【文献】
厚生労働省医薬局審査管理課長,新医薬品の規格及び試験方法の設定について,医薬審発第568号,厚生労働省,2001年5月1日
【文献】
大島寛,結晶多形・擬多形の析出挙動と制御,PHARM STAGE,2007年1月15日,Vol.6,No.10,p.48−53
【文献】
高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,2007年1月15日,Vol.6,No.10,p.20−25
【文献】
山野光久,医薬品のプロセス研究における結晶多形現象への取り組み,有機合成化学協会誌,2007年9月1日,Vol.65,No.9,p.907−913
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウリプリスタール酢酸エステルのイソプロパノール溶媒和結晶を、エタノールと水とを75/25〜85/15の重量割合で含む混合溶媒に溶解し、この溶液を0.1〜1℃/分の冷却速度で徐冷し、ウリプリスタール酢酸エステルを結晶化する工程を含む請求項1記載のウリプリスタール酢酸エステルのC形結晶を製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[ウリプリスタール酢酸エステル物質]
本明細書では、ウリプリスタール酢酸エステル物質とは、多形の混合物又は組成物の形態のウリプリスタール酢酸エステルをいう。本発明によるウリプリスタール酢酸エステル物質は、結晶多形Cを少なくとも含む。いくつかの実施形態において、本発明によるウリプリスタール酢酸エステル物質は、結晶多形Cを少なくとも5重量%含む。重量割合は、ウリプリスタール酢酸エステル物質の総重量に対する割合である。
【0021】
本明細書において、少なくとも5重量%の結晶多形Cは、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%の結晶多形Cを包含する。好ましい実施形態において、結晶多形Cは、本発明のウリプリスタール酢酸エステル物質内に存在するウリプリスタール酢酸エステルの主要な多形である。このことは、本発明のウリプリスタール酢酸エステル物質が、50重量%よりも少なくない量の結晶多形C、好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、さらにより好ましくは少なくとも99.5重量%の結晶多形Cを含むことを意味する。本発明のウリプリスタール酢酸エステル物質中に存在する残りの多形は、無定形ウリプリスタール酢酸エステル又はウリプリスタール酢酸エステルの任意の結晶形であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明のウリプリスタール酢酸エステル物質は、実質的に、本明細書に記載される結晶多形Cからなる。
【0022】
ウリプリスタール酢酸エステル物質は、粉末X線回折スペクトルにおける回折ピークにより特徴付けられる。具体的には、ウリプリスタール酢酸エステル物質は、少なくともウリプリスタール酢酸エステルの結晶多形C(C形結晶)を含んでおり、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも結晶多形Cに由来する回折ピークを有している。
【0023】
結晶多形Cは、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として、少なくとも9.0±0.2°、9.3±0.2°及び15.7±0.2°に回折ピークを有する。これらの回折ピークは、通常、強度の高い順で上位3つの回折ピークである場合が多く、9.3±0.2°での回折ピークが、最も強度の大きい回折ピークであってもよい。好ましい結晶多形Cは、2θで表される回折角度として、9.0±0.2°、9.3±0.2°、10.8±0.2°、11.5±0.2°、12.2±0.2°、13.1±0.2°、14.3±0.2°、15.6±0.2°、15.7±0.2°、15.9±0.2°、16.6±0.2°、17.6±0.2°、17.9±0.2°、18.9±0.2°、19.3±0.2°及び23.8±0.2°に回折ピークを有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明の結晶多形Cは、
図1に表されるか又は表1に記載されるX線回折パターンを示す。
【0025】
なお、粉末X線回折スペクトルは、慣用の方法、好ましくは、Cu K α−1線源を有する回折計を用いて、例えば、後述の実施例の条件で測定できる。回折ピークを示す回折角度2θは、測定条件および試料状態などによって±0.2°(例えば、±0.1°)程度変動する場合がある。しかし、同一の結晶構造であれば、特徴的な回折ピークの数が大きく変化することはなく、ほぼ同一の粉末X線回折パターンを示す。
【0026】
ウリプリスタール酢酸エステル物質は、示差走査熱量スペクトルにおけるピークにより特徴付けられる。具体的には、ウリプリスタール酢酸エステル物質は、示差走査熱量スペクトルにおいて、少なくとも結晶多形Cに由来するピークを有している。
【0027】
結晶多形Cは、示差走査熱量スペクトルにおいて、135〜145℃(例えば、137〜143℃、好ましくは139〜141℃)程度に吸熱ピーク(又は融点)を有する。また、結晶多形Cは、145〜170℃(例えば、160〜167℃、好ましくは163〜165℃)程度に発熱ピークを有していてもよい。この発熱ピークは、結晶多形Aへの転移に起因するピークであると推定される。さらに、結晶多形Cは、180〜192℃、好ましくは183〜190℃程度に吸熱ピークを有していてもよい。この吸熱ピークは、転移した結晶多形Aの融解に起因するピークであると推定される。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明の結晶多形Cは、
図2に示される示差走査熱量スペクトルを有する。
【0029】
本発明のウリプリスタール酢酸エステル物質は、結晶多形Cを含んでいればよく、さらにウリプリスタール酢酸エステルの他の結晶多形(多形結晶)を含んでいてもよい。本発明のウリプリスタール酢酸エステル物質は、さらに、無定形ウリプリスタール酢酸エステル、及び/又は結晶多形Cとは別のウリプリスタール酢酸エステル結晶を含んでいてもよい。他の結晶多形としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、結晶多形Cとは異なる回折角度範囲に回折ピークを有する結晶多形、例えば、
(1)以下の回折角度2θ:9.2±0.2°、11.4±0.2°、11.7±0.2°、12.0±0.2°、15.2±0.2°、17.0±0.2°、17.2±0.2°及び24.4±0.2°に回折ピークを含む粉末X線回折スペクトルを有する結晶多形A(A形結晶)、
(2)以下の回折角度2θ:6.4±0.2°、8.4±0.2°、9.4±0.2°、9.6±0.2°、11.8±0.2°、12.8±0.2°、15.3±0.2°、16.7±0.2°、17.5±0.2°、18.6±0.2°、19.3±0.2°、21.0±0.2°及び25.5±0.2°に回折ピークを含む粉末X線回折スペクトルを有する結晶多形B(B形結晶)などが例示できる。
【0030】
他の結晶多形としては、示差走査熱量スペクトルにおいて、結晶多形Cとは異なる温度範囲に吸熱ピーク(又は融点)を有する結晶多形、例えば、180〜192℃(好ましくは183〜190℃)程度に吸熱ピーク(又は融点)を有する結晶多形A、160〜170℃(例えば、165〜169℃、好ましくは166〜168℃)程度に吸熱ピーク(又は融点)を有する結晶多形Bなども例示できる。
【0031】
例えば、結晶多形Aは、
図3に示されるか若しくは表2に記載される粉末X線回折パターン及び/又は
図4に示される示差走査熱量スペクトルを有していてもよい。結晶多形Bは、
図5に示されるか若しくは表3に記載される粉末X線回折パターン及び/又は
図6に示される示差走査熱量スペクトルを有していてもよい。
【0032】
他の結晶多形は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。他の結晶多形のうち、溶解性の点からは、結晶多形Bが好ましい。
【0033】
結晶多形Cと他の結晶多形(例えば、結晶多形A、結晶多形B)との割合(重量比)は、特に制限されず、前者/後者=0.5/99.5〜99.5/0.5(例えば、1/99〜99/1)程度の範囲から選択でき、例えば、10/90〜99.5/0.5(例えば、20/80〜99.5/0.5)、好ましくは30/70〜99/1(例えば、40/60〜99/1)、さらに好ましくは50/50〜99/1(例えば、60/40〜95/5、好ましくは70/30〜90/10)程度であってもよい。
【0034】
結晶多形Cと他の結晶多形とを含むウリプリスタール酢酸エステル物質(ウリプリスタール酢酸エステル混合物又は混晶)は、各結晶多形に由来する構造特性(粉末X線回折スペクトルにおける回折ピーク、示差走査熱量スペクトルにおける吸熱ピーク)を有する。なお、各結晶多形の回折ピーク(又は吸熱ピーク)の強度比は、各結晶多形の配合割合に対応している場合が多い。
【0035】
なお、ウリプリスタール酢酸エステル物質(又は各結晶多形)は、低分子化合物(又は溶媒)を含有(又は付着)していてもよい。低分子化合物(又は溶媒)としては、薬学的に許容可能である限り特に制限されず、例えば、水、有機溶媒[例えば、脂肪族炭化水素(ヘキサンなど)、芳香族炭化水素(トルエンなど)、アルコール類(エタノール、1−プロパノール、イソプロパノールなどのC
1−4アルカノールなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(ギ酸エステル、酢酸エステルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、環状アミン類(ピリジンなど)など]などが例示できる。これらの低分子化合物(又は溶媒)は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。低分子化合物の含有量(又は付着量)は、ウリプリスタール酢酸エステル(又は各結晶多形)100重量部に対して、例えば、30重量部以下、好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下(例えば、0.001〜1重量部)程度であってもよい。
【0036】
ウリプリスタール酢酸エステル物質(又は各結晶多形)は、単結晶であってもよく、双晶又は多結晶であってもよい。ウリプリスタール酢酸エステル物質(又は各結晶多形)の形態(外形)は、特に制限されず、例えば、三斜晶、単斜晶、斜方晶(直方晶)、正方晶、立方晶、三方晶(菱面体晶)、六方晶などであってもよく、球晶、骸晶、樹皮状晶、針状晶(例えば、ヒゲ結晶)などであってもよい。
【0037】
ウリプリスタール酢酸エステル物質又は結晶多形Cの粒子サイズは、特に制限されず、例えば、レーザー回折法に基づいて、平均粒子サイズ(平均粒子径)が0.5μm〜1mm、好ましくは1〜500μm(例えば、2〜100μm)程度であってもよく、通常、5〜50μm(例えば、5〜30μm)程度である。本発明のウリプリスタール酢酸エステル物質又は結晶多形Cは、微粉化されていてもよい。
【0038】
本発明のウリプリスタール酢酸エステル物質又は結晶多形Cは、溶媒溶解性が高く、バイオアベイラビリティに優れている。例えば、エタノールと水との混合溶媒[エタノール/水(体積比)=10/90]に対するウリプリスタール酢酸エステル物質又は結晶多形Cの溶解度は、37℃において、7〜30μg/mL、好ましくは8〜27μg/mL、さらに好ましくは9〜25μg/mL(例えば、10〜25μg/mL)程度であってもよい。
【0039】
[ウリプリスタール酢酸エステル物質又は結晶多形Cの製造方法]
本発明のウリプリスタール酢酸エステル物質又は結晶多形Cの製造方法は、上記粉末X線回折スペクトル又は示差走査熱量スペクトルで特徴付けられる結晶を得ることができる限り、特に制限されず、例えば、ウリプリスタール酢酸エステルのイソプロパノール溶媒和結晶を、エタノールと水との混合溶媒に溶解し、この溶液(又は晶析系)からウリプリスタール酢酸エステルを結晶化(析出又は沈殿)する工程を含んでいる。
【0040】
ウリプリスタール酢酸エステルのイソプロパノール溶媒和結晶において、イソプロパノールの含有量(イソプロパノール溶媒和率)は、ウリプリスタール酢酸エステル1モルに対して、例えば、0.5〜5モル、好ましくは0.5〜2.5モル、さらに好ましくは0.5〜1モル(例えば、0.5モル)程度であってもよい。
【0041】
なお、ウリプリスタール酢酸エステルのイソプロパノール溶媒和結晶は、慣用の方法、例えば、3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5α−ヒドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オンと、酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸;塩酸、硫酸、硫酸一カリウム、リン酸などの無機酸)とを反応し、この反応混合物[又はこの反応混合物を慣用の精製手段(濾過、遠心分離、クロマトグラフィー、再結晶など)により精製した粗精製物]をイソプロパノールに溶解し、この溶液からウリプリスタール酢酸エステルを結晶化することにより調製できる。なお、確実にイソプロパノール溶媒和結晶を得るため、結晶化工程を複数回(例えば、2〜4回)繰り返すのが好ましい。イソプロパノール溶媒和結晶の作製方法の詳細は、例えば、特表2006−515869号公報などを参照できる。
【0042】
混合溶媒において、エタノールと水との割合(体積比)は、例えば、前者/後者=70/30〜90/10、好ましくは72/28〜88/12、さらに好ましくは75/25〜85/15程度であってもよい。混合溶媒の使用割合は、ウリプリスタール酢酸エステルのイソプロパノール溶媒和結晶1gに対して、例えば、0.5〜50mL、好ましくは1〜20mL、さらに好ましくは5〜15mL程度であってもよい。
【0043】
前記溶液(又は晶析系)からウリプリスタール酢酸エステルを結晶化(再結晶又は晶析)する方法としては、冷却法(晶析系を冷却する方法)、貧溶媒添加法(晶析系にウリプリスタール酢酸エステルの貧溶媒を添加する方法)などが例示できる。好ましい方法は、冷却法である。冷却法において、冷却速度は、特に制限されず、徐冷であってもよく、急冷であってもよい。好ましい冷却速度は、徐冷であり、例えば、0.01〜5℃/分、好ましくは0.05〜3℃/分、さらに好ましくは0.1〜1℃/分程度であってもよい。
【0044】
結晶化に際し、実質的に他の結晶形と混在することなく結晶多形Cを得る点から、ウリプリスタール酢酸エステルのイソプロパノール溶媒和結晶の溶液(又は晶析系)には種結晶を添加しないのが好ましい。
【0045】
ウリプリスタール酢酸エステルの結晶を前記混合溶媒に溶解し、この溶液からウリプリスタール酢酸エステルを結晶化(又は再結晶)する工程は、複数回(例えば、2〜4回)繰り返してもよい。また、結晶化(又は再結晶)後、乾燥(自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥など)してもよく、通常、減圧乾燥[例えば、50hPa以下、好ましくは20hPa以下(例えば、1〜15hPa程度)で乾燥]する場合が多い。乾燥温度は、例えば、室温〜加熱下、好ましくは25〜120℃(例えば、50〜120℃)、さらに好ましくは30〜110℃(例えば、80〜110℃)程度であってもよい。乾燥時間は、例えば、1〜24時間(例えば、5〜24時間)、好ましくは1〜20時間(例えば、10〜20時間)程度であってもよい。
【0046】
上記の工程では、結晶多形Cを単一の形態として調製することができる。
【0047】
ウリプリスタール酢酸エステル物質の調製方法は、以下の工程:
(a)本発明の結晶多形Cを準備する工程、
(b)1又はいくつかのウリプリスタール酢酸エステル結晶多形を準備する工程、及び
(c)結晶多形Cと工程(b)において提供された結晶多形とを混合する工程
を含んでいてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、ウリプリスタール酢酸エステル物質の調製方法は、溶媒と関連させた結晶化又は転移(溶液からの析出、溶液の濃縮、溶媒(分散媒)中での転移)により他の結晶多形を形成し、結晶多形Cと他の結晶多形とを混合する工程を含んでいてもよい。
【0049】
他の結晶多形の形成工程に供する原料ウリプリスタール酢酸エステルとしては、ウリプリスタール酢酸エステルのイソプロパノール溶媒和結晶の作製方法で記載した反応混合物(又はこの反応混合物を慣用の精製手段により精製した粗精製物)などが例示できる。
【0050】
溶媒(又は晶析溶媒)としては、水、有機溶媒[例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素など)、芳香族炭化水素類(トルエンなど)、アルコール類(エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのC
1−4アルカノールなど)、エステル類(ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN−アルキルアシルアミドなど)、ニトリル類(アセトニトリルなどのアルカンニトリルなど)、環状アミン類(ピリジンなど)など]などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。
【0051】
溶媒の割合は、原料ウリプリスタール酢酸エステル1gに対して、例えば、0.1〜500mL、好ましくは0.5〜400mL、さらに好ましくは1〜300mL(例えば、2〜200mL)程度であってもよい。
【0052】
他の結晶多形の形成方法としては、冷却法、貧溶媒添加法、種結晶添加法(溶媒に原料ウリプリスタール酢酸エステルを溶解し、この溶液にウリプリスタール酢酸エステルの種結晶を添加する方法)、蒸発法(溶媒に原料ウリプリスタール酢酸エステルを溶解し、この溶液を濃縮する方法)、攪拌懸濁法(溶媒に分散させた状態で、ウリプリスタール酢酸エステルの結晶形を転移する方法)などが例示できる。
【0053】
他の結晶多形のうち、結晶多形Aは、例えば、ウリプリスタール酢酸エステルのイソプロパノール溶媒和結晶を、エタノールと水との混合溶媒に溶解し、この溶液に種結晶(結晶多形A又はB)を添加して結晶化することにより調製してもよい。また、結晶多形Bは、例えば、原料ウリプリスタール酢酸エステルをエタノールに溶解し、この溶液を冷却(急冷など)することにより調製してもよく、原料ウリプリスタール酢酸エステルを、エタノール、1−プロパノール及び酢酸エチルから選択された少なくとも一種の溶媒に溶解し、この溶液を濃縮することにより調製してもよい。
【0054】
なお、結晶多形Aの製造に用いるエタノールと水との混合溶媒において、エタノールと水との割合(体積比)は、例えば、前者/後者=75/25〜85/15程度であってもよい。
【0055】
[用途および医薬組成物]
本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質は、抗プロゲステロン活性に加えて、抗グルココルチコイド活性を有するため、選択的プロゲステロン受容体調節剤として好適に用いられる。具体的には、本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質は、婦人科疾患[例えば、子宮筋腫又は子宮筋腫に起因する疾患(転移性平滑筋腫、月経困難症、過多月経、貧血、不妊症、便秘、頻尿、腰痛など)など]の予防及び/又は治療に有用である。また、本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質は、避妊剤(例えば、緊急避妊剤)としても有用である。
【0056】
本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質は、例えば、婦人科疾患を治療及び/又は予防するための薬剤としても有用であってもよい。本明細書で用いられるように、婦人科疾患としては、子宮筋腫又は平滑筋腫、子宮内膜症、子宮出血、子宮内膜の脱臼に関連する疼痛などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明はまた、本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質の治療的有効量を女性患者(好ましくは、婦人科疾患患者)に投与することを含む、女性患者を治療するための方法にも関する。
【0058】
本発明のさらなる態様は、避妊を必要とする女性を避妊させる方法であり、この方法は、本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質の避妊に有効な量を女性に投与することを含む。
【0059】
本発明の避妊方法は、本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質の投与が無防備な性交後120時間以内に行われる緊急避妊方法であってもよい。あるいは、避妊方法は、ウリプリスタール酢酸エステルの投与が月経周期内の連続した数日繰り返される通常の避妊方法であってもよい。あるいは、本発明の避妊方法は、WO2010/119029号公報に記載されるオンデマンド避妊方法であってもよく、この文献の開示は、言及することにより本明細書中に組み入れられる。好ましくは、本発明の避妊方法におけるウリプリスタール酢酸エステルの投与は、経口による。
【0060】
本発明はさらに、避妊剤の製造又は婦人科疾患を治療するための薬剤の製造における、本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質の使用に関する。
【0061】
上記のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質は単独で医薬として用いてもよく、担体(薬理学的又は生理学的に許容可能な担体など)と組み合わせて医薬組成物(又は製剤)として用いてもよい。
【0062】
さらなる態様において、本発明は、本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、医薬組成物中に存在するウリプリスタール酢酸エステルの少なくとも5重量%が結晶多形Cであるような組成物である。いくつかのさらなる実施形態において、結晶多形Cは、組成物内に存在するウリプリスタール酢酸エステルの主な結晶形である。このことは、本発明の医薬組成物が、組成物内に存在するウリプリスタール酢酸エステルの総重量に対して、結晶多形Cを50%よりも少なくない量で含んでいてもよいことを意味する。いくつかの実施形態において、結晶多形Cは、組成物内に存在するウリプリスタール酢酸エステルの総重量に対して少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、さらに少なくとも90重量%を占める。
【0063】
医薬組成物は、本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質を0.01重量%〜80重量%、及び賦形剤(単数又は複数)を20重量%〜99.99重量%含んでいてもよい。
【0064】
本発明の医薬組成物において、賦形剤は、医薬組成物(又は製剤)の形態(すなわち、剤形)、投与形態、用途などに応じて、適宜選択される。剤形は特に制限されず、固形製剤(粉剤、散剤、粒剤(顆粒剤、細粒剤など)、丸剤、ピル、錠剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤など)、ドライシロップ剤、坐剤など)、半固形製剤(クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、グミ剤、フィルム状製剤、シート状製剤など)、液剤(溶液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、ローション剤、注射剤、点滴剤など)などであってもよい。また、前記粉剤及び/又は液剤などのスプレー剤、エアゾール剤なども含まれる。なお、カプセル剤は、液体充填カプセルであってもよく、顆粒剤などの固形剤を充填したカプセルであってもよい。また、製剤は凍結乾燥製剤であってもよい。さらに、本発明の製剤は、薬剤の放出速度が制御された製剤(徐放性製剤、速放性製剤)であってもよい。また、製剤は経口投与製剤(顆粒剤、散剤、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠など)、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、ゼリー剤、グミ剤、フィルム製剤など)であってもよく、非経口投与製剤(吸入剤、経皮投与製剤、経鼻投与製剤など)であってもよい。さらに、製剤は局所投与製剤(注射剤(皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤など)、懸濁剤、軟膏剤、貼付剤、パップ剤など)であってもよい。
【0065】
前記賦形剤は、例えば、日本薬局方(局方)の他、(1)医薬品添加物ハンドブック、丸善(株)、(1989)、(2)「医薬品添加物事典2007」(薬事日報社、2007年7月発行)、(3)薬剤学、改訂第5版、(株)南江堂(1997)、及び(4)医薬品添加物規格2003(薬事日報社、2003年8月)などに収載されている成分(例えば、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤など)の中から、投与経路及び製剤用途に応じて選択できる。例えば、固形製剤の賦形剤としては、希釈剤、結合剤および崩壊剤から選択された少なくとも一種の賦形剤を使用する場合が多い。また、医薬組成物は脂質を含んでいてもよい。
【0066】
前記希釈剤としては、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖類又は糖アルコール類;トウモロコシデンプンなどのデンプン;結晶セルロース(微結晶セルロースも含む)などの多糖類;軽質無水ケイ酸などの酸化ケイ素又はケイ酸塩などが例示できる。結合剤としては、アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプンなどの可溶性デンプン;アラビアゴム、デキストリン、アルギン酸ナトリウムなどの多糖類;ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリ乳酸、ポリエチレングリコールなどの合成高分子;メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロースエーテル類などが例示できる。崩壊剤としては、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが例示できる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0067】
前記医薬組成物は、コーティング(又は被覆)された形態であってもよい。前記コーティング剤としては、例えば、糖類、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、オイドラギット(メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などが用いられる。コーティング剤は、セルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体などの腸溶性成分であってもよく、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどの塩基性成分を含むポリマー(オイドラギットなど)で構成された胃溶性成分であってもよい。また、製剤は、これらの腸溶性成分や胃溶性成分を剤皮に含むカプセル剤であってもよい。あるいは、前記医薬組成物は、コーティング錠又は素錠であってもよい。
【0068】
製剤においては、投与経路や剤形などに応じて、公知の添加剤を適宜使用することができる。このような添加剤としては、例えば、滑沢剤、崩壊補助剤、抗酸化剤又は酸化防止剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、溶解剤、溶解補助剤、増粘剤、pH調整剤又は緩衝剤、安定剤、防腐剤又は保存剤、殺菌剤又は抗菌剤、帯電防止剤、矯味剤又はマスキング剤、着色剤、矯臭剤又は香料、清涼化剤、消泡剤、等張化剤、無痛化剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
なお、本発明の医薬組成物(又は医薬製剤)は、必要に応じて、他の生理活性成分又は薬理活性成分(例えば、卵胞ホルモン剤など)を含んでいてもよい。
【0070】
本発明の医薬組成物は、有効成分の他、賦形剤成分、必要により添加剤などを用いて、慣用の製剤化方法、例えば、第十六改正日本薬局方記載の製造法又はこの製造方法に準じた方法により調製できる。
【0071】
前記医薬組成物は、ウリプリスタール酢酸エステルを、投薬単位あたり1mg〜50mg、好ましくは5mg〜40mg、例えば、投薬単位あたり5、10、15、20又は30mg含んでいてもよい。
【0072】
本発明のウリプリスタール酢酸エステル結晶多形C又はウリプリスタール酢酸エステル物質(婦人科疾患の予防及び/又は治療剤、避妊剤、医薬組成物も含む)は、毒性も低く、その安全性も優れており、ヒト及び非ヒト動物、通常、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サルなど)の雌に対して、安全に投与される。投与量は、投与対象の種、年齢、体重、及び状態(一般的状態、病状、合併症の有無など)、投与時間、剤形、投与方法などに応じて、選択できる。例えば、ヒトに対する投与量(1日用量)は、例えば、1〜50mg/日、好ましくは5〜40mg/日程度である。
【0073】
投与方法は、経口投与であってもよく、局所投与又は非経口投与(例えば、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、直腸投与、膣投与など)であってもよい。
【0074】
投与回数は、特に制限されず、例えば、1日1回であってもよく、必要に応じて1日複数回(例えば、2〜3回)であってもよい。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0076】
[粉末X線回折スペクトル]
粉末X線回折スペクトルは、線源:Cu K(α1)、管電圧:40kV、管電流:40mA、サンプリング間隔:0.1°、スキャン速度10°/分の条件で測定した。なお、粉末X線回折チャートにおいて、回折ピークは、ピーク幅の閾値を0.1°として、二次微分法によりサーチした。
【0077】
[示差走査熱量スペクトル]
示差走査熱量スペクトルは、示差走査熱量計(型式:DSC8230L)を用いて、昇温速度2℃/分の条件で測定した。
【0078】
[溶解度]
37℃のエタノールと水との混合溶媒[エタノール/水(体積比)=10/90]40mLに、比較例及び実施例のウリプリスタール酢酸エステルの各試料を40mg加えて試験サンプルを作製し、試験サンプルをマグネティックスターラーで5分間撹拌した後、その一部をとり、固形分を濾別し、ウリプリスタール酢酸エステル含量を高性能液体クロマトグラフィー(カラム:ODS、カラム温度:40℃、溶離液:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液/アセトニトリル混液(体積比3:2)、流量:1.0mL/分、検出:UV302nm)により定量し、溶解度を算出した。
【0079】
[イヌでの吸収試験]
比較例及び実施例のウリプリスタール酢酸エステルを、それぞれ、ゼラチンカプセル(製造元:クオリカプス(株)、サイズ:00号、ロット:C0079A)に充填してカプセル剤を作製した。6頭の雌性イヌにカプセル剤を25mg/kg(ウリプリスタール酢酸エステル換算)の用量で経口投与し、経口投与後0.5、1、2、4、6、24及び48時間に血液を採取し、遠心分離により血漿を得た。LC−MS/MS(液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析)法により、上記血漿中のウリプリスタール酢酸エステル濃度を測定し、血漿中濃度消失半減期(T
1/2)、最高血漿中濃度到達時間(T
max)、最高血漿中濃度(C
max)、血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC:Area Under the Plasma Concentration−time Curve)及び平均滞留時間(MRT)を算出した。なお、雌性イヌには、クロスオーバー法により、カプセル剤を1週間の投与間隔(休薬期間)をおいて2回投与した。
【0080】
比較例
3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5α−ヒドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オン[カルビノールアセテート]38.5gを、窒素雰囲気下、20〜22℃の温度でフラスコに入れ、脱イオン水385mLと硫酸水素カリウム17.91gを加えた。得られた懸濁液を、完全に溶解するまで約4時間攪拌した。反応の終了は、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって確認した。
【0081】
反応液に中性Al
2O
33.85gを加え、30分間攪拌し、懸濁液を濾過して、不溶粒状物を脱イオン水38.5mLで洗浄した。濾液に酢酸エチルを325mL加え、7%(w/v)重炭酸ナトリウム溶液でpHを7.0〜7.2の間に調整した。混合液を15分間放置し、相を分離して水相を廃棄した。得られた有機相に脱イオン水192.5mLを加え、10分間攪拌した後、混合液を15分間放置し、相を分離して水相を廃棄した。
【0082】
得られた有機相を真空濃縮し、粗製ウリプリスタール酢酸エステルの残渣を得て、この残渣にイソプロパノール38.5mLを加えて真空濃縮し、得られた残渣に同量(38.5mL)のイソプロパノールを加えて再び真空濃縮した。得られた固形生成物にイソプロパノール77mLを加え、加熱して溶解した。この溶液を0〜5℃に放冷し、この温度に1時間保持した。得られた懸濁液を濾過し、濾過ケーキを冷イソプロパノールで洗浄し、イソプロパノールヘミソルベート結晶を収率96モル%で得た。
【0083】
イソプロパノールヘミソルベート結晶10gを用いて、特表2006−515869号公報に準じてウリプリスタール酢酸エステルを結晶化し、融点189℃のウリプリスタール酢酸エステルの結晶多形A(A形結晶)7.5gを得た。
【0084】
実施例1
比較例で得られたウリプリスタール酢酸エステル結晶1.761gをイソプロパノール10mLに加熱溶解し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にイソプロパノール9mLを加えて加熱溶解し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にイソプロパノール9mLを加えて加熱溶解し、この溶液を氷水浴中で1時間放置した。得られた析出物をろ取し、ウリプリスタール酢酸エステルイソプロパノールヘミソルベートの湿結晶1.782gを得た。この湿結晶1.782gをエタノールと水との混合溶媒[エタノール/水(体積比)=80/20]17.8mLに加熱溶解し、1時間程度かけて室温に冷却し、室温で17時間攪拌した。得られた析出物をろ取し、温度100℃及び圧力15hPa以下で19時間減圧乾燥し、C形結晶(結晶多形C)1.0gを得た。なお、結晶多形Cの粉末X線回折スペクトルを
図1に示し、示差走査熱量スペクトルを
図2に示す。また、結晶多形Cの各回折角度(格子間隔d値)における回折ピーク強度及び相対強度を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例2
比較例で得られたウリプリスタール酢酸エステル結晶0.1gと、実施例1で得られたC形結晶0.1gとを混合することにより、ウリプリスタール酢酸エステル物質を得た。なお、結晶多形Aの粉末X線回折スペクトルを
図3に示し、示差走査熱量スペクトルを
図4に示す。また、結晶多形Aの各回折角度(格子間隔d値)における回折ピーク強度及び相対強度を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例3
比較例で得られたウリプリスタール酢酸エステル結晶1.3gを、エタノール6.5mLに加熱溶解し、26℃で1時間、次いで4℃で16時間放置した。得られた析出物をろ取し、恒量に達するまで減圧乾燥し、B形結晶(結晶多形B)1.0gを得た。このB形結晶0.1gと、実施例1で得られたC形結晶0.1gとを混合することにより、ウリプリスタール酢酸エステル物質を得た。なお、結晶多形Bの粉末X線回折スペクトルを
図5に示し、示差走査熱量スペクトルを
図6に示す。また、結晶多形Bの各回折角度(格子間隔d値)における回折ピーク強度及び相対強度を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
比較例及び実施例の結果を表4及び表5に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
表4から明らかなように、比較例と比較して実施例1〜3は、溶解度が著しく高く、バイオアベイラビリティに優れている。
【0093】
【表5】
【0094】
表5から明らかなように、比較例と比較して実施例1は、T
max、C
max、AUC
0−t、AUC
0−∞及びMRT
lastのいずれの点においても優れており、生体内に素早く吸収される医薬品として良好な体内動態を示すことが分かる。
【0095】
製剤例1
実施例1で得られたC形結晶を0号カプセルに充填して、カプセル剤を得た。
【0096】
製剤例2
次の処方に従って、実施例1で得られたC形結晶と担体成分とを混合し、この混合物を乾式造粒法により造粒し、この造粒物を整粒することにより、顆粒剤を得た。
【0097】
[処方]
実施例1で得られたC形結晶 300mg
結晶セルロース 590mg
カルボキシメチルスターチナトリウム 50mg
グリセリン脂肪酸エステル 50mg
タルク 10mg
全量 1000mg
【0098】
製剤例3
次の処方に従って、製剤例2で得られた顆粒剤と担体成分を混合して打錠することにより錠剤を得た。
【0099】
[処方]
製剤例2で得られた顆粒剤 100mg
結晶セルロース 174mg
グリセリン脂肪酸エステル 20mg
タルク 4mg
軽質無水ケイ酸 2mg
全量 300mg
【0100】
製剤例4
次の処方のコーティング剤を用いて、製剤例3で得られた錠剤をコーティングすることによりフィルムコーティング錠を得た。
【0101】
[コーティング剤の処方]
ヒプロメロース 70.5重量%
酸化チタン 20.5重量%
プロピレングリコール 6.9重量%
三二酸化鉄 2.1重量%