(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の底フィルタ部のうち一の前記底フィルタ部における前記長孔の長軸は、他の前記底フィルタ部における前記長孔の長軸に対して非平行であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抽出フィルタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1に記載した抽出フィルタは、底部のみにフィルタ部が設けられており、注がれたお湯(注液)は一定の時間、抽出フィルタに溜まるようになっている(浸漬式)。そのため、お湯を注ぐ速度、抽出速度、コーヒー豆粉末が注液に浸っている時間等により、抽出されたコーヒー液の味に差が生じることがあり、コーヒー豆粉末がお湯に浸っている時間を短くしたいという要望がある。
また、浸漬式によるコーヒー液の抽出では一杯のコーヒー液を提供するまでの時間もかかり、短時間で多くのコーヒー液を提供することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、注液が被抽出物を透過するようにして、被抽出物が注液に浸かっている時間を短くすることができる抽出フィルタ、及びその抽出フィルタを保持するホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、投入された被抽出物に液体を注いで当該被抽出物から飲料液を飲用容器に抽出する、前記飲用容器に載置される金属製の抽出フィルタであって、前記飲料液が流出する複数の孔が形成された金属製の側周フィルタ部を有する側周壁と、前記側周壁と共に前記被抽出物が投入される投入空間を画成する、前記飲料液が流出する複数の孔が形成された金属製の底フィルタ部を有する底壁と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記側周壁の前記複数の孔は長孔であり、当該長孔の長軸は前記投入空間の軸線に沿って互いに平行に配列されており、前記底フィルタ部は、少なくとも三等分に形成されており、前記底フィルタ部それぞれにおける前記複数の孔は長孔であり、当該長孔の長軸は互いに平行に配列されており、当該長孔の少なくとも一部は、その長軸が前記軸線から放射状に延びる仮想線に沿って延びていることが好ましい。
【0009】
また、前記仮想線は、前記軸線を中心として前記底フィルタ部を等分することが好ましい。
【0010】
また、前記複数の底フィルタ部のうち一の底フィルタ部における前記長孔の長軸は、他の前記底フィルタ部における前記長孔の長軸に対して非平行であることが好ましい。
【0011】
また、前記側周フィルタ部及び前記底フィルタ部における前記長孔の配列は、千鳥状に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記側周フィルタ部及び前記底フィルタ部における開孔率は、35〜40%であることが好ましい。
【0013】
また、前記被抽出物の所望の投入量を規定する印が前記側周フィルタ部に設けられていることが好ましい。
【0014】
また、前記底壁の外径の大きさは、前記底壁とは反対側における前記側周壁の内径以上であることが好ましい。
【0015】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、上記の抽出フィルタを保持するホルダであって、前記飲用容器に載置にされる、中央に開口を備えた載置部と、該載置部から前記飲用容器とは反対側に前記開口に沿って立設して前記抽出フィルタを収容保持する円筒状の保持部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、前記保持部は、側周面に少なくとも1つの開口を有することが好ましい。
【0017】
また、前記載置部の縁部の、前記飲用容器の側を臨む面には突部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、注液が被抽出物を透過するようにして、被抽出物が注液に浸かっている時間が短くなると共に、飲料液の抽出速度及び飲料液の品質をほぼ一定に保証することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとりうる。
【0021】
<抽出フィルタの構成>
図1は、抽出フィルタの斜視図である。
図2は、
図1に示す抽出フィルタを示す図であり、(a)は抽出フィルタの側面図であり、(b)は抽出フィルタの平面図である。
説明の便宜上、抽出フィルタ1の使用状態において、上側(被抽出物の投入口側)を矢印a方向、下側(底壁側)を矢印b方向とする。
【0022】
抽出フィルタ1は、投入された、例えばコーヒー豆粉末や紅茶葉等の被抽出物(図示せず)にお湯等の注液を注いで飲料液を抽出するための器具である。特に抽出フィルタ1は、カップ(飲用容器)Cに載せてカップC一杯分のコーヒー液を抽出するための金属製のフィルタである。
図1に示すように、抽出フィルタ1は、枠体Fと、側周壁11及び底壁15を有する略円筒状の抽出部10とを備える。抽出フィルタ1は、底壁15とは反対側に被抽出物が投入される投入口Oを有する。また、抽出フィルタ1の被抽出物が投入されて収容され投入空間Rは、側周壁11と底壁15とにより略円筒状に画成されている。
ここで「略円筒状」とは、抽出部10の内周面の形状が円筒形状を含め、投入口Oから底壁15に向かって縮径していく略円錐台形状を含むものである。
【0023】
(枠体)
枠体Fは、抽出フィルタ1の骨格を形成するものであり、例えばプラスチック等の合成樹脂、合成樹脂及びガラス繊維の混合材料、例えばステンレス、プラチナ、金、銀、銅、チタン、ニッケル等の金属材料、又は当該金属材料に、例えば金若しくはニッケルによるめっきを施すことにより形成されている。
図1に示すように、枠体Fは、抽出フィルタ1の投入口O側から底壁15に向かって、上枠部F1、側枠部F2及び底枠部F3を有する。上枠部F1、側枠部F2及び底枠部F3は、互いに一体に形成されている。
【0024】
上枠部F1は、側周壁11の上側(矢印a方向)の端縁に被抽出物を投入する投入口Oを形成するように環状に形成されており、上側(矢印a方向)から下側(矢印b方向)に向かうに連れて内径が減じられるようなテーパ状に形成されている。上枠部F1は、抽出フィルタ1にお湯を注いだ際にお湯が被抽出物と共に溢れずに溜まる部分である。
【0025】
側枠部F2は、側周壁11を補強するものであり、側周壁11を周方向に三等分するように抽出フィルタ1の投入空間Rの軸線(軸心)Xに沿った方向に上枠体F1と下枠体F3との間を延びている。
【0026】
底枠部F3は、底壁15を補強するものであり、各側枠部F2の下側(矢印b方向)の端部同士を周方向に繋ぐ環状部位F3aと、底壁15を三等分するように、抽出フィルタ1の軸線Xが通る底壁15の中心部から互いに等角度で放射状に延びた3つの放射状部位F3bとを有する。
【0027】
(抽出部)
抽出部10の側周壁11は、側枠部F2によりその周方向が三つの領域に分けられており、例えば、周方向に三等分された側枠部F2の間の部分は、金属薄板よりなる側周フィルタ部12として形成されている。側周フィルタ部12の素材には、防食の観点から、例えばステンレスを使用することが有利である。側周フィルタ部12には、めっき層が形成されており、例えば金をめっきすることが好ましい。
図2(a)に示すように、側周フィルタ部12には、飲料液を流出させる複数の長孔12aが形成されている。長孔12aは、長円形状を有しており、その長軸が高さ方向a,bに、つまり、抽出フィルタ1の軸線X方向に沿って延び、かつ千鳥状に配列されている。側周フィルタ部12におけるメッシュの開孔率は、例えば35〜40%であり、特に37.5%であることが好ましい。
また、側周フィルタ部12には、抽出部10に投入される被抽出物の量の目安となる印12bが形成されている。
【0028】
図2(b)に示すように、抽出部10の底壁15は、底枠部F3によって三等分されている。環状部位F3aと放射部位F3bとによって画成された底壁15の各部分は、金属薄板よりなる底フィルタ部16として形成されている。底フィルタ部16の平面形状は、略おうぎ形である。
底フィルタ部16の素材には、防食の観点から、例えばステンレスを使用することが有利である。底フィルタ部16には、めっき層が形成されており、例えば金をめっきすることが好ましい。底フィルタ部16には、飲料液を流出させる複数の長孔16aが形成されている。
【0029】
各長孔16aは、長円形状を有しており、その長軸が互いに平行になるように千鳥状に配列されていている。具体的には、千鳥状に配列された長孔16aの列のうち少なくとも一の列を形成する複数の長孔16aの長軸は、抽出部10の中心部から放射状に延びて底フィルタ部16を等分する仮想線Vl上又は仮想線Vlの近傍で当該仮想線Vlに沿って延びている。
また、他の列を形成する長孔16aの長軸は、底フィルタ部16を等分する仮想線Vl上又は仮想線Vlの近傍で当該仮想線Vlに沿う長孔16aの長軸に対して平行になっている。
さらに、3つの各底フィルタ部16、16、16の長孔16aの長軸は、互いに非平行をなし、つまり、異なる底フィルタ部16における長孔16aの長軸同士が平行になることはない。
底フィルタ部16におけるメッシュの開孔率は、例えば35〜40%であり、特に37.5%であることが好ましい。
【0030】
<その他>
なお、側周壁11は、抽出用の所望の面積及び所望の強度が確保されていれば、三等分に限られず、等分されていない場合や、二等分、四等分等に分割されていてもよい。また、必ずしも等分されている必要もない。
側周フィルタ部12に設けられる印12bの高さa、b方向における位置は、投入される被抽出物の量に応じて適宜設計変更される。
側周フィルタ部12及び底フィルタ部16に形成された孔の形状は、長円形状に限られず、円形、楕円形、正方形、長方形等の他の形状であってもよい。
底フィルタ部16における長孔16aにより形成された全て列が、抽出フィルタ1の軸線Xを中心として放射状に形成されていてもよい。
側周フィルタ部12及び底フィルタ部16の素材として、ステンレス以外に、例えば、プラチナ、金、銀、銅、チタン、ニッケル等を使用することも可能である。素材に金を使用した場合には、めっき処理は必要ない。また、側周フィルタ部12、及び、底フィルタ部16の素材をステンレスとした場合、めっき材料として金の他に、例えば、プラチナ、銀、銅、チタン、ニッケル等を選択することもできる。
【0031】
<ホルダの構成>
次に、
図3〜
図5により抽出フィルタ1を用いて飲料液を抽出する際に当該抽出フィルタ1をカップC(
図5参照)上で保持するホルダ5について説明する。
図3は、抽出フィルタ1を保持するホルダ5を斜め上方から見た斜視図である。
図4は、ホルダ5を示す図であり、(a)はホルダ5の側面図であり、(b)はホルダ5を斜め下方から見た斜視図である。
図5は、抽出フィルタ1により飲料液をカップCに抽出する状態を示す図である。
説明の便宜上、ホルダ5をカップCに載置した状態において、上側を矢印c方向、下側(カップC側)を矢印d方向とする。
【0032】
図3に示すように、ホルダ5は、カップCに載置される載置部51と、抽出フィルタ1の抽出部10を保持する保持部53とを備える。
載置部51は、カップCの飲み口側に載置される部分であり、載置部51の中央には円形の開口51aが設けられている。載置部51は、平面に見て略三角形状を有し、載置部51の3つの角部は、丸味を帯びたR部51bとして形成されている。
また、載置部51は、カップCに載置される面にR部51bの輪郭に沿って湾曲するように形成された突部52を有する。突部52は、下側(矢印d方向)に突出している。
【0033】
保持部53は、抽出フィルタ1を保持する略円筒状の部分であり、載置部51から上側(矢印c方向)に向かって載置部51の開口51aの開口縁に沿って立設されている。
抽出フィルタ1の抽出部10が挿入される保持部53の挿入口53aの内径は、少なくとも抽出フィルタ1の底壁15の外径よりも大きく、抽出フィルタ1の上枠体F1の最大外径よりも小さくなっている。つまり、
図5に示すように、保持部53は、抽出フィルタ1の上枠体F1の外周面にその下側(矢印d方向)から接触して抽出フィルタ1を保持する。
【0034】
保持部53の側周面には、互いに等間隔を置いて3つの開口53bが形成されている。保持部53における各開口53bの形成位置は、開口53bがR部51bと対向する位置になっている。なお、図示の実施の形態において開口53bは3つ設けられているが、保持部53に所望の強度が確保されていれば、開口53bの数は自由に設定することができ、また、開口53bの大きさ及び形成位置も自由に設定することができる。
【0035】
保持部53の高さ方向(矢印c、d方向)の寸法は、抽出フィルタ1の側周壁11の高さ方向(矢印a、b方向)の寸法と同じであるが、保持部53の上記高さ方向の寸法は、抽出フィルタ1の側周壁11の上記高さ方向の寸法より少し大きくなっていてもよい。
また、抽出フィルタ1の底壁15がカップC内に過度に突入して、コーヒー液の抽出時に、底壁15がコーヒー液に沈むことがなければ、抽出フィルタ1の側周壁11の上記高さ方向の寸法は、側周壁11の上記高さ方向の寸法より少し小さくなっていてもよい。
【0036】
<その他>
なお、載置部51は、カップCに載置されるようになっていればその平面形状には限定されず、円形状又は四角以上の略多角形状を有していてもよい。
【0037】
<抽出フィルタによる飲料液の抽出工程>
次に、抽出フィルタ1を用いてコーヒー豆粉末からコーヒー液(飲料液)を抽出する工程について説明する。
まず、コーヒー液を溜めるカップCにホルダ5を設置する。ホルダ5の載置部51のR部51bには突部52が設けられているので、カップCにおけるホルダ5の載置位置が不意にずれた場合であっても、突部52がカップCの縁に接触するのでホルダ5がカップCから滑り落ちることを防ぐことができる。
【0038】
次いで、ホルダ5の保持部53に抽出フィルタ1の抽出部10を収容し、抽出フィルタ1をホルダ5に保持させる。なお、抽出フィルタ1の抽出部10には被抽出物であるコーヒー豆粉末が事前に投入されている。抽出部10の側周壁11の側周フィルタ部12には、投入されるコーヒー豆粉末の所望の量の目安となる印12bが設けられているので、コーヒー豆粉末を過不足なく投入することができる。なお、ホルダ5への抽出フィルタ1の保持後にコーヒー豆粉末を投入してもよい。
【0039】
次いで、お湯を抽出部10に注ぐ。抽出フィルタ1は、側周壁11に側周フィルタ部12、底壁15に底フィルタ部16が設けられており、お湯はコーヒー豆粉末を透過していくので抽出時間を短縮することができる。
また、側周壁11の側周フィルタ部12の長孔12aは、その長軸が軸線Xに沿う方向に延在しているのでお湯は底壁15へ導かれるので、一定の速度・間隔でコーヒー豆粉末に対してお湯を注ぐことができる。
また、底壁15の各底フィルタ部16に形成された長孔16aによる配列の構成により、抽出フィルタ1の抽出部10に、周方向のどの方向からお湯を注いだとしても、底壁15の底フィルタ部16のいずれかの長孔16aの長軸に沿ってお湯が流れるようになり、一定の速度・間隔でコーヒー液が抽出され、ほぼ同じ抽出時間で均質なコーヒー液を抽出することができる。
側周フィルタ部12及び底フィルタ部16は金属製であるので、コーヒー豆粉末が持つ独特の成分や油分を吸収することはない。
かくして、抽出フィルタ1にはコーヒー液のドリップ毎に、常に同じ量のコーヒー豆粉末を投入することができると共に、抽出フィルタ1に対してお湯を注ぐ方向に関係なく、ほぼ一定の速度でお湯を注ぐことができ、抽出時間及び品質も毎回ほぼ同じである。この点において、抽出フィルタ1は、カップC一杯分のコーヒー液を透過式によりドリップすることに優れている。
【0040】
また、側周フィルタ部12及び底フィルタ部16における開孔率は、35〜40%、特に37.5%に設定されている。開孔率が上記数値範囲より大きい場合、当該フィルタ部12,16からのコーヒー豆粉末の流出量が増え、コーヒー液を飲む者が気になる量のコーヒー豆粉末を口に含むおそれが高くなる。開孔率が上記数値範囲より小さい場合、コーヒー液の抽出速度が遅くなり、抽出フィルタ1によるコーヒー液の透過式のドリップという機能を損なうことがある。
側周フィルタ部12及び底フィルタ部16における開孔率は、35〜40%、特に37.5%に設定することにより、コーヒー豆粉末が不都合に多く流出することを抑えつつ、コーヒー液を透過式にドリップするという機能を発揮することができる。
【0041】
また、ホルダ5の保持部53に開口53bが設けられていることにより、コーヒー液の抽出時、カップCにコーヒー液がどの程度溜まったのかを確認することができる。これにより、カップC内のコーヒー液の量を確認しながらお湯を注ぐことができ、例えば注ぎ過ぎによりコーヒー液がカップCから溢れることを防ぐことができる。
【0042】
また、抽出フィルタ1の底壁15における底枠部F3の環状部位F3bの外径は、少なくとも上枠体F1における投入口Oの最小内径、又は、側周壁11の投入口O側の内径よりも大きくなっている。これにより、
図6に示すように、上段に重ねた側の抽出フィルタ1の底壁15が、下段で重ねられた抽出フィルタ1の上枠体F1に又は側周壁11に投入口O側で接触するので、2つの抽出フィルタ1,1を互いに重ねて使用することもできる。
かくして、各抽出フィルタ1に種類の異なるコーヒー豆粉末を投入することで、例えば上段の抽出フィルタ1で抽出されたコーヒー液が、上段の抽出フィルタ1に投入されたコーヒー豆粉末とは異なるコーヒー豆粉末が投入された下段の抽出フィルタ1を透過することになる。これにより、1種類のコーヒー豆粉末から抽出したコーヒー液の場合、又は、異なるコーヒー豆粉末を混ぜて抽出したコーヒー液の場合とは違った風味を備えたコーヒー液を味わうことができる。