特許第6474752号(P6474752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474752肌の黄ぐすみ改善素材のスクリーニング方法及び評価キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474752
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】肌の黄ぐすみ改善素材のスクリーニング方法及び評価キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20190218BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G01N33/68
   G01N33/50 Q
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-72476(P2016-72476)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181423(P2017-181423A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】森田 美穂
(72)【発明者】
【氏名】奥田 奈緒美
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−032287(JP,A)
【文献】 特開2013−133303(JP,A)
【文献】 特開2008−120774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロ化タンパクを指標とする肌の黄ぐすみ度を測定又は判定する方法。
【請求項2】
ニトロ化タンパクを指標とする肌の黄ぐすみを改善する素材をスクリーニングする方法。
【請求項3】
ニトロ化タンパクの分解率及び/又は残存率を指標とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
ニトロ化タンパクが、ニトロチロシン3,5−ジニトロチロシン、ニトロトリプトファン、ニトロフェニルアラニン、2,4-ジニトロフェニルアラニンから選択される少なくとも1種以上を構成アミノ酸とする請求項1乃至請求項3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
芳香族アミノ酸のニトロ化物を指標とする肌の黄ぐすみ度を測定又は判定する方法。
【請求項6】
芳香族アミノ酸のニトロ化物を指標とする肌の黄ぐすみを改善する素材をスクリーニングする方法。
【請求項7】
芳香族アミノ酸のニトロ化物の分解率及び/又は残存率を指標とする請求項2記載の方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の方法に用いるキットであって、角層サンプルから3−ニトロチロシンの量を測定する手段を含んでなるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の黄ぐすみ改善素材のスクリーニング方法及び評価キットに関する。具体的には、ニトロ化タンパク或いは芳香族アミノ酸のニトロ化物を指標とした、肌の黄ぐすみ度の測定又は判定方法、肌の黄ぐすみを改善する素材のスクリーニング方法及びその評価キットに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚色は、皮膚内部に存在する色素や皮膚表面の光学特性によって決定されるもので、顔面の印象に大きな影響を与える。加齢による皮膚色の変化のひとつに皮膚のくすみがあり、美容上の悩みを持つ人は多い。くすみにはさまざまな種類があり、1.血行不良による肌色の赤みの低下によるもの,2.メラニン沈着の不均一性によるもの,3.皮膚表面の凹凸による影によるもの,4.角層肥厚による光透過性の低下によるもの,5.皮膚表面での乱反射によるつやの低下によるもの,6.加齢に伴う皮膚の黄みの増加によるもの、などが知られている。中でも加齢に伴う皮膚色の黄みの増加は黄ぐすみとして知られ、老化に伴う特徴的な皮膚の色調変化でもある(非特許文献1)。
【0003】
皮膚色の黄みに関係する色素はいくつか知られており、代表的なものにメラニン、カロテノイド、糖化物、過酸化脂質とタンパク質の反応で生成するリポフスチン、カルボニル化物などがある。その中でも、老化に伴う黄ぐすみの原因としては、タンパク質と糖が酵素非依存的に反応して生じる糖化物(特許文献1)や、加齢によるタンパク質のカルボニル化物の蓄積(特許文献2)の関与が知られていた。
【0004】
タンパク質のニトロ化とは、生体内で発生した活性窒素種によって生じるタンパク質翻訳後修飾のひとつであり、タンパク質を構成する芳香族アミノ酸のチロシン、トリプトファンの残基中のベンゼン環にニトロ基が付与されたものである。ニトロ化反応はアミノ酸中のベンゼン環が、活性窒素種により形成されるニトロニウムイオン(NO2+)や二酸化窒素ラジカルなどと求電子置換反応をおこすことで生じる(非特許文献2)。生体内に存在する多くのタンパク質中のトリプトファンの含有率はチロシンのそれよりもはるかに小さく、タンパク質のニトロ化反応は主にチロシン残基に生じると考えられている(非特許文献3)。
【0005】
タンパク質のニトロ化が起きると、酵素やチロシンキナーゼ型受容体(NGFRなど)の機能低下を引き起こすことで、細胞機能に影響を及ぼすことが知られる(非特許文献4)。また、タンパク質中のニトロチロシンは加齢に伴う数々の疾患(動脈硬化や脳虚血疾患など)で蓄積することが知られており、これらの疾患に関与することが報告されている(非特許文献5)。ニトロチロシンは、皮膚中に存在することが知られているが(非特許文献6)、皮膚色との関係については知られていなかった。
【0006】
ニトロ化タンパク生成に伴う各種疾患を改善するため、ペルオキシナイトライトを消去する効果成分のスクリーニング方法や(特許文献3)や、チオール基をもつ物質によるペルオキシナイトライト補足する効果成分のスクリーニング方法(特許文献4)が開示されている。しかしながら、これらはすべて専らニトロ化タンパクの生成を抑制する効果成分を提供するためのスクリーニング方法であり、出来てしまったニトロ化タンパクに対して有効に働く成分を提供するためのスクリーニング方法ではなく、これらのスクリーニング方法から選別された各有効成分は、出来てしまったニトロ化タンパクに対しては、何ら効果を有するものではない。その為、ニトロ化タンパク生成に伴う各種疾患の根本的な解決に至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本化粧品工業連合会,粧工連技術資料,101-148 (1995)
【非特許文献2】Chem Res Toxicol. 2009 May ; 22(5):894-898
【非特許文献3】Front Chem. 2016 Jan 7;3:70.
【非特許文献4】Diabetes. 2008 Apr;57(4):889-98
【非特許文献5】Science. 2000 Nov 3;290(5493):985-9.
【非特許文献6】Rheumatology. 2006, 45(6):676-84.
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-133303号
【特許文献2】特開2012-32287号
【特許文献3】特開2002-326922号
【特許文献4】特開2005-170849号
【発明の概要】
【0009】
このような状況下、発明者らは、黄ぐすみの原因に関し研究を行ったところ、黄ぐすみの原因は、従来考えられていた真皮中に存在するタンパク質の糖化物やカルボニル化物だけではなく、角層中に存在するタンパク質の構成アミノ酸がニトロ化されることによって生じるニトロ化タンパクが大きく起因していることを突き止めた。
【0010】
更に発明者らは、ニトロ化タンパク生成に起因する症状を解決するには、単にその生成を抑制するのではなく、出来てしまったニトロ化タンパクを分解することこそが、根本的解決につながるとの結論に至り、発明完成に至った。
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ニトロ化タンパクを指標とする肌の黄ぐすみ度を測定又は判定する方法、皮膚の黄ぐすみを改善する素材のスクリーニング方法及びキットの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
角層中に存在するニトロ化タンパクを指標とすることで上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の抗糖化剤等では改善できなかった皮膚の黄ぐすみを改善出来る素材を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】角層タンパク質中のニトロチロシンと皮膚色の黄み(b*値)との相関関係
図2】各種素材のニトロ化タンパク分解度比較
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について説明する前に、本発明者らが得た新知見について説明する。以下、ニトロ化タンパクをニトロ化タンパク質と称する場合があるが、同義である。
【0016】
<黄ぐすみの新規要因の特定>
発明者らは、以下の方法により黄ぐすみの原因が、角層中のタンパク質がニトロ化されることにより生成されるニトロ化タンパクであることを突き止めた。
【0017】
<実験方法>
事前に測定内容に同意を得た20、30、40、50代の女性(各4−5名)を被験者に、頬部の皮膚色を分光測色計(CM−700d、コニカミノルタ)にて測定し、頬部角層の採取を行った。角層の採取は、頬部に粘着テープ(スリーエム製)を接着し、角層を採取した。角層が接着したテープを約3 mm四方に細切し、溶出バッファー(100 mM Tris/HCl (pH 8.0)、140 mM NaCl、0.1% Tween(登録商標)−20、10 μg/mL アプロチニン、1 mM phenylmethylsulfonyL fluoride)が入ったチューブに混合した。この混合物を超音波処理することで、テープから角層タンパク質をバッファー中に溶出した。溶出溶液を新しいチューブに移して遠心操作を行い、上清を回収したものを角層抽出物サンプルとした。
角層抽出物サンプル中の3−ニトロチロシン量はNWLSSTM Nitrotyrosine ELISA(Northwest Life Science Specialities)を用いて定量し、角層抽出物サンプルのタンパク質量はBCA法にて定量した。3−ニトロチロシン量をタンパク質量で除したものを、角層タンパク質あたりの3−ニトロチロシン量とした。
【式1】
【0018】
【0019】
<結果>
頬部の角層タンパク質あたりの3−ニトロチロシン量と皮膚色の黄み(b*値)の関係について、ピアソンの相関関係の検定を行ったところ、これらに正の相関関係にあることが明らかとなり、角層にニトロ化タンパク質が多いほど、頬部の皮膚は黄色化することが強く示された(図1)。
【0020】
この結果を年齢層別に分析すると、表1に示すとおり、20〜30代の層より、40〜50代の層の方が、ニトロ化タンパクの量と皮膚色の黄み(b*値)間の相関関係が高いことが分かった。
このことから、ニトロ化タンパクを指標とするスクリーニング方法により選択された素材を使用すれば、肌の黄ぐすみを改善できることは勿論のこと、その素材の効果はより高い年齢層における肌の黄みの改善に期待出来ると言える。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明の肌の黄ぐすみを測定又は判定する方法、肌の黄ぐすみを改善する素材をスクリーニングする方法、及びその評価キットは、上記知見に基づくものである。
【0023】
本発明の肌の黄ぐすみを測定又は判定する方法、肌の黄ぐすみを改善する素材をスクリーニングする方法、及びその評価キットにおいては、ニトロ化タンパクと被験素材を混合し、一定時間後におけるニトロ化タンパクの量、更に詳しくは、構成アミノ酸のニトロ基結合量の変化を指標とする。
本発明における「肌の黄ぐすみ度を測定又は判定する方法」は、角層中に含まれるニトロ化タンパク量を測定し、その量と過去の自分の角層中のニトロ化タンパクの量と比較したり、或いは予め収集した年齢別の角層中のニトロ化タンパクの量の分布(例えば、図1等)と比較することにより肌の黄ぐすみ度を測定又は判定することができる。
本発明における「肌の黄ぐすみを改善する素材をスクリーニングする方法」においては、ニトロ化タンパクと被験物質とを混合する前後のニトロ化タンパクの量を指標にすることによって、黄ぐすみを改善する効果のある素材をスクリーニングすることができる。
本発明における「評価キット」は、上記評価方法を用いたキットである。
本発明においては、ニトロ化タンパクと被験素材を混合する順番やタイミングは問わない。両者が試験系中で共存するタイミングがあればよい。
【0024】
本発明で用いるニトロ化タンパクは、ニトロ化されたタンパク質であればよく、化合物としてのニトロ化物をそのまま用いることが出来る。また、ニトロ化タンパクをアミノ酸残基として構成しているニトロチロシンや3,5−ジニトロチロシン、ニトロトリプトファン、ニトロフェニルアラニン、2,4-ジニトロフェニルアラニン等を単独で用いることもできる。
化合物ではなく、テープストリッピングや研磨材等により収集した角層や、ケラチノサイト等の培養細胞であっても良い。このようなものでも、ニトロ化タンパク含有物として使用することができる。
予めニトロ化されたタンパクでなくても、タンパク質或いはタンパク質含有物をニトロ化物にしてから使用することもできる。この場合、アルブミンやカゼイン、スキムミルク等のタンパク質試薬等を用いることができる。
ニトロ化方法としては、硝酸で化学的にニトロ化してもよいし、ペルオキシナイトライト等の活性窒素種によってニトロ化させてもよいし、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)とNaNO、過酸化水素等と混合し、活性窒素種を発生させてニトロ化させてもよい。ニトロ化自体は公知の手法を用いることができる。
【0025】
本発明でいう、「ニトロ化タンパクを指標にする」とは、「肌の黄ぐすみ度を測定又は判定する方法」においてはニトロ化タンパクの量を指標にするという趣旨であり、「肌の黄ぐすみを改善する素材をスクリーニングする方法」においては、試験前後、即ちニトロ化タンパクと被験素材とを混合させる前後におけるニトロ化タンパクの量の変化を指標にするという趣旨である。更に具体的には、「肌の黄ぐすみ度を測定又は判定する方法」においては、タンパク中の構成アミノ酸に対するニトロ基結合量を指標にし、「肌の黄ぐすみを改善する素材をスクリーニングする方法」においては、タンパク中の構成アミノ酸に対するニトロ基結合量の変化を指標にするという趣旨である。
従って、ニトロ化タンパクの量そのものを測定することで指標としてもよいし、ニトロ化タンパク中、実際にニトロ化されている構成アミノ酸の量を測定することで指標としてもよいし、ニトロ基そのものを指標とすることもできる。
ニトロ化タンパクの減少率、分解率、残存率等を指標とすることができる。ニトロ化タンパクの減少率、分解率を指標とする場合は、その率が高いほどニトロ化タンパクを分解する効果が高い素材を選択することができ、ニトロ化タンパクの残存率を指標とする場合は、その率が低いほどニトロ化タンパクを分解効果が高い素材を選択することができる。ニトロ化されている構成アミノ酸を指標とする場合、ニトロ基そのものを指標とする場合も同様である。
【0026】
ニトロ化タンパクの量は直接的に測定してもよいし、ニトロ化タンパクが分解されることで得られる単離ニトロ基量や、構成アミノ酸であるチロシン等の量の増加量を測定することで、間接的に測定することもできる。
【0027】
ニトロ化タンパクの量の測定方法は、公知の方法で行うことができる。例えば、吸光度法、免疫染色法、ウエスタンブロッティング、放射免疫測定 (Radioimmunoassay)、ELISA、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析法、NMR法等を用いて測定することができる。
【0028】
被験素材は、特に制限はない。動物由来エキス、菌類の培養物、又はこれらの酵素等処理物、化合物又はその誘導体等であっても被検物質として用いることが出来、液状の他、粉末状、ジェル状等であっても差し支えない。被験素材に応じてニトロ化タンパクの量の分析方法を適宜選択すればよい。
【0029】
本発明におけるニトロ化タンパクを指標とする肌の黄ぐすみ度の測定又は判定方法は、例えば、以下のように行うことができる。
(1) 皮膚からテープストリッピング又は研磨材等を用いて角層を採取する。
(2) 採取した角層を溶出バッファーに溶出する。
(3) 前記溶出物から遠心分離器等を用いて角層と溶出物とを分離し、上清を角層抽出サンプルとする。
(4) 角層抽出サンプル中の3−ニトロチロシンの量をNWLSSTM Nitrotyrosine ELISA(Northwest Life Science Specialities)を用いて定量し、角層抽出物サンプルのタンパク質量はBCA法にて定量する。
(5) 3−ニトロチロシン量をタンパク質量で除したものを、角層タンパク質あたりの3−ニトロチロシン量とする。
(6) 得られたニトロチロシンの量を過去の自己の角層中のニトロチロシン量や、年代別の角層中のニトロチロシン量のグラフ(図1)等と比較することで肌の黄ぐすみ度を測定、黄ぐすみ度の判定を行う。
更に詳しくは、段落0017〜0018に記載の方法に準じて行うことができる。
【0030】
本発明におけるニトロ化タンパクを指標とする肌の黄ぐすみを改善する素材のスクリーニング方法は、例えば、角層をニトロ化タンパク含有物として用いる場合は、以下のように行うことができる。
(1) 皮膚からテープストリッピング又は研磨材等を用いて角層を採取する。
(2) 採取した角層を溶出バッファーに溶出する。
(3) 前記溶出物から遠心分離器等を用いて角層と溶出物とを分離し、上清を角層抽出サンプルとする。
(4) 角層抽出サンプル中の3−ニトロチロシンの量をNWLSSTM Nitrotyrosine ELISA(Northwest Life Science Specialities)を用いて定量し、角層抽出物サンプルのタンパク質量はBCA法にて定量する。
(5) 3−ニトロチロシン量をタンパク質量で除したものを、当初の角層タンパク質あたりの3−ニトロチロシン量とする。
(6) 前記角層サンプルに植物抽出物等の被験物質を混合する。
(7) 一定時間混合後、当該混合物中の3−ニトロチロシンの量を前記同様に測定し、試験後の角層タンパク質あたりの3−ニトロチロシン量とする。
(8) 当初の角層タンパク質あたりの3−ニトロチロシン量と試験後の角層タンパク質あたりの3−ニトロチロシン量を比較し、ニトロ化タンパクの量の変化から分解度や減少度として算出する。
(9) 目的に応じて、ニトロ化タンパクの量を減少させる素材を有効素材として選別する。
更に詳しくは、段落0017〜0018に記載の方法に準じて行うことができる。
尚、ニトロ化タンパクを構成する芳香族アミノ酸のニトロ化物を使用する場合は、上記方法の内、角層サンプルに換えて芳香族アミノ酸のニトロ化物にすることでスクリーニングを行うことができる。
【0031】
本発明のスクリーニング方法を用いた評価キットは、当該方法を使用していれば特に限定はされない。一つのキットで本発明のスクリーニング方法を具備するものでも良いし、二つ以上キットに分かれていても差し支えない。
【0032】
芳香族アミノ酸のニトロ化物を用いて黄ぐすみを改善する素材をスクリーニングする方法は、例えば以下の方法により行うことができる。
<ニトロ化タンパク分解活性試験>
ニトロ化タンパク構成アミノ酸である3−ニトロチロシンをPBSに溶解し、0.005%(w/v)の濃度の溶液を調製した。PBSまたは3−ニトロチロシン溶液を96 well-plateに250 μLずつ分注し、被験物質および対照物質を各wellに終濃度が100 ppmになるよう添加した。37℃で72時間インキュベートしたのち、プレートリーダーにて450 nmの吸光度を測定した。
【式2】
【0033】
【0034】
図2より、対照物質(コントロール)および不発酵茶抽出物(緑茶、番茶、ほうじ茶)、半発酵茶(ウーロン茶)、発酵茶(紅茶)、後発酵茶(プーアール茶)では、ニトロ化タンパクの1種である3−ニトロチロシンの分解度は0〜7%程度に留まった。
一方、後発酵茶である碁石茶(登録商標)抽出物は、ニトロ化タンパクの1種である3−ニトロチロシン分解率は20%を超えた。以上のことから、碁石茶(登録商標)抽出物には、ニトロ化タンパクを分解する効果があることが示され、本発明のスクリーニング方法を利用することにより黄ぐすみを改善する素材を選択することが可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上の結果から、本願のスクリーニング方法を用いることで、ニトロ化タンパク質を分解できる素材を見出すことができる。すでに述べたとおり、角層中のニトロ化タンパク質は、皮膚の黄ぐすみに寄与していることから、このスクリーニング方法で見出すことができる素材には、黄ぐすみ改善効果があることが期待される。

図1
図2