特許第6474740号(P6474740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474740
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】視野計
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/024 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   A61B3/02 F
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-562807(P2015-562807)
(86)(22)【出願日】2015年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2015053482
(87)【国際公開番号】WO2015122376
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-24284(P2014-24284)
(32)【優先日】2014年2月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】島田 賢
(72)【発明者】
【氏名】原 拓也
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−132502(JP,A)
【文献】 特開2007−195787(JP,A)
【文献】 特開2011−206105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に所定の固視点を固視させた状態で視野を検査する視野計において、
視野検査を行いたい領域を“検査領域”とし、視野検査を行う時間の上限を“上限時間”とし、視標を呈示する領域を“視標呈示領域”とし、該視標呈示領域にて視標を呈示する箇所を“視標呈示箇所”とした場合に、
過去の視野検査の結果を示す画像(以下、“視野検査結果画像”とする)又は眼底画像(以下、これらの画像を“指定用画像”と総称する)を表示すると共に該指定用画像上で前記検査領域を指定できるように構成された検査領域指定手段と、
該指定された検査領域に基づいて前記視標呈示領域を決定する視標呈示領域決定手段と、
該視標呈示領域における視標呈示箇所の総数又は前記上限時間(以下、“上限条件”と総称する)を設定するための上限条件設定手段と、
該上限条件以下の条件で視野検査が終了するように各視標呈示箇所の位置を決定する視標呈示位置決定手段と、
該視標呈示位置決定手段により決定された各位置に所定の輝度の視標を順次呈示する視標呈示手段と、
呈示される視標を視認した被検者により操作される操作手段と、
前記視標呈示手段及び前記操作手段からの信号に基づき検査結果を判定する検査結果判定手段と、
を備えたことを特徴とする視野計。
【請求項2】
前記視標呈示手段は、各視標呈示箇所にて輝度を段階的に変化させながら視標を複数回呈示するように構成され、
前記視標呈示位置決定手段は、前記上限条件設定手段により前記上限時間が設定された場合には前記視標呈示箇所の総数と位置を決定し、前記上限条件設定手段により視標呈示箇所の総数が設定された場合には各視標呈示箇所の位置を決定するように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の視野計。
【請求項3】
前記視標呈示領域決定手段は、前記指定用画像中において前記検査領域が占める面積又は長さについての割合(以下、“検査領域占有率”とする)が所定の基準値以上である場合(以下、“第1の状態”とする)には前記検査領域が前記視標呈示領域であると決定し、該検査領域占有率が該所定の基準値未満である場合(以下、“第2の状態”とする)には前記検査領域から上下方向や斜め方向や左右方向に離れた領域(以下、“離間領域”とする)及び前記検査領域の両方を前記視標呈示領域と決定するように構成され、
前記視標呈示手段は、前記第1の状態である場合には前記検査領域中に視標を呈示し、前記第2の状態である場合には前記離間領域及び前記検査領域の両方に視標を呈示するように構成された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の視野計。
【請求項4】
前記視標呈示位置決定手段は、前記第2の状態である場合には“前記検査領域における視標呈示箇所の総数”が“前記離間領域における視標呈示箇所の総数”よりも多くなるように視標呈示箇所を決定するように構成された、
ことを特徴とする請求項3に記載の視野計。
【請求項5】
前記検査領域指定手段は、前記視野検査結果画像を表示すると共に該視野検査結果画像上で前記検査領域を指定できるように構成され、
前記視標呈示位置決定手段は、過去の視野検査における視標呈示箇所の少なくとも1つを、今回の視野検査における視標呈示箇所として決定するように構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の視野計。
【請求項6】
視野検査中に前記視標呈示手段及び前記操作手段からの信号に基づいて検査の進行状況を確認する進行状況確認手段と、
全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間内に終了するか否かの予測を、前記進行状況確認手段が確認した進行状況に基づいて行う終了時間予測手段と、
全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間内に終了しないと前記終了時間予測手段が予測した場合に一部の視標呈示箇所についての視標呈示を行わないように前記視標呈示手段を制御する視標呈示制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の視野計。
【請求項7】
前記視標呈示位置決定手段は、各視標呈示箇所に優先順位を付加するように構成され
前記視標呈示制御手段は、優先順位の低い箇所についての視標呈示を省略するように構成された、
ことを特徴とする請求項6に記載の視野計。
【請求項8】
視野検査中に前記視標呈示手段及び前記操作手段からの信号に基づいて検査の進行状況を確認する進行状況確認手段と、
全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間内に終了するか否かの予測を、前記進行状況確認手段が確認した進行状況に基づいて行う終了時間予測手段と、
全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間内に終了しないと前記終了時間予測手段が予測した場合に一部の視標呈示箇所についての視標呈示を行わないように前記視標呈示手段を制御する視標呈示制御手段と、
を備え、
前記視標呈示領域決定手段は、前記指定用画像中において前記検査領域が占める面積又は長さについての割合(以下、“検査領域占有率”とする)が所定の基準値以上である場合(以下、“第1の状態”とする)には前記検査領域が前記視標呈示領域であると決定し、該検査領域占有率が該所定の基準値未満である場合(以下、“第2の状態”とする)には前記検査領域から上下方向や斜め方向や左右方向に離れた領域(以下、“離間領域”とする)及び前記検査領域の両方を前記視標呈示領域と決定するように構成され、
前記視標呈示手段は、前記第1の状態である場合には前記検査領域中に視標を呈示し、前記第2の状態である場合には前記離間領域及び前記検査領域の両方に視標を呈示するように構成され、
前記視標呈示制御手段は、全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間内に終了しないと前記終了時間予測手段が予測した場合であって、かつ前記第2の状態である場合には、前記離間領域における一部の視標呈示箇所についての視標呈示を行わないように前記視標呈示手段を制御するように構成された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の視野計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者に所定の固視点を固視させた状態で視野を検査する視野計に係り、詳しくは、検査を行いたい領域を指定できるように構成された視野計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑内障等の眼疾患を発見するために視野計が用いられているが、視野全体について視野検査を行う場合には検査に時間が掛かってしまい、患者への負担も大きくなるという問題があった。
【0003】
そこで、視野検査を行いたい領域を眼底画像上で指定でき、該領域について視野検査を行うように構成された視野計が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
図7は、領域を指定する様子の一例を模式的に示す模式図であり、図中の符号Aは、眼底画像を示し、符号Bは、指定した領域を示している。
【0005】
このような視野計によれば、視野測定をすべき領域を指定して該領域についてのみ視野測定をできるので、視野の全体について視野検査を行う場合に比べて、検査時間を短くでき、検者や被検者の負担を軽減することができ、視野障害を効率良く検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−054804号公報
【特許文献2】特開2000−262472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、視野の全体について視野検査を行う場合に比べて検査時間を短くできると言っても、検査が終了するまで被検者は固視点を固視しながら集中力を維持しなければならず、負担が大きかった。特に、上記のような検査(つまり、領域を指定して行うような検査)は、病変部を発見する可能性が高い検査であって高い精度で行われることが望まれるので、被検者への負担をできるだけ軽減して被検者の集中力が維持されるようにすることが好ましい。
【0008】
本発明は、上述の問題を解消することのできる視野計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、図1に例示するものであって、被検者に所定の固視点を固視させた状態で視野を検査する視野計(1)において、
視野検査を行いたい領域(図2の符号B、図3(a) 〜(c) 及び図4の符号B1〜B3参照。)を“検査領域”とし、視野検査を行う時間の上限(Tmax)を“上限時間”とし、視標を呈示する領域(図3(a) 〜(c) の符号E1〜E3参照)を“視標呈示領域”とし、該視標呈示領域にて視標を呈示する箇所(図4の符号P,…参照)を“視標呈示箇所”とした場合に、
過去の視野検査の結果を示す画像又は眼底画像(以下、これらの画像を“指定用画像”と総称する。図2図3(a) 〜(c) 及び図4の符号A参照)を表示すると共に該指定用画像(A)上で前記検査領域を指定できるように構成された検査領域指定手段(2)と、 該指定された検査領域(B,B1〜B3)に基づいて前記視標呈示領域(E1〜E3)を決定する視標呈示領域決定手段(3)と、
該視標呈示領域における視標呈示箇所(P,…)の総数又は前記上限時間(Tmax)(以下、“上限条件”と総称する)を設定するための上限条件設定手段(4)と、
該上限条件(Tmax)以下の条件で視野検査が終了するように各視標呈示箇所の位置を決定する視標呈示位置決定手段(5)と、
該視標呈示位置決定手段(5)により決定された各位置に所定の輝度の視標を順次呈示する視標呈示手段(6)と、
呈示される視標を視認した被検者により操作される操作手段(7)と、
前記視標呈示手段(6)及び前記操作手段(7)からの信号に基づき検査結果を判定する検査結果判定手段(8)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記視標呈示手段(6)が、各視標呈示箇所にて輝度を段階的に変化させながら視標を複数回呈示するように構成され、
前記視標呈示位置決定手段(5)は、前記上限条件設定手段(4)により前記上限時間(Tmax)が設定された場合には前記視標呈示箇所の総数と位置を決定し、前記上限条件設定手段(4)により視標呈示箇所の総数が設定された場合には各視標呈示箇所の位置を決定するように構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記視標呈示領域決定手段(3)は、前記指定用画像(A)中において前記検査領域が占める面積又は長さについての割合(以下、“検査領域占有率”とする)が所定の基準値以上である場合(図3(a) 参照。以下、“第1の状態”とする)には前記検査領域(B1)が前記視標呈示領域(E1)であると決定し、該検査領域占有率が該所定の基準値未満である場合(図3(b) 参照。以下、“第2の状態”とする)には前記検査領域(B2)から上下方向や斜め方向や左右方向に離れた領域(以下、“離間領域”とする)(C2)及び前記検査領域(B2)の両方を前記視標呈示領域(E2)と決定するように構成され、
前記視標呈示手段(6)は、前記第1の状態である場合には前記検査領域(B1)中に視標を呈示し、前記第2の状態である場合には前記離間領域(C2)及び前記検査領域(B2)の両方に視標を呈示するように構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記視標呈示位置決定手段(5)は、前記第2の状態である場合には“前記検査領域(図4の符号B2参照)における視標呈示箇所(P,…)の総数”が“前記離間領域(C2)における視標呈示箇所(P’,…)の総数”よりも多くなるように視標呈示箇所(P,…,P’,…)を決定するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記検査領域指定手段(4)が、前記視野検査結果画像を表示すると共に該視野検査結果画像上で前記検査領域(B,B1〜B3)を指定できるように構成され、
前記視標呈示位置決定手段(5)は、過去の視野検査における視標呈示箇所の少なくとも1つを、今回の視野検査における視標呈示箇所として決定するように構成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発明において、視野検査中に前記視標呈示手段(6)及び前記操作手段(7)からの信号に基づいて検査の進行状況を確認する進行状況確認手段(9)と、
全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間(Tmax)内に終了するか否かの予測を、前記進行状況確認手段(9)が確認した進行状況に基づいて行う終了時間予測手段(10)と、
全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間(Tmax)内に終了しないと前記終了時間予測手段(10)が予測した場合に一部の視標呈示箇所についての視標呈示を行わないように前記視標呈示手段(6)を制御する視標呈示制御手段(11)と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明において、前記視標呈示位置決定手段(5)が、各視標呈示箇所に優先順位を付加するように構成され、
前記視標呈示制御手段(11)は、優先順位の低い箇所についての視標呈示を省略するように構成された、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項1又は2に記載の発明において、視野検査中に前記視標呈示手段(6)及び前記操作手段(7)からの信号に基づいて検査の進行状況を確認する進行状況確認手段(9)と、
全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間(Tmax)内に終了するか否かの予測を、前記進行状況確認手段(9)が確認した進行状況に基づいて行う終了時間予測手段(10)と、
全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間(Tmax)内に終了しないと前記終了時間予測手段(10)が予測した場合に一部の視標呈示箇所についての視標呈示を行わないように前記視標呈示手段(6)を制御する視標呈示制御手段(11)と、
を備え、
前記視標呈示領域決定手段(3)は、前記指定用画像(A)中において前記検査領域が占める面積又は長さについての割合(以下、“検査領域占有率”とする)が所定の基準値以上である場合(図3(a) 参照。以下、“第1の状態”とする)には前記検査領域(B1)が前記視標呈示領域(E1)であると決定し、該検査領域占有率が該所定の基準値未満である場合(図3(b) 参照。以下、“第2の状態”とする)には前記検査領域(B2)から上下方向や斜め方向や左右方向に離れた領域(以下、“離間領域”とする)(C2)及び前記検査領域(B2)の両方を前記視標呈示領域(E2)と決定するように構成され、
前記視標呈示手段(6)は、前記第1の状態である場合には前記検査領域(B1)中に視標を呈示し、前記第2の状態である場合には前記離間領域(C2)及び前記検査領域(B2)の両方に視標を呈示するように構成され、
前記視標呈示制御手段(11)は、全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間(Tmax)内に終了しないと前記終了時間予測手段(10)が予測した場合であって、かつ前記第2の状態である場合には、前記離間領域(C2)における一部の視標呈示箇所についての視標呈示を行わないように前記視標呈示手段(6)を制御するように構成されたことを特徴とする。
【0017】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1及び2に係る発明によれば、視野検査は上限条件を設定して行うように構成されているので、被検者は視野検査が終了するまでの所要時間を知ることができ、該所要時間が分からない場合に比べて集中力を高く維持することができる。その結果、検査の精度を向上させることができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、前記検査領域が狭い場合であっても、視標呈示箇所を被検者が予測することが困難となり、被検者の予測の影響を受けない正確な検査結果を得ることができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、決められた上限条件の範囲内で前記検査領域を詳細に検査することが可能となり、精度の高い検査結果を得ることができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、同じ視標呈示箇所において過去の視野検査の結果と今回の視野検査の結果とを比較することができ、眼疾患の進行状況等を把握することができる。
【0022】
請求項6及び7に係る発明によれば、それぞれの視標呈示箇所における検査に時間が掛かってしまうような場合であっても、一部の視標呈示を省略して視野検査を前記上限時間内に終了させることができる。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、前記検査領域における視標呈示は省略されないので、該検査領域の検査精度を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係る視野計の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、検査領域指定手段の構成の一例を示す模式図である。
図3図3(a) 〜(c) は、検査領域等の位置を例示する模式図である。
図4図4は、検査領域及び離間領域における視標呈示箇所の一例を示す模式図である。
図5図5は、ある1つの視標呈示箇所における閾値検査の様子を示す概念図である。
図6図6は、視野計の構成の一例を示す斜視図である。
図7図7は、領域(検査領域)を指定する様子の一例(従来例)を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1乃至図6に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
本発明に係る視野計は、被検者に所定の固視点(例えば、図6に例示するような視野ドーム61の中心点)を固視させた状態で視野を検査するものであって、図1に符号1で例示するように、
・ “過去の視野検査の結果を示す画像(以下、“視野検査結果画像”とする)”又は“視野検査の結果を示さない通常の眼底画像(図2図3(a) 〜(c) 及び図4の符号A参照。以下、前記視野検査結果画像及び前記眼底画像を“指定用画像”と総称する。)”を表示すると共に視野検査を行いたい領域(図2の符号B、図3(a) 〜(c) 及び図4の符号B1〜B3参照。以下、“検査領域”とする)を前記指定用画像A上で指定できるように構成された検査領域指定手段2と、
・ 該指定された検査領域B,B1〜B3に基づいて、視標を実際に呈示する領域(図3(a) 〜(c) の符号E1〜E3参照。以下、“視標呈示領域”とする)を決定する視標呈示領域決定手段3と、
・ “視野検査を行う時間の上限(以下、“上限時間”とする)Tmax”又は“前記視標呈示領域中にて視標を呈示する箇所(以下、“視標呈示箇所”とする)の総数”(以下、これらの上限時間及び総数を“上限条件”とする)を設定するための上限条件設定手段4と、
・ 該上限条件以下の条件(つまり、前記上限時間以下の時間や、前記総数以下の数の視標呈示箇所)で視野検査が終了するように少なくとも各視標呈示箇所の位置を決定する視標呈示位置決定手段5と、
・ 該視標呈示位置決定手段5により決定された各位置に所定の輝度の視標を順次呈示する視標呈示手段6と、
・ 呈示される視標を視認した被検者により操作される操作手段7と、
・ 前記視標呈示手段6及び前記操作手段7からの信号に基づき検査結果を判定する検査結果判定手段8と、
を備えている。
【0027】
なお、以下の説明において、前記検査領域を、その形状や位置によって区別する必要がある場合には“B1”“B2”“B3”の符号を用いることとし、そのような区別をする必要が無い場合には“B”の符号を用いることとする。また、前記視標呈示領域についても同様であって、その形状や位置によって区別する必要がある場合には“E1”“E2”“E3”の符号を用いることとし、そのような区別をする必要が無い場合には“E”の符号を用いることとする。さらに、後述する離間領域についても同様であって、その位置や形状によって区別する必要がある場合には“C2”“C3”の符号を用いることとし、そのような区別をする必要が無い場合には“C”の符号を用いることとする。
【0028】
ところで、本発明のように領域を指定して行う視野検査は、緑内障等の眼疾患が該領域に存在する可能性が高いために行うものであるので、通常の視野検査(つまり、領域を指定せずに視野の全体に対して行う検査)に比べて検査精度を高くすることが必要であり、検査中に被検者の集中力を高く維持させておく必要がある。本発明によれば、上述のように視野検査は上限条件(具体的には、上限時間Tmaxや視標呈示箇所の総数)を設定して行うように構成されているので、被検者は視野検査が終了するまでの所要時間を知ることができ、該所要時間が分からない場合に比べて集中力を高く維持することができる。その結果、検査の精度を向上させることができる。
【0029】
次に、前記視野計1を構成する各手段について説明する。
【0030】
<検査領域指定手段>
上述した検査領域指定手段2は、例えば図2に例示するように、
・ 液晶ディスプレイ等のモニター部20と、
・ 被検者の眼底画像Aや視野検査結果画像(不図示)を該モニター部20に表示できるように構成されたモニター駆動部(不図示)と、
・ 該モニター部20の画面上で前記検査領域Bを指定するための入力手段21と、により構成すると良い。図2に例示する入力手段21はマウスであるが、もちろんこれに限られるものではなく、スタイラスペンや、その他の公知の入力手段を用いても良い。また、図2に例示する検査領域Bは矩形状であるが、もちろんこれに限られるものではなく、その他の形状(例えば、円形や、任意の形状)であっても良い。
【0031】
<視標呈示領域決定手段>
ところで、視野検査を行いたい領域(検査領域)の広さは患者によって異なる。例えば、ある患者(被検者)の場合にはかなり広い領域を検査しなければならないかも知れないし(例えば、図3(a) の符号B1参照)、別の患者の場合には極めて狭い領域を検査すれば足りるかも知れない(図3(b) (c) の符号B2,B3参照)。しかし、検査領域が狭い場合にその領域だけに視標を呈示していくと、視標が呈示される大体の領域を患者は予測してしまい、該予測の影響を受けて正確な検査結果が得られないというおそれがある。そこで、本発明における前記視標呈示領域決定手段3は、
図3(a) に例示するように、指定用画像A中(つまり、眼底のエリア中)において前記検査領域B1が占める割合(面積又は長さについての割合であって、以下、“検査領域占有率”とする)が所定の基準値以上である場合(以下、“第1の状態”とする)には前記検査領域B1が前記視標呈示領域E1であると決定し、
図3(b) 及び(c) に例示するように、該検査領域占有率が該所定の基準値未満である場合(以下、“第2の状態”とする)には前記検査領域B2,B3から上下方向や斜め方向や左右方向に離れた領域(以下、“離間領域”とする)C2,C3及び前記検査領域B2,B3の両方を前記視標呈示領域E2,E3と決定する、
ように構成しておくと良い。そして、前記視標呈示手段6は、前記第1の状態である場合には前記検査領域B中に視標を呈示し、前記第2の状態である場合には前記離間領域C及び前記検査領域Bの両方に視標を呈示するように構成しておくと良い。ここで、“所定の基準値”とは、具体的には、指定用画像A中(つまり、眼底のエリア中)の面積又は最大長さ(つまり、略円上である指定用画像Aの直径)の60%とか70%とかの値であって、視野の全体に視標を呈示して検査を行った場合とほぼ同等の検査精度を期待できる値である。前記第1の状態の場合(つまり、検査領域占有率が所定の基準値以上の場合)には、検査領域Bそのものが十分に広いので視標呈示箇所を被検者が予測することが困難となり、被検者の予測の影響を受けない正確な検査結果を得ることができる。また、前記第2の状態の場合(つまり、検査領域占有率が所定の基準値未満の場合)には、前記検査領域Bだけでなく該検査領域Bから離間した箇所(つまり、前記離間領域C)にも視標が呈示されることとなるので、視標呈示箇所を被検者が予測することが困難となり、被検者の予測の影響を受けない正確な検査結果を得ることができる。なお、前記第2の状態の場合には、前記検査領域Bでの視標の呈示、及び前記離間領域Cでの視標の呈示の全てが前記上限条件以下の条件で行われることとなる。また、離間領域Cは1つでも複数でも良い。さらに、前記視標呈示領域決定手段3は、検査領域の面積又は長さのいずれかだけを前記所定の基準値と比較するようにしても良いが、
・ 検査領域の縦横の寸法比が1に近い(つまり、検査領域の縦横の寸法がほぼ同等である)場合には前記検査領域の“面積”が前記所定の基準値以上か未満かを判断するように構成され、
・ 検査領域の縦横の寸法比が極端に異なる場合には前記検査領域の“最大長さ”が前記所定の基準値以上か未満かを判断するように構成されている、
ようにしても良い。
【0032】
さらに、前記視標呈示位置決定手段5は、前記第2の状態である場合には“前記検査領域(例えば、図4の符号B2参照)における視標呈示箇所(P,…)の総数”が“前記離間領域(C2)における視標呈示箇所(P’,…)の総数”よりも多くなるように視標呈示箇所を決定するように構成されていると良い。例えば、視標呈示箇所の総数が100点に設定されている場合、前記検査領域Bにおける視標呈示箇所の総数を70点とし、前記離間領域Cにおける視標呈示箇所の総数を30点にすると良い。そのようにした場合には、決められた上限条件(例えば、上限時間Tmax)の間に前記検査領域Bを詳細に検査することが可能となり、精度の高い検査結果を得ることができる。
【0033】
一方、前記第2の状態であって、かつ、図4に例示するように検査領域B2が水平基準線HL(指定用画像Aにおいて網膜中心(つまり、中心窩の中心)Gを含む水平線の意であり、以下同じ。)から離間した位置にある場合には、前記離間領域C2は、該水平基準線HLを基準として前記検査領域B2と上下に対称となる位置に設定すると良い。この場合も、上述したように“検査領域B2における視標呈示箇所の総数”が“該離間領域C2における視標呈示箇所の総数”よりも多くなるように設定すると良い。そして、該検査領域B2における視標呈示箇所P,…を“主視標呈示箇所”と称し、該離間領域C2における視標呈示箇所P’,…を“副視標呈示箇所”と称するとすると、前記水平基準線HLを基準として該副視標呈示箇所(例えば、P’)の位置と対称となる位置には必ず1つの主視標呈示箇所(例えば、P)が設定されようにすると良い。また、“前記主視標呈示箇所に呈示する視標”と“前記副視標呈示箇所に呈示する視標”とは、同じ大きさや輝度にすると良い。そのようにした場合には、上下に対称関係にある主視標呈示箇所P,…と副視標呈示箇所P’,…の検査結果を比較することにより上下対称性のずれを知ることができ、それによって緑内障等の眼疾患を容易に発見することが可能となる。
【0034】
これに対して、前記第2の状態であって、かつ、図3(c) に例示するように検査領域B3が前記水平基準線HLを含んだり該水平基準線HLに近接したりしていて、「前記水平基準線HLを基準として該検査領域B3と対称となる領域(以下、“対称領域”とする)D3」が該検査領域B3から離間しない場合には、前記水平基準線HLに対して対称となる位置以外の位置(上下方向や横方向や斜め方向に離れた位置)に離間領域(符号C3参照)を設定すると良い。その場合、該検査領域B3と該離間領域C3とを視標呈示領域としても良いが、該検査領域B3と該離間領域C3と前記対称領域D3とを視標呈示領域としても良い。そして、後者の場合(つまり、該検査領域B3と該離間領域C3と前記対称領域D3とを視標呈示領域とする場合)において前記検査領域B3における視標呈示箇所を“主視標呈示箇所”と称し、前記対称領域D3における視標呈示箇所を“副視標呈示箇所”と称するとすると、前記水平基準線HLを基準として該副視標呈示箇所の位置と対称となる位置には必ず1つの主視標呈示箇所が設定されようにすると良い。また、“前記主視標呈示箇所に呈示する視標”と“前記副視標呈示箇所に呈示する視標”とは、同じ大きさや輝度にすると良い。そのようにした場合には、前記離間領域C3に視標を呈示することで視標呈示箇所を被検者が予測することが困難となり、被検者の予測の影響を受けない正確な検査結果を得ることができる。それと同時に、上下に対称関係にある主視標呈示箇所と副視標呈示箇所の検査結果を比較することにより上下対称性のずれを知ることができ、それによって緑内障等の眼疾患を容易に発見することが可能となる。その場合、“検査領域B3における視標呈示箇所の総数”>“対称領域D3における視標呈示箇所の総数”>“離間領域C3における視標呈示箇所の総数”となるように視標を呈示すると良く、“検査領域B3における視標呈示密度”>“対称領域D3(図3(c) に例示するように前記検査領域B3と前記対称領域D3とが重なる場合には、該対称領域D3内の部分であって該検査領域B3と重なっていない部分)における視標呈示密度”>“離間領域C3における視標呈示密度”となるように視標を呈示すると良い。
【0035】
<上限条件設定手段>
前記上限条件設定手段4としては、種々のものを挙げることができ、例えば、
・ 画面にグラフィカルユーザインターフェイス(及び、該インターフェイス上で上限件を設定するためのポインティングデバイス)や、
・ 視野計に取り付けられた何らかのスイッチ(例えば、ダイヤルスイッチ)、などを挙げることができる。この上限条件設定手段4は、“上限時間Tmax”又は“視標呈示箇所の総数”のいずれか一つを設定するためのものであり、具体的には、
・ 上限時間Tmaxのみを設定できる機能を有するもの
・ 視標呈示箇所の総数のみを設定できる機能を有するもの
・ “上限時間Tmax”及び“視標呈示箇所の総数”の両方を設定できる機能を有するものであって、検者等が必要に応じて選択できるようにしたものを挙げることができる。
【0036】
<視標呈示位置決定手段>
前記視標呈示位置決定手段5は、
・ 前記上限条件設定手段4により前記上限時間Tmaxが設定された場合には前記視標呈示領域Eにおける視標呈示箇所の総数Nと位置とを決定し、
・ 前記上限条件設定手段4により視標呈示箇所の総数が設定された場合には各視標呈示箇所の位置を決定する、
ように構成されていると良い。また、前記視標呈示手段6は、各視標呈示箇所にて輝度を段階的に変化させながら視標を複数回呈示するように構成されているので(詳細は後述する)、前記視標呈示位置決定手段5は、
・ 各視標呈示箇所において視標を呈示する回数(つまり、それぞれの視標呈示箇所において輝度を段階的に変化させながら視標を呈示するときのその呈示回数であって、図5に示す例では(1)〜(4)の4回)
を決定し得るように構成されていると良い。ここで、
・ 設定する上限時間をTmaxとし、
・ 1つの視標呈示箇所について検査に要する大体の時間をtとすると、
視標呈示箇所の総数Nは、Tmax÷tで求まることとなる。なお、前記視標呈示手段6は、上述したように、検査領域Bだけでなく、離間領域Cや対称領域Dにも視標を呈示する場合があるので、前記視標呈示位置決定手段5は、
・ 検査領域Bにおける視標呈示箇所の数Nと、
・ 離間領域Cにおける視標呈示箇所の数Nと、
・ 対称領域Dにおける視標呈示箇所の数Nと、
を、N+N+N≦Nとなるように決定する必要がある。
【0037】
一方、前記検査領域指定手段2が前記視野検査結果画像を表示するように構成されていて該視野検査結果画像に基づいて検査領域の指定を行う場合には、前記視標呈示位置決定手段5は、“過去の視野検査における視標呈示箇所(視標が呈示された位置)”の少なくとも1つを“今回の視野検査における視標呈示箇所(視標が呈示される位置)”として決定するようにすると良い。そのようにした場合には、同じ視標呈示箇所において過去の視野検査の結果と今回の視野検査の結果とを比較することができ、眼疾患の進行状況等を把握することができる。なお、視野検査用画像の保存は、患者の識別情報等を付加した状態で行うと良く、該識別情報等によって上述のような視野検査の比較が可能となる。また、前記検査領域指定手段2は、“過去の視野検査における視標呈示箇所(視標が呈示された位置)であって検査結果が悪かった点(所定の基準よりも悪かった点)”が目立つように前記視野検査結果画像を表示すれば良い。そのようにした場合には、再検査すべき領域を容易に把握することができる。さらに、前記視標呈示位置決定手段5は、“過去の視野検査における視標呈示箇所(視標が呈示された位置)であって検査結果が悪かった点(所定の基準よりも悪かった点)”を“今回の視野検査における視標呈示箇所(視標が呈示される位置)”として決定するようにすると良い。
【0038】
<視標呈示手段>
前記視標呈示手段6は、各視標呈示箇所にて輝度を段階的に変化させながら視標を複数回呈示するように構成されていて、いわゆる閾値検査を行えるように構成されている。図5は、ある1つの視標呈示箇所における閾値検査の様子を示す概念図である。同図に示す例では、(1)→(2)→(3)→(4)の4回の視標呈示が行われており、各視標の輝度は、21dB→25dB(21dBよりも暗い)→29dB(25dBよりも暗い)→27dB(29dBよりも明るい)のように段階的に変化させている。そして、前記操作手段7による被検者からの応答については、
・ (1)の視標呈示: 応答あり
・ (2)の視標呈示: 応答あり
・ (3)の視標呈示: 応答なし
・ (4)の視標呈示: 応答あり
となっている。このような場合、前記検査結果判定手段8は、その箇所(視標呈示箇所)における網膜感度を27dBと判定することとなる。
【0039】
ところで、前記視標呈示手段6は、図6に例示するように、視標Qを投影するための投影光学系60と、該投影光学系60により視標が投影される投影部材61とにより構成すると良いが、図示の構成に限定されるものではない。被検者の視野中に視標を呈示するものであればどのような構造でも良く、例えば、複数のLEDを配置しておいて、それを選択的に点灯させるようにしたものでも良い。また、図6に示す投影部材61は半球ドーム状の形状(視野ドーム)をしているが、もちろんこれに限られるものではなく、半球面以外の曲面を有する形状としても、或いは、平面を有する形状としても良い。
【0040】
一方、前記第2の状態であって、前記水平基準線HLを基準として前記検査領域Bと前記離間領域Cとが上下対称の位置でない場合には、前記視標呈示手段6は、“前記離間領域Cに呈示する視標”が“前記検査領域Bに呈示する視標”よりも大きく、及び/又は明るくなるように視標を呈示するように構成されていると良い。そのようにした場合には、該離間領域Cに呈示する視標を被検者は視認し易くなり、該被検者の注意力が前記検査領域Bだけに偏ってしまうことを抑制でき、被検者の予測の影響を受けない正確な検査結果を得ることができる。
【0041】
<操作手段>
上述した操作手段7にはプッシュスイッチ等の公知の機構を用いれば良い。
【0042】
<その他の手段>
ところで、本発明に係る視野計1は、前記視標呈示領域E1〜E3において複数の箇所に視標を呈示するものであって、しかも、1つの箇所について1回だけの視標呈示を行うのではなく(被検者からの応答を受けながら)複数回の視標呈示を行うものである。したがって、被検者からの応答が遅かったりする場合には検査に時間が掛かってしまって前記上限時間Tmax内に検査が終了しない事態も起こりえる。
【0043】
そこで、本発明に係る視野計1には、
・ 視野検査中に前記視標呈示手段6及び前記操作手段7からの信号に基づいて検査の進行状況を確認する進行状況確認手段9と、
・ 全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間Tmax内に終了するか否かの予測を、前記進行状況確認手段9が確認した進行状況に基づいて行う終了時間予測手段10と、
・ 全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間Tmax内に終了しないと前記終了時間予測手段10が予測した場合に一部の視標呈示箇所についての視標呈示を行わないように前記視標呈示手段6を制御する視標呈示制御手段11と、
を設けておくと良い。本発明において実施される検査は、被検者からの応答を受けながら行うものであるので、それぞれの視標呈示箇所における検査に時間が掛かってしまうような場合も考えられる。しかし、上述のような進行状況確認手段9や終了時間予測手段10や視標呈示制御手段11を設けた場合には、一部の視標呈示を省略して視野検査を前記上限時間Tmax内に終了させることができる。この場合、前記終了時間予測手段10は、視野検査の開始からの経過時間を計測する時間計測部を有していると良い。この場合の視標呈示の省略は、
・ 1つの視標呈示箇所において輝度を段階的に変化させて呈示する場合のその呈示回数を減らす方法や、
・ ある視標呈示箇所(視標呈示を予定していた箇所)での視標呈示を全て省略する方法などを挙げることができる。なお、上述のように眼疾患の発見のために上下対称の領域で視標を呈示する場合は、前者ではなく後者(つまり、ある視標呈示箇所での視標呈示を全く省略する方法)を採れば良い。
【0044】
なお、上述した“一部の視標呈示箇所(つまり、視標呈示が前記視標呈示制御手段11によって省略される箇所)”は、前記検査領域Bにおける視標呈示箇所ではなく、前記離間領域Cにおける視標呈示箇所とすると良い。すなわち、全ての視標呈示箇所についての検査が前記上限時間Tmax内に終了しないと前記終了時間予測手段10が予測した場合であって、かつ前記第2の状態である場合には、前記視標呈示制御手段11は、前記離間領域Cにおける一部の視標呈示箇所についての視標呈示を行わないように前記視標呈示手段6を制御するように構成されていると良い。そのようにした場合には、前記検査領域Bにおける視標呈示は省略されないので、該検査領域Bの検査精度を良好に維持することができる。
【0045】
ところで、前記終了時間予測手段10は、
・ 設定された前記上限時間Tmaxと、
・ 既に経過した時間Tと、
・ 視標呈示が終了していない視標呈示箇所の数(前記進行状況確認手段9からの情報に基づいて求めた数)Nと、
・ 1つの視標呈示箇所について検査に要する大体の時間t、
の各データから、
・ 検査に残された時間“Tmax−T”と、
・ 残りの検査に必要な時間“N×t”と、
を求めて比較するように構成すると良い。ここで、前記時間t(つまり、1つの視標呈示箇所について検査に要する大体の時間t)は、
・ 各視標呈示箇所における視標の呈示回数(予想する回数)nと、
・ 被検者の予想応答時間(視標を呈示してから被検者が応答するまでに要する時間)Δt1と、
・ 被検者からの応答が無い場合において次の視標が呈示されるまでの時間(設定されている時間)Δt2、
の各データから求めるようにすると良い。また、前記視標呈示位置決定手段5は、各視標呈示箇所に優先順位(検査の重要度の観点からの順位)を付加するように構成されていて、前記視標呈示制御手段11は、優先順位の低い箇所(視標呈示箇所)についての視標呈示を省略するようにしておくと良い。さらに、一部の視標呈示を省略した後に予想よりも早いペースで視野検査が行われていった場合であって、視野検査が前記上限時間Tmax内に終了すると前記終了時間予測手段10が予測した場合には、前記視標呈示制御手段11は、一部省略した視標呈示をあらためて行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 視野計
2 検査領域指定手段
3 視標呈示領域決定手段
4 上限条件設定手段
5 視標呈示位置決定手段
6 視標呈示手段
7 操作手段
8 検査結果判定手段
9 進行状況確認手段
10 終了時間予測手段
11 視標呈示制御手段
A 眼底画像
B,B1〜B3 検査領域
C2,C3 離間領域
E1〜E3 視標呈示領域
,…,P’,… 視標呈示箇所
Tmax 上限時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7