【実施例】
【0051】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0052】
例1
(1)c面配向アルミナ基板の作製
原料として、板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード00610)を用意した。板状アルミナ粒子100重量部に対し、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)7重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)3.5重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部と、分散媒(2−エチルヘキサノール)を混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが20μmとなるように、シート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後150枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、真空パックを行った。この真空パックを85℃の温水中で、100kgf/cm
2の圧力にて静水圧プレスを行い、円盤状の成形体を得た。
【0053】
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1600℃で4時間、面圧200kgf/cm
2の条件で焼成した。得られた焼結体を熱間当方圧加圧法(HIP)にてアルゴン中1700℃で2時間、ガス圧1500kgf/cm
2の条件で再度焼成した。
【0054】
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは1nmであった。
【0055】
(2)配向アルミナ基板の評価
(配向度の評価)
得られた配向アルミナ基板の配向度を確認するため、XRDにより本実験例における測定対象とする結晶面であるc面の配向度を測定した。XRD装置(株式会社リガク製、RINT−TTR III)を用い、配向アルミナ基板の板面に対してX線を照射したときの2θ=20〜70°の範囲でXRDプロファイルを測定した。c面配向度は、以下の式により算出した。この結果、本実験例におけるc面配向度の値は97%であった。
【数2】
【0056】
(焼結体粒子の粒径評価)
配向アルミナ基板の焼結体粒子について、板面の平均粒径を以下の方法により測定した。得られた配向アルミナ基板の板面を研磨し、1550℃で45分間サーマルエッチングを行った後、走査電子顕微鏡にて画像を撮影した。視野範囲は、得られる画像の対角線に直線を引いた場合に、いずれの直線も10個から30個の粒子と交わるような直線が引けるような視野範囲とした。得られた画像の対角線に引いた2本の直線において、直線が交わる全ての粒子に対し、個々の粒子の内側の線分の長さを平均したものに1.5を乗じた値を板面の平均粒径とした。この結果、板面の平均粒径は100μmであった。
【0057】
(3)発光素子用基板の作製
(3a)種結晶層の成膜
次に、加工した配向アルミナ基板の上に、MOCVD法を用いて、種結晶層を形成した。具体的には、530℃にて低温GaN層を40nm堆積させた後に、1050℃にて厚さ3μmのGaN膜を積層させて種結晶基板を得た。
【0058】
(3b)Naフラックス法によるGaNバッファ層の成膜
上記工程で作製した種結晶基板を、内径80mm、高さ45mmの円筒平底のアルミナ坩堝の底部分に設置し、次いで融液組成物をグローブボックス内で坩堝内に充填した。融液組成物の組成は以下のとおりである。
・金属Ga:60g
・金属Na:60g
【0059】
このアルミナ坩堝を耐熱金属製の容器に入れて密閉した後、結晶育成炉の回転が可能な台上に設置した。窒素雰囲気中で870℃、4.0MPaまで昇温加圧後、10時間保持しつつ溶液を回転することで、撹拌しながら窒化ガリウム結晶をバッファ層として成長させた。結晶成長終了後、3時間かけて室温まで徐冷し、結晶育成炉から育成容器を取り出した。エタノールを用いて、坩堝内に残った融液組成物を除去し、窒化ガリウム結晶が成長した試料を回収した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上に窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.1mmであった。クラックは確認されなかった。
【0060】
こうして得られた配向アルミナ基板上の窒化ガリウム結晶を、基板ごとセラミックスの定盤に固定し、窒化ガリウム結晶の板面を#600及び#2000の砥石によって研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、窒化ガリウム結晶の板面を平滑化した。このとき、砥粒のサイズを3μmから0.1μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。窒化ガリウム結晶板面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。こうして、配向アルミナ基板上に厚み約50μmの窒化ガリウム結晶層を形成した基板を得た。なお、本例では、後述する発光機能層の結晶性を高めるため、このような窒化ガリウムバッファ層を形成したが、目標特性や用途によってはバッファ層自体を省略してもよい。また、窒化ガリウムバッファ層中にゲルマニウム、シリコン、酸素等をドーピングして導電性を持たせた構造としてもよい。
【0061】
(3c)MOCVD法による発光機能層の成膜と断面平均径の評価
MOCVD法を用いて、基板上にn型層として1050℃でSi原子濃度が5×10
18/cm
3になるようにドーピングしたn−GaN層を3μm堆積した。次に活性層として750℃で多重量子井戸層を堆積した。具体的にはInGaNによる2.5nmの井戸層を5層、GaNによる10nmの障壁層を6層にて交互に積層した。次にp型層として950℃でMg原子濃度が1×10
19/cm
3になるようにドーピングしたp−GaNを200nm堆積した。その後、MOCVD装置から取り出し、p型層のMgイオンの活性化処理として、窒素雰囲気中で800℃の熱処理を10分間行い、発光素子用基板を得た。
【0062】
(発光機能層の断面平均径の評価)
成膜した発光機能層の最表面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径を測定するため、発光機能層の表面を走査電子顕微鏡にて画像を撮影した。視野範囲は、得られる画像の対角線に直線を引いた場合に、10個から30個の柱状組織と交わるような直線が引けるような視野範囲とした。得られた画像の対角線に2本の直線を引き、直線が交わる全ての粒子に対し、個々の粒子の内側の線分の長さを平均したものに1.5を乗じた値を、発光機能層の最表面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径とした。この結果、断面平均径は約100μmであった。なお、本例では表面の走査顕微鏡像で明瞭に柱状組織の界面を判別できたが、サーマルエッチングやケミカルエッチングによって界面を際立たせる処理を施した後に上記の評価を行ってもよい。
【0063】
(4)横型発光素子の作製と評価
作製した発光素子用基板の発光機能層側においてフォトリソグラフィープロセスとRIE法とを用い、n型層の一部を露出した。続いて、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、n型層の露出部分に、カソード電極としてのTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、p型層に透光性アノード電極としてNi/Au膜をそれぞれ6nm、12nmの厚みにパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、透光性アノード電極としてのNi/Au膜の上面の一部領域に、アノード電極パッドとなるNi/Au膜をそれぞれ5nm、60nmの厚みにパターニングした。こうして得られたウェハーを切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、横型構造の発光素子を得た。
【0064】
(発光素子の評価)
カソード電極とアノード電極間に通電し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長450nmの発光が確認された。
【0065】
例2
(1)発光素子用基板の作製
(1a)Naフラックス法による種結晶基板上へのGaNバッファ層の成膜
例1の(1)〜(3)と同様にして、配向アルミナ基板上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、融液組成物を下記組成としたこと以外は例1の(3b)と同様にしてGaNバッファ層を成膜した。
・金属Ga:60g
・金属Na:60g
・四塩化ゲルマニウム:1.85g
【0066】
得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にゲルマニウムがドープされた窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.1mmであった。クラックは確認されなかった。その後、例1(3b)と同じ方法を用いて試料を加工し、配向アルミナ基板上に厚み約50μmのゲルマニウムドープ窒化ガリウム結晶層を形成した基板を得た。
【0067】
(体積抵抗率の評価)
ホール効果測定装置を用い、ゲルマニウムドープ窒化ガリウム結晶層の面内の体積抵抗率を測定した。その結果、体積抵抗率は1×10
−2Ω・cmであった。
【0068】
(1b)MOCVD法による発光機能層の成膜と断面平均径の評価
例1の(3c)と同様の方法を用いて、基板上へ発光機能層を形成し、発光素子用基板を得た。また、例1の(3c)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の板面の平均粒径は約100μmであった。
【0069】
(2)縦型発光素子の作製と評価
本例で作製した発光素子用基板に、真空蒸着法を用いて、p型層に反射性アノード電極層としてAg膜を200nmの厚みに堆積した。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。次に、Sn−Agはんだを用いて、p型層上の反射性アノード電極層となるAg膜と、別途用意した50.8mm(2インチ)厚さ280μmのp型Si基板(実装基板)を貼り合わせて、250℃で60秒間リフローすることで接合した。次に、配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去し、ゲルマニウムドープ窒化ガリウムで構成されたGaNバッファ層を露出した。次に、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、GaNバッファ層にカソード電極としてのTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。カソード電極のパターンは、電極が形成されていない箇所から光が取り出せるように開口部を有する形状とした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。こうして得られたウェハーを切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、縦型構造の発光素子を得た。
【0070】
(発光素子の評価)
カソード電極とアノード電極間に通電し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長450nmの発光が確認された。
【0071】
例3
(1)発光素子用基板の作製
(1a)MOCVD法によるp型層の成膜
例1の(1)〜(3)と同様にして、配向アルミナ基板上に厚み約50μmの窒化ガリウム結晶層を形成した基板を得た。次にMOCVD法を用いて、基板上にp型層として950℃でMg原子濃度が1×10
19/cm
3になるようにドーピングしたp−GaNを200nm堆積した。その後、MOCVD装置から取り出し、p型層のMgイオンの活性化処理として、窒素雰囲気中で800℃の熱処理を10分間行った。
【0072】
(1b)RS−MBE法及び水熱法によるn型層の成膜
(1b−1)RS−MBE法による種結晶層の成膜
RS−MBE(ラジカルソース分子線成長)装置にて、金属材料である亜鉛(Zn)とアルミニウム(Al)をクヌーセンセルで照射し、p型層上に供給した。ガス材料である酸素(O)は、RFラジカル発生装置にてそれぞれO
2ガスを原料とし、酸素ラジカルとして供給した。各種原料の純度はZnが7N、O
2が6Nのものを用いた。基板は抵抗加熱ヒーターを用いて700℃に加熱し、膜中のAl濃度が2×10
18/cm
3となり、ZnとO原子濃度の比が1対1となるように各種ガスソースのフラックスを制御しながら厚さ20nmのAlがドープされたn−ZnOからなる種結晶層を成膜した。
【0073】
(1c−2)水熱法によるn型層の成膜
硝酸亜鉛を純水中に0.1Mとなるように溶解させて溶液Aとした。次に1Mのアンモニア水を準備し、溶液Bとした。次に硫酸アルミニウムを純水中に0.1Mとなるように溶解させて溶液Cとした。これらの溶液を容積比で、溶液A:溶液B:溶液C=1:1:0.01となるように混合及び撹拌して、育成用水溶液を得た。
【0074】
種結晶層を成膜した配向アルミナ基板を懸垂させて育成用水溶液中1リットル中に設置した。次に、防水加工を施したセラミックス製ヒーターとマグネチックスターラーを水溶液中に設置し、オートクレーブに入れて270℃で3時間の水熱処理を行い、種結晶層上にZnO層を析出させた。ZnO層が析出した配向アルミナ基板を純水洗浄した後、大気中500℃でアニール処理を行い、厚さ約3μmのAlがドープされたn−ZnO層を形成した。試料中に気孔やクラックは検出されず、テスターにてZnO層の導電性が確認された。また、例1の(3c)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の板面の平均粒径は約100μmであった。
【0075】
(2)横型発光素子の作製と評価
本例で作製した発光素子用基板の発光機能層側においてフォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、n型層層にカソード電極としてTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。カソード電極のパターンは、電極が形成されていない箇所から光が取り出せるように開口部を有する形状とした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスとRIE法とを用い、p型層の一部を露出させた。続いて、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、p型層の露出部分に、アノード電極としてのNi/Au膜をそれぞれ5nm、100nmの厚みにパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。こうして得られたウェハーを切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、横型構造の発光素子を得た。
【0076】
(発光素子の評価)
アノード電極とカソード電極間に通電し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長約380nmの発光が確認された。
【0077】
例4
(1)発光素子用基板の作製
(1a)MOCVD法によるp型層層の成膜
例1の(1)〜(3)と同様にして、配向アルミナ基板上に厚み約50μmの窒化ガリウム結晶層を形成した基板を得た。次にMOCVD法を用いて、基板上にp型層層として950℃でMg原子濃度が1×10
19/cm
3になるようにドーピングしたp−GaNを200nm堆積した。その後、MOCVD装置から取り出し、p型層のMgイオンの活性化処理として、窒素雰囲気中で800℃の熱処理を10分間行った。
【0078】
(1b)RS−MBE法による活性層の成膜
RS−MBE(ラジカルソース分子線成長)装置にて、金属材料である亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)をクヌーセンセルで照射し、p型層上に供給した。ガス材料である酸素(O)は、RFラジカル発生装置にてそれぞれO
2ガスを原料とし、酸素ラジカルとして供給した。各種原料の純度はZn、Cdが7N、O
2が6Nのものを用いた。基板は抵抗加熱ヒーターを用いて700℃に加熱し、Cd
0.2Zn
0.8O層となるように各種ガスソースのフラックスを制御しながら厚さ1.5nmの活性層を成膜した。
【0079】
(1c)RFマグネトロンスパッタリング法によるn型層の成膜
次にRFマグネトロンスパッタ法を用いて、活性層上にn型層としてn−ZnO層を500nm成膜した。成膜にはAlが2重量部添加されたZnOターゲットを使用し、成膜条件は純Ar雰囲気、圧力0.5Pa、投入電力150W、成膜時間5分間とした。また、例1の(3c)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の板面の平均粒径は約100μmであった。
【0080】
(2)横型発光素子の作製と評価
本例で作製した発光素子用基板の発光機能層側においてフォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、n型層にカソード電極としてTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。カソード電極のパターンは、電極が形成されていない箇所から光が取り出せるように開口部を有する形状とした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスとRIE法とを用い、p型層の一部を露出した。続いて、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、p型層の露出部分に、アノード電極としてのNi/Au膜をそれぞれ5nm、60nmの厚みにパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。こうして得られたウェハーを切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、横型構造の発光素子を得た。
【0081】
(発光素子の評価)
アノード電極とカソード電極間に通電し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長約400nmの発光が確認された。
例5
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
例1の(1)と同様にして円盤状の成形体を得た。得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1700℃で4時間、面圧200kgf/cm
2の条件で焼成した。
【0082】
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は99%、平均粒径は18μmであった。
【0083】
(2)Naフラックス法によるGaNバッファ層の成膜
例1の(3a)と同様の方法で配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を20時間とした以外は例2(1a)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.2mmであった。クラックは確認されなかった。その後、例1(3b)と同じ方法を用いて試料を加工し、配向アルミナ基板上に厚み約50μmのゲルマニウムドープ窒化ガリウム結晶からなるバッファ層を形成した基板を得た。窒化ガリウム結晶板面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
【0084】
(GeドープGaNバッファ層の断面EBSD測定)
こうして得られた試料を切断して板面と垂直方向の面を露出させ、CP研磨機(日本電子株式会社製、IB−09010CP)を用いて研磨した後、電子線後方散乱回折装置(EBSD)(TSLソリューションズ製)にてGaNバッファ層の逆極点図方位マッピングを実施した。
図5に逆極点図方位マッピングを示す。また、
図6に板面(表面)で測定した逆極点図方位マッピングを、
図7に配向アルミナ基板と窒化ガリウム結晶(バッファ層)の界面を拡大した結晶粒マッピング像を示す。
図5より、窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径大きい大粒径化層であり、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かる。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かる。
図6より、窒化ガリウム結晶を構成する各粒子は概ねc面が法線方向に配向していることが示される。また、
図7より、下地となる配向アルミナ基板を構成する結晶粒子を起点として窒化ガリウム結晶の粒子が成長していることが分かる。
図5のような成長挙動となる原因は不明だが、
図8に概念的に示されるように、成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進行したためではないかと考えられる。したがって、窒化ガリウム結晶を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
【0085】
次に、走査電子顕微鏡にてCP研磨したGaNバッファ層の表面付近及び裏面付近を観察した。観測視野は、構成するバッファ層のGaN粒子が10個から30個となるような範囲とした。得られた画像の界面部分における個々のGaN粒子の内側の線分の長さを平均したものに1.5を乗じた値を、表面側ないし裏面側におけるGaN単結晶粒子の断面平均径とした。その結果、表面の断面平均径は約50μm、裏面の断面平均径は約18μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、この大粒径化層の裏面の断面平均径D
Bに対する表面の断面平均径D
Tの比D
T/D
Bは約2.8となった。また、配向多結晶アルミナ焼結体基板と反対側の面を構成している断面平均径D
Tに対する、前記大粒径化層の厚さTの比として規定されるアスペクト比T/D
Tは約1.0であった。なお、サーマルエッチングやケミカルエッチングによって界面を際立たせる処理を施した後に上記の評価を行ってもよい。例2の(1a)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率は1×10
−2Ω・cmであった。
【0086】
(3)縦型発光素子の作製と評価
例1の(3c)と同様の方法を用いて、バッファ層を成膜した基板上へ発光機能層を形成し、発光素子用基板を得た。また、例1の(3c)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の板面の平均粒径は約50μmであった。また、例2(2)と同様の方法を用いて縦型構造の発光素子を作製し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長450nmの発光が確認された。
【0087】
参考のため、上述した(1)及び(2)と同様にして作製したバッファ層の表面側を研削し、厚さ20μmとした窒化ガリウムバッファ層も準備した。このときの最表面における単結晶粒子の断面平均径は約35μmであり、裏面の断面平均径D
Bに対する表面の断面平均径D
Tの比D
T/D
Bは1.9、アスペクト比T/D
Tは約0.6であった。この試料を用いて上記と同様の発光機能層を作製し、縦型の発光素子とした後に順方向に電流を流したところ、整流性、波長450nmの発光共に確認され、発光輝度もある程度高かったが、上記の素子より発光輝度は低下した。
【0088】
例6
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
原料として、板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード02025)、微細アルミナ粉末(大明化学工業株式会社製、グレードTM−DAR)、及び酸化マグネシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社、グレード500A)を用意し、板状アルミナ粉末5重量部、微細アルミナ粉末95重量部、酸化マグネシウム粉末0.025重量部を混合してアルミナ原料を得た。次に、アルミナ原料100重量部に対し、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)8重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部と、分散媒(キシレンと1−ブタノールを重量比1:1で混合したもの)を混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが100μmとなるように、シート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後30枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、真空パックを行った。この真空パックを85℃の温水中で、100kgf/cm
2の圧力にて静水圧プレスを行い、円盤状の成形体を得た。
【0089】
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1800℃で4時間、面圧200kgf/cm
2の条件で焼成した。
【0090】
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は96%、平均粒径は約20μmであった。
【0091】
(2)Naフラックス法によるGaNバッファ層の成膜
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を40時間とした以外は例2の(1a)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.4mmであった。クラックは確認されなかった。
【0092】
その後、例1の(3b)と同じ方法を用いて試料を加工し、配向アルミナ基板上に厚み約260μmのゲルマニウムドープ窒化ガリウム結晶からなるバッファ層を形成した基板を得た。窒化ガリウム結晶板面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
【0093】
(GeドープGaNバッファ層の断面EBSD測定)
次に、例5と同様の方法を用いてGaNバッファ層の断面の逆極点図方位マッピングを実施したところ、窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径大きい大粒径化層であり、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、
図8で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、大粒径化層を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側(配向アルミナ基板と反対側)に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側(配向アルミナ基板側)に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
【0094】
次に、例5と同様の方法にてGaNバッファ層の表面付近及び裏面付近を観察した。その結果、表面の断面平均径は約220μm、裏面の断面平均径は約20μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、本大粒径化層の裏面の断面平均径D
Bに対する表面の断面平均径D
Tの比D
T/D
Bは約11.0となった。また、配向多結晶アルミナ焼結体基板と反対側の面を構成している断面平均径D
Tに対する、前記大粒径化層の厚さTの比として規定されるアスペクト比T/D
Tは約1.2であった。なお、サーマルエッチングやケミカルエッチングによって界面を際立たせる処理を施した後に上記の評価を行ってもよい。例2の(1a)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率は1×10
−2Ω・cmであった。
【0095】
(3)縦型発光素子の作製と評価
例1の(3c)と同様の方法を用いて、バッファ層を成膜した基板上へ発光機能層を形成し、発光素子用基板を得た。また、例1の(3c)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の板面の平均粒径は約220μmであった。また、例2(2)と同様の方法を用いて縦型構造の発光素子を作製し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長450nmの発光が確認された。しかし、発光輝度はある程度高かったが、例5より弱いことが分かった。
【0096】
例7
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
ホットプレスでの焼成温度を1750℃とした以外は例6と同様にしてc面配向アルミナ基板を作製した。得られた焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は96%、平均粒径は14μmであった。
【0097】
(2)Naフラックス法によるGaNバッファ層の成膜
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を30時間とした以外は例2の(1a)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.3mmであった。クラックは確認されなかった。
【0098】
その後、例1(3b)と同じ方法を用いて試料を加工し、配向アルミナ基板上に厚み約90μmのゲルマニウムドープ窒化ガリウム結晶からなるバッファ層を形成した基板を得た(例7−1)。窒化ガリウム結晶板面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
【0099】
また、上記と同様にしてGeドープ窒化ガリウム結晶を作製し、その板面(表面)を#600及び#2000の砥石を用いて研削して、窒化ガリウム結晶からなるバッファ層の厚みが70、50、30、20μmとなる試料(例7−2〜例7−5)をそれぞれ作製し、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化した。各試料加工後の表面の平均粗さRaはいずれも0.2nmであった。
【0100】
(GeドープGaNバッファ層の断面EBSD測定)
次に、例5及び6と同様の方法を用いて、各試料のGaNバッファ層の断面の逆極点図方位マッピングを実施したところ、いずれも窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径大きい大粒径化層であり、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、
図8で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、大粒径化層を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側(配向アルミナ基板と反対側)に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側(配向アルミナ基板側)に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
【0101】
次に、例5及び6と同様の方法にてGaNバッファ層の表面付近及び裏面付近を観察した。バッファ層の厚みと表面の断面平均径(D
T)、裏面の断面平均径(D
B)、及び本大粒径化層の裏面の断面平均径D
Bに対する表面の断面平均径D
Tの比D
T/D
B、及び配向多結晶アルミナ焼結体基板と反対側の面を構成している断面平均径D
Tに対する、前記大粒径化層の厚さTの比として規定されるアスペクト比T/D
Tは表1のとおりであった。また、例2の(1a)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、いずれの試料も体積抵抗率は1×10
−2Ω・cmであった。
【0102】
【表1】
【0103】
(3)縦型発光素子の作製と評価
例1の(3c)と同様の方法を用いて、基板上へ発光機能層を形成し、発光素子用基板を得た。例1の(3c)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果を表1に示す。また、例2(2)と同様の方法を用いて縦型構造の発光素子を作製した結果、いずれの試料もI−V測定より整流性が確認され、順方向の通電により波長450nmの発光が確認された。発光輝度はいずれもある程度高かったが、例7−1>例7−2>例7−3>例7−4>例7−5の関係であった。
【0104】
例8
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
原料として、板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード02025)、微細アルミナ粉末(大明化学工業株式会社製、グレードTM−DAR)、フッ化アルミニウム(関東化学製)、及び酸化マグネシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社、グレード500A)を用意し、板状アルミナ粉末5重量部、微細アルミナ粉末95重量部、フッ化アルミニウム粉末0.05重量部、酸化マグネシウム粉末0.025重量部を混合してアルミナ原料を得た。次に、アルミナ原料100重量部に対し、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)8重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部と、分散媒(キシレンと1−ブタノールを重量比1:1で混合したもの)を混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが100μmとなるように、シート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後30枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、真空パックを行った。この真空パックを85℃の温水中で、100kgf/cm
2の圧力にて静水圧プレスを行い、円盤状の成形体を得た。
【0105】
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1800℃で4時間、面圧200kgf/cm
2の条件で焼成した。
【0106】
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は92%、平均粒径は約64μmであった。
【0107】
(2)Naフラックス法によるGaNバッファ層の成膜
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を30時間とした以外は例2の(1a)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.3mmであった。クラックは確認されなかった。
【0108】
その後、例1(3b)と同じ方法を用いて試料を加工し、配向アルミナ基板上に厚み約90μmのゲルマニウムドープ窒化ガリウム結晶からなるバッファ層を形成した基板を得た。窒化ガリウム結晶板面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
【0109】
(GeドープGaNバッファ層の断面EBSD測定)
次に、例5〜7と同様の方法を用いて、各試料のGaNバッファ層の断面の逆極点図方位マッピングを実施したところ、いずれも窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径大きい大粒径化層であり、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、
図8で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、大粒径化層を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側(配向アルミナ基板と反対側)に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側(配向アルミナ基板側)に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
【0110】
次に、例5〜7と同様の方法にてGaNバッファ層の表面付近及び裏面付近を観察した。その結果、表面の断面平均径は約80μm、裏面の断面平均径は約64μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、本大粒径化層の裏面の断面平均径D
Bに対する表面の断面平均径D
Tの比D
T/D
Bは約1.3となった。また、配向多結晶アルミナ焼結体基板と反対側の面を構成している断面平均径D
Tに対する、前記大粒径化層の厚さTの比として規定されるアスペクト比T/D
Tは約1.1であった。なお、サーマルエッチングやケミカルエッチングによって界面を際立たせる処理を施した後に上記の評価を行ってもよい。例2の(1a)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率は1×10
−2Ω・cmであった。
【0111】
(3)縦型発光素子の作製と評価
例1の(3c)と同様の方法を用いて、基板上へ発光機能層を形成し、発光素子用基板を得た。また、例1の(3c)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の板面の平均粒径は約80μmであった。また、例2(2)と同様の方法を用いて縦型構造の発光素子を作製し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長450nmの発光が確認された。
【0112】
例9
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
フッ化アルミニウム粉末の量を0.02重量部とした以外は例8と同様にしてc面配向アルミナ基板を作製した。このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は94%、平均粒径は41μmであった。
【0113】
(2)Naフラックス法によるGaNバッファ層の成膜と縦型発光素子の作製
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を30時間とした以外は例2の(1a)と同様にしてゲルマニウムドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.3mmであった。クラックは確認されなかった。
【0114】
その後、例1(3b)と同じ方法を用いて試料を加工し、配向アルミナ基板上に厚み約140μmのゲルマニウムドープ窒化ガリウム結晶からなるバッファ層を形成した基板を得た。窒化ガリウム結晶板面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
【0115】
次に、例1の(3c)と同様の方法を用いて、発光素子用基板を得た。また、例1の(3c)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の板面の平均粒径は約81μmであった。
【0116】
こうして得られた発光素子用基板に真空蒸着法を用いて、p型層に反射性アノード電極層としてAg膜を200nmの厚みに堆積した。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。次に、Sn−Agはんだを用いて、p型層上の反射性アノード電極層となるAg膜と、別途用意した50.8mm(2インチ)厚さ280μmのp型Si基板(実装基板)を貼り合わせて、250℃で60秒間リフローすることで接合した。次に、配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去し、GaNバッファ層を露出した。更にGaNバッファ層を約80μm研削加工により薄肉化し、バッファ層の厚みを60μmとした。露出したバッファ層を#600及び#2000の砥石によって研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、バッファ層の板面を平滑化した。このとき、砥粒のサイズを3μmから0.1μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。GaNバッファ層の板面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。次に、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、GaNバッファ層にカソード電極としてのTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。カソード電極のパターンは、電極が形成されていない箇所から光が取り出せるように開口部を有する形状とした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。こうして得られたウェハーを切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、縦型構造の発光素子を得た。
【0117】
(GeドープGaNバッファ層の断面EBSD測定)
上記と同様の方法で別途作製した縦型発光素子を切断して板面と垂直方向の面を露出させ、CP研磨機(日本電子株式会社製、IB−09010CP)を用いて研磨した後、電子線後方散乱回折装置(EBSD)(TSLソリューションズ製)にてGaNバッファ層の逆極点図方位マッピングを実施した。その結果、GaNバッファ層は発光機能層側(表面側)の方が粒径大きい大粒径化層であり、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、
図8で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、大粒径化層を構成する窒化ガリウム粒子のうち、発光機能層側(表面側)の界面に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、カソード電極側(裏面側)に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
【0118】
次に、例5〜8と同様の方法にてGaNバッファ層の発光機能層が形成されている表面付近及びカソード電極が形成されている裏面付近を観察した。その結果、表面の断面平均径は約81μm、裏面の断面平均径は約61μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、本大粒径化層の裏面の断面平均径D
Bに対する表面の断面平均径D
Tの比D
T/D
Bは約1.3となった。また、配向多結晶アルミナ焼結体基板と反対側の面を構成している断面平均径D
Tに対する、前記大粒径化層の厚さTの比として規定されるアスペクト比T/D
Tは約0.7であった。なお、サーマルエッチングやケミカルエッチングによって界面を際立たせる処理を施した後に上記の評価を行ってもよい。
【0119】
(3)縦型発光素子の評価
例2(2)と同様の方法を用いてI−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長450nmの発光が確認された。しかし、発光輝度はある程度高かったが、例8より弱いことが分かった。
【0120】
例10
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
原料として、板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード10030)、微細アルミナ粉末(大明化学工業株式会社製、グレードTM−DAR)、及び酸化マグネシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社、グレード500A)を用意し、板状アルミナ粉末5重量部、微細アルミナ粉末95重量部、酸化マグネシウム粉末0.025重量部を混合してアルミナ原料を得た。次に、アルミナ原料100重量部に対し、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)8重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部と、分散媒(キシレンと1−ブタノールを重量比1:1で混合したもの)を混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが100μmとなるように、シート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後30枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、真空パックを行った。この真空パックを85℃の温水中で、100kgf/cm
2の圧力にて静水圧プレスを行い、円盤状の成形体を得た。
【0121】
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1800℃で4時間、面圧200kgf/cm
2の条件で焼成した。
【0122】
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は99%、平均粒径は約24μmであった。
【0123】
(2)Naフラックス法によるGaNバッファ層の成膜と縦型発光素子の作製
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を30時間とした以外は例2の(1a)と同様にしてゲルマニウムドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.3mmであった。クラックは確認されなかった。
【0124】
その後、例1(3b)と同じ方法を用いて試料を加工し、配向アルミナ基板上に厚み約130μmのゲルマニウムドープ窒化ガリウム結晶からなるバッファ層を形成した基板を得た。窒化ガリウム結晶板面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
【0125】
次に、例1の(3c)と同様の方法を用いて、発光素子用基板を得た。また、例1の(3c)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の板面の平均粒径は約75μmであった。
【0126】
こうして得られた発光素子用基板に真空蒸着法を用いて、p型層に反射性アノード電極層としてAg膜を200nmの厚みに堆積した。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。次に、Sn−Agはんだを用いて、p型層上の反射性アノード電極層となるAg膜と、別途用意した50.8mm(2インチ)厚さ280μmのp型Si基板(実装基板)を貼り合わせて、250℃で60秒間リフローすることで接合した。次に、配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去し、GaNバッファ層を露出した。更にGaNバッファ層を約90μm研削加工により薄肉化し、バッファ層の厚みを40μmとした。露出したバッファ層を#600及び#2000の砥石によって研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、バッファ層の板面を平滑化した。このとき、砥粒のサイズを3μmから0.1μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。GaNバッファ層の板面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。次に、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、GaNバッファ層にカソード電極としてのTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。カソード電極のパターンは、電極が形成されていない箇所から光が取り出せるように開口部を有する形状とした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。こうして得られたウェハーを切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、縦型構造の発光素子を得た。
【0127】
(GeドープGaNバッファ層の断面EBSD測定)
上記と同様の方法で別途作製した縦型発光素子を切断して板面と垂直方向の面を露出させ、CP研磨機(日本電子株式会社製、IB−09010CP)を用いて研磨した後、電子線後方散乱回折装置(EBSD)(TSLソリューションズ製)にてGaNバッファ層の逆極点図方位マッピングを実施した。その結果、GaNバッファ層は発光機能層側(表面側)の方が粒径大きい大粒径化層であり、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、
図8で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、大粒径化層を構成する窒化ガリウム粒子のうち、発光機能層側(表面側)の界面に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、カソード電極側(裏面側)に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
【0128】
次に、例5〜9と同様の方法にてGaNバッファ層の発光機能層が形成されている表面付近及びカソード電極が形成されている裏面付近を観察した。その結果、表面の断面平均径は約75μm、裏面の断面平均径は約60μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、本大粒径化層の裏面の断面平均径D
Bに対する表面の断面平均径D
Tの比D
T/D
Bは約1.3となった。また、配向多結晶アルミナ焼結体基板と反対側の面を構成している断面平均径D
Tに対する、前記大粒径化層の厚さTの比として規定されるアスペクト比T/D
Tは約0.5であった。なお、サーマルエッチングやケミカルエッチングによって界面を際立たせる処理を施した後に上記の評価を行ってもよい。
【0129】
(3)縦型発光素子の評価
例2(2)と同様の方法を用いてI−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長450nmの発光が確認された。しかし、発光輝度はある程度高かったが、例9より弱いことが分かった。