(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)が、エポキシ化された環状オレフィン基の少なくとも2個が単結合又は2価の炭化水素基で結合された構造を有する化合物である請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)の含有量が、硬化性組成物の総量(100重量%)に対して、10〜60重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、カチオン硬化反応性を向上させることについての記載はあるものの、当該文献に開示された樹脂組成物は依然として硬化性が十分ではなく、硬化物を得る際には硬化不良の問題が生じていた。また、特許文献2に開示された樹脂組成物においても、硬化性が不十分であることにより、同様に硬化不良の問題が生じていた。このため、光学部材を形成するための硬化性組成物(光学部材形成用硬化性組成物)として、硬化速度が十分に速く(速硬化性)、さらに高い耐熱性及び透明性を有する硬化物を形成できるものが求められている。特に、熱カチオン硬化系の硬化性組成物であって、硬化速度が速く、かつ低アッベ数の硬化物を形成できるものは、未だ得られていないのが現状である。
【0007】
光学部材を形成するための硬化性組成物には、上述の各種特性(速硬化性、耐熱性、透明性、高屈折率、及び低アッベ数)のほかにも、特に、硬化物を形成する際の硬化収縮率が小さいこと、形状安定性に優れることなども求められている。
【0008】
特に、形状安定性については、例えば、硬化性組成物がウェハレベルレンズ用途等に使用され、当該ウェハレベルレンズがアニール処理等により高温環境に置かれた場合であっても、レンズ形状に問題が発生しないことが求められる。具体的には、硬化性組成物を金型により成形する場合、通常、得られた硬化物(成形物)の内部には応力が残存することによる歪みが存在している。この歪みを除去するために、硬化物を金型から取り出した後、アニール(加熱)処理を行うことがよく行われる。しかし、アニール処理を行うことにより、硬化物の形状に「ダレ」が生じ易くなり、特にウェハレベルレンズの場合には、レンズの中心位置のずれが生じたり、レンズを複数枚積層した場合に画像が不鮮明になる等の精度低下の問題が起きる可能性が高くなる。
【0009】
従って、本発明の目的は、硬化の際には速硬化性及び形状安定性に優れ、硬化させることにより、耐熱性が高く、高透明性、高屈折率、及び低アッベ数の光学特性を兼ね備えた硬化物を形成できる硬化性組成物並びにその硬化物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高精度であって光学特性に優れ、なおかつ生産性の高い光学部材及び該光学部材を有する光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する脂環エポキシ化合物と、特定の構造を有するカチオン重合性化合物と、熱カチオン硬化剤とを必須成分として含む硬化性組成物が、硬化の際には速硬化性及び形状安定性に優れ、硬化させることにより、耐熱性が高く、高透明性、高屈折率、及び低アッベ数の光学特性を兼ね備えた硬化物を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)、芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)、及び熱カチオン硬化剤(C)を含む硬化性組成物であって、エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)が、エポキシ化された環状オレフィン基を少なくとも2個有する化合物であることを特徴とする硬化性組成物を提供する。
【0012】
さらに、エポキシ化された環状オレフィン基が、炭素数5〜12の環状オレフィン基がエポキシ化された基である前記の硬化性組成物を提供する。
【0013】
さらに、エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)が、エポキシ化された環状オレフィン基の少なくとも2個が単結合又は2価の炭化水素基で結合された構造を有する化合物である前記の硬化性組成物を提供する。
【0014】
さらに、エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)の含有量が、硬化性組成物の総量(100重量%)に対して、10〜60重量%である前記の硬化性組成物を提供する。
【0015】
さらに、芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)が、脂環エポキシ基、グリシジル基、及びオキセタニル基からなる群より選択された少なくとも1種のカチオン硬化性官能基を有する前記の硬化性組成物を提供する。
【0016】
さらに、芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)の含有量が、硬化性組成物の総量(100重量%)に対して、40〜90重量%である前記の硬化性組成物を提供する。
【0017】
さらに、硬化開始温度が60〜150℃である前記の硬化性組成物を提供する。
【0018】
さらに、硬化させて得られる硬化物のアッベ数が35以下である前記の硬化性組成物を提供する。
【0019】
さらに、カチオン硬化性官能基を有する離型剤を含む前記の硬化性組成物を提供する。
【0020】
さらに、光学部材形成用組成物である前記の硬化性組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を有する光学部材を提供する。
【0023】
また、本発明は、前記の光学部材を有する光学装置を提供する。
【0024】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)、芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)、及び熱カチオン硬化剤(C)を含む硬化性組成物であって、エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)が、エポキシ化された環状オレフィン基を少なくとも2個有する化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
[2]エポキシ化された環状オレフィン基が、炭素数5〜12の環状オレフィン基がエポキシ化された基である[1]に記載の硬化性組成物。
[3]エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)が、エポキシ化された環状オレフィン基の少なくとも2個が単結合又は2価の炭化水素基で結合された構造を有する化合物である[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
[4]エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)が、下記式(a1)
【化1】
[式(a1)中、Rは、エポキシ化環状オレフィン基を示す。Xは、単結合又は2価の炭化水素基を示す。]
で表される化合物である[1]〜[3]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[5]エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)が、式(a1)中の2つのRがともにシクロヘキセンオキシド基である化合物である[4]に記載の硬化性組成物。
[6]エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)が、2つのシクロヘキセンオキシド基の4位の炭素原子が単結合又は2価の炭化水素基によって連結された化合物である[5]に記載の硬化性組成物。
[7]エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)の含有量が、硬化性組成物の総量(100重量%)に対して、10〜60重量%である[1]〜[6]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[8]エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)及び芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)の総量(100重量%)に対するエステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)の割合が、10〜60重量%である[1]〜[7]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[9]芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)が有する芳香環が、芳香族炭化水素環である[1]〜[8]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[10]芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)が分子内に有する芳香環の数が1〜10個である[1]〜[9]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[11]芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)が、脂環エポキシ基、グリシジル基、及びオキセタニル基からなる群より選択された少なくとも1種のカチオン硬化性官能基を有する[1]〜[10]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[12]芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)が分子内に有するカチオン硬化性官能基の数が1〜10個である[1]〜[11]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[13]芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)が下記式(b1)で表される化合物である[1]〜[12]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【化2】
[式(b1)中、R
1〜R
5、R
7〜R
11は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。環Z
1、環Z
2は、同一又は異なって、芳香族炭素環(芳香族炭化水素環)を示す。R
6、R
12は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を示す。p1、p2は、同一又は異なって、0以上の整数である。]
[14]芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)の含有量が、硬化性組成物の総量(100重量%)に対して、40〜90重量%である[1]〜[13]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[15]硬化性組成物の総量(100重量%)に対するエステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)及び芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)の総量の割合が、80重量%以上、100重量%未満である[1]〜[14]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[16]熱カチオン硬化剤(C)が熱カチオン重合開始剤である[1]〜[15]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[17]熱カチオン硬化剤(C)の含有量(配合量)が、硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の総量100重量部に対して、0.001〜10重量部である[1]〜[16]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[18]硬化開始温度が60〜150℃である[1]〜[17]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[19]さらに、酸化防止剤を含む[1]〜[18]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[20]酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤である[19]に記載の硬化性組成物。
[21]酸化防止剤の含有量(配合量)が、硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の総量100重量部に対して、0.001〜15重量部である[19]又は[20]に記載の硬化性組成物。
[22]硬化させて得られる硬化物のアッベ数が35以下である[1]〜[21]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[23]さらに、カチオン硬化性官能基を有する離型剤を含む[1]〜[22]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[24]前記離型剤が有するカチオン硬化性官能基の数が、1〜4個である[23]に記載の硬化性組成物。
[25]前記離型剤が、エポキシ基を有するフッ素置換炭化水素である[23]又は[24]に記載の硬化性組成物。
[26]前記エポキシ基を有するフッ素置換炭化水素が、下記式(i)で表される化合物である[25]に記載の硬化性組成物。
【化3】
[式(i)におけるrは1〜15の整数を示す。sは1〜5の整数を示す。Yは、水素原子、フッ素原子、又はフルオロアルキル基を示す。式(i)における−(CH
2)
r−は、水素原子の一部がヒドロキシル基に置換されたものであってもよく、また、途中にエーテル結合が含まれたものであってもよい。]
[27]前記離型剤の含有量(配合量)が、エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)及び芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)の総量100重量部に対して、0.01〜10重量部である[23]〜[26]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[28]硬化性組成物に含まれる硬化性化合物の総量(100重量%)に対するカチオン重合性化合物の総量の割合が、80〜100重量%である[1]〜[27]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[29]硬化させて得られる硬化物の400nmにおける内部透過率[厚み0.5mm換算]が、70〜100%である[1]〜[28]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[30]硬化させて得られる硬化物の589nmにおける屈折率(25℃)が、1.58以上である[1]〜[29]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[31]硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度が、100〜200℃である[1]〜[30]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[32]硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度以下における線膨張係数(α1)が、40〜100ppm/Kである[1]〜[31]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[33]硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度以上における線膨張係数(α2)が、90〜150ppm/Kである[1]〜[32]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[34]光学部材形成用組成物である[1]〜[33]のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
[35][1]〜[34]のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
[36]400nmにおける内部透過率[厚み0.5mm換算]が、70〜100%である[35]に記載の硬化物。
[37]589nmにおける屈折率(25℃)が、1.58以上である[35]又は[36]に記載の硬化物。
[38]ガラス転移温度が、100〜200℃である[35]〜[37]のいずれか1つに記載の硬化物。
[39]ガラス転移温度以下における線膨張係数(α1)が、40〜100ppm/Kである[35]〜[38]のいずれか1つに記載の硬化物。
[40]ガラス転移温度以上における線膨張係数(α2)が、90〜150ppm/Kである[35]〜[39]のいずれか1つに記載の硬化物。
[41]アッベ数が35以下である[35]〜[40]のいずれか1つに記載の硬化物。
[42][34]に記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を有する光学部材。
[43][42]に記載の光学部材を有する光学装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明の硬化性組成物は上記構成を有するため、硬化の際には速硬化性及び形状安定性に優れ、硬化させることにより、耐熱性が高く、高透明性、高屈折率、及び低アッベ数の光学特性を兼ね備えた硬化物を形成できる。特に、本発明の硬化性組成物は硬化収縮率が小さく、形状安定性に優れるため、該硬化性組成物を使用することで精度の高い光学部材の設計に寄与することができる。また、本発明の硬化性組成物における脂環エポキシ化合物(A)が液状の場合には、希釈成分(このような希釈成分は、硬化物の屈折率やアッベ数に悪影響を及ぼし得る)を別途加える必要がないため、硬化物の高屈折率かつ低アッベ数の光学特性を維持したまま、速硬化性を達成することが可能となる。さらに、本発明の光学部材及び光学装置は上記構成を有するため、高精度であって光学特性に優れ、なおかつ生産性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、エステル基を有しない脂環エポキシ化合物(A)、芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)、及び熱カチオン硬化剤(C)を必須成分として含む硬化性組成物である。本発明の硬化性組成物は、上述の必須成分のほかに、例えば、後述の酸化防止剤、離型剤、各種添加剤等のその他の成分を含んでいてもよい。なお、本発明の硬化性組成物は、加熱により硬化して硬化物(樹脂硬化物)を形成する熱硬化性組成物として使用できる。
【0027】
[脂環エポキシ化合物(A)]
本発明の硬化性組成物におけるエステル基(エステル結合)を有しない脂環エポキシ化合物(A)(以下、単に「脂環エポキシ化合物(A)」や「成分(A)」と称する場合がある)は、分子内にエステル基(エステル結合)を有しない化合物であって、分子内にエポキシ化された環状オレフィン基を少なくとも2個有する化合物である。脂環エポキシ化合物(A)が有する「エポキシ化された環状オレフィン基」とは、環状オレフィン(環を形成する炭素−炭素結合の少なくとも1つが炭素−炭素不飽和結合である環状脂肪族炭化水素)が有する炭素−炭素不飽和結合の少なくとも1つがエポキシ化された構造から1つの水素原子を除いて形成される基(1価の基)であり、以下、「エポキシ化環状オレフィン基」や「脂環エポキシ基」と称する場合がある。即ち、上記エポキシ化環状オレフィン基は、脂肪族炭化水素環構造とエポキシ基とを含み、該エポキシ基が上記脂肪族炭化水素環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基である基である。
【0028】
上記エポキシ化環状オレフィン基における環状オレフィン基(エポキシ化される前の形態)としては、シクロプロペニル基(例えば、2−シクロプロペン−1−イル基等)、シクロブテニル基(例えば、2−シクロブテン−1−イル基等)、シクロペンテニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、3−シクロペンテン−1−イル基等)、シクロヘキセニル基(例えば、2−シクロヘキセン−1−イル基、3−シクロヘキセン−1−イル基等)等のシクロアルケニル基;2,4−シクロペンタジエン−1−イル基、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル基、2,5−シクロヘキサジエン−1−イル基等のシクロアルカジエニル基;ジシクロペンテニル基、ジシクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等の多環式基等が挙げられる。
【0029】
なお、上記エポキシ化環状オレフィン基における環状オレフィン基を形成する脂肪族炭化水素環には、1個以上の置換基が結合していてもよい。上記置換基としては、例えば、炭素数0〜20(より好ましくは炭素数0〜10)の置換基等が挙げられ、より具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のアルコキシ基(好ましくはC
1-6アルコキシ基、より好ましくはC
1-4アルコキシ基);アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基(好ましくはC
2-6アルケニルオキシ基、より好ましくはC
2-4アルケニルオキシ基);フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC
1-4アルキル基、C
2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C
1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールオキシ基(好ましくはC
6-14アリールオキシ基);ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基(好ましくはC
7-18アラルキルオキシ基);アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基(好ましくはC
1-12アシルオキシ基);メルカプト基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基(好ましくはC
1-6アルキルチオ基、より好ましくはC
1-4アルキルチオ基);アリルチオ基等のアルケニルチオ基(好ましくはC
2-6アルケニルチオ基、より好ましくはC
2-4アルケニルチオ基);フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC
1-4アルキル基、C
2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C
1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールチオ基(好ましくはC
6-14アリールチオ基);ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアラルキルチオ基(好ましくはC
7-18アラルキルチオ基);カルボキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(好ましくはC
1-6アルコキシ−カルボニル基);フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(好ましくはC
6-14アリールオキシ−カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基(好ましくはC
7-18アラルキルオキシ−カルボニル基);アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基(好ましくはモノ又はジ−C
1-6アルキルアミノ基);アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基(好ましくはC
1-11アシルアミノ基);エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC
1-6アルキレン基を介して結合した基等が挙げられる。
【0030】
中でも、上記環状オレフィン基としては、炭素数5〜12の環状オレフィン基が好ましく、より好ましくは炭素数5〜12のシクロアルケニル基、さらに好ましくはシクロヘキセニル基である。即ち、上記エポキシ化環状オレフィン基としては、炭素数5〜12の環状オレフィン基がエポキシ化された基が好ましく、より好ましくは炭素数5〜12のシクロアルケニル基がエポキシ化された基、さらに好ましくはシクロヘキセニル基がエポキシ化された基(シクロヘキセンオキシド基)である。なお、脂環エポキシ化合物(A)は、エポキシ化環状オレフィン基の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
【0031】
脂環エポキシ化合物(A)が分子内に有するエポキシ化環状オレフィン基の数は、2個以上であればよく、特に限定されないが、2〜4個が好ましく、より好ましくは2個である。
【0032】
脂環エポキシ化合物(A)としては、エポキシ化環状オレフィン基の少なくとも2個が単結合又は2価の炭化水素基で結合された構造を有する化合物が好ましい。上記2価の炭化水素基としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、及びこれらが複数個結合した基等が挙げられる。上記2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基(例えば、炭素数1〜6のアルキレン基)等が挙げられる。また、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の2価のシクロアルキレン基等が挙げられる。
【0033】
脂環エポキシ化合物(A)としては、具体的には、例えば、下記式(a1)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0034】
上記式(a1)中、Rは、エポキシ化環状オレフィン基を示す。2個のRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。Xは、単結合又は2価の炭化水素基を示す。Rとしてのエポキシ化環状オレフィン基、Xとしての2価の炭化水素基としては、上記と同様のものが例示される。式(a1)で表される化合物としては、例えば、2つのRがともにシクロヘキセンオキシド基である化合物(特に、2つのシクロヘキセンオキシド基の4位の炭素原子(エポキシ基を形成する2つの炭素原子の位置を1位、2位とする)が単結合又は2価の炭化水素基によって連結された化合物など)が挙げられる。
【0035】
なお、本発明の硬化性組成物において脂環エポキシ化合物(A)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0036】
本発明の硬化性組成物における脂環エポキシ化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性組成物の総量(全量)(100重量%)に対して、10〜60重量%が好ましく、より好ましくは15〜55重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。脂環エポキシ化合物(A)の含有量が10重量%未満であると、硬化性組成物の硬化性が不十分となる場合がある。一方、脂環エポキシ化合物(A)の含有量が60重量%を超えると、硬化物に対して高屈折率かつ低アッベ数の光学特性を付与することが困難となる場合がある。
【0037】
脂環エポキシ化合物(A)及び芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)の総量(100重量%)に対する脂環エポキシ化合物(A)の割合は、特に限定されないが、10〜60重量%が好ましく、より好ましくは15〜55重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。上記割合が10重量%未満であると、硬化性組成物の硬化性が不十分となる場合がある。一方、上記割合が60重量%を超えると、硬化物に対して高屈折率かつ低アッベ数の光学特性を付与することが困難となる場合がある。
【0038】
[芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)]
本発明の硬化性組成物における芳香環を有するカチオン重合性化合物(B)(以下、単に「カチオン重合性化合物(B)」や「成分(B)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも1個の芳香環と、少なくとも1個のカチオン硬化性官能基(カチオン重合性官能基)とを有する化合物である。カチオン重合性化合物(B)を含むことにより、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物に対し、特に、耐熱性、並びに、高透明性、高屈折率、及び低アッベ数の光学特性を効率的に付与できる傾向がある。
【0039】
カチオン重合性化合物(B)が有する芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環のような芳香族単環炭化水素環;ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ピレン環等の芳香族縮合多環炭化水素環等の芳香族炭化水素環等が挙げられる。また、上記芳香環としては、ピリジン環、フラン環、ピロール環、ベンゾフラン環、インドール環、カルバゾール環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、キノキサリン環等の芳香族複素環等も挙げられる。中でも、上記芳香環としては、芳香族炭化水素環が好ましく、より好ましくはベンゼン環、フルオレン環であり、さらに、硬化物に対して高屈折率かつ低アッベ数の光学特性を付与しやすい観点で、フルオレン環が特に好ましい。
【0040】
なお、カチオン重合性化合物(B)が有する芳香環には、1個以上の置換基が結合していてもよい。上記置換基としては、例えば、上述の環状オレフィン基を形成する脂肪族炭化水素環に結合していてもよい置換基と同様のものが例示される。なお、カチオン重合性化合物(B)は、芳香環の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
【0041】
カチオン重合性化合物(B)が分子内に有する芳香環の数は、1個以上であればよく、特に限定されないが、1〜10個が好ましく、より好ましくは2〜8個である。
【0042】
カチオン重合性化合物(B)が有するカチオン硬化性官能基としては、カチオン硬化性(カチオン重合性)を有する公知乃至慣用の官能基が挙げられ、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、オキサゾリニル基等の環状エーテル基;ビニルエーテル基、スチリル基等のビニル基含有基;これらの基を少なくとも含む基等が挙げられる。中でも、上記カチオン硬化性官能基としては、脂環エポキシ化合物(A)との反応性の観点で、脂環エポキシ基(エポキシ化環状オレフィン基)、グリシジル基、オキセタニル基が好ましい。なお、カチオン重合性化合物(B)は、カチオン硬化性官能基の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
【0043】
カチオン重合性化合物(B)が分子内に有するカチオン硬化性官能基の数は、1個以上であればよく、特に限定されないが、2〜10個が好ましく、より好ましくは2〜4個である。
【0044】
カチオン重合性化合物(B)のうち、芳香環を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物(ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル等)、ビスフェノールF型エポキシ化合物(ビスフェノールF又はそのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル等)、ビフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールAのクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ポリフェノール型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールF型エポキシ化合物、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、末端カルボン酸ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物、ナフタレン型エポキシ化合物(ナフタレン環を有するエポキシ化合物)、フルオレン環を有するエポキシ化合物等が挙げられる。また、上記芳香環を有するエポキシ化合物としては、例えば、特開2009−179568に開示された芳香族骨格を有する脂環式エポキシ化合物等も使用することができる。
【0045】
芳香環を有するエポキシ化合物としては、特に、硬化物の高屈折率、低アッベ数の観点で、下記式(b1)で表される化合物が好ましい。
【化5】
【0046】
式(b1)中、R
1〜R
5、R
7〜R
11は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。上記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。中でも、R
1〜R
5、R
7〜R
11としては、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0047】
式(b1)中、環Z
1、環Z
2は、同一又は異なって、芳香族炭素環(芳香族炭化水素環)を示す。環Z
1、環Z
2における芳香族炭素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の1〜4環程度の芳香族炭素環が挙げられる。中でも、上記芳香族炭素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が好ましい。
【0048】
式(b1)において、式(b1)に示されるフルオレン環、環Z
1、環Z
2は、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはメチル基);シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基(例えば、C
5-8シクロアルキル基等);フェニル基、ナフチル基等のアリール基(例えば、C
6-15アリール基等);ベンジル基等のアラルキル基(例えば、C
7-16アラルキル基等);アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基(例えば、C
1-10アシル基等);メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基等のアルコキシ基(例えば、C
1-6アルコキシ基等);メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(例えば、C
1-4アルコキシ−カルボニル基等);シアノ基;カルボキシル基;ニトロ基;アミノ基;置換アミノ基(例えば、モノ又はジC
1-4アルキルアミノ基等);フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。
【0049】
式(b1)中、R
6、R
12は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を示す。R
6、R
12におけるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基等が挙げられる。中でも、上記アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基である。
【0050】
式(b1)中、p1、p2は、同一又は異なって、0以上の整数であり、0〜4の整数が好ましく、より低粘度で流動性に優れる点で、1〜4の整数がより好ましい。
【0051】
なお、式(b1)で表される化合物としては、例えば、商品名「PG−100」、「EG−200」(以上、大阪ガスケミカル(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0052】
カチオン重合性化合物(B)のうち、芳香環を有するオキセタン化合物としては、例えば、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、4,4'−ビス[3−エチル−(3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、ノボラック型オキセタン樹脂等が挙げられる。
【0053】
カチオン重合性化合物(B)としては、市販品を使用することもできる。カチオン重合性化合物(B)のうちビスフェノールA型エポキシ化合物の市販品として、例えば、商品名「jER827」、「jER828」、「jER828EL」、「jER828XA」、「jER834」(以上、三菱化学(株)製);商品名「エピクロン840」、「エピクロン840−S」、「エピクロン850」、「エピクロン850−S」、「エピクロン850−LC」(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。また、カチオン重合性化合物(B)のうち分子内にナフタレン環を有するエポキシ化合物の市販品として、例えば、商品名「エピクロンHP4032」、「HP4032D」、「HP4700」、「HP4710」、「HP4770」、「HP5000」(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。さらに、カチオン重合性化合物(B)のうち分子内にフルオレン環を有するエポキシ化合物の市販品として、例えば、商品名「PG−100」、「EG−200」、「EG−250」(以上、大阪ガスケミカル(株)製);商品名「オンコートEX−1010」、「オンコートEX−1011」、「オンコートEX−1012」、「オンコートEX−1020」、「オンコートEX−1030」、「オンコートEX−1040」、「オンコートEX−1050」、「オンコートEX−1051」(以上、長瀬産業(株)社製)等が挙げられる。さらに、カチオン重合性化合物(B)のうち分子内に芳香環を有するオキセタン化合物の市販品として、例えば、商品名「OXT−121」、「OXT−211」(以上、東亞合成(株)製);商品名「ETERNACOLL OXBP」(宇部興産(株)製)等が挙げられる。
【0054】
なお、本発明の硬化性組成物においてカチオン重合性化合物(B)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0055】
本発明の硬化性組成物におけるカチオン重合性化合物(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性組成物の総量(100重量%)に対して、40〜90重量%が好ましく、より好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは45〜75重量%である。カチオン重合性化合物(B)の含有量が40重量%未満であると、硬化物に対して高屈折率かつ低アッベ数の光学特性を付与することが困難となる場合がある。一方、カチオン重合性化合物(B)の含有量が90重量%を超えると、硬化の際の速硬化性、形状安定性向上の効果が得られにくくなる場合がある。
【0056】
本発明の硬化性組成物の総量(100重量%)に対する成分(A)及び成分(B)の総量の割合は、特に限定されないが、80重量%以上(例えば、80重量%以上、100重量%未満)が好ましく、より好ましくは90重量%以上(例えば、90〜98重量%)である。上記割合が80重量%未満であると、硬化性組成物の硬化時の速硬化性及び形状安定性、硬化物の耐熱性及び光学物性(高透明性、高屈折率、低アッベ数)の各種特性をバランスよく制御することが困難となる場合がある。
【0057】
[熱カチオン硬化剤(C)]
本発明の硬化性組成物における熱カチオン硬化剤(C)(以下、「成分(C)」と称する場合がある)は、加熱によって硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物(カチオン硬化性官能基を有する化合物;例えば、脂環エポキシ化合物(A)、カチオン重合性化合物(B)、分子内に1個以上のカチオン硬化性官能基を有する離型剤等)の重合反応(硬化反応)を開始乃至進行させる働きを有する化合物である。熱カチオン硬化剤(C)としては、上述の働きを有する公知乃至慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、加熱によりカチオン種を発生し、これにより硬化性化合物の重合(硬化)を開始させる熱カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0058】
熱カチオン硬化剤(C)としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体等の熱カチオン重合開始剤が挙げられる。また、熱カチオン硬化剤(C)としては、例えば、アルミニウムやチタン等の金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタン等の金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物等の熱カチオン重合開始剤が挙げられる。熱カチオン硬化剤(C)としては、例えば、商品名「PP−33」、「CP−66」、「CP−77」(以上、(株)ADEKA製);商品名「FC−509」(スリーエム製);商品名「UVE1014」(G.E.製);商品名「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」、「サンエイドSI−100L」、「サンエイドSI−110L」、「サンエイドSI−150L」(以上、三新化学工業(株)製);商品名「CG−24−61」(BASF製)等の市販品を使用することもできる。
【0059】
中でも、熱カチオン硬化剤(C)としては、後述の本発明の硬化性組成物の硬化開始温度を60〜150℃(より好ましくは80〜120℃)に制御できるものを使用することが好ましい。
【0060】
なお、本発明の硬化性組成物において熱カチオン硬化剤(C)は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0061】
本発明の硬化性組成物における熱カチオン硬化剤(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の総量100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。含有量が0.001重量部未満であると、特に比較的厚い硬化物を形成するような場合等において、硬化不良が生じやすくなる場合がある。一方、含有量が10重量部を超えると、硬化物の耐熱性等の物性が低下したり、コスト面で不利となる場合がある。
【0062】
[酸化防止剤]
本発明の硬化性組成物は、さらに、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記酸化防止剤としては、酸化防止剤として使用できる公知乃至慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤(フェノール系化合物)、リン系酸化防止剤(リン系化合物)、硫黄系酸化防止剤(硫黄系化合物)等が挙げられる。
【0063】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類;2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類等が挙げられる。
【0064】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。
【0065】
上記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0066】
中でも、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましい。なお、本発明の硬化性組成物において酸化防止剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0067】
本発明の硬化性組成物における酸化防止剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の総量100重量部に対して、0.001〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。含有量が0.001重量部未満であると、用途によっては酸化等の劣化の抑制が不十分となる場合がある。一方、含有量が15重量部を超えると、硬化物の耐熱性等の物性が低下したり、コスト面で不利となる場合がある。
【0068】
[離型剤]
本発明の硬化性組成物は、さらに、離型剤を含んでいてもよい。上記離型剤としては、離型剤として使用できる公知乃至慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物、フッ素化合物(フッ素系離型剤)、シリコーン系化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、ポリアルキレンワックス、アミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンパウダー等が挙げられる。中でも、透明性を損なわない観点で、分子内に1個以上のカチオン硬化性官能基を有する離型剤が好ましく、より好ましくは分子内に1個以上のカチオン硬化性官能基を有するフッ素化合物(フッ素系離型剤)である。
【0069】
上記分子内に1個以上のカチオン硬化性官能基を有するフッ素化合物が有するカチオン硬化性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、オキサゾリニル基等の環状エーテル基;ビニルエーテル基、スチリル基等のビニル基含有基;これらの基を少なくとも含む基等が挙げられる。中でも、上記カチオン硬化性官能基としては、環状エーテル基が好ましく、より好ましくはエポキシ基である。なお、上記分子内に1個以上のカチオン硬化性官能基を有するフッ素化合物が有するカチオン硬化性官能基の数は、1個以上(例えば、1〜4個)であればよく、特に限定されない。また、複数のカチオン硬化性官能基を有する場合、1種のみのカチオン硬化性官能基を有していてもよいし、2種以上のカチオン硬化性官能基を有していてもよい。
【0070】
上記分子内に1個以上のカチオン硬化性官能基を有するフッ素化合物としては、具体的には、例えば、エポキシ基を有するフッ素置換炭化水素(エポキシ基含有フッ素置換炭化水素)等が挙げられ、より具体的には、例えば、下記式(i)で表される化合物(フルオロアルキルを有する単官能エポキシ化合物)等が挙げられる。
【化6】
【0071】
上記式(i)におけるrは1〜15の整数を示す。また、sは1〜5の整数を示す。Yは、水素原子、フッ素原子、又はフルオロアルキル基を示す。上記フルオロアルキル基としては、例えば、水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキル基[例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロイソプロピル基等]等が挙げられる。なお、式(i)における−(CH
2)
r−は、水素原子の一部がヒドロキシル基に置換されたものであってもよく、また、途中にエーテル結合が含まれたものであってもよい。式(i)で表される化合物としては、より具体的には、3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン等が挙げられる。
【0072】
上記離型剤としては、例えば、商品名「E−1430」、「E−1630」、「E−1830」、「E−2030」、「E−3430」、「E−3630」、「E−3830」、「E−4030」、「E−5244」、「E−5444」、「E−5644」、「E−5844」(フッ素系離型剤、以上、ダイキン工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。なお、本発明の硬化性組成物において離型剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0073】
本発明の硬化性組成物における離型剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環エポキシ化合物(A)及びカチオン重合性化合物(B)の総量100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。離型剤の含有量が0.01重量部未満であると、成形時に金型から離型できない場合がある。一方、離型剤の含有量が10重量部を超えると、硬化性組成物の透明性が損なわれる場合がある。
【0074】
[添加剤]
本発明の硬化性組成物は、上述の成分のほか、必要に応じて添加剤等のその他の成分を含んでいてもよい。上記添加剤としては、公知乃至慣用の添加剤が挙げられ、特に限定されないが、例えば、金属酸化物粒子、ゴム粒子、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、シランカップリング剤、充填剤、可塑剤、レベリング剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料等が挙げられる。これら各種の添加剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性組成物(100重量%)に対して、5重量%以下(例えば、0〜5重量%)とすることが好ましい。また、本発明の硬化性組成物は溶媒を含んでいてもよいが、あまり多いと硬化物に気泡が生じる場合があるので、硬化性組成物(100重量%)に対して10重量%以下(例えば、0〜10重量%)とすることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。
【0075】
本発明の硬化性組成物に含まれる硬化性化合物(ラジカル硬化性官能基を有する化合物やカチオン硬化性官能基を有する化合物)の総量(100重量%)に対するカチオン重合性化合物(カチオン硬化性官能基を有する化合物;例えば、脂環エポキシ化合物(A)、カチオン重合性化合物(B)、分子内に1個以上のカチオン硬化性官能基を有する離型剤等)の総量の割合は、特に限定されないが、80重量%以上(例えば、80〜100重量%)が好ましく、より好ましくは90重量%以上である。上記割合が80重量%未満であると、硬化の際の硬化収縮率が大きくなり過ぎたり、硬化物の透明性の確保が困難となる場合がある。
【0076】
本発明の硬化性組成物は、特に限定されないが、例えば、所定量の脂環エポキシ化合物(A)、カチオン重合性化合物(B)、及び熱カチオン硬化剤(C)、さらに必要に応じて酸化防止剤、離型剤、各種の添加剤等を配合し、必要に応じて真空下で気泡を除去しながら、攪拌・混合することにより調製できる。撹拌・混合する際の温度は、例えば、10〜60℃程度が好ましい。なお、撹拌・混合には、公知乃至慣用の装置、例えば、自転公転ミキサー、1軸又は多軸エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を使用できる。
【0077】
本発明の硬化性組成物の硬化開始温度は、特に限定されないが、60〜150℃が好ましく、より好ましくは80〜120℃である。本発明の硬化性組成物の硬化開始温度が60℃未満であると、保存安定性が悪く、室温環境下(25℃)における使用に適さない場合がある。なお、「硬化性組成物の硬化開始温度」とは、本発明の硬化性組成物について、下記の条件でDSC(示差走査熱量測定機)を使用して反応熱量を測定した際の立ち上がり温度(ベースラインからの立ち上がりが開始する温度)を意味するものとする。
(DSCの測定条件)
・測定雰囲気:窒素(流量:50mL/分)
・測定温度:30〜300℃
・昇温条件:20℃/分
なお、本発明の硬化性組成物の硬化開始温度は、例えば、硬化性組成物の組成(例えば、熱カチオン硬化剤(C)の種類;特に、脂環エポキシ化合物(A)及びカチオン重合性化合物(B)と熱カチオン硬化剤(C)との組み合わせ)によって制御することができる。
【0078】
本発明の硬化性組成物を硬化させることにより、硬化物(「本発明の硬化物」と称する場合がある)が得られる。本発明の硬化性組成物の硬化(硬化反応)は、例えば、加熱処理により進行させることができる。なお、加熱処理を行う場合、その温度としては、反応に供する成分(A)〜(C)の種類等に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、100〜200℃が好ましく、より好ましくは120〜160℃である。さらに、硬化反応をより進行させるために光照射を併用してもよい。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線源、レーザー光源等を使用できる。
【0079】
本発明の硬化物の400nmにおける内部透過率(波長400nmの光の内部透過率)[厚み0.5mm換算]は、特に限定されないが、70%以上(例えば、70〜100%)が好ましく、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。
【0080】
本発明の硬化物の589nmにおける屈折率(波長589nmの光の屈折率)(25℃)は、特に限定されないが、1.58以上が好ましく、より好ましくは1.60以上である。
【0081】
本発明の硬化物のアッベ数は、特に限定されないが、35以下が好ましく、より好ましくは30以下、さらに好ましくは27以下である。
【0082】
本発明の硬化物のガラス転移温度(ガラス転移点)(Tg)は、特に限定されないが、100℃以上(例えば、100〜200℃)が好ましく、より好ましくは140℃以上である。ガラス転移温度が100℃未満であると、使用態様によっては硬化物の耐熱性が不十分となる場合がある。硬化物のガラス転移温度は、例えば、各種熱分析[DSC(示差走査熱量計)、TMA(熱機械分析装置)等]や動的粘弾性測定等により測定でき、より具体的には、実施例に記載の測定方法により測定できる。
【0083】
本発明の硬化物のガラス転移温度以下における線膨張係数(α1)は、特に限定されないが、40〜100ppm/Kが好ましく、より好ましくは40〜90ppm/Kである。また、本発明の硬化物のガラス転移温度以上における線膨張係数(α2)は、特に限定されないが、90〜150ppm/Kが好ましく、より好ましくは90〜130ppm/Kである。なお、硬化物の線膨張係数α1、α2は、例えば、TMA等により測定でき、より具体的には、実施例に記載の測定方法により測定できる。
【0084】
本発明の硬化性組成物は、硬化の際には速硬化性及び形状安定性に優れ、硬化させることにより、耐熱性が高く、高透明性、高屈折率、及び低アッベ数の光学特性を兼ね備えた硬化物を形成できる。このため、本発明の硬化性組成物は、特に、光学部材を形成するための材料(光学部材形成用組成物)として好ましく使用できる。即ち、上記光学部材は、本発明の硬化性組成物(光学部材形成用組成物)を硬化させて得られる硬化物を含む光学部材である。上記光学部材としては、例えば、光拡散性、光透過性、光反射性等の各種の光学的機能を発現する部材や、上記光学的機能を利用した装置や機器(これらを総称して「光学装置」と称する場合がある)を構成する部材等が挙げられる。上記光学部材としては、具体的には、例えば、液晶表示装置におけるカラーフィルター、カラーフィルター保護膜、TFT平坦化膜、基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板(偏光フィルム)、位相差板(位相差フィルム)、視野角補正フィルム、偏光子保護フィルム、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)、封止材(封止剤)等;光半導体表示装置における光半導体素子のモールド材(モールド剤)、封止材(封止剤)、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラスの代替材料、各種コーティング剤、接着材(接着剤)等;プラズマディスプレイパネルにおける反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラスの代替材料、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;プラズマアドレス液晶ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、偏光子保護フィルム、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;有機エレクトロルミネッセンスディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラスの代替材料、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;フィールドエミッションディスプレイにおける各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラスの代替材料、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等が挙げられる。
【0085】
また、上記光学部材としては、例えば、光記録分野で使用される光学部材[例えば、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、Blu−Ray、光カード用のディスク基板材料;ピックアップレンズ;受光センサー部;保護フィルム;各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等]、光学機器分野で使用される光学部材[例えば、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダー、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;プロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;光センシング機器のレンズ用材料、各種フィルム、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;スマートフォン等の携帯端末に搭載されたカメラのレンズ、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等]、光部品分野で使用される光学部材[例えば、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;光受動部品、光回路部品におけるレンズ、導波路、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等]、光ファイバー分野で使用される光学部材[例えば、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイド等、工業用途のセンサー類、表示・標識類等、また、通信インフラ用及び家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバー、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等]、光・電子機能有機材料分野で使用される光学部材[例えば、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材(封止剤)、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等]等が挙げられる。
【0086】
さらに、上記光学部材としては、例えば、自動車・輸送機分野で使用される光学部材[例えば、自動車用ヘッドランプ・テールランプ・室内ランプ等のランプ材料、ランプリフレクタ、ランプレンズ、外装板・インテリアパネル等の各種内外装品、ガラス代替品、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;鉄道車輌用の外装部品、ガラス代替品、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等;航空機の外装部品、ガラス代替品、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等]、建築分野で使用される光学部材[例えば、ガラス中間膜、ガラス代替品、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等]、農業分野で使用される光学部材[例えば、ハウス被覆用フィルム、各種コーティング材(コーティング剤)、接着材(接着剤)等]等も挙げられる。
【0087】
本発明の硬化性組成物(光学部材形成用組成物)を硬化させて得られる硬化物を有する上述の光学部材を使用することにより、該光学部材を有する光学装置を得ることができる。上記光学装置としては、上記光学部材を含む各種の光学装置(例えば、液晶表示装置、光半導体表示装置、プラズマディスプレイパネル、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、スマートフォンや携帯電話等の携帯端末等)が挙げられ、特に限定されない。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例3は参考例として記載するものである。
【0089】
実施例1〜3、比較例1〜3
表1に記載の各成分につき、自転公転ミキサーを使用して、常温(25℃)にて攪拌・混合することにより、硬化性組成物を得た。なお、表1に記載された配合量の単位は重量部である。
【0090】
【表1】
【0091】
表1中の略語について説明する。
〔硬化性化合物〕
PG−100 : フルオレン系エポキシ化合物(大阪ガスケミカル(株)製、商品名「PG−100」)
EG−200 : フルオレン系エポキシ化合物(大阪ガスケミカル(株)製、商品名「EG−200」)
827 : ビスフェノールA型エポキシ化合物(三菱化学(株)製、商品名「jER827」)
C1 : 3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート
C2 : 3,4,3',4'−ジエポキシビシクロヘキシル
EA−F5503 : フルオレン系アクリル化合物(大阪ガスケミカル(株)製、商品名「オグソールEA−F5503」)
IRR−214K : 脂環アクリル化合物(ダイセル・サイテック(株)製、商品名「IRR−214K」)
〔熱カチオン重合開始剤〕
SI−100L : 芳香族スルホニウム塩(三新化学工業(株)製、商品名「サンエイドSI−100L)
〔熱ラジカル重合開始剤〕
パーヘキサC : 1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油(株)製、商品名「パーヘキサC」、1分間半減期温度:153.8℃)
〔酸化防止剤〕
IRG1010 : ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート](BASF社製、商品名「IRGANOX1010」)
〔離型剤〕
E−1630 : 3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン(ダイキン工業(株)製、商品名「E−1630」)
【0092】
[硬化物の調製]
以下の手順で硬化物を調製した。
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物につき、インプリント成型機(明昌機工(株)製「NANOIMPRINTER NM−0501」)を使用して、25℃にて塗布(キャスティング)を行った後、プレス軸位置を調整して厚み0.5mmとし、昇温速度20℃/分にて180℃まで昇温した後、180℃にて5分間保持し、80℃まで冷却した後に離型した。得られた硬化物(「一次硬化物」とする)を、予め180℃に熱したオーブンにて30分間加熱した後、硬化物(「二次硬化物」とする)を得た。
【0093】
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物及びその硬化物について、以下の各種測定を行った。
【0094】
[粘度]
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物について、レオメーター(Paar Physica社製「PHYSICA UDS200」)を使用して、温度25℃、回転速度20/秒における粘度(Pa・s)を測定した。
【0095】
[硬化率]
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物について、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製「Q2000」)を使用して、窒素雰囲気下にて、下記の温度条件における硬化発熱量を測定し、これを硬化性組成物の硬化発熱量とした。続いて、上記で得られた一次硬化物につき、同温度条件における硬化発熱量を、一次硬化物の中心部と周辺部(各々、該当箇所を刃物で切り出して取得)において測定し、その平均値を一次硬化物の硬化発熱量とした。そして、硬化率を下記式にて算出した。
温度条件:50℃にて3分間保持した後、昇温速度20℃/分にて250℃まで昇温し、250℃で3分間保持
硬化率(%)={1−(一次硬化物の硬化発熱量)/(硬化性組成物の硬化発熱量)}×100
【0096】
[硬化開始温度]
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物について、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製「Q2000」)を使用して、窒素雰囲気下にて、上述の硬化開始温度測定時の条件で加熱した際の硬化発熱量(反応熱量)を観測した。得られた硬化発熱量のチャートにおいて、硬化発熱の立ち上がり温度(ベースラインからの立ち上がりが開始する温度)を、硬化開始温度として測定した。
【0097】
[内部透過率]
上記で得られた二次硬化物(厚み:0.5mm)の内部透過率を下記式にて算出した。なお、400nmにおける光線透過率(二次硬化物の光線透過率)は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ(株)製「U−3900」)を使用して測定した。下記式におけるnは、400nmにおける屈折率であり、後述の屈折率の測定方法により得た値を使用した。
内部透過率(400nm)(%)=400nmにおける光線透過率(%)/(1−r)
2
r={(n−1)/(n+1)}
2【0098】
[屈折率]
上記で得られた二次硬化物について、JIS K7142に準拠した方法により、屈折率計(メトリコン社製「Model 2010」)を使用して、25℃での589nmにおける屈折率を測定した。
【0099】
[アッベ数]
上記で得られた二次硬化物のアッベ数を、下記式にて算出した。
アッベ数=(nd−1)/(nF−nC)
(式中、ndは589.2nmにおける屈折率、nFは486.1nmにおける屈折率、nCは656.3nmにおける屈折率を示す。なお、屈折率の値としては、前述の屈折率の測定方法を使用し、前記各波長において得られた屈折率の値を使用した。)
【0100】
[体積収縮率]
上記で得られた二次硬化物の体積収縮率(%)は、硬化性組成物の25℃における比重(G1)、及び二次硬化物の比重(G2)を、電子比重計((株)島津製作所製「SD−200L」)を使用して測定した後、下記式にて算出した。
体積収縮率(%)={(G2−G1)/G1×100}
【0101】
[ガラス転移温度]
上記で得られた二次硬化物のガラス転移温度(ガラス転移点)(Tg、℃)は、TMA測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「TMA/SS100」)を使用し、JIS K7197に準拠した方法により、窒素雰囲気下にて、昇温速度5℃/分で、測定温度範囲30〜250℃における熱膨張率を測定した後、ガラス転移点の前及び後の曲線に接線を引き、これら接線の交点から求めた。
【0102】
[線膨張係数]
上記で得られた二次硬化物の線膨張係数は、TMA測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「TMA/SS100」)を使用し、JIS K7197に準拠した方法により、窒素雰囲気下にて、昇温速度5℃/分で、測定温度範囲30〜250℃における熱膨張率を測定した後、ガラス転移点より低温側の直線の勾配をα1、ガラス転移点より高温側の直線の勾配をα2とし、各々を線膨張係数として求めた。
【0103】
[耐熱性試験(リフロー条件下での耐黄変性評価)]
上記で得られた二次硬化物について、卓上リフロー炉(シンアペック社製)を使用して、JEDEC規格記載の温度プロファイルに基づき、最高温度270℃のリフロー条件の耐熱性試験を連続して3回行った後、400nmにおける光線透過率及び400nmにおける屈折率を前述した測定方法により測定し、耐熱性試験後における内部透過率を求めた。耐熱性試験前後の内部透過率から、黄変率(%)を下記式にて算出し、耐熱性を評価した。なお、黄変率が小さいほど、硬化物の耐熱性は良好である。
黄変率(%)={(耐熱性試験前の内部透過率)−(耐熱性試験後の内部透過率)}/(耐熱性試験前の内部透過率)×100
【0104】
得られた結果を表2に示す。
【表2】
【0105】
実施例で得られた硬化性組成物及びその硬化物は、比較例1のようにエステル基を有する脂環エポキシ化合物を使用した場合と比較して、速硬化性(硬化率が高い)及び耐熱性に優れることが認められた。また、比較例2のように、脂環エポキシ基を有する化合物を含まない熱カチオン硬化系においては、硬化が全く認められなかった。さらに、実施例で得られた硬化性組成物及びその硬化物は、比較例3のような熱ラジカル硬化系と比較して、体積収縮率が小さく、形状安定性に優れる傾向が認められた。