【実施例】
【0033】
当業者のための説明を例示し、かつ提供するために、以下の実施例では、本発明の幾つかの実施形態の特定の態様を説明する。本実施例は、本発明の幾つかの実施形態を理解し、かつ実施するのに有用な特定の方法論を提供するものにすぎないので、本実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0034】
実施例1 充電式セルのためのマトリクス及び/又はコーティングされた電極の製造
材料及び合成法
全ての反応物を高純度アルゴン充填グローブ・ボックス(M−Braun社、O
2及び湿気含有率<0.1ppm)内で調製した。特別の定めのない限り、材料は、更なる精製なしに、商業的供給源(例えば、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、アドバンス・リサーチ・ケミカルズ(Advanced Research Chemicals)社、アルファ・エイサー(Alfa Aesar)、ストレム(Strem))から得られた。
【0035】
CuF
2/マトリクスの調製
複数のミリング容器に約85質量%〜約95質量%のCuF
2及び約5質量%〜約15質量%の反応物質(金属酸化物又は金属酸化物前駆体)を充填して、それらの容器を封止した。混合物を混練した。混練後、N
2気流下、約200℃から約575℃までの温度で1時間〜12時間に亘って複数の試料をアニールした。具体的なマトリクス反応物は、後述される通りに処理された。
【0036】
CuF
2/Cu
3Mo
2O
9の調製
複数のミリング容器にCuF
2(85質量%)及びMoO
3(15質量%)を充填し、封止し、次に混練した。混練後、N
2気流下、450℃で6時間に亘って複数の試料をアニールした。
【0037】
CuF
2/NiOの調製
複数のミリング容器にCuF
2(85質量%)及びNiO(15質量%)を充填し、封止し、次に混練した。混練後、N
2気流下、325℃で6時間に亘って複数の試料をアニールした。
【0038】
CuF
2/ニッケル(II)アセチルアセトネートの調製
THFの存在下(40〜120mgのCuF
2/THFのmL)で混練することによってCuF
2の微細分散液を調製した。次に、分散された試料をNi(AcAc)
2のTHF溶液へ、ニッケル(II)アセチルアセトネートが溶液中の固形分の15質量%を占めるように加えた。次に、約1時間〜約12時間に亘って、振とう、超音波処理又は低エネルギー混練のいずれかによって、その溶液を撹拌した。次に、その溶液を真空下、室温で乾燥させて、得られた固体を乾燥空気下、450℃で6時間に亘ってアニールした。
【0039】
電極設計
次の配合法に従って、80:15:5(活物質:バインダ:伝導性添加剤)の配合組成物を用いて、複数の正極を調製した:
133mgのPVDF(シグマ・アルドリッチ社)及び約44mgの「Super P(登録商標)」Li(ティムカル(Timcal)社)を10mLのNMP(シグマ・アルドリッチ社)に終夜で溶解させた。この溶液1mLへ、コーティングされた複合粉70mgを加え、終夜で撹拌した。約70μLのスラリーを複数のステンレス鋼集電体上へ滴下して150℃で約1時間に亘って乾燥させることによって、複数の膜をキャストした。乾燥した複数の膜を冷却させて、次に1トン/cm
2でプレスした。さらに、複数の電極を、電池組み立て用グローブ・ボックス中に持ち込む前に、真空下150℃で12時間に亘って乾燥させた。
【0040】
実施例2 再充電可能な電極を含む電気化学セルの電気化学的特性評価
特別の定めのない限り、高純度アルゴン充填グローブ・ボックス(M−Braun社、O
2及び湿気含有率<0.1ppm)内で全ての電池を組み立てた。負極としてのリチウム、セルガード(Celgard)2400セパレータ、及び1MのLiPF
6のEC:EMC(1:2)電解液90μL用いて、複数のセルを形成した。4.0Vと2.0Vの間で定電流C/50充放電レートを用いて、複数の電極及び複数のセルを30℃で電気化学的に特性評価した。各充電の最後に3時間の定電圧工程を用いた。幾つかの場合には、電解液(EC:EMC(1:2)中の1MのLiPF
6)の存在下で約15分間に亘ってリチウム箔を電極へプレスして、複数の正極をリチウム化した。次に、電極をEMCで濯ぎ、リチウムではなくグラファイトを負極として使用したこと以外は上記のようにして複数のセルに組み込んだ。
【0041】
図1は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示す。具体的には、
図1では、LiFePO
4マトリクスを含む3つの異なる正極配合物の第二サイクルの放電容量を、正極中のLiFePO
4(LFPとして標示した)含有率の関数としてプロットした。点線は、LiFePO
4の理論容量を示す。1つの正極配合物は、100%LiFePO
4である。別の正極配合物は、CuF
2とLiFePO
4の組み合わせであり、その中のLiFePO
4の含有率を伝導性物質の全質量の10%から50%まで変化させた。第三の正極配合物は、CuF
2と従来の伝導性酸化物MoO
3とLiFePO
4の組み合わせであり、その中のLiFePO
4の含有率を伝導性物質の全質量の10%から50%まで変化させた。これは第二サイクルのデータであるため、
図1によって、CuF
2/LiFePO
4マトリクスの全てが再充電可能であることが証明される。なお、LiFePO
4を50%含む(CuF
2/MoO
3)/LiFePO
4ハイブリッド正極も再充電可能である。さらに、
図1によって、容量とLiFePO
4含有率(%)の間の直接的な関係が証明される。
【0042】
図2は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示す。具体的には、ハイブリッド正極の電圧を第一及び第二サイクルの容量に対してプロットする。点線は、正極中のLiFePO
4含有率から予想される理論容量を示す。正極配合物は、
図1に由来するCuF
2(70%)/LiFePO
4(30%)ハイブリッド正極である。第一サイクル中、放電容量がほとんど観察されないことは、このサイクルでLiFePO
4物質は充電を受けることができないことを示す。特定の理論又は作用機序に拘束されるものではないが、混練中に導入された欠陥の結果として、LiFePO
4物質は充電を受けないであろう。このデータは、第一及び第二サイクル中に観察された容量の全てが、単にCuF
2に起因すると考えられることを示唆する。
【0043】
図3は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示す。具体的には、セルの放電容量を、LiFePO
4含有率の範囲とともに、10回目のサイクルまでのサイクル数の関数としてプロットする。正極配合物は、伝導性物質の全質量の10%〜50%の範囲内の含有率でLiFePO
4を有するCuF
2である。
図4によって、ハイブリッド正極は、サイクル数の全域で連続して再充電可能であることが証明される。
図2由来のデータに基づくと、放電容量は、単にCuF
2に起因するが、LiFePO
4に起因するものではないことが予想される。CuF
2がそのような有意な可逆容量を有することは以前には示されなかったので、この点は重要な発見である。伝導性マトリクス物質とCuF
2の組み合わせは、CuF
2正極物質を再充電可能にする。
【0044】
図4は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示す。具体的には、フッ化金属及び新規なマトリクス物質から形成された正極を含むセルについて、第一及び第二サイクルの電圧をトレースする。この場合、フッ化金属活物質はCuF
2であり、かつマトリクス物質はCu
3Mo
2O
9である。
図4によって、セルは約140mAh/gの可逆容量を有することが証明される。CuF
2を含む既知の正極は、そのような有意な可逆容量を有することが証明されていなかった。
【0045】
図5は、本明細書で開示された特定の実施形態の構造特性評価の結果を示す。具体的には、CuF
2とCu
3Mo
2O
9の粉末X線回折図形とともに、
図4で試験された正極を形成する物質の粉末X線回折図形を示す。
図5によって、その物質は、複数のCuF
2リッチ相と複数のCu
3Mo
2O
9リッチ相を含むことが証明される。したがって、
図5によって、フッ化金属活物質と組み合わせられる新規なマトリクス物質が証明される。さらに、この粉末X線回折データの粒径分析が、CuF
2は、130nmを超える粒径を有することを示す。そのような比較的大きな粒子は、良好な電気化学的性能を提供するには大きすぎると考えられていたので、この点は重要な発見である。
【0046】
本明細書に記載された多くの再充電可能なマトリクス(より詳細には、Mo、Ni又はTiを含む複数のマトリクス)については、本明細書で記載された反応によって、新規なマトリクス物質が、フッ化金属活物質粒子の少なくとも表面で得られる。フッ化金属活物質粒子の少なくとも表面に存在する新規物質は、本明細書で開示された利点の多くを提供すると考えられる。
【0047】
図6は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示す。具体的には、様々なマトリクスを有するCuF
2の第二サイクルの放電容量及びアニール温度が示される。
図6は、100mAh/gより大きい容量により実証された再充電容量を提供する多くの酸化物マトリクスを示す。
【0048】
表1は、本明細書で開示された特定の実施形態の更なる電気化学的特性評価の結果を示す。表1では、多くの金属酸化物及び金属酸化物前駆体出発物質が、再充電可能なフッ化金属電極物質を得るために、本明細書で記載された反応に使用され得ることが示される。表1中の物質としては、金属酸化物、金属リン酸塩、フッ化金属、及び分解して酸化物になることが予期される前駆体が列挙される。より詳細には、酸化ニッケルが、優秀な性能を示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
図7は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示す。具体的には、フッ化金属と、異なる温度で処理されたマトリクス物質とから形成された正極を含む複数のセルについて第二サイクルの放電容量を示す。この場合、フッ化金属活物質はCuF
2であり、かつマトリクス物質はNiOである。
図7では、NiOマトリクスに関する約325℃でのサイクル2の容量について、ほぼ250mAh/gの放電容量のピークが示される。
【0058】
図8は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、特定のアニール温度での85質量%のCuF
2と15質量%の特定の金属酸化物(この場合、NiO又はTiO
2)の反応から形成された正極活物質について、第二サイクルの容量保持率及び可逆容量を示す。混合物を約20時間に亘って高エネルギーで混練する。アニール温度は、約225℃〜約450℃の範囲であり、かつアニール時間は6時間であった。NiO出発物質のための325℃のアニール温度が、最良の性能を出した。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って0.02Cのレートで試験を行なった。
【0059】
図9は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、特定のアニール時間に亘る85質量%のCuF
2と15質量%の特定の金属酸化物(この場合、NiO又はTiO
2)の反応から形成された正極活物質について、第二サイクルの容量保持率及び可逆容量を示す。混合物を高エネルギーで約20時間に亘って混練した。アニール温度は325℃であり、かつアニール時間は、1時間、6時間、又は12時間であった。6時間のアニール時間が、NiO出発物質とTiO
2出発物質の両方にとって最良の結果を出し、そしてNiO出発物質は、より良い性能を出した。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って0.02Cのレートで試験を行なった。
【0060】
図10は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、85質量%、90質量%又は95質量%のCuF
2と5質量%、10質量%、15質量%のNiOとの反応から形成された正極活物質について、第二サイクルの容量保持率及び可逆容量を示す。混合物を約20時間に亘って高エネルギーで混練した。アニール温度は325℃であり、かつアニール時間は6時間であった。10質量%又は15質量%のNiO出発物質の使用が、より良い性能を出した。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って0.02Cのレートで試験を行なった。
【0061】
図11は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、85質量%のCuF
2と15質量%のNiOの反応から形成された正極活物質について、第二サイクルの容量保持率及び可逆容量を示す。フリッチュ(Fritch)社の「Pulverisette 7」遊星型ミルによる305、445、595及び705RPMでの約20時間に亘る混練に相当する各種のエネルギーで、混合物を混練した。アニール温度は325℃であり、かつアニール時間は6時間であった。混練エネルギーを増加させるにつれて性能が向上するので、複数の物質の密接な物理的相互作用が必要であることが示唆される。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って0.05Cのレートで試験を行なった。
【0062】
図12は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、85質量%のCuF
2と15質量%のNiOの反応から形成された正極活物質について、第二サイクルの容量保持率及び可逆容量を示す。様々な時間(3時間、20時間、又は40時間)に亘って(フリッチュ社の「Pulverisette 7」における705RPMに相当する)高エネルギーで混合物を混練した。アニール温度は325℃であり、かつアニール時間は6時間であった。混練が20時間を経過すると、性能が向上しない。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って0.05Cのレートで試験を行なった。
【0063】
図13は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示す。具体的には、
図13は、CuF
2との反応に使用された様々な出発物質について測定された第二サイクルの可逆容量を示す。出発物質としては、NiO、ニッケル(II)アセチルアセトネート、酢酸ニッケル、水酸化ニッケル、NiCO
3・Ni(OH)
2、Ni(C
2O
2)、Ni(CP)
2、及びNiが挙げられる。幾つかの例では、出発物質が反応して新たな相を形成する。それらの物質は、CuF
2粒子の表面と反応する。なお、アニール雰囲気は、N
2又は乾燥空気のいずれかであった。前駆体型出発物質は(幾つかの前駆体については雰囲気に依存するとしても)反応のために用いられるアニール温度で、又はそのアニール温度より低い温度でNiOへと分解する。可溶性であるか、又は低沸点を有する前駆体は、溶液処理法又は蒸着処理法を可能にすることができる。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って0.05Cのレートで試験を行なった。幾つかの物質は、NiOベースラインに対して類似の性能を示す。
【0064】
図14は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、様々な処理条件を用いてCuF
2をニッケル(II)アセチルアセトネートと反応させることにより形成された正極活物質について、第二サイクルの容量保持率及び可逆容量を示す。幾つかの場合には、本明細書に記載の方法を用いてCuF
2を分散させた。ミル・コーティング技術(すなわち、混練装置内での混合物の撹拌)又は溶液コーティング技術(物理吸着により導かれる溶液コーティングなど)を用いて、コーティングを適用した。乾燥空気下で全ての試料をアニールした。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って0.05Cのレートで試験を行なった。試験によって、溶液コーティング法はミル・コーティング技術と類似の性能を提供できることが証明される。
【0065】
図15は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、85質量%のCuF
2と15質量%のNiOの反応から形成された正極活物質、及び対照物質について、容量をサイクル数の関数として示す。NiO/CuF
2混合物を高エネルギーで約20時間に亘って混練した。アニール温度は325℃であり、かつアニール時間は6であった。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って、1回目のサイクルには0.02Cのレートで、2回目のサイクルには0.05Cのレートで、かつ3回目〜25回目のサイクルには0.5Cのレートで試験を行なった。反応したNiO/CuF
2を活物質として用いると、セルは、25回のサイクルで100mAh/gより大きな容量を有して、長いサイクル期間に亘って可逆的にサイクルする。さらに、反応したNiO/CuF
2活物質によって、第三サイクルの容量の80%の保持率を第15サイクルまで保てることが証明される。Badway,F.らの「Chem.Mater.,2007,19,4129」に記載された方法に従って調製された対照物質は、いかなる再充電可能な容量も証明しない。したがって、本明細書に記載された実施形態に従って調製された物質は、既知の方法に従って処理された既知の物質よりも有意に優れる。
【0066】
図16は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、85質量%のCuF
2と15質量%のNiOの反応から形成された正極活物質、及び対照物質について、定電流間欠滴定法(GITT)の測定を示す。NiO/CuF
2混合物を高エネルギーで約20時間に亘って混練した。アニール温度は325℃であり、かつアニール時間は6時間であった。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って0.1Cのレートで、かつ緩和時間を10時間として試験を行なった。GITT測定緩和点は低電圧ヒステリシス(約100mV)を示し、その低電圧ヒステリシスは、過電圧及び/又は電圧不足が速度論的に起こる可能性が高く、熱力学的制限ではないことを示す。これは、反応したNiO/CuF
2活物質について観察された他の性質及び特性と一致する。
【0067】
図17は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、85質量%のCuF
2と15質量%のNiOの反応から形成された正極活物質について、フルセル及びハーフセルの容量をサイクル数の関数として示す。NiO/CuF
2混合物を高エネルギーで約20時間に亘って混練した。アニール温度は325℃であり、かつアニール時間は6時間であった。ラベル「Cu+2LiF」によって、NiO/CuF
2電極は、上記電解液の存在下でLi箔をCuF
2電極へプレスすることによりリチウム化されたことが示された。他のハーフセルは、初期サイクルにおいて電気化学的にリチウム化された。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って試験を行なった。ハーフセル性能が、第二サイクル以降、2つのリチオ化法の間で本質的に同じであるのに対して、フルセルは、2つのハーフセルと比べて、さらなる不可逆容量損失を示すが、類似の容量保持率を示す。
【0068】
図18は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、
図17に関して記載された通りに調製されたフルセル及びハーフセルの電圧体系を示す。フルセルは、ハーフセルと類似する充電容量を有するが、より大きな不可逆容量損失及びより低い放電電圧(増加したセルインピーダンスを示すことができる)を有する。
図18によって、フルセルは、約250mAh/gの可逆容量、及び充電プラトー電圧と放電プラトー電圧の間の約500mVのヒステリシスを有することが証明される。
【0069】
図19は、本明細書で開示された特定の実施形態の電気化学的特性評価の結果を示し、具体的には、85質量%のCuF
2と15質量%のNiOの反応から形成された正極活物質について、フルセル及びハーフセルの容量保持率をサイクル数の関数として示す。対照物質の結果も示す。
図17に関して記載した通りにフルセル及びハーフセルを調製した。セルは、Li負極、及び1MのLiPF
6のEC:EMC液を含む電解液を使用した。1回目のサイクルでは0.1Cのレートで、かつ2.0V〜4.0Vの電圧範囲に亘って試験を行なった。容量保持率は、NiO/CuF
2活物質のフルセル及びハーフセルについて本質的に同じである。対照物質は、再充電可能な容量を本質的に示さない。
【0070】
本発明は、その特定の実施形態に関して説明されたが、当業者にとって、特許請求の範囲に規定される発明の真の理念及び範囲から逸脱せずに、様々な変形を行なったり、均等箇所を置換したりし得ることを理解されたい。なお、特定の状況、物質、組成物、方法又はプロセスを本発明の対象、理念及び範囲に適合させるために、多くの改良を行ない得る。そのような改良の全ては、特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。より詳細には、本明細書で開示された方法は、特定の順序で行われた特定の操作に関して説明されたが、本発明の教示から逸脱せずに、均等な方法を形成するために、これらの操作を組み合わせるか、さらに分割するか、又は並べ替えてもよいことが理解されるであろう。したがって、本明細書で特に示されない限り、これらの操作の順序及び分類は、本発明を制限するものではない。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[18]に記載する。
[1]
フッ化金属を含む粒子;及び
前記粒子上のコーティング;
を含む組成物であって、
前記フッ化金属は、第一の金属を含み、
前記コーティングは、前記フッ化金属と金属錯体の反応により形成されたハイブリッド物質を含み、
前記金属錯体は、第二の金属を含み、かつ
前記ハイブリッド物質は、前記第一の金属及び前記第二の金属を含む、
前記組成物。
[2]
前記反応は、熱処理を含む、項目1に記載の組成物。
[3]
前記反応は、前記フッ化金属と前記金属錯体を混練する工程をさらに含む、項目1に記載の組成物。
[4]
前記フッ化金属は、CuF2を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[5]
100nmを超える粒径を有する粒子を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[6]
130nmを超える粒径を有する粒子を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[7]
前記粒子は、第一の相を有し、かつ前記コーティングは、第二の相を有する、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[8]
前記第一の相は、前記フッ化金属を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[9]
前記第二の相は、金属錯体の分解から形成された物質を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[10]
前記金属錯体は、金属酸化物を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[11]
前記金属錯体は、Al2O3、SiO2、MoO3、MoO2、NiO、CuO、VO2、V2O5、TiO2、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される金属酸化物を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[12]
前記金属錯体は、NiOを含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[13]
前記金属錯体は、金属リン酸塩を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[14]
前記金属錯体は、LiFePO4を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[15]
前記コーティングは、前記粒子と共有結合する、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[16]
前記熱処理は、450℃未満の温度で行われる、項目2に記載の組成物。
[17]
前記熱処理は、325℃未満の温度で行われる、項目2に記載の組成物。
[18]
CuF2を含む粒子;及び
前記粒子上のコーティング;
を含む組成物であって、前記コーティングは、下記式(1):
CuaMe’bOcFd (1)
{式中、0<a≦1、0<b≦1、0≦c≦1、かつ0≦d≦1である。}
により表される物質を含む、前記組成物。