳化することで、マイクロカプセル化する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、フッ素含有ポリマー粒子の表面自由エネルギーの低さから、単量体の吸着力が低いために粒子表面以外での重合によって、フッ素含有ポリマー粒子よりも単量体の吸着性の良好な核が多量に発生するため、効果的にフッ素含有ポリマー粒子の分散性を向上させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5495846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、フッ素含有ポリマー粒子と被覆する成分の接着性に優れた樹脂粒子及び複合粒子分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下のことを見出した。本発明は、フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子(F)と、単量体(b)を構成単量体とする(共)重合体(B)とを含む複合粒子(C)であって、前記粒子(F)の表面が前記(共)重合体(B)を含有する被覆層で被覆され、前記粒子(F)の表面から内側に前記重合体(B)が含浸した含浸層を有する複合粒子(C)である。フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子に対して、周囲に形成される被覆層成分である(共)重合体(B)の一部が浸透し、(A)と(B)を含む混合層を形成している複合粒子(C)である。さらにはその粒子(C)を樹脂(R)及び/又は溶媒(S)に分散させてなる複合粒子分散体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、フッ素含有ポリマーを含む粒子と被覆する成分との接着性に優れ、脱落成分が発生しにくい複合粒子及び複合粒子分散体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を詳述する。
本発明に利用されるフッ素含有ポリマー(A)としては、フッ素を含有すること以外に特に制限はないが、密着性の観点から好ましくはフッ素元素が(A)の重量に基づいて1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは25重量%以上である。
(A)としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、その共重合体及びその混合物等が挙げられる。フッ素含有量は元素分析により算出した。
【0009】
フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子(F)の数平均粒径としては、0.01μm以上100μm未満が好ましく、より好ましくは0.01μm以上10μm未満、さらに好ましくは0.01μm以上1μm未満、特に好ましくは0.01μm以上0.5μm未満である。フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子(F)の数平均粒径は300nm以上の場合にはレーザ回折/散乱式粒度分布測定により、300nm未満の場合にはゼータ電位・粒径測定により求めた。
【0010】
(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)が1.05以上10.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.07以上9.00以下、さらに好ましくは1.10以上7.50以下、特に好ましくは1.14以上4.50以下、最も好ましくは1.16以上4.00以下である極性の高いポリマーが有用である。
なお、(A)の比誘電率及び(B)の比誘電率は、ASTM D150に準拠して測定した60Hz時の比誘電率である。
(共)重合体(B)としては、例えばビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素・ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール、エンジニアリングプラスチック、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、二種類以上併用しても良い。特に好ましくはビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素・ホルマリン樹脂及びポリエステル樹脂であり、さらに好ましくはビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及びメラミン樹脂であり、特に好ましくはビニル樹脂及びウレタン樹脂である。
【0011】
ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであれば特に制限はないが、ビニルモノマーとしては、例えば下記(1)〜(10)が挙げられる。
(1)ビニル炭化水素:
(1−1)脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレン、前記以外のα−オレフィン等;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン。
(1−2)脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケン及びアルカジエン類、例えば(ジ)シクロペンタジエン等;テルペン類、例えばピネン等。
(1−3)芳香族ビニル炭化水素:スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等;及びビニルナフタレン。
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩:
炭素数3〜30の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物及びそのモノアルキル(炭素数1〜24)エステル、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー。
(3)スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩:
炭素数2〜14のアルケンスルホン酸、例えばビニルスルホン酸;及びその炭素数2〜24のアルキル誘導体、例えばα−メチルスチレンスルホン酸等;スルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリルアミド、例えば、スルホプロピル(メタ)アクリレート、及び硫酸エステルもしくはスルホン酸基含有ビニルモノマー;ならびそれらの塩等。
(4)燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩:
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(C1〜C24)燐酸モノエステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)ホスホン酸類、例えば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸。なお、上記(2)〜(4)の塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩もしくは4級アンモニウム塩が挙げられる。
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー:
ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル等。
(6)含窒素ビニルモノマー:
(6−1)アミノ基含有ビニルモノマー:アミノエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレ−ト等、
(6−2)アミド基含有ビニルモノマー:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等、
(6−3)ニトリル基含有ビニルモノマー:(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート等、
(6−4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニルモノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等、
(6−5)ニトロ基含有ビニルモノマー:ニトロスチレン等。
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー:グルシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニルフェニルオキサイド等。
(8)ハロゲン元素含有ビニルモノマー:塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン等。
(9)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン、ビニルスルホン類:
(9−1)ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)[ジシクロペンテニルアクリレ−ト等]、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー[ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート類[多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等、
(9−2)ビニル(チオ)エーテル、例えばビニルメチルエーテル等、
(9−3)ビニルケトン、例えばビニルメチルケトン等。
(10)その他のビニルモノマー:
テトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等。
【0012】
多官能ビニルモノマーであれば、とくに限定はないが、例えば下記(11)〜(13)が挙げられる。
(11)多官能アリルエーテル:
例えば、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、イソシアヌル酸トリアリル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル等。
(12)多官能(メタ)アクリレート
例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートフェニルグリシジルエーテルアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー等。
(13)多官能イソプロペニル:
例えば、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、ビニルトリス(イソプロペニルオキシ)シラン等。
【0013】
ポリエステル樹脂としては、ポリオールと、ポリカルボン酸(その酸無水物、その低級アルキルエステルを含む)との重縮合物などが挙げられる。ポリオールとしてはジオール(14)及び3価以上のポリオール(15)が挙げられ、ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸(16)及び3価以上のポリカルボン酸(17)が挙げられる。
ポリオールとポリカルボン酸の反応比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/1、さらに好ましくは1.5/1〜1/1、とくに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0014】
ジオール(14)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;その他、ポリラクトンジオール(ポリε−カプロラクトンジオールなど)、ポリブタジエンジオールなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
【0015】
3価以上のポリオール(15)としては、3〜8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記トリスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物;上記ノボラック樹脂のアルキレンオキサイド付加物、アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物など]などが挙げられる。
【0016】
ジカルボン酸(16)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデセニルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);炭素数8以上の分岐アルキレンジカルボン酸[ダイマー酸、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸など)、アルキルコハク酸(デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
【0017】
3価以上(3〜6価又はそれ以上)のポリカルボン酸(17)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。
【0018】
なお、ジカルボン酸(16)又は3価以上のポリカルボン酸(17)としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
【0019】
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート(18)と活性水素基含有化合物{水、ポリオール[前記ジオール(14)及び3価以上のポリオール(15)]、ジカルボン酸(13)、3価以上のポリカルボン酸(17)、ポリアミン(19)、ポリチオール(20)等}との重付加物などが挙げられる。
【0020】
ポリイソシアネート(18)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などが挙げられる。
上記脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
上記脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)などが挙げられる。
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが挙げられる。
また、上記ポリイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。具体的には、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなど)、ウレタン変性TDIなどのポリイソシアネートの変性物及びこれらの2種以上の混合物[たとえば変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との併用]が含まれる。
これらのうちで好ましいものは6〜15の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ポリイソシアネート、及び炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネートであり、とくに好ましいものはTDI、MDI、HDI、水添MDI、及びIPDIである。
【0021】
ポリアミン(19)の例としては、下記のものが挙げられる。
脂肪族ポリアミン類(C2〜C18):
〔1〕脂肪族ポリアミン{C2〜C6アルキレンジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンなど)、ポリアルキレン(C2〜C6)ポリアミン〔ジエチレントリアミンなど〕}
〔2〕これらのアルキル(C1〜C4)又はヒドロキシアルキル(C2〜C4)置換体〔ジアルキル(C1〜C3)アミノプロピルアミンなど〕
〔3〕脂環又は複素環含有脂肪族ポリアミン〔3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど〕
〔4〕芳香環含有脂肪族アミン類(C8〜C15)(キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミンなど)、
脂環式ポリアミン(C4〜C15):
1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)など、
芳香族ポリアミン類(C6〜C20):
〔1〕非置換芳香族ポリアミン〔1,2−、1,3−及び1,4−フェニレンジアミンなど;核置換アルキル基〔メチル、エチル、n−及びi−プロピル、ブチルなどのC1〜C4アルキル基)を有する芳香族ポリアミン、たとえば2,4−及び2,6−トリレンジアミンなど〕、及びこれらの異性体の種々の割合の混合物
〔2〕核置換電子吸引基(Cl、Br、I、Fなどのハロゲン;メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基;ニトロ基など)を有する芳香族ポリアミン〔メチレンビス−o−クロロアニリンなど〕
〔3〕2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン〔上記(4)〜(6)の芳香族ポリアミンの−NH2の一部又は全部が−NH−R´(R´はメチル、エチルなどの低級アルキル基で置換したもの〕〔4,4´−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど〕、
複素環式ポリアミン(C4〜C15):ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなど、
ポリアミドポリアミン:ジカルボン酸(ダイマー酸など)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミン,ポリアルキレンポリアミンなど)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミンなど、
ポリエーテルポリアミン:ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコールなど)のシアノエチル化物の水素化物など。
【0022】
ポリチオール(20)としては、エチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオールなどが挙げられる。
【0023】
メラミン樹脂としては、メチロール化メラミンの重縮合物(21)などが挙げられる。
【0024】
メチロール化メラミンの重縮合物(21)としては、例えばメチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1〜8の1価アルコール[例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、及び2−エチルヘキサノール]で、エーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
これらは、メチロール基がすべてエーテル化されているか、又は部分的にエーテル化され、メチロール基が残存しているものも使用できる。メチルエーテル化メラミン、エチルエーテル化メラミン、ブチルエーテル化メラミン等のアルキルエーテル化メラミンが挙げられる。
【0025】
尿素・ホルマリン樹脂としては、尿素とアルデヒド類の重縮合物(22)などが挙げられる。
【0026】
尿素とアルデヒド類の重縮合物(22)としては、例えばアルデヒドとして、ホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、ポリエポキシド(23)の開環重合物、ポリエポキシド(23)と活性水素基含有化合物{水、ポリオール[前記ジオール(14)及び3価以上のポリオール(18)]、ジカルボン酸(19)、3価以上のポリカルボン酸(20)、ポリアミン(19)、ポリチオール(20)等}との重付加物、又はポリエポキシド(23)とジカルボン酸(16)又は3価以上のポリカルボン酸(17)の酸無水物との硬化物などが挙げられる。
【0028】
ポリエポキシド(23)としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有していれば、特に限定されない。ポリエポキシド(23)として好ましいものは、硬化物の機械的性質の観点から分子中にエポキシ基を2〜6個有するものである。ポリエポキシド(23)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、好ましくは65〜1000であり、さらに好ましくは90〜500である。エポキシ当量が1000以下であると、架橋構造が密になり硬化物の耐水性、耐薬品性、機械的強度等の物性が向上し、一方、エポキシ当量が65以上のものは、合成するのが容易である。
【0029】
ポリエポキシド(23)の例としては、芳香族系ポリエポキシ化合物、複素環系ポリエポキシ化合物、脂環族系ポリエポキシ化合物あるいは脂肪族系ポリエポキシ化合物が挙げられる。芳香族系ポリエポキシ化合物としては、多価フェノール類のグリシジルエーテル体及びグリシジルエステル体、グリシジル芳香族ポリアミン、並びに、アミノフェノールのグリシジル化物等が挙げられる。多価フェノールのグリシジルエーテル体としては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。多価フェノールのグリシジルエステル体としては、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。グリシジル芳香族ポリアミンとしては、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。さらに、本発明において前記芳香族系ポリエポキシ化合物として、P−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、トリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールとの付加反応によって得られるジグリシジルウレタン化合物、前記2反応物にポリオールも反応させて得られるグリシジル基含有ポリウレタン(プレ)ポリマー、及びビスフェノールAのアルキレンオキシド(エチレンオキシド又はプロピレンオキシド)付加物のジグリシジルエーテル体も含む。複素環系ポリエポキシ化合物としては、トリスグリシジルメラミンが挙げられる。脂環族系ポリエポキシ化合物としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド等が挙げられる。また、脂環族系ポリエポキシ化合物としては、前記芳香族系ポリエポキシド化合物の核水添化物も含む。脂肪族系ポリエポキシ化合物としては、多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体、及びグリシジル脂肪族アミンが挙げられる。多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体としては、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルピメレート等が挙げられる。グリシジル脂肪族アミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。また、本発明において脂肪族系ポリエポキシ化合物としては、ジグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体も含む。これらのうち、好ましいのは、脂肪族系ポリエポキシ化合物及び芳香族系ポリエポキシ化合物である。ポリエポキシドは、2種以上併用しても差し支えない。
【0030】
エンジニアリングプラスチックとしては、特に制限はないが、例えばポリアセタール、ナイロン、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、メチルペンテンポリマー、ビニルアルコール共重合体、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0031】
シリコーン樹脂としては、特に制限はないが、例えばシラン類、シリコーンゴム、シリケート等が挙げられる。
【0032】
フッ素樹脂としては、フッ素含有ポリマー(A)以外のフッ素樹脂であれば特に制限はないが、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(E/CTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)、パーフロロ環状重合体などが挙げられる。
【0033】
粒子(F)の表面から内側に(共)重合体(B)が含浸した含浸層の厚みとしては、存在していれば特に制限はないが、1nm以上であり、粒子(F)の粒径の90%以下の厚みがあることが好ましく、特に好ましくは5nm以上であり、粒子(F)の粒径の50%以下が好ましい。含浸層の厚みは走査透過型電子顕微鏡で測定した厚みである。
【0034】
複合粒子(C)の数平均粒径としては、分散安定性の観点から、好ましくは0.01μm以上100μm未満、より好ましくは0.01μm以上10μm未満、さらに好ましくは0.01μm以上1μm未満、特に好ましくは0.01μm以上0.5μm未満である。複合粒子(C)の数平均粒径は300nm以上の場合にはレーザ回折/散乱式粒度分布測定により、300nm未満の場合にはゼータ電位・粒径測定により求めた。
【0035】
複合粒子(C)の疎水性指数は、フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子(F)の表面との濡れ性の観点から、好ましくは80%未満、更に好ましくは0〜70%、特に好ましくは0〜60%である。なお、疎水性指数は後述する疎水性指数試験により測定された値である。
【0036】
複合粒子(C)の密着性指数としては、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
【0037】
フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子(F)に(共)重合体(B)からなる被覆層を形成する時に使用する溶媒としては、液状又は超臨界二酸化炭素が溶解すること以外に特に制限はないが、常温常圧で液体であり、例えばケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、環状エーテル等)、エステル溶剤(酢酸エステル、ピルビン酸エステル、2−ヒドロキシイソ酪酸エステル、乳酸エステル等)、アミド溶剤(ジメチルホルムアミド等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、フッ素含有アルコール等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン等)、及び脂肪族炭化水素溶剤(オクタン、デカン等)、水、及びこれらの混合物などの溶剤を使用したものが挙げられる。
【0038】
本発明の製造法において、フッ素含有ポリマー(A)及び(共)重合体(B)共に、必要により、本発明の効果を阻害しない範囲で添加剤〔分散剤、レベリング剤、可塑剤、帯電防止剤、荷電制御剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、難燃剤、充填剤、重合禁止剤など〕を用いても差し支えない。
【0039】
分散剤としては特に限定はなく、公知のものを使用することができる。分散安定剤の添加量は、分散安定性の観点から、固体原料の重量に対し0.01〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは0.02〜50重量%、特に好ましくは0.03〜30重量%である。分散安定剤の好ましい重量平均分子量の範囲は100〜10万であり、さらに好ましくは200〜5万、特に好ましくは500〜3万である。この範囲内にすると、分散安定効果が向上する。
【0040】
本発明の複合粒子(C)は、樹脂(R)及び/又は溶媒(S)に分散させた複合粒子分散体として用いることもできる。
【0041】
複合粒子分散体として利用できる樹脂(R)としては、特に制限はなく、複合化する方法としても特に制限はない。樹脂(R)としては、ゴム、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素・ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール、エンジニアリングプラスチック、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂等が挙げられる。これらのうち、密着性の観点から、好ましくはゴム、ビニル樹脂、ウレタン樹脂及びポリカーボネートである。用途としてはコーティング剤、塗料、非粘着性付与剤及びアンチドリップ性付与剤等が挙げられる。
【0042】
複合粒子分散体として利用できる溶媒(S)としては、特に制限はないが、液状で使用する用途においては、例えばシリコーン、水、鉱物油及びポリエーテル誘導体等が好ましく、用途としては潤滑剤、非粘着剤等に利用でき、液体を気化させる用途においては、ケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、環状エーテル等)、エステル溶剤(酢酸エステル、ピルビン酸エステル、2−ヒドロキシイソ酪酸エステル、乳酸エステル等)、アミド溶剤(ジメチルホルムアミド等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、フッ素含有アルコール等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素溶剤(オクタン、デカン等)及び水等が利用でき、用途としてはインク、コーティング剤、塗料、感光体等に利用できる。溶媒(S)中に樹脂(R)が溶解又は分散していても良い。
【0043】
本発明の複合粒子(C)の用途としては、結着剤、インク、コーティング剤、潤滑剤、非粘着性付与剤、ドローダウン防止性付与剤及び感光体等が挙げられる。
【0044】
本発明の複合粒子(C)は、次に挙げる方法により製造することができる。
フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子と(共)重合体(B)又はその分散液(SS)と、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(X)と混合し、次いで(X)を除去する工程を含むもの、フッ素含有ポリマー粒子(A)、単量体(b)又はその分散液(SS)と、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(X)と混合し、次いで(X)を除去する工程を含むものであれば特に制限はない。例えばバッチ式や連続式が挙げられる。バッチ式としては、例えば、撹拌棒及び温度計を備えた反応用耐圧容器を用いて、フッ素含有ポリマー(A)と、重合体(B)又はその分散液(SS)を混合し、反応用耐圧容器中で液状又は超臨界二酸化炭素(X)と混合し、減圧して二酸化炭素を除去することにより、複合粒子(C)を製造する。撹拌棒及び温度計を備えた反応用耐圧容器を用いて、フッ素含有ポリマー(A)を含む粒子と、単量体(b)又はその分散液(SS)を混合し、反応用耐圧容器中で液状又は超臨界二酸化炭素(X)と混合し、(b)を重合し、減圧して二酸化炭素を除去することにより、複合粒子(C)を製造する。重合体(B)と単量体(b)を併用しても、それぞれ2種以上を併用しても良い。
【実施例】
【0045】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定するものではない。以下の記載において「部」は重量部を示す。
【0046】
<実施例1>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.5部、フッ素含有ポリマーとして粒径300nmのPTFE(A1)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(ダイキン社製)(F1)100部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、密閉して内部の空気を二酸化炭素で置換後、単量体としてフェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学社製)(b1)10部を反応用耐圧容器へ投入した。二酸化炭素を供給して10MPa、80℃に昇温することで重合し、2時間撹拌させ、減圧して二酸化炭素を除去することにより単量体(b1)の重合体(B1)[60Hz時の比誘電率εr7.1]が一部浸透しかつ被覆した複合粒子(C1)を作成した。粒子(F1)の表面から内側に(共)重合体(B1)が含浸した含浸層は7nmであった。複合粒子(C1)の疎水性指数は45%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は3.4であった。
であった。
【0047】
<実施例2>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.5部、フッ素含有ポリマーとして粒径300nmのPTFE(A1)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(ダイキン社製)(F1)100部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、二酸化炭素を供給して7MPa、30℃に昇温し0.5時間撹拌させ、脱圧後することで、(F1)に開始剤を浸透させた。再び二酸化炭素を供給し、7MPa、30℃に昇温、脱圧することで、余剰の開始剤を除去した。
密閉して内部の空気を二酸化炭素で置換後、単量体としてフェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学社製)(b1)10部を反応用耐圧容器へ投入した。二酸化炭素を供給して10MPa、80℃に昇温することで重合し、2時間撹拌させ、減圧して二酸化炭素を除去することにより単量体(b1)の重合体(B1)[60Hz時の比誘電率εr7.1]が一部浸透しかつ被覆した複合粒子(C2)を作成した。粒子(F1)の表面から内側に(共)重合体(B1)が含浸した含浸層は7nmであった。複合粒子(C2)の疎水性指数は40%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は3.4であった。
【0048】
<実施例3>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.5部、フッ素含有ポリマーとして粒径300nmのPTFE(A1)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(ダイキン社製)(F1)100部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、密閉して内部の空気を二酸化炭素で置換後、単量体としてフェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学社製)(b1)10部を反応用耐圧容器へ投入した。二酸化炭素を供給して7MPa、40℃に昇温し、0.2時間撹拌させ、減圧して二酸化炭素を除去することにより単量体(b1)の一部浸透したフッ素含有ポリマー粒子を作成し、水中で80℃に昇温し重合し、水を留去した。単量体(b1)の重合体(B1)[60Hz時の比誘電率εr7.1]が一部浸透しかつ被覆した複合粒子(C3)を作成した。粒子(F1)の表面から内側に(共)重合体(B1)が含浸した含浸層は7nmであった。複合粒子(C3)の疎水性指数は40%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は3.4であった。
【0049】
<実施例4>
開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.1部、単量体としてフェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学社製)(b1)10部を水中で重合した重合体(B2)を合成した。
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に重合体(B2)10部、フッ素含有ポリマーとして粒径300nmのPTFE(A1)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(ダイキン社製)(F1)100部及びテトラヒドロフラン 20部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、密閉して内部の空気を二酸化炭素で置換後、7MPa、40℃に昇温し、2時間撹拌させ、減圧して二酸化炭素及びテトラヒドロフランを除去することにより重合体(B2)[60Hz時の比誘電率εr7.1]が一部浸透しかつ被覆した複合粒子(C4)を作成した。粒子(F1)の表面から内側に(共)重合体(B2)が含浸した含浸層は3nmであった。複合粒子(C4)の疎水性指数は70%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は3.4であった。
【0050】
<実施例5>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.5部、フッ素含有ポリマーとして粒径200nmのPTFE(A2)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(3M社製)(F2)100部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、二酸化炭素を供給して7MPa、30℃に昇温し0.5時間撹拌させ、脱圧後することで、(F2)に開始剤を浸透させた。再び二酸化炭素を供給し、7MPa、30℃に昇温、脱圧することで、余剰の開始剤を除去した。
密閉して内部の空気を二酸化炭素で置換後、単量体としてメタクリル酸メチル(クラレ社製)(b2)5部を反応用耐圧容器へ投入した。二酸化炭素を供給して10MPa、80℃に昇温することで重合し、2時間撹拌させ、減圧して二酸化炭素を除去することにより単量体(b2)の重合体(B3)[60Hz時の比誘電率εr4.0]が一部浸透しかつ被覆した複合粒子(C5)を作成した。粒子(F2)の表面から内側に(共)重合体(B3)が含浸した含浸層は7nmであった。複合粒子(C5)の疎水性指数は60%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は1.9であった。
【0051】
<実施例6>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.5部、フッ素含有ポリマーとして粒径200nmのPTFE(A2)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(3M社製)(F2)100部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、二酸化炭素を供給して7MPa、30℃に昇温し0.5時間撹拌させ、脱圧後することで、(F2)に開始剤を浸透させた。再び二酸化炭素を供給し、7MPa、30℃に昇温、脱圧することで、余剰の開始剤を除去した。
密閉して内部の空気を二酸化炭素で置換後、単量体としてアクリル酸(日本触媒社製)(b3)5部を反応用耐圧容器へ投入した。二酸化炭素を供給して10MPa、80℃に昇温することで重合し、2時間撹拌させ、減圧して二酸化炭素を除去することにより単量体(b3)の重合体(B4)[60Hz時の比誘電率εr6.2]が一部浸透しかつ被覆した複合粒子(C6)を作成した。粒子(F1)の表面から内側に(共)重合体(B1)が含浸した含浸層は7nmであった。複合粒子(C5)の疎水性指数は0%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は3.0であった。
【0052】
<実施例7>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.5部、フッ素含有ポリマーとして粒径200nmのPTFE(A2)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(3M社製)(F2)100部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、二酸化炭素を供給して7MPa、30℃に昇温し0.5時間撹拌させ、脱圧後することで、(F2)に開始剤を浸透させた。再び二酸化炭素を供給し、7MPa、30℃に昇温、脱圧することで、余剰の開始剤を除去した。
密閉して内部の空気を二酸化炭素で置換後、単量体としてスチレン(デンカ社製)(b4)5部を反応用耐圧容器へ投入した。二酸化炭素を供給して10MPa、80℃に昇温することで重合し、2時間撹拌させ、減圧して二酸化炭素を除去することにより単量体(b4)の重合体(B5)[60Hz時の比誘電率εr2.6]が一部浸透しかつ被覆した複合粒子(C7)を作成した。粒子(F2)の表面から内側に(共)重合体(B5)が含浸した含浸層は7nmであった。複合粒子(C7)の疎水性指数は60%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は1.2であった。
【0053】
<実施例8>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.5部、フッ素含有ポリマーとして粒径10μmのPTFE(A3)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(ダイキン社製)(F3)100部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、二酸化炭素を供給して7MPa、30℃に昇温し0.5時間撹拌させ、脱圧後することで、(F3)に開始剤を浸透させた。再び二酸化炭素を供給し、7MPa、30℃に昇温、脱圧することで、余剰の開始剤を除去した。
密閉して内部の空気を二酸化炭素で置換後、単量体としてメタクリル酸メチル(クラレ社製)(b2)5部を反応用耐圧容器へ投入した。二酸化炭素を供給して10MPa、80℃に昇温することで重合し、2時間撹拌させ、減圧して二酸化炭素を除去することにより単量体(b2)の重合体(B3)[60Hz時の比誘電率εr4.0]が一部浸透しかつ被覆した複合粒子(C8)を作成した。粒子(F3)の表面から内側に(共)重合体(B3)が含浸した含浸層は7nmであった。複合粒子(C8)の疎水性指数は60%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は1.9であった。
【0054】
<実施例9>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.5部、フッ素含有ポリマーとして粒径200nmのPFA(A4)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(ダイキン社製)(F4)100部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、二酸化炭素を供給して7MPa、30℃に昇温し0.5時間撹拌させ、脱圧後することで、(F4)に開始剤を浸透させた。再び二酸化炭素を供給し、7MPa、30℃に昇温、脱圧することで、余剰の開始剤を除去した。
密閉して内部の空気を二酸化炭素で置換後、単量体としてメタクリル酸メチル(クラレ社製)(b2)5部を反応用耐圧容器へ投入した。二酸化炭素を供給して10MPa、80℃に昇温することで重合し、2時間撹拌させ、減圧して二酸化炭素を除去することにより単量体(b2)の重合体(B3)[60Hz時の比誘電率εr4.0]が一部浸透しかつ被覆した複合粒子(C9)を作成した。粒子(F4)の表面から内側に(共)重合体(B3)が含浸した含浸層は7nmであった。複合粒子(C9)の疎水性指数は60%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は1.9であった。
【0055】
<比較例1>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルヴァレロニトリル)(和光純薬社製)0.5部、フッ素含有ポリマーとして粒径200nmのPTFE(A2)[60Hz時の比誘電率εr2.1]を含む粒子(3M社製)(F2)100部を、反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み30℃に昇温し0.5時間撹拌させた。アセトンで(F2)を洗浄し、余剰の開始剤を除去した。
密閉して内部の空気を窒素で置換後、単量体としてメタクリル酸メチル(クラレ社製)(b2)5部を反応用耐圧容器へ投入した。窒素を供給して10MPa、80℃に昇温することで重合し、2時間撹拌させ、減圧して単量体(b2)の重合体(B3)[60Hz時の比誘電率εr4.0]が被覆した複合粒子(C'1)を作成した。粒子(F2)の表面から内側に(共)重合体(B3)が含浸した含浸層は0nmであった。複合粒子(C'1)の疎水性指数は90%、(A)の比誘電率と(B)の比誘電率との比率(B/A)は1.9であった。
【0056】
複合粒子(C1)〜(C9)及び比較の複合粒子(C'1)について、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
<疎水性指数試験>
底部に撹拌子を置いた500mlのガラスビーカーに、イオン交換水50mlを投入し、水面に複合粒子(C)0.2gを浮かべた後、撹拌子を緩やかに回転させる。その後、ビーカー内の水中にビュレットの先端を沈め、撹拌子を緩やかに回転させながら、前記重合体粒子添加から5分後に、ビュレットからメタノールを徐々に導入する。メタノールは1mlずつ導入し、1ml導入する度に3分撹拌を行い、また1mlずつ導入した。水面の重合体粒子の全量が完全に水中に沈むまで(水面に浮いている重合体粒子がなくなった状態)メタノールの導入を続け、水中に重合体粒子が完全に沈んだときのメタノール導入量(ml)を測定し、下式に基づき疎水性指数を求めた。
複合粒子(C)の疎水性指数(%)=100×メタノール導入量(ml)/(イオン交換水の量(ml)+メタノール導入量(ml))
なお、ビュレットからメタノールを添加する前に、水面に浮かべた重合体粒子が水中に完全に沈んだ場合は、疎水性指数を0%と判定した。
【0060】
実施例の複合粒子が被覆成分の粒子への接着性に優れたしていることが明らかである。
【0061】
<密着性試験>
複合粒子(C1)〜(C9)及び(C'1)の各1部、酢酸エチル100部をホモディスパーで12時間分散させた。得られた分散液(L)を遠心分離して複合粒子(C)を沈降させ、上澄みの固形分濃度を測定して複合粒子(C)から剥離した(B)の重量を求めた。複合粒子の密着性指数を以下の式を用いて計算した。
複合粒子(C)の密着性指数(%)=100−(複合粒子(C)から剥離した(B)の重量/分散前の複合粒子(C)中の(B)の重量)
【0062】
比較例の複合粒子(C'1)では密着性指数が15%だったが、実施例の複合粒子(C1)〜(C9)では80%以上であった。本発明の複合粒子(C)を利用することで、複合粒子(C)におけるフッ素含有ポリマー粒子(A)からの被覆層(B)の脱落が少ない、密着性に優れていることは明らかである。実施例の複合粒子が被覆成分の粒子への接着性に優れたしていることが明らかである。
【0063】
<結着性試験>
フッ素含有ポリマー粒子 25gとともに、ガラスファイバー 20gを自動乳鉢に仕込み、0.25時間撹拌した。その後、ペースト状になった混合物を80メッシュのニッケルメッキを施した金網に塗り付け、100℃で乾燥した。続いて、塗布物をロールで圧延してガラスクロスを作製した。ガラスクロスが金網に固定されていることは、ガラスクロス全体にフッ素含有ポリマー粒子拡散した状態でフィブリル化を起こしているためである。
【0064】
複合粒子(C'1)の凝集が発生し、ガラスクロス全体を固定することができず、(C1)〜(C9)では、ガラスクロス全体を固定化することができた。このことから、従来PTFEの粒子は小さな剪断力でフィブリル化しやすい性質を有する。そのため、他の粉末状材料と混合する際、容易にフィブリルを発生し、それを絡める作用がある。しかしながら、フィブリル化した時にPTFE同士の凝集が発生し、均一に混合できなかった。本発明の複合粒子(C)を利用することで、粉体混合時の分散性が良く、結着剤として優れていることは明らかである。
【0065】
<インクの作成>
顔料として、粒径100nm カーボンブラック(三菱カーボン製)50部、分散剤としてDISPERBYK−185(ビックケミー製)10部、バインダーとして、ウレタン樹脂(サンプレン IB 950 三洋化成製)200部、酢酸エチル 200部をサンドグラインダーで12時間混合し、顔料分散液(P5)を作成した。
顔料分散液(P5) 100部に対して、フッ素含有ポリマーPTFEの粒子(F2)及び複合粒子(C5)、(C'1)の各1部を添加し、ホモディスパーで0.1時間混合することで、インク(I−F5)及び(I−C5)、(I−C'1)を作成した。
【0066】
<耐ブロッキング性(非粘着性)試験>
縦3cm×横4cm×厚み3μmのPETフィルム(東レ社製)にインク(I−F5)及び(I−C5)、(I−C'1)を塗布し、乾燥させることで、厚み2μmの塗膜を有する試験片(IP−F5)及び(IP−C5)、(IP−C'1)を作成した。
JIS K5701−1 6.2.2に準拠し、耐ブロッキング性を測定した。温度40℃、湿度90%RH下に、各6枚の試験片を入れて1時間放置した後、6枚の試験片を2枚ずつ展色面を向かい合わせて重ね、さらに3組をゴムブランケットの上に積み重ねて、その上に厚み0.7cm ガラス板を載せ加圧し、再び40℃、90%RH下で24時間静置した。3組を1枚ずつ剥がし、ブロッキングの有無を確認した。
【0067】
フッ素含有ポリマー(A5)の粒子(F5)を添加した試験片(IP−F5)及び複合粒子(C5)を添加した試験片(IP−C5)、(IP−C'1)について、耐ブロッキング性試験をおこなった。その結果、試験片(IP−F5)及び(IP−C'1)では、(F5)及び(C'1)の凝集が発生し、試験片3組とも展色面の前面でブロッキングが発生した。一方、試験片(IP−C5)では、(C5)が一次粒子状態で単分散しており、試験片3組ともブロッキングは見られなかった。
本発明の複合粒子(C)を利用することで、オフセット、グラビア、フレキソインク、特に高速印刷機を使う場合のインクと紙の間のブロッキング性(裏移り)の改善や、平滑な紙の上では紙どうしのブロッキングを防止するインクとして優れていることは明らかである。このため、例えば、各種インク及び非粘着性付与剤等に有用である。
【0068】
<コーティング剤の作成>
撹拌棒及び温度計をセットした反応用耐圧容器に、複合粒子(C5)、(C'1)及びフッ素含有ポリマー粒子(F5)10部、テトラヒドロフラン200部を反応用耐圧容器の容積の70%まで仕込み、二酸化炭素を供給して7MPa、50℃に昇温し、減圧して二酸化炭素を除去し、その後コーティング樹脂として、ポリカーボネート(ユピゼータ PCZ−200 三菱ガス化学社製)100部を添加し、ホモディスパーで0.5時間混合することで、コーティング剤(CT−C5)及び(CT−C'1)(CT−F5)を作成した。
【0069】
<分散安定化試験>
PPネジ口試験管[管直径12mm,高さ120mm アズワン(株)製]にコーティング剤(CTC5)及び(CTF5)それぞれ5g仕込み、TAITEC製卓上小型振とう機invitro shaker wave SIslimで24時間振とうさせ、40℃で6時間静置後の分散液の粒子径を堀場製作所製粒子径測定装置LB−550で測定した。
振とう下の分散安定性
○:試験後粒子の沈降が見られず、試験前後の粒子径の変化が10%未満。
△:試験後粒子の沈降が見られるが、試験前後の粒子径の変化が10%未満。
×:試験後粒子の沈降が見られ、試験前後の粒子径の変化が10%以上。
【0070】
複合粒子(C5)及びフッ素含有ポリマー粒子(F5)を添加したコーティング剤(CT−C5)及び(CT−C'1)、(CT−F5)について、耐ブロッキング性試験をおこなった。その結果、コーティング剤(CT−C5)は分散安定性が○、(CT−C'1)及び(CT−F5)は分散安定性×であった。
【0071】
<耐摩耗試験>
縦10cm×横10cm×厚み0.1cmポリカーボネート樹脂片(ユピゼータ PCZ−200 三菱ガス化学社製)上にコーティング剤(CT−C5)及び(CT−C'1)(CT−F5)を塗布し乾燥させ、厚み0.2mmの塗膜を形成し、試験片(CTP−C5)及び(CTP−C'1)、(CTP−F5)を作成した。
JIS K7204に準拠し、耐摩耗性を測定した。ロータリーアブレージョンテスタ (東洋精機製作所社製)に試験片(CTP−C5)及び(CTP−C'1)、(CTP−F5)をセットし、摩擦材料CS−17を用い、過重1.0kgで100回転後の磨耗量を測定した。
耐摩耗性
○:試験前後の磨耗量が20mg未満。
△:試験前後の磨耗量が20mg以上50mg未満。
×:試験前後の磨耗量が50mg以上。
【0072】
複合粒子(C5)及びフッ素含有ポリマー粒子(F5)を添加したコーティング剤(CT−C5)及び(CT−C'1)(CT−F5)について、耐摩耗製性試験をおこなった。その結果、コーティング剤(CT−C5)は耐摩性が○、(CT−C'1)、(CT−F5)は耐摩耗性×であった。
【0073】
本発明の複合粒子(C)を利用することで、コーティング剤、特に低摩擦(高潤滑性)コーティング剤、フッ素含有樹脂の絶縁性を利用した絶縁性コーティング剤として優れ、また界面活性剤を使用せずに分散できるのでフッ素含有ポリマーを添加するコーティング剤としても優れていることは明らかである。このため、例えば低摩擦性コーティング剤、感光体材料や電線被覆剤の乾式潤滑剤等に特に有用である。
【0074】
<賦形性試験>
コーティング剤(CT−C5)及び(CT−C'1)、(CT−F5)を乾燥させ、縦33cm×横33cm×厚み1cmの樹脂フィルム(CTR−C5)及び(CTR−C'1)、(CTR−F5)を作成した。
このフィルムを用いて、ドローダウン性、溶融張力を測定することで、フィルムを二次加工する際に、指標となる真空成形等熱成形時の賦形性を評価した。
ドローダウン性は、樹脂フィルム(CTR−C5)及び(CTR−C'1)、(CT−F5)を250℃で30秒間間接加熱した際の垂下量を測定し、ドローダウン性の評価とした。上記方法で得られた垂下量を元に、ドローダウン防止性を以下の基準で判定した。
○:垂下量が20mm以下の場合
×:垂下量が20mmを超える場合
また溶融張力(単位;mN)は、キャピラリーレオメータ(東洋精機製作所社製)を用いて、250℃に加熱し溶融した試料を、直径1mmのノズルから23℃の大気中に30mm/minの速度となるように押出し、得られたストランドを6m/minの速度で引き取る際の張力を測定した。
上記評法で得られた溶融張力を、以下の基準で判定した。
○:30mN以上の場合
×:30mN未満の場合
【0075】
賦形性試験として、ドローダウン防止性及び溶融張力を測定した。樹脂フィルム(RCTC5)ではドローダウン防止性及び溶融張力が共に○、樹脂フィルム(RCTF5)ではドローダウン性及び溶融張力が共に×である。
本発明の複合粒子(C)を利用することで、OA機器や自動車用途等の高強度樹脂として優れていることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、従来のフッ素含有ポリマー粒子及びフッ素含有ポリマー粒子を分散剤で分散させた分散体よりも物性面で優れており、特に結着剤、インク、コーティング剤、潤滑剤、非粘着性付与剤、ドローダウン防止性付与剤、感光体、帯電制御剤、難燃剤に利用できる。