【実施例1】
【0017】
図1は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態を備えた油圧ショベルを示す側面図である。
図1において、油圧ショベル301は左右一対の覆帯302a,302bを備えた下部走行体303と、下部走行体303の上部に旋回可能に設けた上部旋回体304と、一端が上部旋回体304に連結された多関節型のフロント機構300とを備えている。
【0018】
下部走行体303には、覆帯302a,302bを駆動させる走行油圧モータ318a,318bが搭載されている。上部旋回体304の前方左側には操作レバー(操作装置)36(
図2参照)が格納された運転室305が設置されている。上部旋回体304前方中央部にはフロント機構300が取り付けられている。
【0019】
フロント機構300は、上部旋回体304の前方中央部に設けられたブームフート(図示せず)に上下揺動自在に取り付けられたブーム52と、52の先端に前後方向に揺動自在に取り付けられたアーム51と、アーム51の先端に上下回動自在に取り付けられた作業具(アタッチメント)であるバケット53を備えている。
【0020】
また、フロント機構300は、ブームフートと52に連結され、ブーム52を上下方向に揺動させる油圧アクチュエータのブームシリンダ12と、ブーム52とアーム51とに連結され、アーム51を上下方向に揺動させる油圧アクチュエータのアームシリンダ11と、アーム51と作業具53とに連結され、バケット53を上下方向に回動させる油圧アクチュエータのバケットシリンダ13とを有している。すなわち、フロント機構300はこれら各油圧アクチュエータ11,12,13により駆動される。
【0021】
図2は、本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態のうち油圧ショベルのアームシリンダに関わる油圧回路部分を模式的に示す概略図である。
図2において、本実施の形態に係る油圧制御装置は、原動機1と、この原動機1によって駆動される油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2の吐出ライン3に接続され、アームシリンダ11に供給される圧油の流量および方向を制御するアーム用の流量制御弁31を有する弁装置4と、アーム用の操作レバー装置であるパイロット弁5とを備えている。
【0022】
油圧ポンプ2は可変容量型であり、押しのけ容積可変部材、例えば斜板2aを有し、斜板2aは油圧ポンプ2の吐出圧が高くなるにしたがって容量を減らすように馬力制御アクチュエータ2bにより制御される。
【0023】
流量制御弁31は、センタバイパス型であり、センタバイパス部21がセンタバイパスライン32上に位置している。センタバイパスライン32は上流側を油圧ポンプ2の吐出ライン3に接続され、下流側をタンク33に接続されている。また、流量制御弁31はポンプポート31aおよびタンクポート31bとアクチュエータポート31c,31dとを有し、ポンプポート31aはセンタバイパスライン32に接続され、タンクポート31bはタンク33に接続され、アクチュエータポート31c,31dはアクチュエータライン35,34を介してアームシリンダ11の1ボトム側油室とロッド側油室に接続されている。
【0024】
パイロット弁5は、操作レバー36と、一対の減圧弁(図示せず)を内蔵したパイロット圧発生部37とを有し、パイロット圧発生部37はパイロットライン38,39を介して流量制御弁31のパイロット圧受圧部31e,31fに接続されている。操作レバー36が操作されると指令パイロット圧発生部37はその操作方向に応じて一対の減圧弁の一方を作動させ、その操作量に応じたパイロット圧をパイロットライン38,39の一方に出力する。
【0025】
ここで、流量制御弁31は、中立位置Aと切換位置B,Cを有し、パイロットライン38より受圧部31eにパイロット圧が与えられると、図示左側の切換位置Bに切り換えられる。このとき、アクチュエータライン35がメータイン側に、アクチュエータライン34がメータアウト側となり、アームシリンダ11のボトム側油室に圧油が供給されて、アームシリンダ11のピストンロッドが伸長する。
【0026】
一方、パイロットライン39より受圧部31fにパイロット圧が与えられると、図示右側の位置Cに切り換えられる。このとき、アクチュエータライン34がメータイン側に、アクチュエータライン35がメータアウト側となり、アームシリンダ11のロッド側油室に圧油が供給されて、アームシリンダ11のピストンロッドが収縮する。アームシリンダ11のピストンロッドの伸長はアームクラウド動作に対応し、アームシリンダ11のピストンロッドの収縮はアームダンプ動作に対応する。
【0027】
また、流量制御弁31は、メータイン絞り22a,22bとメータアウト絞り23a,23bを有している。流量制御弁31が切換位置Bにあるときはメータイン絞り22aによりアームシリンダ11に供給される圧油の流量を制御し、メータアウト絞り23aによりアームシリンダ11からの戻り油の流量を制御する。一方、流量制御弁31が切換位置Cにあるときはメータイン絞り22bによりアームシリンダ11に供給される圧油の流量を制御し、メータアウト絞り23bによりアームシリンダ11からの戻り油の流量を制御する。
【0028】
図3は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態における、メータアウト絞り23aの開口面積特性を示す特性図である。具体的には、受圧部31eに作用するパイロット圧、すなわちアームクラウドパイロット圧に対するメータアウト絞り23aの開口面積特性を示す。図中、実線Aが本実施の形態における開口面積特性を示し、破線Bが従来例の開口面積特性を示す。同じアームクラウドパイロット圧が供給された場合、本実施の形態における開口面積は、従来例の開口面積よりも、大きく設定されている。
【0029】
図2に戻り、パイロットライン38には、パイロット弁5より出力されるアームクラウドパイロット圧を検出する圧力センサ43と、パイロット弁5より出力されるアームクラウドパイロット圧を調整して受圧部31eに供給する電磁比例弁44が設けられている。圧力センサ43が検出したアームクラウドパイロット圧信号は、後述するコントローラ45に入力され、電磁比例弁44には、コントローラ45から指令信号が出力される。
【0030】
また、上部旋回体に支持されているブーム52の基端部には、ブーム52の回動角度を検出するブーム角度センサ42が設けられ、アーム51の一端側が回転可能に支持されているブーム52の先端部には、アーム51の回動角度を検出するアーム角度センサ41が設けられている。これらの角度センサ42,41が検出した回動角度信号はコントローラ45に入力される。
【0031】
本実施の形態の油圧制御装置は、その特徴的構成として、アーム51の回動角度を検出するアーム角度センサ41と、ブーム52の回動角度を検出するブーム角度センサ42と、パイロット弁5より出力されるアームクラウドパイロット圧を検出する圧力センサ43と、パイロットライン38に配置される電磁比例弁44と、アーム角度センサ41とブーム角度センサ42と圧力センサ43の検出信号を入力し、所定の演算処理を行い、電磁比例弁44に指令電流を出力するコントローラ45を備えている。
【0032】
次に、本実施の形態におけるコントローラの処理内容を
図4、5を用いて説明する。
図4は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態を構成するコントローラの処理機能を示す機能ブロック図、
図5は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態を備えた油圧ショベルのフロント機構を模式的に示す概略図である。
図4及び
図5において、
図1乃至3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0033】
コントローラ45の説明に先立って、本実施の形態におけるフロント機構を構成するブーム52、アーム51等の角度や構成物の長さを
図5に示すように定義する。
図5において、θ
Aは、アーム51の回動角度であって、アーム51がブーム52となす角度をいい、θ
A’は、アーム51が水平方向となす角度をいう。θ
Bは、ブーム52の回動角度であって、ブーム52がブーム取付面となす角度をいい、θ
B’は、ブーム52が水平方向となす角度をいう。また、θ
Fは、ブーム52およびブームシリンダ12の取付面が水平方向となす角度をいう。
【0034】
次に、各構成物の長さについて、L
A1は、アーム51の回動中心からアーム51とアームシリンダ11先端の接合部までの間の距離をいう。L
A2は、アーム51の回動中心からブーム52とアームシリンダ11基端の接合部までの間の距離をいう。L
A3は、アームシリンダ11の全長であって、ブーム52とアームシリンダ11基端の接合部からアームシリンダ11の先端までの間の距離をいう。同様に、L
B1は、ブーム52の回動中心からブームシリンダ12基端と取付面との接合部までの間の距離をいう。L
B2は、ブーム52の回動中心からブーム52とブームシリンダ12先端の接合部までの間の距離をいう。L
B3は、ブームシリンダ12の全長であって、ブームシリンダ12基端と取付面との接合部からブーム52とブームシリンダ12先端の接合部までの間の距離をいう。
【0035】
図4に戻り、コントローラ45は、姿勢演算部である角度及び角速度演算部45aと、メータアウト開口面積演算部であるメータアウト開口演算部45bと、メータアウト制御部であるソレノイド電流演算部45cとを備えている。
【0036】
角度及び角速度演算部45aは、アーム角度センサ41が検出したアーム51の回動角度信号θ
Aと、ブーム角度センサ42が検出したブーム52の回動角度信号θ
Bとを入力し、これらの値からアーム51が水平方向となす角度(以下、アーム角度ともいう)θ
A’とアーム51が回動する際の角速度(以下、アーム角速度ともいう)ω
A’を算出する。
【0037】
具体的には、以下に示す式を用いて、アーム角度θ
A’とアーム角速度ω
A’をそれぞれ演算する。
θ
A’=180°−θ
A―θ
B’
=180°−θ
A−θ
B+θ
F ・・・・・・・(1)
ω
A’=θ
A’(t+Δt)−θ
A’(t)/Δt ・・・・・・・(2)
ここで、tは演算開始からの時間を示し、Δtは演算の時間ステップを表す。
【0038】
メータアウト開口演算部45bは、角度及び角速度演算部45aが算出したアーム角度信号θ
A’とアーム角速度信号ω
A’と、操作装置の操作量信号である圧力センサ43が検出したアームクラウドパイロット圧信号とを入力し、
図4中に示したテーブルを用いてアーム角度θ
A’とアーム角速度ω
A’とアームクラウドパイロット圧とに応じたメータアウト絞り23aの目標開口面積を算出する。算出したメータアウト絞り23aの目標開口面積信号は、ソレノイド電流演算部45cへ出力される。
【0039】
なお、ここでは、2つのテーブル45bHと45bLを備えているが、これは予め所定のアームクラウドパイロット圧を設定しておいて、入力したアームクラウドパイロット圧が設定値以上の場合には、テーブル45bHが選択され、それ以外の場合には、テーブル45bLが選択されるように構成されている。2つのテーブル45bHと45bLは、アーム角度θ
A’に対するメータアウト絞り目標開口面積の特性が異なっていて、具体的には、上限値と下限値とが異なっている
メータアウト開口演算部45bのテーブルは、いずれも、アーム角度θ
A’がおよそ90°以下、すなわちアームシリンダ11に負の負荷が作用するときに、アーム角速度ω
A’が高くなるにしたがって、メータアウト絞り23aの目標開口面積を減少させるように特性設定されている。そして、アーム角度θ
A’がおよそ90°以上、すなわち、正の負荷が作用するときには、アーム角速度ω
A’によらず、メータアウト絞り23aの目標開口面積を最大値とするように特性設定されている。これらは、上述したように、操作装置の操作量信号であるアームクラウドパイロット圧によって、異なるテーブルを選択しているが、テーブルは2つに限るものではなく、それ以上のテーブルを備えて、アームクラウドパイロット圧ごとに細かい選択がなされるようにしても良い。
【0040】
ソレノイド電流演算部45cは、メータアウト開口演算部45bで算出されたメータアウト絞り23aの目標開口面積信号を入力し、入力値に応じたソレノイド電流値を算出し、電磁比例弁44へ制御信号として出力する。
【0041】
次に、本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態の動作を
図6、7及び10を用いて従来例と比較して説明する。
図6は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態において、アームを空中で地面に対して水平に近い角度から鉛直までクラウドした場合のアーム角度とアームシリンダに作用する負荷との関係を示す特性図、
図7は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態において、アームを空中で地面に対して水平に近い角度から鉛直までクラウドした場合のアーム角度とメータアウト絞り23aの目標開口面積との関係を示す特性図、
図10は従来の建設機械の油圧制御装置のうち油圧ショベルのアームシリンダに関わる油圧回路部分を模式的に示す概略図である。
図6、7及び10において、
図1乃至5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0042】
図10に示す従来の油圧制御装置は、本実施の形態における油圧制御装置と比較すると、アーム角度センサ41とブーム角度センサ42と圧力センサ43と電磁比例弁44とコントローラ45とが設けられていない。
【0043】
従来の油圧制御装置において、アーム51を地面より上、すなわち空中でクラウドするために、アーム用の流量制御弁31を
図10のB位置に切り換えたとする。このとき、流量制御弁31はアームシリンダ11の戻り油をメータアウト絞り23aにより制御することで、アームシリンダ11の速度制御をすると共に、アーム51の自由落下による息継ぎ現象(キャビテーション)を防止している。
【0044】
つまり、メータアウト側を絞ることで、アームシリンダ11のロッド側油室の圧力を上昇させ、アーム51とアタッチメント53の重量による負の負荷に抗するために必要な推力を発生させている。これにより、アーム51に大重量のアタッチメント53を装着しても、アームシリンダ11の速度が標準バケットを装着した状態よりも速くなったり、息継ぎ現象が発生したりすることがない。
【0045】
しかしながら、標準バケットを装着して作業を行う場合、アーム51とアタッチメント53の重量による負の負荷に対して、アームシリンダ11のロッド側油室の圧力が高いため、アームシリンダ11の推力を負荷に見合った大きさとするには、油圧ポンプ2からアームシリンダ11のボトム側油室へ圧油を供給することで、ボトム側油室の圧力を上昇させなければならない。このことにより、エネルギロスの原因となる。
【0046】
以上のような、従来技術に対して、本実施の形態では、以下の様に動作する。本実施の形態におけるアーム51を空中で水平に近い角度から鉛直までクラウドするときのアーム角度θ
A’とアームシリンダ11に作用する負荷の関係を示す
図6において、横軸に示すアーム角度とは、水平面に対するアーム51の角度であって、アーム51が空中で地面に対して水平に保持された状態を0度とし、この状態からアームシリンダ11を伸ばして
図1中の反時計回りにアーム51を回動させてアーム51が水平面に対して鉛直に保持された状態を90度とする。図中、実線Aがアタッチメントとして標準バケットを装着した場合にアームシリンダ11に作用する負荷のアーム角度θ
A’に対する特性を示し、破線Bが標準バケットより重い大重量アタッチメントを装着した場合にアームシリンダ11に作用する負荷のアーム角度θ
A’に対する特性を示している。
【0047】
いずれの場合も、アーム角度θ
A’が0度に近い状態では、アーム51とアタッチメント53の重量による負の負荷の最大値が作用するが、大重量アタッチメントを装着した場合の方が、負の負荷は大きくなる。いずれの場合も、アーム角度θ
A’の増加に伴って負の負荷は減少し、およそ90°で正の負荷となる。
【0048】
このときのアーム角度θ
A’とコントローラ45のメータアウト開口演算部45bで算出されるメータアウト絞り23aの目標開口面積信号との関係を
図7に示す。
図7において、実線Aは、アタッチメント53として標準バケットを装着した場合のメータアウト絞り23aの目標開口面積を示し、破線Bは、標準バケットより重いアタッチメント53を装着した場合のメータアウト絞り23aの目標開口面積を示す。
【0049】
いずれの場合も、アーム角度θ
A’が0度に近い状態では、メータアウト絞り目標開口面積は、最小値まで狭まれている。メータアウト開口演算部45bにおいては、負の負荷が大きくなるにしたがって、換言すると、アーム角速度ω
A’が高くなるにしたがって、メータアウト絞り23aの目標開口面積を減少させる特性としているので、大重量のアタッチメント53を装着した場合の方がメータアウト絞り目標開口面積は小さくなる。アーム角度θ
A’の増加と共にメータアウト絞り目標開口面積も増加し、およそ90°で最大値となる。
【0050】
従来の油圧制御装置の場合では、メータアウト絞り23aの開口面積は、
図7に示す破線Bの最小値に相当する開口面積で一定であったのに対し、本実施の形態においては、アーム角度θ
A’と、その時間変化量であるアーム角速度ω
A’に応じて、メータアウト絞り23aの開口面積を変化させているので、従来例よりもメータアウト圧損が低減され、エネルギロスも低減される。さらに、上述の動作は、アームクラウドパイロット圧に応じて上限値と下限値とが調整されるので、操作レバーの操作量によらず、エネルギロス低減効果を得ることができる。
【0051】
なお、上述した実施形態は、本発明を油圧ショベルのアームシリンダの弁装置に適用した場合を例に説明したが、これに限るものではない。例えば、バケットクラウド操作を行うバケットシリンダの弁装置に適用しても良い。この場合、例えば、
図2に示す油圧回路部分でアームシリンダをバケットシリンダに置換し、アーム用流量制御弁をバケット用流量制御弁に置換し、アーム用操作レバー装置をバケット用操作レバー装置に置換すればよい。
【0052】
上述した本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態によれば、アーム又はバケットの水平方向となす角度を検出し、その時間変化量に応じてメータアウト絞りの開口面積を制御するので、油圧アクチュエータに作用する負の負荷が変化しても、操作性を悪化させることなく、かつ高い省エネルギ効果が得られる。
【0053】
また、上述した本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態によれば、アーム角度θ
A’と、その時間変化量であるアーム角速度ω
A’と、アームクラウドパイロット圧に応じて、メータアウト絞り23aの開口面積を制御するので、油圧アクチュエータに負の負荷が作用するときの息継ぎ現象が防止され、高い省エネルギ効果を得ることができる。
【実施例2】
【0054】
以下、本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。
図8は本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態のうち油圧ショベルのアームシリンダに関わる油圧回路部分を模式的に示す概略図、
図9は本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態を構成するコントローラの処理機能を示す機能ブロック図である。
図8及び
図9において、
図1乃至
図7に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0055】
本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態において、制御回路及び油圧回路の概略システムは、第1の実施の形態と大略同じであるが、ブーム角度センサ42とアーム角度センサ41を備えず、それらに代替するものとして、アームシリンダ11のロッドの伸縮量を検出するアームシリンダ変位センサ46と、ブームシリンダ12のロッドの伸縮量を検出するブームシリンダ変位センサ47とを備えている点が異なる。
【0056】
アームシリンダ変位センサ46は、
図8に示すように、アームシリンダ11のシリンダ外側部に設けられ、ブームシリンダ変位センサ47は、ブームシリンダ12の外側部に設けられている。これらの変位センサ47,46が検出した変位量信号はコントローラ45に入力される。
【0057】
第1の実施の形態では、ブーム角度センサ42とアーム角度センサ41が検出したブーム回動角度θ
Bとアーム回動角度θ
Aとを基に、アーム角度θ
A’とアーム角速度ω
A’を演算して、これらとアームクラウドパイロット圧を基にメータアウト絞り目標開口面積を算出したのに対して、本実施の形態では、アームシリンダ変位センサ46とブームシリンダ変位センサ47が検出したアームシリンダ変位量L
A3とブームシリンダ変位量L
B3とを基に、アーム角度θ
A’とアーム角速度ω
A’を演算して、これらとアームクラウドパイロット圧を基にメータアウト絞り目標開口面積を算出する点が主な特徴である。
【0058】
図9に示す本実施の形態のコントローラ45は、姿勢演算部である角度及び角速度演算部45dと、メータアウト開口面積演算部であるメータアウト開口演算部45bと、メータアウト制御部であるソレノイド電流演算部45cとを備えている。
【0059】
角度及び角速度演算部45dは、アームシリンダ変位センサ46が検出したアームシリンダ変位量L
A3と、ブームシリンダ変位センサ47が検出したブームシリンダ変位量L
B3とを入力し、これらの値からアーム51が水平方向となす角度(以下、アーム角度ともいう)θ
A’とアーム51が回動する際の角速度(以下、アーム角速度ともいう)ω
A’を算出する。
【0060】
具体的には、第1の実施の形態における式(1)と式(2)を用いて、アーム角度θ
A’とアーム角速度ω
A’をそれぞれ演算するが、式(1)と式(2)におけるアーム51の回動角度θ
Aとブーム52の回動角度θ
Bとを以下の式(3)と式(4)で演算する。
θ
A=COS
−1((L
2A3−L
2A1−L
2A2)/2L
A1L
A2)・・・(3)
θ
B=COS
−1((L
2B1+L
2B2−L
2B3)/2L
B1L
B2)・・・(4)
ここで、L
A1〜L
A3及びL
B1〜L
B3は、
図5に示す各構成物の長さである。
【0061】
メータアウト開口演算部45bのテーブルは、いずれも、アーム角度θ
A’がおよそ90°以下、すなわちアームシリンダ11に負の負荷が作用するときに、アーム角速度ω
A’が高くなるにしたがって、メータアウト絞り23aの目標開口面積を減少させるように特性設定されている。そして、アーム角度θ
A’がおよそ90°以上、すなわち、正の負荷が作用するときには、アーム角速度ω
A’によらず、メータアウト絞り23aの目標開口面積を最大値とするように特性設定されている。これらは、上述したように、アームクラウドパイロット圧によって、異なるテーブルを選択しているが、テーブルは2つに限るものではなく、それ以上のテーブルを備えて、アームクラウドパイロット圧に応じた更に細かい選択がなされても良い。この構成は第1の実施の形態と同様である。
【0062】
ソレノイド電流演算部45cは、メータアウト開口演算部45bで算出されたメータアウト絞り23aの目標開口面積信号を入力し、入力値に応じたソレノイド電流値を算出し、電磁比例弁44へ制御信号として出力する。この構成は第1の実施の形態と同様である。
【0063】
以上のように構成した本実施の形態においても、アームシリンダ11及びブームシリンダ12の伸縮量からアーム角度θ
A’及びアーム角速度ω
A’を演算することで、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
上述した本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
なお、本発明の実施の形態は、油圧ショベルのアームシリンダの弁装置に適用した場合を例に説明したが、これに限るものではない。本発明は、油圧シリンダに大小さまざまな重量負荷が作用するものであれば、油圧ショベルのアームシリンダやバケットシリンダ以外の油圧シリンダ、あるいは、油圧ショベル以外の建設機械、例えばホイールローダ、クレーン等の油圧シリンダの弁装置にも同様に適用可能である。